特許第6337974号(P6337974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337974
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、膜及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/16 20060101AFI20180528BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20180528BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180528BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C08L27/16
   C08L33/04
   G02F1/1335 510
   B32B27/30 D
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-562418(P2016-562418)
(86)(22)【出願日】2015年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2015083355
(87)【国際公開番号】WO2016088667
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-242855(P2014-242855)
(32)【優先日】2014年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】大松 一喜
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】赤田 勝己
(72)【発明者】
【氏名】前川 智博
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−058733(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/142453(WO,A1)
【文献】 特開2013−244604(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/054545(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/057933(WO,A1)
【文献】 特開2015−044967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00 − 27/24
C08L 33/00 − 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含む樹脂組成物であって、
(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂の合計100質量%あたり、(メタ)アクリル樹脂を35〜45質量%及びフッ化ビニリデン樹脂を65〜55質量%、それぞれ含み、該(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が100,000〜300,000であり、
樹脂組成物に含まれる樹脂の少なくとも1種がアルカリ金属を含み、樹脂組成物に含まれる全樹脂及びアルカリ金属の合計量100質量部あたり、アルカリ金属の含有量が50ppm以下である樹脂組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル樹脂が、次の(a1)又は(a2)の樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
(a1)メタクリル酸メチルの単独重合体、
(a2)メタクリル酸メチルに由来する構造単位50〜99.9質量%及び下式(1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R1が水素原子のときR2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R1がメチル基のときR2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。)
で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1つの構造単位0.1〜50質量%を含む共重合体。
【請求項3】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、120,000〜250,000である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
フッ化ビニリデン樹脂が、ポリフッ化ビニリデンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
フッ化ビニリデン樹脂の3.8kg荷重で測定した230℃におけるメルトマスフローレイトが、0.1〜30g/10分である請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
着色剤をさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成される層を含む膜。
【請求項8】
厚さが100〜2000μmである請求項7に記載の膜。
【請求項9】
熱可塑性樹脂層をさらに含む請求項7又は8に記載の膜。
【請求項10】
樹脂組成物から形成される層の両面に熱可塑性樹脂層を含む請求項7〜9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項11】
熱可塑性樹脂層が、(メタ)アクリル樹脂層又はポリカーボネート樹脂層である請求項9又は10に記載の膜。
【請求項12】
熱可塑性樹脂層が、当該熱可塑性樹脂層を形成する全樹脂100質量部当たり(メタ)アクリル樹脂を50質量部以上含む樹脂から形成された層である請求項9〜11のいずれか一項に記載の膜。
【請求項13】
熱可塑性樹脂層に含まれる(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が、50,000〜300,000である請求項11又は12に記載の膜。
【請求項14】
熱可塑性樹脂層の厚さが、10〜200μmである請求項9〜13のいずれか一項記載の膜。
【請求項15】
熱可塑性樹脂層のビカット軟化温度が、100〜160℃である請求項9〜14のいずれか一項記載の膜。
【請求項16】
(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含む膜であって、当該膜を60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露したとき、当該膜のヘーズが2%以下であり、かつ誘電率が4.0以上である請求項7〜15のいずれか一項に記載の膜。
【請求項17】
少なくとも一方の表面に、傷つき防止、反射防止、防眩及び指紋防止からなる群から選択される少なくとも一種の機能を付与するためのコーティング層をさらに有する請求項7〜16のいずれか一項に記載の膜。
【請求項18】
請求項7〜17のいずれか一項に記載の膜を含む表示装置。
【請求項19】
請求項7〜17のいずれか一項に記載の膜及び偏光板が積層された膜付き偏光板。
【請求項20】
請求項19に記載の膜付き偏光板を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、膜及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、携帯ゲーム機、オーディオプレーヤー、タブレット端末などの表示装置には、タッチスクリーンを備えるものが増加している。このような表示装置の表面には、通常ガラスシートが使用されているが、表示装置の軽量化する傾向や加工性の点から、ガラスシートの代替品となるプラスチックシートの開発が行われている。例えば、特許文献1には、ガラスシートの代替品となるプラスチックシートとして、メタクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂とを含む透明シートが開示され、この透明シートが、透明性及び比誘電率を十分に満たすことが記載されている。
【0003】
一方、表示装置は近年、その高い汎用性から多様な環境下で使用されることから、例えば、高温高湿等の過酷な環境における耐久性を有することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−244604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載に記載されたような従来の透明シートは、例えば、60℃で相対湿度90%のような高温高湿な環境で白濁することがあり、その耐久性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は次の〔1〕〜〔20〕に記載された発明を含む。
〔1〕(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含む樹脂組成物であって、
(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂の合計100質量%あたり、(メタ)アクリル樹脂を35〜45質量%及びフッ化ビニリデン樹脂を65〜55質量%、それぞれ含み、該(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が100,000〜300,000であり、
樹脂組成物に含まれる樹脂の少なくとも1種がアルカリ金属を含み、樹脂組成物に含まれる全樹脂及びアルカリ金属の合計量100質量部あたり、アルカリ金属の含有量が50ppm以下である樹脂組成物。
〔2〕(メタ)アクリル樹脂が、次の(a1)又は(a2)の樹脂である〔1〕に記載の樹脂組成物。
(a1)メタクリル酸メチルの単独重合体、
(a2)メタクリル酸メチルに由来する構造単位50〜99.9質量%及び下式(1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R1が水素原子のときR2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R1がメチル基のときR2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。)
で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1つの構造単位0.1〜50質量%を含む共重合体。
〔3〕(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、120,000〜250,000である〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕フッ化ビニリデン樹脂が、ポリフッ化ビニリデンである〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔5〕フッ化ビニリデン樹脂のメルトマスフローレイトが、0.1〜30g/10分である〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔6〕着色剤をさらに含む〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔7〕〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成される層を含む膜。
〔8〕厚さが100〜2000μmである〔7〕に記載の膜。
〔9〕熱可塑性樹脂層をさらに含む〔7〕又は〔8〕に記載の膜。
〔10〕樹脂組成物から形成される層の両面に熱可塑性樹脂層を含む〔7〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の膜。
〔11〕熱可塑性樹脂層が、(メタ)アクリル樹脂層又はポリカーボネート樹脂層である〔9〕又は〔10〕に記載の膜。
〔12〕熱可塑性樹脂層が、当該熱可塑性樹脂層を形成する全樹脂100質量部当たり(メタ)アクリル樹脂を50質量部以上含む樹脂から形成された層である〔9〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の膜。
〔13〕熱可塑性樹脂層に含まれる(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が、50,000〜300,000である〔11〕又は〔12〕に記載の膜。
〔14〕熱可塑性樹脂層の厚さが、10〜200μmである〔9〕〜〔13〕のいずれか一項記載の膜。
〔15〕熱可塑性樹脂層のビカット軟化温度が、100〜160℃である〔9〕〜〔14〕のいずれか一項記載の膜。
〔16〕(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含む膜であって、当該膜を60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露したとき、当該膜のヘーズが2%以下であり、かつ誘電率が4.0以上である膜。
〔17〕少なくとも一方の表面に、傷つき防止、反射防止、防眩及び指紋防止からなる群から選択される少なくとも一種の機能を付与するためのコーティング層をさらに有する〔7〕〜〔16〕のいずれか一項に記載の膜。
〔18〕〔7〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の膜を含む表示装置。
〔19〕〔7〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の膜及び偏光板が積層された膜付き偏光板。
〔20〕〔19〕に記載の膜付き偏光板を含む表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物から形成される層及びこれを含む膜は、高い誘電率を有しつつ、高温高湿な環境下で長時間使用しても透明性を維持できるため、表示装置の前面板として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に使用した本発明の膜の製造装置の概略図である。
図2】本発明に係る液晶表示装置の一つの好ましい形態の層構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、少なくとも(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含む樹脂組成物であり、(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂の合計100質量%あたり、(メタ)アクリル樹脂を35〜45質量%及びフッ化ビニリデン樹脂を65〜55質量%それぞれ含むものであり、この(メタ)アクリル樹脂は、その重量平均分子量(Mw)が100,000〜300,000である。また、この樹脂組成物に含まれる樹脂の少なくとも1種がアルカリ金属を含み、樹脂組成物に含まれる全樹脂及びアルカリ金属の合計100質量部あたり、アルカリ金属の含有量が50ppm以下である。以下、本発明について説明する。
【0010】
この樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂の合計100質量%あたり、好ましくは(メタ)アクリル樹脂37〜45質量%及びフッ化ビニリデン樹脂55〜63質量%含み、より好ましくは(メタ)アクリル樹脂38〜45質量%及びフッ化ビニリデン樹脂55〜62質量%含み、さらに好ましくは(メタ)アクリル樹脂38〜43質量%及びフッ化ビニリデン樹脂57〜62質量%含む。なお、樹脂組成物は、透明性を損なわない程度であれば、(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂に加え、これら以外の樹脂を含んでもよい。
【0011】
これら樹脂組成物に含まれる樹脂は、その少なくとも1種がアルカリ金属を含む。アルカリ金属は、例えば、(メタ)アクリル樹脂又はフッ化ビニリデン樹脂が乳化重合で得られたものである場合、樹脂中に残留する乳化剤に由来するナトリウムやカリウムであることができる。アルカリ金属の合計含有量が少ないほど、樹脂組成物から形成される層を含む膜は、これを高温高湿な環境下で長期間使用したときに透明性が低下しなくなる傾向があるため好ましい。
【0012】
アルカリ金属の含有量は、樹脂組成物に含まれる全ての樹脂及びアルカリ金属の合計量100質量部あたり、通常50ppm以下である。アルカリ金属の含有量は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以下、ことさら好ましくは実質的に含まれないことである。樹脂中のアルカリ金属の含有量を上記範囲内にするためには、樹脂の重合の際にアルカリ金属を含む化合物の使用量を減らすか、重合後の洗浄工程を増やしてアルカリ金属を含む化合物を除去すればよい。アルカリ金属の含有量は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)により求めることができる。誘導結合プラズマ質量分析法としては、例えば、測定するサンプルペレットを、高温灰化融解法、高温灰化酸溶解法、Ca添加灰化酸溶解法、燃焼吸収法、低温灰化酸溶解法などの適宜の方法により、サンプルを灰化し、これを酸に溶解にさせ、この溶解液を定容して誘導結合プラズマ質量分析法でアルカリ金属量を測定すればよい。
【0013】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリルモノマーの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリルモノマーの共重合体、アクリルモノマーとアクリルモノマー以外のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0014】
(メタ)アクリル樹脂としては、優れた硬度、耐候性、透明性などを有する点から、メタクリル樹脂を用いることが好ましい。メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステル(メタクリル酸アルキル)を主体とする単量体の重合体であり、例えば、メタクリル酸エステルの単独重合体(ポリアルキルメタクリレート)、2種以上のメタクリル酸エステルの共重合体、50質量%以上のメタクリル酸エステルと50質量%以下のメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体などが挙げられる。メタクリル酸エステルとメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体の場合、単量体の総量に対し、好ましくはメタクリル酸エステルが70質量%以上で、かつ他の単量体が30質量%以下であり、より好ましくはメタクリル酸エステルが90質量%以上で、かつ他の単量体が10質量%以下である。
【0015】
メタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸エステル、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する単官能単量体が挙げられる。
【0016】
単官能単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等のスチレン単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアン化アルケニル;アクリル酸;メタクリル酸;無水マレイン酸;N−置換マレイミド;などが挙げられる。また、耐熱性の観点より、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド及びメチルマレイミド等のN−置換マレイミドが共重合されていてもよいし、分子鎖中(重合体中の主骨格中又は主鎖中ともいう)にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造、若しくはグルタルイミド構造等が導入されていてもよい。
【0017】
(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、次の(a1)又は(a2)の樹脂であることが好ましい。
(a1)メタクリル酸メチルの単独重合体。
(a2)メタクリル酸メチルに由来する構造単位50〜99.9質量%、及び下式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1つの構造単位0.1〜50質量%を含む共重合体。ここで、構造単位の含有量は、得られた重合体を熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、各単量体に対応するピーク面積を測定することにより算出できる。
【0018】
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、R1が水素原子のときR2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R1がメチル基のときR2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。R2で表される炭素数2〜8のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリル樹脂は、3.8kg荷重で測定した230℃におけるメルトマスフローレイト(以下、MFRと記すことがある。)が、通常0.1〜20g/10分であり、好ましくは0.2〜5g/10分であり、より好ましくは0.5〜3g/10分である。MFRが大きすぎると、得られる膜の強度が低下する傾向にあり、MFRが小さすぎると、成膜性が低下する傾向にある。MFRは、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定することができる。ポリ(メタクリル酸メチル)系の材料については、温度230℃、荷重3.80kg(37.3N)で測定することが、このJISに規定されている。
【0020】
(メタ)アクリル樹脂は、GPC測定によって得られる重量平均分子量(以下、Mwと記すことがある。)が100,000〜300,000であることが好ましく、120,000〜250,000であることがより好ましく、150,000〜200,000であることがさらに好ましい。得られた膜は、Mwが大きいほど、60℃で相対湿度90%のような高温高湿環境下に暴露したときの透明性が高い傾向にあるが、大きすぎると成膜性が低下する傾向にある。
【0021】
(メタ)アクリル樹脂は、耐熱性の観点から、ビカット軟化温度(以下、VSTと記すことがある。)が90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、102℃以上であることがさらに好ましい。VSTは、JIS K 7206:1999に準拠し、これに記載のB50法で測定すればよい。VSTは、単量体の種類やその割合を調整することにより、適宜設定することができる。
【0022】
(メタ)アクリル樹脂は、上記の単量体を、懸濁重合、バルク重合等の公知の方法により重合させることにより、調製することができる。その際、適当な連鎖移動剤が添加することにより、MFR、Mw、VSTなどを好ましい範囲に調整することができる。連鎖移動剤は、適宜の市販品を使用することができる。連鎖移動剤の添加量は、単量体の種類やその割合、求める特性等に応じて適宜決定すればよい。得られる(メタ)アクリル樹脂は、アルカリ金属の含有量が少ないものが好ましい。アルカリ金属の含有量は、重合の際にアルカリ金属を含む化合物の使用量を減らすか、重合後の洗浄工程を増やしてアルカリ金属を含む化合物を除去することにより調整できる。
【0023】
(フッ化ビニリデン樹脂)
フッ化ビニリデン樹脂としては、得られる膜の透明性の観点から、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル及びエチレンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体とフッ化ビニリデンとを共重合させた重合体、フッ化ビニリデンを単独で重合した重合体(ポリフッ化ビニリデン)が挙げられ、好ましくはポリフッ化ビニリデンである。
【0024】
フッ化ビニリデン樹脂は、3.8kg荷重で測定した230℃におけるメルトマスフローレート(MFR)が、通常0.1〜30g/10分であり、好ましくは0.1〜25g/10分である。MFRの下限は、より好ましくは0.2g/10分であり、さらに好ましくは0.5g/10分である。MFRの上限は、より好ましくは20g/10分であり、さらに好ましくは5g/10分であり、ことさら好ましくは2g/10分である。MFRが大きすぎると、得られる膜を長期間使用したときに透明性が低下する傾向にあり、MFRが小さすぎると、成膜性が低下する傾向にある。
【0025】
フッ化ビニリデン樹脂は、GPC測定により測定した重量平均分子量(Mw)が100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜450,000であることがより好ましく、200,000〜450,000であることがさらに好ましく、350,000〜450,000であることがことさら好ましい。Mwが大きいほど、得られた膜の60℃で相対湿度90%の高温高湿な環境下に暴露したときの透明性が高い傾向にあるが、大きすぎると成膜性が低下する傾向にある。
【0026】
フッ化ビニリデン樹脂は、工業的には、懸獨重合法又は乳化重合法により製造される。懸濁重合法は、水を媒体とし、単量体を分散剤で媒体中に液滴として分散させ、単量体中に溶解した有機過酸化物を重合開始剤として重合させることにより実施され、100〜300μmの粒状の重合体が得られる。懸濁重合物は、乳化重合物に比較し製造工程が簡単で、粉体の取扱性に優れ、また乳化重合物のようにアルカリ金属を含む乳化剤や塩析剤を含まないため好ましい。得られるフッ化ビニリデン樹脂は、アルカリ金属の含有量が少ないものが好ましい。アルカリ金属の含有量は、重合の際にアルカリ金属を含む化合物の使用量を減らすか、重合後の洗浄工程を増やしてアルカリ金属を含む化合物を除去することにより調整できる。
【0027】
フッ化ビニリデン樹脂は、市販品を使用してもよい。好ましい市販品の例としては、(株)クレハの“KFポリマー(登録商標)”のT#1300、T#1100、T#1000、T#850、W#850、W#1000、W#1100及びW#1300、Solvay社製の“SOLEF(登録商標)”の6012、6010及び6008が挙げられる。
【0028】
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的に用いられる各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤、重合抑制剤、難燃助剤、補強剤、核剤、ブルーイング剤等の着色剤などが挙げられる。
【0029】
着色剤としては、アントラキノン骨格を有する化合物、フタロシアニン骨格を有する化合物などを挙げることができる。これらの中でも、アントラキノン骨格を有する化合物が、耐熱性の観点から好ましい。
【0030】
樹脂組成物が着色剤を含む場合、樹脂組成物における着色剤の含有量は、目的、着色剤の種類等に応じて適宜選択することができる。着色剤としてブルーイング剤を用いる場合、その含有量は、樹脂組成物100質量部あたり0.01〜10ppm程度とすることができる。この含有量は、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、さらに好ましくは0.1ppm以上であり、また好ましくは7ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、ことさら好ましくは3ppm以下である。ブルーイング剤は、公知のものを適宜使用することができ、例えば、それぞれ商品名でマクロレックス(登録商標)ブルーRR(バイエル社製)、マクロレックス(登録商標)ブルー3R(バイエル社製)、Sumiplast(登録商標) Viloet B(住化ケムテックス社製)及びポリシンスレン(登録商標)ブルーRLS(クラリアント社製)、Diaresin Violet D、Diaresin Blue G、Diaresin Blue N(以上、三菱化学(株)製)が挙げられる。
【0031】
これらの添加剤は、(メタ)アクリル樹脂又はフッ化ビニリデン樹脂等の樹脂に含まれていてもよく、後述する(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂との溶融混練の際に添加してもよく、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂との溶融混練後に添加してもよく、樹脂組成物を用いて膜を作製する際に添加してもよい。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂とを、通常、混練することにより得られる。かかる混練は、例えば、150〜350℃の温度にて、10〜1000/秒の剪断速度で溶融混練する工程を含む方法により実施できる。
【0033】
溶融混練を行う際の温度が150℃未満の場合、樹脂が溶融しないおそれがある。一方、溶融混練を行う際の温度が350℃を超える場合、樹脂が熱分解するおそれがある。さらに、溶融混練を行う際の剪断速度が10/秒未満の場合、十分に混練されないおそれがある。一方、溶融混練を行う際の剪断速度が1000/秒を超える場合、樹脂が分解するおそれがある。
【0034】
各成分がより均一に混合された樹脂組成物を得るために、溶融混練は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜300℃の温度で行われ、好ましくは20〜700/秒、より好ましくは30〜500/秒の剪断速度で行われる。
【0035】
溶融混練に用いる機器としては、通常の混合機や混練機を用いることができる。具体的には、一軸混練機、二軸混練機、他軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミルなどが挙げられる。また、剪断速度を上記範囲内で大きくする場合には、高剪断加工装置等を使用してもよい。
【0036】
<膜>
本発明の膜は、上記本発明の樹脂組成物から形成される層(以下、A層ということがある)を含むことが好ましく、A層の単層膜であってもよいし、A層と別の層を含む2層以上の膜であってもよい。膜の厚さは、好ましくは500〜2000μmであり、より好ましくは500〜1500μmであり、さらに好ましくは100〜1500μmであり、ことさら好ましくは100〜1000μmである。
【0037】
この膜は、耐熱性、表面硬度及び後述するコーティング層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層をさらに含むことが好ましい。熱可塑性樹脂層は、本発明の樹脂組成物から形成される層の少なくとも一方の面上に積層されることができ、他の層を介して積層されてもよいが、本発明の樹脂組成物から形成される層と接して熱可塑性樹脂層が積層されることが好ましい。膜の形状維持の観点から、膜に含まれるA層の両面に熱可塑性樹脂層を含むことが好ましい。
【0038】
熱可塑性樹脂層の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。膜に含まれるA層の両面に熱可塑性樹脂層を含む場合、各熱可塑性樹脂層の厚さや組成は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、膜の形状維持の観点から、互いに実質的に同一であることが好ましい。
【0039】
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂から形成される。熱可塑性樹脂は、JIS K 7206:1999に準拠して測定した熱可塑性樹脂のビカット軟化温度が、100〜160℃であることが好ましく、102〜155℃であることがより好ましく、102〜152℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂のビカット軟化温度は、熱可塑性樹脂が1種の樹脂からなる場合は、その樹脂のビカット軟化温度であり、熱可塑性樹脂が複数の樹脂を含む場合は、複数の樹脂から形成された熱可塑性樹脂のビカット軟化温度である。熱可塑性樹脂層の例としては、(メタ)アクリル樹脂層、ポリカーボネート樹脂層、シクロオレフィン樹脂層などが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル樹脂層又はポリカーボネート樹脂層である。
【0040】
(メタ)アクリル樹脂層は、1種類以上の(メタ)アクリル樹脂、又は1種類以上の(メタ)アクリル樹脂と1種類以上の(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂との複合樹脂から形成することができる。これらの(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル樹脂層を形成する全樹脂100質量部当たり(メタ)アクリル樹脂を50質量部以上含むことが好ましい。(メタ)アクリル樹脂層に含まれる(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50,000〜300,000であることが好ましく、70,000〜250,000であることがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂層に含まれる(メタ)アクリル樹脂は、上記本発明の樹脂組成物から形成される層に含まれる(メタ)アクリル樹脂と同じであっても異なっていてもよい。熱可塑性樹脂層は、実質的にフッ化ビニリデン樹脂を含まないことが好ましい。
【0041】
上記の(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂と相溶する熱可塑性樹脂が好ましい。(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂は耐熱性の観点から、JIS K 7206:1999に準拠して測定したビカット軟化温度が115℃以上であることが好ましく、117℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
【0042】
熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル樹脂である場合、熱可塑性樹脂層の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがさらに好ましい。
【0043】
ポリカーボネート樹脂層は、1種類以上のポリカーボネート樹脂又は1種類以上のポリカーボネート樹脂と1種類以上のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂との複合樹脂から形成することができる。これらのポリカーボネート樹脂は、温度300℃及び荷重1.2kgの条件で測定されるメルトボリュームレート(以下、MVRとも言う。)が3〜120cm3/10分であるのが好ましい。MVRは、より好ましくは、30〜80cm3/10分であり、さらに好ましくは4〜40cm3/10分、ことさら好ましくは10〜40cm3/10分である。MVRが3cm3/10分未満の場合は、流動性が低下するため、溶融共押出成形などの成形加工しにくくなる傾向や、外観不良が生じることがある。また、MVRが120cm3/10分を超えると、ポリカーボネート樹脂層の強度等の機械特性が低下する傾向にある。MVRは、JIS K 7210に準拠し、1.2kgの荷重下、300℃の条件にて測定することができる。
【0044】
ポリカーボネート樹脂は、例えば、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0045】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。
【0046】
これらは単独又は2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0047】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0048】
ポリカーボネート樹脂層が、1種類以上のポリカーボネート樹脂と1種類以上のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂との複合樹脂から形成される場合、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂は、透明性を損なわない範囲で配合することができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂と相溶する(メタ)アクリル樹脂が好ましく、芳香環又はシクロオレフィンを構造中に有するメタクリル樹脂がより好ましい。ポリカーボネート樹脂がこのようなタクリル樹脂を含むと、得られるポリカーボネート樹脂層の表面硬度を、ポリカーボネート樹脂単独から形成されるときよりも高くすることができる。
【0049】
上記ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂として、イソソルバイトと芳香族ジオールから合成されるポリカーボネートが挙げられる。例えば、三菱化学製「DURABIO(商標登録)」が挙げられる。
【0050】
ポリカーボネート樹脂には、離型剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、重合抑制剤、酸化防止剤、難燃化剤、補強剤等の添加剤、前記ポリカーボネート樹脂以外の重合体などを、本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。
【0051】
ポリカーボネート樹脂は、市販品を使用してもよい。市販品の例としては、住化スタイロンポリカーボネート(株)製“カリバー(登録商標)”の301-4、301-10、301-15、301-22、301-30、301-40、SD2221W、SD2201W、TR2201などが挙げられる。
【0052】
本発明の膜は、目視で観察した場合に透明であり、JIS K7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率(Tt)が、好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上である。膜の全光線透過率は、膜を60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露しても、この範囲を維持する。
【0053】
本発明の膜は、(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含む。本発明の膜は、60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露したとき、JIS K7136:2000に準拠して測定されたヘーズ(曇価)を、2.0%以下とすることができ、また黄色度(Yellow Index:YI値)を、1.5以下とすることができる。ヘーズは、より好ましくは1.8%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下である。なお、黄色度は、JIS Z 8722:2009に従ってYI値を算出することができる。フッ化ビニリデン樹脂より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.2以下である。
【0054】
また、本発明の膜は、JIS K 6911:1995に準拠し、23℃で相対湿度50%の環境下に24時間静置し、この環境下で自動平衡ブリッジ法にて測定した3V、100kHzにおける誘電率が通常3.5以上、好ましくは4.0以上である。測定には、市販の機器を使用すればよく、例えば、アジレント・テクノロジー(株)製の“precision LCR meter HP4284A”で測定することができる。
【0055】
本発明の膜に含まれるA層は、上記本発明の樹脂組成物を、例えば、溶融押出成形法、溶液流延製膜法、熱プレス法、射出成形法などにより成形することにより製造できる。中でも、射出成成形法及び溶融押出成形法が好ましく、溶融押出成形法がより好ましい。
【0056】
本発明の膜が熱可塑性樹脂層をさらに含む場合は、上記の成形により本発明の樹脂組成物を成形したA層と、別途成形した熱可塑性樹脂層とを、例えば粘着剤や接着剤を介して貼合することにより製造してもよいが、本発明の樹脂組成物と(メタ)アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂とを溶融共押出成形により積層一体化させることにより製造することが好ましい。このように溶融共押出成形により製造された膜は、貼合により製造された膜と比較して、通常、二次成形しやすい傾向にある。
【0057】
溶融共押出成形は、例えば、本発明の樹脂組成物と(メタ)アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂とを、2基又は3基の一軸又は二軸の押出機に、別々に投入して各々溶融混練した後、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して、本発明の樹脂組成物から形成される層と熱可塑性樹脂層とを積層一体化し、押出す成形法である。得られた膜は、例えば、ロールユニット等により冷却、固化されるのが好ましい。
【0058】
本発明の膜は、少なくとも一方の表面に、傷つき防止、反射防止、防眩及び指紋防止からなる群から選択される少なくとも一種の機能を付与するためのコーティング層をさらに有することが好ましい。コーティング層としては、例えば、特開2013−86273号公報に記載されている硬化被膜を用いることができる。
【0059】
コーティング層の厚さは、1〜100μmが好ましく、3〜80μmがより好ましく、5〜70μmがさらに好ましい。1μmよりも薄いと、機能の発現が困難であり、100μmよりも厚いと、コーティング層の割れが懸念される。
【0060】
必要に応じて、コーティング層の表面に、コート法、スパッタ法、真空蒸着法等により反射防止処理が施されてもよい。また、反射防止効果を付与の目的として、その片面又は両面に、別途作製した反射防止性のシートが貼合されてもよい。
【0061】
本発明の樹脂組成物から形成される層をA層、熱可塑性樹脂層をB層、コーティング層をC層と略記したとき、本発明の膜の層構成例としては、下記(1)〜(12)が挙げられる。ただし、コーティング層と膜の密着性や傷つき性を考慮すると、熱可塑性樹脂層が表層に有り、さらに60℃で相対湿度90%という高温高湿な環境下に暴露された際の形状変化の少なさを考慮すると、(3)、(4)、(10)又は(12)の構成が好ましく、(3)又は(10)の構成がより好ましい。
(1) A層
(2) A層/B層
(3) B層/A層/B層
(4) B層/A層/B層/A層/B層
(5) A層/C層
(6) C層/A層/C層
(7) A層/B層/C層
(8) C層/A層/B層/C層
(9) B層/A層/B層/C層
(10)C層/B層/A層/B層/C層
(11)B層/A層/B層/A層/B層/C層
(12)C層/B層/A層/B層/A層/B層/C層
【0062】
<透明導電シート>
上記本発明の膜の少なくとも片面に透明導電膜を形成して、透明導電シートを得ることができる。
【0063】
本発明の膜の表面に透明導電膜を形成させる方法としては、本発明の膜の表面に直接透明導電膜を形成させる方法でもよく、又は、予め透明導電膜が形成されたプラスチックスフィルムを本発明の膜の表面に積層することにより透明導電膜を形成する方法でもよい。
【0064】
予め透明導電膜が形成されたプラスチックフィルムのフィルム基材としては、透明なフィルムであって透明導電膜を形成することができる基材であればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアミド、これらの混合物又は積層物等を挙げることができる。また、透明導電膜を形成させる前に、表面硬さの改良、ニュートンリングの防止、帯電防止性の付与などを目的として、上記フィルムにコーティングを施しておくことは有効である。
【0065】
予め透明導電膜が形成されたフィルムを本発明の膜の表面に積層する方法は、気泡等がなく、均一で、透明なシートが得られる方法であればいかなる方法でもよい。常温、加熱、紫外線又は可視光線により硬化する接着剤を使用して積層する方法を用いてもよいし、透明な粘着テープにより貼り合わせてもよい。
【0066】
透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法等が知られており、必要とする膜厚に応じて、これらの方法を適宜用いることができる。
【0067】
スパッタリング法の場合、例えば、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、必要により、基板に直流、交流、高周波等のバイアスを印加してもよい。透明導電膜に使用する透明導電性の金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)が好適である。
【0068】
透明導電膜を形成する方法として、透明導電性被膜を形成することができる各種の導電性高分子を含むコーティング剤を塗布し、熱又は紫外線等の電離放射線を照射することにより硬化させることにより形成させる方法等も適用できる。導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が知られており、これらの導電性高分子を用いることができる。
【0069】
透明導電膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが、透明導電性の金属酸化物を使用する場合、通常50〜2000Å、好ましくは70〜000Åである。この範囲であれば導電性及び透明性の両方に優れる。
【0070】
透明導電シートの厚さは特に限定されるものではなく、ディスプレイの製品仕様の求めに応じた最適の厚さを選択することができる。
【0071】
<タッチセンサーパネル>
本発明の膜及び透明導電シートは、ディスプレイパネル面板、タッチスクリーン等の透明電極として好適に用いることができる。具体的には、本発明の膜をタッチスクリーン用ウインドウシートとして、透明導電シートを抵抗膜方式や静電容量方式のタッチスクリーンの電極基板として、それぞれ用いることができる。このタッチスクリーンを液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の前面に配置することでタッチスクリーン機能を有する外付型のタッチセンサーパネルが得られる。
【0072】
<表示装置>
本発明の膜は、液晶表示及び液晶表示装置以外フラットパネル表示装置に適用することができ、例えば、表示装置の最表面に配置する前面板として使用することができる。液晶表示装置以外のフラットパネル表示装置としては、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、SED方式平面型ディスプレイ、電子ペーパーなどが挙げられる。例えば、液晶表示装置に適用する場合、本発明の膜は、接着剤及び粘着剤などの光学粘接着剤を介して偏光板に積層することができる。接着剤又は粘着剤としては、適宜公知のものを使用すればよい。
【0073】
図2には、本発明の膜を適用した液晶表示装置の一例を断面模式図で示した。本発明の膜10は、光学粘接着剤を介して、偏光板11に積層することができ、この積層体は、液晶セル13の視認側に配置することができる。液晶セルの背面側には、通常、偏光板が配置される。液晶表示装置15は、このような部材から構成される。なお、図2は、液晶表示装置の一例であり、この構成に限られるものではない。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
実施例中、ビカット軟化温度、アルカリ金属の含有量、MFR、MVR、全光線透過率、ヘーズ、及びYI値は、以下の方法でそれぞれ測定した。
ビカット軟化温度は、JIS K 7206:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法」に規定のB50法に準拠して測定した。ビカット軟化温度は、ヒートディストーションテスター〔(株)安田精機製作所製の“148−6連型”〕で測定した。その際の試験片は、各原料を3mm厚にプレス成形して測定を行った。
アルカリ金属の含有量は、誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。
MFRは、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定した。ポリ(メタクリル酸メチル)系の材料については、温度230℃、荷重3.80kg(37.3N)で測定することが、このJISに規定されている。
MVRは、JIS K 7210に準拠している(株)東洋精機製作所製の“セミオートメルトインデックサ2A”で、1.2kg荷重下、300℃の条件で測定した。
全光線透過率及びヘーズは、JIS K 7361-1:1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」に準拠したヘーズ透過率計〔(株)村上色彩技術研究所製の“HR-100”〕で測定した。
YI値は、日本電色工業(株)製の“Spectrophotometer SQ2000”で測定した。
【0076】
(製造例1)
メタクリル酸メチル98.5質量部及びアクリル酸メチル1.5質量部を混合し、連鎖移動剤(オクチルメルカプタン)0.16質量部及び離型剤(ステアリルアルコール)0.1質量部を加えて単量体混合液を得た。また、メタクリル酸メチル100質量部に重合開始剤〔1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン〕0.036質量部を加えて開始剤混合液を得た。単量体混合液と開始剤混合液との流量比が8.8:1になるように完全混合型重合反応器に連続供給し、平均滞留時間20分、温度175℃で平均重合率54%まで重合し、部分重合物を得た。得られた部分重合物を200℃に加熱してベント付き脱揮押出機へ導き、240℃で未反応の単量体をベントから脱揮すると共に、脱揮後の重合体は溶融状態で押出し、水冷後、裁断してペレット状のメタクリル樹脂(i)を得た。
【0077】
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、以下に示す条件で熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルに対応する各ピーク面積を測定した。その結果、メタクリル樹脂(i)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位が97.5質量%であり、アクリル酸メチルに由来する構造単位が2.5質量%であった。
【0078】
(熱分解条件)
試料調製:メタクリル樹脂組成物を精秤(目安2〜3mg)し、樋状にした金属セルの中央部に入れ、金属セルを畳んで両端を軽くペンチで押さえて封入した。
熱分解装置:CURIE POINT PYROLYZER JHP-22(日本分析工業(株)製)
金属セル:Pyrofoil F590(日本分析工業(株)製)
恒温槽の設定温度:200℃
保温パイプの設定温度:250℃
熱分解温度:590℃
熱分解時間:5秒
【0079】
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
ガスクロマトグラフィー分析装置:GC−14B((株)島津製作所製)
検出方法:FID
カラム:7G 3.2m×3.1mmφ((株)島津製作所製)
充填剤:FAL−M((株)島津製作所製)
キャリアーガス:Air/N2/H2=50/100/50(kPa)、80ml/分
カラムの昇温条件:100℃で15分保持後、10℃/分で150℃まで昇温し、150℃で14分保持
INJ温度:200℃
DET温度:200℃
【0080】
上記熱分解条件でメタクリル樹脂組成物を熱分解させ、発生した分解生成物を上記ガスクロマトグラフィー分析条件で測定を行った時に検出されるメタクリル酸メチルに対応するピーク面積(a1)及びアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b1)を測定した。そして、これらピーク面積からピーク面積比A(=b1/a1)を求めた。一方、メタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸エステル単位の重量比がW0(既知)であるメタクリル樹脂の標準品を上記熱分解条件で熱分解させ、発生した分解生成物を上記ガスクロマトグラフィー分析条件で測定を行った時に検出されるメタクリル酸メチルに対応するピーク面積(a0)及びアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b0)を測定し、これらピーク面積からピーク面積比A0(=b0/a0)を求めた。そして、前記ピーク面積比A0と前記重量比W0とから、ファクターf(=W0/A0)を求めた。
前記ピーク面積比Aに前記ファクターfを乗じることにより、前記メタクリル樹脂組成物に含まれる共重合体におけるメタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸エステル単位の重量比Wを求め、該重量比Wから、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位の合計に対するメタクリル酸メチル単位の比率(質量%)と前記合計に対するアクリル酸エステル単位の比率(質量%)を算出した。
【0081】
(製造例2)
メタクリル酸メチルを95.0質量部、アクリル酸メチル5.0質量部、連鎖移動剤を0.08質量部に変更した以外は、製造例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂(ii)を得、構造単位の含有量を測定した。メタクリル樹脂(ii)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位が94.7質量%であり、アクリル酸メチルに由来する構造単位が5.3質量%であった。
【0082】
(製造例3)
メタクリル酸メチルを97.7質量部、アクリル酸メチル2.3質量部、連鎖移動剤を0.05質量部に変更した以外は、製造例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂(iii)を得、構造単位の含有量を測定した。メタクリル樹脂(iii)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位が97.0質量%であり、アクリル酸メチルに由来する構造単位が3.0質量%であった。
【0083】
実施例に用いた(メタ)アクリル樹脂と、その物性を表1に示す。メタクリル樹脂(i)〜(iii)は、上記製造例で得られたメタクリル樹脂であり、アルトグラス(登録商標) HT121は、熱可塑性樹脂層に使用したアクリル樹脂である。なお、表中「MA」はメタクリル樹脂中のアクリル酸メチルに由来する構造単位の含有割合を表す。
【0084】
【表1】
【0085】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。GPCの検量線の作成には、分子量分布が狭く分子量が既知の昭和電工(株)製のメタクリル樹脂を標準試薬として使用し、溶出時間と分子量から検量線を作成し、各樹脂組成物の重量平均分子量を測定した。具体的には、樹脂40mgをテトラヒドロフラン(THF)溶媒20mlに溶解させ、測定試料を作製した。測定装置には、東ソー(株)製のカラムである「TSKgel SuperHM−H」2本と、「SuperH2500」1本とを直列に並べて設置し、検出器にRI検出器を採用したものを用いた。測定された分子量分布曲線は、横軸の分子量の対数をとることにより、正規分布関数を用いてフィッティングを行い、下式の正規分布関数を用いてフィッティングを行った。
【0086】
実施例において、熱可塑性樹脂層の形成に用いた(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂には、デンカ(株)製の“レジスファイ(登録商標) R-200”を使用した。この樹脂は、ビカット軟化温度が132℃であり、MFRが1.8g/10分であった。
【0087】
実施例に用いたフッ化ビニリデン樹脂及びその物性を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
フッ化ビニリデンの重量平均分子量(Mw)は、GPCで測定した。GPCの検量線の作成には、ポリスチレンを標準試薬として使用し、溶出時間と分子量から検量線を作成し、各樹脂の重量平均分子量を測定した。具体的には、樹脂40mgをN−メチルピロリドン(NMP)溶媒20mlに溶解させ、測定試料を作製した。測定装置には、東ソー(株)製のカラムである「TSKgel SuperHM-H」2本と、「SuperH2500」1本とを直列に並べて設置し、検出器にRI検出器を採用したものを用いた。
【0090】
実施例において、熱可塑性樹脂層に用いたポリカーボネート樹脂には、以下のものを使用した。いずれも住化スタイロンポリカーボネート(株)製の製品である。
カリバー 301-15:MVR10cm3/10分、及びMw38,500の樹脂。
カリバー 301-22:MVR22cm3/10分、及びMw35,000の樹脂。
カリバー 301-30:MVR30cm3/10分、及びMw32,200の樹脂。
カリバー SD2201W:MVR118cm3/10分、及びMw13,600の樹脂。
【0091】
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。GPCの検量線の作成には、分子量分布が狭く分子量が既知の昭和電工(株)製のメタクリル樹脂を標準試薬として使用し、溶出時間と分子量から検量線を作成し、各樹脂組成物の重量平均分子量を測定した。具体的には、樹脂40mgをテトラヒドロフラン(THF)溶媒20mlに溶解させ、測定試料を作製した。測定装置には、東ソー(株)製のカラムである「TSKgel SuperHM-H」2本と、「SuperH2500」1本とを直列に並べて設置し、検出器にRI検出器を採用したものを用いた。
【0092】
(製造例4)
ブルーイング剤をマスターバッチ(MB)化するために、(メタ)アクリル樹脂と、着色剤とを表3の割合でドライブレンドし、40mmφ一軸押出機(田辺プラスチック機械(株)製)で、設定温度250〜260℃で溶融混合させ、着色されたマスターバッチペレットを得た。着色剤としては、ブルーイング剤(住化ケムテックス(株)製の“Sumiplast(商標登録)Violet B”)を使用した。
【0093】
【表3】
【0094】
(実施例1〜5、及び比較例1〜6)
本発明の樹脂組成物から形成される層をA層、熱可塑性樹脂層をB層としたとき、B層/A層/B層で表される構成の膜を次のようにして製造した。
まず、A層の形成材料として、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂と製造例1で作製したマスターバッチペレットとを、表4に示す組合せ及び割合で混合し、本発明の樹脂組成物を得た。次いで、前記樹脂組成物を65mmφ一軸押出機1及び3〔東芝機械(株)製〕で、B層の形成材料としてメタクリル樹脂(i)100質量部を45mmφ一軸押出機2〔日立造船(株)製〕で、それぞれ溶融させた。次いで、これらを設定温度250〜270℃のフィードブロック4〔日立造船(株)製〕を介して上記のB層/A層/B層で表される構成となるように積層し、マルチマニホールド型ダイス5〔日立造船(株)製、2種3層分配〕から押し出して、フィルム状の溶融樹脂6を得た。そして、得られたフィルム状の溶融樹脂6を、対向配置した第1冷却ロール7と第2冷却ロール8との間に挟み込み、次いで第2ロール8に巻き掛けながら第2ロール8と第3ロール9との間に挟み込んだ後、第3冷却ロール9に巻き掛けて、成形・冷却し、各層の厚さが表4に示す厚さである3層構成の膜10を得た。得られた膜10は、いずれも総膜厚は800μmであり、目視で観察したところ無色透明であった。
【0095】
【表4】
【0096】
A層に含まれるアルカリ金属(Na+K)の量を表1〜4から求めた計算値を表5に示す。
【0097】
それぞれの膜について、JIS K 6911:1995に準拠し、precision LCR meter HP4284A(アジレント・テクノロジー(株)製)で誘電率を測定した結果を表5に示す。誘電率は、試験サンプル(膜)を23℃で相対湿度50%の環境下に24時間静置し、同じ環境下において自動平衡ブリッジ法で測定した、3Vで100kHzにおける数値である。
【0098】
また、得られた膜を60℃及び絶対湿度90%の恒温恒湿オーブンに120時間放置することにより耐久試験を行った。耐久試験前後の膜について、JIS K7136:2000に準拠して測定された曇価(Haze)及びJIS K7361-:19971に準拠して測定された全光線透過率(Tt)を、それぞれ表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
(実施例6〜8)
実施例4において、B層の組成を表6に記載された割合の樹脂組成物とする以外は実施例4と同様にして膜を得た。また、得られた膜について、実施例4と同様にして測定した誘電率及び耐久試験の結果を表7に示す。
【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
(比較例7及び8)
フッ化ビニリデン樹脂として樹脂4のペレットとを、(メタ)アクリル樹脂としてメタクリル樹脂(iii)のペレットを、それぞれ表8に記載された割合で均一に混合した後、20mm単軸押出機(ラボプラストミル、(株)東洋精機製作所製)を用いて250℃で混練し、ブレンドペレットを得た。このペレットを用いて220℃でプレス成形により厚さ800μmの膜を得た。また、得られた膜について、実施例1と同様にして測定した耐久試験の結果も表8に示す。
【0104】
【表8】
【0105】
(実施例9及び比較例9)
フッ化ビニリデン樹脂として樹脂1のペレットを、(メタ)アクリル樹脂としてメタクリル樹脂(i)のペレットを、それぞれ表9に記載された割合で均一に混合した後、20mm単軸押出機(ラボプラストミル、(株)東洋精機製作所製)を用いて250℃で混練し、ブレンドペレットを得た。このペレットを用いて220℃でプレス成形により厚さ800μmの膜を得た。また、得られた膜について、実施例1と同様にして測定した誘電率及び耐久試験の結果も表9に示す。
【0106】
【表9】
【0107】
(実施例10)
実施例1〜9で得られた膜を前面板(ディスプレイ用ウインドウシート)として、使用することにより、図2の断面図に示す構成の表示装置を作ることができる。
【0108】
(実施例11〜18)
樹脂組成物から形成される層をA層、熱可塑性樹脂層をB層としたとき、B層/A層/B層で表される構成の膜を次のようにして製造した。
まず、A層の形成材料として、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂と製造例1で作製したマスターバッチペレットを表10に示す組合せと割合で混合し、本発明の樹脂組成物を得た。樹脂組成物が違う以外、加工方法は実施例1〜5と同様の方法で行った。
【0109】
【表10】
【0110】
得られた膜のA層に含まれるアルカリ金属(Na+K)の量を表1及び3から求めた計算値及び上記の方法と同じ方法で測定した誘電率を表11に示した。また、得られた膜を60℃で絶対湿度90%の恒温恒湿オーブンに120時間放置した耐久試験の結果を表11に示した。
【0111】
【表11】
【0112】
(実施例19〜22)
B層にポリカーボネート樹脂を用いた以外は、実施例1〜5と同様の方法で膜を作製した。A層及びB層における樹脂の配合組成及び割合を、表12に示す。
【0113】
【表12】
【0114】
得られた膜の、A層に含まれるアルカリ金属(Na+K)の量を表1及び3から求めた計算値及び上記の方法と同じ方法で測定した誘電率を表13に示した。また、得られた膜を60℃で絶対湿度90%の恒温恒湿オーブンに120時間放置した耐久試験の結果を表13に示した。
【0115】
【表13】
【0116】
さらに、得られた膜について、落球強度を測定した結果を表14に示す。落球強度は、25gの鉄球を所定の高さより落とし、膜が割れる高さを測定した。
【0117】
【表14】
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の樹脂組成物から形成される層及びこれを含む本発明の膜は、高い誘電率を有しつつ、高温高湿な環境下で長時間使用しても透明性を維持できるので、スマートフォン、携帯ゲーム機、オーディオプレーヤー及びタブレット端末等の表示装置における前面板として有用である。
【符号の説明】
【0119】
1 一軸押出機((メタ)アクリル樹脂の溶融物を押し出す)
2 一軸押出機(本発明の樹脂組成物の溶融物を押し出す)
3 一軸押出機((メタ)アクリル樹脂の溶融物を押し出す)
4 フィードブロック
5 マルチマニホールド型ダイス
6 フィルム状の溶融樹脂
7 第1冷却ロール
8 第2冷却ロール
9 第3冷却ロール
10 膜
11 偏光板
12 光学粘着層
13 液晶セル
15 液晶表示装置
図1
図2