【実施例】
【0050】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1:光触媒半導体素子の製造例1(GaN−1)〕
(1)III −V族化合物の成長
100kPaでサファイアよりなる基板を水素ガス中にて1052℃で10分間アニールし、その後基板の温度を545℃まで下げ、この基板の(0001)+c面上にV族原子とIII 族原子との割合(V/III 比)が約5000程度となるようトリメチルガリウム(TMGa)およびアンモニア(NH
3 )と水素ガスをキャリヤガスとして継続的に供給し、10分間で窒化ガリウム(GaN)よりなるバッファ層を成長させた。
次に、基板温度を1020℃まで上昇させ、バッファ層の表面上にV/III 比が約3800程度となるようトリメチルガリウム(TMGa)およびアンモニア(NH
3 )と水素ガスをキャリヤガスとして継続的に供給すると共に10ppmの水素希釈シラン(SiH
4 )を5sccmの流量で継続的に供給し、20分間、ケイ素原子(Si)をドープした窒化ガリウム(GaN)よりなる厚み1μmのn型GaN層を成長させた。
その後20kPaまで減圧し、1020℃の状態でV/III 比が約3800程度となるようトリメチルガリウム(TMGa)およびアンモニア(NH
3 )と水素ガスをキャリヤガスとして継続的に供給すると共に10ppmの水素希釈シラン(SiH
4 )を9sccmの流量で継続的に供給し、40分間、ケイ素原子(Si)をドープした窒化ガリウム(GaN)よりなる厚み2μmのn型GaN層を成長させた。
その後、n型GaN層上にV/III 比が約3800程度となるようトリメチルガリウム(TMGa)およびアンモニア(NH
3 )と水素ガスをキャリヤガスとして継続的に供給し、2分間、アンドープ窒化物ガリウムよりなる厚み100nmの光吸収層を成長させた。
以上のように得られたものをIII −V族窒化物半導体本体〔GaN〕とする。
【0052】
(2)助触媒の担持
酸化銅(CuO)微粒子と有機溶剤からなる助触媒塗布液を調製した。
一方、上記のIII −V族窒化物半導体本体〔GaN〕の表面を、有機洗浄によって洗浄した後、その表面に、上記の助触媒塗布液を滴下し、スピンコート法によって2000rpmで20秒間コートし、大気雰囲気において500℃で20分間アニールすることにより、CuOよりなる助触媒をIII −V族窒化物半導体本体〔GaN〕の表面に分散状態で担持させた。
このIII −V族窒化物半導体本体〔GaN〕の表面のSEM写真を
図4に示す。
【0053】
以上のように得られた光触媒半導体素子を本発明の光触媒半導体素子〔GaN−1〕とする。
この光触媒半導体素子〔GaN−1〕の表面のCuOよりなる助触媒による被覆率は、1.4面積%であった。
また、光触媒半導体素子〔GaN−1〕のキャリヤ移動層を構成するn型GaNのキャリヤ密度は、別個に単層を成長させたキャリヤ測定用のものをvan der Pauw法により測定したところ、2×10
18cm
-3であった。
この光触媒半導体素子〔GaN−1〕の表面は鏡面状であった。
【0054】
〔実施例2:光触媒半導体素子の製造例2(GaN−2)〕
実施例1:光触媒半導体素子の製造例1の(2)助触媒の担持工程において、助触媒塗布液における酸化銅(CuO)の濃度を変更したことの他は同様にして、表面のCuOよりなる助触媒による被覆率が2.0面積%である光触媒半導体素子〔GaN−2〕を作製した。
この光触媒半導体素子〔GaN−2〕の表面は鏡面状であった。
【0055】
〔実施例3:光触媒半導体素子の製造例3(GaN−3)〕
実施例1:光触媒半導体素子の製造例1の(2)助触媒の担持工程において、助触媒塗布液における酸化銅(CuO)の濃度を変更したことの他は同様にして、表面のCuOよりなる助触媒による被覆率が4.3面積%である光触媒半導体素子〔GaN−3〕を作製した。
この光触媒半導体素子〔GaN−3〕の表面は鏡面状であった。
【0056】
〔比較例1:光触媒半導体素子の製造例4(GaN−4)〕
実施例1:光触媒半導体素子の製造例1の(2)助触媒の担持工程において、酸化銅(CuO)微粒子の代わりに酸化ニッケル(NiO)微粒子を含有する助触媒塗布液を用いたことの他は同様にして、表面のNiOよりなる助触媒による被覆率が1.2面積%である光触媒半導体素子〔GaN−4〕を作製した。
この光触媒半導体素子〔GaN−4〕の表面は鏡面状であった。
【0057】
〔実施例4:光触媒半導体素子の製造例5(InGaN−1)〕
(1)III −V族化合物の成長
100kPaでサファイアよりなる基板を水素ガス中にて1052℃で10分間アニールし、その後基板の温度を545℃まで下げ、この基板の(0001)+c面上にV族原子とIII 族原子との割合(V/III 比)が約5000程度となるようトリメチルガリウム(TMGa)およびアンモニア(NH
3 )と水素ガスをキャリヤガスとして継続的に供給し、10分間で窒化ガリウム(GaN)よりなるバッファ層を成長させた。
次に、基板温度を1020℃まで上昇させ、バッファ層の表面上にV/III 比が約3800程度となるようトリメチルガリウム(TMGa)およびアンモニア(NH
3 )と水素ガスをキャリヤガスとして継続的に供給すると共に10ppmの水素希釈シラン(SiH
4 )を5sccmの流量で継続的に供給し、20分間、ケイ素原子(Si)をドープした窒化ガリウム(GaN)よりなる厚み1μmのn型GaN層を成長させた。
その後20kPaまで減圧し、1020℃の状態でV/III 比が約3800程度となるようトリメチルガリウム(TMGa)およびアンモニア(NH
3 )と水素ガスをキャリヤガスとして継続的に供給すると共に10ppmの水素希釈シラン(SiH
4 )を9sccmの流量で継続的に供給し、40分間、ケイ素原子(Si)をドープした窒化ガリウム(GaN)よりなる厚み2μmのn型GaN層を成長させた。
その後、基板温度を767℃まで降下させ、n型GaN層上に下記のように厚みが各々5nmの窒化インジウムガリウム(InGaN)よりなる層および窒化ガリウム(GaN)よりなる層のペアを10ペア繰り返し作製し、10ペア目の窒化ガリウム(GaN)よりなる層上に窒化インジウムガリウム(InGaN)よりなる層を作製した。
具体的には、窒化インジウムガリウム(InGaN)層は、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、アンモニア(NH
3 )を窒素ガスをキャリヤガスとして継続的に2分間供給することにより成長させた。また、窒化ガリウム(GaN)層は、トリメチルガリウム(TMGa)、アンモニア(NH
3 )を窒素ガスをキャリヤガスとして継続的に2分間供給することにより成長させた。
以上のように得られたものをIII −V族窒化物半導体本体〔InGaN〕とする。
【0058】
(2)助触媒の担持
酸化銅(CuO)微粒子と有機溶剤からなる助触媒塗布液を調製した。
一方、上記のIII −V族窒化物半導体本体〔InGaN〕の表面を、有機洗浄によって洗浄した後、その表面に、上記の助触媒塗布液を滴下し、スピンコート法によって2000rpmで20秒間コートし、大気雰囲気において500℃で20分間アニールすることにより、CuOよりなる助触媒をIII −V族窒化物半導体本体〔InGaN〕の表面に分散状態で担持させた。
【0059】
以上のように得られた光触媒半導体素子を本発明の光触媒半導体素子〔InGaN−1〕とする。
この光触媒半導体素子〔InGaN−1〕の表面のCuOよりなる助触媒による被覆率は、2.1面積%であった。
また、光触媒半導体素子〔InGaN−1〕のキャリヤ移動層を構成するn型GaNのキャリヤ密度は、別個に単層を成長させたキャリヤ測定用のものをvan der Pauw法により測定したところ、1×10
18cm
-3であった。
この光触媒半導体素子〔InGaN−1〕の表面は鏡面状であった。
【0060】
〔実施例5:光触媒半導体素子の製造例6(InGaN−2)〕
実施例4:光触媒半導体素子の製造例5の(2)助触媒の担持工程において、助触媒塗布液における酸化銅(CuO)の濃度を変更したことの他は同様にして、表面のCuOよりなる助触媒による被覆率が1.2面積%である光触媒半導体素子〔InGaN−2〕を作製した。
この光触媒半導体素子〔InGaN−2〕の表面は鏡面状であった。
【0061】
〔実施例6:光触媒半導体素子の製造例7(InGaN−3)〕
実施例4:光触媒半導体素子の製造例5の(2)助触媒の担持工程において、助触媒塗布液における酸化銅(CuO)の濃度を変更したことの他は同様にして、表面のCuOよりなる助触媒による被覆率が5.2面積%である光触媒半導体素子〔InGaN−3〕を作製した。
この光触媒半導体素子〔InGaN−3〕の表面は鏡面状であった。
【0062】
〔比較例2:光触媒半導体素子の製造例8(InGaN−4)〕
実施例4:光触媒半導体素子の製造例5の(2)助触媒の担持工程において、酸化銅(CuO)微粒子の代わりに酸化ニッケル(NiO)微粒子を含有する助触媒塗布液を用いたことの他は同様にして、表面のNiOよりなる助触媒による被覆率が1.2面積%である光触媒半導体素子〔InGaN−4〕を作製した。
この光触媒半導体素子〔InGaN−4〕の表面は鏡面状であった。
【0063】
〔光触媒酸化還元反応装置の製造例1〜8〕
図3に従って、光触媒酸化還元反応装置を製造した。
具体的には、上記の光触媒半導体素子〔GaN−1〕〜〔GaN−4〕、〔InGaN−1〕〜〔InGaN−4〕、の各々について、触媒反応面を構成する面の外周部分に塩素プラズマでキャリヤ移動層まで露出させ、チタンおよび金を積層させた集電用部材を設けてこれを陽極として用い、導電ワイヤにより陰極に電気的に接続し、陰極としては白金電極を用い、電解液として1mol/LのNaOH水溶液を用い、光触媒酸化還元反応装置〔GaN−1〕〜〔GaN−4〕、〔InGaN−1〕〜〔InGaN−4〕を製造した。
触媒反応面を構成する面の中央部分における面積1cm
2 の領域に300Wのキセノンランプの光源より光(照射エネルギー密度:100mW/cm
2 )が照射される構成とした。
【0064】
[光電気化学反応テスト]
上記の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−1〕〜〔GaN−4〕、〔InGaN−1〕〜〔InGaN−4〕のそれぞれを用いて、バイアス電圧を印加しない状態(ゼロバイアス)で光誘起電流密度(mA/cm
2 )と水素ガスの積算の発生量(mL/cm
2 )とを測定した。結果をそれぞれ
図5〜
図12に示す。
【0065】
光触媒酸化還元反応装置〔GaN−1〕〜〔GaN−4〕、〔InGaN−1〕〜〔InGaN−4〕のいずれにおいても、光電気化学反応テスト後(3時間後)の触媒反応面は鏡面のままであってエッチングは観測されなかった。
【0066】
図5〜
図8において、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−1〕に係るものを〔GaN−1〕、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−2〕に係るものを〔GaN−2〕、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−3〕に係るものを〔GaN−3〕、比較用の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−4〕に係るものを〔GaN−4〕として示した。
また、
図9〜
図12において、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−1〕に係るものを〔InGaN−1〕、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−2〕に係るものを〔InGaN−2〕、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−3〕に係るものを〔InGaN−3〕、比較用の光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−4〕に係るものを〔InGaN−4〕として示した。
【0067】
図5および
図6から明らかなように、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−1〕においては、比較用の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−4〕に比較して大きい光誘起電流密度が得られ、また、高いエネルギー変換効率が得られた。具体的には、比較用の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−4〕におけるエネルギー変換効率が3.5%であるのに対して、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔GaN−1〕におけるエネルギー変換効率はが4.4%であった。
同様に、
図9および
図10から明らかなように、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−1〕においては、比較用の光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−4〕に比較して大きい光誘起電流密度が得られ、また、高いエネルギー変換効率が得られた。具体的には、比較用の光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−4〕におけるエネルギー変換効率が0.64%であるのに対して、本発明の光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−1〕におけるエネルギー変換効率はが0.87%であった。
【0068】
また、
図7および
図8から明らかなように、助触媒による光吸収層の表面の被覆率が0.4〜2面積%の範囲にある光触媒酸化還元反応装置〔GaN−1〕、〔GaN−2〕においては、大きな光誘起電流密度が得られ、また、高いエネルギー変換効率が得られた。
同様に、
図11および
図12から明らかなように、助触媒による光吸収層の表面の被覆率が0.7〜4面積%の範囲にある光触媒酸化還元反応装置〔InGaN−1〕、〔InGaN−2〕においては、大きな光誘起電流密度が得られ、また、高いエネルギー変換効率が得られた。