(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338134
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】炭化ケイ素縦型MOSFET及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/12 20060101AFI20180528BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20180528BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
H01L29/78 652T
H01L29/78 652H
H01L29/78 658E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-81429(P2012-81429)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-211447(P2013-211447A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月19日
【審判番号】不服2017-2167(P2017-2167/J1)
【審判請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】岩室 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
(72)【発明者】
【氏名】星 保幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 祐一
【合議体】
【審判長】
飯田 清司
【審判官】
須藤 竜也
【審判官】
大嶋 洋一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−313393(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0185593(US,A1)
【文献】
特開2011−23757(JP,A)
【文献】
特開2009−64970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L29/78,H01L21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなり、第1導電型の半導体基板(1)と、
前記半導体基板(1)上に形成された、第1導電型で前記半導体基板(1)よりも低濃度の第1の半導体層(2)と、
前記第1の半導体層(2)上に選択的に形成された、高濃度の第2導電型である第2の半導体層(3)と、
前記第1の半導体層(2)及び前記第2の半導体層(3)上に、第1導電型で前記第1の半導体層(2)と同一の濃度で形成された第3の半導体層(21)と、
前記第3の半導体層(21)の表面に、前記第2の半導体層(3)と同一の位置上に選択的に形成された、前記第2の半導体層(3)と同一膜厚の高濃度の第2導電型である第4の半導体層(31)と、
前記第4の半導体層(31)の表面に形成された第2導電型で低濃度のベース層(4)と、
当該ベース層(4)の表面層に選択的に形成された第2導電型のコンタクト領域(12)及び第1導電型のソース領域(5)と、
表面から前記ベース層(4)を貫通して、前記第3の半導体層(21)に達するように形成された第1導電型のウェル領域(6)と、
前記ソース領域(5)と前記ウェル領域(6)とに挟まれた、前記ベース層(4)の表面露出部上の少なくとも一部にゲート絶縁膜(8)を介して設けられたゲート電極層(9)と、
前記ソース領域(5)と前記コンタクト領域(12)との表面に共通に接触するソース電極(10)と、
前記半導体基板(1)の裏面に設けられたドレイン電極(11)とからなる縦型MOSFET。
【請求項2】
前記第2の半導体層(3)及び前記第3の半導体層(21)が、交互に複数形成された請求項1に記載の縦型MOSFET。
【請求項3】
炭化珪素からなり、第1導電型の半導体基板(1)上に、第1導電型で前記半導体基板(1)よりも低濃度の第1の半導体層(2)をエピタキシャル成長により形成する第1の工程と、
前記第1の半導体層(2)上に、高濃度の第2導電型である第2の半導体層(3)を、マスクを用いたイオン注入により選択的に形成する第2の工程と、
前記第1の半導体層(2)及び前記第2の半導体層(3)上に、前記第1の半導体層(2)と同一の濃度の第3の半導体層(21)をエピタキシャル成長により形成する第3の工程と、
前記第3の半導体層(21)上に、前記第2の工程で形成した前記第2の半導体層(3)と同一の場所において、高濃度の第2導電型である、前記第2の半導体層(3)と同一膜厚の第4の半導体層(31)を、マスクを用いたイオン注入により選択的に形成する第4の工程と、
前記第4の半導体層(31)の表面上に、第2導電型で低濃度のベース層(4)をエピタキシャル成長により形成する第5の工程と、
前記ベース層(4)上に、前記第4の半導体層表面に直接達するよう、マスクを用いたイオン注入により第1導電型のウェル領域(6)を選択的に形成する第6の工程と、
前記ベース層(4)上に、イオン注入により、第2導電型のコンタクト領域(12)と、その内側に第1導電型のソース領域(5)を形成するとともに、前記ソース領域(5)と前記ウェル領域(6)とに挟まれた前記ベース層(4)の表面露出部の一部に、ゲート絶縁膜(8)を介して設けられたゲート電極層(9)を形成する第7の工程と、
前記ソース領域(5)と前記コンタクト領域(12)に共通して接触するようソース電極(10)を形成するとともに、前記半導体基板(1)の裏面にドレイン電極(11)を形成する第8の工程とからなる縦型MOSFETの製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程の後に、再び前記第2の工程を行い、前記第3の工程を行う工程を、少なくとも1回繰り返すことを特徴とする請求項3に記載の縦型MOSFETの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型MOSFET及びその製造方法に関し、特に、素子耐圧向上とオン抵抗低減の両立を実現する縦型MOSFETの構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(以後、「SiC」ともいう。)によるスイッチングデバイスであるNチャネルのMOSFETは、一例として、つぎのような手順で製造される。なお、この例では、第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とし、高濃度を+(プラス)、これに比べて低濃度を無印で示している。
(1)高濃度のn
+型SiC基板の表面に、低濃度のn型SiC層(n
-耐圧領域 ドリフト層)がエピタキシャル成長により形成され、そのn型SiC層の表面に、さらに複数のp
+型領域が選択的に形成される。
(2)各p
+型領域の表面には、n
+型ソース領域とp型コンタクト領域が複数形成され、n
+型ソース領域とp型コンタクト領域との表面にソース電極が形成される。
(3)n
+型ソース領域の間のp型コンタクト領域と、n型SiC層表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極が形成され、また、n
+型SiC基板の裏面側にはドレイン電極が形成される。
【0003】
こうしたNチャネルのSiC―MOSFETは、高耐圧であることが知られているが、下記特許文献1には、こうしたNチャネルのSiC―MOSFETのオン抵抗を低減するための製造方法が提案されている。
第1図は、この先行技術における炭化ケイ素縦型MOSFETの単位セルを説明するための模式断面図である。
【0004】
第1図において、窒素がドーピングされた(0001)面を有する高濃度n
+型基板a表面上には、たとえば、窒素がドーピングされた、基板aより低濃度のn型ドリフト層bが堆積されている。この低濃度n型ドリフト層bの表面上には、アルミニウムがドーピングされた高濃度p
+型層cが堆積され、その上面には、アルミニウムがドーピングされた、p
+型層cより低濃度のp型層dが堆積されている。
【0005】
このp型層dの表面部分には、たとえば、選択的にリンがドーピングされた高濃度n
+型ソース領域eが形成されており、高濃度p
+型層cには、選択的に形成された切欠き部からなる第1の領域が設けられ、また、低濃度p型層dには、切欠き部より幅の広い切欠き部からなる第2の領域が形成されている。
【0006】
第1及び第2の領域には、窒素がドーピングされた、低濃度n型ベース領域fがn型ドリフト層bに直接接して設けられており、低濃度p型層dにおける幅の広い第2の領域は、チャネル抵抗成分が小さくなり、炭化ケイ素半導体装置のオン抵抗を低減することができる。
n型ベース領域fと高濃度n
+型ソース領域eの中間部分には、高濃度p
+型層cの表面層に低濃度ベース領域gが形成され、その上面及びn型ベース領域fの表面上には、ゲート絶縁膜hを介してゲート電極iが設けられており、ゲート電極i上には、層間絶縁膜jを介して、高濃度n
+型ソース領域eと低濃度p型層dとのそれぞれの表面に低抵抗接続されたソース電極kが形成されている。
なお、pはドレイン電極である。
【0007】
このように、低濃度n型ドリフト層bの一部の部分mが表面に露出しており、高濃度p
+型層cが、この低濃度n型ドリフト層bに直接接して設けられており、低濃度n型ドリフト層bの表面すべてが高濃度p
+型層cで覆われることなく、高濃度p
+型層cが、n型不純物イオンを注入して低濃度n型ベース領域fを形成する領域を除いて、すべて低濃度のp型層dで構成されているので、n型不純物イオン注入を行った後、n型ベース領域fのn型ドリフト層bと接する部分mを高濃度にでき、オン抵抗を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−23757号公報
【特許文献2】特開2009−59949号公報
【特許文献3】特開2007−115791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の先行技術により、n型ベース領域fのn型ドリフト層bと接する部分mを高濃度にでき、オン抵抗を低減することが可能となるが、一般に、高濃度n
+型基板aより低濃度のn型SiC層(n型耐圧領域)であるドリフト層bは、ソース・ドレイン電極間に電流が流れる際、ドリフト層bでの電位降下が大きく、その結果電流導通時の抵抗が大きくなってしまう。
これを防止するため、ドリフト層bの不純物濃度を上げると、低濃度p型層mと低濃度n型ドリフト層bとの接合部分から広がる空乏層が不十分となり、局所的なブレークダウンが発生し、耐圧が低下する。
【0010】
このように、SiC−MOSFETにおいては、ドリフト層b自体が、さらなる素子耐圧向上とオン抵抗低減の両立を阻む要因となっており、素子耐圧を確保した上で、さらなるオン抵抗の低減を実現するため、ドリフト層bの改善が求められている。
【0011】
素子耐圧の向上とオン抵抗の低減を両立させるため、上記特許文献2には、LDMOSトランジスタ(ラテラル二重拡散MOSトランジスタ)のn型拡散領域にp型拡散領域を形成し、ドレイン側のゲートエッジ周辺の領域の電界集中を緩和することが記載されている。また上記特許文献3には、横側MOSFETのn型ドレインドリフト層に、p型埋め込み領域を形成し、高耐圧化、低オン抵抗化を図ることが記載されている。
しかし、これらはいずれも、LDMOSトランジスタ、横側MOSFETを前提としたもので、そのままでは、炭化ケイ素縦型MOSFETに適用できず、素子耐圧を確保した上で、さらなるオン抵抗の低減を実現することはできない。
【0012】
すなわち、縦型素子の場合電流が縦方向に流れるため、p型埋め込み領域と垂直方向に流れる電流を妨げないように、高精度な前記p型領域同志の合わせ精度が必要となる。
これに対し横型素子は、p型埋め込み領域と平行に電流が流れるため高度な合わせ精度は全く必要ない。また横型素子の場合、素子内を流れる電流は表面に集中して流れるため、p型埋め込み層を適用してことで達成されるn型層の高濃度化、低オン抵抗の効果が、電流が流れる表面層のみに限られるが、縦型素子の場合は電流が素子全体に均一に流れる構造であるため、p型埋め込み層の適用によるn層の高濃度層の効果が素子全体に影響するため、低オン抵抗化の効果が横型素子に比べ格段に大きくなる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、炭化ケイ素縦型MOSFETのドリフト層に、高濃度n
+型ソース領域と同一の位置に、高濃度p
+型層を中間層として形成することにより、ドリフト層の不純物濃度を上げても、n型耐圧領域であるドリフト層と高濃度p
+型層との接合面に空乏層を発生させ、その両端に印加される電圧がドレイン電極の電圧を増加させても変化しないことを利用して、素子耐圧向上とオン抵抗低減の両立を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成するため、本発明の縦型MOSFETにおいては、次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明の縦型MOSFETは、
(1)炭化珪素からなり、第1導電型の半導体基板(1)と、前記半導体基板(1)上に形成された、第1導電型で前記半導体基板(1)よりも低濃度の第1の半導体層(2)と、前記第1の半導体層(2)上に選択的に形成された、高濃度の第2導電型である第2の半導体層(3)と、前記第1の半導体層(2)及び前記第2の半導体層(3)上に、第1導電型で前記第1の半導体層(2)と同一の濃度で形成された第3の半導体層(21)と、前記第3の半導体層(21)の表面に、前記第2の半導体層(3)と同一の位置上に選択的に形成された、前記第2の半導体層(3)と同一膜厚の高濃度の第2導電型である第4の半導体層(31)と、前記第4の半導体層(31)の表面に形成された第2導電型で低濃度のベース層(4)と、当該ベース層(4)の表面層に選択的に形成された第2導電型のコンタクト領域(12)及び第1導電型のソース領域(5)と、
表面から前記ベース層(4)を貫通して、前記第3の半導体層(21)に達するように形成された第1導電型のウェル領域(6)と、前記ソース領域(5)と前記ウェル領域(6)とに挟まれた、前記ベース層(4)の表面露出部上の少なくとも一部にゲート絶縁膜(8)を介して設けられたゲート電極層(9)と、前記
ソース領域(5)と前記コンタクト領域(12)の表面に共通に接触するソース電極(10)と、前記半導体基板(1)の裏面に設けられたドレイン電極(11)と構成される。
【0015】
(2)上記の縦型MOSFETにおいて、前記第2の半導体層(3)及び前記第3の半導体層(21)を交互に複数形成した。
【0016】
また、上記の縦型MOSFETを効率よく製造するため、本発明の縦型MOSFETの製造方法は、次のような工程から構成した。すなわち、本発明の縦型MOSFETの製造方法は、
(3)炭化珪素からなり、第1導電型の半導体基板(1)上に、第1導電型で前記半導体基板(1)よりも低濃度の第1の半導体層(2)をエピタキシャル成長により形成する第1の工程と、前記第1の半導体層(2)上に、高濃度の第2導電型である第2の半導体層(3)を、マスクを用いたイオン注入により選択的に形成する第2の工程と、前記第1の半導体層(2)及び前記第2の半導体層(3)上に、前記第1の半導体層(2)と同一の濃度の第3の半導体層(21)をエピタキシャル成長により形成する第3の工程と、前記第3の半導体層(21)上に、前記第2の工程で形成した前記第2の半導体層(3)と同一の場所において、高濃度の第2導電型である、前記第2の半導体層(3)と同一膜厚の第4の半導体層(31)を、マスクを用いたイオン注入により選択的に形成する第4の工程と、前記第4の半導体層(31)の表面上に、第2導電型で低濃度のベース層(4)をエピタキシャル成長により形成する第5の工程と、前記ベース層(4)上に、前記第4の半導体層表面に直接達するよう、マスクを用いたイオン注入により第1導電型のウェル領域
(6)を選択的に形成する第6の工程と、前記ベース層(4)上に、イオン注入により、第2導電型のコンタクト領域(12)と、その内側に第1導電型のソース領域(5)を形成するとともに、前記ソース領域(5)と前記ウェル
領域(6)とに挟まれた前記ベース層(4)の表面露出部の一部に、ゲート絶縁膜(8)を介して設けられたゲート電極層(9)を形成する第7の工程と、前記ソース領域(5)と前記コンタクト領域(12)に共通して接触するようソース電極(
10)を形成するとともに、前記半導体基板(1)の裏面にドレイン電極(11)を形成する第8の工程とから構成する。
【0017】
(4)上記の縦型MOSFETの製造方法において、前記第3の工程の後に、再び前記第2の工程を行い、前記第3の工程を行う工程を、少なくとも1回繰り返すようにした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ソース電極とドレイン電極との間に高電圧が印加された場合、第2の半導体層ならびに第4の半導体層が起点となって、横方向にも空乏層を広げることができる。
これにより、半導体層2の濃度を従来MOSFETよりも高く設定しても、空乏層が伸びやすいため、高耐圧が実現できるので、高耐圧特性と半導体層2の濃度を高くしたことによる低オン抵抗特性が両立できること可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】実施例における第1の工程により形成される構造を示す図
【
図3】実施例における第2の工程により形成される構造を示す図
【
図4】実施例における第3の工程により形成される構造を示す図
【
図5】実施例における第4の工程により形成される構造を示す図
【
図6】実施例における第5の工程により形成される構造を示す図
【
図7】実施例における第6の工程により形成される構造を示す図
【
図8】実施例における第7の工程により形成される構造を示す図
【
図9】実施例における第8の工程終了後に作製された本発明の縦型MOSFETの構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0021】
本実施例による、スイッチングデバイスであるSiC−NチャネルのMOSFETの製造の手順は、次のとおりである。
この実施例では、第1の導電型をN型、第2の導電型をP型とし、高濃度を+(プラス)、低濃度を−(マイナス)で示しているが、第1の導電型をP型、第2の導電型をN型としてもよい。
【0022】
(第1の工程)
図2に示すように、第1の導電型で、窒素がドーピングされた(000-1)面を有する高濃度の半導体基板1(N
+型SiC基板)の表面に、第1の導電型で半導体基板1よりも低濃度な第1半導体層2(N
-型SiC層)をエピタキシャル成長により形成する。本実施例では不純物濃度6×10
16cm
-3、厚さ4.5μmとした。
【0023】
(第2の工程)
図3に示すように、第1の半導体層2(N
-型SiC層)の表面上に減圧CVD法により堆積された厚さ1.5μmのSiO
2膜をフォトリソグラフィによりパターン加工して形成し、これをマスクとして、アルミニウムあるいはボロンをイオン注入して、高濃度の第1導電型である第2の半導体層3(P
+型領域)を選択的に形成する。このとき、半導体基板1は500℃程度に加熱してイオン注入をする。その結果、0.5μm厚の第2の半導体層3が形成される。
【0024】
(第3の工程)
図4に示すように、マスクとしたSiO
2膜を除去した後、第2の半導体層3(P
+型領域)が形成された第1の半導体層2(N
-型SiC層)の表面上に、第1の半導体層2とほぼ同一の濃度で形成された第3の半導体層21をエピタキシャル成長により形成する。厚さは半導体層2と同じ4.5μmとした。
【0025】
(第4の工程)
図5に示すように、第3の半導体層21の表面に、第2の工程と同一の位置に、SiO
2膜をパターン加工したマスクを形成した後、第2の工程と同様の手順で、アルミニウムあるいはボロンをイオン注入することにより、軸方向(
図2(d)の第3の半導体層21の表面側)からみて第2の半導体層3(P
+型領域)とほぼ同一の位置に、高濃度の第1導電型である、第4の半導体層31(P
+型領域)を0.5μm厚さで形成する。
【0026】
(第5の工程)
図6に示すように、第4の半導体層31(P
+型領域)の表面に、第2導電型で5×10
15cm
-3と比較的低濃度のベース層(4)をエピタキシャル成長により、厚さ0.5μmで形成する。
【0027】
(第6の工程)
図7に示すように、ベース層4の表面に、第4の半導体層31(P
+型領域)を形成した位置を避け、このベース層4にマスクを用いたイオン注入により第1導電型ウェル領域6を選択的に形成する。この第1導電型ウェル領域6は、表面からベース層(4)を貫通して、第3の半導体層21に達することになる。
【0028】
(第7の工程)
図8に示すように、ベース層4内にアルミニウムイオンを打ち込み、後述するソース電極10と接触するコンタクト領域12(P
+部分)を形成するとともに、その内側にリンイオンを打ち込み、コンタクト領域12(P
+部分)とベース層4との表面に共通に接触するよう、高濃度の第1導電型であるソース領域5(n
+部分)を形成する。
そして、ベース層4の表面露出部の一部にゲート絶縁膜8を形成し、ゲートpoly−Si9及び層間絶縁膜13を形成する。
【0029】
(第8の工程)
図9に示すように、第8の工程により、この第1導電型ソース領域5とベース層4との表面に共通に接触するようソース電極10を形成した後、半導体基板1の裏面にドレイン電極11を形成する。
【0030】
なお、第3の工程終了後、再び第2の工程に戻り、第3の半導体層21を複数形成することも可能である。
【0031】
このような工程で、
図9に示されるような構造の炭化珪素縦型MOSFETが得られるが、ソース電極10とドレイン電極11との間に高電圧が印加された場合、第2の半導体層3ならびに第4の半導体層31(P
+型領域)が起点となって、横方向にも空乏層が広がることができる。これにより、半導体層2の濃度を従来MOSFETよりも高く設定しても、空乏層が伸びやすいため、高耐圧が実現できるので、高耐圧特性と半導体層2の濃度を高くしたことによる低オン抵抗特性が両立できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したとおり、本発明の縦型MOSFET構造によれば、従来の縦方向だけでなく横方向にも空乏層が伸びることになり、その結果、半導体層2の濃度を従来MOSFETよりも高く設定しても、空乏層は伸びやすいので、高耐圧が実現され、しかも、半導体層の濃度を高くしたことにより、低オン抵抗特性が両立できるので、高耐圧、低オン抵抗の縦型MOSFETに広く採用されることが期待できる。
【符号の説明】
【0033】
1 半導体基板
2 第1の半導体層
3 第2の半導体層
4 第6の半導体層
5 第1導電型ソース領域
6 第1導電型ウェル層
8 ゲートpoly-Si絶縁膜
10 ソース電極
11 ドレイン電極層
12 コンタクト領域
13 ゲート絶縁膜
21 第3の半導体層
31 第4の半導体層