特許第6338372号(P6338372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6338372優れた機械的性質を有する吸油性ポリウレタンスポンジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338372
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】優れた機械的性質を有する吸油性ポリウレタンスポンジ
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20180528BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20180528BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   C08G18/42 002
   C08G18/00 F
   C08G101:00
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-511617(P2013-511617)
(86)(22)【出願日】2011年5月18日
(65)【公表番号】特表2013-530270(P2013-530270A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2011058051
(87)【国際公開番号】WO2011147724
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月12日
【審判番号】不服2016-1557(P2016-1557/J1)
【審判請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】10164188.4
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】モーマイァ,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ブルフマン,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】クリスタドロ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】レーバーフィンガー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バン デル ネット,アンチェ
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 堀 洋樹
【審判官】 渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−513568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を、密度が70〜300g/dmで、1cm当り1〜20個のセルをもち、反発弾性が30%より大きく、破断伸度が200%より大きく、引裂伝搬抵抗が1.2N/mmより大きく、圧縮強度が4kPaより大きく、引張強度が200kPaより大きい、少なくとも8個の炭素原子をもつ脂肪族、芳香脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素基を含むポリウレタンフォームに接触させることを特徴とする油の吸収方法であって、
上記ポリウレタンフォームが、
a)イソシアネート基をもち、
a1)MDIと、必要ならa2)ポリエーテルオール、及び/又はa3)ポリエステルオール、及び必要ならa4)鎖延長剤とから得られる化合物であって、2よりも大きい官能価を有するMDIの含量がa1)MDIの総重量に対して30重量%未満である化合物と、
(ただし、前記MDIは、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、モノマー状ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、より多数の環をもつジフェニルメタンジイソシアネートの同族体(ポリマー状MDI)の混合物から選択される)
b)モル質量が450g/molより大きなイソシアネート反応性基を有する化合物で、ポリエステルオールを含むもの、及び場合により更にポリエーテルオールを含むものと、
c)水を含む発泡剤と、また必要なら、
d)鎖延長剤、
e)触媒、および
f)他の助剤及び/又は添加物と
を混合して反応混合物とし、その反応を完結させてポリウレタンフォームを得ることを可能とすることにより得られ、
その際、モル質量が450g/molより大きなイソシアネート反応性基を有する化合物b)が、ポリエステルポリオールと多分岐ポリエステルの混合物を含み、上記多分岐ポリエステルが、少なくとも一種のジカルボン酸あるいはそのエステル又は無水物と、
s1)少なくとも一種の少なくとも三官能性のアルコール(B)、または
t1)少なくとも一種の少なくとも二官能性のアルコール(B)と少なくとも一種の2個を越えるOH基をもつx−官能性アルコール(Cx)(これらのアルコールの全体の混合物の平均官能価は2.1〜10である)との反応で得られるか、
少なくとも一種の2個を越える酸基をもつポリカルボン酸(Dy)またはそのエステル又は無水物と、
s2)少なくとも一種の少なくとも二官能性のアルコール(B)、または
t2)少なくとも一種の少なくとも二官能性アルコール(B)と少なくとも一種の2個を越えるOH基を持つx−官能性アルコール(Cx)、(式中、xは2より大きな数字である)との反応で得られ、
u)上記反応は、s1)、s2)、t1)及びt2)で反応させるアルコールB、B及び/又はCxに対して最大で50モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ疎水性長鎖一官能性アルコールE1を含むこともでき、
v)必要なら、続く少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖疎水性モノカルボン酸との反応があり、
前記モル質量が450g/molより大きなイソシアネート反応性基を有する化合物b)が、以下の条件の一つ以上を満足する:
ii)上記アルコールB、B及び/又はCxは、それぞれ、少なくとも20モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖ジオール、または少なくとも8個の炭素原子をもつポリオールを含み;
iii)上記ジカルボン酸が少なくとも8個の炭素原子をもつ疎水性長鎖脂肪族ジカルボン酸または芳香族または脂環式ジカルボン酸であり、また上記2個より多い酸基を持つカルボン酸Dyが、少なくとも9個の炭素原子をもつ疎水性長鎖脂肪族ポリカルボン酸または芳香族または脂環式ポリカルボン酸であり;
iv)この反応は、s1)、s2)、t1)及びt2)で反応させるアルコールB、B及び/又はCxに対して少なくとも10モル%で多くても90モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールE1を含み;
v)続く反応が、多分岐ポリエステルのOH基の平均数に対して10〜100モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖疎水性モノカルボン酸とともに起こる方法。
【請求項2】
i)上記アルコールB、またB、及び/又はCxが、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づくアルコキシレートであって、OH基に対して平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
iii)これを、疎水性長鎖脂肪族のジカルボン酸、少なくとも8個の炭素原子をもつ芳香族または脂環式ジカルボン酸、または疎水性長鎖脂肪族のポリカルボン酸、または上記2個より多い酸基を持つカルボン酸Dyとしての、少なくとも9個の炭素原子をもつ芳香族または脂環式ポリカルボン酸Dyと反応させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記反応が、少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖脂肪族のジカルボン酸または少なくとも9個の炭素原子をもつ疎水性長鎖脂肪族ポリカルボン酸と共に実施される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
i)上記アルコールB、B及び/又はCxが、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づくアルコキシレートであって、OH基に対して平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
iv)上記反応が、s1)、s2)、t1)及びt2)で反応させるアルコールB、B及び/又はCxに対して少なくとも10モル%で多くても90モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
i)上記アルコールB、B及び/又はCxが、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づくアルコキシレートであって、OH基に対して平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
v)s1)とt1)の反応生成物及びs2)とt2)の反応生成物を、それぞれ、次いで、多分岐ポリエステルのOH基の平均数に対して10〜100モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖疎水性モノカルボン酸Fと反応させる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
用いるイソシアネート基をもつ化合物が、a1)MDIとa2)ポリエステルオールとから得られる化合物を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
モル質量が450g/molより大きなイソシアネート反応性基を有する化合物が、多分岐ポリエステルに加えて、一種以上のポリエステルオールを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記油が原油である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記ポリウレタンフォームが油で汚染された水域に添加される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によるポリウレタンフォームの油防御壁としての使用方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によるポリウレタンフォームの油溜めとしての使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた機械的性質を有するポリウレタンスポンジに油を接触させることにより油を吸着及び/又は吸収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の連続気泡ポリウレタンスポンジが疎水性液体の吸着に適当であることは既知である。例えば、Angewandte Makromolekulare Chemie, 78 (1979), pages 67 to 74には、疎水性液体と親水性液体の混合物から疎水性液体を分離するためのフィルター材料としてのポリウレタンフォームの利用が記載されている。上記文献は実際、発泡体のセル中に含まれる水を疎水性液体で選択的に置換することが可能であることを示している。ポリウレタン表面の疎水性が、ポリウレタンフォームの吸収性または吸着性に大きな影響を与える。この疎水性は、例えば、ポリウレタンの主構造中に長鎖炭化水素基をもつモノマーを導入することで達成できる。
【0003】
DE2738268には、ポリウレタンの従来の構造成分に親油性化合物、例えば脂肪酸を添加して得られた油吸着用ポリウレタンフォームが記載されている。その実施例中で用いられている親油性成分には、オレイン酸とジエタノールアミンの反応生成物が、ポリオール成分に対して43.3重量部の量で含まれている。
【0004】
既知の疎水性ポリウレタンフォームの一つの大きな問題は、機械的安定性が低いことである。したがって、この種の発泡体は、フィルター中の充填物としてのみで使用できる。これらの材料は必要な機械的安定性に欠けるため、河川水や湖水、海水などの水域の浄化には使用できない。波動により発泡体が破損する。また、反発弾性が不適当で圧縮強度が不十分であるため、小さなストレスにあっても、例えば発泡体を水から取り出す場合にでも、油を放出することとなる。既知の発泡体のセルは細かいため、低粘度油以外の油の吸収が難しい。
【0005】
しかしながら、もう一つの問題は、ポリウレタン材料が油で攻撃されること、例えば材料の膨潤が起こることが多く、その結果として機械的性質が大きく低下することである。
【0006】
WO2008043545には、イソシアネート反応性化合物として二官能性脂肪酸系のポリエステルを用いて得られた油吸収性ポリウレタンフォームが記載されている。この生成物は、一定程度の機械的安定性を示す、波動のみでは破壊されない発泡体である。この発泡体の平均セル径は好ましく約1mmであり、したがって比較的高粘度で油吸収が始まる。しかし、開放水域で使用するには、例えば河川や湖、海の環境で使用するには、このポリウレタンフォームの機械的安定性、特に反発弾性や引張強度、引裂伝搬抵抗は、依然として不満足である。
【0007】
WO2005074583には、表面が疎水的ポリウレタン材料で覆われた油吸着性ポリウレタンフォームが開示されている。この方法により、既知の機械的性質をもついずれの所望ポリウレタンフォームを油吸着に使用できるようになるが、この塗工工程の追加が必要となり、製造工程が複雑となり、またコストを増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE2738268
【特許文献2】WO2008043545
【特許文献3】WO2005074583
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Angewandte Makromolekulare Chemie, 78 (1979), pages 67 to 74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の目的は、上記の欠点を持たない疎水性液体の吸収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、疎水性液体を優れた機械的性質を有する油吸収性ポリウレタンフォームに接触させる方法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリウレタンフォームの密度は70〜300g/dmであり、1cm当り1〜20個のセルを有し、反発弾性は30%より大きく、破断伸度は200%より大きく、引裂伝搬抵抗は1.2N/mmより大きく、圧縮強度は4kPaより大きく、引張強度は200kPaより大きい。また、本発明のポリウレタンフォームのDIN−ISO−4590による連続気泡率は、少なくとも50%であり、好ましくは70〜99.9%、特に好ましくは85〜99%、特に90〜98%である。この種のポリウレタンフォームは、WO2009/112576に記載されている。ここでは油吸着性能を改善するために疎水性基が用いられている。これらの発泡体に塗布することでこれらの疎水性基を付与することもできるが、ポリウレタン製造用成分中に前もってこれらの疎水性基を含めておくことが好ましい。
【0013】
本発明のポリウレタンフォームは、いろいろな方法で製造可能である。このような方法は、WO2009/112576に記載されている。必要なら、この後で既知の先行技術方法により上記発泡体を疎水化してもよい。疎水性塗膜の形成方法が、例えばWO2005/074583に記載されている。本発明のポリウレタンフォームのポリウレタンに油吸収のために十分な疎水性をもたらすのに、なんら処理が必要でないことが好ましい。例えば、ポリウレタン製造用の成分が、疎水性基を、例えば少なくとも8個の炭素原子をもつ脂肪族、芳香脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素基を少なくとも一つ持つとこれが達成される。処理がなくても油吸収のための十分な疎水性を有している本発明のポリウレタンフォームの製造方法を、以下の実施様態を基に説明する。
【0014】
第一の実施様態においては、本発明の連続気泡ポリウレタンフォームが、a)イソシアネート基をもち、a1)MDIと、必要ならa2)ポリエーテルオール、及び/又はa3)ポリエステルオールとからなる化合物であって、官能価が2より大きいMDIの含量がa1)MDIの総重量に対して30重量%未満である化合物と、b)イソシアネート反応性基を有する比較的高分子量の化合物で、ポリエーテルオール及び/又はポリエステルオールを含むものと、c)水を含む発泡剤と、さらに必要ならd)鎖延長剤と、e)触媒と、f)他の助剤及び/又は添加物とを混合して反応混合物とし、反応を完結させてポリウレタンフォームを与える方法であって、上記の使用する比較的高分子量の化合物b)がポリエステルポリオールと疎水性多分岐ポリエステルを含む混合物を含む方法により得られる。
【0015】
第二の実施形態においては、本発明の連続気泡ポリウレタンフォームが、a)イソシアネート基をもち、a1)MDIと、必要ならa2)ポリエーテルオール、及び/又はa3)ポリエステルオールとからなる化合物であって、官能価が2より大きいMDIの含量がa1)MDIの総重量に対して30重量%未満である化合物と、b)イソシアネート反応性基を有する比較的高分子量の化合物で、ポリエーテルオール及び/又はポリエステルオールを含むものと、c)水を含む発泡剤と、さらに必要ならd)鎖延長剤と、e)触媒と、f)他の助剤及び/又は添加物とを混合して反応混合物として反応を完結させてポリウレタンフォームを与える方法であって、上記の使用する比較的高分子量の化合物b)がポリエステルポリオールと疎水性多分岐ポリエステルを含む混合物を含む方法により得られる。
【0016】
本発明のポリウレタンフォームの製造に用いられるイソシアネート基含有化合物には、a1)複数のジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIを称す)系の化合物であって、官能価が2より大きいMDIの含量が、MDIの総重量に対して30重量%未満である、好ましくは20重量%未満、特に10重量%未満であるものが含まれる。例としては、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートや、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、モノマー状ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、より多数の環をもつジフェニルメタンジイソシアネートの同族体(ポリマー状MDI)の混合物があげられる。4,4’−MDIの使用が好ましい。好ましく用いられる4,4’−MDIは、0〜20重量%の2,4’−MDIと、少量の、多くて約10重量%のアロファネート変性MDI、カルボジイミド変性MDI、またはウレトンイミン変性MDIを含みうる。少量のポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(ポリマー状MDI)を使用することもできる。この材料は、さらに必要なら、MDIに加えて他のイソシアネートを少量含むことができ、その例としては、トリレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート、またはヘキサメチレンジイソシアネートがあげられる。この材料がMDIとその誘導体以外のイソシアネートを含まないことが好ましい。
【0017】
イソシアネート基をもつ化合物(a)は、ポリイソシアネートプレポリマーの形で使用することが好ましい。上記のポリイソシアネートプレポリマーは、例えば温度が30〜100℃、好ましくは約80℃で、上述のMDI(a−1)を、ポリエーテルオール(a2)及び/又はポリエステルオール(a3)と反応させてプレポリマーとすることが好ましい。使用するポリエーテルオール(a2)とポリエステルオール(a3)は、b)に記載のポリエーテルオールとポリエステルオールであることが好ましい。ここで使用可能な材料には、ポリエーテル系のポリイソシアネートプレポリマーやポリエステル系のポリイソシアネートプレポリマー、これらの混合物に加えて、ポリエーテル系及びポリエステル系のポリイソシアネートプレポリマーや、これらと上述のポリイソシアネートプレポリマーとの混合物があげられる。使用するイソシアネート基含有化合物a)は、好ましくはポリエーテル系ポリイソシアネートプレポリマーを含み、あるいはポリエーテル系ポリイソシアネートプレポリマーとポリエステル系ポリイソシアネートプレポリマーの混合物を含む。このプレポリマーのNCO含量は、好ましくは6〜30重量%の範囲であり、特に好ましくは10〜28重量%、特に13〜25重量%の範囲である。
【0018】
必要ならイソシアネートプレポリマーの製造時に、既存の鎖延長剤(a4)が上記ポリオールに添加される。これらの物質は、下のd)に記載されている。
【0019】
用いるポリイソシアネートa)は、a1)MDIとa2)ポリエステルオールとからなる化合物であることが好ましい。
【0020】
用いるポリイソシアネートa)は、a1)MDIとa2)ポリエーテルオールとからなる化合物とa1)MDIとa2)ポリエステルオールとからなる化合物を含むことが特に好ましい。a1)MDIとa2)ポリエーテルオールとからなる化合物とa1)MDIとa3)ポリエステルオールとからなる化合物の重量比は、35:65〜70:30であることが好ましい。
【0021】
用いるイソシアネート反応性基を有する比較的高分子量の化合物で、ポリエーテルオール及び/又はポリエステルオールを含むものb)には、モル質量が450g/molより大きなイソシアネート反応性基含有化合物が含まれる。ポリエーテルオール及び/又はポリエステルオールを使用することが好ましい。
【0022】
ポリエーテルオールは、既知の方法で製造され、例えばアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコラートを触媒として用い、主に2〜3個の反応性水素原子を有する少なくとも一種の出発分子を添加して行うアニオン重合により、あるいは五フッ化アンチモンまたは三フッ化ホウ素エーテラートなとのルイス酸を用い、一種以上のアルキレン基中に2〜4個の炭素原子をもつアルキレンオキシドから出発して行うカチオン重合により製造される。適当なアルキレンオキシドの例としては、テトラヒドロフラン、プロピレン1,3−オキシド、ブチレン1,2−または2,3−オキシドがあげられ、エチレンオキシドとプロピレン1,2−オキシドが好ましい。使用可能な他の触媒は多金属シアン化化合物、いわゆるDMC触媒である。これらのアルキレンオキシドは、個別に使用しても交互に続けて使用してもよく、あるいは混合物の形で使用してもよい。これらのポリエーテルポリオールが少なくとも75%のプロピレンオキシドを含んでいることが好ましい。ポリエーテルポリオールをポリイソシアネートプレポリマーの製造に使用する場合、プロピレンオキシドが、これらのポリエーテルポリオールの製造に用いられる唯一のアルキレンオキシドであることが好ましい。
【0023】
使用可能な出発分子には、水や、二官能性および三官能性アルコール、例えばエチレングリコールや、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、またはトリメチロールプロパンがあげられる。
【0024】
これらのポリエーテルポリオール、好ましくはポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールの官能価は、好ましくは4より小さく、好ましくは1.7〜3、特に好ましくは2〜2.7であり、これらのモル質量は450〜12000g/molであり、好ましくは500〜12000g/mol、特に好ましくは700〜8000g/mol、特に900〜3000g/molである。
【0025】
例えば、ポリエステルポリオールは、2〜12個の炭素原子をもつ有機ジカルボン酸、好ましくは4〜6個の炭素原子をもつ脂肪族のジカルボン酸と、また2〜12個の炭素原子をもつ、好ましくは2〜6個の炭素原子をもつ多官能性アルコール、好ましくはジオールとから生産できる。使用可能なジカルボン酸の例としては、コハク酸やグルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸があげられる。これらのジカルボン酸は、個別に用いても、相互の混合物として用いてもよい。遊離ジカルボン酸に代えて、相当するジカルボン酸の誘導体を使用することもでき、例えば1〜4個の炭素原子をもつアルコールとのジカルボン酸エステルやジカルボン酸無水物を使用することもできる。コハク酸とグルタル酸とアジピン酸からなるジカルボン酸混合物で、例えば20〜35:35〜50:20〜32重量部の比率のものの使用が好ましく、特にアジピン酸の使用が好ましい。二官能性アルコール及び多官能性アルコール、特にジオールの例としては、エタンジオールやジエチレングリコール、1,2−または1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチルペンタン−1,5−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパンがあげられる。エタンジオールとジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールの使用が好ましい。ラクトン系のポリエステルポリオール、例えばε−カプロラクトンを使用することもでき、あるいはヒドロキシカルボン酸、例えばε−ヒドロキシカプロン酸を使用することもできる。
【0026】
アジピン酸と、モノエチレングリコールとジエチレングリコールとブタンジオールとから選ばれるジオール、またはこれらの混合物、また必要ならグリセロール及び/又はトリメチロールプロパンとを用いて(この場合、ジオールのモル量はトリオールより多い)ポリエステルオールを製造することが特に好ましく、
これらのポリエステルポリオールの製造のために、有機ポリカルボン酸、例えば芳香族ポリカルボン酸、好ましくは脂肪族ポリカルボン酸及び/又はこれらの誘導体と、多官能性アルコールとを触媒を使用せずに、または好ましくはエステル化触媒の存在下で重縮合できる。なおこの重縮合は、好ましくは窒素や一酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスからなる雰囲気中で、例えば温度が150〜250℃、好ましくは180〜220℃の溶融物中で、必要なら減圧下で、所望の酸価となるまで(好ましくは10未満、特に好ましくは2未満となるまで)行われる。ある好ましい実施様態においては、大気圧で上述の温度で、酸価が80〜30となるまで、好ましくは40〜30となるまで、500mbar未満の圧力、好ましくは50〜150mbarの圧力でこのエステル化混合物が重縮合される。使用可能なエステル化触媒の例としては、金属、金属酸化物または金属塩の形の、鉄触媒やカドミウム触媒、コバルト触媒、鉛触媒、亜鉛触媒、アンチモン触媒、マグネシウム触媒、チタン触媒、スズ系触媒があげられる。しかしながら、この重縮合反応を、希釈剤中で及び/又は縮合水を蒸留により共沸除去するための共留剤(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはクロロベンゼン)の存在下で、液相で行うこともできる。ポリエステルポリオールの製造のためには、重縮合が好ましい有機ポリカルボン酸及び/又はこれらの誘導体と多官能性アルコールのモル比は1:1〜1.8であり、好ましくは1:1.05〜1.2である。必要なら縮合反応中に重合停止剤として既存の一塩基酸を加えることもできる。得られるポリエステルポリオールの官能価は、好ましくは1.8〜4であり、特に2〜3であり、これらのモル質量は、480〜3000g/mol、好ましくは1000〜3000g/molである。
【0027】
他の適当な少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子をもつ比較的高分子量の化合物b)は、ポリマー変性ポリオールであり、好ましくはポリマー変性ポリエステルオールまたはポリエーテルオール、特に好ましくはグラフトポリエーテルオールまたはグラフトポリエステルオール、特にグラフトポリエーテルオールである。これらはポリマーポリオールと呼ばれ、通常5〜60重量%の好ましくは熱可塑性のポリマーを含み、好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは30〜55重量%、特に40〜50重量%の好ましくは熱可塑性ポリマーを含んでいる。これらのポリマーポリエステルオールは、例えばWO05/098763やEP−A250351に記載されており、通常グラフトのベースとなるポリエステルオール中で適当なオレフィン系モノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、及び/又はアクリルアミド)をフリーラジカル重合させて製造される。側鎖は、一般的には、成長するポリマー鎖からポリエステルオールまたはポリエーテルオールへのフリーラジカルの移動により作られる。これらのポリマーポリオールは主に、グラフトコポリマーに加えて、無変性のポリエステルオールまたはポリエーテルオール中に分散したオレフィンのホモポリマーを含んでいる。
【0028】
ある好ましい実施様態においては、用いるモノマーが、アクリロニトリル、スチレン、またはアクリロニトリルとスチレンを含み、特に好ましくは過剰のスチレンを含む。これらのモノマーは、必要なら他のモノマー、マクロマーあるいは減速剤の存在下で、連続相としてのポリエステルオールまたはポリエーテルオール中でフリーラジカル開始剤(主に、アゾ化合物または過酸化物化合物)を使用して重合される。このプロセスは、例えばDE111394やUS3304273、US3383351、US3523093、DE1152536、DE1152537に記載されている。
【0029】
このフリーラジカル重合反応の際に、同時にこれらのマクロマーがコポリマー鎖中に取り込まれる。このためポリエステルブロックまたはポリエーテルブロックとポリアクリロニトリル−スチレンブロックとをもつブロックコポリマーが得られ、これが連続相と分散相の間の界面で相溶化剤として作用して、ポリマーポリエステルオール粒子の凝集を抑制する。マクロマーの比率は、通常、ポリマーポリオールの製造に用いたモノマーの総重量に対して1〜20重量%である。
【0030】
この比較的高分子量の化合物b)がポリマーポリオールを含む場合、これは、他のポリオールと共に、例えばポリエーテルオール、ポリエステルオール、またはポリエーテルオールとポリエステルオールの混合物と共に存在することが好ましい。例えば、この材料は、成分(b)の総重量に対して7〜90重量%の量の、または11〜80重量%の量のポリマーポリオールを含むことができる。このポリマーポリオールは、ポリマーポリエステルオールまたはポリマーポリエーテルオールであることが特に好ましい。
この比較的高分子量の化合物b)は、また尿素とそのポリマー誘導体を分散した状態で含むことができる。
【0031】
用いる比較的高分子量の化合物b)は、は多分岐ポリエステルオールまたは多分岐ポリカーボネートに加えて、一種以上のポリエステルオールを主に含むことが好ましく、一種以上のポリエステルオールのみを含むことが特に好ましい。
【0032】
化合物a2)とa3)とb)の平均官能価は2.4より小さく、好ましくは2.3より小さく、特に好ましくは1.7〜2.2である。
【0033】
また含水の発泡剤(c)が、ポリウレタンフォーム製造時に存在する。使用可能な発泡剤(c)は、水に加えて、化学作用及び/又は物理作用をもつ既知の化合物を含んでいる。化学発泡剤は、イソシアネートとの反応でガス状生成物を形成する化合物であり、その例は、水やギ酸である。物理発泡剤は、ポリウレタン製造用の出発原料中に乳化または溶解しておりポリウレタンの成形条件下で気化する化合物である。例えば、これらは、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、その他の化合物(例えば、ペルフルオロヘキサンやフルオロクロロカーボンなどの完全フッ素化アルカンやエーテル、エステル、ケトン、アセタール)、また、加熱により窒素を放出する無機及び有機化合物またはこれらの混合物(例えば、4〜8個の炭素原子をもつ(シクロ)脂肪族炭化水素)、またはソルカン(R)365(ソルベイ・フルオリド社製)などのフルオロクロロカーボンである。ある好ましい実施様態においては、用いる発泡剤が、少なくとも一種の上記発泡剤と水の混合物を含んでおり、または特に、水のみを唯一の発泡剤として含んでいる。
【0034】
発泡剤の使用量は、本発明のポリウレタンフォームの密度が70〜300g/dmとなる量である。発泡剤として水のみを使用する場合、水の含量は、通常、成分(b)〜(f)の総全重量に対して0.4〜2重量%の範囲内であり、好ましくは0.6〜1.8重量%、特に好ましくは0.8〜1.5重量%の範囲である。
【0035】
用いる鎖延長剤(d)は、モル質量が好ましくは450g/mol未満である、特に好ましくは60〜400g/molである物質であり、これらの鎖延長剤は2個のイソシアネート反応性水素原子をもっている。これらは、個別に使用してもよく、あるいは好ましくは混合物の形で使用してもよい。分子量が400未満のジオールが好ましく、分子量が60〜300がさらに好ましく、特に60〜150であるジオールの使用が好ましい。使用可能な化合物の例には、2〜14個の炭素原子をもつ、好ましくは2〜10個の炭素原子をもつ脂肪族、脂環式、及び/又は芳香脂肪族ジオールがあげられ、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、1,10−デカンジオール、1,2−、1,3−、または1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールがあげられ、好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビス(2−ヒドロキシ−エチル)ヒドロキノン、さらにはエチレンオキシド及び/又はプロピレン1,2−オキシドを出発分子とする、また上述のジオールを出発分子とするヒドロキシ基含有低分子量ポリアルキレンオキシドがあげられる。用いる鎖延長剤(d)が、モノエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、またはこれらの混合物を含むことが特に好ましい。
【0036】
必要なら鎖延長剤と共に使用可能なその他の化合物は、架橋剤である。これらはモル質量が450g/mol未満で3個のイソシアネート反応性の水素原子をもつ物質であり、その例には、1,2,4−及び1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンやグリセロール、トリメチロールプロパンなどのトリオールや、エチレンオキシド及び/又はプロピレン1,2−オキシドを出発分子とする、及び上述のトリオールを出発分子とするヒドロキシ基含有低分子量ポリアルキレンオキシドがあげられる。第2〜第5の実施様態では、架橋剤を使用しないことが好ましい。
【0037】
鎖延長剤(d)を用いる場合、好ましい使用量は、成分(b)〜(f)の総重量に対して1〜60重量%であり、好ましくは1.5〜50重量%、特に2〜40重量%である。
【0038】
ポリウレタンフォームの製造に用いられる触媒(e)は、ヒドロキシ基含有化合物、即ち成分(b)と(c)と必要なら(d)と、イソシアネート基含有化合物(a)との反応を大きく加速する化合物を含むことが好ましい。例えば、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジンなどのアミジン、トリエチルアミンやトリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N−メチル−、N−エチル−またはN−シクロヘキシルモルホリン、N,N.N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N.N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、尿素、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アザビシクロ[3.3.0]オクタンがあげられ、好ましくは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの第三級アミンや、トリエタノールアミンやトリイソプロパノールアミン、N−メチル−及びN−エチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどのアルカノールアミン化合物があげられる。有機金属化合物を使用することもできる。例えば、第一スズ塩(酢酸第一スズやオクタン酸第一スズ、エチルヘキサン酸第一スズ、ラウリン酸第一スズなど)や有機カルボン酸のジブチルスズ(IV)塩(ジブチルスズジアセテートやジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズジアセテート)などの有機スズ化合物や、ネオデカン酸ビスマス(III)や2−エチルヘキサン酸ビスマス、オクタン酸ビスマスなどのビスマスカルボン酸塩、またはこれらの混合物を使用することができる。これらの有機金属化合物は、単独で使用してもよいし、または好ましくは強塩基性アミンと共に使用してもよい。成分(b)がエステルである場合は、アミン系触媒のみを使用することが好ましい。
【0039】
成分(b)の重量に対して0.001〜5重量%の、特に0.05〜2重量%の触媒または触媒の組合せを使用することが好ましい。
【0040】
必要なら助剤及び/又は添加物(f)を、ポリウレタンフォーム製造用の反応混合物に添加してもよい。例としては、界面活性剤や発泡体安定剤、セル調整剤、他の離型剤、充填材、染料、顔料、加水分解安定剤、臭気吸収物質、静真菌性物質及び/又は静菌性物質があげられる。
【0041】
使用可能な界面活性剤の例は、出発原料の均一化に寄与し必要ならセル構造を制御するのに適当である化合物である。例としては、乳化剤(例えば、ヒマシ油スルフェートまたは脂肪酸のナトリウム塩など)、脂肪酸とアミンの塩(例えば、ジエチルアミンオレエートやジエタノールアミンステアレート、ジエタノールアミンリシノレート)、スルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸またはジナフチルメタンスルホン酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩)、リシノール酸、発泡体安定剤(例えば、シロキサン−オキシアルキレンコポリマーや他のオルガノポリシロキサン)、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪アルコール、パラフィン油、ヒマシ油エステルまたはレシノール酸エステル、ターキレッド油、落花生油、セル調整剤(例えば、パラフィンや脂肪アルコール、ジメチルポリシロキサン)があげられる。他の乳化作用またはセル構造を改善するため及び/又は発泡体の安定化のために適当な物質は、ポリオキシアルキレン基とフルオロアルカン基を側基としてもつオリゴマー状アクリレートである。界面活性剤の使用量は、通常成分(b)の100重量部に対して0.01〜5重量部である。
【0042】
好適な他の離型剤の例としては、油脂系エステルとポリイソシアネートの反応生成物、アミノ基と脂肪酸とを含むポリシロキサンに由来する塩、少なくとも8個の炭素原子を持つ飽和又は不飽和(シクロ)脂肪族カルボン酸と第三級アミンに由来する塩、また特に例えばEP153639に開示されているような内部潤滑剤(例えば、モンタン酸と少なくとも一種の少なくとも10個の炭素原子をもつ脂肪族カルボン酸とからなる混合物を、少なくとも二塩基性のアルカノールアミン、ポリオール及び/又はモル質量が60〜400g/molであるポリアミンでエステル化またはアミド化して製造されるカルボン酸エステル及び/又はカルボキサミド)、あるいは例えばDE−A3607447に開示されているような、有機アミンと金属ステアレートと有機モノ−及び/又はジカルボン酸またはこれらの無水物とからなる混合物、または例えばUS4764537に開示されているような、イミノ化合物と金属カルボキシレートと必要ならカルボン酸とからなる混合物があげられる。本発明の反応混合物は、他の離型剤を含まないことが好ましい。
【0043】
充填材、特に強化充填材は、通常の公知の有機充填材と無機充填剤、補強剤、増量剤、塗装材などである。具体的な充填材の例としては、無機充填剤(例えば、火山岩、層状ケイ酸塩などのシリカ系鉱物(例えばアンチゴライトやベントナイト、蛇紋石、角閃石、角閃石、クリソタイル、タルク)、金属酸化物(例えば、カオリンや酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄)、金属塩(例えば、チョークや重晶石)、無機顔料(例えば、硫化カドミウム)、硫化亜鉛、ガラスなどがあげられる。カオリン(焼成白土)、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウムとケイ酸アルミニウムの共沈殿物、またはいろいろな長さの天然または合成の繊維状鉱物材料(例えば、珪灰石、金属繊維、特にガラス繊維)で、必要ならサイズ剤で処理したものを使用することが好ましい。使用可能な有機充填材の例は、カーボンブラック、メラミン、コロホニ、シクロペンタジエニル樹脂、グラフトポリマー、さらにはセルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維(芳香族及び/又は脂肪族のジカルボン酸エステル由来のもの)、特に炭素繊維である。
【0044】
これらの無機充填材及び有機充填材は、個別に使用しても混合物の形で使用してもよく、これらの反応混合物への添加量は、成分(a)〜(c)の総重量に対して0.5〜50重量%であり、好ましくは1〜40重量%である。
【0045】
本発明の方法の各実施様態に対して、特定の条件が満足されることが本発明に必須である。
【0046】
第一の実施様態においては、用いる比較的高分子量の化合物b)が、ポリエステルポリオールと疎水性多分岐ポリエステルの混合物を含む。用いる比較的高分子量の化合物b)が、ポリエステルポリオールと疎水性多分岐ポリエステルとからなる混合物を含むことが好ましく、用いるポリエステルオールが上述のポリエステルオールのいずれかを含むことが好ましい。本発明の多分岐ポリエステルは、少なくとも一種のジカルボン酸(A2)またはその誘導体と、
s1)少なくとも一種の少なくとも三官能性であるアルコール()、または
t1)少なくとも一種の二官能性アルコール()と少なくとも一種の2個を越えるOH基をもつx−官能性アルコール(Cx)(式中、xは2より大きい数字であり、これらのアルコールの全体の混合物の平均官能価は2.1〜10である)との反応で得られるか、
少なくとも一種の2個を越える酸基をもつポリカルボン酸(Dy)またはその誘導体(式中、yは2を越える数字である)と、
s2)少なくとも一種の少なくとも二官能性アルコール()、または
t2)少なくとも一種の二官能性アルコール()と少なくとも一種の2個を越えるOH基を持つx−官能性アルコール(Cx)、(式中、xは2より大きな数字である)
の反応で得られる。
なお、
u)この反応は、s1)、s2)、t1)及びt2)で反応させたアルコール及び/又はCxに対して最大で50モル%、好ましくは最大で40モル%、特に好ましくは最大で30モル%、特に好ましくは最大で20モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ疎水性長鎖一官能性アルコールE1を含むこともでき)
とで得られ、
v)必要なら、続く少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖疎水性モノカルボン酸との反応がある。
【0047】
なお、上記反応では、以下の条件の一つ以上が満足される:
i)アルコール及び/又はCxは、それぞれ、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはスチレンオキシドに基づく、出発分子当り平均で少なくとも1個、多くても100個のオキシアルキレン単位をもち、出発分子として二官能性出発分子(には)、三官能性出発分子(には)、またはx−官能性(Cxには)をもつ疎水性アルコキシレートであり;
ii)アルコール及び/又はCxは、それぞれ、少なくとも20モル%の、好ましくは少なくとも30モル%、特に好ましくは少なくとも40モル%、極めて好ましくは少なくとも50モル%の長鎖ジオール、または少なくとも8個の炭素原子をもつポリオールを含み;
iv)この反応は、s1)、s2)、t1)及びt2)で反応させるアルコール及び/又はCxに対して少なくとも10モル%で多くても90モル%、好ましくは多くても70モル%、特に好ましくは多くても50モル%、特に好ましくは多くても30モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールを含み;
v)続く反応が、多分岐ポリエステルのOH基の平均数に対して10〜100モル%の、好ましくは10〜80モル%、特に好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは20〜60モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖疎水性モノカルボン酸とともに起こる。本発明の目的では、「多分岐」は、分岐度(DB)が10〜100%であること、好ましくは10〜99.9%、特に好ましくは20〜99%、特に20〜95%であることを意味する。この用語は、100%分岐度のデンドリマーも含む。「分岐度」の定義については、H. Frey et al., Acta Polym. 1997, 48, 30.を参照。
【0048】
AxBy型ポリエステルは、分子AとBの縮合物であって、分子Aが官能基funkt1)をもち、分子Bが官能基funkt2)を持ち、これらが相互に縮合反応可能なものである。この分子Aの官能価がxであり、この分子Bの官能価がyである。例えば、分子Aとしてアジピン酸(funkt1=COOH、x=2)と分子Bとしてグリセロール(funkt2=OH;y=3)とからなるポリエステルをあげることができる。
【0049】
もちろん、用いる分子Aと分子Bはそれぞれ、同一の官能基を持ち、また同一及び/又は異なる官能価を持ついろいろな分子Aの混合物を、また同一の官能基をもち、また同一及び/又は異なる官能価をもついろいろな分子Bの混合物を含んでいてもよい。その場合、この混合物の官能価xとyは、平均値である。
【0050】
反応混合物中の反応性基の比率は、一般的には、得られるOH基とカルボキシ基またはこれらの誘導体のモル比が5:1〜1:5となるように、好ましくは4:1〜1:4、特に好ましくは3:1〜1:3、特に好ましくは2.8:1〜1:2.8、極めて好ましくは2.5:1〜1:2.5となるように選択される。
【0051】
もう一つの特に好ましい実施様態においては、反応混合物中で、二成分のうちの一つが、即ち多分岐ポリマー合成に用いられるカルボン酸成分またはアルコール成分が、モル過剰で用いられる。この結果、ほとんどがCOOH末端を持つ、あるいはほとんどがOH末端を持つ特に好ましい多分岐ポリエステルが形成される。OH基に対するCOOH基の、あるいはCOOH基に対するOH基のモル過剰比率で、好ましいと分っているのは、1.1:1〜3:1であり、好ましくは1.3:1〜2.8:1、好ましくは1.5:1〜2.6:1、特に好ましくは1.7:1〜2.4:1、非常に好ましくは1.8:1〜2.4:1、特に好ましくは1.9:1〜2.4:1である。
【0052】
操作は、必要なら溶媒の存在下で、また必要なら無機触媒、有機金属触媒、または低分子量有機触媒の存在下、あるいは酵素の存在下で行われる。最も廉価で好ましい製造方法は、バルク反応、即ち無溶媒反応である。用いる触媒は、当業界の熟練者には既知のエステル化反応用の通常の触媒であり、例えばWO2008/071622に記述されているものである。
【0053】
本発明の目的においては、多分岐ポリエステルは、分子的また構造的な不均一性をもつ。これらは、分子的不均一性を持つという点でデンドリマーとは異なり、したがって製造が大幅に安価となる。
【0054】
好適な8個以上の炭素原子をもつ疎水性長鎖ジカルボン酸の例としては、スベリン酸(オクタン二酸)や、アゼライン酸、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸があげられる。上記長鎖ジカルボン酸の内では、長鎖アルキル置換基またはアルケニル置換基を持つものが特に好ましく、その例は、C−C24−アルケニル基をもつ、好ましくはC12−C18−アルケニル基をもつアルケニルコハク酸である。
【0055】
上記長鎖ジカルボン酸の中では、特に、α,β−不飽和カルボン酸、またはその炭素−炭素二重結合に疎水性基を付加させる反応で疎水化された誘導体が好ましい。用いるα,β−不飽和カルボン酸およびその誘導体は、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸を含み、特に好ましくは無水マレイン酸を含む。この疎水化反応は、ポリエステルを与えるアルコールとの反応後に行うこともできるが、この反応の前に行うことが好ましい。使用可能な疎水化剤には、少なくとも一個の炭素−炭素二重結合をもつ疎水性化合物が含まれ、例えば直鎖又は分岐鎖オレフィン、直鎖又は分岐鎖ポリイソブチレン、ポリブタジエン、またはポリイソプレンで、平均でそれぞれ8〜160個の炭素原子を持つものがあげられる。
【0056】
上記の長鎖ジカルボン酸中には、不飽和脂肪酸およびその誘導体が含まれ、また二量化脂肪酸(例えば、オレフィン単位により二量化したオレイン酸)も含まれる。
【0057】
好適な脂環式ジカルボン酸の例としては、シス−及びトランス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シス−及びトランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シス−及びトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸があげられ、上記のジカルボン酸は置換基を持っていてもよい。
【0058】
好適な芳香族ジカルボン酸の例は、フタル酸とイソフタル酸、テレフタル酸である。
【0059】
上述の化合物のいずれか2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0060】
これらのジカルボン酸は、そのまま使用してもその誘導体の形で使用してもよい。
【0061】
誘導体は、好ましくは以下のものである:
−相当するモノマー状またはポリマー状の無水物
−モノ−またはジアルキルエステル(好ましくはモノ−またはジ−メチルエステル、または相当するモノ−またはジ−エチルエステル)、または高級アルコール由来のモノ−及びジアルキルエステル(例えば、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール)、また−モノ−及びジ−ビニルエステル、また
−混合エステル(好ましくは、メチルエチルエステル)。
【0062】
ジカルボン酸と一種以上のその誘導体との混合物を使用することもできる。同様に、一種以上のジカルボン酸の複数の異なる誘導体の混合物を使用することもできる。
【0063】
反応に使用できるトリカルボン酸またはポリカルボン酸(Dy)の例としては、アコニット酸や1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、メリット酸、低分子量ポリアクリル酸があげられる。
【0064】
トリカルボン酸またはポリカルボン酸(Dy)は、そのまま使用しても、誘導体の形で使用してもよい。
【0065】
トリ−またはポリ−カルボン酸と一種以上のその誘導体の混合物、例えばピロメリット酸とピロメリット酸二無水物の混合物を使用することもできる。同様に、一種以上の以上トリ−またはポリ−カルボン酸の複数の異なる誘導体の混合物、例えば1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸とピロメリット酸二無水物の混合物を使用することもできる。
【0066】
トリカルボン酸またはポリカルボン酸は、本発明の反応中でそのまま使用しても、誘導体の形で使用してもよい。
【0067】
トリ−またはポリ−カルボン酸と一種以上のその誘導体の混合物を使用することもできる。同様に、本発明の目的において、多分岐ポリエステルを得るために、一種以上のトリ−またはポリ−カルボン酸の複数の異なる誘導体の混合物を使用することができる。
【0068】
用いるジオール(B2)の例としては、エチレングリコールやプロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、ペンタン−1,3−ジオール、ペンタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−2,3−ジオール、ペンタン−2,4−ジオール、ヘキサン−1,2−ジオール、ヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、ヘプタン−1,2−ジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、1,2−及び1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−、及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−、1,2−、1,3−、及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,1−、1,2−、1,3−、及び1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、(2)−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールHO(CHCH−H、またはポリプロピレングリコールHO(CH[CH]CHO)−H、(式中、nは整数で、≧4)、ポリエチレンポリプロピレングリコール(なお、エチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位の配列はブロックでもランダムでもよい)、ポリテトラメチレングリコール(好ましくは、モル質量が最大で5000g/mol)、ポリ−1,3−プロパンジオール(好ましくは、モル質量が最大で5000g/mol)、ポリカプロラクトン、または上記化合物の2つ以上の化合物の混合物があげられる。上記のジオールのヒドロキシ基の一方または両方がSH基で置換されていてもよい。使用が好ましいジオールは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−、1,3−、及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、またジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールHO(CHCH−H、またはポリプロピレングリコールHO(CH[CH]CHO)−H、(式中、nは整数で、≧4)、ポリエチレンポリプロピレングリコール(なお、エチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位の配列は、ブロックでもランダムでもよい)、またはポリテトラメチレングリコール(好ましくは、モル質量が最大で5000g/molであるもの)である。
【0069】
二官能性アルコールは、必要なら他の官能価を、例えばカルボニル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、またはスルホニル官能基を含むことができ、その例としては、ジメチロールプロピオン酸またはジメチロール酪酸、これらのC−C−アルキルエステル、グリセロールモノステアレート、またはグリセロールモノオレエートがあげられる。
【0070】
好適な少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖ジオールの例としては、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、またトリオールのモノ脂肪酸エステル、特にグリセロールのモノ脂肪酸エステル(例えば、グリセロールモノステアレートやグリセロールモノオレエート、グリセロールモノパルミテート)があげられる。
【0071】
少なくとも三官能性のアルコール(とCxのそれぞれ)には、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、グリセロールの高度縮合物、ジ(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリスリトール)、トリスヒドロキシメチルイソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、イノシトール、糖類(例えば、グルコース、フルクトース、またはショ糖)、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、トレイトール、エリトリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシット(ガラクチトール)、マルチトール、イソマルト)、3官能性以上のアルコールとプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドから得られる3官能性以上のポリエーテルオールが含まれる。
【0072】
特に好ましいのは、グリセロールとジグリセロール、トリグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、プロピレンオキシドに基づくこれらのポリエーテルオールである。
【0073】
この少なくとも三官能性のアルコールは、必要なら他の官能基を、例えばカルボニル官能基、カルボキシ官能基、アルコキシカルボニル官能基、またはスルホニル官能基を含んでいてもよく、その例としては、没食子酸とその誘導体があげられる。
【0074】
好適な疎水性長鎖脂肪族モノカルボン酸Fの例は、オクタン酸とデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、また脂肪酸(例えば、ステアリン酸や、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸)である。
【0075】
本発明のある実施様態i)においては、アルコールB3、B2及び/又はCxのそれぞれは、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートで、出発分子当り平均で少なくとも1個、多くても100個のオキシアルキレン単位をもつ、好ましくは出発分子当り多くても50個のオキシアルキレン単位を持つものである。好ましいアルコールB3、B2及び/又はCxは、それぞれ、モノエチレングリコールとジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、またはショ糖のプロポキシレートであって、OH基当り平均で1〜30個のオキシプロピレン単位をもつ、特にOH基当り1〜20個のオキシプロピレン単位を持つものである。
【0076】
本発明のもう一つの実施様態ii)においては、アルコール及び/又はCxは、それぞれ、少なくとも20モル%の、好ましくは少なくとも30モル%、特に40モル%、極めて好ましくは少なくとも50モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、特に好ましくは少なくとも12個の炭素原子をもつ長鎖ジオールまたはポリオールを含む。特に好ましい少なくとも8個の炭素原子をもつジオールまたはポリオールは、オクタンジオールとノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ジメチロールベンゼンの異性体である。
【0077】
本発明のもう一つの実施様態iii)においては、ジカルボン酸は、少なくとも8個の炭素原子をもつ疎水性長鎖脂肪族ジカルボン酸、または芳香族または脂環式ジカルボン酸である。脂肪族長鎖ジカルボン酸を反応させることが好ましい。これらは、少なくとも10個の炭素原子を持つことが好ましく、特に少なくとも12個の炭素原子を持つことが好ましい。これらは、一般的には最大で100個の炭素原子をもち、好ましくは最大で50個の炭素原子をもつ。これらに加えて、ジカルボン酸の総量に対して最大で90モル%の量の、好ましくは最大で70モル%の量、特に好ましくは最大で50モル%の量の比較的短分子鎖のジカルボン酸を同時に使用することができる。
【0078】
好ましい長鎖脂肪族ジカルボン酸は、スベリン酸(オクタン二酸)やアゼライン酸、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸;アルケニルコハク酸、特にC−C24−アルケニル基をもつもの、好ましくはC12−C18−アルケニル基、特に好ましくはC16−C18−アルケニル基を持つもの(偶数のアルケニル基をもつものが奇数のアルケニル基を持つものより好ましい);α,β−不飽和カルボン酸に、特にマレイン酸またはフマル酸に平均で8〜160個の炭素原子をもつ直鎖又は分岐鎖のポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンが付加した付加物;脂肪酸またはこれらの誘導体、二量化脂肪酸である。
【0079】
二個より多い酸基をもつポリカルボン酸Dyは、疎水性長鎖を含むことが好ましく、また環状、脂肪族、および芳香族ポリカルボン酸を含むことが好ましい。特に好ましいのは、アコニット酸と、シクロヘキサントリカルボン酸とベンゼントリカルボン酸の異性体、少なくとも3個、多くても10個の酸基をもつオリゴマー状ポリアクリル酸である。
【0080】
本発明のもう一つの実施様態iv)においては、この反応に、s1)、s2)、t1)、およびt2)で反応させるアルコール及び/又はCxに対して少なくとも10モル%で多くても90モル%、好ましくは多くても70モル%、特に好ましくは多くても50モル%、特に好ましくは多くても30モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ、好ましくは少なくとも10個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールが含まれる。好ましい長鎖モノアルコールは、オクタノールとデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、C16アルコール、C18アルコールである。
【0081】
本発明のもう一つの実施様態v)においては、それぞれ成分s1)とt1)と成分s2)とt2)から得られた反応生成物は、次いで、多分岐ポリエステルのOH基の平均数に対して10〜100モル%の、好ましくは20〜100モル%、特に好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは20〜60モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、特に少なくとも12個の炭素原子をもつ長鎖疎水性モノカルボン酸と反応させられる。好ましい長鎖モノカルボン酸は、オクタン酸とデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、また脂肪酸、例えばステアリン酸やオレイン酸である。
【0082】
特に好ましい疎水性多分岐ポリエステルは、
i)アルコール及び/又はCxが、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートで、OH基当り平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
iii)これを、疎水性長鎖脂肪族ジカルボン酸、少なくとも8個の炭素原子をもつ芳香族のまたは脂環式ジカルボン酸、特に少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖脂肪族ジカルボン酸と反応させて、あるいは疎水性長鎖脂肪族ポリカルボン酸、または2個より多い酸基と少なくとも9個の炭素原子をもつ芳香族または脂環式ポリカルボン酸Dyと反応させて得られる。
あるいは、
i)アルコール及び/又はCxのそれぞれが、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、OH基当り平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
iii)これを、疎水性長鎖脂肪族のジカルボン酸、少なくとも8個の炭素原子をもつ芳香族または脂環式ジカルボン酸、特に少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖脂肪族のジカルボン酸と反応させて、あるいは疎水性長鎖脂肪族のポリカルボン酸と、または2個より多い酸基と少なくとも9個の炭素原子をもつ芳香族のまたは脂環式ポリカルボン酸Dyと反応させて得られる。
(なお、多分岐ポリエステル製造用の反応混合物中の上記二成分(カルボン酸成分とアルコール成分)の内の一つは、モル過剰で使用され、そのOH基に対するCOOH基のモル過剰比率またはCOOH基に対するOH基の過剰比率は、1.1:1〜3:1であり、好ましくは1.3:1〜2.8:1、好ましくは1.5:1〜2.6:1、特に好ましくは1.7:1〜2.4:1、非常に好ましくは1.8:1〜2.4:1、特に好ましくは1.9:1〜2.4:1であり、特にカルボン酸成分がモル過剰で使用され、そのOH基に対するCOOH基のモル過剰比率は1.1:1〜3:1であり、好ましくは1.3:1〜2.8:1、好ましくは1.5:1〜2.6:1、特に好ましくは1.7:1〜2.4:1、非常に好ましくは1.8:1〜2.4:1、特に好ましくは1.9:1〜2.4:1である)、
あるいは、
i)アルコール、また、及び/又はCxのそれぞれが、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、OH基当り平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
iv)この反応には、s1)、s2)、t1)及びt2)で反応させられるアルコール及び/又はCxに対して少なくとも10モル%で多くても90モル%、好ましくは多くて70モル%、特に好ましくは多くて50モル%、特に好ましくは多くて30モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールが存在する、
あるいは
i)アルコール、また、及び/又はCxがプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、OH基当り平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
v)s1)とt1)またs2)とt2)のそれぞれからの反応生成物が、次いで、多分岐ポリエステルのH基の平均数に対して10〜100モル%の、好ましくは20〜100モル%、特に好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは20〜60モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖疎水性モノカルボン酸と反応させられる)。
【0083】
本発明で使用される疎水性多分岐ポリエステルの、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)標準試薬で校正されたGPCによる測定による数平均モル質量Mnは、一般的には700〜15000g/molであり、好ましくは1000〜12000g/mol、特に1500〜10000g/molである。
【0084】
本発明で使用される疎水性多分岐ポリエステルのDIN53240によるOH価は、一般的には0〜500mg−KOH/g−ポリエステルであり、好ましくは0〜400mg−KOH/g−ポリエステル、特に0〜300mg−KOH/g−ポリエステルである。
【0085】
本発明で使用される疎水性多分岐ポリエステルのDIN53240−2による酸価は、一般的には0〜300mg−KOH/gであり、好ましくは0〜200mg−KOH/g、好ましくは1〜150mg−KOH/g、特に好ましくは1〜125mg−KOH/g、好ましくは5〜125mg−KOH/g、特に10〜125mg−KOH/gである。
【0086】
本発明で使用される疎水性多分岐ポリエステルのガラス転移温度(DSCを用いるASTM方法D3418−03での測定)は−60〜100℃であり、好ましくは−40〜80℃である。
【0087】
これらの疎水性多分岐ポリエステルの製造は、例えばWO2009112576に記載されている。
【0088】
一般に使用される疎水性多分岐ポリエステルの量は、比較的高分子量の化合物b)と疎水性多分岐ポリエステルの合計に対して0.2〜40重量%であり、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%、特に2.5〜7.5重量%である。一般的には3重量%の量の疎水性多分岐ポリエステルでも、材料に所望の連続気泡と粗大セル性を与えるのに十分であり、したがってポリウレタンフォームの非常に優れた引裂伝搬抵抗を与えるのに十分である。
【0089】
第二の実施形態においては、用いる比較的高分子量の化合物b)が、ポリエステルポリオールと疎水性多分岐ポリカーボネートとからなる混合物を含む。用いる比較的高分子量の化合物b)は、ポリエステルポリオールと疎水性多分岐ポリエステルの混合物を含むことが好ましい。この使用されるポリエステルオールは、b)に記載のいずれかのポリエステルオールを含むことができる。本発明の多分岐ポリカーボネートは、少なくとも一種の炭素系エステル(A2)またはその誘導体と、
l)少なくとも一種の少なくとも三官能性のアルコール()、または
m)少なくとも一種の二官能性アルコール()と少なくとも一種の2個より多いOH基をもつx−官能性アルコール(Cx)(式中、xは2より大きな数字であり、使用アルコールの全体混合物の平均官能価は2.1〜10である)、との反応で得られる。
【0090】
なお、
n)この反応は、a)とb)で反応させたアルコール及び/又はCxに対して最大で50モル%、好ましくは最大で40モル%、特に好ましくは最大で30モル%、特に好ましくは最大で20モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ疎水性長鎖一官能性アルコールE1を含むこともでき、
o)必要なら、長鎖疎水性OH反応性化合物F、例えば少なくとも8個の炭素原子をもつモノカルボン酸またはモノイソシアネートとの反応が続いてあってもよく、
p)必要なら、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応が続いてもよい。
【0091】
その場合、以下の条件の一つ以上が満たされる:
I)アルコール及び/又はCxは、それぞれ、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはスチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、出発分子当り平均で少なくとも1個の多くても100個のオキシアルキレン単位を持ち、二官能性の出発分子(には)、三官能性出発分子(には)、またはx−官能性出発分子(Cxには)をもつものである;
II)アルコール及び/又はCxは、それぞれ、少なくとも20モル%、好ましくは少なくとも30モル%、特に好ましくは少なくとも40モル%、極めて好ましくは少なくとも50モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖ジオールまたは、それぞれポリオールをもつ;
III)この反応は、l)とm)で反応させたアルコール及び/又はCxに対して少なくとも10モル%で多くても90モル%、好ましくは多くとも70モル%、特に好ましくは多くても50モル%、and特に好ましくは多くても30モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールを含む;
IV)続く反応が、多分岐ポリカーボネートのOH基の平均数に対して10〜100モル%、好ましくは10〜80モル%、特に好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは20〜60モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖疎水性OH反応性の化合物Fとともに進行する;
V)続いて、多分岐ポリカーボネートのOH基に対して1〜60当量の、好ましくは2〜50当量、特に好ましくは3〜40当量、特に好ましくは3〜30当量のプロピレンオキシドまたはブチレンオキシド、またはプロピレンオキシドとブチレンオキシドとの反応がある。AxBy型のポリエステルは、分子AとBの縮合物であり、分子Aが官能基funkt1)を持ち、分子Bが官能基funkt2)を持ち、これらが相互に縮合反応可能なものである。分子Aの官能価はxであり、分子Bの官能価はyである。例えば、ジエチルカーボネートを分子Aとし(funkti=COOEt、x=2)、プロポキシ化グリセロールを分子Bとする(funkt2=OH;y=3)ポリカーボネートがあげられる。多分岐ポリカーボネートは、例えばWO2005/026234に記載されている。
【0092】
もちろん、用いる単位Aと単位Bが、それぞれ、同一官能基をもち同一及び/又は異なる官能価をもついろいろな分子Aの混合物や、同一官能基をもち同一及び/又は異なる官能価をもついろいろな分子Bの混合物を含むことも可能である。混合物の官能価xとyは平均値である。
【0093】
好適な多分岐ポリカーボネートが、例えば次のようにして製造される。
1)一般式ROC(=O)ORの少なくとも一種の有機カーボネートと、少なくとも一種の少なくとも3個のOH基を持つ脂肪族アルコール(またはCx)とを、アルコールROHまたはROHを除きながら反応させて、一種以上の縮合物(K)を得る。なお、RとRは、それぞれ他方から独立して、直鎖または分岐状のアルキル基とアリールアルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれ、RとRは、結合した−OC(=O)O−基とともに環状カーボネートとなっていてもよい。
2)ホスゲン、ジホスゲン、又はトリホスゲンと1)に記載のアルコール(またはCx)とを、塩化水素を除きながら反応させて縮合物Kを得る。
3)縮合物(K)の分子間反応で高官能価多分岐ポリカーボネートを得る。
【0094】
なお、反応混合物中のカーボネートに対するOH基の定量比率は、縮合物(K)が一個のOH基に対して平均で一個以上のカーボネート基をもつか、一個のカーボネート基に対して一個以上のOH基をもつように選択される。
【0095】
基RとRは同一であっても異なっていてもよい。ある特定の実施様態においては、RとRが同一である。RとRが、上に定義したC−C20−アルキル、C−C−シクロアルキル、C−C10−アリール、C−C10−アリール−C−C20−アルキルから選ばれることが好ましい。RとRは、一緒になってC−C−アルキレンであってもよい。RとRがWO2005/026234に定義されている直鎖および分岐状C−C−アルキルから選ばれることが特に好ましい。
【0096】
例えば、ジアルキルまたはジアリールカーボネートを、脂肪族、芳香脂肪族、または芳香族のアルコール、好ましくはモノアルコールとホスゲンとの反応で製造してもよい。これらを、また貴金属、酸素またはNOの存在下でアルコールまたはフェノールのCOによる酸化的カルボニル化で製造してもよい。ジアリールカーボネートまたはジアルキルカーボネートの製造方法については、「ウルマン工業化学辞典」、第6版、2000年電子版、Verlag Wiley社を参照。
【0097】
好適なカーボネートの例には、エチレンカーボネートやプロピレン1,2−または1,3−カーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネート、またはジデシルカーボネートなどの脂肪族または芳香族カーボネートがあげられる。
【0098】
脂肪族のカーボネート、特に1〜5個の炭素原子をもつものの使用が好ましく、具体的にはジメチルカーボネートやジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、またはジイソブチルカーボネートの使用が好ましい。
【0099】
これらの有機カーボネートを、少なくとも3個のOH基をもつ少なくとも一種の脂肪族アルコール(またはCx)と、あるいはこれらのアルコールの2種以上の混合物と反応させる。
【0100】
少なくとも三官能性のアルコール(、またCx)については、すでに第4の実施様態で定義した。これらは上述のように使用できる。
【0101】
全ての使用アルコールの平均OH官能価が2より大きいなら、上記多官能性アルコールは、二官能性アルコール()との混合物中で使用できる。同様に二官能性アルコール()の定義も上に述べた。これらを上述のように使用できる。
【0102】
このカーボネートとアルコールまたはアルコール混合物から1)の多分岐ポリカーボネートを得る反応は、カーボネート分子から単官能性アルコールまたはフェノールを除去しながら進行する。
【0103】
ホスゲンまたはホスゲン誘導体とアルコールまたはアルコール混合物から2)の多分岐ポリカーボネートを得る反応は、塩化水素を除去しながら進行する。
【0104】
得られる多分岐ポリカーボネートは、反応後にヒドロキシ基及び/又はカーボネート基の末端を持っており、他の修飾を受けていない。
【0105】
多分岐ポリカーボネートは、ポリマーのメイン構造を形成するカーボネート基とともに、少なくとも4個、好ましくは少なくとも8個の末端基またはペンダント官能基をもつ生成物である。これらの官能基はカーボネート基及び/又はOH基である。原理的には末端基またはペンダント官能基の数の上限に制限はないが、非常に多数の官能基をもつ生成物は、望ましくない性質、例えば高粘度や貧溶解性などを持つことがある。本発明の高官能価ポリカーボネートのほとんどは、500個以下の末端基またはペンダント官能基をもち、好ましくは200個以下、特に100個以下の末端基またはペンダント官能基をもつ。
【0106】
本発明の目的では、多分岐ポリカーボネートが分子的また構造的な不均一性を有している。これらは、分子的不均一性を持つという点でデンドリマーとは異なり、したがって製造コストが大幅に低下する。
【0107】
これらの疎水性多分岐ポリカーボネートの製造は、例えばWO2009112576に記載されている。
【0108】
これらのポリカーボネートは、この反応で本来得られる官能基に加えて他の官能基を得ることができる。この官能化は、分子量の増加中に起こっても、増加後で、即ち実際の重縮合反応が終了した後で起こってもよい。
【0109】
続く官能化は、得られる高官能価多分岐ポリカーボネートを、ポリカーボネートのOH基及び/又はカーボネート基に反応可能な適当な官能基生成試薬と反応させて実施できる。
【0110】
ヒドロキシ基を含有する高官能価多分岐ポリカーボネートは、例えば酸基またはイソシアネート基を含む分子Fを添加して変性させることができる。例えば、ポリカーボネートは、モノカルボン酸またはモノイソシアネートとの反応で疎水的に変性できる。
【0111】
適当な疎水性長鎖脂肪族カルボン酸の例としては、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸や、脂肪酸(例えば、ステアリン酸やオレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸)があげられる。
【0112】
ヒドロキシ基を含む高官能価ポリカーボネートは、またプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応で疎水性多分岐ポリカーボネートポリエーテルポリオールに変換可能である。
【0113】
ある本発明の実施様態I)においては、アルコール及び/又はCxは、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、出発分子に対して平均で1個の多くて100個のオキシアルキレン単位をもつ、好ましくは出発分子に対して多くて50個のオキシアルキレン単位をもつものである。好ましいアルコール及び/又はCxは、それぞれ、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、またはショ糖のプロポキシレートであって、OH基に対して平均で1〜30個のオキシプロピレン単位をもつもの、特にOH基に対して1〜20個のオキシプロピレン単位をもつものである。
【0114】
本発明もう一つの実施様態II)においては、アルコール及び/又はCxは、それぞれ、少なくとも20モル%、好ましくは少なくとも30モル%、特に40モル%、極めて少なくとも50モル%の長鎖ジオールまたはポリオールであって、少なくとも8個の炭素原子をもつ、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、特に好ましくは少なくとも12個の炭素原子をもつものである。特に好ましい、少なくとも8個の炭素原子をもつジオールまたはポリオールは、オクタンジオールやノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ジメチロールベンゼンの異性体である。
【0115】
本発明のもう一つの実施様態III)においては、この反応は、a)とb)で反応させるアルコール及び/又はCxに対して少なくとも10モル%で多くても90モル%、好ましくは多くても70モル%、特に好ましくは多くても50モル%、特に好ましくは多くても30モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールE1、好ましくは少なくとも10個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールE1を含む。好ましい長鎖モノアルコールは、オクタノールやデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、C16アルコール、C18アルコールである。
【0116】
本発明もう一つの実施様態IV)においては、成分a)とb)から得られる反応生成物を、次いで多分岐ポリカーボネートのOH基の平均数に対して10〜100モル%、好ましくは20〜100モル%、特に好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは20〜60モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、特に少なくとも12個の炭素原子もつ長鎖疎水性OH反応性の化合物F(例えば、モノカルボン酸またはモノイソシアネート)と反応させる。好ましい長鎖モノカルボン酸Fは、オクタン酸とデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、また脂肪酸(例えば、ステアリン酸やオレイン酸)である。好ましい長鎖モノイソシアネートFは、オクタンイソシアネートや、デカンイソシアネート、ドデカンイソシアネート、テトラデカンイソシアネート、また脂肪酸のモノイソシアネート(例えば、ステアリルイソシアネートやオレイルイソシアネート)である。
【0117】
特に好ましい疎水性多分岐ポリカーボネートは次のようにして得られる。
I)アルコール及び/又はCxは、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、OH基に対して平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものである;
または
I)アルコール及び/又はCxは、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、OH基に対して平均で1〜15個のオキシアルキレン単位を持つものであり、反応混合物中で、二つの多分岐ポリカーボネートの合成成分(カーボネートエステル成分またはアルコール成分)のうちの一つがモル過剰で使用され、(CO)OR基のOH基に対するモル比とOH基の(CO)OR基に対するモル比のそれぞれの過剰が、1.1:1〜3:1であり、好ましくは1.3:1〜2.8:1、好ましくは1.5:1〜2.6:1、特に好ましくは1.7:1〜2.4:1、非常に好ましくは1.8:1〜2.2:1、特に好ましくは19:1〜2.1:1である、
または
I)アルコール及び/又はCxは、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、OH基に対して平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
III)この反応は、a)とb)で反応させたアルコール及び/又はCxに対して少なくとも10モル%で多くても90モル%、好ましくは多くても70モル%、特に好ましくは多くても50モル%、特に好ましくは多くても30モル%の少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖モノアルコールE1を含む、
または
I)アルコール及び/又はCxは、それぞれ、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに基づく疎水性アルコキシレートであって、OH基に対して平均で1〜15個のオキシアルキレン単位をもつものであり、
IV)a)とb)からの反応生成物を、次いで多分岐ポリカーボネートのOH基の平均回数に対して10〜100モル%、好ましくは20〜100モル%、特に好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは20〜60モル%の、少なくとも8個の炭素原子をもつ長鎖疎水性OH反応性の化合物F1、例えばモノカルボン酸またはモノイソシアネートと反応させる。
【0118】
本発明で使用される疎水性多分岐ポリカーボネートの、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)標準試薬で校正されたGPCによる数平均モル質量Mnは、一般的には800〜40000g/molであり、好ましくは1000〜30000g/mol、特に1500〜20000g/molである。
【0119】
特に好ましいポリメタクリル酸メチル(PMMA)標準試薬で校正されたGPC測定での重量−平均モル質量MWは、2000〜50000g/molであり、好ましくは3000〜40000g/mol、特に好ましくは4000〜35000g/mol、特に好ましくは5000〜30000g/molであった。
【0120】
本発明で使用される疎水性多分岐ポリカーボネートのDIN53240によるOH価は、一般的には0〜600mg−KOH/g−ポリカーボネートであり、好ましくは0〜500mg−KOH/g−ポリカーボネート、特に0〜400mg−KOH/g−ポリカーボネートである。
【0121】
さらに、本発明で使用される疎水性多分岐ポリカーボネートのガラス転移温度(DSCを用いるASTMD3418−03法で測定)は、一般的には−80〜100℃であり、好ましくは−60〜60℃である。
【0122】
多分岐ポリカーボネートの製造反応が終了後、例えば濾過により触媒をこれらの多分岐ポリカーボネートから分離することができる。その際の濃縮プロセスは、通常減圧で行われる。他の適当な後処理方法は、水を添加して、あるいは多分岐ポリカーボネートが不溶性の他の溶媒を添加して沈殿させ、続いて洗浄、乾燥させることである。
【0123】
溶媒を添加せず、少量の触媒のみを添加してこの多分岐ポリカーボネートが製造すると、反応生成物は反応収量後に直ちに、単離された多分岐ポリカーボネートの形となり、一般的にはなんら他の精製工程なしに使用できる。
【0124】
疎水性多分岐ポリカーボネートの一般的な使用量は、比較的高分子量の化合物b)と疎水性多分岐ポリカーボネートの総量に対して0.2〜40重量%であり、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%、特に2.5〜7.5重量%である。一般的にはわずか3重量%の量の疎水性多分岐ポリカーボネートで、材料に所望の連続気泡と粗いセル性を与えるのに十分であり、したがってポリウレタンフォームの非常に優れた引裂伝搬抵抗を与えるのに充分である。
【0125】
第一と第二の実施形態における本発明のポリウレタンフォーム製造用の成分(a)〜(f)の相互混合量は、それぞれ、ポリイソシアネート(a)のNCO基と、成分(b)と(c)と(d)の反応性水素原子の総量との当量比が1:0.7〜1:1.25となる、好ましくは1:0.85〜1:1.15となる量である。
【0126】
本発明のポリウレタンフォームは、低圧または高圧でのワンショト法で製造されることが好ましい。この反応混合物を、必要なら温度調整された開放金型あるいは密閉金型に投入することができる。これらの金型は、通常金属、例えばアルミニウムまたはスチールからできており、あるいは厚紙または木材からできている。これらの方法は、例えば、Piechota und Rohr, “Integralschaumstoff” [一体発泡体], Carl−Hanser−Verlag, Munich, Vienna, 1975や、“Kunststoffhandbuch“, Band 7, Polyurethane [プラスチックハンドブック, 第7巻、ポリウレタン], 3rd edition, 1993, chapter 7。本発明のポリウレタンフォームを、非拘束的な発泡成形プロセスで得ることが特に好ましい。この反応混合物は、例えば連続的に走行するベルトに放出して硬化させることができる。
【0127】
金型に投入される反応混合物の量は、得られる発泡体成型物の密度が70〜300g/dmとなるように、好ましくは80〜300g/dm、特に好ましくは90〜300g/dm、特に100〜250g/dmとなるように決められる。
【0128】
本発明のポリウレタンフォームは、1cm当り1〜20個のセル、好ましくは1〜10個のセルを持つ。この発泡体は、優れた機械的性質、例えば優れた破断引張歪や引裂伝搬抵抗、破断伸度、反発弾性をもつ。特に本発明のポリウレタンフォームを水域表面に漂う油の吸着に使用する場合、十分な圧縮強度と共に適度な弾性が必要となる。このような場合には、小さな機械的なストレスが発生しても、例えば波動により小さな機械的なストレスが発生しても、吸着された油が水域に放出されない。DIN53573による反発弾性は、好ましくは30%以上であり、特に好ましくは35%以上、特に40%以上である。24時間のエージングの後で、密度が125g/dmである時、本発明のポリウレタン発泡体のDIN−EN−ISO1798による引張強度が200kPaより大きく、特に好ましくは230kPaより大きく、特に250kPaより大きいことが好ましく、DIN−EN−ISO1798による破断伸度が200%より大きく、特に好ましくは250%より大きく、ISO34−1の引裂伝搬抵抗が1.2N/mmより大きく、特に好ましくは1.6N/mmより大きく、特に2.0N/mmより大きく、DIN−EN−ISO3386による40%圧縮での圧縮強度が4kPaより大きく、特に8kPaより大きいことが好ましい。
【0129】
本発明のポリウレタンフォームは、その表面が一定の疎水性をもちその機械的性質が優れているため、疎水性液体の吸着に優れた適性をもつ。このために本発明のポリウレタンフォームを疎水性液体に接触させる。次いでこれらの疎水性液体を、例えばプレス、ロールまたはカレンダーで取り出すことでポリウレタンフォームから回収できる。したがって、本発明のポリウレタンフォームを油の吸収に繰り返し使用することができる。
【0130】
例えば、油、例えば原油で汚染された水域に本発明の発泡体を広げることでこの材料を「接触させる」ことができる。このために、この発泡体はいかなる形をとってもよい。例えば幅が10cm〜10mで、厚みが1cm〜2m、長さが10cm〜100mの細長いものを使用することができる。本発明の発泡体は粗大なセルをもつため、例えば石油関連事故の後の場合のように石油やタール残渣が非常に粘稠であったとしても、これらを吸収することができる。この発泡体は優れた機械的性質を有するため、しっかりと固定された油防御壁の形で設置することもできる。例えば、この発泡体を、港の出口の前に、水域の保護が必要な部分の前に、あるいは臨海地の前に設置して固定することができる。なお発泡体の形状は任意である。したがって、上述のように、例えば細長い発泡体を使用することができるし、数珠つなぎに連結された発泡体の部品、例えばボールを使用することができる。
【0131】
本発明のポリウレタンスポンジは、油汚染された装置や生物の洗浄に、例えばふき取りやパッド洗浄に使用できる。
【0132】
波動によりこの発泡体が破壊されることがないため、望ましくない吸着油の再放出が起こらない。また、機械的性質に優れるため発泡体の開裂が起こりにくく、油を含有する発泡体を容易に回収できる。また特に反発弾性と圧縮強度に優れるため、油を含有する発泡体を水から回収する場合のように小さな機械的負荷がかかっても、望ましくない油の再放出を防ぐことができる。
【0133】
本発明の発泡体は、例えば機械装置中で油溜めとしても使用することができる。したがって、本発明のポリウレタンフォームから成型した成型物、例えばギアホイルを油で飽和させ、機械装置の一部として、例えば金属ギアホイルの形で使用することができる。
なおこの際、ポリウレタン成型物中に含まれる油が金属ギアホイルまたは他の機械装置上に放出される。
【0134】
以下、実施例をもって本発明を説明する:
【実施例】
【0135】
出発原料
ポリオール1:アジピン酸とエチレングリコール(0.66モル%)、1,4−ブタンジオール(0.33モル%)からのポリエステルポリオール。OH価は56mg−KOH/gである
ポリオール2:多分岐ポリエステル
ポリオール3:多分岐ポリカーボネート
鎖延長剤1:モノエチレングリコール
鎖延長剤2:1,4−ブタンジオール
触媒:トリエチレンジアミン
阻害剤:ジエチレングリコールビスクロロホルメート
発泡体安定剤:DC193(R)、ダウコーニング社製、シリコーン系
発泡剤:水
イソシアネート:53.8重量部のジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(4,4’−MDI)と4.3重量部のカルボジイミド変性4,4’−MDI、31.2重量部のポリオール1、10.7重量部の、アジピン酸とエチレングリコール(0.2モル%)とジエチレングリコール(0.75モル%)、グリセロール(0.05モル%)とからのポリエステルポリオールでOH価が60mg−KOH/gのものからなるプレポリマー
カルボジイミド変性4,4’−MDI:NCO含量=29.5重量%、粘度=40mPas(25℃)
ポリオール2:官能基としてヒドロキシ基とカルボキシ基、ポリエーテル基、アルキル基を含む多分岐ポリエステル
1914g(5.50mol、M=348g/mol)のC−18−アルケニルコハク酸(ペンタサイズ8、トリゴン社製)と649.7g(1.51mol、M=430g/mol)のトリメチロールプロパンに基づくポリエーテルオールで5個のプロピレンオキシド単位でランダムにグラフト化されているものと0.2gのチタン(IV)ブトキシドとを秤量して、攪拌器と内部温度計と傾斜凝縮器を備え真空につながった4lのガラスフラスに入れ、撹拌下でゆっくりと195℃まで加熱した、その間、圧力はゆっくりと70mbarに低下した。次いで、この反応混合物を195℃で10時間攪拌し、この間に反応で生産される水は蒸留で除いた。
【0136】
酸価が約105mg−KOH/gとなるまで酸価の減少を定期的に測定した。その後で生成物を冷却し分析した。
分析:
酸価:102mg−KOH/g
GPC:Mn=1000g/mol、Mw=6700g/mol(溶離液:THF、校正:PMMA)
ポリオール3:官能基としてヒドロキシ基とカーボネート基、ポリエーテル基、アルキル基を有する多分岐ポリカーボネート:
ジブチルスズジラウレート(1.0g)の存在下で、大気圧下低速の窒素流下約140℃で攪拌器と内部温度計と還流冷却器を備えた2lのフラスコ中で、ジエチルカーボネート(144g、1.22mol)を15個のプロピレンオキシド単位でランダムにグラフトされたトリメチロールプロパンに基づくトリオール(1149g、1.11mol)と反応させた。反応中、反応混合物中にエタノールが常に縮合物として生成し、このため12時間内に反応混合物の沸点が約120℃にまで低下した。次いで還流冷却器を、20cmの充填塔と傾斜凝縮器と受器とからなる蒸留装置に代え、反応中に形成された留出液を除いた。約85gの留出液を除去後、反応混合物を100℃に冷却し、ガス供給チューブを取り付け、系を上記温度で約1時間、窒素を用いてストリップした。このプロセスにより残留エタノールと他の揮発性成分を除いた。その後に生成物を冷却して分析した。
分析:
OH価:85mgKOH/g
GPC:Mn=4200g/mol、Mw=14500g/mol(溶離液:ジメチルアセトアミド、校正:PMMA)
ポリオール2と3を、次のように分析した:
ポリオール2と3は、検出器として屈折計を用いるゲル浸透クロマトグラフィーで分析した。用いた移動相はテトラヒドロフラン(THF)またはジメチルアセトアミド(DMAc)を含み、分子量測定用の標準試薬はポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。OH価と酸価は、DIN53240、part2により測定した。
【0137】
用いたポリオール成分Aは、84.7重量部のポリオール1と5重量部のポリオール2、5重量部の鎖延長剤1、3重量部の鎖延長剤2、0.7重量部の触媒、0.1重量部の阻害剤、0.1重量部の気泡安定剤、1.4重量部の発泡剤とからなる。
【0138】
ポリオール成分Bは、85.8重量部のポリオール1と、4.5重量部のポリオール3、4.4重量部の鎖延長剤1、3重量部の鎖延長剤2、0.7重量部の触媒、0.1重量部の阻害剤、0.1重量部の気泡安定剤、1.4重量部の発泡剤とからなる。
【0139】
試験方法:
反応混合物1(RM1):
低圧機械を用いて100重量部のポリオール成分A(45℃)と115重量部のイソシアネート(40℃)を相互に混合した。この混合物をプラスチックバケツ(5L)中に排出し、連続気孔の粗大セルをもつ発泡体を得た。
【0140】
反応混合物2(RM2):
低圧機械を用いて100重量部のポリオール成分B(45℃)と117重量部のイソシアネート(40℃)を相互に混合した。この混合物をプラスチックバケツ(5L)中に排出し、連続気孔の粗大セルをもつ発泡体を得た。
【0141】
24時間のエージング後に得られた発泡体試料の機械的性質を、DIN−EN−ISO1798、3386、53573、53504、53512、またISO34−1により測定した。これらを表1に示す。
【0142】
油吸収は内部法で測定した:
3種の異なる油(加熱油、熱分解油、ナフサ)を試験した。

方法1)「直接油吸収」
発泡体をサイコロ状にカットし(1.4g<重量<2g)、油(100mLの油)の表面上にのせ、24時間そこに放置した。トングを用いて油から発泡体を取り出し、5秒間湯切りさせた。次いで重量増加率(%)を測定した。表1は、2回測定の平均値を示す。

重量増[g/g%]=(重量−重量0)/重量×100

加熱油の場合、スポンジから放出される油の重量%を測定するためにもう一つの試験を行った。このため、油を含有するサイコロ状発泡体をペトリ皿に入れ、トングで絞った。ペトリ皿中の油の量を測定した。次いで、押し出された油を評量した。

方法2)水表面からの油吸収と水/熱分解油混合物からの油吸収
2a)加熱油とナフサ
100mLの水と20mLの油を200mLのガラスビーカーに入れた。次いでサイコロ状発泡体(1.4g<重量<2g)をこの液体の表面にのせた。1分後、吸着された液体の量を上述の方法により測定した。次いで発泡体を絞り、その液体をメスシリンダに入れた。この液体は24時間後でも相分離しなかった。これは、押し出された液体が完全に油からなることを示す。

2b)熱分解油
用いた熱分解油は、ナフサ蒸留残渣である。この油の密度は1.28g/cmであり、粘度は860mPas(23℃)である。熱分解油は、その密度が>1g/mLであるため、水(100mL)と油(20mL)の混合物中で容器の底に沈んだ。このため、このサイコロ状発泡体を1分間、水/油混合物とともに振盪した。次いで吸着された液体の量を測定した。
【0143】
【表1】
【0144】
この表から、本発明の反応混合物から製造された発泡体試料が連続した粗大なセル構造をとるばかりか非常に良い機械的性質を有していることがわかる。特に反発弾性と圧縮強度の両方に優れるため、この発泡体を油吸収媒体として使用することが可能となる。材料の密度が135g/dmの場合、非常に短時間のうちに、油吸着量がこの材料自体の重量の200%を越えることとなる。