(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338532
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】茶葉抽出物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/82 20060101AFI20180528BHJP
A61K 8/9783 20170101ALI20180528BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20180528BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20180528BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20180528BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180528BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20180528BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20180528BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20180528BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20180528BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20180528BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
A61K36/82
A61K8/9783
A61K8/49
A61P3/10
A61P25/02 103
A61P43/00 111
A61K31/353
A61K31/352
A61K31/7048
A23F3/16
A23L2/00 F
A61K127:00
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-543343(P2014-543343)
(86)(22)【出願日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2013078826
(87)【国際公開番号】WO2014065369
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-235601(P2012-235601)
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-8482(P2013-8482)
(32)【優先日】2013年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】川口 史樹
(72)【発明者】
【氏名】杉田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】村上 章
(72)【発明者】
【氏名】中浜 克彦
(72)【発明者】
【氏名】南藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】河岡 明義
(72)【発明者】
【氏名】山本 万里
【審査官】
横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−115234(JP,A)
【文献】
特開2010−189288(JP,A)
【文献】
特開2007−302577(JP,A)
【文献】
特開2000−044472(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/108487(WO,A1)
【文献】
国際公開第2003/091237(WO,A1)
【文献】
日本農芸化学会大会講演要旨集, 2011, Vol.2011 p.24
【文献】
Arzneim Forsch, 1995, Vol.45 No.4 p.481-485
【文献】
Indian J Physiol Pharmacol, 1994, Vol.38 No.3 p.220-222
【文献】
Food Chem., 2012.03.15, Vol.131 No.2 p.387-396
【文献】
J Agric Food Chem., 2005, Vol.53 No.1 p.28-31
【文献】
日本薬理学雑誌, 2000, Vol.116 No.4 p.61P
【文献】
J Sci Food Agric., 2012.08.30, Vol.92 No.11 p.2379-2386
【文献】
第59 回日本木材学会大会 研究発表要旨集, 2009
【文献】
Phytochemistry, 1997, Vol.44 No.3 p.441-447
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A23F 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉抽出物の乾燥重量に対して、デルフィニジンまたはその配糖体0.13重量%以上と、カテキン類23.0重量%以下とを含み、茶葉抽出物を温度100℃、時間120分の条件で加熱したとき、茶葉抽出物中のデルフィニジンまたはその配糖体の残存率が90%以上であり、
サンルージュの茶葉を、茶葉乾燥重量の10倍量以上の水を用いて、温度および時間がそれぞれ70℃〜95℃、5分〜60分の条件で水抽出して得られる抽出物である、
茶葉抽出物。
【請求項2】
サンルージュの茶葉を、茶葉乾燥重量の10倍量以上の水を用いて、温度70℃〜95℃、時間5分〜60分の条件で抽出すること、及び、茶葉抽出物を温度100℃、時間120分の条件で加熱したとき、茶葉抽出物中のデルフィニジンまたはその配糖体の残存率が90%以上であることを確認すること、を含む、茶葉抽出物の重量に対して、デルフィニジンが0.13重量%以上であり、カテキン類が23.0重量%以下であり、茶葉抽出物を温度100℃、時間120分の条件で加熱したとき、茶葉抽出物中のデルフィニジンまたはその配糖体の残存率が90%以上である茶葉抽出物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含む飲食品。
【請求項4】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含む化粧品。
【請求項5】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含む血糖値降下剤。
【請求項6】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含む抗糖尿病剤。
【請求項7】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含むコレシストキニン受容体活性化剤。
【請求項8】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含むアドレナリン受容体拮抗剤。
【請求項9】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含む自律神経系症状亢進剤。
【請求項10】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含む運動性亢進剤。
【請求項11】
請求項1に記載の茶葉抽出物を含む、血糖値降下用、抗糖尿病用、コレシストキニン受容体活性化用、アドレナリン受容体拮抗用、自律神経系症状亢進用、又は運動性亢進用飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
アントシアニンは植物体に含まれる赤の色素であり、抗酸化性、ロドプシンの再合成促進作用、コラーゲン合成促進作用、毛細血管保護及び強化作用等の機能性を持つことが知られている。しかし、アントシアニンは、熱および光に不安定であることが知られており、光分解又は空気酸化によるアントシアニンの分解、変色および褪色が問題となっていた。例えば、カシス、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニンは不安定であることが明らかになっている。
【0003】
一方、茶葉抽出物に含まれるカテキン類は、抗酸化作用、脂質改善作用などの生理効果が注目されてきている。しかし、高濃度にカテキン類を含む茶葉抽出物は苦味および渋味が強くなるため、カテキン類を含有しながら苦味および渋味を低下させようとする技術が望まれている。
【0004】
アントシアニンを安定化する方法として、非アシル化アントシアニンに、アシル化アントシアニンを産生する植物体の破砕物、乾燥物、濃縮物または抽出物を組み合わせて、非アシル化アントシアニンを安定化させる技術が知られている(特許文献1)。
【0005】
アントシアニンを含有する茶葉抽出物としては、アントシアニンとカテキン類を含有する茶葉抽出物(特許文献2)、アントシアニンを含有し、pH5.5未満である茶飲料(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−306966号公報
【特許文献2】特開2007−302577号公報
【特許文献3】特開2007−28933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のアントシアニンを有する茶葉抽出物よりもアントシアニンの含有量が高く、アントシアニンの機能性を効率よく発揮することのできる安定性の高い抽出物が待望されていた。さらに、苦味および渋味が少なく、嗜好性の優れた茶葉抽出物が待望されていた。
【0008】
本発明は、安定性の高いアントシアニンを豊富に含み、かつ、嗜好性の優れた茶葉抽出物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、特定の抽出条件において得られ、かつ、アントシアニジンの一種であるデルフィニジンを豊富に含み、かつ、カテキン類の含有量が抑えられた茶葉抽出物を見出した。デルフィニジンまたはその配糖体は、抗酸化作用が強いため、他の配糖体と比べてアントシアニンとしての機能性(眼精疲労抑制、抗炎症、抗酸化等)を十分に発揮することができる。また、カテキン類とデルフィニジンの組み合わせにより、複合的な抗酸化作用、抗ストレス作用などの効果が期待できる。
【0010】
本発明は以下の態様を提供する。
〔1〕茶葉抽出物の乾燥重量に対して、デルフィニジンまたはその配糖体0.13重量%以上と、カテキン類23.0重量%以下とを含む茶葉抽出物。
〔2〕茶葉を、茶葉乾燥重量の10倍量以上の水を用いて、温度70℃〜95℃、時間5分〜60分の条件で抽出して得られる上記〔1〕に記載の茶葉抽出物。
〔3〕アントシアニンの含有量に占めるデルフィニジンまたはその配糖体の含有量の比率が50%以上である上記〔1〕又は〔2〕に記載の茶葉抽出物。
〔4〕エピガロカテキンガレートを、茶葉抽出物の乾燥重量に対して10.5重量%以下含む上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物。
〔5〕カフェインを、茶葉抽出物の乾燥重量に対して5.4重量%以下含む上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物。
〔6〕アミノ酸を、茶葉抽出物の乾燥重量に対して1.0重量%以上含む上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物。
〔7〕茶葉が緑茶の茶葉である上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物。
〔8〕茶葉がサンルージュの茶葉である上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物。
〔9〕粉末である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物。
〔10〕茶葉抽出物を温度100℃、時間120分の条件で加熱したとき、茶葉抽出物中のデルフィニジンまたはその配糖体の残存率が90%以上である、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物。
〔11〕茶葉を、茶葉乾燥重量の10倍量以上の水を用いて、温度70℃〜95℃、時間5分〜60分の条件で抽出する、茶葉抽出物の重量に対して、デルフィニジンが0.13重量%以上であり、カテキン類が23.0重量%以下である茶葉抽出物の製造方法。
〔12〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含む飲食品。
〔13〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含む化粧品。
〔14〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含む血糖値降下剤。
〔15〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含む抗糖尿病剤。
〔16〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含むコレシストキニン受容体活性化剤。
〔17〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含むアドレナリン受容体拮抗剤。
〔18〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含む自律神経系症状亢進剤。
〔19〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含む運動性亢進剤。
【0011】
本発明は、以下の態様も提供する。
〔20〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物をヒトまたはヒト以外の動物に投与する、高血糖の治療又は予防方法。
〔21〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物をヒトまたはヒト以外の動物に投与する、糖尿病の治療又は予防方法。
〔22〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物をヒトまたはヒト以外の動物に投与する、コレシストキニン受容体の活性化方法。
〔23〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含むアドレナリン受容体の阻害方法。
〔24〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含む自律神経系症状の亢進方法。
〔25〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物をヒトまたはヒト以外の動物に投与する、運動性の亢進方法。
〔26〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物をヒトまたはヒト以外の動物に投与する、血糖値降下のための使用。
〔27〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物の、糖尿病の改善、緩和、治療または予防のための使用。
〔28〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含むコレシストキニン受容体活性化のための使用。
〔29〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含むアドレナリン受容体阻害のための使用。
〔30〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物を含む自律神経系症状亢進のための使用。
〔31〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の茶葉抽出物の、運動性亢進または刺激のための使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明の茶葉抽出物は、デルフィニジンを豊富に含むので、アントシアニンとしての機能を十分に発揮することができる。また、安定性が高く、血糖値降下作用、自律神経系症状、自発運動などの運動性の亢進または刺激、コレシストキニン受容体(コレシストキニンB受容体など)、アドレナリン受容体(アドレナリンα2A受容体など)などの神経に関わる受容体の調節、などの作用を有する。よって、抗ストレス性、眼精疲労抑制、抗炎症、抗酸化性、抗糖尿病、動脈硬化予防、自律神経系症状亢進、運動性亢進などの作用を発揮することができる。また、カテキン類の含有量が抑えられているので、苦味及び渋味が少なく嗜好性に優れている。さらに、カテキン類とデルフィニジンの組み合わせにより、抗酸化作用、抗ストレス効果などカテキン類の生理活性との複合的な効果が期待できる。
【0013】
本発明の茶葉抽出物の製造方法によれば、水を用いて抽出するので固形物などの不純物が少なく、粉末にしたときにも純度が高いという効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実験例1における結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実験例2における結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、実施例2及び比較例6の各抽出物におけるデルフィニジンの残存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の茶葉抽出物は、デルフィニジンまたはその配糖体を含む。デルフィニジンはアントシアニンを構成するアントシアニジンの一種である。アントシアニジンは、デルフィニジン、シアニジン、ペラルゴニジン、オーランチニジン、ルテオリニジン、ペオニジン、マルビジン、ペチュニジン、ヨーロピニジン、ロシニジン等に分類される。デルフィニジンは、3,5,7−トリヒドロキシ−2−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−1−ベンゾピリリウム(C
15H
11O
7)である。デルフィニジンの配糖体とは、デルフィニジンに含まれる1つ以上の水酸基の水素原子が他の置換基に置換されている化合物である。置換部位は3位または6位が好ましい。他の置換基の例としては、ガラクトース、グルコース等の糖から1つ水素原子を除いた基が挙げられる。デルフィニジンの配糖体の例としては、デルフィニジン−3−O−(6−トランス−p−クマロイル)−β−ガラクトシド(DCGa)、デルフィニジン−O−β−ガラクトシド(D3Ga)およびデルフィニジン−3−β−グルコシド(D3G)が挙げられる。
【0016】
本発明の茶葉抽出物におけるデルフィニジンまたはその配糖体の含有量は、茶葉抽出物の乾燥重量に対して0.13重量%以上であり、0.16重量%以上であることが好ましく、0.19重量%以上であることがより好ましい。上限は特に特定されないが、通常は0.5重量%以下である。
【0017】
本発明の茶葉抽出物における、アントシアニンの含有量に占めるデルフィニジンまたはその配糖体の含有量の比率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。上限は特に特定されないが、通常は90%以下である。アントシアニンの含有量とは茶葉抽出物の乾燥重量に対するアントシアニンの含有量を意味する。デルフィニジンまたはその配糖体の含有量とは茶葉抽出物の乾燥重量に対するデルフィニジンまたはその配糖体の含有量を意味する。
【0018】
茶葉抽出物中のデルフィニジンまたはその配糖体の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。茶葉抽出物中のアントシアニンの含有量は、HPLCにより測定することができる。
【0019】
本発明の茶葉抽出物はカテキン類を含む。カテキン類としては、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(CG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECG)及びエピガロカテキンガレート(EGCG)、エピガロカテキン−3−(3”−O−メチル)ガレート(EGCG3”Me)、エピカテキン−3−(3”−O−メチル)ガレート(ECG3”Me)が挙げられる。
【0020】
本発明の茶葉抽出物におけるカテキン類の含有量は、茶葉抽出物の乾燥重量に対して23.0重量%以下であり、21.0重量%以下であることが好ましく、18.0重量%以下であることがより好ましい。下限は特に特定されないが、通常は14.0重量%以上である。この範囲であると、苦味および渋味が少なく嗜好性に優れている。
【0021】
本発明の茶葉抽出物は、カテキン類のうちエピガロカテキンガレート(EGCG)の含有量は、茶葉抽出物の乾燥重量に対して10.5重量%以下であることが好ましく、10.2重量%以下であることがより好ましく、10.0重量%以下であることが更に好ましい。
【0022】
茶葉抽出物中のカテキンの含有量は、HPLCまたは比色法により測定することができる。
【0023】
本発明の茶葉抽出物は、通常、カフェインを含む。カフェインは、プリン環を持つプリンアルカロイドの一種である。カフェインはコーヒー、コーラ、緑茶、紅茶、ウーロン茶、ココア、チョコレート、栄養ドリンクなどの飲食品に含まれ、茶に含まれるカフェインはタンニンと結びつくためにその効果が抑制されることから、コーヒーのような興奮作用は弱く緩やかに作用する。
【0024】
本発明の茶葉抽出物におけるカフェインの含有量は、茶葉抽出物の乾燥重量に対して5.4重量%以下であることが好ましく、5.2重量%以下であることがより好ましく、5.1重量%以下であることが更に好ましい。下限は特に特定されないが、低カフェイン処理をしない場合は、通常は2.5重量%以上である。
【0025】
茶葉抽出物中のカフェインの量は、HPLCにより測定することができる。
【0026】
本発明の茶葉抽出物は、通常、アミノ酸またはその塩を含む。アミノ酸はアミノ基とカルボキシル基を両方有する化合物である。アミノ酸の例としては、テアニン、グリシン、アルギニン、リジン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、スレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、トリプトファン、プロリン、システイン、セリン、チロシン、イソロイシン、メチオニンが例示される。アミノ酸の塩の例としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、無機酸塩、有機酸塩などが例示される。本発明の茶葉抽出物におけるアミノ酸またはその塩の含有量は、茶葉抽出物の乾燥重量に対して1.0重量%以上であることが好ましく、1.3重量%以上であることが好ましく、1.5重量%以上であることがより好ましい。上限は特に特定されないが、通常は4.5重量%以下である。
【0027】
茶葉抽出物中のアミノ酸の量は、HPLCにより測定することができる。
【0028】
本発明の茶葉抽出物は、加水分解型タンニンを含むことが好ましい。加水分解型タンニンを含むことにより、抗アレルギーの効果を得ることができる。加水分解型タンニンの例としてはストリクチニンなどを挙げることができ、ストリクチニンであることが好ましい。ストリクチニンは1,2−ジ−O−ガロイル−4,6−O−(S)−ヘキサヒドロキシジフェノイル−β−D−グルコピラノースである。
【0029】
加水分解型タンニンの含有量は、茶葉抽出物の乾燥重量に対して1.7重量%以下であることが好ましく、1.5重量%以下であることがより好ましく、1.4重量%以下であることが更に好ましい。下限は特に特定されないが、通常は0.6重量%以上である。
【0030】
ストリクチニンの量は、HPLCにより測定することができる。
【0031】
本発明の茶葉抽出物は、テオガリンまたはその誘導体を含むことが好ましい。テオガリンまたはその誘導体を含むことにより、抗アレルギーの効果が得られる。テオガリンはトリヒドロキシ安息香酸の配糖体であり、(1S)−1β,3β,4β−トリヒドロキシ−5α−(ガロイルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸とも呼ばれる。テオガリンまたはその誘導体の含有量は、茶葉抽出物の乾燥重量に対して5.0重量%以下であることが好ましく、3.0重量%以下であることがより好ましく、1.6重量%以下であることが更に好ましい。下限は特に特定されないが、通常は0.7重量%以上である。
【0032】
テオガリンの量は、HPLCにより測定することができる。
【0033】
本発明の茶葉抽出物に含まれるデルフィニジンまたはその配糖体は、従来のアントシアニンと比べて安定性が高い。安定性は、茶葉抽出物を温度100℃、時間120分の条件で加熱したときの茶葉抽出物中のデルフィニジンまたはその配糖体の残存率で表すことができる。該残存率は90重量%以上であることが好ましい。デルフィニジンまたはその配糖体の残存率は、式(1)で算出される。
【0034】
式(1):
デルフィニジンまたはその配糖体の残存率(%)=
{(茶葉抽出物を温度100℃、時間120分の条件で加熱した後のデルフィニジンまたはその配糖体の含有量)/(上記加熱前の茶葉抽出物のデルフィニジンまたはその配糖体の含有量)}×100
【0035】
本発明の茶葉抽出物は、茶葉を茶葉乾燥重量の10倍量以上の水に、温度70〜95℃、時間5〜60分の条件で抽出して得ることができる。
【0036】
茶葉は、Camellia sinensis等のCamellia属植物の茶葉が挙げられる。製茶された茶葉の例としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶等が挙げられ、緑茶が好ましい。緑茶の茶葉の例としては、煎茶、玉露、番茶、茎茶、芽茶、粉茶、ほうじ茶、玄米茶、てん茶、釜炒茶、包種茶等が挙げられる。緑茶の茶葉のうち、「サンルージュ」(農林水産省 品種登録番号:21262)、F95181(茶中間母本農6号)、「やぶきた」等の品種の茶葉が好ましく、「サンルージュ」の茶葉が好ましい。
【0037】
茶葉は抽出前に粉砕処理を行ってもよい。粉砕処理には、破砕機(例えば、マルチビーズショッカー(登録商標、安井器械株式会社)、石臼、セラミックミル、ボールミル、ハンマーミルなどを用いることができる。
【0038】
抽出溶媒としては、水またはエタノール水溶液が挙げられ、水が好ましい。また、エタノール水溶液におけるエタノールの濃度は、本発明の効果を害さない範囲で定めることができ、通常はエタノール水溶液全体に対し70重量%以下である。水で抽出する場合、抽出温度は70〜95℃が好ましく、70〜80℃がより好ましい。抽出時間は5〜60分であることが好ましく、5〜10分がより好ましい。水と茶葉との重量比は、茶葉1に対し、茶葉乾燥重量の10倍以上の水を用いることが好ましく、茶葉乾燥重量の10倍〜100倍量の水を用いることがより好ましい。抽出温度が95℃より高く、また、抽出時間が60分より長いと、カテキンの含有量が多くなるため、苦味および渋味が強くなり嗜好性が悪くなるおそれがある。また、酢酸のような有機溶媒で抽出すると、抽出効率は良いが、カテキン類の含有量が多くなるため、苦味および渋味が強く嗜好性が悪くなるおそれがある。
【0039】
抽出処理後、ろ過、遠心分離等の処理により固形分を除去してもよい。さらに、濃縮(減圧濃縮、逆浸透膜処理など)、乾燥(噴霧乾燥、凍結乾燥など)等の処理を行ってもよい。
【0040】
本発明の茶葉抽出物の形態の例としては、液体(錠、カプセル、ソフトカプセルなど)、スラリー(シロップなど)、半固体(クリーム、ペーストなど)、固体(粉末)が挙げられ、固体であることが好ましく、粉末であることが好ましい。
【0041】
本発明の茶葉抽出物には各種の添加剤を添加して、組成物としてもよい。添加剤の例としては、調味料;酸味料(クエン酸、コハク酸など);保存剤(アスコルビン酸、酢酸塩、ε−ポリリジンなど);pH調整剤;乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチンなど);香料;色素;増粘剤(カラギーナン、キサンタンガムなど);膨張剤;タンパク質(大豆タンパク質、乳タンパク質など);糖類(デンプン、ショ糖、果糖、還元デンプン糖化物、エリスリトール、キシリトールなど);甘味料(スクラロース、ソーマチンなど);ビタミン類(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンKなど);ミネラル類(鉄、カルシウムなど)などが挙げられる。
【0042】
本発明の茶葉抽出物の用途としては例えば、眼精疲労軽減剤、抗ストレス剤、抗糖尿病剤、抗酸化剤、安定剤、自律神経系症状亢進剤、運動性亢進剤などの医薬品および医薬部外品が挙げられる。さらには、化粧品、飼料、トイレタリー製品、色材、飲食品、または食品添加物、紙類、文房具類、事務用品、おもちゃなどの非医薬的用途が挙げられる。
【0043】
本発明の茶葉抽出物は、化粧品、飼料、トイレタリー製品、またはその他の日用品等の非医薬品として利用することができる。例としては、化粧品:メーキャップ化粧品、基礎化粧品、ヘアトニック、香水など;飼料:家畜用飼料、ペットフードなど;トイレタリー製品:石鹸類、シャンプーなどヘアケア製品;歯磨き粉、歯磨き用液体などオーラルケア製品;生理用品、入浴剤、消臭剤、芳香剤、殺虫剤などが挙げられる。
【0044】
本発明の茶葉抽出物は、着色材(着色料)、発色材(発色料)などの色材として、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料、トイレタリー製品、飲食品、食品添加物、紙類、文房具類、事務用品、おもちゃなどの分野で利用することができる。
【0045】
本発明の茶葉抽出物は、飲食品、または食品添加物として利用することができる。飲食品の例としては、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料、ビール、日本酒、洋酒、中国酒、薬味酒など);米飯類(ご飯、お粥など);パン類;調味料(ソース、味噌、醤油、マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、たれ、香辛料等);大豆食品(納豆、豆腐、油揚げなど);水産加工食品(かまぼこ、はんぺん、ちくわ、練り製品など);食肉加工品(ハム、ソーセージ、ウィンナーなど);農産加工食品(野菜、果物など);漬物類;麺類(うどん、そば、スパゲッティなど);スープ類(粉末スープ、液体スープなど);乳製品(チーズ、ヨーグルト、クリームなど);菓子類(ゼリー、スナック菓子、チューインガム、キャンディー、チョコレート、ケーキなど);健康食品(機能性食品、栄養補助食品(サプリメント)、特定保健用食品);対象者が特定されている飲食品(医療用食品、病者用食品、乳児用食品、介護用食品、高齢者用食品)等が挙げられる。
【0046】
[作用]
本発明の茶葉抽出物は、デルフィニジンまたはその誘導体を豊富に含むので、アントシアニンとしての機能を十分に発揮することができる。また、安定性が高く、ヒト又はヒト以外の動物(例えば、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等の家畜、ニワトリ等の家禽、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウサギ等の実験動物、イヌ、ネコ、小鳥等の愛玩動物など)において、血糖値降下作用、自律神経系症状の亢進又は刺激、自発運動などの運動の亢進または刺激、コレシストキニン受容体(例えば、A、B受容体、好ましくはB受容体)、アドレナリン受容体(例えば、α1〜2およびβ1〜3受容体、好ましくはα2受容体、より好ましくはα2A受容体)などの神経に関わる受容体の調節、などの作用を有する。よって、抗ストレス性(ストレスの改善、緩和又は予防);眼精疲労の抑制、改善、緩和、治療又は予防;抗炎症(炎症の改善、緩和、治療又は予防);抗酸化性;抗糖尿病(糖尿病の改善、緩和、治療又は予防);動脈硬化の抑制、改善、緩和、治療又は予防、自律神経系症状の亢進又は刺激;自発運動等の運動性の亢進又は刺激などの作用を発揮することができる。また、カテキン類の含有量が抑えられているので、苦味および渋味が少なく嗜好性に優れている。さらに、カテキン類とデルフィニジンまたはその誘導体との組み合わせにより、抗酸化作用、抗ストレス効果等のカテキン類が有する作用も発揮され、複合的な効果が期待できる。
【0047】
その理由は明らかではないが、以下のとおりと推測される。茶葉抽出物に含まれるデルフィニジンは、他のアントシアニンと組成が異なる。茶葉抽出物に含まれるカテキン類には発癌抑制、動脈硬化予防、脂肪代謝異常の抑制、口臭防止、活性酸素のフリーラジカル消去作用、抗酸化作用などの作用があり、その他カテキン類の二次代謝物にも抗酸化作用などの生理活性があることが予想される。そのため、茶葉抽出物は、抗酸化作用、抗ストレス効果などのカテキン類が発揮する作用も発揮され、複合的な効果が得られると考えられる。また、茶葉抽出物に含まれるデルフィニジンなどのアントシアニンは、カシス、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニンと比べて、アントシアニンの組成が異なるか、もしくはアントシアニンを安定化させる物質が含まれているので、安定性が高くなると考えられる。さらに、茶葉を酢酸のような有機溶媒で抽出すると、カテキン類も抽出されて含有量が多くなるため、苦味および渋味が強く嗜好性が悪くなる。一方、水またはエタノール水溶液で抽出すると、カテキン類、特にエピガロカテキンガレート(EGCG)の含有量が抗酸化作用、抗ストレス効果等の作用を発揮する程度に抑えられるため、苦味および渋味が少なく嗜好性に優れていると考えられる。
【0048】
また、本発明の茶葉抽出物の製造方法によれば、水を用いて抽出するので固形物などの不純物が少なく、粉末にしたときにも純度が高いという効果が期待できる。
【0049】
その理由は明らかではないが、水を用いて抽出することでアントシアニン等の親水性物質の割合が高くなり、脂溶性物質の割合が低くなるため、茶葉抽出物に固形物などの不純物が少なくなると考えられる。
【実施例】
【0050】
実験例1
以下の条件で茶葉抽出物を得た。
【0051】
・茶葉:2011年産「サンルージュ」茶葉を採取後、蒸し葉乾燥したもの
【0052】
・前処理:マルチビーズショッカー(登録商標、安井器械株式会社)により粉砕処理(粒子径平均:309μm)
【0053】
・温度:4℃、50℃、70℃、90℃、95℃
【0054】
・時間:1分、5分、10分、30分、60分
【0055】
・抽出溶媒と液量:蒸留水(DW)を茶葉乾燥重量に対して50倍重量
【0056】
抽出した茶葉抽出液(エキス)を用いて、比色法により、アントシアニンの検量線から全量のデルフィニジン含有量を測定した。結果を
図1に示す。
【0057】
実験例2
比色法により、カテキン類の検量線から全量のカテキン類の含有量を測定したこと、および温度を4℃、30℃、50℃、70℃、90℃、95℃のいずれかとしたこと以外は、実験例1と同様にした。結果を
図2に示す。
【0058】
実験例1および実験例2から、茶葉からの水抽出における温度および時間をそれぞれ70℃〜95℃、5分〜60分の条件とすることにより、デルフィニジンが効率的に抽出され、カテキン類が抑えられた茶葉抽出物が得られることが分かった。
【0059】
実施例1及び比較例1〜2
品種間による比較として、「サンルージュ」、最も植栽面積比の高い「やぶきた」、「サンルージュ」の親株でありアントシアニンとカテキンを含有している「茶中間母本農6号(F95181)」を用いて、以下の条件で茶葉抽出物を得た。
【0060】
・茶葉:2011年産「サンルージュ」、2011年産「やぶきた」、2011年産「茶中間母本農6号(F95181)」を採取後、蒸し葉乾燥したもの
【0061】
・前処理:マルチビーズショッカー(登録商標、安居器械株式会社)により粉砕処理(粒子径平均:309μm)
【0062】
・温度:70℃
【0063】
・時間:10分
【0064】
・抽出溶媒と液量:蒸留水(DW)を茶葉に対して50倍重量
【0065】
得られた茶葉抽出液の、表1に示す成分の含有量を、文献(Mari Maeda−Yamamoto et al.Chemical analysis and acetylcholinesterase inhibitory effect of anthocyanin−rich red leaf tea (cv. Sunrouge).J Sci Food Agric 92:2379−2386(2012).)に記載された条件でHPLCにて分析した。
【0066】
比較例3〜5
抽出溶媒として酢酸を用いた以外は、実施例1と同様にした。
実施例1、比較例1〜5で得られた結果を表1に示す。単位は、茶葉抽出液の乾燥重量あたりの重量%で記載した。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1において、デルフィニジンまたはその配糖体の含有量が0.13重量%以上であり、カテキン類の含有量が21.0重量%以下であり、EGCGの含有量が10.5重量%以下であり、アントシアニンの重量に占めるデルフィニジンまたはその配糖体の重量の比率が、50%以上の茶葉抽出物(エキス粉末)が得られた。
【0069】
実施例2
熱安定性の評価
以下の条件で茶葉抽出物を得た。
【0070】
・茶葉:2012年産「サンルージュ」茶葉を採取後、蒸し葉乾燥したもの
【0071】
・前処理:マルチビーズショッカー(登録商標、安居器械株式会社)により粉砕処理(粒子径平均:309μm)
【0072】
・温度:70℃
【0073】
・時間:10分
【0074】
・抽出溶媒と液量:蒸留水(DW)を茶葉乾燥重量に対して50倍重量
【0075】
得られた茶葉抽出物の、乾燥重量あたりのデルフィニジンまたはその配糖体の含有量とカテキンの含有量とを、実施例1と同様にしてHPLCにより分析したところ、それぞれ0.2重量%、18.5重量%であった。
【0076】
茶葉抽出物を濃縮後、スプレードライヤー(ヤマト科学株式会社製、商品名:Pulvis Mini−Spray GA−32)にて粉末化し、茶葉抽出物の粉末を作成した。これを温度100℃で120分間加熱処理し、処理後のデルフィニジン残存率を測定した。
【0077】
比較例6
デルフィニジンリッチな既存流通品であるマキベリー由来エキス粉末(オリザ油化社製、商品名:マキベリーエキス)の規格値を用いた。
【0078】
実施例2、比較例6の結果を
図3に示す。
【0079】
茶葉抽出物粉末の熱安定性(実施例2)は、デルフィニジンを含有するマキベリーエキス粉末(比較例6)と比較して優れていた。
【0080】
実施例3
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重22±2gの雄性ICR系マウス(各群5匹)に対し、茶葉抽出物の粉末を、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。尚、試験開始前に一晩絶食させた。茶葉抽出物の最終投与から30分後にブドウ糖負荷した(体重あたりのブドウ糖1g/kgを皮下注射)。最終投与後からブドウ糖負荷前の間、およびブトウ糖負荷60分後(最終投与の90分後)に血液検体を採取した。各マウスのブドウ糖負荷前後の血糖値を測定し、血糖値上昇率を算出した。
【0081】
比較例7
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは実施例3と同様とした。
【0082】
比較例7のマウスの血糖値上昇率に対する、実施例3のそれの有意差(p<0.05)の有無を確認した。実施例3及び比較例7の結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
〔表2の脚注〕
*は、溶媒投与対照区との間で、一元配置分散分析及びDunnett検定にて有意差(P<0.05)があることを示す。
SEMは標準誤差を示す。
【0085】
表2から明らかなとおり、茶葉抽出物を投与した実施例3の血糖値上昇率は、水のみを投与した比較例7のそれと比べて抑えられていた。このことは、本発明の茶葉抽出物が血糖値降下作用を有することを示している。
【0086】
実施例4
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重23±3gの雄性ICR系マウス(各群5匹)に対し、茶葉抽出物の粉末を、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。茶葉抽出物の最終投与後1時間以内の自立神経系症状発症の有無を、熟練した評価員の下、目視評価した。
【0087】
比較例8
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは実施例4と同様とした。
【0088】
実施例4及び比較例8の結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
〔表3の脚注〕
±:軽度;+:重度;F:早い
n/5のnは、その症状を示した個体数を示す。
【0091】
表3から明らかなとおり、水のみを投与した比較例8では自発運動および自律神経系症状が見られなかったが、茶葉抽出物を投与した実施例4では自発運動および様々な自律神経系症状が観察された。このことは、本発明の茶葉抽出物が自発運動および自律神経系症状を亢進させることを示している。
【0092】
実施例5
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重23±3gの雄性ICR系マウス(各群5匹)に対し、茶葉抽出物の粉末を、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。茶葉抽出物の最終投与から1時間後に、マウスの以下10項目の行動反応について、パラメータを測定した:易刺激性;自発運動の亢進;眼瞼の拡大;驚樗反応の亢進;接触反応の亢進;探索行動の亢進;立毛;挙尾;振戦;及び痙攣。各観察項目を通常時であれば0点とし、各観察項目の最大の運動刺激を2点とし、合計は2(点)×10(項目)×5(匹)=100点とした。合計スコアが20点以上となった場合、有意な刺激性があるとした。
【0093】
比較例9
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは実施例5と同様とした。
【0094】
実施例5及び比較例9の結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
【0096】
表4から明らかなとおり、水のみを投与した比較例9では合計スコアが0であったのに対し、茶葉抽出物を投与した実施例5のそれは高得点であった。このことは、本発明の茶葉抽出物が運動刺激作用を有することを示している。
【0097】
実施例6
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重155±5gの一晩絶食させた雄性Wistar系ラット(各群5匹)に対し、茶葉抽出物の粉末を、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。試験開始2時間前および茶葉抽出物の最終投与の1時間後に、生理食塩水を強制経口投与して胃液酸性度(μEq HCl/mL)を求めた。
【0098】
比較例10
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは、実施例6と同様とした。
【0099】
比較例10のマウスの胃液酸性度に対する、実施例6のそれの有意差(p<0.05)の有無を確認し、コレシストキニン(CCK
B)受容体活性化作用を評価した。結果を表5に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
〔表5の脚注〕
*は、比較例10(溶媒投与対照区)との間で、一元配置分散分析及びDunnett検定にて有意差(P<0.05)があることを示す。
【0102】
表5から明らかなとおり、実施例6の茶葉抽出物投与後の胃液酸性度は、水のみを投与した比較例10のそれと比べて抑えられていた。このことは、本発明の茶葉抽出物がCCK
B受容体活性化作用を有することを示している。
【0103】
実施例7
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重150±20gの雄性SD系ラット(各群5匹)に対し、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。茶葉抽出物の最終投与から30分後にクロニジン(0.03mg/kg、腹腔内投与(IP))を投与した。さらに20分後、動物をペントバルビタールナトリウム(40mg/kg、腹腔内投与(IP))で麻酔し、その10分後に心拍数を記録した。
【0104】
比較例11
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは、実施例7と同様とした。
【0105】
実施例7の心拍数を比較例11のそれと比較し、アドレナリンα2A受容体拮抗作用があるか評価した。実施例7及び比較例11の結果を表6に示す。
【0106】
【表6】
【0107】
表6から明らかなとおり、水のみを投与した比較例11よりも茶葉抽出物を投与した実施例7の心拍数が高かった。このことは、本発明の茶葉抽出物が、アドレナリンα2A受容体拮抗作用を有することを示している。
【0108】
実施例8
サンルージュ茶葉2gを80℃のお湯100mlで5分間抽出した。それらの抽出液(試験飲料1)をパネラー8人で試飲後、甘味、苦渋味及び爽快感のうちより強く感じるものを選択してもらった。
【0109】
比較例12
サンルージュ茶葉の代わりに市販されているやぶきた茶葉(1000円/100g)を用いて、実施例8と同様に抽出液(試験飲料2)を得て、実施例8と同様に試飲及び評価を行った。
【0110】
実施例8及び比較例12の結果に基づき、8人で官能評価を行なった。甘味、苦渋味、および爽快感のそれぞれを比較して、強く感じた飲料を項目ごとに選択させ、パネラーの人数を数えた。結果を表7に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
表7から明らかなとおり、試験飲料1では爽快感を感じるパネラーが多く、苦渋味を感じるパネラーはゼロであった。
【0113】
このことは、本発明の茶葉抽出物は、爽快感が高いので、飲みやすく、嗜好飲料として十分な性能を有していることを示している。また、本発明の製造方法では、得られる茶葉抽出物のカテキン含有量を抑えることができるため、得られる茶葉抽出物の苦渋味が抜け、爽快感を高めることができることを示している。