特許第6338728号(P6338728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6338728
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】エコーキャンセラ装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/23 20060101AFI20180528BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H04B3/23
   H04M11/00 303
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-70545(P2017-70545)
(22)【出願日】2017年3月31日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】志鎌 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】大坂 一夫
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 貴史
(72)【発明者】
【氏名】佐川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】浦田 泉
(72)【発明者】
【氏名】海老原 基人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 史夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎二
【審査官】 鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−158860(JP,A)
【文献】 特開平03−085027(JP,A)
【文献】 特開2006−148330(JP,A)
【文献】 特表2002−501336(JP,A)
【文献】 特開2004−282539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/76 − 3/44
H04B 3/50 − 3/60
H04B 7/005− 7/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声チャネル種別に応じて、電話網の2線4線変換により生じるエコーの消去処理を行うエコーキャンセラ部と、
音声チャネルごとに、音声通話開始/終了の情報、無音パターンおよび音声レベルを検出し、それらの検出結果を前記音声チャネル種別に応じて論理判定し、前記音声チャネル種別に応じた前記エコーキャンセラ部のON/OFFを制御するエコーキャンセラON/OFF制御部と
を備えたエコーキャンセラ装置において、
前記エコーキャンセラON/OFF制御部は、第1の音声チャネル種別に対して、
前記無音パターン以外を検出した場合に前記エコーキャンセラ部をONとし、前記無音パターンが設定値T1以上継続すればOFFとする制御手段1と、
前記無音パターンを検出しない場合に前記音声レベルを識別し、前記音声レベルが閾値L以上の場合に前記エコーキャンセラ部をONとし、前記音声レベルが閾値L未満で設定値T1以上継続する場合に前記エコーキャンセラ部をOFFとする制御手段2と
を有することを特徴とするエコーキャンセラ装置。
【請求項2】
請求項に記載のエコーキャンセラ装置において、
前記エコーキャンセラON/OFF制御部は、前記第1の音声チャネル種別に応じて、前記音声レベルの判定に用いる閾値Lと、前記無音パターンの検出または音声レベルが閾値L未満の継続時間の検出に用いる設定値T1とを設定する構成である
ことを特徴とするエコーキャンセラ装置。
【請求項3】
音声チャネル種別に応じて、電話網の2線4線変換により生じるエコーの消去処理を行うエコーキャンセラ部と、
音声チャネルごとに、音声通話開始/終了の情報、無音パターンおよび音声レベルを検出し、それらの検出結果を前記音声チャネル種別に応じて論理判定し、前記音声チャネル種別に応じた前記エコーキャンセラ部のON/OFFを制御するエコーキャンセラON/OFF制御部と
を備えたエコーキャンセラ装置において、
前記エコーキャンセラON/OFF制御部は、第2の音声チャネル種別に対して、
前記音声レベルが閾値L以上の場合に前記エコーキャンセラ部をONとし、前記音声レベルが閾値L未満で設定値T2以上継続する場合に前記エコーキャンセラ部をOFFとする制御手段を有する
ことを特徴とするエコーキャンセラ装置。
【請求項4】
請求項に記載のエコーキャンセラ装置において、
前記エコーキャンセラON/OFF制御部は、前記第2の音声チャネル種別に応じて、前記音声レベルの判定に用いる閾値Lと、前記音声レベルが閾値L未満であるときの継続時間の検出に用いる設定値T2を設定する構成である
ことを特徴とするエコーキャンセラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話網の2線4線変換により生じるエコーを消去するエコーキャンセラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、長距離中継回線を介する電話通信システムのエコーキャンセラの適用例を示す(特許文献1)。ここでは、長距離中継回線として衛星回線を示すが、海底ケーブル回線であってもよい。
【0003】
図3において、電話網に接続される電話機A31と電話機B32は、衛星回線接続装置33,34および衛星回線35を介して接続される。電話網と電話機A31および電話機B32は、2線4線変換器(H)36,37を介して接続される場合に、遠端側信号の一部がエコーとして回り込んで近端側信号に重畳されるので、例えば衛星回線接続装置33,34の電話網側または衛星回線接続装置33,34の内部に、そのエコーを消去するエコーキャンセラ38,39が配置される。
【0004】
ここで、エコーキャンセラ38において、遠端側信号(電話機B32の音声信号)が入出力する端子をRin、Rout とし、近端側信号(電話機A31の音声信号)が入出力する端子をSin、Sout とする。
【0005】
電話機B32から送信された音声信号は、衛星回線35、衛星回線接続装置33、エコーキャンセラ38を介して電話機A31に到達するが、2線4線変換器(H)36でその一部がエコーとして回り込み、電話機A31から送信された音声信号に重畳され、エコーキャンセラ38、衛星回線接続装置33、衛星回線35を介して電話機B32に到達する。このとき、電話機B32から送信された音声信号およびそのエコーは衛星区間をそれぞれ通過し、大きな遅延が発生したエコーが電話機B32に戻るため、エコーキャンセラ38でのエコー消去が重要になる。
【0006】
エコーキャンセラ38では、Rinの音声信号を擬似エコー発生部に入力してエコー信号を予測し、Sinのエコー信号を含む音声信号と反転合成することにより、エコー信号を消去した電話機A31からの音声信号のみをSout に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−289280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、エコーキャンセラでは、音声レベルの判別による無音時の誤切断防止機能や、例えば公衆回線と専用回線のような音声チャネル種別ごと最適化された音声検出アルゴリズムにより高品質なエコー抑圧などが要求される。
【0009】
本発明は、音声チャネルごとにエコーキャンセラのON/OFF制御を的確に実施し、音声チャネル種別に応じた高品質なエコー抑圧を可能にするエコーキャンセラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエコーキャンセラ装置は、音声チャネル種別に応じて、電話網の2線4線変換により生じるエコーの消去処理を行うエコーキャンセラ部と、音声チャネルごとに、音声通話開始/終了の情報、無音パターンおよび音声レベルを検出し、それらの検出結果を前記音声チャネル種別に応じて論理判定し、音声チャネル種別に応じたエコーキャンセラ部のON/OFFを制御するエコーキャンセラON/OFF制御部とを備える。
【0011】
本発明のエコーキャンセラ装置において、エコーキャンセラON/OFF制御部は、第1の音声チャネル種別に対して、無音パターン以外を検出した場合にエコーキャンセラ部をONとし、無音パターンが設定値T1以上継続すればOFFとする制御手段1と、無音パターンを検出しない場合に音声レベルを識別し、音声レベルが閾値L以上の場合にエコーキャンセラ部をONとし、音声レベルが閾値L未満で設定値T1以上継続する場合にエコーキャンセラ部をOFFとする制御手段2とを有する。
【0012】
このエコーキャンセラON/OFF制御部は、第1の音声チャネル種別に応じて、音声レベルの判定に用いる閾値Lと、無音パターンの検出または音声レベルが閾値L未満の継続時間の検出に用いる設定値T1とを設定する構成としてもよい。
【0013】
本発明のエコーキャンセラ装置において、エコーキャンセラON/OFF制御部は、第2の音声チャネル種別に対して、音声レベルが閾値L以上の場合にエコーキャンセラ部をONとし、音声レベルが閾値L未満で設定値T2以上継続する場合にエコーキャンセラ部をOFFとする制御手段を有する。
【0014】
このエコーキャンセラON/OFF制御部は、第2の音声チャネル種別に応じて、音声レベルの判定に用いる閾値Lと、音声レベルが閾値L未満であるときの継続時間の検出に用いる設定値T2を設定する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、音声チャネルごとに、音声通話開始/終了の情報、無音パターンおよび音声レベルを検出し、音声チャネル種別に応じた論理判定を行う。すなわち、無音パターン以外の音声パターンを検出し、かつ音声レベルが閾値L以上の場合に即時にエコーキャンセラ部をONとし、無音パターンが設定値T1以上継続する場合、音声レベルが閾値L未満で設定値T2以上継続する場合にエコーキャンセラ部をOFFとする。これにより、エコーキャンセラ部のON/OFF制御を的確に実施し、音声チャネル種別に応じた高品質なエコー抑圧を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のエコーキャンセラ装置の実施例構成を示す図である。
図2】本発明のエコーキャンセラ装置のエコーキャンセラON/OFF制御部10の構成例を示す図である。
図3】長距離中継回線を介する電話通信システムのエコーキャンセラの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明のエコーキャンセラ装置の実施例構成を示す。
図1において、本発明のエコーキャンセラ装置は、図3に示すエコーキャンセラ38の位置に配置され、エコーキャンセラON/OFF制御部10と、エコーキャンセラ部20により構成される。したがって、図3に示すエコーキャンセラ38と本発明のエコーキャンセラ装置のRin、Rout 、Sin、Sout がそれぞれ対応する。
【0018】
Rinには、電話機B(図3の32)から送信された音声信号が衛星回線(図3の35)を通過して入力する。以下、この音声信号をRin信号という。Rin信号は、Rout から電話網および2線4線変換器(H)36を介して電話機A31に入力するとともに、2線4線変換器(H)36で折り返しのエコー信号が発生する。
【0019】
Sinには、電話機A31から送信された音声信号と、2線4線変換器(H)36で折り返すエコー信号が、混合信号として電話網を介して入力する。以下、この混合信号をSin信号という。
【0020】
本発明の特徴は、Rin信号とSin信号を入力し、例えば 200チャネルの音声チャネルごとに、ST信号(音声通話開始/終了を示す1ビット情報)、無音パターン、音声レベルを検出し、それらの検出結果の音声チャネル種別に応じた論理判定によって、音声チャネル種別に応じたエコーキャンセラ部20のON/OFFを制御するエコーキャンセラON/OFF制御部10を備えるところにある。
【0021】
エコーキャンセラ部20は、エコーキャンセラON/OFF制御部10の音声チャネル種別に応じたON/OFF制御に対応する構成であり、Rin信号から擬似エコー発生部で予測したエコー信号とSin信号とを反転合成し、さらにNLPで残留反響成分を取り除くことにより、エコー信号を消去した電話機A31からの音声信号のみをSout に出力する。
【0022】
図2は、本発明のエコーキャンセラ装置のエコーキャンセラON/OFF制御部10の構成例を示す。
【0023】
図2において、エコーキャンセラON/OFF制御部10は、ST信号検出部11、無音パターン検出部12、音声レベル検出部13、無音検出タイマ14,15、制御部16、エコーキャンセラON/OFF判定部17、音声チャネル種別判定部18により構成される。
【0024】
ST信号検出部11は、Rin信号およびSin信号を入力し、音声チャネルごとにST信号を検出し、音声通話開始/終了をエコーキャンセラON/OFF判定部17に通知する。無音パターン検出部12は、Rin信号およびSin信号を入力し、音声チャネルごとに無音パターン(7FパターンまたはFFパターンなど)を検出する。音声レベル検出部13は、Rin信号およびSin信号を入力し、音声チャネルごとに音声レベルが閾値L以上であるか閾値L未満であるかを検出する。
【0025】
無音検出タイマ14は、無音パターン検出部12が無音パターンを設定値T1以上継続して検出したか否かをエコーキャンセラON/OFF判定部17に通知する。無音検出タイマ15は、音声レベル検出部13で音声レベルが閾値L未満となっていることを設定値T2以上継続して検出したか否かをエコーキャンセラON/OFF判定部17に通知する。
【0026】
制御部16は、Rin信号およびSin信号の音声チャネル種別に応じて、音声レベル検出部13の閾値L、無音検出タイマ14,15の設定値T1,T2、エコーキャンセラON/OFF判定部17の判定論理Cをそれぞれ出力する。なお、Rin信号およびSin信号から音声チャネルごとに音声チャネル種別を判定する音声チャネル種別判定部18を設け、判定した音声チャネル種別を制御部16に通知してもよい。
【0027】
以下、音声チャネル種別に応じて、エコーキャンセラON/OFF判定部17におけるエコーキャンセラ部20のON/OFF判定処理の一例を示す。
【0028】
音声チャネル種別1に対して、ST信号によるエコーキャンセラ部20のON/OFF判定は、Rin信号およびSin信号のST信号がともに「0(通話)」の場合にエコーキャンセラ部20をONとし、そうでなければOFFとする。音声チャネル種別2に対して、Rin信号およびSin信号のST信号のいずれか一方が「0(通話)」の場合にエコーキャンセラ部20をONとし、そうでなければOFFとする。
【0029】
公衆回線に対して、無音パターンの検出によるエコーキャンセラ部20のON/OFF判定は、Rin信号およびSin信号のいずれかにおいて無音パターン以外を検出した場合に、エコーキャンセラ部20をONとし、Rin信号およびSin信号の双方で無音パターンが設定値T1以上継続すればOFFとする。さらに、無音パターンを検出しない場合には音声レベルを識別し、Rin信号およびSin信号のいずれかの音声レベルが閾値L以上の場合に、エコーキャンセラ部20をONとする。また、音声レベルが閾値L未満で設定値T1以上継続する場合に、エコーキャンセラ部20をOFFとする。
【0030】
専用回線に対して、音声レベルの検出によるエコーキャンセラ部20のON/OFF判定は、Rin信号およびSin信号のいずれかの音声レベルが閾値L以上の場合に、エコーキャンセラ部20をONとする。また、音声レベルが閾値L未満で設定値T2以上継続する場合に、エコーキャンセラ部20をOFFとする。
【0031】
また、エコーキャンセラON/OFF制御部10およびエコーキャンセラ部20では、Rin信号と、Sin信号に含まれるRin信号のエコー成分の時間差を検出し、その時間差に対応する距離に応じてエコーを抑圧する量を算定する構成において、音声チャネルごとに上記のON/OFF制御を行い、エコーの的確な抑圧量を算定してエコーの消去を実施するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 エコーキャンセラON/OFF制御部
11 ST信号検出部
12 無音パターン検出部
13 音声レベル検出部
14,15 無音検出タイマ
16 制御部
17 エコーキャンセラON/OFF判定部
18 音声チャネル種別判定部
20 エコーキャンセラ部
31 電話機A
32 電話機B
33,34 衛星回線接続装置
35 衛星回線
36,37 2線4線変換器(H)
38,39 エコーキャンセラ
【要約】
【課題】音声チャネルごとにエコーキャンセラのON/OFF制御を的確に実施し、音声チャネル種別に応じた高品質なエコー抑圧を可能にする。
【解決手段】電話網の2線4線変換により生じるエコーを消去するエコーキャンセラ装置において、音声チャネル種別に応じたエコーの消去処理を行うエコーキャンセラ部と、音声チャネルごとに、音声通話開始/終了の情報、無音パターンおよび音声レベルを検出し、それらの検出結果を音声チャネル種別に応じて論理判定し、音声チャネル種別に応じたエコーキャンセラ部のON/OFFを制御するエコーキャンセラON/OFF制御部とを備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3