(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシーラントフィルムは、プロピレン系ブロック共重合体樹脂を樹脂成分中の70質量%以上含有し、当該プロピレン系ブロック共重合体樹脂として、成膜した際の曇り度が35%以下のプロピレン系ブロック共重合体樹脂を使用したシーラントフィルムであり、赤外吸収法(IR)により測定される配向関数が0.1〜0.6のフィルムである。
【0014】
当該プロピレン系ブロック共重合体樹脂としては、プロピレンと他のα−オレフィンとを含有する樹脂を使用できる。α−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示でき、なかでもエチレンが耐熱性や耐衝撃性に優れているため好ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体は、特に限定されないが、例えば第一工程において、プロピレンを主体とした重合体ブロックを重合し、第二工程において、エチレンとプロピレンの共重合体ブロックを重合して得られる。
【0015】
プロピレン系ブロック共重合体樹脂中のα−オレフィン含有量は、耐衝撃性やヒートシール強度を得やすいことから6〜20モル%であることが好ましく、8〜17モル%であることがより好ましい。
【0016】
プロピレン系ブロック共重合体樹脂の融点は、耐熱性と耐衝撃性のバランスから155〜165℃であることが好ましく、157〜163℃であることがより好ましい。
【0017】
プロピレン系ブロック共重合体樹脂のメルトフローレート(MFR)は、成形が容易であり、また好適な耐衝撃性を得やすいことから、0.5〜10g/10分(230℃、21.18N)であることが好ましく、2〜5g/10分であることがより好ましい。
【0018】
本発明に使用するプロピレン系ブロック共重合体樹脂は、溶融させた樹脂をTダイから押し出し、冷却ロール温度60℃にて冷却して厚み60μmの単層フィルムを成形した際の曇り度が35%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下のプロピレン系ブロック共重合体樹脂である。プロピレン系ブロック共重合体樹脂は、プロピレンと、他のα−オレフィン等のエラストマー成分を含有する樹脂であり、当該曇り度の樹脂はエラストマー系のドメインが細かく分散し、好ましくはスジ状に分散した相状態となる樹脂である。このため、大きなドメインが分散する相状態の樹脂に対し、引き裂き時の直進性が阻害されにくく、好適に引き裂きが可能となるものと推定される。なお、当該曇り度はJIS K7105に基づき測定される。
【0019】
本発明のシーラントフィルムは、プロピレン系ブロック共重合体樹脂を樹脂成分中の70質量%以上含有する。当該範囲とすることで、包装袋として好適な耐熱性と耐破袋性とを実現できる。当該含有量は、樹脂成分中の75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。なお、本発明のシーラントフィルムを多層構成とする場合には、各層のプロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量を当該範囲とすることが好ましい。
【0020】
本発明のシーラントフィルムは、樹脂成分として上記プロピレン系ブロック共重合体樹脂のみを使用することも好ましいが、高溶融張力ポリプロピレン樹脂を併用することも好ましい。高溶融張力ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂の主鎖に長鎖分岐を導入した構造や、架橋させた構造を有しており、溶融時の張力を高めたものである。高溶融張力ポリプロピレン樹脂を含有することで、配向結晶化によりフィルムの剛性が高くなり引き裂きやすさが促進される。特にインフレーション方式でフィルムを成膜する場合、従来溶融張力が弱いことに起因して、インフレーション成形が困難であったポリプロピレン系樹脂でも、安定した成膜を可能とする点で好ましい。
【0021】
高溶融張力ポリプロピレン樹脂の含有量は、シーラントフィルムに含まれる樹脂成分中の0.1〜25質量%とすることが好ましく、2〜20質量%とすることがより好ましい。上記範囲とすることで、好適な成膜性や耐衝撃性を実現しやすくなる。
【0022】
高溶融張力ポリプロピレン樹脂の組成としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、或いはプロピレン−エチレンブロック共重合体のいずれでも良いが、耐熱性の点で、プロピレン単独重合体のタイプが好ましい。メルトフローレート(MFR)は、0.1〜18g/10分(230℃、21.18N)が好ましく、0.5〜8g/10分(230℃、21.18N)がより好ましく、0.8〜6.0g/10分(230℃、21.18N)がさらに好ましい。好適な成膜性やプロピレン系ブロック共重合体との良好な相溶性を得やすくなる。また、溶融張力(230℃)は0.03N〜0.40Nが好ましく、0.08〜0.25Nがより好ましい。
【0023】
本発明のシーラントフィルムは、他の樹脂を併用することも好ましい。当該他の樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレン等)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられる。
【0024】
なかでも、エチレン系エラストマー、特に、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体は、プロピレン系ブロック共重合体との相溶性が良好で、耐衝撃性が高くなるため好ましく使用できる。
【0025】
当該他の樹脂を使用する場合には、他の樹脂の含有量をシーラントフィルムに含まれる樹脂成分中の2〜20質量%とすることが好ましく、5〜15質量%とすることがより好ましい。当該範囲とすることで、耐衝撃性を向上させやすく、また、良好な耐熱性や剛性を得やすくなる。
【0026】
エチレン系エラストマーのメルトフローレート(MFR)は、0.5〜10g/10分(190℃、21.18N)が好ましいが、好適な引き裂き性が得やすいことから、3〜10g/10分であることがより好ましい。また、プロピレン系ブロック共重合体に配合した際の良好な成形性を得やすくなる。
【0027】
エチレン系エラストマーの密度は、0.870〜0.943g/cm
3の範囲が好ましい。耐衝撃性、或いは耐衝撃性と剛性の両立など、プロピレン系ブロック共重合体の改質目的に合わせて、適宜選択すればよい。特に耐衝撃性を向上させたい場合には、0.870〜0.910g/cm
3であることが好ましく、特に剛性を高めたい場合には0.910〜0.943g/cm
3であることが好ましい。
【0028】
本発明のシーラントフィルム中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。
【0029】
本発明のシーラントフィルムは、上記プロピレン系ブロック共重合体樹脂を使用したフィルムであり、その赤外吸収法(IR)により測定される配向関数が0.05〜0.6、好ましくは0.1〜0.5、より好ましくは0.2〜0.4である。当該配向関数の範囲であると、弱い配向でありながらフィルム引き裂き時の好適な直進カット性が得られると共に、延伸による強い配向が生じないことからシール温度の高温化の影響が生じにくく、好適な易ヒートシール性を実現できる。
【0030】
当該配向関数は、赤外吸収法(IR)により測定される配向度であり、具体的には、透過赤外分光光度計を用いて測定した赤外二色比(D)より、下記の式から算出される。
【0031】
配向度F=(Dmax−1)/(Dmin+2)
Dmax:偏光子を回転させて測定した最大透過率
Dmin:同様に測定した最小透過率
なお、当該数値は997cm
−1における吸収を用いて算出する。
【0032】
本発明のシーラントフィルムの厚みは使用する用途や態様に応じて適宜調整すればよいが、包装用途における耐熱性や流通時の耐破袋性、ヒートシール性等の観点から、その総厚みが20〜150μmであることが好ましく、40〜100μmであることがより好ましい。
【0033】
本発明のシーラントフィルムは、単層構成であっても、複数層が積層された多層構成であってもよい。多層構成とする場合には、各層が同一の樹脂組成であっても良いが、異なる樹脂組成であってもよい。いずれの場合にも、フィルム中の上記プロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量を70質量%以上とすることで、好適なシール性や引き裂き性を実現でき、各層が上記例示した配合にて構成されることが好ましい。
【0034】
本発明のシーラントフィルムの好ましい構成の例としては、両表層の表面性状を制御しやすいことから、二層構成のシーラントフィルム又は三層構成のシーラントフィルムの構成を例示できる。
【0035】
本発明で用いるシーラントフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、多層フィルムの各層に用いる樹脂(二種以上の樹脂や添加剤を含有する樹脂混合物を含む)、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で積層した後、インフレーション法やTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、費用対効果にも優れたフィルムが得られるので好ましい。
【0036】
より好ましい製造方法としては、上記配向関数の範囲への制御が容易であることから、インフレーション法により製造することが好ましい。当該インフレーション法を用いた製造方法としては、フィルムを製造する樹脂、多層構成の場合には各層に用いる樹脂を押出機で加熱溶融させ、多層サーキュラーダイを用いた、インフレーション法によりフィルム状に共押出することで成形できる。
【0037】
インフレーション法としては、空冷インフレーション法が好ましく、上向きの空冷インフレーション法が特に好ましく使用できる。フィルムを単層とする場合には押出機一台と単層サーキュラーダイを使用し、多層とする場合には複数台の押出機と多層サーキュラダイを使用する。これらを用いて円筒状の溶融樹脂を上向きに押し出したのち、必要に応じて円筒状の溶融樹脂を膨張させて引き取ると共に、空冷にて溶融樹脂を冷却固化させた後、適宜裁断して所望のフィルムを得ることができる。
【0038】
本発明においては、当該空冷インフレーション法にて、ダイギャップと所望のフィルム厚みに対し、縦方向及び横方向へ引き延ばされる倍率を調整することが好ましい。当該倍率としては、ダイスの出口間隙に対し、縦方向へ引き延ばされる倍率(溶融樹脂を引き取る際の空冷下での延伸倍率)を12倍以上とすることが好ましく、15倍以上とすることがより好ましく、20倍以上とすることがさらに好ましく、25倍以上とすることが特に好ましい。また、横方向へ引き延ばされる倍率は3倍以下とすることが好ましく、2.5倍以下とすることがより好ましく、2倍以下とすることがさらに好ましく、1.5倍以下とすることが特に好ましい。両方向の倍率を当該範囲とすることで、好適なシール性と直進カット性とを得やすくなる。縦方向の倍率の上限及び横方向の引き延ばし倍率の下限は特に制限されないが、縦方向は80倍以下、横方向は1倍以上であることが好ましい。なお、溶融樹脂を押し出す際のダイギャップの厚みは1〜4mmとすることが好ましい。
【0039】
インフレーション法における製造条件であるブロー比は、前述の横方向へ引き延ばされる倍率から、1.0〜3.0が好ましく、1.0〜2.5がより好ましく、1.1〜2.0とすることがさらに好ましく、1.1〜1.5とすることが特に好ましい。ラインスピードは、ダイ径、ブロー比、及び吐出量によって異なるが、概ね5〜150m/minが好ましい。ダイ径、ブロー比が同じ場合、ラインスピードが速いほど配向度が向上するため好ましい。
【0040】
本発明のシーラントフィルムは、レトルト用包装材として使用する場合、他の基材フィルムと貼りあわせて使用できる。他の基材フィルムとしては、特に限定されるものではないが、本発明の効果を容易に発現させる観点から、プラスチック基材、特には二軸延伸された樹脂フィルムを用いることが好ましい。また透明性を必要としない用途の場合はアルミ箔を組み合わせて使用することもできる。
【0041】
延伸された樹脂フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、アルミナ蒸着PET、シリカ蒸着PET、アルミナ・シリカ二元蒸着PET、シリカ蒸着PA、アルミナ蒸着PA等が挙げられる。これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。
【0042】
本発明のシーラントフィルムと、延伸された各種の基材フィルムを貼りあわせる方法としては、主に二つの加工方法が使用されている。一つは、本発明のシーラントフィルム、又は基材フィルムのラミネート面に必要に応じてアンカーコート剤を塗布し、加熱溶融されたポリマー膜(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)を、本発明のシーラントフィルムと基材フィルムのラミネート面の間に薄膜状に押し出して圧着、積層させる、押出ラミネート法である。もう一つは、基材フィルムのラミネート面に接着剤を塗布した後、本発明のシーラントフィルムと基材フィルムを圧着、積層させるドライラミネート法であるが、レトルト包装に使用する場合ドライラミネート法が好ましい。
【0043】
ラミネート用の接着剤は、ポリオール/イソシアネートによる硬化が一般的であり、レトルト用途等の高機能用途には多く利用されている。また従来、貼り合わせはアルミ箔とシーラントフィルムの組み合わせが一般的であったが、各種の透明蒸着フィルムが市販されるようになっており、内容物の視認性向上の要求から、透明蒸着フィルムとシーラントフィルムの貼り合わせも多くなっている。
【0044】
ラミネート用接着剤に用いられるポリオールとしては、例えば、後述するポリオールそのもの、或いはポリオールと後述するポリカルボン酸類とを反応させて得られるポリエステルポリオール、或いは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物類を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマー類を付加重合したポリエーテル類等が挙げられる。
【0045】
前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等のグリコール類、プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物類を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマー類を付加重合したポリエーテル類等が挙げられる。
【0046】
前記ポリカルボン酸類としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類が挙げられる。
【0047】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する有機化合物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられる。
【0048】
また、前記イソシアネートと前記ポリオールとをイソシアネート基が過剰となる混合比で反応したものを用いてもよい。
【0049】
接着剤において、前記ポリオールの水酸基当量と前記ポリイソシアネートのイソシアネート当量との当量比ポリオール/イソシアネートが0.5〜5.0であることが好ましい。
【0050】
本発明の包装材は、上記シーラントフィルムをシーラントとする構成により、良好なシール性と、好適な裂け性による良好な開封性を実現できる。また、好適な耐熱性や耐破袋性を実現できることから、上記シーラントフィルムを各種基材と積層して形成される包装材は、レトルト食品用の包装材として好適に適用できる。
【0051】
本発明の包装材は、平袋型、自立性包装袋(スタンディングパウチ)型、チュ−ブ型等の各種形状への製袋して包装袋として好適に使用できる。具体的には、例えば、フィルム状の包装材1枚をシーラント層同士が対向するように折り重ね、または、本発明のフィルム状の包装材2枚をシーラント層同士が対向するように重ね合わせ、その周辺端部をヒートシールして、レトルト食品等の包装袋(レトルトパウチ)に製袋できる。また、必要に応じて、VノッチやIノッチ等の開封開始部を設けてもよい。
【0052】
本発明の包装材及び当該包装材を使用したレトルト食品用包装袋は、ボイル、レトルト殺菌等の高温熱水条件下での処理を必要とする食品の包装に好適に使用でき、例えば、カレー、シチュー、スープ、調理用ソース等の各種のレトルト食品包装用途に好適に適用できる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)(フィルム成膜時のヘイズ12%、MFR4.0g/10min(230℃、21.18N)、融点162℃)を、口径50mmの押出機に供給して250℃で溶融し、溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法のフィルム製造装置に(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)に供給して溶融押出を行って、全厚60μmのシーラントフィルムを得た。また、オンラインで片面にコロナ処理を施した。
【0054】
(実施例2)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)95質量%と、エチレン−ブテン1ランダム共重合体(1)(MFR3.5g/10min(190℃、21.18N)、密度0.885g/cm
3)5質量%の樹脂混合物を、層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)に供給し、プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)を95質量%と、エチレン−αオレフィン共重合体(1)(MFR3.5g/10min(190℃、21.18N)、密度0.938g/cm
3)5質量%の樹脂混合物を、層(C)用押出機用(口径40mm)に供給して250℃で溶融した。その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が層(A)/層(B)/層(C)の3層構成で、各層の厚み比率が20/60/20%の全厚60μmのシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0055】
(実施例3)
押出機に供給する樹脂を、プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)95質量%と、高溶融張力のプロピレン単独重合体(1)(MFR1.0g/10min(230℃、21.18N)、融点161℃、溶融張力(230℃)0.2N)5質量%の樹脂混合物とした以外は、実施例1と同様にして、シーラントフィルムを得た。また、オンラインで片面にコロナ処理を施した。
【0056】
(実施例4)
押出機に供給する樹脂を、プロピレン−エチレンブロック共重合体(2)(フィルム成膜時のヘイズ24%、MFR2.5g/10min(230℃、21.18N)、融点163℃)とした以外は、実施例1と同様にして、シーラントフィルムを得た。また、オンラインで片面にコロナ処理を施した。
【0057】
(実施例5)
押出機に供給する樹脂を、プロピレン−エチレンブロック共重合体(2)95質量%と、高溶融張力のプロピレン単独重合体(1)5質量%の樹脂混合物とした以外は、実施例4と同様にして、シーラントフィルムを得た。また、オンラインで片面にコロナ処理を施した。
【0058】
(実施例6)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)を、層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)、層(C)用押出機(口径40mm)に供給して180〜210℃で溶融した。その溶融した樹脂を、直径200mm、ダイギャップ2mmのスパイラル型3層ダイを備えた空冷インフレーション法の共押出多層フィルム製造装置に供給して、ブロー比が1.5となるように共溶融押出を行って、フィルムの層構成が、外層側から層(A)/層(B)/層(C)の3層構成で、各層の厚みが、20/60/20%の全厚60μmのシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0059】
(実施例7)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)95質量%と、高溶融張力のプロピレン単独重合体(1)(MFR1.0g/10min(230℃、21.18N)、融点161℃)5質量%の樹脂混合物を、層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)に供給し、プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)を層(C)用押出機(口径40mm)に供給して180〜210℃で溶融した。その溶融した樹脂を、直径200mm、ダイギャップ2mmのスパイラル型3層ダイを備えた空冷インフレーション法の共押出多層フィルム製造装置に供給して、ブロー比が1.5となるように共溶融押出を行って、フィルムの層構成が、外層側から層(A)/層(B)/層(C)の3層構成で、各層の厚みが、20/60/20%の全厚60μmのシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0060】
(実施例8)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(2)を85質量%、エチレン−ブテン1ランダム共重合体(1)10質量%、高溶融張力のプロピレン単独重合体(1)5質量%の樹脂混合物を、層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)に供給し、プロピレン−エチレンブロック共重合体(2)を90質量%、エチレン−ブテン1ランダム共重合体(1)10質量%の樹脂混合物を層(C)用押出機(口径40mm)に供給した以外は、実施例7と同様にして、シーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0061】
(実施例9)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(2)を85質量%、エチレン−αオレフィン共重合体(1)10質量%、高溶融張力のプロピレン単独重合体(1)5質量%の樹脂混合物をそれぞれ層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)に供給し、プロピレン−エチレンブロック共重合体(2)を90質量%、エチレン−αオレフィン共重合体(1)10質量%の樹脂混合物を層(C)用押出機(口径40mm)に供給した以外は、実施例3と同様にして、シーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0062】
(実施例10)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)を70質量%、エチレン−ブテン1ランダム共重合体(1)10質量%、高溶融張力のプロピレン単独重合体(1)20質量%の樹脂混合物を層(A)及び層(B)用押出機に供給し、プロピレン−エチレンブロック共重合体(1)を90質量%、エチレン−ブテン1ランダム共重合体(1)10質量%の樹脂混合物を層(C)用押出機に供給し、実施例7と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0063】
(実施例11)
共溶融押出時のブロー比を2.5とした以外は実施例7と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0064】
(比較例1)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(H1)(フィルム成膜時のヘイズ45%、MFR2.0g/10min(230℃、21.18N)、融点161℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、オンラインで片面にコロナ処理を施した。
【0065】
(比較例2)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(H2)(フィルム成膜時のヘイズ80%、MFR2.0g/10min(230℃、21.18N)、融点164℃)を用いてそれぞれ、層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)、層(C)用押出機用(口径40mm)に供給した以外は、実施例2と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0066】
(比較例3)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(H1)を、層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)、層(C)用押出機用(口径40mm)に供給した以外は、実施例3と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0067】
(比較例4)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(H2)を90質量%、エチレン−ブテン1ランダム共重合体(1)10質量%の樹脂混合物をそれぞれ、層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)、層(C)用押出機用(口径40mm)に供給した以外は、実施例3と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0068】
(比較例5)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(2)90質量%と、エチレン-ブテン1ランダム共重合体(1)10質量%の樹脂混合物を、層(A)用押出機(口径40mm)、層(B)用押出機(口径50mm)、及び層(C)用押出機用(口径40mm)に供給して250℃で溶融した。その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が層(A)/層(B)/層(C)の3層構成で、各層の厚み比率が20/60/20%、全厚みが240μmとなるように押出た。40℃の水冷金属冷却ロール上で固化し、次いで、近接ロール延伸法により120℃で縦4倍延伸した後、125℃で熱固定し、全厚み60μmのシーラントフィルムを得た。また、オンラインで層(A)の表面にコロナ処理を施した。
【0069】
上記実施例及び比較例にて使用した材料及び得られたシーラントフィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果は下表に示した。
【0070】
(1)ヘイズ値
プロピレン−エチレンブロック共重合体を、口径50mmの押出機に供給して250℃で溶融し、溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法のフィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)に供給して溶融押出し、冷却ロール温度を40℃として全厚60μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムのヘイズ(曇り度)を、JIS K7105に基づきヘイズメーター(日本電飾工業株式会社製)を用いて測定した(単位:%)。
【0071】
(2)配向度
日本分光株式会社製透過赤外分光光度計を用いて測定した赤外二色比(D)より、下記の式から算出した。
配向度F=(Dmax−1)/(Dmin+2)
Dmax:偏光子を回転させて測定した最大透過率
Dmin:同様に測定した最小透過率
また、997cm
−1における吸収を用いて算出した。
【0072】
(3)引き裂き強度
JIS K7128−1(トラウザー法)に従い、23℃、50%Rhの恒温室内にて流れ方向の引き裂き強度を測定した。
1.2N以下 ◎ : 引き裂き性に優れる
1.2〜2.0N ○ : 引き裂き性を有するがやや重い
2.0N以上 × : 引き裂き性に劣る
【0073】
(4)直進カット性
得られたシーラントフィルムから、流れ方向の長さが150mm、幅方向の長さが50mmの試験片を切り出し、幅方向の中央に15mm幅の切れ込みを10mm入れ、切れ込みの先端の幅を実測した(W0)。切れ込みの先端部に、予め用意した厚み0.3mm、幅15mm、長さ160mmのポリエステルシートをテープで貼り付けた。貼り付けたポリエステルシートを180°方向に折り返し、その先端部と反対側の切れ込み部を除いた試験片を引っ張り試験機に取り付け、300mm/minのスピードで、100mm引き裂き、その終点の幅を実測した(W1)。得られた測定値にもとづき、以下の式から保持率を求め、直進カット性の指標とした。
保持率[%]= W1/W0×100
100±10% ◎ : 直進カット性に優れる
100±10〜20% ○ : 直進カット性を有するがやや劣る
100±20%超 × : 直進性は無い
【0074】
(5)シール強度
厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム上に、ワイヤーバーを用いて、塗布厚みが3.5g/m
2となるようにポリエステル系接着剤を塗布した。接着剤を乾燥後、上記にて得られたシーラントフィルムのコロナ処理面を貼り合わせ、40℃で24時間乾燥し、ヒートシール試験用ラミネートフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、190℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした試験片を作成し、オートクレーブを用いて、121℃、30分の加熱処理を施した。加熱処理後の試験片を15mm幅に裁断し、引張試験機にて、シール強度を測定した。30N/15mm以上のものは、包装用途において良好なシール強度を有するものと評価した。
【0075】
(5)フィルムインパクト
シーラントフィルムを0℃の環境下で4時間以上状態調整した。状態調整後、テスター産業製BU−302型フィルムインパクトテスターを用いて、振り子の先端に1インチのヘッドを取り付け、衝撃強度を測定した。0.5J以上のものは、包装用途において良好な耐衝撃性を有するものと評価した。
【0076】
(6)耐レトルト性
厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム上に、ワイヤーバーを用いて、塗布厚みが3.5g/m2となるようにポリエステル系接着剤を塗布した。接着剤を乾燥後、シーラントフィルムのコロナ処理面を貼り合わせ、40℃で3日間乾燥し、耐レトルト試験用ラミネートフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、内寸100mm×160mmとなるよう、190℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした3方袋を作成し、水200mlを入れ、同じ条件で密封シールした。次いで、レトルト釜を用いて、121℃、30分の加熱処理を施した。
〇:破袋や微量な水漏れ等の発生が無い。
×:破袋、或いは水漏れが発生。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
上記表より明らかなとおり、実施例1〜11の本願発明のシーラントフィルムは、引き裂きが容易な引き裂き強度と良好な直進カット性を有し、優れた引き裂き性を有し、かつ、好適なシール性を有するものであった。一方、比較例1〜4のシーラントフィルムは、良好な引き裂き性が得られないものであった。また、比較例5のシーラントフィルムはシール強度が低く、ヒートシール界面で剥離が生じるものであった。