(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
また、本発明において、質量で表される全ての百分率や部は、重量で表される百分率や部と同様である。
【0021】
本発明において「全固形分」とは、感光性樹脂組成物中又は後述するインク中に含まれる、溶剤以外の全成分を意味するものとする。
本発明において、重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を指す。
また、本発明において、「アミン価」とは、特に断りのない限り、有効固形分換算のアミン価を表し、分散剤の固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表される値である。なお、測定方法については後述する。
【0022】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性樹脂、(b)光重合性モノマー、(c)光重合開始剤及び(d)色材を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(c)光重合開始剤が、下記一般式(I)で表される光重合開始剤(c1)、及び、波長320nm〜400nmの範囲における極大吸収波長が334nm以上である光重合開始剤(c2)を含有することを特徴とする。なお、本発明において(c)光重合開始剤の「極大吸収波長」とは、波長320nm〜400nmの範囲における極大吸収波長を意味するものとする。
【0024】
式(I)中、R
1は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R
2は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
kは0又は1を表す。
R
3〜R
6は各々独立に、任意の1価の置換基を表す。
l、m及びoは各々独立に、0〜3の整数を表す。nは0又は1を表す。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物は更に、分散剤、チオール類を含有していてもよく、必要に応じて、密着向上剤、塗布性向上剤、現像改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料誘導体等のその他の配合成分を含んでいてもよく、通常、各配合成分が、有機溶剤に溶解又は分散した状態で使用される。
本発明の特徴は、感光性樹脂組成物において(c)光重合開始剤が、光重合開始剤(c1)及び光重合開始剤(c2)を含有することにある。まず、(c)光重合開始剤について説明する。
【0026】
<(c)光重合開始剤>
本発明における(c)光重合開始剤は、後述の一般式(I)で表される光重合開始剤(c1)、及び、極大吸収波長が334nm以上である光重合開始剤(c2)を含有する。
【0027】
<光重合開始剤(c1)>
光重合開始剤(c1)は、下記一般式(I)で表される光重合開始剤である。
【0029】
式(I)中、R
1は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R
2は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
kは0又は1を表す。
R
3〜R
6は各々独立に、任意の1価の置換基を表す。
l、m及びoは各々独立に、0〜3の整数を表す。nは0又は1を表す。
【0030】
このように、前記一般式(I)で表される光重合開始剤(c1)を含有することで、色材粒子表面への光重合開始剤の吸着が促進され、露光時の光重合開始剤の光吸収率が向上すると共に、樹脂成分のUV(Ultraviolet)光透過性が上がって内部硬化性が向上し、細線密着性が良好になるものと考えられる。
【0031】
(R
1)
前記式(I)において、R
1は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R
1におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも、それらが結合したものであってもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また好ましくは12以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。アルキル基の炭素数を前記上限値以下とすることで、架橋密度が高くなる傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、感度の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、メトキシ基又は水酸基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0032】
R
1における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。芳香族環基の炭素数を前記下限値以上とすることで保存安定性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向がある。
【0033】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
これらの中でも溶剤溶解性の観点から、1個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、1個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0034】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、メトキシ基又は水酸基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0035】
これらの中でも硬化性の観点から、R
1は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0036】
(R
2)
前記式(I)において、R
2は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R
2におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも、それらが結合したものであってもよいが、溶剤溶解性の観点から直鎖状又は分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは5以上、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下、特に好ましくは6以下である。アルキル基の炭素数を前記下限値以上とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、溶剤溶解性の観点から、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、又はシクロペンチルが好ましく、イソブチル基又はイソペンチル基がより好ましく、イソペンチル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数6〜10の芳香族環基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0037】
R
2における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。芳香族環基の炭素数を前記下限値以上とすることで分子が安定となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向がある。
【0038】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
これらの中でも溶剤溶解性の観点から、1個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、1個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0039】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基又は水酸基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0040】
これらの中でも感度の観点から、R
2は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、イソペンチル基であることがさらに好ましい。
【0041】
(k)
前記式(I)において、kは0又は1を表す。感度の観点からはkが0であることが好ましく、一方で溶剤溶解性の観点からはkが1であることが好ましい。
【0042】
(R
3〜R
6)
前記式(I)において、R
3〜R
6は各々独立に、任意の1価の置換基を表す。
任意の1価の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基;F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子;炭素数1〜10のアシル基;炭素数1〜10のアルキルエステル基;炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基;炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基;炭素数4〜10の芳香族環基;アミノ基;炭素数1〜10のアミノアルキル基;水酸基;ニトロ基;CN基等が挙げられる。これらの中でも溶剤溶解性の観点から、メチル基、メトキシ基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R
3、R
4及びR
6において、l、m及びoが2以上の場合、複数のR
3、R
4及びR
6同士が結合して環を形成していてもよい。環は脂肪族環であっても、芳香族環であってもよい。
【0043】
(l、m、n、o)
前記式(I)において、l、m及びoは各々独立に、0〜3の整数を表し、nは0又は1を表す。
感度の観点から、l、m及びoは各々独立に0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。また、感度の観点から、nは0であることが好ましい。
【0044】
前記一般式(I)で表される光重合開始剤は、溶剤溶解性と感度のバランスに加えて、色材との適度な相互作用の観点から、下記一般式(I−1)で表される光重合開始剤であることが好ましい。
【0046】
式(I−1)中、R
1〜R
6、k〜oは前記式(I)と同義である。
【0047】
前記光重合開始剤(c1)の極大吸収波長は特に限定されないが、感度の観点から、322nm以上が好ましく、325nm以上がより好ましく、328nm以上がさらに好ましく、329nm以上がよりさらに好ましく、330nm以上が特に好ましく、また、337nm以下が好ましく、336nm以下がより好ましく、334nm以下がさらに好ましく、333nm以下がよりさらに好ましい。前記範囲内にすることでUV光源が発する333nmの輝線から365nmの輝線(i線)の間の光を有効利用できる傾向がある。
【0048】
前記光重合開始剤(c1)の製造方法は特に限定されないが、例えば、国際公開第2015/036910号に記載の方法を採用することができる。
また、前記光重合開始剤(c1)の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0053】
本発明における(c)光重合開始剤は、前記光重合開始剤(c1)の他に、極大吸収波長が334nm以上である光重合開始剤(c2)を含有する。
【0054】
<光重合開始剤(c2)>
光重合開始剤(c2)は、極大吸収波長が334nm以上である光重合開始剤である。
このように、光重合開始剤(c1)に加えて、極大吸収波長が334nm以上である光重合開始剤(c2)を用いることで、有効利用できる光波長範囲が広がり、感度が良好になると考えられる。
【0055】
前記光重合開始剤(c2)の極大吸収波長は、334nm以上であれば特に限定されないが、感度の観点から、335nm以上が好ましく、336nm以上がより好ましく、338nm以上がさらに好ましく、340nm以上がよりさらに好ましく、345nm以上が特に好ましく、350nm以上が最も好ましく、また、390nm以下が好ましく、380nm以下がより好ましく、375nm以下がさらに好ましく、370nm以下が特に好ましい。光重合開始剤(c2)の極大吸収波長を前記下限値以上とすることで内部硬化が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。
更に、光重合開始剤(c2)と光重合開始剤(c1)の極大吸収波長の差は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましく、30nm以上が特に好ましく、また、60nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、40nm以下がさらに好ましく、適当な極大吸収波長を持つ光重合開始剤(c1)と光重合開始剤(c2)の組合せを選択して用いればよい。光重合開始剤(c1)と光重合開始剤(c2)の極大吸収波長の差を前記下限値以上とすることで有効利用できる光波長範囲が広がり高感度化する傾向があり、前記上限値以下とすることでUV光のi線(365nm)に対する感度が高くなる傾向がある。
【0056】
前記光重合開始剤(c2)の化学構造は特に限定されないが、感度の観点から、オキシムエステル系光重合開始剤であることが好ましく、特に、フルオレン骨格又はカルバゾール骨格を有する光重合開始剤であることが好ましい。なお、フルオレン骨格又はカルバゾール骨格を有するとは、分子構造中にフルオレン環又はカルバゾール環を有することを意味し、それらの環は置換されていてもよい。
また、表面硬化性の観点から、光重合開始剤(c2)は下記一般式(II)で表される光重合開始剤であることが好ましい。
【0058】
式(II)中、R
7は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R
8は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
pは0又は1を表す。
R
9は任意の1価の置換基を表す。qは0〜3の整数を表す。
Xは−N(R
10)−又は−C(R
11)(R
12)−を表す。
R
10〜R
12は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。R
11とR
12は相互に結合して環を形成していてもよい。
【0059】
(R
7)
前記式(II)において、R
7は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R
7におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも、それらが結合したものであってもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下、最も好ましくは2以下であり、通常1以上である。アルキル基の炭素数を前記上限値以下とすることで、架橋密度が高くなる傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、感度の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数6〜10の芳香族環基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0060】
R
7における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。芳香族環基の炭素数を前記下限値以上とすることで分子が安定となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向がある。
【0061】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
これらの中でも溶剤溶解性の観点から、1個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、1個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0062】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基又は水酸基が好ましい。
【0063】
これらの中でも感度の観点から、R
7は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0064】
(R
8)
前記式(II)において、R
8は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R
8におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも、それらが結合したものであってもよいが、溶剤溶解性の観点から直鎖状又は分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。一方で、感度の観点からは直鎖状アルキル基と環状アルキル基とを結合した基が好ましい。
【0065】
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、よりさらに好ましくは5以上、特に好ましくは6以上、最も好ましくは7以上、また、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下、特に好ましくは8以下である。アルキル基の炭素数を前記下限値以上とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。
【0066】
アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数6〜10の芳香族環基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0067】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基などが挙げられる。これらの中でも、溶剤溶解性の観点から、イソペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基、又はシクロヘキシルエチル基が好ましく、シクロペンチルエチル基又はシクロヘキシルエチル基がより好ましく、シクロヘキシルエチル基がさらに好ましい。
【0068】
R
8における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。芳香族環基の炭素数を前記下限値以上とすることで分子が安定となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向がある。
【0069】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
これらの中でも溶剤溶解性の観点から、1個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、1個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0070】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1〜5のアルコキシ基又は水酸基が好ましい。置換基のアルキル鎖部分は、直鎖状でも分岐状でもよく、更に、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルキルチオ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などの置換基を有していてもよい。
【0071】
これらの中でも光吸収波長の長波長化などの観点から、R
8は置換基を有していてもよい芳香族環基であることが好ましく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であることがより好ましい。
【0072】
(p)
前記式(II)において、pは0又は1を表す。感度の観点からはpが0であることが好ましく、一方で溶剤溶解性の観点からはpが1であることが好ましい。
【0073】
(R
9)
前記式(II)において、R
9は任意の1価の置換基を表す。
任意の1価の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基;F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子;炭素数1〜10のアシル基;炭素数1〜10のアルキルエステル基;炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基;炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基;炭素数4〜10の芳香族環基;アミノ基;炭素数1〜10のアミノアルキル基;水酸基;ニトロ基;CN基;置換基を有していてもよいベンゾイル基;置換基を有していてもよいテノイル基等が挙げられる。ベンゾイル基、または、テノイル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基等が挙げられ、0〜3個の範囲で有してもよい。これらの中でも吸収波長の長波長化の観点から、ニトロ基、2−テノイル基が好ましく、ニトロ基がより好ましい。
R
9において、qが2以上の場合、複数のR
9同士が結合して環を形成していてもよい。環は脂肪族環であっても、芳香族環であってもよい。
【0074】
(q)
前記式(II)において、qは0〜3の整数を表す。ラジカル生成効率の観点から、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0075】
(X)
前記式(II)において、Xは−N(R
10)−又は−C(R
11)(R
12)−を表す。これらの中でも、感度の観点からは−N(R
10)−が好ましい。
【0076】
(R
10〜R
12)
前記式(II)において、R
10〜R
12は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
【0077】
R
10〜R
12におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも、それらが結合したものであってもよいが、感度の観点から直鎖状又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは5以上、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。アルキル基の炭素数を前記下限値以上とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、感度と溶剤溶解性のバランスの観点から、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、又はブチル基が好ましく、エチル基又はプロピル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数6〜10の芳香族環基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0078】
R
10〜R
12における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。芳香族環基の炭素数を前記下限値以上とすることで分子が安定となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向がある。
【0079】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。これらの中でも溶剤溶解性の観点から、1個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、1個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0080】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基又は水酸基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0081】
また、R
11とR
12は相互に結合して環を形成していてもよく、該環は脂肪族環でもよく芳香族環でもよい。
【0082】
これらの中でも感度の観点から、R
10〜R
12は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、R
10はメチル基又はエチル基であることが、R
11及びR
12はブチル基であることがさらに好ましい。
【0083】
また、光重合開始剤(c2)の市販品としては、BASF社製のOXE−02、常州強力電子新材料社製のTR−PBG−304、TR−PBG−314、TR−PBG−358などが挙げられる。また、日本国特許第4223071号公報に記載のもの、国際公開第2016/010036号に記載のもの、日本国特許第5682094号公報に記載のものを用いることもできる。
【0084】
光重合開始剤(c2)の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、式中、nBuはノルマルブチル基を表す。
【0089】
(c)光重合開始剤は、前記光重合開始剤(c1)及び前記光重合開始剤(c2)以外の、その他の光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
その他の光重合開始剤としては、例えば、日本国特開昭59−152396号公報、日本国特開昭61−151197号各公報に記載のチタノセン化合物を含むメタロセン化合物;日本国特開2000−56118号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール誘導体;日本国特開平10−39503号公報記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体、ハロメチル−s−トリアジン誘導体、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α−アミノアルキルフェノン誘導体;日本国特開2000−80068号公報、日本国特開2006−36750号公報等に記載されているオキシムエステル誘導体等が挙げられる。
【0090】
具体的には、例えば、チタノセン誘導体類としては、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,4−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウム〔2,6−ジ−フルオロ−3−(ピロ−1−イル)−フェニ−1−イル〕等が挙げられる。
【0091】
また、ビイミダゾール誘導体類としては、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2’−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等が挙げられる。
【0092】
また、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体類としては、2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−(6”−ベンゾフリル)ビニル)〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
【0093】
また、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類としては、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0094】
また、α−アミノアルキルフェノン誘導体類としては、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、4−ジメチルアミノエチルベンゾエ−ト、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエ−ト、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
【0095】
オキシムエステル誘導体としては、日本国特表2004−534797号公報、日本国特開2000−80068号公報、日本国特開2006−36750号公報、日本国特開2008−179611号公報、日本国特表2012−526185号公報、日本国特表2012−519191号公報等に記載されているオキシムエステル化合物が挙げられる。中でも感度の観点から4−アセトキシイミノ−5−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−5−オキソペンタン酸メチルが、また製品名として、OXE−01(BASF社製)、TR−PBG−305(常州強力社製)、NCI−930(ADEKA社製)等を好ましいものとして挙げることができる。
上記その他の光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
<増感色素>
光重合開始剤には、必要に応じて、感応感度を高める目的で、画像露光光源の波長に応じた増感色素を併用させることができる。これら増感色素としては、日本国特開平4−221958号公報、日本国特開平4−219756号公報等に記載のキサンテン色素、日本国特開平3−239703号公報、日本国特開平5−289335号公報等に記載の複素環を有するクマリン色素、日本国特開平3−239703号公報、日本国特開平5−289335号公報等に記載の3−ケトクマリン化合物、日本国特開平6−19240号公報に記載のピロメテン色素、その他、日本国特開昭47−2528号公報、日本国特開昭54−155292号公報、日本国特公昭45−37377号公報、日本国特開昭48−84183号公報、日本国特開昭52−112681号公報、日本国特開昭58−15503号公報、日本国特開昭60−88005号公報、日本国特開昭59−56403号公報、日本国特開平2−69号公報、日本国特開昭57−168088号公報、日本国特開平5−107761号公報、日本国特開平5−210240号公報、日本国特開平4−288818号公報等に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等を挙げることができる。
【0097】
これらの増感色素のうち好ましいものは、アミノ基含有増感色素であり、更に好ましいものは、アミノ基及びフェニル基を同一分子内に有する化合物である。特に、好ましいものは、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ[4,5]ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ[6,7]ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−チアジアゾール、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジメチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジエチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリミジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリミジン等のp−ジアルキルアミノフェニル基含有化合物等である。
このうち最も好ましいものは、4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノンである。
増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
(c)光重合開始剤の含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは4質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下である。(c)光重合開始剤の含有割合を前記下限値以上とすることで酸素阻害の影響を抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで基板密着性が良好となる傾向がある。
【0099】
(c)光重合開始剤における光重合開始剤(c1)の含有割合は特に限定されないが、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がよりさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましく、40質量%以上が最も好ましく、また、99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、60質量%以下が最も好ましい。光重合開始剤(c1)の含有割合を前記下限値以上とすることで内部硬化性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでパターンのトップ部分の硬化性が良好となる傾向がある。
【0100】
(c)光重合開始剤における光重合開始剤(c2)の含有割合は特に限定されないが、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上が最も好ましく、また、99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下がよりさらに好ましく、60質量%以下が特に好ましい。光重合開始剤(c2)の含有割合を前記下限値以上とすることでパターンのトップ部分の硬化性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで内部硬化性が良好となる傾向がある。
【0101】
<(a)アルカリ可溶性樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物は(a)アルカリ可溶性樹脂を含む。(a)アルカリ可溶性樹脂は、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる塗膜を露光後、露光部と非露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が変化するようなものであれば特に限定されないが、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などの酸性の官能基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂がより好ましい。また、硬化性の観点からエチレン性不飽和基を有するものが好ましく、硬化性と現像性の観点からエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂がより好ましい。具体的には、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂やアクリル共重合樹脂が挙げられ、好ましいものとしてより具体的には、後述の(A1−1)、(A1−2)、(A2−1)、(A2−2)、(A2−3)及び(A2−4)として記載のものが挙げられ、これらは1種を用いても2種以上を用いてもよい。上記の中でも、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A1−1)、(A1−2)が特に望ましい。
【0102】
カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとの反応物の、反応で生成した水酸基に更に多塩基酸、及び/又はその無水物を反応させて得られる樹脂である。また、多塩基酸及び/又はその無水物を水酸基と反応させる前に、該水酸基と反応し得る置換基を2個以上有する化合物を反応させた後、多塩基酸、及び/又はその無水物を反応させて得られる樹脂も、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に含まれる。さらに上記反応で得られた樹脂のカルボキシル基に、更に反応し得る官能基を有する化合物を反応させて得られる樹脂も、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に含まれる。
このように、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「(メタ)アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ樹脂が原料であり、かつ、「(メタ)アクリレート」が代表例であるので慣用に従いこのように命名されている。
【0103】
カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、以下のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A1−1)及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A1−2)が挙げられる。
【0104】
<エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A1−1)>
エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。
<エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A1−2)>
エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール、及び多塩基酸及び/又はその無水物と反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。
【0105】
<エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A1−1)>
原料となるエポキシ樹脂とは、熱硬化により樹脂を形成する以前の原料化合物をも含めて言うこととし、そのエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択して用いることができる。また、エポキシ樹脂は、フェノール性化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られる化合物を用いることができる。フェノール性化合物としては、2価以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、単量体でも重合体でもよい。
エポキシ樹脂の種類としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノールまたはクレゾールとの重付加反応物とエピハロヒドリンとの反応生成物であるエポキシ樹脂、アダマンチル基含有エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等を好適に用いることができ、このように主鎖に芳香族環を有するものを好適に用いることができる。
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱ケミカル社製の「jER(登録商標。以下同じ。)828」、「jER1001」、「jER1002」、「jER1004」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ(例えば、日本化薬社製の「NER−1302」(エポキシ当量323,軟化点76℃))、ビスフェノールF型樹脂(例えば、三菱ケミカル社製の「jER807」、「EP−4001」、「EP−4002」、「EP−4004」等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−7406」(エポキシ当量350,軟化点66℃))、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルグリシジルエーテル(例えば、三菱ケミカル社製の「YX−4000」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−201」、三菱ケミカル社製の「EP−152」、「EP−154」、ダウケミカル社製の「DEN−438」)、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EOCN(登録商標。以下同じ。)−102S」、「EOCN−1020」、「EOCN−104S」)、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日産化学社製の「TEPIC(登録商標)」)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN(登録商標。以下同じ。)−501」、「EPPN−502」、「EPPN−503」)、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製の「セロキサイド(登録商標。以下同じ。)2021P」、「セロキサイドEHPE」)、ジシクロペンタジエンとフェノールの反応によるフェノール樹脂をグリシジル化したエポキシ樹脂(例えば、DIC社製の「EXA−7200」、日本化薬社製の「NC−7300」)、下記一般式(a1)〜(a5)で表されるエポキシ樹脂、等を好適に用いることができる。具体的には、下記一般式(a1)で表されるエポキシ樹脂として日本化薬社製の「XD−1000」、下記一般式(a2)で表されるエポキシ樹脂として日本化薬社製の「NC−3000」、下記一般式(a4)で表されるエポキシ樹脂として新日鐵住金化学社製の「ESF−300」等が挙げられる。
【0107】
上記一般式(a1)において、b11は平均値を示し0〜10の数を示す。R
11は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表す。なお、1分子中に存在する複数のR
11は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0109】
上記一般式(a2)において、b12は平均値を示し0〜10の数を示す。R
21は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表す。なお、1分子中に存在する複数のR
21は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0111】
上記一般式(a3)において、Xは下記一般式(a3−1)又は(a3−2)で表される連結基を示す。但し、分子構造中に1つ以上のアダマンタン構造を含む。b13は2又は3の整数を示す。
【0113】
上記一般式(a3−1)及び(a3−2)において、R
31〜R
34及びR
35〜R
37は、各々独立に、置換基を有していてもよいアダマンチル基、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。また、式中の*印は(a3)中の結合部位を表す。
【0115】
上記一般式(a4)において、p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、R
41及びR
42は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
43及びR
44は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基を表す。x及びyはそれぞれ独立して0以上の整数を表す。
【0117】
上記一般式(a5)において、R
51〜R
54は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素原子6〜20のアリール基、又は、炭素原子7〜20のアラルキル基、であり、R
55は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、R
56は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基である。kは1〜5の整数であり、lは0〜13の整数であり、mは各々独立に0〜5の整数である。
これらの中で、一般式(a1)〜(a5)のいずれかで表されるエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0118】
α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体などのモノカルボン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルマレイン酸、
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸にε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を付加させ末端に1個の水酸基を有する単量体や、
或いはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのような末端に1個の水酸基を有する単量体や、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのような末端に1個の水酸基を有する化合物に、(無水)コハク酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸などの酸(無水物)を付加させ、1個以上のエチレン不飽和基と末端に1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸ダイマーなども挙げられる。
【0119】
これらの内、感度の点から、特に好ましいものは(メタ)アクリル酸である。
エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させる方法としては、公知の手法を用いることができる。例えば、エステル化触媒の存在下、50〜150℃の温度で、α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとエポキシ樹脂とを反応させることができる。ここで用いるエステル化触媒としては、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等の三級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩等を用いることができる。
【0120】
なお、エポキシ樹脂、α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステル、及びエステル化触媒は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルの使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し0.5〜1.2当量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1当量の範囲である。
α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルの使用量が前記下限値以上であると不飽和基の導入量が十分となり、引き続く多塩基酸及び/又はその無水物との反応も十分となり、また、エポキシ基の残存も抑制できる傾向がある。一方、該使用量が前記上限値以下であるとα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルが未反応物として残存して硬化特性が悪化するのを抑制できる傾向がある。
【0121】
多塩基酸及び/又はその無水物としては、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸、及びこれらの無水物等から選ばれた、1種又は2種以上が挙げられる。
【0122】
好ましくは、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、又はこれらの無水物である。特に好ましくは、テトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸、無水テトラヒドロフタル酸、又はビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0123】
多塩基酸及び/又はその無水物の付加反応に関しても公知の手法を用いることができ、エポキシ樹脂へのα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルの付加反応と同様な条件下で、継続反応させて目的物を得ることができる。多塩基酸及び/又はその無水物成分の付加量は、生成するカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の酸価が10〜150mgKOH/gの範囲となるような程度であることが好ましく、さらに20〜140mgKOH/gの範囲となるような程度であることが好ましい。カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の酸価を前記下限値以上とすることでアルカリ現像性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで硬化性が良好となる傾向がある。
【0124】
<(A1−1)樹脂の合成と(A1−1)樹脂に多価アルコールを添加し分岐構造を導入した(A1−2)樹脂の合成>
上記(A1−1)樹脂の多塩基酸及び/又はその無水物の付加反応合成時に、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコールを添加し、多分岐構造を導入したものとしてもよい。
カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、通常、エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとの反応物に、多塩基酸及び/又はその無水物を混合した後、もしくは、エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとの反応物に、多塩基酸及び/又はその無水物及び多価アルコールを混合した後に、加温することにより得られる。この場合、多塩基酸及び/又はその無水物と多価アルコールの混合順序に、特に制限はない。加温により、エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとの反応物と多価アルコールとの混合物中に存在するいずれかの水酸基に対して多塩基酸及び/又はその無水物が付加反応する。
【0125】
カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
多価アルコールの使用量は、増粘やゲル化を抑制しつつ効果を発現するとの観点から、エポキシ樹脂成分とα,β−不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステル成分との反応物に対して、通常0.01〜0.5質量倍程度、好ましくは0.02〜0.2質量倍程度である。
【0126】
このようにして得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A1−1)、(A1−2)の酸価は、通常10mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは70mgKOH/g以上、さらに好ましくは90mgKOH/g以上であり、また好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、さらに好ましくは120mgKOH/g以下である。前記樹脂の酸価を前記下限値以上とすることで現像性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることでアルカリ耐性を良好にすることができる傾向がある。
【0127】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A1−1)、(A1−2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1,500以上であることがより好ましい。また、20,000以下であることが好ましく、15,000以下であることがより好ましく、10,000以下であることがさらに好ましく、8,000以下であることがよりさらに好ましく、6,000以下であることが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)を前記下限値以上とすることで感度、塗膜強度、アルカリ耐性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性や再溶解性を良好なものとすることができる傾向がある。
【0128】
<アクリル共重合樹脂(A2−1)、(A2−2)、(A2−3)、(A2−4)>
アクリル共重合樹脂としては、例えば、日本国特開平7−207211号公報、日本国特開平8−259876号公報、日本国特開平10−300922号公報、日本国特開平11−140144号公報、日本国特開平11−174224号公報、日本国特開2000−56118号公報、日本国特開2003−233179号公報、日本国特開2007−270147号公報などの各公報等に記載された様々な高分子化合物を使用することができるが、好ましくは、以下の(A2−1)〜(A2−4)の樹脂等が挙げられ、中でも、(A2−1)樹脂が特に好ましい。
【0129】
(A2−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、当該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは当該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂
(A2−2):主鎖にカルボキシル基を含有する直鎖状アルカリ可溶性樹脂
(A2−3):前記(A2−2)樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂
(A2−4):(メタ)アクリル系樹脂
【0130】
本発明の感光性樹脂組成物は、感度の観点から、エチレン性不飽和基を含有するアルカリ可溶性樹脂として(A1−1)、(A1−2)、(A2−1)、(A2−3)の少なくとも何れかを含むのがさらに好ましい。本発明の感光性樹脂組成物は、表面硬化性の観点から、エチレン性不飽和基を含有するアルカリ可溶性樹脂としてエポキシ(メタ)アクリレート樹脂である(A1−1)、(A1−2)の少なくとも何れかを含むのが特に好ましい。
【0131】
本発明の感光性樹脂組成物は、その他のアルカリ可溶性樹脂を併用してもよい。
その他のアルカリ可溶性樹脂に制限は無く、カラーフィルター用感光性樹脂組成物に通常使用される樹脂から選択すればよい。例えば、日本国特開2007−271727号公報、日本国特開2007−316620号公報、日本国特開2007−334290号公報などに記載のアルカリ可溶性樹脂などが挙げられる。
【0132】
(a)アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、通常90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。(a)アルカリ可溶性樹脂の含有割合を前記下限値以上とすることで未露光部の現像液に対する溶解性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで露光部への現像液の過剰な浸透を抑制することができ、画像のシャープ製や密着性が良好となる傾向がある。
尚、上述のように、本発明の感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性樹脂として、前述の(A1−1)、(A1−2)、(A2−1)、(A2−2)、(A2−3)及び(A2−4)の少なくとも1種を含むのが好ましく、その他のアルカリ可溶性樹脂を含む場合、その含有割合は、(a)アルカリ可溶性樹脂の合計に対して、20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
【0133】
<(b)光重合性モノマー>
本発明の感光性樹脂組成物は、感度等の点から(b)光重合性モノマーを含有する。
本発明に用いられる(b)光重合性モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも1個有する化合物(以下、「エチレン性単量体」と称することがある)を挙げることができる。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、スチレン、及びエチレン性不飽和結合を1個有するカルボン酸と、多価又は1価アルコールのエステル等が挙げられる。
【0134】
本発明においては、特に、1分子中にエチレン性不飽和基を2以上有する多官能エチレン性単量体を使用することが望ましい。多官能エチレン性単量体におけるエチレン性不飽和基の数は通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは6以上、また通常10以下、好ましくは8以下である。エチレン性不飽和基の数を前記下限値以上とすることで感光性樹脂組成物が高感度となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで重合時の硬化収縮が小さくなる傾向がある。
多官能エチレン性単量体の例としては、例えば脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と、不飽和カルボン酸及び多塩基性カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステルなどが挙げられる。
【0135】
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等の脂肪族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル、これら例示化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル、クロネートに代えたクロトン酸エステルもしくはマレエートに代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0136】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジアクリレート、ハイドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールトリアクリレート等の芳香族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等が挙げられる。
多塩基性カルボン酸及び不飽和カルボン酸と、多価ヒドロキシ化合物のエステル化反応により得られるエステルとしては必ずしも単一物ではないが、代表的な具体例を挙げれば、アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0137】
その他、本発明に用いられる多官能エチレン性単量体の例としては、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル又はポリイソシアネート化合物とポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られるようなウレタン(メタ)アクリレート類;多価エポキシ化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリル酸との付加反応物のようなエポキシアクリレート類;エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が有用である。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
(b)光重合性モノマーの含有割合は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。光重合性モノマーの含有量が上記上限値以下であることで、露光部への現像液の浸透性が適度となり良好な画像を得ることができる傾向にある。(b)光重合性モノマーの含有量の下限値は、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上である。上記下限値以上であることで、紫外線照射による光硬化を向上させるとともにアルカリ現像性も良好となる傾向にある。
【0139】
本発明の感光性樹脂組成物における(b)光重合性モノマーの含有割合に対する(a)アルカリ可溶性樹脂の含有割合の質量比は、通常0.5以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは2.5以上、また通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。前記下限値以上とすることで、硬化時の硬化収縮が小さくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで、硬化膜の硬度が高くなる傾向がある。
【0140】
<(d)色材>
本発明の感光性樹脂組成物は、カラーフィルターの画素、ブラックマトリックス、着色スペーサーの形成等に用いられる場合には、色材を含有する。色材は、本発明の感光性樹脂組成物を着色するものをいう。色材としては、染料や顔料が使用できるが、耐熱性、耐光性等の点から顔料が好ましい。
【0141】
顔料としては青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等各種の色の顔料を使用することができる。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に種々の無機顔料等も利用可能である。
【0142】
以下に、本発明に使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。なお、以下に挙げる「C.I.ピグメントレッド2」等の用語は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242、254、更に好ましくはC.I.ピグメントレッド177、209、224、254を挙げることができる。
【0143】
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6を挙げることができる。
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36、58を挙げることができる。
【0144】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180、185、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、138、139、150、180を挙げることができる。
【0145】
オレンジ顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79を挙げることができる。この中でも、好ましくは、C.I.ピグメントオレンジ38、71を挙げることができる。
【0146】
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19、23、更に好ましくはC.I.ピグメントバイオレット23を挙げることができる。
【0147】
また、本発明の感光性樹脂組成物が、カラーフィルターの樹脂ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物である場合、(d)色材としては、黒色の色材を用いることができる。黒色色材は、黒色色材単独としてもよく、赤、緑、青等の混合としてもよい。また、これら色材は無機又は有機の顔料、染料の中から適宜選択することができる。
黒色色材を調製するために混合使用可能な色材としては、ビクトリアピュアブルー(42595)、オーラミンO(41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(45160)、ローダミンB(45170)、サフラニンOK70:100(50240)、エリオグラウシンX(42080)、No.120/リオノールイエロー(21090)、リオノールイエローGRO(21090)、シムラーファーストイエロー8GF(21105)、ベンジジンイエロー4T−564D(21095)、シムラーファーストレッド4015(12355)、リオノールレッド7B4401(15850)、ファーストゲンブルーTGR−L(74160)、リオノールブルーSM(26150)、リオノールブルーES(ピグメントブルー15:6)、リオノーゲンレッドGD(ピグメントレッド168)、リオノールグリーン2YS(ピグメントグリーン36)等が挙げられる(なお、上記の( )内の数字は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。)。
【0148】
また、更に他の混合使用可能な顔料についてC.I.ナンバーにて示すと、例えば、C.I.黄色顔料20、24、86、93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、C.I.オレンジ顔料36、43、51、55、59、61、C.I.赤色顔料9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、C.I.バイオレット顔料19、23、29、30、37、40、50、C.I.青色顔料15、15:1、15:4、22、60、64、C.I.緑色顔料7、C.I.ブラウン顔料23、25、26等を挙げることができる。
【0149】
また、単独使用可能な黒色色材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック、ペリレンブラック、ラクタムブラック等が挙げられる。
これらの(d)色材の中で黒色の色材を用いる場合には、遮光率、画像特性の観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの例としては、以下のようなカーボンブラックが挙げられる。
【0150】
三菱ケミカル社製:MA7、MA77、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA220、MA230、MA600、#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#47、#50、#52、#55、#650、#750、#850、#950、#960、#970、#980、#990、#1000、#2200、#2300、#2350、#2400、#2600、#3050、#3150、#3250、#3600、#3750、#3950、#4000、#4010、OIL7B、OIL9B、OIL11B、OIL30B、OIL31B
デグサ社製:Printex(登録商標。以下同じ。)3、Printex3OP、Printex30、Printex30OP、Printex40、Printex45、Printex55、Printex60、Printex75、Printex80、Printex85、Printex90、Printex A、Printex L、Printex G、Printex P、Printex U、Printex V、PrintexG、SpecialBlack550、SpecialBlack350、SpecialBlack250、SpecialBlack100、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S160、Color Black S170
キャボット社製:Monarch(登録商標。以下同じ。)120、Monarch280、Monarch460、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Monarch4630、REGAL(登録商標。以下同じ。)99、REGAL99R、REGAL415、REGAL415R、REGAL250、REGAL250R、REGAL330、REGAL400R、REGAL55R0、REGAL660R、BLACK PEARLS480、PEARLS130、VULCAN(登録商標) XC72R、ELFTEX(登録商標)−8
ビルラー社製:RAVEN11、RAVEN14、RAVEN15、RAVEN16、RAVEN22RAVEN30、RAVEN35、RAVEN40、RAVEN410、RAVEN420、RAVEN450、RAVEN500、RAVEN780、RAVEN850、RAVEN890H、RAVEN1000、RAVEN1020、RAVEN1040、RAVEN1060U、RAVEN1080U、RAVEN1170、RAVEN1190U、RAVEN1250、RAVEN1500、RAVEN2000、RAVEN2500U、RAVEN3500、RAVEN5000、RAVEN5250、RAVEN5750、RAVEN7000
【0151】
他の黒色顔料の例としては、チタンブラック、アニリンブラック、酸化鉄系黒色顔料、及び、赤色、緑色、青色の三色の有機顔料を混合して黒色顔料として用いることができる。
【0152】
また、顔料として、硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ、酸化クロム等を用いることもできる。これら各種の顔料は、複数種を併用することもできる。例えば、色度の調整のために、緑色顔料と黄色顔料とを併用したり、青色顔料と紫色顔料とを併用することができる。
【0153】
本発明に用いられる顔料の平均粒径としては、カラーフィルターの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる顔料の種類によっても異なるが、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、10〜70nmの範囲内であることがより好ましい。該顔料の平均粒径が上記範囲であることにより、本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造された液晶表示装置の色特性を高品質なものとすることができる傾向がある。
また、顔料がカーボンブラックの場合の平均粒径は、60nm以下が好ましく、50nm以下がさらに好ましく、また、20nm以上が好ましい。平均粒径を前記上限値以下とすることで、散乱が小さくなり、遮光性やコントラストなどの色特性の低下を抑制できる傾向がある。また、平均粒径を前記下限値以上とすることで、分散剤の量が過度に多くならずに済み、分散性が良好となる傾向がある。
なお、上記顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とする。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(質量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径を求めそれを平均粒径とする。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0154】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも顔料を含むことが好ましいが、その他に、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で染料を併用してもよい。併用できる染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等が挙げられる。
【0155】
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、C.I.アシッドオレンジ7、C.I.アシッドレッド37、C.I.アシッドレッド180、C.I.アシッドブルー29、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトレッド83、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトグリーン28、C.I.ダイレクトグリーン59、C.I.リアクティブイエロー2、C.I.リアクティブレッド17、C.I.リアクティブレッド120、C.I.リアクティブブラック5、C.I.ディスパースオレンジ5、C.I.ディスパースレッド58、C.I.ディスパースブルー165、C.I.ベーシックブルー41、C.I.ベーシックレッド18、C.I.モルダントレッド7、C.I.モルダントイエロー5、C.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
【0156】
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4、C.I.アシッドブルー40、C.I.アシッドグリーン25、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー49、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー56、C.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
この他、フタロシアニン系染料として、例えば、C.I.パッドブルー5等が、キノンイミン系染料として、例えば、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー9等が、キノリン系染料として、例えば、C.I.ソルベントイエロー33、C.I.アシッドイエロー3、C.I.ディスパースイエロー64等が、ニトロ系染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー1、C.I.アシッドオレンジ3、C.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
【0157】
(d)色材の含有割合は、感光性樹脂組成物中の全固形分量に対して通常1〜70質量%の範囲で選ぶことができる。この範囲の中では、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上が特に好ましく、また、60質量%以下がより好ましい。
【0158】
本発明の感光性樹脂組成物は、前述したように種々な用途に使用することができるが、優れた画像形成性は、カラーフィルター用ブラックマトリックスの形成に使用した場合に、特に効果的である。ブラックマトリックス形成に使用する場合には(d)色材として、前述したカーボンブラックやチタンブラック等の黒色色材を使用するか、黒色以外の色材を複数種類混合し黒色に調整して使用すればよい。その中でも分散安定性及び遮光性の観点から、カーボンブラックを使用することが、特に好ましい。
【0159】
本発明は特に黒色顔料の顔料濃度が大きくなる領域で効果が大きい。特に近年は遮光度を上げるために黒色顔料濃度を多くする必要がある。このように効果が大きくなる領域における黒色顔料の含有割合は感光性樹脂組成物の全固形分に対し40質量%以上であり、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0160】
感光性樹脂組成物において、黒色顔料の含有割合が上記範囲内であることにより、遮光性(光学密度、OD値)の高い感光性樹脂組成物を得ることができる。具体的には、黒色顔料の含有量を45質量%以上とすることにより、本発明の感光性樹脂組成物を用いて厚さ1μmのブラックマトリックスを形成した場合における光学濃度を4.0以上の値とすることができる。光学濃度はより好ましくは4.2以上である。遮光性が高い領域では紫外線が深部に透過しにくく、光重合による架橋が特に基板と細線の密着する部分で弱くなるが、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合は、特にその黒色顔料の含有割合が大きい場合に、本発明の効果をよく確認できる。黒色顔料の含有割合としては40〜65質量%が特に効果的である。黒色顔料の含有割合を前記下限値以上とすることで色濃度に対する膜厚が大きくなりすぎるのを抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで十分な画像形成性を確保しやすい傾向がある。
【0161】
なお感光性樹脂組成物において、(d)色材の含有割合は、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部あたり、通常20質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上、よりさらに好ましくは80質量部以上、特に好ましくは120質量部以上、最も好ましくは160質量部以上であり、また通常500質量部以下、好ましくは300質量部以下、より好ましくは280質量部以下である。(d)色材の含有割合を前記下限値以上とすることで未露光部の現像液に対する溶解性の低下を抑制しやすい傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望の画像膜厚が得やすい傾向がある。
【0162】
<(e)分散剤>
本発明においては、色材を微細に分散させ、且つその分散状態を安定化させることが品質の安定性確保には重要なため、(e)分散剤を含むことが好ましい。
分散剤としては、官能基を有する高分子分散剤が好ましく、更には、分散安定性の面からカルボキシル基;リン酸基;スルホン酸基;又はこれらの塩基;一級、二級又は三級アミノ基;四級アンモニウム塩基;ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環由来の基、等の官能基を有する高分子分散剤が好ましい。中でも特に、一級、二級又は三級アミノ基;四級アンモニウム塩基;ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環由来の基、等の塩基性官能基を有する高分子分散剤が特に好ましい。これら塩基性官能基を有する高分子分散剤を使用することにより、分散性を良好にでき、高い遮光性を達成できる傾向がある。
【0163】
また高分子分散剤としては、例えばウレタン系分散剤、アクリル系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリアリルアミン系分散剤、アミノ基を持つモノマーとマクロモノマーからなる分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ポリエーテルリン酸系分散剤、ポリエステルリン酸系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。
【0164】
このような分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA(登録商標。エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製。)、Disperbyk(登録商標。ビックケミー社製。)、ディスパロン(登録商標。楠本化成社製。)、SOLSPERSE(登録商標。ルーブリゾール社製。)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー又はフローレン(登録商標。共栄社化学社製。)、アジスパー(登録商標。味の素ファインテクノ社製。)等を挙げることができる。
これらの高分子分散剤は1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0165】
これらの内、密着性及び直線性の面から、(e)分散剤は塩基性官能基を有するウレタン系高分子分散剤及び/又はアクリル系高分子分散剤を含むことが、特に好ましい。特にはウレタン系高分子分散剤が密着性の面で好ましい。また分散性、保存性の面から、塩基性官能基を有し、ポリエステル及び/又はポリエーテル結合を有する高分子分散剤が好ましい。
【0166】
高分子分散剤の重量平均分子量(Mw)は通常700以上、好ましくは1,000以上であり、また通常100,000以下、好ましくは50,000以下であり、より好ましくは30,000以下である。重量平均分子量(Mw)を前記上限値以下とすることで、顔料濃度が高い時でもアルカリ現像性が良好となる傾向がある。
ウレタン系及びアクリル系高分子分散剤としては、例えばDISPERBYK−160〜167、182シリーズ(いずれもウレタン系)、DISPERBYK−2000,2001等(いずれもアクリル系)(以上すべてビックケミー社製)が挙げられる。上記の塩基性官能基を有し、ポリエステル及び/又はポリエーテル結合を有するウレタン系高分子分散剤で重量平均分子量30,000以下の特に好ましいものとしてDISPERBYK−167、182などが挙げられる。
【0167】
<ウレタン系高分子分散剤>
ウレタン系高分子分散剤として好ましい化学構造を具体的に例示するならば、例えば、ポリイソシアネート化合物と、分子内に水酸基を1個又は2個有する数平均分子量300〜10,000の化合物と、同一分子内に活性水素と三級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られる、重量平均分子量1,000〜200,000の分散樹脂等が挙げられる。
【0168】
上記のポリイソシアネート化合物の例としては、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω′−ジイソシネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等のトリイソシアネート、及びこれらの三量体、水付加物、及びこれらのポリオール付加物等が挙げられる。ポリイソシアネートとして好ましいのは有機ジイソシアネートの三量体で、最も好ましいのはトリレンジイソシアネートの三量体とイソホロンジイソシアネートの三量体である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0169】
イソシアネートの三量体の製造方法としては、前記ポリイソシアネート類を適当な三量化触媒、例えば第三級アミン類、ホスフィン類、アルコキシド類、金属酸化物、カルボン酸塩類等を用いてイソシアネート基の部分的な三量化を行い、触媒毒の添加により三量化を停止させた後、未反応のポリイソシアネートを溶剤抽出、薄膜蒸留により除去して目的のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを得る方法が挙げられる。
【0170】
同一分子内に水酸基を1個又は2個有する数平均分子量300〜10,000の化合物としては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール、ポリオレフィングリコール等、及びこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化されたもの及びこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
【0171】
ポリエーテルグリコールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、及びこれら2種類以上の混合物が挙げられる。ポリエーテルジオールとしては、アルキレンオキシドを単独又は共重合させて得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、ポリオキシオクタメチレングリコール及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0172】
ポリエーテルエステルジオールとしては、エーテル基含有ジオールもしくは他のグリコールとの混合物をジカルボン酸又はそれらの無水物と反応させるか、又はポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させることによって得られるもの、例えばポリ(ポリオキシテトラメチレン)アジペート等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとして最も好ましいのはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化された化合物である。
【0173】
ポリエステルグリコールとしては、ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等)又はそれらの無水物とグリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレングリコール、2−メチル−1,8−オクタメチレングリコール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、N−メチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン等)とを重縮合させて得られたもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート等、又は前記ジオール類又は炭素数1〜25の1価アルコールを開始剤として用いて得られるポリラクトンジオール又はポリラクトンモノオール、例えばポリカプロラクトングリコール、ポリメチルバレロラクトン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエステルグリコールとして最も好ましいのはポリカプロラクトングリコール又は炭素数1〜25のアルコールを開始剤としたポリカプロラクトンである。
【0174】
ポリカーボネートグリコールとしては、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等、ポリオレフィングリコールとしてはポリブタジエングリコール、水素添加型ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリイソプレングリコール等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0175】
同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物の数平均分子量は、通常300〜10,000、好ましくは500〜6,000、更に好ましくは1,000〜4,000である。
本発明に用いられる同一分子内に活性水素と三級アミノ基を有する化合物を説明する。活性水素、即ち、酸素原子、窒素原子又はイオウ原子に直接結合している水素原子としては、水酸基、アミノ基、チオール基等の官能基中の水素原子が挙げられ、中でもアミノ基、特に一級のアミノ基の水素原子が好ましい。
【0176】
三級アミノ基は、特に限定されないが、例えば炭素数1〜4のアルキル基を有するアミノ基、又はヘテロ環構造、より具体的にはイミダゾール環又はトリアゾール環などが挙げられる。
このような同一分子内に活性水素と三級アミノ基を有する化合物を例示するならば、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジプロピルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジプロピル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン等が挙げられる。
【0177】
また、三級アミノ基が含窒素ヘテロ環構造である場合の該含窒素ヘテロ環としては、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、カルバゾール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環等の含窒素ヘテロ5員環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、アクリジン環、イソキノリン環等の含窒素ヘテロ6員環が挙げられる。これらの含窒素ヘテロ環のうち好ましいものはイミダゾール環又はトリアゾール環である。
【0178】
これらのイミダゾール環とアミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスチジン、2−アミノイミダゾール、1−(2−アミノエチル)イミダゾール等が挙げられる。また、トリアゾール環とアミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−3−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジオール、3−アミノ−5−フェニル−1H−1,3,4−トリアゾール、5−アミノ−1,4−ジフェニル−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1−ベンジル−1H−2,4−トリアゾール等が挙げられる。中でも、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールが好ましい。
【0179】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタン系高分子分散剤を製造する際の原料の好ましい配合比率はポリイソシアネート化合物100質量部に対し、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する数平均分子量300〜10,000の化合物が10〜200質量部、好ましくは20〜190質量部、更に好ましくは30〜180質量部、同一分子内に活性水素と三級アミノ基を有する化合物が0.2〜25質量部、好ましくは0.3〜24質量部である。
【0180】
ウレタン系高分子分散剤の製造はポリウレタン樹脂製造の公知の方法に従って行われる。製造する際の溶媒としては、通常、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、ダイアセトンアルコール、イソプロパノール、第二ブタノール、第三ブタノール等一部のアルコール類、塩化メチレン、クロロホルム等の塩化物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン性極性溶媒等が用いられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0181】
上記製造に際して、通常、ウレタン化反応触媒が用いられる。この触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系、鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の三級アミン系等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0182】
<アミン価の測定方法>
分散剤の三級アミン価は、分散剤試料中の溶剤を除いた固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの質量で表し、次の方法により測定することができる。
100mLのビーカーに分散剤試料の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/LのHClO
4(過塩素酸)酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
【0183】
アミン価[mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
〔但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[質量%]を表す。〕
同一分子内に活性水素と三級アミノ基を有する化合物の導入量は反応後のアミン価で1〜100mgKOH/gの範囲に制御するのが好ましい。より好ましくは5〜95mgKOH/gの範囲である。アミン価は、塩基性アミノ基を酸により中和滴定し、酸価に対応させてKOHのmg数で表した値である。アミン価を前記下限値以上とすることで分散能力が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像性が良好となる傾向がある。
【0184】
なお、以上の反応で高分子分散剤にイソシアネート基が残存する場合には更に、アルコールやアミノ化合物でイソシアネート基を潰すと生成物の経時安定性が高くなるので好ましい。
ウレタン系高分子分散剤の重量平均分子量(Mw)は通常1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは3,000〜50,000の範囲である。ウレタン系高分子分散剤の重量平均分子量(Mw)は、特に30,000以下が好ましい。重量平均分子量(Mw)を前記下限値以上とすることで分散性及び分散安定性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで溶解性が良好となり、分散性も良好となる傾向がある。分子量が30,000以下であると、特に顔料濃度の高い場合でも、アルカリ現像性が良好となる傾向がある。このような特に好ましい市販のウレタン分散剤の例としてDISPERBYK−167、182(ビックケミー社)などが挙げられる。
【0185】
(e)分散剤の含有割合は、感光性樹脂組成物の全固形分中、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。また、分散剤の含有割合は、(d)色材100質量部に対して、通常5質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、通常200質量部以下であり、80質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下が特に好ましい。分散剤の含有割合を前記下限値以上とすることで十分な分散性を確保しやすい傾向があり、また、前記上限値以下とすることで他の成分の割合を減らすことなく、色濃度、感度、成膜性などを十分なものとしやすい傾向がある。
【0186】
特に、分散剤としては、高分子分散剤と顔料誘導体(分散助剤)とを併用することが好ましいが、この場合、顔料誘導体の含有割合は本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0187】
<チオール類>
本発明の感光性樹脂組成物は、高感度化、基板への密着性の向上のため、チオール類を含有することが好ましい。チオール類の種類としては、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート);(略してPGMB)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン;(商品名;カレンズMT BD1、昭和電工(株)製)、ブタンジオールトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート);(商品名;カレンズMT PE1、昭和電工(株)製)、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート);(略してTPMB)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート);(略してTPMIB)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン;(商品名;カレンズMT NR1、昭和電工(株)製)等が挙げられ、これらは種々のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用できる。好ましくは上記、PGMB、TPMB、TPMIB、カレンズMT BD1、カレンズMT PE1、カレンズMT NR1などの多官能チオールが好ましく、その中でもカレンズMT BD1、カレンズMT PE1、カレンズMT NR1がさらに好ましく、カレンズMT PE1が特に好ましい。
【0188】
チオール化合物を用いる場合、チオール化合物の含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。チオール化合物の含有割合を前記下限値以上とすることで感度低下を抑制できる傾向があり、前記上限値以下とすることで保存安定性を良好なものとしやすい傾向がある。
【0189】
<溶剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、(a)アルカリ可溶性樹脂、(b)光重合性モノマー、(c)光重合開始剤、(d)色材及び必要に応じて使用される各種材料が、有機溶剤に溶解又は分散した状態で使用される。
有機溶剤としては、沸点(圧力1013.25[hPa]条件下。以下、沸点に関しては全て同様。)が100〜300℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜280℃の沸点をもつ溶剤である。
このような有機溶剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0190】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
【0191】
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
【0192】
エチレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;
シクロヘキサノールアセテートなどのアルキルアセテート類;
アミルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン、ベンジルアルコールのような1価又は多価アルコール類;
n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
【0193】
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;
3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
【0194】
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類等。
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ(「セロソルブ」は登録商標。以下同じ。)、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0195】
これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フォトリソグラフィー法にてカラーフィルターの画素又はブラックマトリックスを形成する場合、有機溶剤としては沸点が100〜250℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜230℃の沸点を持つものである。
上記有機溶剤のうち、塗布性、表面張力などのバランスが良く、組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点からは、グリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましい。
【0196】
また、グリコールアルキルエーテルアセテート類は、単独で使用してもよいが、他の有機溶剤を併用してもよい。併用してもよい他の有機溶剤として、特に好ましいのはグリコールモノアルキルエーテル類である。中でも、特に組成物中の構成成分の溶解性からプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。なお、グリコールモノアルキルエーテル類は極性が高く、添加量が多すぎると顔料が凝集しやすく、後に得られる感光性樹脂組成物の粘度が上がっていくなどの保存安定性が低下する傾向があるので、溶剤中のグリコールモノアルキルエーテル類の割合は5質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。
【0197】
また、200℃以上の沸点をもつ有機溶剤(以下「高沸点溶剤」と称す場合がある。)を併用することも好ましい。このような高沸点溶剤を併用することにより、感光性樹脂組成物は乾きにくくなるが、組成物中における顔料の均一な分散状態が、急激な乾燥により破壊されることを防止する効果がある。すなわち、例えばスリットノズル先端における、色材などの析出・固化による異物欠陥の発生を防止する効果がある。このような効果が高い点から、上述の各種溶剤の中でも、特にジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、トリアセチン、1,6−ヘキサンジオールジアセテートが好ましい。
【0198】
有機溶剤中の高沸点溶剤の含有割合は、0質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜40質量%がより好ましく、1質量%〜30質量%が特に好ましい。高沸点溶剤の含有割合を前記下限値以上とすることで、例えばスリットノズル先端で色材などが析出・固化して異物欠陥を惹き起こすことを回避できる傾向があり、また前記上限値以下とすることで組成物の乾燥温度が遅くなって減圧乾燥プロセスのタクト不良やプリベークのピン跡といった問題を回避できる傾向がある。
【0199】
本発明の感光性樹脂組成物において、有機溶剤の含有割合は特に限定されないが、塗布し易さや粘度安定性の観点から、感光性樹脂組成物中の全固形分量が好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは12質量%以上、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0200】
<感光性樹脂組成物のその他の配合成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、上述の成分の他、密着向上剤、塗布性向上剤、顔料誘導体、現像改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。
【0201】
<密着向上剤>
基板との密着性を改善するため、密着向上剤を含有させてもよく、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられるが、特にシランカップリング剤が好ましい。
このようなシランカップリング剤としては、例えば、KBM−402、KBM−403、KBM−502、KBM−5103、KBE−9007、X−12−1048、X12−1050(信越シリコーン社製)、Z−6040、Z−6043、Z−6062(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。なお、シランカップリング剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、シランカップリング剤以外の密着向上剤を本発明の感光性樹脂組成物に含有させてもよく、例えば、リン酸系密着向上剤、その他の密着向上剤等が挙げられる。
【0202】
リン酸系密着向上剤としては、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類が好ましく、中でも下記一般式(g1)、(g2)、(g3)で表されるものが好ましい。
【0204】
上記一般式(g1)、(g2)、(g3)において、R
51は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、l及びl’は各々独立に1〜10の整数、mは各々独立に1、2又は3である。
その他の密着向上剤としては、TEGO
*Add Bond LTH(Evonik社製)などが挙げられる。これらの燐酸基含有化合物やその他の密着剤も1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0205】
感光性樹脂組成物中の密着向上剤の含有割合は特に限定されないが、全固形分中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1質量%以上が特に好ましく、また、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが特に好ましく、6質量%以下であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで基板との密着性を良好にできる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアルカリ現像時の残渣を抑制できる傾向がある。
【0206】
<塗布性向上剤>
本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性向上のため、塗布性向上剤として界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系および両性界面活性剤等各種のものを用いることができる。中でも、諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン系界面活性剤を用いるのが好ましく、中でもフッ素系またはシリコン系の界面活性剤が塗布性の面で効果的である。
【0207】
このような界面活性剤としては、例えば、TSF4460(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、DFX−18(ネオス社製)、BYK−300、BYK−325、BYK−330(ビックケミー社製)、KP340(信越シリコーン社製)、F−470、F−475、F−478、F−554、F−559(DIC社製)、SH7PA(東レ・ダウコーニング社製)、DS−401(ダイキン社製)、L−77(日本ユニカー社製)およびFC4430(3Mジャパン社製)等が挙げられる。なお、界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
感光性樹脂組成物中の界面活性剤の含有割合は特に限定されないが、全固形分中0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましく、また、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以下であることが特に好ましい。界面活性剤の含有割合を前記下限値以上とすることでレジスト塗布均一性がよくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでレジスト感度が下がらない傾向がある。
【0208】
<顔料誘導体>
本発明の感光性樹脂組成物には、分散性、保存性向上のため、顔料誘導体を含有させてもよい。顔料誘導体としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、インダンスレン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系等の誘導体が挙げられるが、中でもフタロシアニン系、キノフタロン系が好ましい。
【0209】
顔料誘導体の置換基としてはスルホン酸基、スルホンアミド基及びその四級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基等が顔料骨格に直接又はアルキル基、アリール基、複素環基等を介して結合したものが挙げられ、好ましくはスルホン酸基である。またこれら置換基は一つの顔料骨格に複数置換していてもよい。顔料誘導体の具体例としてはフタロシアニンのスルホン酸誘導体、キノフタロンのスルホン酸誘導体、アントラキノンのスルホン酸誘導体、キナクリドンのスルホン酸誘導体、ジケトピロロピロールのスルホン酸誘導体、ジオキサジンのスルホン酸誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0210】
<感光性樹脂組成物の製造方法>
本発明の感光性樹脂組成物(以下、「レジスト」と称することがある。)は、常法に従って製造される。
通常、(d)色材は、予めペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を用いて分散処理するのが好ましい。分散処理により(d)色材が微粒子化されるため、レジストの塗布特性が向上する。また、(d)色材として黒色色材を使用した場合は遮光能力の向上に寄与する。
【0211】
分散処理は、通常、(d)色材、溶剤、及び必要に応じて(e)分散剤、(a)アルカリ可溶性樹脂の一部又は全部を併用した系にて行うことが好ましい。(以下、分散処理に供する混合物、及び該処理にて得られた組成物を「インク」又は「顔料分散液」と称することがある。)特に分散剤として高分子分散剤を用いると、得られたインク及びレジストの経時の増粘が抑制される(分散安定性に優れる)ので好ましい。
なお、感光性樹脂組成物に配合する全成分を含有する液に対して分散処理を行った場合、分散処理時に生じる発熱のため、高反応性の成分が変性する可能性がある。従って、高分子分散剤を含む系にて分散処理を行うことが好ましい。
【0212】
サンドグラインダーで(d)色材を分散させる場合には、0.1〜8mm程度の径のガラスビーズ又はジルコニアビーズが好ましく用いられる。分散処理条件は、温度は通常、0℃から100℃であり、好ましくは、室温から80℃の範囲である。分散時間は液の組成及び分散処理装置のサイズ等により適正時間が異なるため適宜調節する。レジストの20度鏡面光沢度(JIS Z8741)が100〜200の範囲となるように、インキの光沢を制御するのが分散の目安である。レジストの光沢度が前記下限値以上の場合には、分散処理が十分となり、荒い顔料(色材)粒子が残っていることが少なく、現像性、密着性、解像性等が十分となる傾向がある。また、光沢値が前記上限値以下の場合には、顔料が破砕して超微粒子が多数生じ、却って分散安定性が損なわれるのを回避できる傾向がある。
【0213】
次に、上記分散処理により得られたインキと、レジスト中に含まれる、上記の他の成分を混合し、均一な溶液とする。レジストの製造工程においては、微細なゴミが液中に混じることが多いため、得られたレジストはフィルター等により濾過処理するのが望ましい。
【0214】
[硬化物]
本発明の感光性樹脂組成物を硬化させることで、硬化物を得ることができる。感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、画素、ブラックマトリックスや着色スペーサーなどのカラーフィルターを構成する部材として好適に用いることができる。
【0215】
[ブラックマトリックス]
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いたブラックマトリックスについて、その製造方法に従って説明する。
【0216】
(1) 支持体
ブラックマトリックスを形成するための支持体としては、適度の強度があれば、その材質は特に限定されるものではない。おもに透明基板が使用されるが、材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルフォンなどの熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂シート、又は各種ガラスなどが挙げられる。この中でも、耐熱性の観点からガラス、耐熱性樹脂が好ましい。また、基板の表面にITO、IZO等の透明電極が成膜されている場合もある。透明基板以外では、TFTアレイ上に形成することも可能である。
【0217】
支持体には、接着性などの表面物性の改良のため、必要に応じ、コロナ放電処理、オゾン処理、大気圧プラズマ処理、シランカップリング剤や、ウレタン系樹脂などの各種樹脂の薄膜形成処理などを行ってもよい。
透明基板の厚さは、通常0.05〜10mm、好ましくは0.1〜7mmの範囲とされる。また各種樹脂の薄膜形成処理を行う場合、その膜厚は、通常0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0218】
(2) ブラックマトリックス
上述の本発明の感光性樹脂組成物により、本発明のブラックマトリックスを形成するには、透明基板上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布して乾燥した後、塗膜の上にフォトマスクを置き、該フォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて熱硬化或いは光硬化することによりブラックマトリックスを形成させる。
【0219】
(3) ブラックマトリックスの形成
(3−1) 感光性樹脂組成物の塗布
ブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物の透明基板上への塗布は、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、ダイコート法、ロールコート法、又はスプレーコート法などによって行うことができる。中でも、ダイコート法によれば、塗布液使用量が大幅に削減され、かつ、スピンコート法により行った際に付着するミストなどの影響が全くなく、異物発生が抑制されるなど、総合的な観点から好ましい。
【0220】
塗膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常0.2〜10μmの範囲とするのが好ましく、より好ましいのは0.5〜6μmの範囲、更に好ましいのは1〜4μmの範囲である。前記上限値以下とすることでパターン現像が容易となり、液晶セル化工程でのギャップ調整も容易となる傾向がある。また前記下限値以上とすることで所望の色発現が容易となる傾向がある。
【0221】
(3−2) 塗膜の乾燥
基板に感光性樹脂組成物を塗布した後の塗膜の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、又はコンベクションオーブンを使用した乾燥法によるのが好ましい。乾燥の条件は、前記溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて適宜選択することができる。乾燥時間は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて、通常は、40〜200℃の温度で15秒〜5分間の範囲で選ばれ、好ましくは50〜130℃の温度で30秒〜3分間の範囲で選ばれる。
【0222】
乾燥温度は、高いほど透明基板に対する塗膜の接着性が向上するが、高すぎるとアルカリ可溶性樹脂が分解し、熱重合を誘発して現像不良を生ずる場合がある。なお、この塗膜の乾燥工程は、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う、減圧乾燥法であってもよい。
【0223】
(3−3)露光
画像露光は、感光性樹脂組成物の塗膜上に、ネガのマスクパターンを重ね、このマスクパターンを介し、紫外域から可視域に至る波長の光を照射して行う。この際、必要に応じ、酸素による光重合性層の感度の低下を防ぐため、光重合性の塗膜上にポリビニルアルコール層などの酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。上記の画像露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアークなどのランプ光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルタを利用することもできる。
【0224】
(3−4)現像
本発明に係るブラックマトリックスは、感光性樹脂組成物による塗膜を、上記の光源によって画像露光を行った後、有機溶剤、又は、界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液を用いる現像によって、基板上に画像を形成して作製することができる。この水溶液には、更に有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料又は顔料を含ませることができる。
【0225】
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリ性化合物や、モノ−・ジ−又はトリエタノールアミン、モノ−・ジ−又はトリメチルアミン、モノ−・ジ−又はトリエチルアミン、モノ−又はジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−又はトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
【0226】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤、アルキルベタイン類、アミノ酸類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0227】
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。有機溶剤は、単独で用いてもよく、また、水溶液と併用してもよい。
現像処理の条件は特に制限はなく、通常、現像温度は10〜50℃の範囲、中でも15〜45℃、特に好ましくは20〜40℃で、現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法などのいずれかの方法によることができる。
【0228】
(3−5)熱硬化処理
現像の後の基板には、熱硬化処理又は光硬化処理、好ましくは熱硬化処理を施す。この際の熱硬化処理条件は、温度は100〜280℃の範囲、好ましくは150〜250℃の範囲で選ばれ、時間は5〜60分間の範囲で選ばれる。
以上のようにして形成させたブラックマトリックスの高さは通常0.5〜5μm、好ましくは0.8〜4μmである。
さらに、厚さ1μm当たりの光学濃度(OD)が3.0以上、好ましくは3.5以上、より好ましくは3.8以上、特に好ましくは4.0以上、最も好ましくは4.2以上である。
【0229】
[その他のカラーフィルター画像の形成]
ブラックマトリックスを設けた透明基板上に、上記(3−1)〜(3−5)と同じプロセスで赤色、緑色、青色のうち一色の色材を含有する感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥した後、塗膜の上にフォトマスクを重ね、このフォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成させ、着色層を作製する。この操作を、赤色、緑色、青色の三色の感光性樹脂組成物についてそれぞれ行うことによって、カラーフィルター画像を形成することができる。これらの順番は上記に限定されるものではない。
【0230】
[着色スペーサー]
本発明の感光性樹脂組成物は、ブラックマトリックス以外に着色スペーサー用のレジストとして使用することも可能である。スペーサーをTFT型LCDに使用する場合、TFTに入射する光によりスイッチング素子としてTFTが誤作動を起こすことがあり、着色スペーサーはこれを防止するために用いられ、例えば、日本国特開平8−234212号公報にスペーサーを遮光性とすることが記載されている。着色スペーサーは着色スペーサー用のマスクを用いる以外は前述のブラックマトリックスと同様の方法で形成することができる。
【0231】
(3−6) 透明電極の形成
カラーフィルターは、このままの状態で画像上にITOなどの透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置などの部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド、ポリイミドなどのトップコート層を設けることもできる。また一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)などの用途においては、透明電極を形成しないこともある。
【0232】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させた硬化物を有する。画像表示装置としては、画像や映像を表示する装置であれば特に限定は受けないが、後述する液晶表示装置や有機ELディスプレイ等が挙げられる。
【0233】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、上述の本発明のブラックマトリックス、カラーフィルター画素、着色スペーサー等の硬化物を有するものであり、カラー画素やブラックマトリックスの形成順序や形成位置等特に制限を受けるものではない。
【0234】
液晶表示装置は、通常、カラーフィルター上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサーを散布した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して完成する。配向膜としては、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法及び/又はフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは数10nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行った後、紫外線の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調整しうる表面状態に加工される。
【0235】
スペーサーとしては、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが用いられ、通常2〜8μmのものが好適である。カラーフィルター基板上に、フォトリソグラフィ法によって透明樹脂膜のフォトスペーサー(PS)を形成し、これをスペーサーの代わりに活用することもできる。対向基板としては、通常、アレイ基板が用いられ、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好適である。
【0236】
対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶表示装置の用途によって異なるが、通常2〜8μmの範囲で選ばれる。対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂等のシール材によって封止する。シール材は、UV照射及び/又は加熱することによって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
周辺をシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶を液晶セル内に注入する。液晶セル内の減圧度は、通常、1×10
−2〜1×10
−7Paであるが、好ましくは1×10
−3〜1×10
−6Paである。また、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、加温温度は通常30〜100℃であり、より好ましくは50〜90℃である。減圧時の加温保持は、通常10〜60分間の範囲とされ、その後液晶中に浸漬される。液晶を注入した液晶セルは、液晶注入口をUV硬化樹脂を硬化させて封止することによって、液晶表示装置(パネル)が完成する。
【0237】
液晶の種類には特に制限がなく、芳香族系、脂肪族系、多環状化合物等、従来から知られている液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶等のいずれでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメスティック液晶及びコレステリック液晶等が知られているが、いずれであってもよい。
【0238】
[有機ELディスプレイ]
本発明の有機ELディスプレイは、本発明のカラーフィルターを用いて作製されたものである。
【0239】
本発明のカラーフィルターを用いて有機ELディスプレイを作製する場合、例えば
図1に示すように、まず透明支持基板10上に、感光性樹脂組成物により形成されたパターン(すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられた樹脂ブラックマトリックス(図示せず))が形成されてなるカラーフィルターを作製し、該カラーフィルター上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって、有機EL素子100を作製することができる。なお、画素20及び樹脂ブラックマトリックスの内、少なくとも一つは本発明の感光性樹脂組成物を用いて作製されたものである。有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルター上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100を用い、例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社,2004年8月20日発光,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載された方法等にて、有機ELディスプレイを作製することができる。
【0240】
なお、本発明のカラーフィルターは、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
【実施例】
【0241】
次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0242】
<カーボンブラックインクの調製>
以下の組成及び方法で顔料、分散剤、分散助剤(顔料誘導体)、溶剤を調合し、カーボンブラックインクを調製した。
具体的にはまず、顔料、分散剤、分散助剤の固形分と溶剤が以下の量比となるように調合した。
・顔料:RAVEN1060U(ビルラー社製、カーボンブラック);52.00質量部
・分散剤:DISPERBYK−167(ビックケミー社製、塩基性ウレタン分散剤);7.30質量部(固形分換算)
・分散助剤(顔料誘導体):S12000(ルーブリゾール社製、酸性基を有するフタロシアニン系顔料誘導体);1.03質量部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA);112.04質量部
【0243】
これらを十分に攪拌・混合し、分散液を得た。
次に、ペイントシェーカーにより25〜45℃の範囲で6時間分散処理を行った。ビーズとしては、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、分散液60質量部に対しビーズ180質量部の割合で加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、固形分35質量%のカーボンブラックインクを調製した。
【0244】
<合成例1:アルカリ可溶性樹脂(1)の合成>
【0245】
【化22】
【0246】
上記化学構造のエポキシ化合物(エポキシ当量264)50g、アクリル酸13.65g、3−メトキシブチルアセテート60.5g、トリフェニルホスフィン0.936g、及びパラメトキシフェノール0.032gを、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら90℃で酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応には12時間を要し、エポキシアクリレート溶液を得た。
得られたエポキシアクリレート溶液25質量部及び、トリメチロールプロパン(TMP)0.76質量部、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)3.3質量部、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)3.5質量部を、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温し反応させた。
樹脂溶液が透明になったところで、3−メトキシブチルアセテート(MBA)で希釈し、固形分50質量%となるよう調製し、酸価115mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)2,600のアルカリ可溶性樹脂(1)を得た。
【0247】
<合成例2:アルカリ可溶性樹脂(2)の合成>
【0248】
【化23】
【0249】
上記化学構造のエポキシ化合物(エポキシ当量240)7.3g、アクリル酸2.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.4g、テトラエチルアンモニウムクロライド0.18g、及びp−メトキシフェノール0.007gを温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら100℃で酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応には9時間を要し、エポキシアクリレート溶液を得た。
得られたエポキシアクリレート溶液16質量部、トリメチロールプロパン(TMP)0.4質量部、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)3.5質量部、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)0.06質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)14質量部を、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温して反応させ、固形分40質量%、酸価100mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)10,400のアルカリ可溶性樹脂(2)を得た。
【0250】
<光重合開始剤(1)>
【0251】
【化24】
【0252】
国際公開第第2015/036910号に記載の方法で合成した上記化学構造の光重合開始剤(1)を用いた。得られた光重合開始剤(1)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解して0.01質量%溶液を調製し、分光光度計U−3900H(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて吸収スペクトルを測定したところ、波長320nm〜400nmの範囲における極大吸収波長は331nmであった。
【0253】
<光重合開始剤(2)>
【0254】
【化25】
【0255】
国際公開第2008/078678号に記載の方法で合成した上記化学構造の光重合開始剤(2)を用いた。光重合開始剤(1)と同様の方法で吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長は368nmであった。
【0256】
<光重合開始剤(3)>
光重合開始剤(3)として、常州強力電子新材料社製のTR−PBG−314(以下の化学構造を有する化合物)を用いた。
【0257】
【化26】
【0258】
光重合開始剤(1)と同様の方法で吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長は339nmであった。
【0259】
<光重合開始剤(4)>
光重合開始剤(4)として、常州強力電子新材料社製のTR−PBG−358(以下の化学構造を有する化合物)を用いた。
【0260】
【化27】
【0261】
光重合開始剤(1)と同様の方法で吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長は344nmであった。
【0262】
<光重合性モノマー>
光重合性モノマーとして共栄社化学社製のライトアクリレートPE−4A、日本化薬製のKAYARAD DPCA−20を準備した。
【0263】
【化28】
【0264】
【化29】
【0265】
<密着向上剤>
密着向上剤として、シランカップリング剤である信越化学工業社製のKBM−5103、及び、リン酸系密着向上剤である日本化薬社製のKAYAMER PM−21を準備した。
【0266】
【化30】
【0267】
【化31】
【0268】
<塗布性向上剤>
塗布性向上剤として界面活性剤であるDIC社製のメガファックF−554(含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、ノニオン型界面活性剤)を準備した。
【0269】
<実施例1>
(ブラックレジスト1の調製)
前記<カーボンブラックインクの調製>で調製したカーボンブラックインクを用いて、表1に記載の割合となるように各成分を加え、スターラーにより攪拌、溶解させて、ブラックレジスト1を調製した。ブラックレジスト1中の全固形分は15質量%である。
【0270】
【表1】
【0271】
なお、表1中の溶剤の略称の意味は以下のとおりである。
PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MBA: 3−メトキシブチルアセテート
EDGAC: ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
【0272】
<実施例2>
(ブラックレジスト2の調製)
表1に示すブラックレジスト1において、光重合開始剤の合計量はそのままで、光重合開始剤(1)及び(2)の混合比率(質量%)を表2に示すように変更したこと以外は、ブラックレジスト1と同じ方法で固形分濃度15質量%のブラックレジスト2を調製した。
【0273】
【表2】
【0274】
<実施例3>
(ブラックレジスト3の調製)
表1に示すブラックレジスト1において、光重合開始剤の合計量はそのままで、光重合開始剤(1)及び(2)の混合比率(質量%)を表2に示すように変更したこと以外は、ブラックレジスト1と同じ方法で固形分濃度15質量%のブラックレジスト3を調製した。
【0275】
<比較例1>
(ブラックレジスト4の調製)
表1に示すブラックレジスト1において、光重合開始剤の合計量はそのままで、光重合開始剤(1)及び(2)の混合比率(質量%)を表2に示すように変更したこと以外は、ブラックレジスト1と同じ方法で固形分濃度15質量%のブラックレジスト4を調製した。
【0276】
<比較例2>
(ブラックレジスト5の調製)
表1に示すブラックレジスト1において、光重合開始剤の合計量はそのままで、光重合開始剤(1)及び(2)の混合比率(質量%)を表2に示すように変更したこと以外は、ブラックレジスト1と同じ方法で固形分濃度15質量%のブラックレジスト5を調製した。
【0277】
<実施例4>
(ブラックレジスト6の調製)
実施例2のブラックレジスト2において、光重合開始剤の合計量はそのままで、光重合開始剤(2)を光重合開始剤(3)に変更したこと以外は、ブラックレジスト2と同じ方法で固形分濃度15質量%のブラックレジスト6を調製した。
【0278】
<実施例5>
(ブラックレジスト7の調製)
実施例2のブラックレジスト2において、光重合開始剤の合計量はそのままで、光重合開始剤(2)を光重合開始剤(4)に変更したこと以外は、ブラックレジスト2と同じ方法で固形分濃度15質量%のブラックレジスト7を調製した。
【0279】
(ブラックレジストの評価)
(1)ブラックマトリックス(BM)細線パターンの作製
調製したブラックレジスト1〜7をスピンコーターにてガラス基板に塗布し、減圧乾燥後、ホットプレートで90℃にて100秒間乾燥した。なお、それぞれ塗布膜厚が約1.2μmとなるように塗布条件を調整した。続いて、得られた乾燥塗布膜に対し、露光機(オーク製作所社製EXF−2829−F−00)を用いて、高圧水銀灯(オーク製作所社製ADH−3000M−F−N、光学フィルターなし)により35mJ/cm
2で、開口幅1〜10μm(1μm刻み)および15μmの直線状開口部を有する露光マスクを介してパターン露光(プロキシミティギャップ:180μm)を行った。その後、室温(23℃)下、超純水で0.04質量%に調製したKOH水溶液をアルカリ現像液として用いて溶解時間の2.2倍の時間、スプレー現像(スプレー圧力:0.1MPa)して、未露光部を除去した後、超純水でスプレー洗浄(スプレー圧力:0.1MPa)を行い、BM細線パターンを形成した。なお、溶解時間とは、現像処理時に未露光部のブラックレジスト膜が溶解して基板表面が見え始めるまでの時間であり、各々のブラックレジストの溶解時間は20〜30秒の範囲であった。
【0280】
(2)BM細線パターン評価
作製した現像後のBM細線パターンに対して光学顕微鏡観察を行い、BM細線形成状態を確認し、細線密着と感度の評価を行った。結果を表3に示した。なお、細線密着と感度の評価は以下の基準にて行った。
【0281】
(細線密着評価)
BM細線は、アルカリ現像中にBM細線/ガラス基板の接着面が浸食されて差込みが発生し、細線密着性が悪くなる場合がある。光学顕微鏡により10μm以下のラインパターン部分を観察し、例えば、8μm以上のパターンが密着し7μm以下のパターンが剥離していた場合には、細線密着を8μmと評価し、以下の通り分類した(ここでは例えば、露光マスクの開口部の幅が7μmに対応するパターンを、7μmのパターンと記載している。)。なお、評価が「○」であれば細線密着性が良好であり、「◎」であればさらに良好であると評価でき、「×」は細線密着性が悪いと評価される。
◎:7μm以上のパターンの細線が密着している。
〇:8μm以上のパターンの細線が密着している(7μm以下のパターンは剥離)。
×:9μm以上のパターンの細線が密着している(8μm以下のパターンは剥離)。
【0282】
(感度評価)
ブラックレジストは感光性樹脂組成物としての露光感度が上がると、形成されるBM細線の線幅が増える傾向にある。光学顕微鏡により15μmのラインパターンの線幅を測長して、感度の判定を以下の通り分類した(ここで例えば、露光マスクの開口部の幅が15μmに対応するパターンを、15μmのパターンと記載している。)。なお、評価が「○」であれば感度が良好であると評価でき、「×」は感度が低いと評価される。
○:15μmのパターンの線幅が15μm以上。
×:15μmのパターンの線幅が15μm未満。
【0283】
【表3】
【0284】
表3に示すように、実施例1〜5のBM細線は、いずれも細線密着と感度が共に良好であった。比較例1のBM細線は、高感度を示す一方で細線密着が低い結果となった。また、比較例2のBM細線は、良好な細線密着を示す一方で感度が低い結果となった。
【0285】
比較例1では、BM表面の硬化が強いがBM内部の硬化は不十分なため、線幅が太い割りに細線密着が悪い結果となっていると考えられる。比較例2では、BM表面の硬化が緩いがBM内部の硬化は強めのため線幅が細い割りに、細線密着が良い結果となっていると考えられる。また、実施例1〜5では、BM表面と内部の硬化がバランスよく進んでいることが細線密着と高感度の両立に繋がっていると考えられる。
【0286】
実施例1〜5は高感度であることで線幅は太くなるが、以下に挙げる観点からメリットが多く望ましいことである。
・感度に余裕がある分、光重合開始剤の減量が可能で、減量分をアルカリ可溶性樹脂や光重合性モノマーなどに置換えることで耐現像性や基板密着性等の性能向上に振り分けられること。
・目標線幅の形成に必要な露光量が下がる分、露光速度が増加できて生産性が向上する。一方、比較例1も高感度の結果であるが、BM内部の硬化は不十分であるため、光重合開始剤の減量や露光量の低減を行うと更なる細線密着悪化を引き起こす。
【0287】
本発明の効果に関して詳細な機構は明らかになっていないが以下のように考えられる。すなわち、フェニルスルフィド系の光重合開始剤は330nm付近のUV吸収能力に優れているが、一般式(I)で示される光重合開始剤(c1)が持つ縮合複素環のベンゾフラン部は色材、特にカーボンブラックとの相互作用力を高めることにより光重合開始剤(c1)の色材粒子表面への吸着を促進する。色材に吸収された光は重合に寄与せず露光感度低下の大きな原因となるが、光重合開始剤が色材表面を覆うことで、光重合開始剤に対する光吸収率が向上する。また、光重合開始剤の色材への吸着は、相対的に樹脂成分中の光重合開始剤濃度を下げるため、深部への光透過性が向上する。これにより、レジスト膜の内部硬化性が向上し、細線密着性の改善に繋がると考えられる。
【0288】
ただし、光重合開始剤(c1)だけでは、露光光源のUV波長域の低波長側の一部しか利用しておらず、十分な感度が得られないため、極大吸収波長が長波長域にある光重合開始剤(c2)と組合せることで感度、特に表面感度が底上げできる。光重合開始剤(c1)と光重合開始剤(c2)の間には極大吸収波長の差があるため、併用による内部硬化性への影響は抑えられる。これらにより、表面感度と内部硬化を同時に高めることができたと考えられる。
以上より、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、高感度かつ細線密着性能に優れる感光性樹脂組成物が提供可能であることがわかる。
【0289】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は2016年9月16日付で出願された日本特許出願(特願2016−181932)に基づいており、その全体が引用により援用される。
本発明の課題は高感度かつ細線密着性に優れた感光性樹脂組成物を提供することにある。本発明の感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性樹脂、(b)光重合性モノマー、(c)光重合開始剤及び(d)色材を含有し、(c)光重合開始剤が、一般式(I)で表される光重合開始剤(c1)、及び、波長320nm〜400nmの範囲における極大吸収波長が334nm以上である光重合開始剤(c2)を含有する。