(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶媒が、縮合環式芳香族溶媒、エーテル系芳香族溶媒、およびエステル系芳香族溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2記載の有機発光素子の発光層用インク組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0017】
<有機発光素子用インク組成物>
本形態に係る有機発光素子用インク組成物は、有機発光素子材料、レベリング剤、および溶媒を含む。この際、前記レベリング剤は、少なくともシロキサンモノマーおよび疎水性モノマーを共重合させてなるブロック共重合体である。なお、前記有機発光素子用インク組成物には、その他、必要に応じて、界面活性剤等が含まれていてもよい。
【0018】
[有機発光素子材料]
有機発光素子材料としては、有機発光素子を構成する層に使用される材料であれば特に制限されない。一実施形態において、有機発光素子用インク組成物が含有しうる有機発光素子材料としては、発光層に使用される発光材料、正孔注入層に使用される正孔注入材料、正孔輸送層に使用される正孔輸送材料、電子輸送層に使用される電子輸送材料、および電子注入層に使用される電子注入材料が挙げられる。
【0019】
(発光材料)
発光材料は、発光層において、正孔および電子を利用して行う発光に直接または間接に寄与する機能を有する。なお、本明細書において、「発光」には、蛍光による発光および燐光による発光を含むものとする。
【0020】
一実施形態において、発光材料は、ホスト材料およびドーパント材料を含む。
【0021】
ホスト材料
ホスト材料は、通常、発光層に注入された正孔および電子を輸送する機能を有する。
【0022】
前記ホスト材料としては、上記機能を有するものであれば特に制限されない。ホスト材料は、高分子ホスト材料および低分子ホスト材料に分類される。なお、本明細書において、「低分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000以下のものを意味する。一方、本明細書において、「高分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000超のものを意味する。この際、本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定された値を採用するものとする。
【0023】
高分子ホスト材料としては、特に制限されないが、ポリ(9−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリフルオレン(PF)、ポリフェニレンビニレン(PPV)、およびこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0024】
高分子ホスト材料の重量平均分子量(Mw)は、5,000超5,000,000以下であることが好ましく、5,000超1,000,000以下であることがより好ましい。
【0025】
低分子ホスト材料としては、特に制限されないが、4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、1,3−ジカルバゾリルベンゼン(mCP)、4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−2,2’−ジメチルビフェニル(CDBP)、N,N’−ジカルバゾリル−1,4−ジメチルベンゼン(DCB)、2,7−ビス(ジフェニルホスフィンオキシド)−9,9−ジメチルフルオレセン(P06)、3,5−ビス(9−カルバゾリル)テトラフェニルシラン(SimCP)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH3)、1,3,5−トリス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(TDAPB)、9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾール等が挙げられる。
【0026】
低分子ホスト材料の重量平均分子量(Mw)は、100〜5,000であることが好ましく、300〜5,000であることがより好ましい。
【0027】
上述のホスト材料のうち、ホスト材料としては、低分子ホスト材料を用いることが好ましく、4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾールを用いることがより好ましく、4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾールを用いることがさらに好ましい。
【0028】
上述のホスト材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
ホスト材料の含有量は、有機発光素子用インク組成物全量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。ホスト材料の含有量が0.1質量%以上であると、ホスト分子とドーパント分子の分子間距離を短くできることから好ましい。一方、ホスト材料の含有量が10質量%以下であると量子収率の低下を抑制できることから好ましい。
【0030】
ドーパント材料
ドーパント材料は、輸送された正孔および電子を再結合することにより得られるエネルギーを利用して発光する機能を有する。
【0031】
前記ドーパント材料としては、上記機能を有するものであれば特に制限されない。ドーパント材料は、通常、高分子ドーパント材料および低分子ドーパント材料に分類される。
【0032】
高分子ドーパント材料としては、特に制限されないが、ポリフェニレンビニレン(PPV)、シアノポリフェニレンビニレン(CN−PPV)、ポリ(フルオレニレンエチニレン)(PFE)、ポリフルオレン(PFO)、ポリチオフェンポリマー、ポリピリジン、およびこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0033】
高分子ドーパント材料の重量平均分子量(Mw)は、5,000超5,000,000以下であることが好ましく、5,000超1,000,000以下であることがより好ましい。
【0034】
低分子ドーパント材料としては、特に制限されないが、蛍光発光材料、燐光発光材料等が挙げられる。
【0035】
前記蛍光発光材料としては、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン、キナクリドン、クマリン、Al(C
9H
6NO)
3等のアルミニウム錯体等、ルブレン、ペリミドン、ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリル)−4H−ピラン(DCM)、ベンゾピラン、ローダミン、ベンゾチオキサンテン、アザベンゾチオキサンテン、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0036】
前記燐光発光材料としては、周期表第7族〜第11族の中心金属と、前記中心金属に配位した芳香族系配位子とを含む錯体が挙げられる。
【0037】
前記周期表第7族〜第11族の中心金属としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、白金、銀、銅等が挙げられる。これらのうち、中心金属は、イリジウムであることが好ましい。
【0038】
前記配位子としては、フェニルピリジン、p−トリルピリジン、チエニルピリジン、ジフルオロフェニルピリジン、フェニルイソキノリン、フルオレノピリジン、フルオレノキノリン、アセチルアセトン、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、配位子は、フェニルピリジン、p−トリルピリジン、およびこれらの誘導体であることが好ましく、p−トリルピリジンおよびその誘導体であることがより好ましい。
【0039】
具体的な燐光発光材料としては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)
3)、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]ルテニウム、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]パラジウム、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]白金、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]オスミウム、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0040】
上述のうち、ドーパント材料は、低分子ドーパント材料であることが好ましく、燐光発光材料であることがより好ましく、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)であることがさらに好ましい。
【0041】
低分子ドーパント材料の重量平均分子量(Mw)は、100〜5,000であることが好ましく、100〜3,000であることがより好ましい。
【0042】
上述のドーパント材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
ドーパント材料の含有量は、有機発光素子用インク組成物全量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。ドーパント材料の含有量が0.01質量%以上であると、発光強度を高めることができることから好ましい。一方、ドーパント材料の含有量が10質量%以下であると量子収率の低下を抑制できることから好ましい。
【0044】
上述のうち、発光材料としては、より高い発光効率が得られうる観点から、低分子発光材料を用いることが好ましく、低分子ホスト材料および低分子ドーパント材料を用いることがより好ましく、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)および9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾールを用いることがさらに好ましい。
【0045】
(正孔注入材料)
正孔注入材料は、正孔注入層において、陽極から正孔を取り入れる機能を有する。この際、正孔注入材料が取り入れた正孔は、正孔輸送層または発光層に輸送される。
【0046】
正孔注入材料としては、特に制限されないが、銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;4,4’,4”-トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミン等のトリフェニルアミン誘導体;1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン等のシアノ化合物;酸化バナジウム、酸化モリブデン等の酸化物;アモルファスカーボン;ポリアニリン(エメラルディン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT−PSS)、ポリピロール等の高分子が挙げられる。これらのうち、正孔注入材料は、高分子であることが好ましく、PEDOT−PSSであることがより好ましい。
【0047】
上述の正孔注入材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
正孔注入材料の含有量は、有機発光素子用インク組成物全量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。正孔注入材料の含有量が0.01質量%以上であると、正孔を効果的に取り入れることができることから好ましい。一方、正孔注入材料の含有量が10質量%以下であると量子収率の低下を抑制できることから好ましい。
【0049】
(正孔輸送材料)
正孔輸送材料は、正孔輸送層において、正孔を効率的に輸送する機能を有する。正孔は、通常、正孔輸送材料から発光層に輸送される。
【0050】
正孔輸送材料としては、特に制限されないが、TPD(N,N'−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4、4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)等の低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;下記化学式HT−2で表されるトリフェニルアミン誘導体に置換基を導入して重合した高分子化合物等が挙げられる。これらのうち、正孔輸送材料は、トリフェニルアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体に置換基を導入して重合した高分子化合物であることが好ましく、HT−2であることがより好ましい。
【0051】
上述の正孔輸送材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
正孔輸送材料の含有量は、有機発光素子用インク組成物全量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。正孔輸送材料の含有量が0.01質量%以上であると、正孔を効果的に輸送できることができることから好ましい。一方、正孔輸送材料の含有量が10質量%以下であると量子収率の低下を抑制できることから好ましい。
【0054】
(電子輸送材料)
電子輸送材料は、電子輸送層において、電子を効率的に輸送する機能を有する。電子は、通常、電子輸送材料から発光層に輸送される。
【0055】
電子輸送材料としては、特に制限されないが、トリス(8−キノリラート)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(Znq)等のキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体;ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラート]亜鉛(Zn(BOX)2)等のベンズオキサゾリン骨格を有する金属錯体;ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラート]亜鉛(Zn(BTZ)2)ベンゾチアゾリン骨格を有する金属錯体;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(CO11)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(TPBI)、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(mDBTBIm−II)等のポリアゾール誘導体;下記化学式ET−1で表されるベンゾイミダゾール誘導体;キノリン誘導体;ペリレン誘導体;ピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;トリアジン誘導体;キノキサリン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられる。これらのうち、電子輸送材料は、ベンゾイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体であることが好ましい。
【0056】
上述の電子輸送材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい
【0058】
電子輸送材料の含有量は、有機発光素子用インク組成物全量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。電子輸送材料の含有量が0.01質量%以上であると、電子を効果的に輸送できることができることから好ましい。一方、電子輸送材料の含有量が10質量%以下であると量子収率の低下を抑制できることから好ましい。
【0059】
(電子注入材料)
電子注入材料は、電子注入層において、陰極から電子を取り入れる機能を有する。この際、電子注入層が取り入れた電子は、電子輸送層または発光層に輸送される。
【0060】
電子注入材料としては、特に制限されないが、リチウム、カルシウム等のアルカリ金属;ストロンチウム、アルミニウム等の金属;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属塩;8−ヒドロキシキノリラートリチウム等のアルカリ金属化合物;フッ化マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;酸化アルミニウム等の酸化物等が挙げられる。これらのうち、電子注入材料は、アルカリ金属、アルカリ金属塩、アルカリ金属化合物であることが好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ金属化合物であることがより好ましい。
【0061】
上述の電子注入材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
電子注入材料の含有量は、有機発光素子用インク組成物全量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。電子注入材料の含有量が0.01質量%以上であると、電子を効果的に取り入れるできることができることから好ましい。一方、電子注入材料の含有量が10質量%以下であると量子収率の低下を抑制できることから好ましい。
【0063】
前記有機発光素子材料は、発光材料、正孔輸送材料であることが好ましく、発光材料であることがより好ましく、低分子発光材料であることがさらに好ましい。
【0064】
[レベリング剤]
一実施形態において、レべリング剤は、有機発光素子用インク組成物を用いて有機発光素子を構成する層を形成する際に、得られる層のうねりを防止する機能を有する。
【0065】
また、一実施形態において、有機発光素子用インク組成物を用いて発光層を形成する場合、レベリング剤は形成された発光層を含む有機発光素子について、発光効率を向上させる機能を有しうる。
【0066】
本形態に係るレベリング剤は、少なくともシロキサンモノマーおよび疎水性モノマーを共重合させてなるブロック共重合体である。この際、前記レベリング剤は、重合開始剤に起因する成分等を含んでいてもよい。
【0067】
(シロキサンモノマー)
シロキサンモノマーは、シロキサン基、重合性官能基、および第1の連結基を含む。この際、前記第1の連結基は、前記シロキサン基と前記重合性官能基とを連結させるものである。なお、本明細書において、「シロキサン」とは、「−Si−O−Si−」の構造(シロキサン構造)を意味する。
【0068】
シロキサンモノマーが有するシロキサン基としては、特に制限されないが、下記式(1)で表されるものであることが好ましい。
【0070】
上記式(1)において、R
1としては、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C30アルキル基、C3〜C30シクロアルキル基、C1〜C30アルキルシリルオキシ基が挙げられる。
【0071】
前記C1〜C30アルキル基としては、特に制限されないがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ウンデシル、オクタデシル等が挙げられる。
【0072】
また、前記C3〜C30シクロアルキル基としては、特に制限されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デシル、アダマンチル等が挙げられる。
【0073】
前記C1〜C30アルキルシリルオキシ基としては、特に制限されないが、メチルシリルオキシ、ジメチルシリルオキシ、トリメチルシリルオキシ、エチルシリルオキシ、ジエチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、エチルメチルシリルオキシ、ジエチルメチルシリルオキシ等が挙げられる。
【0074】
この際、前記C1〜C30アルキル基、前記C3〜C30シクロアルキル基、前記C1〜C30アルキルシリルオキシ基を構成する水素原子の少なくとも1つは、置換基で置換されていてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子;ヒドロキシ基;チオール基;ニトロ基;スルホ基;メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基等のC1〜C10アルコキシ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のC1〜C10アルキルアミノ基;メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等のC2〜C10アルキルカルボニル基;メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等のC2〜C10アルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0075】
これらのうち、R
1は、水素原子、C1〜C30アルキル基、C1〜C30アルキルシリルオキシ基を含むことが好ましく、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシを含むことがより好ましく、水素原子、メチル、エチル、プロピル、トリメチルシリルオキシを含むことがさらに好ましい。
【0076】
nは、1〜1000であり、好ましくは1〜200である。
【0077】
また、シロキサンモノマーが有する重合性官能基としては、特に制限されないが、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、グリシジル、ビニル、ビニリデン等が挙げられる。これらのうち、重合性官能基は、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシであることが好ましい。
【0078】
さらに、シロキサンモノマーが有する第1の連結基としては、単結合、酸素原子、硫黄原子、C1〜C10アルキレン基、C6〜C30アリーレン基等が挙げられる。
【0079】
前記C1〜C10アルキレン基としては、特に制限されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、iso−ブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン等が挙げられる。
【0080】
前記C6〜C30アリーレン基としては、特に制限されないが、フェニレン、トリレン、ナフチレン、アントラセニレン、ビフェニレン等が挙げられる。
【0081】
この際、前記C1〜C10アルキレン基、C6〜C30アリーレン基を構成する水素原子の少なくとも1つは、上述の置換基で置換されていてもよい。
【0082】
上述のうち、第1の連結基は、単結合、C1〜C10アルキレン基であることが好ましく、単結合、メチレン、エチレン、プロピレンであることがより好ましい。
【0083】
具体的なシロキサンモノマーの具体例を以下に示す。
【0085】
上述のシロキサンモノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
(疎水性モノマー)
疎水性モノマーは、疎水性基、重合性官能基、および第2の連結基を含む。この際、前記第2の連結基は、前記疎水性基と前記重合性官能基とを連結させるものである。なお、本明細書において、「疎水性基」とは、疎水性基が水素原子と結合してなる分子の水への溶解度(25℃、25%RH)が100mg/L以下のものを意味する。
【0087】
前記疎水性基としては、特に制限されないが、C1〜C30アルキル基、C3〜C30シクロアルキル基、C6〜C30のアリール基が挙げられる。
【0088】
前記C1〜C30アルキル基およびC3〜C30シクロアルキル基は上述と同様である。
【0089】
前記C6〜C30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニル等が挙げられる。
【0090】
この際、前記C1〜C10アルキル基、C3〜C30シクロアルキル基、C6〜C30アリール基を構成する水素原子の少なくとも1つは、疎水性を示す範囲内で、上述の置換基で置換されていてもよい。
【0091】
また、疎水性モノマーが有する重合性官能基は、特に制限されないが、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、グリシジル、ビニル等が挙げられる。これらのうち、重合性官能基は、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ビニルであることが好ましい。
【0092】
さらに、疎水性モノマーが有する第2の連結基としては、単結合、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。
【0093】
具体的な疎水性モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート等のアルキルアクリレート;グリシジルメチルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルブリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル;ビニルメチルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のシクロアルキルメタクリレート;シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のシクロアルキルアクリレート;シクロヘキシルグリシジルエーテル等のシクロアルキルグリシジルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のアリールメタクリレート;フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアリールアクリレート;グリシジルフェニルエーテル等のアリールグリシジルエーテル;スチレン、ビニルトルエン等のアリールビニル;フェニルビニルエーテル等のアリールフェニルエーテル;1,1−ジフェニルエチレン等のアリールビニリデン等が挙げられる。
【0094】
上述の疎水性モノマーのうち、後述する発光効率の向上効果がより好適に得られる観点から、アリール基を含む芳香族含有モノマーを用いることが好ましく、アリールビニル、アリールビニリデンを用いることがより好ましく、スチレン、1,1−ジフェニルエチレンを用いることがさらに好ましい。
【0095】
なお、上述の疎水性モノマーは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
(重合開始剤)
重合開始剤は、通常、ブロック共重合体を形成する際に適用されるリビングアニオン重合の開始剤の機能を有する。この際、重合開始剤は、シロキサンモノマーの重合性官能基、疎水性モノマーの重合性官能基等と反応して重合を開始させることができる。この場合には、得られるブロック共重合体には、重合開始剤に起因する成分が含まれることとなる。
【0097】
重合開始剤としては、特に制限されないが、有機リチウム化合物を用いることが好ましい。
【0098】
前記有機リチウム化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルコキシアルキルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム、α−メチルスチリルリチウム等のアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;1,1−ジフェニルエチレンリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウム、3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム等のジアリールアルキルリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体等が挙げられる。これらのうち、アルキルリチウム、ジアリールアルキルリチウムを用いることが好ましく、ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,1−ジフェニルエチレンリチウムを用いることがさらに好ましい。
【0099】
なお、上述の有機リチウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
(レベリング剤;ブロック共重合体)
本形態に係るブロック共重合体は、シロキサンモノマーおよび疎水性モノマーを共重合させてなる構造を含む。
【0101】
この際、ブロック共重合体の具体的構造は、その製造方法に基づき決定されうる。
【0102】
ブロック共重合体の製造方法としては、特に制限されないが、リビングアニオン重合により製造することが好ましい。
【0103】
リビングアニオン重合は、(1)重合開始剤を用いてシロキサンモノマーをアニオン重合させてポリシロキサンを調製し、次いで、前記ポリシロキサンに疎水性モノマーをアニオン重合させる方法、(2)重合開始剤を用いて疎水性モノマーをアニオン重合させて疎水性ポリマーを調製し、次いで、前記疎水性ポリマーにシロキサンモノマーをアニオン重合させる方法等が挙げられる。
【0104】
この際、得られるブロック共重合体(レベリング剤)の性能を考慮して、レベリング剤中のシロキサンモノマーに由来するシロキサン構造部と、疎水性モノマーに由来する疎水性部とを調整することが好ましい。
【0105】
より詳細には、レベリング剤のケイ素含有率が、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1〜50.0質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることがさらに好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。レベリング剤のケイ素含有率が、0.1質量%以上であると、表面エネルギーを減少できることから好ましい。この際、レベリング剤の合成条件、例えば、シロキサンモノマーの添加量を適宜調整することで、ケイ素含有率の値を制御することができる。なお、本明細書において、「ケイ素含有率」の値は、下記式で計算された値を採用するものとする。
【0107】
また、重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、モノマー100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.005〜0.5質量部であることがより好ましく、0.01〜0.3質量部であることがさらに好ましい。
【0108】
さらに、重合反応は無溶媒で行っても、溶媒中で行ってもよい。溶媒中で重合を行う際に用いられうる溶媒としては、特に制限されないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性非プロトン性溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0109】
重合反応における溶媒の使用量は、特に制限されないが、モノマーの仕込み量100質量部に対して、0〜2000質量部であることが好ましく、10〜1000質量部であることがより好ましく、10〜100質量部であることがさらに好ましい。
【0110】
上述のように、ブロック共重合体の具体的構造はその製造方法に基づき決定されうるが、一実施形態に係るブロック共重合体の構造を以下に例示する。
【0112】
レベリング剤の重量平均分子量(Mw)は、500〜100,000であることが好ましく、3,000〜40,000であることがより好ましい。レベリング剤の重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあると、うねりを抑制でき、また、特に有機発光素子用インク組成物を発光層の形成に使用する場合には、ドーパント分子を均一に溶解・分散させうることから好ましい。なお、本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」の値は、実施例の測定方法により測定された値を採用するものとする。
【0113】
また、レベリング剤の数平均分子量(Mn)は、500〜100,000であることが好ましく、3,000〜40,000であることがより好ましい。レベリング剤の数平均分子量(Mn)が上記範囲にあると、うねりを抑制でき、また、特に有機発光素子用インク組成物を発光層の形成に使用する場合には、ドーパント分子を均一に溶解・分散させうることから好ましい。なお、本明細書において、「数平均分子量(Mn)」の値は、実施例の測定方法により測定された値を採用するものとする。
【0114】
さらに、レべリング剤の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜1.8であることが好ましく、1.0〜1.5であることがより好ましい。レベリング剤の分散度が上記範囲にあると、ブロック共重合が好適に行われて形成されており、後述するように本発明の効果を好適に発揮することができる。
【0115】
レベリング剤の不揮発含有量は、有機発光素子材料、レベリング剤、および溶媒の合計を100質量%とした場合に、0.001〜5.0質量%であることが好ましく、0.001〜1.0質量%であることがより好ましい。レベリング剤の不揮発含有量が0.001質量%以上であると、うねりの発生を防止できることから好ましい。一方、レベリング剤の不揮発含有量が5.0質量%以下であると、発光効率が安定することから好ましい。
【0116】
本形態に係る有機発光素子用インク組成物を塗布して塗膜を形成すると、レベリング剤はシロキサン構造を有することから塗膜表面に配向して表面張力を低下させる。そして、かような状態で得られた塗膜を乾燥することで、乾燥に基づくうねりの発生を防止することができ、高度に平坦性を実現した層、ひいては高い性能を有する有機発光素子を得ることができる。この際、レベリング剤がブロック共重合体であることにより、ランダム共重合体を使用した場合と比較して、偏在するシロキサン構造の存在により、表面張力低下作用を効果的に発揮することができ、また、疎水性モノマー由来構造は有機発光素子用インク組成物中の溶媒と親和性を有するため、偏在する疎水性モノマー由来構造が好適に塗膜内部に配向し、これによって、シロキサン構造をより効果的に塗膜表面偏析させることができ、表面張力低下作用をさらに効果的に発揮させることができる。
【0117】
また、一実施形態において、有機発光素子用インク組成物を発光層の形成に使用する場合には、有機発光素子の発光効率を向上させる機能をも発現させうる。このような機能は、レベリング剤が有するシロキサン構造が、発光層中の発光材料の分散性に影響を及ぼすことによるものと考えられる。
【0118】
より詳細に説明すると、一実施形態において、発光材料はホスト材料およびドーパント材料を含む。そして、発光層において、ホスト材料により正孔および/または電荷が輸送され、ドーパント材料が輸送された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用することで、発光層は発光する。したがって、ドーパント材料およびホスト材料は、発光層中で均一に分散して存在すると、発光層中で効率的な発光が可能となる。
【0119】
有機発光素子用インク組成物に含有される従来のレベリング剤は、インク組成物を塗布して得られた塗膜の表面に配向して表面張力を低下させるが、これとともに、ドーパント材料の界面偏析作用を有する可能性がある。そうすると、ドーパント材料はレベリング剤とともに塗膜表面に偏在し、得られる発光層においてもその偏在が維持される。これにより効率的な正孔/電荷の授受を行うことができず、発光効率が低くなりうる。すなわち、従来のレベリング剤を使用すると、うねりの防止効果は一定程度得られるものの、その代償として発光効率が低下しうるのである。
【0120】
これに対し、レベリング剤がシロキサン構造を含むと、レベリング剤によるドーパント材料の界面偏析作用を防止または抑制することができる。その結果、ドーパント材料は発光層中で均一に分散することとなり、発光効率が相対的に高くなりうる。そしてこの際、レベリング剤がブロック共重合体であることにより、ランダム共重合体を使用した場合と比較して、偏在するシロキサン構造の存在により、ドーパントの界面偏析防止(抑制)作用を効果的に発揮することができ、また、偏在する疎水性モノマーの存在により、ドーパントの凝集を抑制することができる。
【0121】
[溶媒]
一実施形態において、有機発光素子用インク組成物に適用される溶媒は、特に制限されず、形成する層に応じて適宜公知のものが使用されうる。具体的には、芳香族系溶媒、アルカン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、他の溶媒等が挙げられる。
【0122】
前記芳香族系溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、メシチレン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、フェネトール、メトキシトルエン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール等の単環式芳香族溶媒;シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、ナフタレン、メチルナフタレン等の縮合環式芳香族溶媒;メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、プロピルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル等のエーテル系芳香族溶媒;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル等のエステル系芳香族溶媒等が挙げられる。
【0123】
前記アルカン系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0124】
前記エーテル系溶媒としては、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0125】
前記アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0126】
前記エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
【0127】
前記アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0128】
前記他の溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。
【0129】
これらのうち、溶媒としては、芳香族系溶媒を含むことが好ましく、縮合環式芳香族溶媒、エーテル系芳香族溶媒、およびエステル系芳香族溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、縮合環式芳香族溶媒および/またはエーテル系芳香族溶媒を用いることがさらに好ましい。
【0130】
なお、上述の溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
縮合環式芳香族溶媒、エーテル系芳香族溶媒、エステル系芳香族溶媒を用いると、溶媒がレベリング剤と好適な相互作用を発現することにより、より高いうねり防止の効果が得られうることから好ましい。
【0132】
また、有機発光素子用インク組成物を発光層の形成に使用する場合において、縮合環式芳香族溶媒および/またはエーテル系芳香族溶媒を用いると、溶媒がレベリング剤および発光材料と好適な相互作用を発現することにより、より高い発光効率が得られうることから好ましい。
【0133】
本発明の一実施形態において、有機発光素子用インク組成物を発光層の形成に使用する場合、発光材料と溶媒との関係に係る下記式(a)で表される3次元座標距離(Ra)が、10以下であることが好ましく、0〜9であることがより好ましく、0〜8であることがさらに好ましい。
【0135】
上記式中、dD、dP、およびdHは、それぞれ前記発光材料および前記溶媒のハンセン溶解度パラメータの分散項の差、分極項の差、並びに水素結合項の差である。
【0136】
上記式(a)で表される3次元座標距離(Ra)(以下、「HSP−Ra」とも称することがある)が10以下であると、発光材料の溶媒への溶解が好適なものとなり、成膜性が向上することによって、より高いうねりの防止効果が得られうる。
【0137】
なお、上記HSP−Raは、発光材料と溶媒との親和性を予測する指標となりうるものである。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、発光材料の溶媒に対する溶解性の指標である。溶解特性は、分散項、分極項、および水素結合項を座標軸とする3次元の座標により表され、座標間の距離の差(HSP距離)から前記溶解性を判断することができる。この際、分散項はファンデルワールス力、分極項は双極子モーメントの力、水素結合項は水素結合力を示す。
【0138】
具体的な溶解性の判断は、発光材料の溶解度パラメータと、溶媒の溶解パラメータとの分散項、分極項、および水素結合項のHSP距離、すなわち、分散項の差(dD)、分極項の差(dP)、および水素結合項の差(dH)を求め、上記式(a)により3次元座標距離(Ra)を求めることができる。この際、3次元座標距離(Ra)が0に近づくほど発光材料と溶媒とは相溶性が高い。なお、本明細書において、「3次元座標距離(Ra)(HSP−Ra)」の値は、ハンセンの溶解度パラメータ計算ソフトHSPiP ver.3.1.19を用いて測定・算出された値を採用するものとする。
【0139】
<有機発光素子用インク組成物の製造方法>
本発明の一実施形態において、有機発光素子用インク組成物の製造方法は、特に制限されないが、(1)レベリング剤および溶媒を含む溶液または分散液を調製し、次いで、当該溶液または分散液に有機発光素子材料を添加する方法、(2)有機発光素子材料および溶媒を含む溶液または分散液を調製し、次いで、当該溶液または分散液にレベリング剤を添加する方法、(3)レベリング剤および溶媒を含む溶液または分散液と、有機発光素子材料および溶媒を含む溶液または分散液とをそれぞれ調製し、これらの溶液または分散液を混合する方法等が挙げられる。
【0140】
なお、インクジェット記録用に本発明の有機発光素子用インク組成物を調製する場合には、その粘度を1〜20mPaとなるように調製することが、充分な吐出性を確保する上で好ましい。
【0141】
インクジェット記録用インクの調製に当たっては、粗大粒子によるノズル目詰まり等を回避するために、通常は、インク調製の任意の工程において、遠心分離やフィルター濾過により粗大粒子を除去する。
【0142】
また、インク調製のために用いる原料である、有機発光素子材料、レベリング剤、および溶媒等は、極力、不純物やイオン成分を含有しない高純度品を用いることが、後記するインクジェット記録を連続して行った際における、ノズル上での何らかの反応による堆積物の生成に起因するような、上記したノズル目詰まりを防止できるだけでなく、しかも、発光層を中心層として、その両外側の各層との間で求められている機能を充分に発揮させ、長期連続使用に当たっても信頼性の高い、優れた有機発光素子を得る上では好ましい。
【0143】
こうして得られたインクジェット記録用インクは、例えば、ピエゾ方式や、サーマル(バブルジェット)方式の様な各種オンデマンド方式の、公知慣用のインクジェット記録方式のプリンターに採用することが出来る。
【0144】
<有機発光素子>
本発明の一形態によれば、陽極、発光層、および陰極を含む有機発光素子が提供される。この際、前記発光層が、レベリング剤を含み、前記レベリング剤が、少なくともシロキサンモノマーおよび疎水性モノマーを共重合させてなるブロック共重合体であることを特徴とする。
【0145】
なお、前記有機発光素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層等の他の層を1以上含んでいてもよい。また、封止部材等の公知のものを含んでいてもよい。
【0146】
また、別の一実施形態によれば、陽極、発光層、および陰極と、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層からなる群から選択される少なくとも1つの層と、を含む有機発光素子が提供される。この際、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層からなる群から選択される少なくとも1つの層が、レベリング剤を含み、前記レベリング剤が、少なくともシロキサンモノマーおよび疎水性モノマーを共重合させてなるブロック共重合体であることを特徴とする。
【0147】
すなわち、有機発光素子は、陽極、発光層、および陰極を最小構成単位とし、さらに、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層からなる群から選択される少なくとも1つの層を任意の構成単位として含む場合がある。この場合、レベリング剤は、発光層のみに含まれていてもよいし、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層からなる群から選択される少なくとも1つの層にのみ(例えば、正孔輸送層のみ、正孔輸送層および電子輸送層)に含まれていてもよいし、発光層、並びに正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層の少なくとも1つの層に含まれていてもよい。このうち、発光層および/または正孔輸送層がレベリング剤を含むことが好ましく、発光層がレべリング剤を含むことがより好ましい。
【0148】
以下、有機発光素子の各構成について詳細に説明する。
【0149】
[陽極]
陽極としては、特に制限されないが、金(Au)等の金属、ヨウ化銅(CuI)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等が用いられうる。これらの材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0150】
陽極の膜厚としては、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましい。
【0151】
陽極は、蒸着やスパッタリング等の方法により形成されうる。この際、フォトリソグラフィー法やマスクを用いた方法によりパターン形成を行ってもよい。
【0152】
[正孔注入層]
正孔注入層は、有機発光素子において任意の構成要素であり、陽極から正孔を取り入れる機能を有する。通常、陽極から取り入れた正孔は、正孔輸送層または発光層に輸送される。
【0153】
正孔注入層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0154】
正孔注入層の膜厚としては、特に制限されないが、0.1nm〜5μmであることが好ましい。
【0155】
正孔注入層は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0156】
正孔注入層は、湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0157】
正孔注入層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0158】
また、正孔注入層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0159】
[正孔輸送層]
正孔輸送層は、有機発光素子において任意の構成要素であり、正孔を効率的に輸送する機能を有する。また、正孔輸送層は、正孔の輸送を防止する機能を有しうる。正孔輸送層は、通常、陽極または正孔注入層から正孔を取り入れ、発光層に正孔を輸送する。
【0160】
正孔輸送層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0161】
正孔輸送層の膜厚としては、特に制限されないが、1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることがより好ましく、10〜500nmであることがさらに好ましい。
【0162】
正孔輸送層は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0163】
正孔輸送層は、湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0164】
正孔輸送層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0165】
また、正孔輸送層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0166】
[発光層]
発光層は、発光層に注入された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用して発光を生じさせる機能を有する。
【0167】
発光層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0168】
発光層の膜厚としては、特に制限されないが、2〜100nmであることが好ましく、2〜20nmであることがより好ましい。
【0169】
発光層は湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0170】
発光層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0171】
また、発光層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0172】
[電子輸送層]
電子輸送層は、有機発光素子において任意の構成要素であり、電子を効率的に輸送する機能を有する。また、電子輸送層は、電子の輸送を防止する機能を有しうる。電子輸送層は、通常、陰極または電子注入層から電子を取り入れ、発光層に電子を輸送する。
【0173】
電子輸送層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0174】
電子輸送層の膜厚としては、特に制限されないが、5nm〜5μmであることが好ましく、5〜200nmであることがより好ましい。
【0175】
電子輸送層は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0176】
電子輸送層は、湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0177】
電子輸送層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0178】
また、電子輸送層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0179】
[電子注入層]
電子注入層は、有機発光素子において任意の構成要素であり、陰極から電子を取り入れる機能を有する。通常、陰極から取り入れた電子は、電子輸送層または発光層に輸送される。
【0180】
電子注入層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0181】
電子注入層の膜厚としては、特に制限されないが、0.1nm〜5μmであることが好ましい。
【0182】
電子注入層は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0183】
電子注入層は、湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0184】
電子注入層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0185】
また、電子注入層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0186】
[陰極]
陰極としては、特に制限されないが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0187】
陰極は、通常、蒸着やスパッタリング等の方法により形成されうる。
【0188】
陰極の膜厚としては、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましい。
【0189】
一実施形態において、上述の有機発光素子用インク組成物を用いて形成された層を含む有機発光素子は、形成される層のうねりを好適に防止することができる。これにより、得られる有機発光素子は、輝度ムラを防止できる等の高い性能を有する。
【0190】
また、別の一実施形態において、上述の有機発光素子用インク組成物を用いて発光層を形成する場合には、得られる有機発光素子は、高い発光効率を実現することができる。この傾向は、有機発光素子用インク組成物に含有される発光材料が低分子発光材料であると、より顕著となりうる。
【実施例】
【0191】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」を表す。
【0192】
<レベリング剤の合成>
[合成例1]
ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよびスチレンモノマーを共重合させてなるブロック共重合体Aを合成した。
【0193】
まず、以下の5種の溶液を調製した。
【0194】
(1)スチレンモノマー溶液(4.0M)
アルゴンガスで置換した100mLナスフラスコ中に、注射器を用いてスチレンモノマー145.8gおよびテトラヒドロフラン(THF)189.0mLを投入し、撹拌することでスチレンモノマー溶液(4.0M)350mLを調製した。
【0195】
(2)メタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサンを有するモノマー溶液(0.5M)
アルゴンガスで置換した100mLナスフラスコ中に、注射器を用いてメタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン有するモノマーである「サイラプレーンFM−0711」(α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、平均分子量:1000、JNC株式会社製)25.0gおよびTHF75.0mLを投入し、撹拌することにより、メタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサンを有するモノマー溶液(0.5M)100mLを調製した。
【0196】
(3)n−ブチルリチウム(n−BuLi)溶液(0.1M、重合開始剤溶液)
アルゴンガスで置換した100mLナスフラスコ中に、注射器を用いてヘキサン144.2mLを投入し、氷冷した。冷却後、n−BuLi溶液(2.6M)5.8mLを投入し、撹拌することにより、n−BuLi溶液(0.1M)150mLを調製した。
【0197】
(4)1,1−ジフェニルエチレン(DPE)溶液(0.1M)
アルゴンガスで置換した100mLナスフラスコ中に、注射器を用いてDPE3.2gおよびTHF176.8mLを投入し、撹拌することにより、DPE溶液(0.1M)180mLを調製した。
【0198】
(5)メタノール(MeOH)溶液(1.5M)
アルゴンガスで置換した100mLナスフラスコ中に、注射器を用いてメタノール2.48gおよびTHF46.9mLを投入し、撹拌することにより、メタノール溶液(1.5M)50mLを調製した。
【0199】
次に、リビングアニオン重合により、メタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよびスチレンモノマーを共重合させてブロック共重合体Aを合成した。
【0200】
より詳細には、ブロック共重合体Aは、
図1の反応装置を用い、リビングアニオン重合により合成した。
【0201】
図1の反応装置は、3つのT字型マイクロリアクター1〜3およびチューブリアクター4〜10を有する。この際、T字型マイクロリアクター1および2は25℃に調整された恒温槽に埋没され、T字型マイクロリアクター3は−30℃の恒温槽に埋没されている。
【0202】
まず、BuLi溶液を2.0mL/minの流速でチューブリアクター7から、スチレンモノマー溶液を5.0mL/minの流速でチューブリアクター8から、それぞれT字型マイクロリアクター1に導入した。これにより、スチレンモノマーのリビングアニオン重合が進行し(反応温度:25℃)、スチレンの重合体溶液を得た。
【0203】
次いで、得られたスチレン重合体溶液をチューブリアクター4からT字型マイクロリアクター2に導入し、その後、DPE溶液を2.0ml/minの流速でチューブリアクター9からT字型マイクロリアクター2に導入した。これにより、スチレンの重合体の成長末端をトラップし(反応温度:24℃)、スチレン重合体−DPE溶液を得た。
【0204】
最後に、スチレン重合体−DPE溶液をチューブリアクター5からT字型マイクロリアクター3に導入し、その後、メタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサンを有するモノマー溶液を4.0mL/minの流速でチューブリアクター10からT字型マイクロリアクター3に導入した。これにより、スチレン重合体−DPEとメタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサンを有するモノマーとの連続的なリビングアニオン重合が進行した(反応温度:−30℃)。反応液にメタノールを添加し、反応を停止させることで、ブロック共重合体Aを合成した。
【0205】
ブロック共重合体Aの構造式を以下に示す。
【0206】
【化6】
【0207】
なお、得られたブロック共重合体Aを含む溶液中の残存モノマー量から、スチレンモノマーの反応率(ポリマー転化率)およびポリジメチルシロキサンを有するモノマーの反応率(ポリマー転化率)を求めたところ、それぞれ100%および99.8%であった。
【0208】
また、ケイ素含有率を下記式によって計算したところ、6.3質量%であった。
【0209】
【数3】
【0210】
さらに、得られたブロック共重合体Aの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、それぞれ22,316および24,003であった。よって、分散度(Mw/Mn)は1.08であった。なお、数平均分子量および重量平均分子量は、高速GPC装置(東ソー株式会社製)を用いてポリスチレンを標準物質として測定した。
【0211】
[合成例2]
シロキサンモノマーとして、トリス(トリメチルシロキシ)シリルを有するモノマーである「サイラプレーンTM−0701T」(3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、平均分子量:423、JNC株式会社製)を用いたことを除いては、合成例1と同様の方法で、ブロック共重合体Bを合成した。
【0212】
ブロック共重合体Bの構造式を以下に示す。
【0213】
【化7】
【0214】
なお、得られたブロック共重合体Bを含む溶液中の残存モノマー量から、スチレンモノマーの反応率(ポリマー転化率)およびトリス(トリメチルシロキシ)シリルを有するモノマーの反応率(ポリマー転化率)を求めたところ、それぞれ100%および99.1%であった。
【0215】
また、合成例1と同様の方法で、ケイ素含有率を計算したところ、3.8質量%であった。
【0216】
さらに、合成例1と同様の方法で、ブロック共重合体Bの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、それぞれ15,569および18,754であった。よって、分散度(Mw/Mn)は1.08であった。
【0217】
[合成例3]
ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよびスチレンモノマーを共重合させてなるランダム共重合体Aを合成した。
【0218】
スチレン17.5g、およびポリジメチルシロキサンを有するモノマーである「サイラプレーンFM−0711」(α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、JNC株式会社製)16.8gを、シクロヘキサノン48.5mLに溶解した。次いで、得られた混合液に重合開始剤であるパーブチルZ(日油株式会社製)0.69gを添加し、110℃で48時間共重合させることにより、ランダム共重合体Aを合成した。
【0219】
なお、スチレンモノマーの反応率(ポリマー転化率)およびポリジメチルシロキサンを有するモノマーの反応率(ポリマー転化率)を求めたところ、それぞれ98%および100%であった。
【0220】
また、合成例1と同様の方法で、ケイ素含有率を計算したところ、6.3質量%であった。
【0221】
さらに、合成例1と同様の方法で、ランダム共重合体Aの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、それぞれ8431および24215であった。よって、分散度(Mw/Mn)は2.87であった。
【0222】
[合成例4]
ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよび疎水性モノマーを共重合させてなるランダム共重合体Bを合成した。
【0223】
(1)ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよび疎水性モノマーの混合溶液(0.3M)
アルゴンガスで置換した300mLナスフラスコ中に、注射器を用いて疎水性モノマーである2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAMA)7.1g(7.6mL)、ポリジメチルシロキサンを有するモノマーである「サイラプレーンFM−0711」(α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、JNC株式会社製)45.0g(46.9mL)、およびTHF95.6mLを投入し、撹拌することで、DMAMAおよびFM−0711の濃度がそれぞれ0.3Mの混合溶液150mLを調製した。
【0224】
(2)ジフェニルエチレンリチウム(DPhLi)溶液(0.1M、重合開始剤溶液)
アルゴンガスで置換した100mLナスフラスコ中に、注射器を用いてジフェニルエチレン1.3g(1.2mL)およびTHF66.1mLを投入した後、氷水を浸した容器に浸漬させて冷却した。冷却後、注射器を用いてn−ブチルリチウムの2.6Mヘキサン溶液2.7mLを投入し撹拌することにより、DPhLi溶液(0.1M)70mLを調製した。
【0225】
(3)メタノール(MeOH)溶液(0.33M)
アルゴンガスで置換した100mLナスフラスコ中に、注射器を用いてMeOH0.53g(0.64mL)およびTHF49.4mLを投入し撹拌することにより、MeOHの0.33M溶液(0.33M)50mLを調製した。
【0226】
次に、リビングアニオン重合により、ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよび疎水性モノマーをランダム共重合させてランダム共重合体Bを合成した。
【0227】
より詳細には、はじめに2つのT字型の菅継手からなるマイクロミキサーおよびそのマイクロミキサーの下流に連結されたチューブリアクターを備えたマイクロリアクター装置に、シリンジポンプである「シリンジポンプModel 11 Plus」(ハーバード社製)を2台接続した。次いで、ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよび疎水性モノマーの混合溶液(0.3M)およびジフェニルエチレンリチウム(DPhLi)溶液(0.1M、重合開始剤溶液)をそれぞれ吸い込んだ50mLガストシリンジを、シリンジポンプにセットした。
【0228】
ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよび疎水性モノマーの混合溶液(0.3M)並びにジフェニルエチレンリチウム(DPhLi)溶液(0.1M、重合開始剤溶液)を、それぞれ2.7mL/分および2mL/分の速度で、マイクロミキサー(菅継手径250μm)およびチューブリアクター(内径1mm、長さ100cm)で構成される反応器の上流から送液した。これにより、ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよび疎水性モノマーのランダム重合が進行した。最後に、反応液に所定量のメタノール(MeOH)溶液を添加して重合反応を停止させることで、ポリジメチルシロキサンを有するモノマーおよび疎水性モノマーのランダム共重合体Bを合成した。この際、反応温度は、マイクロリアクター全体を恒温層に埋没させることにより、−28℃に調整した。
【0229】
なお、得られたランダム共重合体Bを含む溶液中の残存モノマー量から、疎水性モノマーの反応率(ポリマー転化率)およびポリジメチルシロキサンを有するモノマーの反応率(ポリマー転化率)を、求めたところ、それぞれ100%および99%であった。
【0230】
また、合成例1と同様の方法で、ケイ素含有率を計算したところ、16.0質量%であった。
【0231】
さらに、合成例1と同様の方法で、得られたランダム共重合体Bの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、それぞれ8,508および10,800であった。よって、分散度(Mw/Mn)は1.27であった。
【0232】
<有機発光素子用インク組成物の製造>
有機発光素子材料として発光材料を用いた有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0233】
[実施例1]
合成例1で合成したブロック共重合体A 0.01gを溶媒であるヘキシルベンゼン99.9gに溶解させた。得られた溶液に、0.004gのトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)(Lumtec社製)と、0.026gの9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾールH−1(DIC株式会社製)と、を添加し、60℃で加熱することで、有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0234】
なお、ヘキシルベンゼンおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係る3次元座標距離(Ra)(RSP−Ra)をハンセンの溶解度パラメータ計算ソフトHSPiP ver.3.1.19を用いて測定・算出したところ、10.3であった。
【0235】
[実施例2]
使用する溶媒をペンチルベンゼンに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0236】
なお、実施例1と同様の方法により、ペンチルベンゼンおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係るRSP−Raを測定・算出したところ、10.2であった。
【0237】
[実施例3]
使用する溶媒をドデシルベンゼンに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0238】
なお、実施例1と同様の方法により、ドデシルベンゼンおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係るRSP−Raを測定・算出したところ、11.2であった。
【0239】
[実施例4]
使用する溶媒をシクロヘキシルベンゼンに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0240】
なお、実施例1と同様の方法により、シクロヘキシルベンゼンおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係るRSP−Raを測定・算出したところ、8.4であった。
【0241】
[実施例5]
使用する溶媒をクメンに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0242】
なお、実施例1と同様の方法により、クメンおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係るRSP−Raを測定・算出したところ、8.6であった。
【0243】
[実施例6]
使用する溶媒をテトラリンに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0244】
なお、実施例1と同様の方法により、テトラリンおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係るRSP−Raを測定・算出したところ、6.3であった。
【0245】
[実施例7]
使用する溶媒を1−メチルナフタレンに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0246】
なお、実施例1と同様の方法により、1−メチルナフタレンおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係るRSP−Raを測定・算出したところ、7.9であった。
【0247】
[実施例8]
使用する溶媒をブチルフェニルエーテルに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0248】
なお、実施例1と同様の方法により、ブチルフェニルエーテルおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係るRSP−Raを測定・算出したところ、9.6であった。
【0249】
[実施例9]
使用する溶媒を酢酸フェニルに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0250】
なお、実施例1と同様の方法により、酢酸フェニルおよびトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)
3)に係るRSP−Raを測定・算出したところ、7.5であった。
【0251】
[実施例10]
ブロック共重合体Aの代わりに、合成例2で合成したブロック共重合体Bを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0252】
[実施例11]
使用する溶媒をペンチルベンゼンに変更したことを除いては、実施例10と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0253】
[実施例12]
使用する溶媒をドデシルベンゼンに変更したことを除いては、実施例10と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0254】
[実施例13]
使用する溶媒をシクロヘキシルベンゼンに変更したことを除いては、実施例10と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0255】
[実施例14]
使用する溶媒をクメンに変更したことを除いては、実施例10と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0256】
[実施例15]
使用する溶媒をテトラリンに変更したことを除いては、実施例10と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0257】
[実施例16]
使用する溶媒を1−メチルナフタレンに変更したことを除いては、実施例10と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0258】
[実施例17]
使用する溶媒をブチルフェニルエーテルに変更したことを除いては、実施例10と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0259】
[実施例18]
使用する溶媒を酢酸フェニルに変更したことを除いては、実施例10と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0260】
[比較例1]
ブロック共重合体Aの代わりに、ジメチルシロキサンKF−96(信越化学工業株式会社製)を用い、使用する溶媒をテトラリンに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0261】
[比較例2]
ブロック共重合体Aの代わりに、ランダム共重合体Aを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0262】
[比較例3]
使用する溶媒をペンチルベンゼンに変更したことを除いては、比較例2と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0263】
[比較例4]
使用する溶媒をドデシルベンゼンに変更したことを除いては、比較例2と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0264】
[比較例5]
ブロック共重合体Aの代わりに、ランダム共重合体Bを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子用インク組成物を製造した。
【0265】
実施例1〜18および比較例1〜5で製造した有機発光素子用インク組成物を下記表1に示す。
【0266】
【表1】
【0267】
<評価>
実施例1〜18および比較例1〜5で製造した有機発光素子用インク組成物について各種評価を行った。
【0268】
[膜質評価(うねりの発生の評価尺度)]
インジウムスズ酸化物(ITO)基板上に、0.1μLの有機発光素子用インク組成物を滴下し、25℃、1Torrで減圧乾燥した。得られた有機薄膜の凸部の膜厚および凹部の膜厚を、光干渉表面形状計測装置(株式会社菱化システム製)を用いて測定し、以下の基準に従って評価した。なお、前記凸部とは有機薄膜表面のうち水平面を基準として最も高いものを意味し、前記凹部とは有機薄膜表面のうち水平面を基準として最も低いものを意味する。
【0269】
◎:凹部の膜厚に対する凸部の膜厚の値(凸部膜厚/凹部膜厚)が2.0以下である
○:凹部の膜厚に対する凸部の膜厚の値(凸部膜厚/凹部膜厚)が2.0超2.5以下である
△:凹部の膜厚に対する凸部の膜厚の値(凸部膜厚/凹部膜厚)が2.5超3.0以下である
×:凹部の膜厚に対する凸部の膜厚の値(凸部膜厚/凹部膜厚)が3.0超である
【0270】
得られた結果を下記表2に示す。
【0271】
[輝度ムラ]
有機発光素子を作製し、得られた有機発光素子についての輝度ムラを測定した。
【0272】
有機発光素子は、以下のように作製した。
【0273】
すなわち、洗浄したITO基板にUV/O
3を照射し、スピンコートによりポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT−PSS)を45nm成膜し、大気中で180℃、15分間加熱し、正孔注入層を形成した。次いで、下記式で表されるHT−2の0.3重量%キシレン溶液を、正孔注入層上にスピンコートにより10nm成膜し、窒素雰囲気下にて200℃で30分間乾燥させることで、正孔輸送層を形成した。次に、有機発光素子用インク組成物を、正孔輸送層上にスピンコートにより30nm成膜し、窒素雰囲気下にて110℃で15分間乾燥させることで、発光層を形成した。そして、5×10
−3Paの真空条件下で、電子輸送層として下記式で表されるET−1を45nm、電子注入層としてフッ化リチウムを0.5nm、陰極としてアルミニウムを100nm順次成膜した。最後に、グローブボックスに基板を搬送し、ガラス基板にて封止することで有機発光素子を作製した。
【0274】
【化8】
【0275】
このように作製した有機発光素子に対し、外部電源に接続して10mAの電流を流し、有機発光素子からの発光をBM−9(株式会社トプコン製)にて測光した。この際、有機発光素子の輝度の最大値、最小値、および面内平均輝度をそれぞれ測定し、下記式により輝度のバラツキ率を測定した。
【0276】
【数4】
【0277】
輝度ムラは以下の基準に従って評価した。
【0278】
◎:輝度のバラツキ率が30%以下である
○:輝度のバラツキ率が30%超50%以下である
△:輝度のバラツキ率が50%超70%以下である
×:輝度のバラツキ率が70%超である
【0279】
得られた結果を下記表2に示す。
【0280】
[発光効率]
輝度ムラの評価の際に作製した有機発光素子を用いて、発光効率を評価した。
【0281】
より詳細には、作製した有機発光素子に対し、外部電源に接続して10mAの電流を流し、有機発光素子からの発光をBM−9(株式会社トプコン製)にて測光した。この際、電流値から10mA/cm
2のときの発光効率を算出し、以下の基準に従って評価した。
【0282】
◎:発光効率が30cd/A以上である
○:発光効率が25cd/A以上30cd/A未満
△:発光効率が20cd/A以上25cd/A未満
×:発光効率が20cd/A未満
【0283】
得られた結果を下記表2に示す。
【0284】
【表2】
【0285】
上記表2の結果からも明らかなように、比較例1〜5と対比して、実施例1〜18の有機発光素子用インク組成物を用いて塗膜を形成した場合には膜質が良好であり、うねりを防止できたことが分かる。そして、輝度ムラの評価から、うねりを防止することによって、高い性能を有する有機発光素子が得られることが分かる。
【0286】
また、比較例1〜5と対比して、実施例1〜18の有機発光素子用インク組成物を用いて得られた有機発光素子は発光効率にも優れることが分かる。