(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向する少なくとも二枚のガラス板がスペーサを介して隔置され、かつ前記スペーサに接着されてなる複層ガラスであって、少なくとも一枚のガラス板が耐熱防火性ガラス板によって構成された防火複層ガラスと、前記防火複層ガラスの周縁部がガラス装着溝に装着される枠体と、を備えた防火複層ガラスユニットにおいて、
前記枠体の前記ガラス装着溝には気体の流路が備えられ、
前記ガラス装着溝には、前記流路の一部を閉塞し、かつ前記防火複層ガラスの各ガラス板に当接される非熱膨張性の第1のスポンジ成形体が備えられ、
前記第1のスポンジ成形体は、当接部と突起部とを備え、前記突起部が、前記枠体のうち少なくとも縦材に沿って備えられた嵌合部に嵌合配置され、
前記枠体の前記ガラス装着溝には、前記流路を複数の区画に分割する非熱膨張性の第2のスポンジ成形体が備えられ、
前記第2のスポンジ成形体は、前記防火複層ガラスの前記各ガラス板に当接していることを特徴とする防火複層ガラスユニット。
【背景技術】
【0002】
複層ガラスのうち、防火複層ガラスと称されるものは、防火複層ガラスを構成する複数枚のガラス板の少なくとも一枚に網入りガラス、耐熱強化ガラス、低膨張強化ガラス、透明結晶化ガラス等の耐熱防火性ガラス板が使用されたものをいう。
【0003】
また、防火複層ガラスも一般的な複層ガラスと同様に、対向する少なくとも二枚のガラス板を、スペーサを介して隔置し、これらの二枚のガラス板と対向するスペーサの各側面を一次シール材によって二枚のガラス板にそれぞれ接着し、一次シール材の外側を二次シール材によって封止することにより構成される。防火複層ガラスは、ガスケット等のシール部材を介して枠体に装着され、建物の壁の開口部に備えられる。
【0004】
ところで、火災時には、防火複層ガラスを構成するガラス板のうち、一方のガラス板(例えば、非耐熱防火性ガラス板)が破損したり枠体から脱落したりする場合がある。あるいは、ガラス板の破損や脱落に至らなくても、枠体やガラスには火災時の高熱で熱変形が生じてガスケット部材が外れたり、ガスケット等のシール部材自体が高熱で変形や溶融等を起こしたりする場合がある。
【0005】
このため、枠体に残存しているガラス板と枠体のガラス装着溝との間に大きな隙間が発生し、この隙間から火炎が非火災発生側に流出したり、隙間を流路として可燃性ガスあるいは空気(酸素)が火災発生側に流入したりする。また、可燃性ガスは枠体のガラス装着溝を経路として上昇し、高温燃焼場となり得る場所(防火複層ガラスの上部)へ流動したりする。可燃性ガスは、一次シール材、二次シール材、及び有機系のガスケット、シーリング材等から発生する。
【0006】
特許文献1には、前記隙間の発生を防止する防火複層ガラスユニットが開示されている。
【0007】
すなわち、特許文献1には、枠体(框)のガラス装着溝に、加熱により難燃の膨張体を生成して、2枚のガラス板間の分離を防止するとともに、ガラス装着溝に形成される煙等の流路を閉塞する熱膨張材を備えた防火複層ガラスユニットが開示されている。
【0008】
また、特許文献1によれば、熱膨張材が防火複層ガラスの外周縁の少なくとも一箇所に配置されること、及び防火複層ガラスの外周縁の略全範囲に配置されることが開示されている。
【0009】
更に、特許文献1には、グラファイト系膨張材、及び/又はポリリン酸アンモニウム系膨張材を含んだ材料が熱膨張材として使用されることが開示されている。
【0010】
更にまた、特許文献1には、防火複層ガラスに対する熱膨張材の配置形態として、熱膨張材が粘性を有する場合には、塗布、充填によること、固形の場合には、貼着、接着によることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の防火複層ガラスユニットは、以下の問題があった。
【0013】
すなわち、特許文献1では、流路閉塞部材として熱膨張材を使用しているため、防火複層ガラスに対する熱膨張材の配置形態は、前述の如く、塗布、充填、貼着、接着等の手段が挙げられるが、その装着の際の作業性の点から固形で貼着により配置される場合が実質上ほとんどを占める。
【0014】
また、当該熱膨張材は、機械的強度に乏しく、僅かな外力でその形状が崩れるものである。
【0015】
上記配置形態や特性を有する熱膨張材では、地震時に生じる防火複層ガラスと枠体との動きの違いに熱膨張材が良好に追従できないため、熱膨張材の貼着が剥がれたり、熱膨張材の形状が崩れたりする。これにより、特許文献1の防火複層ガラスユニットでは、熱膨張材の流路閉塞機能が低下するという問題があった。また、この問題は、防火複層ガラスと枠体との熱膨張差に起因した火炎時に生じる防火複層ガラスと枠体との動きの違いによっても発生する。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、防火複層ガラスと枠体との動きの違いに対して追従性のよい流路閉塞部材を備えた防火複層ガラスユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記目的を達成するために、対向する少なくとも二枚のガラス板がスペーサを介して隔置され、かつ前記スペーサに接着されてなる複層ガラスであって、少なくとも一枚のガラス板が耐熱防火性ガラス板によって構成された防火複層ガラスと、前記防火複層ガラスの周縁部が装着されるガラス装着溝を有する枠体と、を備えた防火複層ガラスユニットにおいて、前記枠体の前記ガラス装着溝には気体の流路が備えられ、前記ガラス装着溝には、前記流路の一部を閉塞し、かつ前記防火複層ガラスの各ガラス板に当接される非熱膨張性の第1のスポンジ成形体が備えられ、前記第1のスポンジ成形体は、前記枠体のうち少なくとも縦材に沿って備えられた嵌合部に嵌合配置されることを特徴とする防火複層ガラスユニットを提供する。
【0018】
本発明の一態様によれば、枠体のガラス装着溝に配置された第1のスポンジ成形体(遮炎ガスバリア材)が、割れないで残存するガラス板の小口面等の周縁部に当接している。これにより、熱源となる火炎や、可燃性ガス又は空気(酸素)が内外で流出入する流路が、第1のスポンジ成形体によって閉塞される。
【0019】
第1のスポンジ成形体は、枠体の縦材に沿って備えられた嵌合部に長手方向にわたって嵌合され、また、自身がスポンジ状で弾力性に優れるため、地震時又は火炎時等の動きにも、嵌合部から外れることなく嵌合部に保持された状態で、その動きに追従する。これによって、第1のスポンジ成形体による流路閉塞機能が恒久的に維持される。
【0020】
なお、第1のスポンジ成形体によってガラス装着溝内の全ての流路を閉塞した場合には、水密性を確保するための等圧空間を防火複層ガラスユニットに形成することが困難になるので、流路の一部を第1のスポンジ成形体で閉塞することが好ましい。また、第1のスポンジ成形体は、枠体の横材にも配置してもよい。
【0021】
本発明の一態様は、前記枠体の前記ガラス装着溝には、前記流路を複数の区画に分割する非熱膨張性の第2のスポンジ成形体が備えられることが好ましい。
【0022】
本発明の一態様によれば、非熱膨張性の第2のスポンジ成形体(区画ブロック)を枠体のガラス装着溝に配置して流路を上下方向で複数の区画に分割する。火炎時に発生した可燃ガスが枠体のガラス装着溝を流路として、上昇気流に乗り排気されるが、縦材のガラス装着溝に、流路を複数に区画する第2のスポンジ成形体を配置することで、可燃ガスの上昇を阻止し、上方のガラス装着溝に多量の可燃性ガスが滞留するのを防止できる。第2のスポンジ成形体を併用することによって、第1のスポンジ成形体の配置箇所を削減できる。これにより、等圧水密機構に必要な空間(等圧空間)を、枠体のガラス装着溝に確保でき、コストも削減できる。
【0023】
本発明の一態様は、前記第1のスポンジ成形体及び前記第2のスポンジ成形体は、シリコーンゴムスポンジ成形体であることが好ましい。
【0024】
本発明の一態様によれば、第1のスポンジ成形体及び第2のスポンジ成形体として、建築用のガスケットとして実績のあるシリコーンゴムのスポンジ成形体を適用する。シリコーンゴムのスポンジ成形体は、弾力性に優れ、耐熱性もよい。
【0025】
本発明の一態様は、前記第1のスポンジ成形体及び前記第2のスポンジ成形体として、UL94試験規格のV−0等級に相当する以上の難燃性を有することが好ましい。
【0026】
本発明の一態様によれば、第1のスポンジ成形体及び第2のスポンジ成形体として、材料の難燃性を示す指標として広く知られているUL94試験規格のV−0等級に相当する以上の難燃性を有する材料を適用する。V−0等級に相当する以上の難燃性を示す材料は、耐熱性、難燃性を有しているので、火災時においてそれ自体が容易に着火する可能性が少ない。
【0027】
本発明は、前記目的を達成するために、対向する少なくとも二枚のガラス板がスペーサを介して隔置され、かつ前記スペーサに接着されてなる複層ガラスであって、少なくとも一枚のガラス板が耐熱防火性ガラス板によって構成された防火複層ガラスと、前記防火複層ガラスの周縁部がガラス装着溝に装着される枠体と、を備えた防火複層ガラスユニットにおいて、前記枠体の前記ガラス装着溝には気体の流路が備えられ、前記枠体の前記ガラス装着溝には、前記流路を複数の区画に分割する非熱膨張性の第1のスポンジ成形体が備えられることを特徴とする防火複層ガラスユニットを提供する。
【0028】
本発明の一態様によれば、非熱膨張性の第1のスポンジ成形体(区画ブロック)を枠体のガラス装着溝に配置して流路を上下方向で複数の区画に分割する。火炎時に発生した可燃ガスが枠体のガラス装着溝を流路として、上昇気流に乗り排気されるが、縦材のガラス装着溝に、流路を複数に区画する第1のスポンジ成形体を配置することで、可燃ガスの上昇を阻止し、上方のガラス装着溝に多量の可燃性ガスが滞留するのを防止できる。
【0029】
本発明の一態様は、前記ガラス装着溝には、前記流路の一部を閉塞し、かつ前記防火複層ガラスの各ガラス板に当接される非熱膨張性の第2のスポンジ成形体が備えられ、前記第2のスポンジ成形体は、前記枠体のうち少なくとも縦材に沿って備えられた嵌合部に嵌合配置されることが好ましい。
【0030】
本発明の一態様によれば、枠体のガラス装着溝に配置された第2のスポンジ成形体(遮炎ガスバリア材)が、割れないで残存するガラス板の小口面等に当接している。これにより、熱源となる火炎や、可燃性ガス又は空気(酸素)が内外で流出入する流路が、第2のスポンジ成形体によって閉塞される。
【0031】
第2のスポンジ成形体は、枠体の縦材に沿って備えられた嵌合部に長手方向にわたって嵌合され、また、自身がスポンジ状で弾力性に優れるため、地震時又は火炎時等の動きにも、嵌合部から外れることなく嵌合部に保持された状態で、その動きに追従する。これによって、流路閉塞機能が恒久的に維持できる。
【0032】
本発明の一態様は、前記第1のスポンジ成形体及び前記第2のスポンジ成形体は、シリコーンゴムスポンジ成形体であることが好ましい。
【0033】
本発明の一態様によれば、第1のスポンジ成形体及び第2のスポンジ成形体として、建築用のガスケットとして実績のあるシリコーンゴムのスポンジ成形体を適用する。シリコーンゴムのスポンジ成形体は、弾力性に優れ、耐熱性もよい。
【0034】
本発明の一態様は、前記第1のスポンジ成形体及び前記第2のスポンジ成形体として、UL94試験規格のV−0等級に相当する以上の難燃性を有することが好ましい。
【0035】
本発明の一態様によれば、第1のスポンジ成形体及び第2のスポンジ成形体として、材料の難燃性を示す指標として広く知られているUL94試験規格のV−0等級に相当する以上の難燃性を有する材料を適用する。V−0等級に相当する以上の難燃性を示す材料は、耐熱性、難燃性を有しているので、火災時においてそれ自体が容易に着火する可能性が少ない。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、防火複層ガラスと枠体との動きの違いに対して追従性のよい流路閉塞部材を備えた防火複層ガラスユニットを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に従って本発明に係る防火複層ガラスユニットの好ましい実施の形態を詳説する。
【0039】
〔第1の実施形態の防火複層ガラスユニット10〕
図1は、第1の実施形態の防火複層ガラスユニット10の正面図である。
図2は、
図1に示した防火複層ガラスユニット10のA−A線に沿う横断面図である。
【0040】
防火複層ガラスユニット10は、矩形状の防火複層ガラス12と、防火複層ガラス12の4辺部の周縁部がガスケット14、16を介して取り付けられる枠体18とからなる。すなわち、枠体18には、防火複層ガラス12の周縁部が装着されるガラス装着溝20が、枠体18を構成する2本の縦材22、及び2本の横材24の長手方向に沿って備えられる。
【0041】
〈防火複層ガラス12〉
図2の如く、防火複層ガラス12は、対向する2枚のガラス板26、28が枠状のスペーサ30を介して隔置され、かつ2枚のガラス板26、28と対向するスペーサ30の各側面が一次シール材32によって2枚のガラス板26、28にそれぞれ接着される。これにより、2枚のガラス板26、28の間に中空層34が形成される。また、一次シール材32の外側が二次シール材36によって封止される。
【0042】
スペーサ30としては、アルミニウムを主材質とする金属製のスペーサが用いられる場合が多いが、ステンレス材が使用される場合もある。スペーサ30はその内部に中空部38を有し、中空部38には粒状ゼオライト等の乾燥剤40が充填される。スペーサ30には、中空部38を中空層34に連通させる貫通孔42が開口されており、この貫通孔42を介して中空層34の空気が乾燥剤40によって乾燥される。
【0043】
防火複層ガラス12は、室内側に配置されるガラス板26が耐熱防火性ガラス板である網入りガラス板であり、室外側に配置されるガラス板28が一般的なソーダライムガラスである。また、ガラス板26として耐熱強化ガラス、低膨張強化ガラス、透明結晶化ガラス等の別の耐熱防火性ガラス板を使用してもよい。また、ガラス板26として、化学強化ガラスを適用することもできる。更に、防火複層ガラス12では、ガラス板26を室内側に配置し、ガラス板28を室外側に配置したが、ガラス板26を室外側に配置し、ガラス板28を室内側に配置してもよい。
【0044】
防火複層ガラス12の一次シール材32は、ガラス板との接着性が良好で透湿抵抗の高いブチル系シーリング材であり、二次シール材36は、ポリサルファイド、シリコーン、ウレタンなどの硬化性エラストマをベースとし、ガラスとの接着性を発現するために適当な変性を加えられたものなどが好適である。
【0045】
防火複層ガラス12は、2枚のガラス板26、28を備えたものであるが、3枚以上のガラス板からなる防火複層ガラスであってもよい。
【0046】
〈枠体18〉
枠体18は、アルミニウム材等からなる金属製のサッシ枠であり、2本の縦材22及び2本の横材24を枠状に組み付けることにより構成される。この枠体18を介して防火複層ガラス12が、建物の壁部の開口部に取り付けられる。枠体18は、アルミニウム材等の押し出し成形によって製造される。
【0047】
〔防火複層ガラスユニット10の特徴〕
図3は、
図2に示した枠体18から遮炎ガスバリア材(第1のスポンジ成形体、第2のスポンジ成形体)44、46を取り外した枠体18と防火複層ガラス12の横断面図である。
【0048】
図3の如く、枠体18のガラス装着溝20には気体の流路48が備えられる。この流路48は、枠体18とガスケット14、16と防火複層ガラス12の周縁部とによって囲まれた空間であり、防火複層ガラス12の周縁部に沿って備えられる。
【0049】
流路48には、
図2に示すように、流路48の一部を閉塞し、かつ防火複層ガラス12のガラス板26、28に当接される非熱膨張性の遮炎ガスバリア材44、46が備えられる。遮炎ガスバリア材44、46は、縦材22の長手方向に沿って配置される長尺状の部材である。遮炎ガスバリア材44、46としては、シリコーンゴムのスポンジ成形体を例示できる。シリコーンゴムのスポンジ成形体は、建築用のガスケットとして実績があり、弾力性に優れ、耐熱性も備えている。
【0050】
遮炎ガスバリア材44には、対向する2つの面において当接部44Aと突起部44Bとが備えられている。突起部44Bは、縦材22の長手方向に沿って備えられた断面U字形状の嵌合部50に弾性をもって嵌合される。これによって、遮炎ガスバリア材44が縦材22に配置されて、当接部44Aがガラス板26の小口面26Aに弾性をもって当接される。
【0051】
遮炎ガスバリア材46も同様に、当接部46Aと突起部46Bとが備えられている。突起部46Bは、縦材22の長手方向に沿って備えられた断面U字形状の嵌合部52に弾性をもって嵌合される。これによって、遮炎ガスバリア材46が縦材22に配置されて、当接部46Aがガラス板28の小口面28A及び縁部28Bに弾性をもって当接される。
【0052】
これにより、遮炎ガスバリア材44、46によって流路48の一部が閉塞され、流路48のうち、枠体18とガスケット14と遮炎ガスバリア材44とによって囲まれた流路48A、枠体18と防火複層ガラス12と遮炎ガスバリア材44、46とによって囲まれた流路48Bが残存する。これらの流路48A、48Bは、等圧水密機構に必要な空間(等圧空間)として機能する。
【0053】
なお、ガラス板26、28に対する当接部44A、46Aの当接位置は、前述した小口面26A、小口面28A、縁部28Bに限定されるのもではなく、ガラス板26、28に当接される位置であればよい。
【0054】
したがって、例えば、遮炎ガスバリア材44とガスケット14、あるいは遮炎ガスバリア材46とガスケット16を一体化して、ガスケット14、16に遮炎ガスバリア材44、46が有する機能を付加させてもよい。
【0055】
〔防火複層ガラスユニット10の作用〕
火炎時において、例えば、ガラス板28が破損した場合、割れないで残存しているガラス板26の小口面26Aに遮炎ガスバリア材44が当接している。
【0056】
これにより、熱源となる火炎や、可燃性ガス又は空気(酸素)が防火複層ガラスユニット10の内外で流出入する流路48を、遮炎ガスバリア材44によって閉塞できる。また、ガラス板28が破損した場合であっても、ガラス板28の周縁部のみが遮炎ガスバリア材46に保持されて枠体18に残置される場合があり、この場合にも防火複層ガラスユニット10の内外で流出入する流路48が遮炎ガスバリア材44、46によって閉塞される。
【0057】
遮炎ガスバリア材44、46は、枠体18の縦材22に沿って備えられた嵌合部50、52に長手方向にわたって嵌合され、また、自身がスポンジ状で弾力性に優れるため、地震時又は火炎時等の動きにも、嵌合部50、52から外れることなく嵌合部50、52に保持された状態で、防火複層ガラス12及び枠体18の動きに追従(伸縮)する。これによって、遮炎ガスバリア材44、46による流路閉塞機能が恒久的に維持される。
【0058】
なお、遮炎ガスバリア材44、46によって全ての流路48を閉塞した場合には、水密性を確保するための等圧空間(流路48A、48B)を防火複層ガラスユニット10に備えさせることが困難になるので、流路48の一部を遮炎ガスバリア材44、46で閉塞することが好ましい。また、遮炎ガスバリア材44、46は、枠体18の横材24に配置してもよい。
【0059】
〔第2の実施形態の防火複層ガラスユニット60の構成〕
図4は、第2の実施形態の防火複層ガラスユニット60の正面図であり、2枚の防火複層ガラスユニット60を水平方向に並設した正面図である。
図5は、
図4に示した防火複層ガラスユニット60のB−B線に沿う横断面図である。また、
図6は、
図4に示した防火複層ガラスユニット60のC−C線に沿う横断面図である。
【0060】
第2の実施形態の防火複層ガラスユニット60を説明するに当たり、
図1から
図3に示した防火複層ガラスユニット10と同一又は類似の部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0061】
防火複層ガラスユニット10に対する防火複層ガラスユニット60の構成の相違点は、防火複層ガラスユニット60の流路48に、流路48を上下方向で複数の区画に分割する非熱膨張性の区画ブロック(第2のスポンジ成形体、第1のスポンジ成形体)62が備えられた点である。
【0062】
図4の如く区画ブロック62は、縦材22の長手方向において、所定の間隔をもって配置される。区画ブロック62は
図5の如く、区画ブロック62が配置される流路48の全域を閉塞する大きさで構成される。これにより、少なくとも縦材22の流路48が、流路48の長手方向において複数(
図4では2つ)の区画に分割される。
【0063】
区画ブロック62としては、シリコーンゴムのスポンジ成形体を例示できる。シリコーンゴムのスポンジ成形体は、建築用のガスケットとして実績があり、弾力性に優れ、耐熱性も備えている。
【0064】
なお、
図6に示すように、防火複層ガラスユニット60に配置される遮炎ガスバリア材44、46は、区画ブロック62によって分割された縦材22の2つの流路48に配置される。遮炎ガスバリア材44、46の少なくとも一端部が、区画ブロック62に当接されている。
【0065】
なお、第2の実施形態の防火複層ガラスユニット60で使用される遮炎ガスバリア材44、46は、第1の実施形態の防火複層ガラスユニット10で使用される遮炎ガスバリア材44、46よりも短尺部材であるが、同一の機能を備えていることから同一の符号を付している。また、縦材22及び横材24には、等圧空間である流路48に連通される複数の開口部64が所定の位置に備えられている。
【0066】
〔防火複層ガラスユニット60の作用〕
火炎時に発生した可燃ガスは、
図4の矢印aの如く、枠体18の縦材22を流路48に沿って、上昇気流に乗り開口部64から外部に排気される。この際に、縦材22のガラス装着溝20(
図2参照)に、流路48を上下方向で複数に区画する区画ブロック62が配置されているので、流路48に対応した開口部64から可燃ガスが排気され、可燃ガスが上方のガラス装着溝20で多量に滞留するのを防止できる。
【0067】
このように区画ブロック62を遮炎ガスバリア材44、46と併用することによって、遮炎ガスバリア材44、46の配置箇所を削減できる。
【0068】
これにより、第2の実施形態の防火複層ガラスユニット60によれば、等圧水密機構に必要な等圧空間である、区画された流路48を、枠体18のガラス装着溝20に確保でき、コストも削減できる。
【0069】
〔第3の実施形態の防火複層ガラスユニット70の構成〕
図7は、第3の実施形態の防火複層ガラスユニット70の正面図である。なお、
図7に示した防火複層ガラスユニット70のD−D線に沿う横断面図は、
図5の横断面図と同一であるので、図示は省略する。
【0070】
第3の実施形態の防火複層ガラスユニット70を説明するに当たり、
図4、
図5に示した防火複層ガラスユニット60と同一又は類似の部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0071】
防火複層ガラスユニット60に対する防火複層ガラスユニット70の構成の相違点は、防火複層ガラスユニット60の流路48に、区画ブロック62のみが備えられた点である。
【0072】
区画ブロック62のみ備えた防火複層ガラスユニット70であっても、流路48に対応した開口部64から可燃ガスが排気されるので、可燃ガスが上方のガラス装着溝内に多量に滞留するのを防止でき、防火複層ガラスユニットの内外を貫通する炎の発生防止に寄与する。