(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本焼成工程を行う前に、前記無機材料にバインダーを添加してスラリーとなして成形体を成形する成形工程と、前記バインダーの焼失する温度で前記成形体を仮焼成する仮焼成工程とを行う請求項1〜8のいずれか1項に記載のガーネット型酸化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るガーネット型酸化物の製造方法は、炭酸塩(Li
2CO
3など)を含む無機材料を本焼成温度で加熱して焼成する本焼成工程を有する。炭酸塩を含む無機材料は、ガーネット型酸化物の原料である。本焼成工程では、無機材料を二酸化炭素ガス雰囲気で焼成している。炭酸塩の一例として、炭酸リチウムは、以下の式(1)、(2)により分解する。式(1)は、炭酸塩が分解される炭酸塩分解反応を例示しており、式(2)は金属酸化物が分解される酸化物分解反応を例示している。
【0015】
Li
2CO
3 → Li
2O +CO
2・・・(1)
Li
2O → 2Li +1/2O
2 ・・・(2)
雰囲気に二酸化炭素ガス(CO
2)が存在すると、式(1)の右方向の反応の進行が抑制され、炭酸リチウムの分解が抑制される。炭酸リチウムから二酸化炭素ガスの生成が抑えられ、無機材料に二酸化炭素ガスの抜け出る気孔の生成が少なくなり、無機材料から緻密なガーネット型酸化物の焼結体を形成させることができる。
【0016】
本発明の本焼成工程では、二酸化炭素ガス雰囲気下で、炭酸塩を含む無機材料を本焼成温度で加熱して焼成する。本焼成工程の二酸化炭素ガス雰囲気は、二酸化炭素ガスを有する雰囲気である。前記二酸化炭素ガス雰囲気のガス全体を100体積%としたときに、前記二酸化炭素ガス雰囲気中での二酸化炭素ガスの濃度は10体積%以上100%体積以下であることがよく、30体積%以上80体積%以下であることが好ましく、50体積%以上70体積%以下であることが特に好ましい。二酸化炭素ガス濃度が薄すぎる場合には、式(1)で例示される炭酸塩分解反応の進行を抑えにくくなるおそれがある。
【0017】
本焼成工程の二酸化炭素ガス雰囲気は、酸素の少ない雰囲気であることがよい。酸素が雰囲気に存すると、式(2)で例示される酸化物分解反応が進行しにくくなり、Liなどの金属が揮発しにくくなるからである。二酸化炭素ガス雰囲気中の酸素ガスの濃度は0体積%以上10体積%以下であることがよく、更に、8体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることが望ましい。
【0018】
本焼成工程での二酸化炭素ガス雰囲気は、二酸化炭素ガスだけを含んでいてもよく、または、二酸化炭素ガス以外に、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを含んでいてもよい。
【0019】
本焼成工程での本焼成温度は、固相反応によりガーネット型結晶構造を形成させ得る程度の温度であるとよい。炭酸塩の融点よりも高い本焼成温度で無機材料を焼成するとよい。炭酸塩の融点よりも高い本焼成温度で無機材料を焼成すると、炭酸塩が溶融して無機材料の表面で液相になり、無機材料の粒子同士が良好に接合して緻密な焼結体を得やすくなるからである。
【0020】
一方で、本焼成温度を炭酸塩の融点よりも高い温度とすることにより、炭酸塩のエネルギー状態が高くなり、式(1)、(2)で例示される炭酸塩分解反応及び酸化物分解反応が進行し、CO
2、O
2が生成し気孔が形成されやすくなる。しかし、この高温であっても、本焼成温度下での本焼成工程を二酸化炭素ガス雰囲気で行うことにより、炭酸塩分解反応の進行を効果的に抑制でき、CO
2生成の抑制及び気孔生成を抑制できる。また、炭酸塩の粒子表面が液相により被覆されて粒子内部でのCO
2分圧が増え、式(1)で例示される炭酸塩分解反応を抑え、CO
2発生を抑制する効果もある。また、炭酸塩分解反応に続く酸化物分解反応を抑えられ、O
2発生を抑制する効果もある。
【0021】
炭酸塩として炭酸リチウムを用いることがよい。炭酸リチウムの融点は、723℃である。炭酸塩として炭酸リチウムを用いる場合には、本焼成温度は、723℃よりも高い温度であるとよく、1100〜1300℃であることが更に望ましい。本焼成温度は、例えば724℃以上1400℃以下であることがよく、730℃以上1380℃以下であることが好ましく、750℃以上1350℃以下であることが望ましい。本焼成温度が炭酸リチウムの融点よりも低いと、炭酸リチウムが溶融せず、ガーネット型酸化物が生成しにくくなるおそれがある。本焼成温度が過剰に高いと、Liが揮発されやすくなり化合物の組成がずれるおそれがある。
【0022】
本発明のガーネット型酸化物の製造方法により製造されたガーネット型酸化物を二次電池の固体電解質に用いる場合には、ガーネット型酸化物の原料としての炭酸塩は、電極に吸蔵及び放出される金属イオンの金属元素を含むことがよい。例えば、ガーネット型酸化物をリチウムイオン二次電池又はリチウム二次電池の固体電解質に用いる場合には、炭酸塩は、炭酸リチウムを含むことがよい。ガーネット型酸化物をナトリウムイオン二次電池又はナトリウム二次電池の固体電解質に用いる場合には、炭酸塩は炭酸ナトリウムを含むことがよく、ガーネット型酸化物をカルシウムイオン二次電池の固体電解質に用いる場合には、炭酸塩は炭酸カルシウムを含むことがよく、ガーネット型酸化物をマグネシウムイオン二次電池の固体電解質に用いる場合には、炭酸塩は炭酸マグネシウムを含むことがよく、い。
【0023】
本発明の本焼成工程では、二酸化炭素ガスの生成を抑制するために、比較的短い時間で無機材料を焼成するとよい。比較的短い時間で無機材料を焼成するには、高温で焼成するとよい。本焼成温度を高くするほど、本焼成温度での焼成時間を短くするとよい。
【0024】
本発明の本焼成工程において、無機材料を本焼成温度で焼成する焼成時間は、60分間以下がよく、更には、30分間以下が好ましく、5分間以下が望ましい。また、ガーネット型酸化物を確実に形成させるために、無機材料を本焼成温度で焼成する焼成時間は、1分間以上であることがよく、更に、3分間以上であることが好ましく、4分間以上であることが望ましい。
【0025】
前記本焼成温度と、前記本焼成温度での焼成時間との関係は、以下の化1に示すハッチングの範囲で示されることが好ましい。この場合には、緻密で、Liなどの金属の欠損が少ないガーネット型酸化物を良好に得ることができる。
【0027】
また、本焼成温度まで上昇させる昇温速度は、5℃/分以上であることがよく、更には、5〜1350℃/分であることが好ましく、50℃/分以上であることが更に好ましく、100℃/分以上であることが最も望ましい。昇温速度が遅すぎる場合には、本焼成温度まで温度上昇させている間に、炭酸リチウムから二酸化炭素ガスが揮発し、焼結体に気孔が生成するおそれがある。
【0028】
無機材料を、本焼成温度よりも低い温度の雰囲気から、本焼成温度の雰囲気に移してもよいし、また、無機材料を本焼成温度よりも低い温度の雰囲気に入れた後に、徐々に雰囲気の温度を上昇させて本焼成温度に至らしめてもよい。
【0029】
雰囲気の温度が炭酸塩の融点よりも高くなる前に二酸化炭素ガス雰囲気にするとよい。炭酸塩の融点よりも雰囲気の温度が高くなると、炭酸塩の表面が液相となる。液相の炭酸塩は、二酸化炭素ガスを含んでいない雰囲気では、式(1)の右反応に例示される炭酸塩分解反応が進行しやすくなる。そこで、炭酸塩が液相になる前の比較的低い温度のときから、無機材料の焼成を二酸化炭素ガス雰囲気で行って、炭酸塩が液相になる前から液相になったときまで、右反応を進行しにくくする。これにより、炭酸塩からの二酸化炭素ガス生成を抑制し、炭酸塩は異相として緻密な結晶構造を形成することができる。そのため、本焼成工程において、異相が析出することが好ましい。前記異相は、炭酸塩を有することが好ましい。本発明の固体電解質はガーネット型酸化物を主成分とし、粒子間に異相を含むことがよい。この異相が接着の役割となって焼結密度が高い固体電解質が形成される。本発明の固体電解質内の異相が主に炭酸塩からなることが好ましい。異相は、粒子とは異なる状態の相である。本焼成工程では、粒子中心部は固体状態を維持しているが、粒子表面が、液体状態となって、粒子間に異相が析出する。これにより、本焼成工程では炭酸ガス中で加熱することにより、粒子表面が液相となり液相焼結を促す。これにより粒子間が異相で繋がれるように殆ど空隙のない緻密なガーネット型酸化物の焼結体が生成される。
【0030】
本焼成工程の前に、仮焼成工程を行っても良い。仮焼成工程は、本焼成温度よりも低い仮焼成温度で無機材料を仮焼成する工程である。無機材料に含まれているバインダーなどの有機物を、仮焼成の際に焼失させるためである。仮焼成温度は、有機物が焼失する程度の温度であるとよく、例えば、300℃以上723℃未満であることがよく、更には400℃以上720℃以下であることが好ましく、500℃以上700℃以下であることが望ましい。仮焼成温度が低すぎる場合には、有機物が残り、その後の本焼成温度での焼成の際に有機物由来のガスが発生するため、緻密な結晶構造が得られにくい場合がある。
【0031】
仮焼成工程の雰囲気は、二酸化炭素ガスを含む二酸化炭素ガス雰囲気としてもよいし、二酸化炭素ガスを含まないか又は殆どない一般雰囲気としてもよい。仮焼成工程で二酸化炭素ガス雰囲気とする場合には、本焼成工程での二酸化炭素ガス雰囲気に対して、雰囲気に含まれる二酸化炭素ガスの濃度を変えても良い。一般雰囲気とは、二酸化炭素ガスを含まないか又は殆どない雰囲気をいい、例えば、酸素ガス、空気、水蒸気を含む雰囲気が挙げられる。
【0032】
仮焼成工程の雰囲気は、酸素含有雰囲気、例えば、空気とすることが好ましい。これにより、バインダーなどの有機物が空気中の酸素と反応し、焼失しやすくなるからである。
【0033】
本焼成工程で焼成される無機材料は、ガーネット型酸化物の原料である。
【0034】
この無機材料は炭酸塩を有する。炭酸塩は、ガーネット型酸化物を構成する元素と炭酸とから形成される塩である。炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムの群から選ばれる1種以上を含むとよい。
【0035】
無機材料における炭酸塩の配合比は、目的物のガーネット型酸化物の組成により変わる。焼成される無機材料には、目的物のガーネット型酸化物に含まれる構成元素の酸化物を含めるとよい。例えば、ガーネット型酸化物がリチウムを含むリチウム含有ガーネット型酸化物である場合に、無機材料に含まれ得る酸化物は、Li
2O、第2族元素、(例えばMgやCa,Sr,Ba,Ra)、ランタノイド元素、Y,Sc、Ti,Zr,Hf、V,Nb,Ta、Mo、V、Alの少なくとも一種を有する酸化物が挙げられる。このうち、CaO、SrO、BaO、Nd
2O
3、ZrO
2、NbO
2、TaO
2、Al
2O
3群から選ばれる1種以上がよく、更には、La
2O
3、ZrO
2、Li
2O、Al
2O
3、NbO
2、CaO、SrO、TaO
2などの酸化物が好ましい。
【0036】
炭酸塩は、それ単独で粒子を形成していてもよいし、ガーネット型酸化物の構成元素であって炭酸塩由来の元素以外の酸化物と混合して粒子を形成していてもよい。また、炭酸塩由来の元素以外の構成元素の酸化物も、各構成元素毎に別々の粒子を形成していてもよいし、複数種が互いに混合されて粒子を形成していてもよい。
【0037】
無機材料全体を100質量%としたときに、炭酸塩が25質量%以上である場合には、本焼成工程の雰囲気を二酸化炭素ガス雰囲気とすることで炭酸塩の式(1)の右向き反応で例示される炭酸塩分解反応を抑制して二酸化炭素ガス揮発を抑制する意義が大きい。
【0038】
本焼成工程を行う前に、前記無機材料にバインダーを添加してスラリーとなして成形体を成形する成形工程と、本焼成温度よりも低い仮焼成温度で成形体を仮焼成する仮焼成工程とを行うことがよい。
【0039】
無機材料には、バインダーと必要に応じて溶剤を加えて、スラリーとし、このスラリーをシート状に成形して、シート状の成形体とすることがよい。スラリーをシート状に成形する場合には、ドクターブレイドなどの方法を採用することができる。バインダーは、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂などの少量で効果があり、材料と反応せず、分解時に有毒ガスが出なくて残留灰分がない有機物を用いるとよい。溶剤は、トルエン、ブタノールなどを用いるとよい。この場合、ガーネット型酸化物を二次電池の固体電解質として用いるためには、シート状の成形体の厚みは50〜500μmであることがよい。
【0040】
または、無機材料は、バインダー無添加で、加圧することで成形体としてもよい。加圧により成形体を得る場合は、冷間等方成形(CIP)、熱間等方成形(HIP)、金型成形、ホットプレスなどにより成形体にすることができる。この場合、ガーネット型酸化物を二次電池の固体電解質として用いるためには、成形体の厚みは、10μm以上10000μm以下であるとよい。
【0041】
本発明のガーネット型酸化物の製造方法により得られるガーネット型酸化物がリチウム含有ガーネット型酸化物であるとよい。この場合、リチウム含有ガーネット型酸化物は、基本組成がLi
xA
yB
3-yM
2O
12であり、理論密度に対する相対密度が70(%)以上であり、伝導度が1.0×10
-5(Scm
-1)以上であるとよい。但し、Aは第2族元素(例えばMgやCa,Sr,Ba,Cs)のうちいずれか1以上、Bはランタノイド元素及びY,Scのうちいずれか1以上、yは0以上3以下)の整数、x=7+yであるときにMはTi,Zr,Hfのうちいずれか1以上であり、x=5+yであるときにはMはV,Nb,Taのうちいずれか1以上である。このうち、AとしてはCaやSr、Baなどが好ましく、BとしてはLaやNdなどが好ましく、MとしてはZrやNb、Taなどが好ましい。このリチウム含有ガーネット型酸化物は、基本組成がLi
xA
yLa
3-yZr
2O
12やLi
xA
yLa
3-yNb
2O
12であることがより好ましい。リチウム含有ガーネット型酸化物としては、このほか、(Na
1-xLi
x)
yM
2Fe
3O
12(ただし、Mは酸化数+6の状態をとることができる元素(S,Se,Te,Poのうち1以上)、0.3≦x≦1.0、2.5≦y≦3.0を満たす)や、Ca
3LiMV
3O
12(但しMは、Co,Ni,Fe,Mnのうち1以上)、Ca
3Li
xNb
(1.5+x)Ga
(3.5-2x)O
12(但し、xは0.24≦x≦0.60)なども挙げられる。なお、「基本組成」とは、この組成の各元素の含有量に対して2割、1割など異なっているものも含まれる趣旨である。例えば、「基本組成がLi
7La
3Zr
2O
12であるもの」には、概して組成が合っているもの、例えば、組成がLi
7.2La
3Zr
2O
12.2であるものや組成がLi
6.8La
3Zr
2O
11.8であるものをも含む趣旨である。
【0042】
リチウム含有ガーネット型酸化物の基本組成がLi
xA
yLa
3-yZr
2O
12であるものについては、xが7以上9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。また、yが0以上2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。このうちx=7,y=0である基本組成がLi
7La
3Zr
2O
12であるものが好ましい。このとき、理論密度に対する相対密度が70(%)以上であるが、90(%)以上であることがより好ましく、92(%)以上であることが一層好ましい。また、伝導度が1.0×10
-5S/cm以上であるが、1.0×10
-4S/cm以上であることがより好ましい。伝導度が1.0×10
-4S/cm以上であれば電池性能を一層向上することができる。
【0043】
リチウム含有ガーネット型酸化物の基本組成がLi
xA
yLa
3-yNb
2O
12であるものについては、xが5以上7以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。また、yが0以上2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。このうちx=5,y=0である基本組成がLi
5La
3Nb
2O
12であるものが好ましい。このとき、理論密度に対する相対密度が70(%)以上であるが、90(%)以上であることがより好ましく、92(%)以上であることが一層好ましい。また、伝導度は、1.0×10
-5以上である。
【0044】
本発明のガーネット型酸化物の製造方法によれば、基本組成よりもLi含有量が少ないLiなどの金属欠損型のガーネット型酸化物が得られる場合もある。例えば、基本組成がLi
7La
3Zr
2O
12、であるリチウム含有ガーネット型酸化物を製造する場合、Li含有量xが、La3モルに対して、7>xであるリチウム含有ガーネット型酸化物が得られる場合がある。例えば、1<x<7であってもよく、2<x<7、3<x<7であってもよい。
本発明のガーネット型酸化物の製造方法により得られるガーネット型酸化物は、二次電池の固体電解質として用いることができる。本発明のガーネット型酸化物の製造方法により得られるガーネット型酸化物がリチウム含有ガーネット型酸化物である場合、このリチウム含有ガーネット型酸化物は、リチウムイオン二次電池の固体電解質として用いることができる。リチウムイオン二次電池の固体電解質は、正極と負極との間に介在されて、リチウムイオンを伝導する。
【0045】
本発明のガーネット型酸化物は、二次電池用固体電解質として用いられるほか、リチウム金属を負極に用いた電池の固体電解質またはこの固体電解質を隔膜として用いた電池、集電体の両側に正極活物質と負極活物質とを配置したバイポーラ電極の間に挟んだ電解質層を複数枚直列に積層した構造の前記電解質層に用いた電池(バイポーラ電池)などの用途がある。
【0046】
本発明のガーネット型酸化物の製造方法により得られるガーネット型酸化物を電解質もしくは隔膜として用いる場合には、ガーネット型酸化物の密度は、高いことが好ましい。密度が高いと、ガーネット型酸化物の間には隙間が少なく、短絡や液漏れのおそれを防止できる。
【0047】
具体的には、ガーネット型酸化物を二次電池用固体電解質に用いる場合、ガーネット型酸化物の相対密度は70%以上98%以下であることがよく、更には90%以上95%以下であることが好ましい。密度が低いと、ガーネット型酸化物の隙間にリチウムのデンドライトが成長して、短絡の原因や隔膜としての機能を果たさないおそれがある。
【0048】
本発明のガーネット型酸化物の製造方法により得られるガーネット型酸化物は、立方晶、正方晶のいずれでもよいが、立方晶の方がイオン伝導性が高く、二次電池の固体電解質として好適に用いられる。
【0049】
本発明の二次電池は、金属イオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、金属イオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極と、固体電解質としてのガーネット型酸化物と、を備える。金属イオンは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオンなどである。
【0050】
二次電池に用いられる正極は、金属イオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質を有する。正極は、集電体と、集電体の表面に結着させた正極活物質層を有する。
【0051】
正極の集電体は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体は、二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、ステンレス鋼、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0052】
正極活物質層は正極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。正極活物質としては、金属イオンを吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。金属イオンがリチウムイオンである場合、正極活物質としては、層状化合物のLi
aNi
bCo
cMn
dD
eO
f(0.2≦a≦1.2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の、1.7≦f≦2.1)、もしくはLi
2MnO
3等を挙げることができる。前記一般式の中のb:c:dの比率は、0.5:0.2:0.3、1/3:1/3:1/3、0.75:0.10:0.15、0:0:1、1:0:0、及び0:1:0から選ばれる少なくとも1種類であることが良い。
【0053】
即ち、層状岩塩構造をもつリチウム金属複合酸化物の具体例としては、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Mn
0.5O
2、LiNi
0.75Co
0.1Mn
0.15O
2、LiMnO
2、LiNiO
2、及びLiCoO
2から選ばれる少なくとも一種であることがよい。また、正極活物質は、層状岩塩構造をもつリチウム金属複合酸化物と、LiMn
2O
4、Li
2Mn
2O
4、LiMn
1.5Ni
0.5O
4等のスピネルとの混合物で構成される固溶体を含んでいてもよく、例えば、Li
2MnO
3−LiCoO
2がある。また、正極活物質として、LiMPO
4、LiMVO
4又はLi
2MSiO
4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePO
4FなどのLiMPO
4F(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO
3などのLiMBO
3(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属を他の金属で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、充放電に寄与するリチウムイオンを含まない正極活物質材料、たとえば、硫黄単体(S)、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiS
2などの金属硫化物、V
2O
5、MnO
2などの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、FeF
3などリチウムを吸蔵放出する際、移動イオンの量によって構造が変化するコンバージョン反応を伴って電気容量を示す材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウムを含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極および/または負極に、公知の方法により、予めイオンを添加させておく必要がある。ここで、当該イオンを添加するためには、金属または当該イオンを含む化合物を用いればよい。
【0054】
正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能であるし、Mgなどの他の金属元素を基本組成のものに加えて金属酸化物としてもよい。またこれら正極活物質を使用する際、その表面と固体電解質の間にバッファー層として酸化物など無機材料をコートしてもよい。
【0055】
結着剤は活物質及び導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂を例示することができる。
【0056】
また、結着剤として、親水基を有するポリマーを採用してもよい。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基などリン酸系の基などが例示される。中でも、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリメタクリル酸など、分子中にカルボキシル基を含むポリマー、又は、ポリ(p−スチレンスルホン酸)などのスルホ基を含むポリマーが好ましい。
【0057】
ポリアクリル酸、あるいはアクリル酸とビニルスルホン酸との共重合体など、カルボキシル基及び/又はスルホ基を多く含むポリマーは水溶性となる。したがって親水基を有するポリマーは、水溶性ポリマーであることが好ましく、一分子中に複数のカルボキシル基及び/又はスルホ基を含むポリマーが好ましい。
【0058】
分子中にカルボキシル基を含むポリマーは、例えば、酸モノマーを重合する、あるいはポリマーにカルボキシル基を付与する、などの方法で製造することができる。酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ペンテン酸、アンジェリカ酸、チグリン酸など分子中に一つのカルボキシル基をもつ酸モノマー、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−ペンテン二酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸など分子内に二つ以上のカルボキシル基をもつ酸モノマーなどが例示される。これらから選ばれる二種以上のモノマーを重合してなる共重合ポリマーを用いてもよい。
【0059】
例えば特開2013-065493号公報に記載されたような、アクリル酸とイタコン酸との共重合体からなり、カルボキシル基どうしが縮合して形成された酸無水物基を分子中に含んでいるポリマーを結着剤として用いることも好ましい。一分子中にカルボキシル基を二つ以上有する酸性度の高いモノマー由来の構造があることにより、充電時に電解液分解反応が起こる前にリチウムイオンなどの金属イオンをトラップし易くなると考えられている。さらに、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸に比べてカルボキシル基が多く酸性度が高まると共に、所定量のカルボキシル基が酸無水物基に変化しているため、酸性度が高まりすぎることもない。そのため、この結着剤を用いて形成された負極をもつ二次電池は、初期効率が向上し、入出力特性が向上する。
【0060】
正極活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、正極活物質:結着剤=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
【0061】
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、および各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
【0062】
正極活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、正極活物質:結着剤=1:0.05〜1:0.5であるのが好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
【0063】
本発明の二次電池に用いられる負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。
【0064】
負極活物質としては、金属イオンを吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。したがって、金属イオンを吸蔵及び放出可能である単体、合金または化合物であれば特に限定はない。たとえば、金属イオンがリチウムイオンである場合、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO
x(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。炭素系材料は、特に限定されるものではないが、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。また、負極活物質して、Nb
2O
5、TiO
2、Li
4Ti
5O
12、WO
2、MoO
2、Fe
2O
3等の酸化物、又は、Li
3−xM
xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。なお、本明細書において、負極活物質としてリチウムを用いる場合にはリチウム二次電池と称し、負極活物質としてリチウム以外の物質を用いる場合にはリチウムイオン二次電池と称する。
【0065】
負極の集電体は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はなく、例えば、正極の集電体で説明したものを採用できる。負極の結着剤および導電助剤は正極で説明したものを採用できる。
【0066】
集電体の表面に活物質層を形成させる方法には、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレイド法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む活物質層形成用組成物を調製し、この組成物に適当な溶剤を加えてペースト状にしてから、集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
【0067】
二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
【0068】
本発明の二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。リチウムイオン二次電池は、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、リチウムイオン二次電池は、風量発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
【0069】
以上、電解液の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0070】
(試料1)
成形工程として、原料としてLi
2CO
3とLa
2O
3とZrO
2とを、Li
7La
3Zr
2O
12の化学量論比となる配合比でボールミル(フリッチュジャパン社製、商品名遊星型ボールミルP−7)で混合し、無機材料を得た。無機材料100質量部に対して、バインダーとしてのPVB(ポリビニルブチラール)を8質量部、及び溶剤としてのトルエンとブタノール混合液(トルエン:ブタノール=1:1体積比)を300質量部添加し、これらを混練して、スラリーを得た。スラリーをドクターブレイド法により厚み100μmのシート状に成形して、シート成形体を得た。
【0071】
シート成形体に対して、以下の仮焼成工程及び本焼成工程を行った。仮焼成工程及び本焼成工程では、シート成形体を
図1に示す焼成条件で焼成した。
【0072】
まず、シート成形体を空気雰囲気の電気炉(光洋サーモシステム株式会社製)に入れた。電気炉の中の雰囲気を、常温から昇温速度10℃/分で温度上昇させた(第1昇温工程)。電気炉内の雰囲気が600℃に到達したときに、600℃で30分間維持させて仮焼成を行った(仮焼成工程)。
【0073】
次に、電気炉内の雰囲気を温度上昇させた(第2昇温工程)。このときの昇温速度は10℃/分であった。1100℃に到達したときに、1100℃で1時間維持させた(本焼成工程)。その後、炉内を放冷させた(降温工程)。放冷時の温度降下速度は20℃/分であった。
【0074】
焼成の間の雰囲気は、第1昇温工程及び仮焼成工程の間は、空気雰囲気とした。空気雰囲気は、空気全体を100体積%としたときに、主成分として78体積%:窒素、21体積%:酸素を含む。仮焼成工程終了後に二酸化炭素ガス雰囲気に切り替えて、第2昇温工程及び本焼成工程の間は二酸化炭素ガス雰囲気とした(600℃までの空気雰囲気比おいては100ml/分の空気量、600℃から700℃までの間の温度域では炭酸ガス流量1L/分、700℃以上の温度では炭酸ガス流量50mL/分)。二酸化炭素ガス雰囲気の成分比は、雰囲気全体を100体積%としたときに、二酸化炭素ガス100体積%であった。1100℃での本焼成工程の終了と同時に、二酸化炭素ガス雰囲気から空気雰囲気に切り替えて、降温工程は空気雰囲気で行った。
【0075】
以上により得られた焼結体は、基本組成がLi
7La
3Zr
2O
12である立方晶のリチウム含有ガーネット型酸化物であった。得られたリチウム含有ガーネット型酸化物について、誘導結合プラズマ法(ICP)により元素質量分析を行った。その結果を表1に示した。また、リチウム含有ガーネット型酸化物の相対密度は93%であった。
また、リチウム含有ガーネット型酸化物のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を
図2に示した。
図2に示すように、ガーネット型酸化物には、ほとんど気孔が見られなかった。
【0076】
(試料2)
試料1のシート成形体と同様のシート成形体を準備した。シート成形体を、
図3に示す焼成条件で焼成した。
図3に示す焼成条件の中で、温度条件は試料1の焼成条件と同様である。一方、焼成時の雰囲気は、次のように変更した。
【0077】
焼成の間の電気炉内の雰囲気は、第1昇温工程、仮焼成工程、第2昇温工程及び降温工程は、空気雰囲気とした。1100℃の本焼成温度に維持している本焼成工程のみ、二酸化炭素ガス雰囲気とした。この空気雰囲気及び二酸化炭素ガス雰囲気の成分比は、試料1と同様である。
【0078】
得られた焼結体は、基本組成がLi
7La
3Zr
2O
12である立方晶のリチウム含有ガーネット型酸化物であり、これについて誘導結合プラズマ法(ICP)により元素質量分析を行った。その結果を表1に示した。また、リチウム含有ガーネット型酸化物の相対密度を測定したところ、50%であった。また、リチウム含有ガーネット型酸化物のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を
図4に示した。
【0079】
(試料3)
試料1のシート成形体と同様のシート成形体を準備した。シート成形体を、所定の焼成条件で焼成した。この焼成条件の中で、温度条件は試料1の焼成条件と同様である。しかし、焼成時の雰囲気は、空気雰囲気とした。
【0080】
得られた焼結体は、基本組成がLi
7La
3Zr
2O
12である立方晶のリチウム含有ガーネット型酸化物であった。これについて、誘導結合プラズマ法(ICP)により元素質量分析を行った。その結果を表1に示した。また、リチウム含有ガーネット型酸化物の相対密度を測定したところ、35%であった。また、
図5の上段に焼成体の正面図を示し、
図5の下図はリチウム含有ガーネット型酸化物のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示した。
【0081】
試料1〜3を比較すると、表1に示すように、試料1は、密度が最も高かった。また、
図5の上段に示すように、試料3は、非常に脆く、外力を加えるとすぐにバラバラに崩れてしまった。
図5の下段に示すように、粒子間にかなり大きな空洞が見られ、緻密な構造をもっていなかった。一方、試料2では、相対密度が低く、また、
図4に示すように、複数の気孔が観察された。
【0082】
Li量は、試料1〜3のいずれも基本組成よりも少なかった。
【0083】
以上より、試料1では、1100℃での本焼成温度のときだけでなく、本焼成温度に至る第2昇温工程の間も二酸化炭素ガス雰囲気で焼成したため、緻密なガーネット型結晶構造が得られた。
【0084】
【表1】
【0085】
(試料4)
試料1のシート成形体と同じシート成形体を準備し、これに本焼成工程を行った。本焼成工程は、本焼成温度を1250℃とし、600℃の仮焼成温度から1250℃の本焼成温度までの温度上昇速度を1250℃/分とし、1250℃での本焼成温度の焼成時間を4分とした以外は、試料1と同様の条件で、シート成形体を焼成した。
【0086】
(試料5)
試料1のシート成形体と同じシート成形体を準備し、これに本焼成工程を行った。本焼成工程は、本焼成温度を1300℃とし、600℃の仮焼成温度から1300℃の本焼成温度までの温度上昇速度を1300℃/分とし、1300℃での本焼成温度の焼成時間を3分とした以外は、試料1と同様の条件で、シート成形体を焼成した。
【0087】
(試料6)
試料1のシート成形体と同じシート成形体を準備し、これに本焼成工程を行った。本焼成工程は、本焼成温度を1350℃とし、600℃の仮焼成温度から1350℃の本焼成温度までの温度上昇速度を1350℃/分とし、1350℃での本焼成温度の焼成時間を1分とした以外は、試料1と同様の条件で、シート成形体を焼成した。
【0088】
上記で得られた試料4〜6は、いずれも、基本組成がLi
7La
3Zr
2O
12である立方晶のリチウム含有ガーネット型酸化物であった。これらについて、ICPによる元素分析、密度測定、及びSEM観察を行った。元素分析及び相対密度の測定結果を表2に示した。SEM写真は、試料4〜6について順に
図6〜
図8に示した。
【0089】
これらの結果から、本焼成温度が1250℃〜1350℃の場合(試料4〜6)には、本焼成温度が1100℃である場合(試料1、表1)よりも、本焼成温度が高い方がLiの残存量が多かった。これは、本焼成温度での焼成時間を1〜4分と短くしたため、炭酸リチウムからのCO
2生成が抑制されたためであると考えられる。本焼成温度が1250℃、1300℃の場合には、Li残存量が多く、1350℃の場合には焼結体のLi残存量が減少した。特に1300℃の場合には、基本組成がLi
7La
3Zr
2O
12のLi理論比とほぼ同量のLiが残り、ほとんどLiが揮発しなかった。
【0090】
図6、
図8は、焼結体の側面のみが観察される。
図7は、焼結体の側面と、その上の平面とが観察される。
図6〜
図8に示すように、本焼成温度が1250℃では、焼結体に5μm程度の気孔が多くみられた。本焼成温度が1300℃では、ほとんど気孔が消えた。本焼成温度が1350℃では、ほとんど気孔がなかった。
【0091】
以上より、1300℃、3分の焼成条件では、焼結体はほぼ緻密化し、Li揮発量が少なかった。この条件の二酸化炭素ガス雰囲気での急速焼成を行うことで、焼結体が緻密化し、かつ、Li欠損を抑えるのに有効であることがわかった。
【0092】
【表2】