特許第6341709号(P6341709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341709
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20180604BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20180604BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180604BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
   H01L21/304 631
   H01L21/68 N
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-54955(P2014-54955)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-177170(P2015-177170A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】田渕 智隆
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智瑛
【審査官】 高橋 宣博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−283025(JP,A)
【文献】 特開2011−049431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のデバイスが分割予定ラインによって形成された略円形状のデバイス形成領域と、該デバイス形成領域を囲繞する外周余剰領域とを有するウェーハの加工方法であって、
ウェーハ表面側に保護テープを貼着し、ウェーハの該デバイス形成領域に対応する裏面側の領域のみを所定厚さ研削して該デバイス形成領域を所望厚さに薄化し、該裏面に凹部を形成するとともに、該外周余剰領域に裏面側に突出する環状凸部を形成する凹部形成工程と、
該凹部形成工程を実施した後に、該環状凸部と該凹部の境界に円形の分割溝を形成し該環状凸部と該凹部を分割する環状凸部分割工程と、
該環状凸部分割工程を実施した後に、ウェーハの裏面の該分割溝の内側全面にダイシングテープを貼着すると共に該保護テープを剥離し該環状凸部を除去する転写工程と、
該転写工程を実施した後に、該デバイス形成領域の分割予定ラインに沿って分割を行うデバイス形成領域分割工程と、からなり、
該転写工程では、ウェーハの裏面に沿って該ダイシングテープがウェーハの裏面の中央から径方向外側に向かって貼着されるウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの裏面外周に環状凸部が形成されたウェーハを、個々のデバイスに分割するウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電機機器の軽量化や小型化を達成するためにウェーハの厚さをより薄く、例えば、50μm以下にすることが要求されている。このように薄く形成されたウェーハは剛性が低下する上、反りが発生するため取り扱いが困難となり、搬送等において破損する恐れがある。そこで、ウェーハのデバイスが形成されるデバイス形成領域に対応する裏面のみを研削することで、デバイス形成領域を囲繞する外周余剰領域に対応する裏面に補強用の環状凸部を形成する研削方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなウェーハを分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウェーハの分割前に環状凸部を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、環状凸部が突出したウェーハの裏面に沿ってダイシングテープが貼着され、ダイシングテープを介してウェーハの裏面側がチャックテーブルに支持される。チャックテーブルでは、テーブル上面から突出したポーラス部がウェーハの凹部に入り込んで係合され、切削ブレードによってウェーハの表面側から環状凸部が切り離される。その後、切削ブレードでウェーハが表面側から切削されて個々のデバイスに分割される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−173487号公報
【特許文献2】特開2010−186971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の方法では、ウェーハの裏面には環状凸部と凹部が形成されているため、ウェーハの裏面に沿わせるようにダイシングテープが貼着されると、ウェーハの凹部の角に気泡が残存してしまう。ウェーハから環状凸部を切り離す際に、切削ブレードによってウェーハの表面側から凹部が形成された裏面に向かって切り込むと、気泡によって切削ブレードにバタツキが生じたり、気泡内に切削屑が入り込んだりしてウェーハに悪影響が生じていた。このため、環状凸部を除去した後のウェーハにおいて、ウェーハの外周側のデバイスの品質が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、裏面外周に環状凸部が形成されたウェーハを、品質を悪化させることなく個々のデバイスに分割することができるウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のウェーハの加工方法は、表面に複数のデバイスが分割予定ラインによって形成された略円形状のデバイス形成領域と、該デバイス形成領域を囲繞する外周余剰領域とを有するウェーハの加工方法であって、ウェーハ表面側に保護テープを貼着し、ウェーハの該デバイス形成領域に対応する裏面側の領域のみを所定厚さ研削して該デバイス形成領域を所望厚さに薄化し、該裏面に凹部を形成するとともに、該外周余剰領域に裏面側に突出する環状凸部を形成する凹部形成工程と、該凹部形成工程を実施した後に、該環状凸部と該凹部の境界に円形の分割溝を形成し該環状凸部と該凹部を分割する環状凸部分割工程と、該環状凸部分割工程を実施した後に、ウェーハの裏面の該分割溝の内側全面にダイシングテープを貼着すると共に該保護テープを剥離し該環状凸部を除去する転写工程と、該転写工程を実施した後に、該デバイス形成領域の分割予定ラインに沿って分割を行うデバイス形成領域分割工程と、からなり、該転写工程では、ウェーハの裏面に沿って該ダイシングテープがウェーハの裏面の中央から径方向外側に向かって貼着される。
【0008】
この構成によれば、ウェーハの表面側に保護テープが貼着された状態で、ウェーハの裏面側の環状凸部と凹部の境界に円形の分割溝が形成される。このため、ウェーハの裏面に対するダイシングテープの貼着時に、ウェーハの裏面とダイシングテープとの間の空気を分割溝に逃がすことができる。よって、ウェーハの裏面全体に気泡を残すことなくダイシングテープが貼着されると共に、ウェーハの表面から保護テープが剥離され、ウェーハから環状凸部が除去されることで、保護テープからダイシングテープにウェーハを良好に転写することができる。また、ウェーハの裏面に気泡が残されていない状態でウェーハが分割されるため、気泡の影響によってデバイスの品質が低下することがない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウェーハの裏面にダイシングテープを貼着する前に、環状凸部と凹部との境界に分割溝を形成しておくことで、裏面外周に環状凸部が形成されたウェーハを、品質を悪化させることなく個々のデバイスに分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るウェーハの斜視図である。
図2】本実施の形態に係る凹部形成工程の一例を示す図である。
図3】本実施の形態に係る環状凸部分割工程の一例を示す図である。
図4】本実施の形態に係る転写工程の一例を示す図である。
図5】本実施の形態に係るデバイス形成領域分割工程の一例を示す図である。
図6】比較例に係るウェーハの加工方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態に係るウェーハの加工方法は、ウェーハの裏面の外周部分だけを残し、その内側だけを研削した、いわゆるTAIKOウェーハに対して実施される。このようなウェーハを個々のデバイスに分割する場合、ウェーハの裏面中央だけが凹状に薄化されていると、ウェーハの裏面側から突出した外周部分によってウェーハの裏面側をチャックテーブルに保持させることができない。このため通常は、ウェーハの外周部分を除去してウェーハの裏面を平坦化した後に、ウェーハを個々のチップに分割している。
【0012】
この場合、ウェーハの裏面にダイシングテープを貼着する必要があるが、ウェーハの裏面から外周部分が突出しているため、ウェーハの裏面とダイシングテープの間に気泡が残ってしまう。そこで、本実施の形態に係るウェーハの加工方法では、ウェーハの裏面にダイシングテープを貼着する前に、ウェーハの凹状部分と外周部分との境界に気泡の逃げ道になる分割溝を形成している。これにより、ウェーハの外周部分が突出していても、ウェーハの裏面全体にダイシングテープを隙間なく貼着させることが可能になっている。
【0013】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係るウェーハの加工方法について詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係るウェーハの斜視図である。図2は、本実施の形態に係る凹部形成工程の一例を示す図である。図3は、本実施の形態に係る環状凸部分割工程の一例を示す図である。図4は、本実施の形態に係る転写工程の一例を示す図である。図5は、本実施の形態に係るデバイス形成領域分割工程の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、ウェーハWは、略円板状に形成されており、表面11に配列された格子状の分割予定ライン18によって複数の領域に区画されている。ウェーハWの中央には、分割予定ライン18に区画された各領域にデバイスDが形成されている。ウェーハWの表面11は、複数のデバイスDが形成されたデバイス形成領域A1と、デバイス形成領域A1を囲繞する外周余剰領域A2とに分けられている。また、ウェーハWの外縁13には、結晶方位を示すノッチ14が形成されている。ウェーハWは、表面11に保護テープT1が貼着された状態で研削装置21(図2参照)に搬入される。
【0015】
図2に示すように、まず凹部形成工程が実施される。凹部形成工程では、保護テープT1を介してウェーハWの表面11側が研削装置21のチャックテーブル22に保持される。そして、研削装置21の研削ホイール23がZ軸回りに回転しながらチャックテーブル22に近付けられ、研削ホイール23とウェーハWの裏面12とが回転接触することでウェーハWが研削される。このとき、ウェーハWの裏面12のうち、表面11のデバイス形成領域A1の裏側だけが研削される。これにより、ウェーハWの裏面12には、デバイス形成領域A1に対応する領域が所望の厚さに薄化されて円形の凹部15が形成され、外周余剰領域A2に対応する領域がウェーハWの裏面12側から突出して環状凸部16が形成される。
【0016】
このように、凹部15によってウェーハWの中央部分だけが薄化されて、凹部15を囲む環状凸部16によってウェーハWの剛性が高められている。よって、ウェーハWのデバイス形成領域A1が薄化されると共に、環状凸部16によってウェーハWの反りが抑えられて搬送時の破損等が防止される。なお、ウェーハWは、シリコン、ガリウム砒素等の半導体ウェーハでもよいし、セラミック、ガラス、サファイア系の光デバイスウェーハでもよい。凹部15及び環状凸部16が形成されたウェーハWは、保護テープT1が貼着された状態で切削装置31(図3参照)に搬入される。
【0017】
図3に示すように、凹部形成工程の後には環状凸部分割工程が実施される。環状凸部分割工程では、保護テープT1を介してウェーハWの表面11側が切削装置31のチャックテーブル32に保持される。このとき、チャックテーブル32の回転軸(Z軸)にウェーハWの中心を一致させるように、チャックテーブル32に対してウェーハWが位置合わせされている。また、ウェーハWの環状凸部16と凹部15の境界に切削ブレード33が位置付けられ、高速回転された切削ブレード33によってウェーハWの裏面12側から環状凸部16と凹部15の境界が切り込まれる。
【0018】
そして、切削ブレード33によって保護テープT1の途中まで切り込まれると、チャックテーブル32が回転されて切削ブレード33によってウェーハWが円形に切削される。これにより、ウェーハWの外周に沿って凹部15と環状凸部16との間に円形の分割溝17が形成され、ウェーハWから環状凸部16が切り離される。分割溝17が形成されたウェーハWは、転写装置(不図示)に搬入される。この場合、ウェーハWのデバイス形成領域A1が保護テープT1を介して環状凸部16に支持された状態で搬送される。すなわち、環状凸部16が環状フレームとして機能して、ウェーハWの薄化されたデバイス形成領域A1の撓みが抑えられている。
【0019】
なお、環状凸部分割工程は、切削ブレード33による切削加工(サークルカット)に限定されるものではない。環状凸部分割工程は、ウェーハWの円形の凹部15と環状凸部16との間に分割溝17を形成する構成であればよく、例えば、ウェーハWに対して吸収性を有する波長のレーザービームを用いたアブレーション加工によって実施されてもよい。アブレーションとは、レーザービームの照射強度が所定の加工閾値以上になると、固体表面で電子、熱的、光科学的及び力学的エネルギーに変換され、その結果、中性原子、分子、正負のイオン、ラジカル、クラスタ、電子、光が爆発的に放出され、固体表面がエッチングされる現象をいう。
【0020】
図4に示すように、環状凸部分割工程の後には転写工程が実施される。転写工程では、図4Aに示すように、ウェーハWの裏面12に沿ってダイシングテープT2が貼着される。この場合、例えば転写装置の減圧空間内のテーブル上において環状フレームFの内側にウェーハWが配置され、ウェーハWの凹部15に対応した円形プレートによってウェーハWの裏面12にダイシングテープT2が押し付けられる。そして、ダイシングテープT2が径方向外側に引き伸ばされながら、ウェーハWの裏面12の中央から径方向外側に向かってダイシングテープT2が貼着される。
【0021】
このダイシングテープT2の貼着時には、図4Bに示すように、ウェーハWの裏面12とダイシングテープT2の間の空気が径方向外側に押し出されて、環状凸部16と凹部15の境界の分割溝17に逃がされる。このため、ウェーハWの裏面12側に気泡25(図6参照)が残ることがなく、ウェーハWの裏面12の分割溝17よりも内側全体にダイシングテープT2が良好に貼着される。次に、図4Cに示すように、ウェーハWの表面11から保護テープT1が剥離され、さらにダイシングテープT2から環状凸部16が除去される。これにより、ウェーハWのデバイス形成領域A1がダイシングテープT2に残される。ダイシングテープT2に転写されたウェーハWは、再び切削装置31(図5参照)に搬入される。なお、保護テープT1の剥離及び環状凸部16の除去は転写装置で実施されてもよいし、オペレータの手作業で実施されてもよい。
【0022】
なお、本実施の形態においては、環状凸部16の除去を環状凸部分割工程の直後に切削装置31内で行わずに、転写装置で転写された後に実施されている。環状凸部16の除去を自動で実施する場合には、例えば特開2013−098246号公報に示す装置において、テープにテンションをかけた状態でスクレーパによって実施される。環状凸部分割工程の直後のウェーハWには同サイズの保護テープT1だけしか貼着されていないため、転写工程においてダイシングテープT2が貼着される前においては、スクレーパによって環状凸部16を除去することができない。このため、転写工程を実施しなければ、環状凸部16を自動的に除去することが困難になっている。
【0023】
また、凹部形成工程よりも前段階でウェーハWを環状フレームFに保持させることで、環状凸部16の除去を切削装置31内で実施する構成も考えられる。しかしながら、研削装置21において環状フレームFに支持されたウェーハWに凹部形成工程を実施するためには、研削装置21自体の改良が必要になりコストが増大するという問題がある。このように、本実施の形態では、ウェーハWを転写装置に搬送して、転写装置においてウェーハWが保護テープT1からダイシングテープT2に転写されることで、環状凸部16の除去が簡易な構成で実施される。なお、上記したように、転写装置へのウェーハWの搬送時には環状凸部16が環状フレームとして機能するため、ウェーハWの薄化されたデバイス形成領域A1の撓みによる破損等の不具合が防止されている。
【0024】
図5に示すように、転写工程の後にはデバイス形成領域分割工程が実施される。デバイス形成領域分割工程では、ダイシングテープT2を介してウェーハWの裏面12側がチャックテーブル32に保持され、クランプ部34によってウェーハWの周囲の環状フレームFが挟持固定される。切削ブレード33は、ウェーハWの径方向外側で分割予定ライン18に対して位置合わせされ、この位置においてダイシングテープT2の途中まで切り込み可能な高さに下降される。そして、高速回転する切削ブレード33に対してチャックテーブル32上のウェーハWがX軸方向に切削送りされることで、分割予定ライン18に沿ってウェーハWが切削される。
【0025】
一本の分割予定ライン18に沿ってウェーハWが切削されると、隣接する分割予定ライン18に切削ブレード33が位置合わせされて切削される。この動作が繰り返されてウェーハWが一方向の全ての分割予定ライン18に沿って切削される。ウェーハWの一方向の全ての分割予定ライン18に沿って切削されると、チャックテーブル32が90度回転されて、同様にして一方向の分割予定ライン18に直交する他方向の分割予定ライン18に沿ってウェーハWが切削される。この結果、薄化されたデバイス形成領域A1だけが分割予定ライン18に沿ってフルカットされて、ウェーハWが複数のデバイスDに分割される。
【0026】
このように、本実施の形態に係るウェーハWの加工方法では、ウェーハWのデバイス形成領域A1の裏面12全体にダイシングテープT2が良好に貼着されているため、デバイス形成領域A1の分割時にデバイスDの品質が悪化することがない。すなわち、デバイス形成領域A1の外縁19とダイシングテープT2の間に隙間(図6C参照)が生じないため、この隙間に切削屑が入り込むことがない。よって、環状凸部16が形成されたウェーハWを、品質を悪化させることなく個々のデバイスDに分割することが可能になっている。
【0027】
なお、デバイス形成領域分割工程は、切削ブレード33によるメカニカルダイシングに限定されるものではない。デバイス形成領域分割工程は、デバイス形成領域A1を分割予定ライン18に沿って分割可能であればよく、例えば、ウェーハWに対して吸収性を有する波長のレーザービームを用いたアブレーション加工によって実施されてもよいし、ウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザービームを用いたステルスダイシング(登録商標)によって実施されてもよい。
【0028】
ステルスダイシングでは、分割予定ライン18に沿って改質層が形成され、ウェーハWに外力が加えられることで改質層を起点に個々のデバイスDに分割される。なお、改質層は、レーザービームの照射によってウェーハWの内部の密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。改質層は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域であり、これらが混在した領域でもよい。
【0029】
ここで、本発明との比較のため、図6を参照して比較例に係るウェーハの加工方法について簡単に説明する。図6は、比較例に係るウェーハの加工方法の説明図である。比較例に係るウェーハの加工方法においては、ウェーハの裏面にダイシングテープが貼着された後に、ウェーハから環状凸部が切り離される点で、本実施の形態に係るウェーハの加工方法と相違している。なお、ウェーハの裏面に環状凸部及び凹部を形成する構成については、本実施の形態と同様であるため説明を省略する。また、比較例においては、説明の便宜上、同一の名称には同一の符号を付して説明する。
【0030】
図6Aに示すように、比較例に係るウェーハWの加工方法では、分割溝17(図6B参照)を形成する前にウェーハWの裏面12に沿ってダイシングテープT2が貼着される。このため、ウェーハWの裏面12とダイシングテープT2の間の空気の逃げ道がなく、ウェーハWの裏面12の環状凸部16と凹部15の角に気泡25が残ってしまう。よって、ウェーハWのデバイス形成領域A1の外縁側ではダイシングテープT2が貼着されない。ウェーハWがダイシングテープT2を介して環状フレームF(図4参照)に支持されると、ウェーハWの表面11から保護テープT1が剥離される。
【0031】
次に、図6Bに示すように、切削ブレード33によってウェーハWの環状凸部16と凹部15の境界に円形の分割溝17が形成される。このとき、切削ブレード33の刃先が気泡25に入り込むため、切削ブレード33にバタツキが生じて加工品質が低下すると共に、切削屑26が気泡25内に入り込み汚染されてしまう。ウェーハWに分割溝17が形成されると、ウェーハWの環状凸部16がダイシングテープT2から除去される。次に、図6Cに示すように、切削ブレード33によって分割予定ライン18(図5参照)に沿ってウェーハWが切削され、ウェーハWが個々のデバイスDに分割される。このとき、ウェーハWの外縁19にダイシングテープT2が貼着されていないため、ウェーハWの外縁19とダイシングテープT2の隙間に切削屑26が入り込んでデバイスDの品質が悪化する。
【0032】
このように、比較例に係るウェーハWの加工方法では、特にウェーハWの外周側のデバイスDの品質が悪化する。一方で、本実施の形態に係るウェーハWの加工方法では、比較例に係るウェーハWの加工方法のように、ウェーハWの裏面12とダイシングテープT2の間に気泡25が残存することもなく、気泡25に起因してウェーハWの外周側のデバイスDの品質が悪化することもない。
【0033】
以上のように、本実施の形態に係るウェーハWの加工方法によれば、ウェーハWの表面11側に保護テープT1が貼着された状態で、ウェーハWの裏面12側の環状凸部16と凹部15の境界に円形の分割溝17が形成される。このため、ウェーハWの裏面12に対するダイシングテープT2の貼着時に、ウェーハWの裏面12とダイシングテープT2との間の空気を分割溝17に逃がすことができる。よって、ウェーハWの裏面12全体に気泡25を残すことなくダイシングテープT2が貼着されると共に、ウェーハWの表面11から保護テープT1が剥離され、環状凸部16が除去されることで、保護テープT1からダイシングテープT2にウェーハWを良好に転写することができる。また、ウェーハWの裏面12に気泡25が残されていない状態でウェーハWが分割されるため、気泡25の影響によってデバイスWの品質が低下することがない。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0035】
また、上記したウェーハWの加工方法では、転写工程において環状フレームFに貼着されたダイシングテープT2にウェーハWが転写される構成としたが、この構成に限定されない。転写工程では、ウェーハWの裏面12にダイシングテープT2が貼着され、ウェーハWの表面11から保護テープT1が剥離されればよく、ウェーハWがダイシングテープT2を介して環状フレームFに支持されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、本発明は、品質を悪化させることなく個々のデバイスに分割することができるという効果を有し、ウェーハの裏面外周に環状凸部が形成されたウェーハを、個々のデバイスに分割するウェーハの加工方法に有用である。
【符号の説明】
【0037】
11 ウェーハの表面
12 ウェーハの裏面
15 凹部
16 環状凸部
17 分割溝
18 分割予定ライン
A1 デバイス形成領域
A2 外周余剰領域
T1 保護テープ
T2 ダイシングテープ
D デバイス
W ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6