(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被測定物に接触する測定子を有するスタイラスを移動可能に支持し、該測定子の変位に従うプローブ出力を行う測定プローブと、該測定プローブを前記被測定物に対して相対的に移動させる駆動機構と、該プローブ出力と該駆動機構による該測定プローブの移動量とから前記被測定物の形状座標を演算する処理装置と、を備える三次元測定装置において、
前記測定子が接触する校正基準体を備え、
前記処理装置は、
前記駆動機構を制御して、互いに直交する3方向とそのうちの2方向について測定力が互いに逆向きとなる2方向とを合わせた合計5方向がそれぞれ、該校正基準体の表面に対する法線方向となるように、該5方向それぞれにおいて前記測定子を該表面に1点で接触させ所定の変位量で押込後に、該測定子を逆向きに移動させ、該表面から離間させる押込駆動機構制御部と、
前記駆動機構を制御して、互いに直交する3平面上それぞれで一定の押込量で前記測定子を押圧した状態として該校正基準体の表面を往復移動させる倣い駆動機構制御部と、
前記押込駆動機構制御部及び前記倣い駆動機構制御部によって、前記校正基準体に前記測定子が係合した際に、前記測定プローブの移動量及び前記プローブ出力をそれぞれ取得する座標取得部と、
該座標取得部の出力に基づいて、該測定プローブの移動量に対する該プローブ出力を補正する補正行列を生成する行列生成部と、
該補正行列を用いて前記プローブ出力を補正するプローブ出力補正部と、を有することを特徴とする三次元測定装置。
被測定物に接触する測定子を有するスタイラスを移動可能に支持し、該測定子の変位に従うプローブ出力を行う測定プローブと、該測定プローブを前記被測定物に対して相対的に移動させる駆動機構と、該プローブ出力と該駆動機構による該測定プローブの移動量とから前記被測定物の形状座標を演算する処理装置と、を備える三次元測定装置の座標補正方法において、
前記駆動機構を制御して、互いに直交する3方向とそのうちの2方向について測定力が互いに逆向きとなる2方向とを合わせた合計5方向がそれぞれ、校正基準体の表面に対する法線方向となるように、該5方向それぞれにおいて前記測定子を該表面に1点で接触させ所定の変位量で押込後に、該測定子を逆向きに移動させ、該表面から離間させる押込駆動工程と、
前記駆動機構を制御して、互いに直交する3平面上それぞれで一定の押込量で前記測定子を押圧した状態として該校正基準体の表面を往復移動させる倣い駆動工程と、
前記押込駆動工程と前記倣い駆動工程において、前記校正基準体に前記測定子が係合した際に、前記測定プローブの移動量及び前記プローブ出力をそれぞれ取得する工程と、
取得した該測定プローブの移動量及びプローブ出力に基づいて、該測定プローブの移動量に対する該プローブ出力を補正する補正行列を生成する工程と、
該補正行列を用いて前記プローブ出力を補正する工程と、
を含むことを特徴とする座標補正方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0017】
本発明の三次元測定装置に係る第1実施形態について
図1〜
図9を参照して説明する。
【0018】
最初に、三次元測定装置100の全体構成を説明する。
【0019】
三次元測定装置100は、
図1に示す如く、測定プローブ300を移動させる三次元測定装置本体200と、手動操作するジョイスティック111を有する操作手段110と、処理装置400と、を備える。
【0020】
前記三次元測定装置本体200は、
図1に示す如く、定盤210と、駆動機構220と、校正基準体240と、測定プローブ300と、を備えている。駆動機構220は、
図1に示す如く、定盤210に立設されて測定プローブ300を保持し三次元的に移動させるX軸駆動機構225、Y軸駆動機構226及びZ軸駆動機構227(
図2)を備える。なお、これに限らず、測定プローブが固定され、駆動機構が被測定物Wの下にくる定盤自体あるいは定盤上であって被測定物Wの下にくる部材を移動させることで、被測定物Wを三次元的に移動させてもよい。あるいは、駆動機構が測定プローブと被測定物Wとを三次元的に移動させてもよい。即ち、駆動機構は測定プローブを被測定物Wに対して相対的に移動させる機構であればよい。
【0021】
具体的に、駆動機構220は、
図1に示す如く、装置座標系のYm方向に移動可能なビーム支持体221と、ビーム支持体221に橋渡しされたビーム222と、ビーム222上で装置座標系のXm方向に移動可能なコラム223と、コラム223内で装置座標系のZm方向に移動可能なスピンドル224と、を備えている。そして、
図2に示すX軸駆動機構225、Y軸駆動機構226、及びZ軸駆動機構227がそれぞれ、ビーム222とコラム223との間、定盤210とビーム支持体221との間、及びコラム223とスピンドル224との間に設けられている。なお、スピンドル224の端部に測定プローブ300が支持されている。
【0022】
X軸駆動機構225、Y軸駆動機構226、Z軸駆動機構227にはそれぞれ、
図2に示す如く、X軸スケールセンサ228、Y軸スケールセンサ229、Z軸スケールセンサ230が設けられている。このため、X軸スケールセンサ228、Y軸スケールセンサ229、Z軸スケールセンサ230の出力から、装置座標系における測定プローブ300の移動量{x
m,y
m,z
m}
T(Mと称する)を求めることができる。なお、本実施形態では、X軸駆動機構225、Y軸駆動機構226、及びZ軸駆動機構227の移動方向それぞれが、装置座標系のXm方向、Ym方向、Zm方向と一致している。
【0023】
校正基準体240は、
図1に示す如く、球形状の部材(基準球とも称する)であり、定盤210上に配置されている。校正基準体240は球形状の部材なので、校正基準体240の表面のすべての法線は校正基準体240の中心位置を通る構成とされている。
【0024】
測定プローブ300は、いわゆる倣いプローブであり、
図3に示す如く、被測定物Wに接触する球形状の測定子306を有するスタイラス304を、プローブ本体302で移動可能に支持している。測定プローブ300は、測定子306の変位に従うプローブ出力{x
p,y
p,z
p}
T(Pと称する)を行う。ここで、スタイラス304は、プローブ本体302において、例えば非線形な応答をするばね構造で支持されている。そして、測定プローブ300におけるスタイラス304の変位をプローブセンサ310で検出する。
【0025】
プローブセンサ310は、
図2に示す如く、プローブ座標系のXp方向(
図3)への測定子306の変位を検出するX軸プローブセンサ312と、プローブ座標系のYp方向への測定子306の変位を検出するY軸プローブセンサ314と、プローブ座標系のZp方向への測定子306の変位を検出するZ軸プローブセンサ316と、を備える。このため、X軸プローブセンサ312、Y軸プローブセンサ314、Z軸プローブセンサ316の出力から、プローブ座標系における測定子306の座標であるプローブ出力Pを求めることができる。なお、X軸プローブセンサ312、Y軸プローブセンサ314、Z軸プローブセンサ316が直接的にプローブ出力Pを示さなくてもよい。
【0026】
前記操作手段110は、
図2に示す如く、処理装置400の指令部402に接続されている。操作手段110からは、三次元測定装置本体200及び処理装置400へ各種の指令を入力可能となっている。
【0027】
前記処理装置400は、
図1に示す如く、モーションコントローラ500とホストコンピュータ600とを備え、プローブ出力Pと駆動機構220による測定プローブ300の移動量Mとから被測定物Wの形状座標XXを演算する。モーションコントローラ500は主に測定プローブ300の移動及び測定の制御を行い、ホストコンピュータ600は主に三次元測定装置本体200で得られた測定結果を処理するようにされている。本実施形態では、処理装置400として、モーションコントローラ500とホストコンピュータ600の機能を併せて
図2のブロック図に示し、以下に説明する。なお、ホストコンピュータ600は、キーボードなどの入力手段120と、ディスプレイやプリンタなどの出力手段130と、を備える。
【0028】
処理装置400は、
図2に示す如く、指令部402と、駆動機構制御部404と、座標取得部406と、行列生成部408と、プローブ出力補正部410と、形状座標演算部412と、記憶部414と、を備える。
【0029】
図2に示す指令部402は、操作手段110あるいは入力手段120で入力された指令に基づき、駆動機構制御部404に所定の指令を与える。指令部402は、例えば、測定プローブ300を複数の位置(測定点)へ移動させるための移動方向、移動距離、移動速度などを考慮して、駆動機構220に対する制御周期毎の装置座標系の座標値を位置指令として生成する。また、指令部402は、例えば、座標取得部406に対して駆動機構220による測定プローブ300の移動量Mとプローブ出力Pの取得タイミングや取得数(測定点の数n)を指令することもできる。
【0030】
図2に示す駆動機構制御部404は、指令部402の指令に応じて、駆動制御信号Dを出力することで駆動機構220のX、Y、Z軸駆動機構225、226、227のモータに電流を流して駆動制御することができる。具体的に、駆動機構制御部404は、押込駆動機構制御部404Aと倣い駆動機構制御部404Bとを備える。
【0031】
押込駆動機構制御部404Aは、駆動機構220により、校正基準体240の表面に対する法線方向となるように、5方向それぞれにおいて測定子306をその表面に1点で接触させ所定の変位量で押込後に、測定子306を逆向きに移動させ、その表面から離間させる押込駆動工程を行わせる。押込駆動機構制御部404Aにおける5方向とは、
図6(A)に示す如く、例えば、互いに直交する3方向(XYZの3方向)とそのうちの2方向(X方向とY方向)について測定力が互いに逆向きとなる2方向(X方向では+X方向と−X方向、Y方向では+Y方向と−Y方向)とを合わせた方向である。
【0032】
倣い駆動機構制御部404Bは、駆動機構220を制御して、互いに直交する3平面上それぞれで(プローブ出力Pで得られる)一定の押込量で測定子306を押圧した状態として校正基準体240の表面を往復移動させる倣い駆動工程を行わせる。倣い駆動機構制御部404Bの3平面は、
図9(A)、(B)に示す如く、例えば、XY平面、XZ平面、YZ平面である。倣い駆動機構制御部404Bにより、それぞれの平面上で測定子306は、校正基準体240の表面に沿って反時計回りと時計回りに移動することとなる。
【0033】
本実施形態では、これらのX方向、Y方向及びZ方向がそれぞれ、校正基準体240の表面の法線方向であり、且つZ方向がスタイラス304の軸方向Oと一致している。即ち、押込駆動機構制御部404Aにおける5方向は、スタイラス304の軸方向Oと、軸方向Oと直交する平面内の互いに直交する2方向と、その2方向とは測定力が互いに逆向きとなる2方向と、からなる。結果的には、X方向、Y方向及びZ方向はそれぞれ、装置座標系のXm方向、Ym方向及びZm方向と一致している。また、押込駆動機構制御部404AによってなされるXYZの3方向と倣い駆動機構制御部404BによってなされるXYZの3方向とは便宜上同一表記としているが、これらの方向は互いにずれていてもよい。なお、駆動機構制御部404は、校正基準体240の中心位置を求められるようにも駆動機構220を制御する。
【0034】
図2に示す座標取得部406は、押込駆動機構制御部404A及び倣い駆動機構制御部404Bによって、校正基準体240に測定子306が係合(接触)した際に、駆動機構220から出力される装置座標系の測定プローブ300の移動量M及びプローブセンサ310から出力されるプローブ座標系のプローブ出力Pをそれぞれ取得する。押込駆動機構制御部404Aよる押込駆動工程において、校正基準体240に測定子306が係合した際に測定プローブ300の移動量M及びプローブ出力Pをそれぞれ取得することを、以降押込測定と称する。また、倣い駆動機構制御部404Bによる倣い駆動工程において、校正基準体240に測定子306が係合した際に測定プローブ300の移動量M及びプローブ出力Pをそれぞれ取得することを、以降倣い測定と称する。
【0035】
また、座標取得部406は、行列生成部408で必要とする形態(データ数とデータ形態)に演算を行い、その結果を行列生成部408に出力する(このような演算は、行列生成部408で行い、座標取得部406は単にプローブ出力P及び測定プローブ300の移動量Mをそれぞれ取得するだけでもよい)。具体的には、座標取得部406は、押込測定と倣い測定とにより、補正行列AAを求めるのに必要な測定点の数(取得数)nの測定プローブ300の移動量Mn及びプローブ出力Pnを出力する。例えば、測定点の数nは、押込測定で5方向による5p(pは1以上の整数)と、倣い測定で3平面上の往復(
図9に示す如く、XY平面は360度、XZ平面とYZ平面は共に180度程度の場合には、合計(校正基準体240の)4周に相当)による4q(qは1以上の整数)とによる合計数5p+4qとなる。なお、行列生成部408で補正行列AAを生成しない場合においては、座標取得部406は、プローブ出力P、測定プローブ300の移動量Mをそれぞれ、プローブ出力補正部410、形状座標演算部412にそのままの形態で出力する。
【0036】
図2に示す行列生成部408は、座標取得部406の出力(測定プローブ300の移動量Mn、プローブ出力Pn)に基づいて、補正行列AAを生成する。ここで、測定子306と校正基準体240とが接触している状態では、補正行列AAを用いて求めた装置座標系における測定子306の中心位置{x
pm,y
pm,z
pm}
T(PXと称する)と校正基準体240の中心位置{x
c,y
c,z
c}
T(PCと称する)との距離は、理想的には測定子306の測定球の半径と校正基準体240である基準球の半径との和(測定子306と校正基準体240との距離と称する)Rとなる。しかし、実際には、座標取得部406のi(1≦i≦n)番目の出力において、測定子306の中心位置{x
pmi,y
pmi,z
pmi}
T(PX
iと称する)と校正基準体の240の中心位置PCとの距離と、測定子306と校正基準体240との距離Rとには、式(4)、(5)に示すような距離誤差f
i(E)が存在する。なお、i(1≦i≦n)番目の出力である測定プローブ300の移動量M
i及びプローブ出力P
iをそれぞれ、{x
mi,y
mi,z
mi}
T、{x
pi,y
pi,z
pi}
Tとする。また、変数Eは{AA
11,AA
12,AA
13,AA
21,AA
22,AA
23,AA
31,AA
32,AA
33,x
c,y
c,z
c,R}
Tを示す。
【0038】
ここで、補正行列AAは、測定プローブ300の移動量Mに対するプローブ出力Pの座標成分を補正する補正要素で構成されている。なお、座標成分は1次の座標成分x
p、y
p、z
pをいう。そして補正要素は座標成分x
p、y
p、z
pにそれぞれ乗算される要素AA
11、AA
12、AA
13、AA
21、AA
22、AA
23、AA
31、AA
32、AA
33をいう。
【0039】
ここで、距離誤差f
i(E)に対する評価を行うための評価関数J(E)を式(6)に示す。
【0041】
つまり、行列生成部408は、式(6)で示す評価関数J(E)を最小にする変数Eを非線形最小二乗法などにより算出することで、補正行列AAの補正要素AA
11、AA
12、AA
13、AA
21、AA
22、AA
23、AA
31、AA
32、AA
33を算出することができる。なお、この算出では、Levenberg-Marquardt法等の一般的な解法を用いることができる。
【0042】
図2に示すプローブ出力補正部410は、行列生成部408から出力される補正行列AAを用いて座標取得部406で取得したプローブ出力Pを補正する。つまり、プローブ出力補正部410は、式(7)に示す如く、補正行列AAによってプローブ出力Pを補正することで、装置座標系の変換出力{x
p_m,y
p_m,z
p_m}
T(PMと称する)を求める。
【0044】
図2に示す形状座標演算部412は、式(9)に示す如く、プローブ出力補正部410から出力される変換出力PMを、座標取得部406で取得した測定プローブ300の移動量Mに加算することで、被測定物Wの測定時の形状座標XXを演算する。また、形状座標演算部412は、座標取得部406で得られた測定プローブ300の移動量Mとプローブ出力Pとから、校正基準体240の中心位置PCを求めることもできる。
【0046】
図2に示す記憶部414は、各種制御用初期値、各種処理用初期値、プログラムなどを記憶している。また、記憶部414は、行列生成部408で生成された補正行列AAと形状座標演算部412で得られた校正基準体240の中心位置PCも記憶している。なお、記憶部414は、被測定物Wや校正基準体240のCADデータなども記憶することができる。
【0047】
次に、本実施形態に係る座標補正の概略の手順について、主に
図4を用いて、以下に説明する。
【0048】
まず、校正基準体240を定盤210の測定空間中の所定の位置に固定する。そして、校正基準体240に測定子306を接触させて、校正基準体240の中心位置PCを求める(
図4ステップS2)。具体的には、駆動機構制御部404により測定プローブ300を移動させ、座標取得部406で得られる測定プローブ300の移動量Mとプローブ出力Pとから、形状座標演算部412で校正基準体240の中心位置PCを求める。この中心位置PCは、記憶部414に記憶される。なお、校正基準体240の中心位置PCは、校正基準体240の表面のすべての法線が校正基準体240の中心位置PCを通るという性質を利用するために求められている。
【0049】
次に、押込駆動機構制御部404Aと座標取得部406とにより、駆動機構220を制御して、5方向それぞれにおいて測定子306をその表面に1点で接触させ所定の変位量で押込後に、測定子306を逆向きに移動させ、その表面から離間させる押込駆動工程において、押込測定を行う(
図4ステップS4)。なお、互いに直交する3方向とそのうちの2方向について測定力が互いに逆向きとなる2方向とを合わせた合計5方向がそれぞれ、校正基準体240の表面に対する法線方向となるようされている。即ち、当該5方向は、求められた校正基準体240の中心位置PCを通ることとなる。押込測定の具体的な手順については後述する。
【0050】
次に、倣い駆動機構制御部404Bと座標取得部406とにより、駆動機構220を制御して、3平面上それぞれで一定の押込量で測定子306を押圧した状態として校正基準体240の表面を往復移動させる倣い駆動工程において、倣い測定する(
図4ステップS6)。この倣い測定の経路は、求められた校正基準体240の中心位置PCに基づき、予め生成されている。なお、3平面は互いに直交している。倣い測定の具体的な手順についても後述する。
【0051】
次に、押込測定と倣い測定で得られた測定点の数がnである測定プローブ300の移動量Mn及びプローブ出力Pnとに基づいて、行列生成部408で補正行列AAを生成する(
図4ステップS8)。
【0052】
次に、プローブ出力補正部410で、補正行列AAを用いて、被測定物Wの測定時のプローブ出力Pを補正し、変換出力PMを得る(
図5ステップS10)。そして、形状座標演算部412で、測定プローブ300の移動量Mと変換出力PMとを合成することで、形状座標XXを演算する。
【0053】
ここで、押込測定の手順について、
図5から
図7を用いて以下に説明する。
【0054】
まず、
図6(A)、(B)に示す如く、校正基準体240の+X方向の表面に対して押込測定(M1)を行う(
図5ステップS12)。そして、校正基準体240の+Y方向の表面に対して押込測定(M2)を行う(
図5ステップS14)。
【0055】
次に、
図6(A)、(B)に示す如く、校正基準体240の(X方向とは測定力が互いに逆向きとなる)−X方向の表面に対して押込測定(M3)を行う(
図5ステップS16)。そして、校正基準体240の(Y方向とは測定力が互いに逆向きとなる)−Y方向の表面に対して押込測定(M4)を行う(
図5ステップS18)。
【0056】
次に、
図6(A)、(B)に示す如く、校正基準体240の+Z方向の表面に対して押込測定(M5)を行うことで押込測定は終了する(
図5ステップS20)。
【0057】
ここで、校正基準体240の+X方向の表面に対して押込測定(M1)を行う具体的な手順を、
図7を用いて以下に説明する。なお、校正基準体240の+X方向以外の側面に対しての押込測定の手順は、下記に説明する手順に対して方向と校正基準体240の側面が異なる以外は同一なので、それらの説明は省略する。
【0058】
まず、押込駆動機構制御部404Aの出力(駆動制御信号D)に基づいて駆動機構220により測定プローブ300を校正基準体240の中心位置PCへ向かって−X方向に移動させる。つまり、押込駆動機構制御部404Aは、校正基準体240の+X方向の表面の法線方向から測定子306を−X方向に接近移動させる(
図7ステップS22)。そして、測定子306が校正基準体240に接触したかどうかを確認する(
図7ステップS24)。接触したかどうかは、例えば座標取得部406においてプローブ出力Pに(ノイズレベルを超える)変化が生じたかどうかで判断する。測定子306が校正基準体240に接触していなければ(
図7ステップS24でNo)、測定プローブ300の校正基準体240の中心位置PCへ向かう−X方向への移動を継続させ、測定子306を更に−X方向へ移動させる。なお、測定子306が校正基準体240に接触したかどうかは、記憶部414に記憶した測定子306と校正基準体240との距離Rの初期設定値及び校正基準体240の中心位置PCを用いて校正基準体240の+X方向の表面の座標を算出し、その座標と指令部402の指令との比較を、押込駆動機構制御部404Aで行うことで確認してもよい。あるいは、記憶部414に記憶した初期設定値と駆動機構220から出力される装置座標系の測定プローブ300の移動量Mとの比較を押込駆動機構制御部404Aで行うことで、測定子306が校正基準体240に接触したかどうかを確認してもよい。
【0059】
測定子306が校正基準体240に接触した際には(
図7ステップS24でYes)、座標取得部406により測定プローブ300の移動量Mとプローブ出力Pとの取得を開始する(
図7ステップS26)。なお、駆動機構220による測定プローブ300の校正基準体240の中心位置PCへ向かう−X方向への移動はそのまま継続させる。
【0060】
次に、座標取得部406において接触後の測定プローブ300の移動量Mが所定の変位量を超えたかどうかを確認する(
図7ステップS28)。接触後の測定プローブ300の移動量Mが所定の変位量を超えていなければ(
図7ステップS28でNo)、駆動機構220による測定プローブ300の校正基準体240の中心位置PCへ向かう−X方向への移動はそのまま継続させる。なお、接触後の測定プローブ300の移動量Mが所定の変位量を超えたかどうかは、所定の変位量に相当するプローブ出力Pの所定の押込量から確認してもよい。あるいは、記憶部414に記憶した測定子306と校正基準体240との距離Rの初期設定値及び校正基準体240の中心位置PCを用いて校正基準体240の+X方向の表面の座標を算出し、その座標から所定の変位量だけ−X方向に減算した座標と指令部402の指令との比較を、押込駆動機構制御部404Aで行うことで、接触後の測定プローブ300の移動量Mが所定の変位量を超えたかどうかを確認してもよい。なお、所定の変位量は、想定される被測定物Wの測定時のプローブ出力Pの押込量よりも大きくされている。
【0061】
接触後の測定プローブ300の移動量Mが所定の変位量を超えた際には(
図7ステップS28でYes)、押込駆動機構制御部404Aは、測定プローブ300の校正基準体240の中心位置PCへ向かう−X方向への移動を停止させる。そして、押込駆動機構制御部404Aは、その方向とは逆方向(校正基準体240の中心位置PCから離れる+X方向)に測定プローブ300の移動を開始させる(
図7ステップS30)。なお、測定プローブ300の移動量Mとプローブ出力Pとの取得は継続される。
【0062】
次に、測定子306が校正基準体240から離間したかどうかを確認する(
図7ステップS32)。離間したかどうかは、例えば座標取得部406においてプローブ出力Pに(ノイズレベルを超える)変化が生じなくなったかどうかで判断する。測定子306が校正基準体240に接触していれば(
図7ステップS32でNo)、測定プローブ300の校正基準体240の中心位置PCから離れる+X方向への移動を継続させる。測定子306が校正基準体240から離間したかどうかは、記憶部414に記憶した測定子306と校正基準体240との距離Rの初期設定値及び校正基準体240の中心位置PCを用いて校正基準体240の+X方向の表面の座標を算出し、その座標と指令部402の指令との比較を、押込駆動機構制御部404Aで行うことで確認してもよい。あるいは、記憶部414に記憶した初期設定値と駆動機構220から出力される装置座標系の測定プローブ300の移動量Mとの比較を押込駆動機構制御部404Aで行うことで、測定子306が校正基準体240から離間したかどうかを確認してもよい。
【0063】
測定子306が校正基準体240から離間した際には(
図7ステップS32でYes)、測定プローブ300の移動量Mとプローブ出力Pとの取得を停止させる。そして、測定子306の+X方向からの押込測定(M1)を終了させる。
【0064】
次に、倣い測定の手順について、
図8、
図9を用いて以下に説明する。
【0065】
まず、
図9(A)、(B)に示す如く、プローブ出力Pにおける一定の押込量で測定子306を校正基準体240の表面に接触させて、XY平面上で反時計回りに倣い測定(M6)を行う(
図8ステップS42)。そして、その一定の押込量のまま、今度はそのXY平面上で時計回りに倣い測定(M7)を行う(
図8ステップS44)。この倣い測定をする角度範囲は、広ければ広いほどよく、XY平面上では360度とすることができる。なお、ここでの一定の押込量は、被測定物Wの測定時に想定される平均的なプローブ出力Pの押込量(以降同じ)としている。
【0066】
次に、
図9(A)、(B)に示す如く、同じ一定の押込量で測定子306を校正基準体240の表面に接触させて、XZ平面上で反時計回りに倣い測定(M8)を行う(
図8ステップS46)。そして、その一定の押込量のまま、今度はそのXZ平面上で時計回りに倣い測定(M9)を行う(
図8ステップS48)。この倣い測定をする角度範囲も、広ければ広いほどよいが、XZ平面上では実際上180度程度までとなる(YZ平面上でも同様)。
【0067】
次に、
図9(A)、(B)に示す如く、同じ一定の押込量で測定子306を校正基準体240の表面に接触させて、YZ平面上で反時計回りに倣い測定(M10)を行う(
図8ステップS50)。そして、その一定の押込量のまま、今度はそのYZ平面上で時計回りに倣い測定(M11)を行うことで倣い測定は終了する(
図8ステップS52)。
【0068】
このように、本実施形態では、校正基準体240が従来から使われている球形状の基準球であり、三次元測定装置100がコストアップすることを防止できる。
【0069】
また、本実施形態では、互いに直交する3方向とそのうちの2方向について測定力が互いに逆向きとなる2方向とを合わせた合計5方向で、押込測定をしている。つまり、合計5方向のうち、スタイラス304の軸方向OがZ方向とされており、X方向では+X方向と−X方向、Y方向では+Y方向と−Y方向とされている。このため、XY平面上で非対称なプローブ特性を示すような場合であっても、XY平面上のスタイラス304の原点の+側と−側とで対称なプローブ特性を示すように座標補正を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、押込測定だけでなく、往復運動させる倣い測定の結果も用いて座標補正を行っている。このため、実際の測定プローブ300の倣い測定で必要となる補正を的確に行うことが可能である。しかも、この倣い測定では、測定子306を往復運動させるので、摩擦力の影響を相殺した補正を行うことができる。
【0071】
即ち、本実施形態では、測定プローブ300から出力されるプローブ出力PのXY平面内での非対称なプローブ特性が改善可能となるので、高精度に被測定物Wの形状座標XXを求めることが可能となる。
【0072】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0073】
例えば、第1実施形態では、
図10(A)に示す如く、X方向、Y方向及びZ方向が装置座標系のXm方向、Ym方向及びZm方向と完全に一致していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図10(B)に示す第2実施形態の如くであってもよい。なお、以降の実施形態の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
第2実施形態では、第1実施形態と同じく、
図10(B)に示す如く、スタイラス304の軸方向OがZ軸駆動機構227の移動方向と同一とされている。即ち、Z方向は装置座標系のZmと同一とされている。しかし、X方向、Y方向はそれぞれ、X軸駆動機構225、Y軸駆動機構226の移動方向(Xm方向、Ym方向)と角度で45度ずれている。
【0075】
このため、本実施形態は、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができるだけでなく、補正行列AAを生成するための測定プローブ300の移動量Mとプローブ出力Pの数を効果的に取得することができる(例えば、第1実施形態の押込測定(M1)において、厳密に測定プローブ300がXm方向に移動した際には、Ym方向の変位が常にゼロとなる。このときに取得した移動量M及びプローブ出力Pは、プローブ出力Pの座標成分y
pを補正する補正行列AAを求めるための有効な結果として使用することができないおそれがある。しかし、本実施形態では、第1実施形態と比べて前記角度が45度ずれている。このため、Xm方向又はYm方向の変位が常にゼロとなることはなく、取得した移動量M及びプローブ出力Pはプローブ出力Pの座標成分x
p、y
pを補正する補正行列AAを求めるための有効な結果として使用することができる)。即ち、本実施形態では、押込測定のステップを低減して補正行列AAをより迅速に求めることができる。又は、本実施形態では、X方向(Y方向)とXm方向(Ym方向)とが角度45度ずれているので、例えば第1実施形態に比べて測定プローブ300の移動量Mを√2倍に拡大すると補正行列AAを求めるための有効な結果の数は2倍に増加して、測定プローブ300の移動量Mとプローブ出力Pの平均化効果により、押込測定における測定のばらつきの影響を1/√2倍に低減することができる。なお、これに限らず、スタイラス304の軸方向OがX軸駆動機構225あるいはY軸駆動機構226の移動方向と同一とされた際に、残りの駆動機構の2つの移動方向とスタイラス304の軸方向Oと直交する平面内の互いに直交する2方向とは角度で45度ずれていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、
図11(A)に示す如く、スタイラス304の軸方向OであるZ方向が装置座標系のZm方向と一致していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図11(B)の第3実施形態に示す如く、スタイラス304の軸方向Oが装置座標系のXm方向と同一とされていてもよい。この場合には、YmZm平面上でプロープ特性を対称に補正することができる。
【0077】
あるいは、
図11(C)の第4実施形態に示す如く、スタイラス304の軸方向Oが装置座標系のいずれの方向とも同一とされていなくてもよい。この場合には、スタイラス304の軸方向Oに直交する平面(
図11(C)では、X方向の矢印で示された平面)上でプロープ特性を対称に補正することができる。
【0078】
また、本実施形態では、校正基準体240が、球形状の基準球とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、校正基準体は、円柱、角柱、多角柱、そして、これらの柱中央に凹部を備えるような構成であってもよい。