【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂組成物およびこれを含む個人衛生吸収用品についてより詳細に説明する。ただし、これは発明の一例として提示されるもので、これによって発明の権利範囲が限定されるものではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0016】
追加的に、本明細書全体において、特別な言及がない限り、「含む」または「含有する」とは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なく含むことを指し示し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くと解釈されない。
【0017】
本発明者らは、初期吸水性に優れ、長時間経過後にも加圧状態で水分がほとんど滲み出ることなく吸水能に優れた高吸水性樹脂組成物および個人衛生吸収用品に対する研究を繰り返す過程で、所定の水酸化アルミニウム粉末を表面処理することによって、加圧下で吸水能(AUP)の低下が最小化され、かつ、優れた通液性およびケーキング防止特性を付与できることを確認し、本発明を完成した。
【0018】
そこで、発明の一実施形態によれば、加圧吸水能(AUP)の低下なしに水の通液性を向上させると同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有する高吸水性樹脂組成物が提供される。本発明の高吸水性樹脂組成物は、高吸水性樹脂および水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の表面に付着したものである。
【0019】
特に、本発明の高吸水性樹脂組成物は、後述するように、特定の水酸化アルミニウム粒子を用いて高吸水性樹脂の表面をコーティングすることによって、ケーキング防止効果および透過性が向上し、かつ、加圧下で吸水能(AUP)の低下が最小化されることを特徴とするものである。
【0020】
以下の明細書において、水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に「付着」しているとは、本発明の高吸水性樹脂組成物に含まれている水酸化アルミニウム粒子の約70重量%、あるいは約90重量%以上が、前記高吸水性樹脂粒子の表面に固定され、前記組成物中において高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在しないことを指すことができる。これは、水酸化アルミニウム粒子が高吸水性樹脂粒子と単純「混合」され、組成物中において水酸化アルミニウム粒子の大部分、例えば、約50重量%以上が高吸水性樹脂粒子と物理的に分離された状態で存在する状態と区分される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂組成物は、粒子形態を有するもので、特定の水酸化アルミニウム粉末と高分子樹脂粒子とを含むことができる。
【0022】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物は、所定の粒子サイズを有する水酸化アルミニウム粒子を用いて、保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性を向上させることができる。
【0023】
このような本発明の高吸水性樹脂組成物は、遠心分離保水能(CRC)、および加圧吸水能(AUP)を全て同時に最適化する複合的な物性の結合により、シナジー効果を提供することができる。これによって、本発明の高吸水性樹脂組成物は、優れた物性と心地よい着用感を誘導することができる。
【0024】
前記高吸水性樹脂組成物は、生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上であり、生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が10g/g以上であってもよい。
【0025】
前記高吸水性樹脂組成物において、生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)は、下記計算式1により示すものになってもよい。
【0026】
【数1】
【0027】
前記計算式1において、W
0(g)は、吸水性樹脂組成物の重量(g)であり、W
1(g)は、吸水性樹脂組成物を使用せず、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した装置の重量であり、W
2(g)は、常温で0.9質量%の生理食塩水に吸水性樹脂組成物を30分間浸水後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に、吸水性樹脂組成物を含めて測定した装置の重量である。
【0028】
前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)は、25g/g以上、好ましくは28g/g以上、より好ましくは30g/g以上になってもよい。
【0029】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物において、前記生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)は、下記計算式2で示すものであってもよい。
【0030】
【数2】
【0031】
前記計算式2において、W
0(g)は、吸水性樹脂組成物の重量(g)であり、W
1(g)は、吸水性樹脂組成物の重量および前記吸水性樹脂組成物に荷重を付与できる装置の重量の総和であり、W
2(g)は、荷重(0.7psi)下で1時間前記吸水性樹脂組成物に水分を供給した後の水分が吸収された吸水性樹脂組成物の重量および前記吸水性樹脂組成物に荷重を付与できる装置の重量の総和である。
【0032】
前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)は、10g/g以上、好ましくは15g/g以上、より好ましくは20g/g以上になってもよい。
【0033】
本発明において、前記計算式1および2に記載のW
0(g)は、それぞれの物性値に適用した吸水性樹脂の重量(g)に相当するもので、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0034】
本発明において、前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP、Free Swell Gel Bed Permeability)は、10darcy以上、好ましくは20darcy以上、より好ましくは25darcy以上になってもよい。ここで、1ダルシー(darcy)は、粘度が1センチポアズの1立方センチメートルの流体が、固体の2つの面の間の圧力差が1気圧の場合、1センチメートルの厚さおよび1平方センチメートルの断面積を通して、1秒で流れる固体の透過度である。また、1ダルシーは、約0.98692×10
-12m
2または約0.98692×10
-8cm
2と等しい。
【0035】
一方、本発明の高吸水性樹脂組成物は、高吸水性樹脂と共に、特定の粒子サイズを有する水酸化アルミニウム粒子を含むことを特徴とする。前記水酸化アルミニウムは、不溶性特徴を有し、高吸水性樹脂の表面に分散して固着しているため、高吸水性樹脂が互いに凝集されるのを防止してケーキング防止効果および通液性を向上させることができる。このような水酸化アルミニウムは、水に溶けず、高吸水性樹脂と反応しない無機物に相当する。特に、水酸化アルミニウムは、ケーキング防止剤として主に使用されるシリカ対比の比重が約40倍高く、平均粒度が大きくて表面をコーティングする程度が相対的に小さく、加圧下で吸水能の低下が最小化できる。
【0036】
前記水酸化アルミニウムの平均粒子サイズは、2μm〜50μm、好ましくは5μm〜40μm、より好ましくは7μm〜20μmになってもよい。前記水酸化アルミニウム粒子は、加圧吸水能(AUP)の低下を最少化する側面から、5μm以上の平均粒子サイズを有するとよい。さらに、前記水酸化アルミニウム粒子は、高吸水性表面によく固着させて微粉の含有量の増加およびケーキング防止効果を与えるために、50μm以下の平均粒子サイズを有してもよい。
【0037】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物は、水酸化アルミニウムを処理した高吸水性樹脂に追加的にシリカを極めて少量処理することによって、追加的な自由膨潤ゲル層透過度(GBP)の向上が可能である。前記水酸化アルミニウムが高吸水性樹脂の表面に付着したものである高吸水性樹脂組成物100重量部に対して、シリカ0.1重量部以下が追加的に表面に付着したものであってもよい。前記シリカは、好ましくは、水酸化アルミニウムを処理した高吸水性樹脂に、0.05重量部以下で表面にコーティング処理されてもよい。この時、前記高吸水性樹脂組成物の生理食塩水に対する自由膨潤ゲル層透過度(GBP)は、65darcy以上、好ましくは70darcy以上、好ましくは75darcy以上になってもよい。
【0038】
前記高吸水性樹脂組成物はさらに、優れた加圧吸水能(AUP)および通液性と共に、優れた吸水速度(vortex)を有する。前記高吸水性樹脂組成物の吸水速度(vortex)は、58秒以下または5秒〜58秒、好ましくは53秒以下、より好ましくは50秒以下になってもよい。
【0039】
本発明の高吸水性樹脂組成物は、上述のように、長時間経過後にも加圧状態で水分がほとんど滲み出ない加圧吸水能(AUP)の低下なしに水の通液性および吸水速度(vortex)を向上させると同時に、優れたケーキング防止特性を有する。前記高吸水性樹脂組成物のケーキング防止効率(A/C、Anti−caking)は、下記計算式3で示すものであってもよい。
【0040】
【数3】
【0041】
前記計算式3において、W
5(g)は、高吸水性樹脂組成物の重量(g)であり、W
6(g)は、直径10cmのフラスコ皿に均等に塗布した後、温度40±3℃、湿度70±3%の水準を維持する恒温恒湿チャンバー内で10分間維持させた後、フィルターペーパーにフラスコ皿をひっくり返して3回軽くタッピング(tapping)後、高吸水性樹脂が落ちる吸水性樹脂組成物の重量である。
【0042】
前記高吸水性樹脂組成物のケーキング防止効率(A/C、Anti−caking)は、30%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上になってもよい。
【0043】
一方、本発明において、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などとそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在は、幼児用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂は、遠心分離保水能(CRC)、および加圧吸水能(AUP)、通液性(GBP)を全て同時に最適化する複合的な物性の結合により、シナジー効果を提供することができる。ここで、前記高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)、および加圧吸水能(AUP)、通液性(GBP)は、前記組成物について上述のような同一またはそれを上回る程度を示すことができる。
【0045】
また、本発明の高吸水性樹脂組成物は、例えば、
図1の走査電子顕微鏡(SEM)写真に示されているように、本発明によれば、水酸化アルミニウムはよく分散して高吸水樹脂の表面に固くくっついていることを確認することができる。反面、
図2の走査電子顕微鏡(SEM)写真に示されているように、シリカを混合した場合は、シリカが塊の形態で一部が高吸水樹脂と分離された状態であることを観察することができる。このような側面から、本発明の高吸水性樹脂組成物は、150μm未満の粒度分布比率において、ベースポリマーの高吸水性樹脂と比較して同一または減少する特性を有する。
【0046】
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2〜8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた架橋重合体を含むことができる。
【0047】
また、前記架橋重合体の架橋密度は、前記加圧吸水能(AUP)の数値に影響を及ぼす要素になり得ることから、本発明に係る方法によりベース樹脂を表面架橋させることが好ましい。
【0048】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0049】
本発明の高吸水性樹脂組成物は、上述のように、保水能と加圧吸水能などの物性を低下することなく向上した通液性を有することができ、これと同時に、高温多湿環境においてケーキング防止特性を有して保管安定性に優れた特性を有する。特に、代表的なケーキング防止剤として知られたシリカの場合、0.1%未満の極めて少ない量を添加時にも20%以上の加圧吸水能(AUP)の低下が現れ、工程上で比重の差による分離、極微粉の粉塵の発生によるフィルター吸着など、添加量が消失しながらケーキング防止効果が低減される問題がある。しかし、本発明により、水酸化アルミニウムを、例えば、3%以上添加時にも加圧吸水能(AUP)の低下は10%以内に限られ、工程上の消失の危険がなく、含有量の変化に対する性能が安定して高吸水性樹脂の製造が便利であり、高い品質安定性の確保が可能である。
【0050】
また、本発明の一実施形態によれば、水酸化アルミニウムを高吸水性樹脂に付着させる方法として、乾式混合のほか、多様な方法で適用可能である。例えば、表面処理液に分散する方法、ベースポリマーと乾式混合した後に表面処理する方法、表面処理液と同時に投入する方法、水酸化アルミニウムスラリーで処理する方法が全て可能である。高吸水性樹脂が少量の水と接触した時に発生する粘性によって固着するものであるため、様々な方法で全て実現が可能である。シリカもすべての方法で処理が可能であり、乾式以外の方法で処理時には、ケーキング防止効果が低下し、特にメタノールのような低価アルコールと接触する組成および工程においてはケーキング防止効果が全く現れず、いずれの方法であれ、少量の添加でもAUPが過度に低下するという欠点がある。
【0051】
一方、発明の他の実施形態によれば、上述のような高吸水性樹脂組成物を含む個人衛生吸収用品が提供される。本発明の個人衛生吸収用品は、高吸水性樹脂組成物、液体透過性上部シート、および防水性背面シートを含むことができる。
【0052】
本発明に係る個人衛生吸収用品において、高吸水性樹脂組成物は、上述のような特性を有するもので、高吸水性樹脂および水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムは、高吸水性樹脂の表面に付着したものである。
【0053】
前記液体透過性上部シートは、通常、感触が柔らかく、着用者の皮膚に刺激を与えないもので構成され、特に、上部シートは、液状の体分泌物が吸収体に速かに通過できる物性を有するものでなければならない。このような物性を有するものとして適した上部シートは、気孔プラスチックフィルム、天然繊維、合成繊維、または天然および合成繊維の混合物のような広範囲な物質から製造されて使用できる。
【0054】
また、防水性背面シートは、液体に対して不透過性であるので、吸収体に吸収されて含まれる体分泌物が、着用者の衣服やベッドシートなどのような、おむつと直接接触する製品を汚したり濡らさないようにする。前記背面シートは、液体に対しては不透過性であり、気体に対しては透過性であることが好ましい。このような物性を有するものとして、通常プラスチックフィルムが使用されてきており、最近は、ポリエチレンフィルムに不織布を接着した素材を用いることができる。
【0055】
本発明において、前記記載された内容以外の事項は、必要に応じて加減が可能なものであるので、本発明では特に限定しない。