(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦低減剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、金属不活性化剤及び消泡剤から選択される1種又は2種以上の化合物を、前記潤滑基油100質量部に対して0.001〜40質量部含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本明細書中では、潤滑用基油としても使用可能であり、潤滑用添加剤としても使用可能である化合物及び化合物群を「多機能潤滑剤組成物」と呼ぶこととする。
本発明の多機能潤滑剤組成物は、下記の一般式(1)で表されるリン化合物(A)100質量部に対して、下記の一般式(2)で表されるリン化合物(B)を26〜43質量部、下記の一般式(3)で表されるリン化合物(C)を0〜1.3質量部、トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェートを合計で0〜1.3質量部含有することを特徴とする多機能潤滑剤組成物である。
【0019】
(式中、R
1は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R
2は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。ただし、R
1がメチル基の場合は、R
2は水素原子にはならない。)
【0021】
(式中、R
5及びR
7はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R
6及びR
8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R
9は、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R
5がメチル基の場合は、R
6は水素原子にはならず、R
7がメチル基の場合は、R
8は水素原子にはならない。)
【0023】
(式中、R
10、R
12及びR
14はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R
11、R
13及びR
15は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。ただし、R
10がメチル基の場合は、R
11は水素原子にはならず、R
12がメチル基の場合は、R
13は水素原子にはならず、R
14がメチル基の場合は、R
15は水素原子にはならない。)
【0024】
一般式(1)において、R
1は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R
2は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。ただし、R
1がメチル基の場合は、R
2は水素原子にはならない。R
1及びR
2がとりうる炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、分岐ペンチル基、第2級ペンチル基、第3級ペンチル基、n−ヘキシル基、分岐ヘキシル基、第2級ヘキシル基、第3級ヘキシル基、n−ヘプチル基、分岐ヘプチル基、第2級ヘプチル基、第3級ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、分岐オクチル基、第2級オクチル基、第3級オクチル基、n−ノニル基、分岐ノニル基、第2級ノニル基、第3級ノニル基、n−デシル基、分岐デシル基、第2級デシル基、第3級デシル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられ、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基(これらの基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、1級でも2級でも3級でもよい。)等の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ジュリル基、チミル基、カルバクリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、スチレン化フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等の芳香族炭化水素基が挙げられ、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、ペンチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、シクロペンテニル基、メチルシクロペンテニル基、エチルシクロペンテニル基、プロピルシクロペンテニル基、ブチルシクロペンテニル基、ペンチルシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロヘキセニル基、エチルシクロヘキセニル基、プロピルシクロヘキセニル基、ブチルシクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、メチルシクロヘプテニル基、エチルシクロヘプテニル基、プロピルシクロヘプテニル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。
【0025】
この中でも、R
1が炭素数2〜8の炭化水素基で、R
2〜R
4が全て水素原子である化合物が好ましく、R
1がパラ位に付いた炭素数2〜8の脂肪族炭化水素基で、R
2〜R
4が全て水素原子である化合物がより好ましく、R
1がパラ位に付いた炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基で、R
2〜R
4が全て水素原子である化合物が更に好ましく、R
1がパラ位に付いたt−ブチル基で、R
2〜R
4が全て水素原子である化合物が最も好ましい。
なお、上記「パラ位」とは、リン化合物(A)のリン原子に結合する酸素原子がベンゼン環へ結合する位置に対する位置である。
【0026】
一般式(2)において、R
5及びR
7はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R
6及びR
8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。ただし、R
5がメチル基の場合は、R
6は水素原子にはならず、R
7がメチル基の場合は、R
8は水素原子にはならない。R
5〜R
8がとりうる炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、分岐ペンチル基、第2級ペンチル基、第3級ペンチル基、n−ヘキシル基、分岐ヘキシル基、第2級ヘキシル基、第3級ヘキシル基、n−ヘプチル基、分岐ヘプチル基、第2級ヘプチル基、第3級ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、分岐オクチル基、第2級オクチル基、第3級オクチル基、n−ノニル基、分岐ノニル基、第2級ノニル基、第3級ノニル基、n−デシル基、分岐デシル基、第2級デシル基、第3級デシル基の脂肪族炭化水素基が挙げられ、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基(これらの基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、1級でも2級でも3級でもよい)等の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ジュリル基、チミル基、カルバクリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、スチレン化フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等の芳香族炭化水素基が挙げられ、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、ペンチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、シクロペンテニル基、メチルシクロペンテニル基、エチルシクロペンテニル基、プロピルシクロペンテニル基、ブチルシクロペンテニル基、ペンチルシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロヘキセニル基、エチルシクロヘキセニル基、プロピルシクロヘキセニル基、ブチルシクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、メチルシクロヘプテニル基、エチルシクロヘプテニル基、プロピルシクロヘプテニル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、R
9は、水素原子又はメチル基を表す。
【0027】
この中でも、R
5及びR
7が炭素数2〜8の炭化水素基で、R
6、R
8及びR
9が全て水素原子である化合物が好ましく、R
5及びR
7がパラ位に付いた炭素数2〜8の脂肪族炭化水素基で、R
6、R
8及びR
9が全て水素原子である化合物がより好ましく、R
5及びR
7がパラ位に付いた炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基で、R
6、R
8及びR
9が全て水素原子である化合物が更に好ましく、R
5及びR
7がパラ位に付いたt−ブチル基で、R
6、R
8及びR
9が全て水素原子である化合物が最も好ましい。
なお、上記「パラ位」とは、リン化合物(B)のリン原子に結合する酸素原子がベンゼン環へ結合する位置に対する位置である。
【0028】
一般式(3)において、R
10、R
12及びR
14はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R
11、R
13及びR
15は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。ただし、R
10がメチル基の場合は、R
11は水素原子にはならず、R
12がメチル基の場合は、R
13は水素原子にはならず、R
14がメチル基の場合は、R
15は水素原子にはならない。R
10、R
12及びR
14がとりうる炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、分岐ペンチル基、第2級ペンチル基、第3級ペンチル基、n−ヘキシル基、分岐ヘキシル基、第2級ヘキシル基、第3級ヘキシル基、n−ヘプチル基、分岐ヘプチル基、第2級ヘプチル基、第3級ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、分岐オクチル基、第2級オクチル基、第3級オクチル基、n−ノニル基、分岐ノニル基、第2級ノニル基、第3級ノニル基、n−デシル基、分岐デシル基、第2級デシル基、第3級デシル基の脂肪族炭化水素基が挙げられ、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基(これらの基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、1級でも2級でも3級でもよい。)等の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ジュリル基、チミル基、カルバクリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、スチレン化フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等の芳香族炭化水素基が挙げられ、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、ペンチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、シクロペンテニル基、メチルシクロペンテニル基、エチルシクロペンテニル基、プロピルシクロペンテニル基、ブチルシクロペンテニル基、ペンチルシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロヘキセニル基、エチルシクロヘキセニル基、プロピルシクロヘキセニル基、ブチルシクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、メチルシクロヘプテニル基、エチルシクロヘプテニル基、プロピルシクロヘプテニル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0029】
この中でも、R
10、R
12及びR
14が炭素数2〜8の炭化水素基で、R
11、R
13及びR
15が全て水素原子である化合物が好ましく、R
10、R
12及びR
14がパラ位に付いた炭素数2〜8の脂肪族炭化水素基で、R
11、R
13及びR
15が全て水素原子である化合物がより好ましく、R
10、R
12及びR
14がパラ位に付いた炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基で、R
11、R
13及びR
15が全て水素原子である化合物が更に好ましく、R
10、R
12及びR
14がパラ位に付いたt−ブチル基で、R
11、R
13及びR
15が全て水素原子である化合物が最も好ましい。
なお、上記「パラ位」とは、リン化合物(C)のリン原子に結合する酸素原子がベンゼン環へ結合する位置に対する位置である。
【0030】
なお、一般式(1)〜(3)の化合物の入手、製造の面から、前記R
1、R
5、R
7、R
10、R
12およびR
14は同一の基であることが好ましい。また、この場合において、R
1、R
5、R
7、R
10、R
12及びR
14がパラ位に付いた炭素数2〜8の炭化水素基で、R
2〜R
4、R
6、R
8、R
9、R
11、R
13及びR
15が全て水素原子である化合物がより好ましく、R
1、R
5、R
7、R
10、R
12及びR
14がパラ位に付いた炭素数2〜5の炭化水素基で、R
2〜R
4、R
6、R
8、R
9、R
11、R
13及びR
15が全て水素原子である化合物が更に好ましく、R
1、R
5、R
7、R
10、R
12及びR
14がパラ位に付いたt−ブチル基で、R
2〜R
4、R
6、R
8、R
9、R
11、R
13及びR
15が全て水素原子である化合物が最も好ましい。
【0031】
本発明品は、一般式(1)で表されるリン化合物(A)、一般式(2)で表されるリン化合物(B)、一般式(3)で表されるリン化合物(C)、トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェートからなる混合物であり、潤滑用基油としても使用可能であり、潤滑用添加剤としても使用可能である多機能潤滑剤組成物である。本発明の多機能潤滑剤組成物を、潤滑用基油として用いる場合は、耐熱性が良好であるため、難燃性潤滑用基油として用いることが好ましい。また、潤滑用添加剤として用いる場合は、耐摩耗性に優れていることから、潤滑用摩耗防止剤(耐摩耗剤)として用いることが好ましい。また、加水分解安定性が良好であるため、水分混入の可能性が高い潤滑基油用途、潤滑用添加剤用途にも使用可能である。
【0032】
本発明品は、リン化合物(A)、リン化合物(B)、リン化合物(C)、トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェートの混合比が、リン化合物(A)100質量部に対して、リン化合物(B)が26〜43質量部、リン化合物(C)が0〜1.3質量部、トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェートが合計で0〜1.3質量部である。リン化合物(B)が26質量部未満であると、油への溶解性が悪化するため、潤滑用添加剤としての使用が困難となる場合がある。逆に、43質量部を超えると、高粘度になりすぎて、難燃性潤滑用基油として非常に使いにくくなる場合がある。リン化合物(C)に関しては、1.3質量部を超えると、リン化合物(B)以上に粘度上昇を引き起こす場合がある。
【0033】
トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェートに関しては、これら化合物自体の毒性が高く、平成21年、PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)第一種指定化学物質に指定されたことから、両者合計で0〜1.0質量部であることが好ましく、0〜0.5質量部であることがより好ましく、含有しないことが最も好ましい。1.3質量部を超えると、自然環境の保全に支障を来す場合がある。また、水が混在する可能性がある場面で使用する場合は、トリフェニルホスフェートの含有量が多いと、本発明の多機能潤滑剤組成物の加水分解性が上がる可能性がある。具体的には、0〜1.0質量部であることが好ましく、0〜0.5質量部であることがより好ましく、含有しないことが最も好ましい。すなわち、難燃性潤滑用基油としても潤滑用摩耗防止剤としても使用可能である多機能潤滑剤組成物であるためには、リン化合物(A)〜(C)、トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェートの組成比(バランス)が非常に重要であり、この組成比(バランス)が崩れると、難燃性潤滑用基油としての機能若しくは潤滑用耐摩耗剤としての機能のどちらか一方若しくは両方が失われる場合がある。
【0034】
本発明の多機能潤滑剤組成物は、その製造方法に特に制限はなく、公知の製造方法で製造したものであれば問題はない。例えば、リン化合物(A)100質量部に対して、リン化合物(B)が26〜43質量部、リン化合物(C)が0〜1.3質量部、トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェートが合計で0〜1.3質量部含有する組成物を、原料の仕込み比を調整することにより一段階で合成したものであっても問題はなく、また、リン化合物(A)のみ、リン化合物(B)のみ、リン化合物(C)のみを個々に製造し、それを配合することによって得られた組成物であっても問題はない。
【0035】
本発明の多機能潤滑剤組成物を得る一例として以下の方法が挙げられる。
< 方法1 >
まず、クロロリン酸ジフェニル及び/又はクロロリン酸ジクレジルに、適切な触媒存在下かつ窒素雰囲気下で、1つの置換基を有するフェノール化合物(1種以上)及び/又は1つの置換基を有するクレゾール化合物(1種以上)を反応させ、一般式(1)で表されるリン化合物(A)を得る。次に、ジクロロリン酸フェニル及び/又はジクロロリン酸クレジルに、適切な触媒存在下かつ窒素雰囲気下で、1つの置換基を有するフェノール化合物(1種以上)及び/又は1つの置換基を有するクレゾール化合物(1種以上)を反応させ、一般式(2)で表されるリン化合物(B)を得る。続いて、オキシ塩化リンに、適切な触媒存在下かつ窒素雰囲気下で、1つの置換基を有するフェノール化合物(1種以上)及び/又は1つの置換基を有するクレゾール化合物(1種以上)を反応させ、一般式(3)で表されるリン化合物(C)を得る。上記反応では、それぞれ、反応系中に存在する塩酸等を減圧して除去することが好ましい。反応後に反応系を減圧してもよく、反応中に、連続的に、断続的にもしくは一時的に減圧してもよい。最後に、得られたリン化合物(A)100質量部に対して、リン化合物(B)を26〜43質量部、リン化合物(C)を0〜1.3質量部含有するよう配合し、本発明の多機能潤滑材料組成物を得る。
【0036】
< 方法2 >
まず、オキシ塩化リンに、適切な触媒の存在下かつ窒素雰囲気下で、1つの置換基を有するフェノール化合物(1種以上)及び/又は1つの置換基を有するクレゾール化合物(1種以上)を加え、反応させ、その後、同一系内に、フェノール及び/又はクレゾールを加え、反応させ、本発明の多機能潤滑剤組成物を得る。
この時、オキシ塩化リン1モルに対して、該フェノール化合物及び/又は該クレゾール化合物を総量で、1.1モル〜1.3モル、好ましくは1.18モル〜1.28モル添加する。また、フェノール及び/又はクレゾールは、総量で、オキシ塩化リン1モルに対して、1.7モル〜1.9モル、好ましくは1.72モル〜1.82モル添加する。ここで、1種以上の1つの置換基を有するフェノール及び/又は1種以上の1つの置換基を有するクレゾールを反応に使用する場合は、一括してオキシ塩化リンに加えてもよく、反応状況を考慮して分割して加えてもよい。また、反応系中に存在する塩酸等を減圧して除去することが好ましい。反応後に反応系を減圧してもよく、反応中に、連続的に、断続的にもしくは一時的に減圧してもよい。
【0037】
ここで、前記「1つの置換基を有するフェノール化合物」とは、一般式(1)〜(3)の化合物のうち、R
1、R
5、R
7、R
10、R
12およびR
14に対応する置換基を有し、R
2、R
6、R
8、R
11、R
13、R
15が水素原子である化合物を指す。また、「1つの置換基を有するクレゾール化合物」とは、一般式(1)〜(3)の化合物のうち、R
1、R
5、R
7、R
10、R
12およびR
14に対応する置換基を有し、R
2、R
6、R
8、R
11、R
13、R
15がメチル基である化合物を指す。当該フェノール化合物に該当する化合物として、例えば、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、n−オクチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール等のアルキルフェノール;エテニルフェノール、プロペニルフェノール、ブテニルフェノール、ペンテニルフェノール、ヘキセニルフェノール、ヘプテニルフェノール、オクテニルフェノール等のアルケニルフェノール;フェニルフェノール、トリルフェノール、キシリルフェノール、クメニルフェノール、メシチルフェノール、ベンジルフェノール、フェネチルフェノール等の芳香環を有する基を持つフェノール;シクロペンチルフェノール、アルキルシクロペンチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、アルキルシクロヘキシルフェノール等のシクロ環を有する基を持つフェノール等が挙げられる。中でも、アルキルフェノール、アルケニルフェノールが好ましく、アルキルフェノールが最も好ましい。なお、当該アルキルフェノールのアルキル基は、通常炭素数1〜10のアルキル基であり、炭素数2〜5のアルキル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましく、フェノールの水酸基に対してパラ位に位置するt−ブチル基が最も好ましい。
【0038】
また、当該クレゾール化合物に該当する化合物として、例えば、エチルクレゾール、n−プロピルクレゾール、イソプロピルクレゾール、n−ブチルクレゾール、t−ブチルクレゾール、ペンチルクレゾール、ヘキシルクレゾール、ヘプチルクレゾール、n−オクチルクレゾール、2−エチルヘキシルクレゾール等のアルキルクレゾール;エテニルクレゾール、プロペニルクレゾール、ブテニルクレゾール、ペンテニルクレゾール、ヘキセニルクレゾール、ヘプテニルクレゾール、オクテニルクレゾール等のアルケニルクレゾール;フェニルクレゾール、トリルクレゾール、キシリルクレゾール、クメニルクレゾール、メシチルクレゾール、ベンジルクレゾール、フェネチルクレゾール等の芳香環を有する基を持つクレゾール;シクロペンチルクレゾール、アルキルシクロペンチルクレゾール、シクロヘキシルクレゾール、アルキルシクロヘキシルクレゾール等のシクロ環を有する基を持つクレゾール等が挙げられる。中でも、アルキルクレゾール、アルケニルクレゾールが好ましく、アルキルクレゾールが最も好ましい。なお、当該アルキルクレゾールのアルキル基は、通常炭素数1〜10のアルキル基であり、炭素数2〜5のアルキル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましく、クレゾールの水酸基に対してパラ位に位置するt−ブチル基が最も好ましい。
【0039】
なお、反応操作の利便性を考慮すると、当該フェノール化合物もしくはクレゾール化合物は1種のみ使用することが好ましい。
また、本発明の多機能潤滑剤組成物は上記記載した方法1を用いて得ても、方法2を用いて得てもよいが、簡便かつ短時間で得られることから方法2で得る方が好ましい。
【0040】
ここで、本発明の多機能潤滑剤組成物を難燃性潤滑用基油として用いる場合、基油として求められる粘度の範囲は40℃の動粘度において30〜55mm
2/sの範囲が好ましい。これは、30mm
2/s未満であると潤滑基油として機能しなくなる場合があり、油温上昇時の油膜切れ(油膜が薄くなるため)等が起こりやすくなる場合がある。また、55mm
2/sを超えると、基油としては粘度が高すぎて使用しにくい場合があり、具体的には、基油は使用量が多いため、粘度が高すぎるとハンドリングが悪く、容器から取り出す工程が困難(必要に応じて加熱等の処置を行わなければならない)となる場合がある。また、低粘度の基油に比べ、ロス(容器に残存してしまう量)も多くなる場合があり、寒冷地域では温暖な気候の地域に比べ、より扱いが困難となる場合もある。更には、攪拌するのに大きな機械力が必要となる上、その他添加剤等を溶解させる際、手間(加熱処理等)と時間が必要以上にかかる場合があり、また、攪拌する際、泡をかむ可能性も高まるため、この泡の影響で空気との接触面積が増え、劣化を促進させる場合もある。
【0041】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の基油と併用して使用してもよく、具体的には、使用目的や使用条件に応じて適宜、鉱物基油、化学合成基油、動植物基油から選ばれ、これらの各種基油は、一種を組み合わせて用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0042】
本発明の多機能潤滑剤組成物を、難燃性潤滑用基油として用いる場合、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、公知の潤滑用添加剤を使用目的に応じて適宜使用することが可能である。本発明の多機能潤滑剤組成物100質量部に対して、本発明の多機能潤滑剤組成物以外の摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦低減剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、耐荷重添加剤、消泡剤、金属不活性化剤、乳化剤、抗乳化剤及びかび防止剤等から選択される1種又は2種以上の化合物を0.001〜40質量部含有することが好ましい。
【0043】
本発明の多機能潤滑剤組成物は、難燃性潤滑用基油として用いた場合、潤滑用添加剤としての摩耗防止剤効果もまた発揮するが、その他の摩耗防止剤を併用してもよい。本発明の多機能潤滑剤組成物以外の摩耗防止剤若しくは極圧剤としては、例えば、硫化油脂、オレフィンポリスルフィド、硫化オレフィン、ジベンジルスルフィド、エチル−3−[[ビス(1−メチルエトキシ)フォスフィノチオイル]チオ]プロピオネート、トリス−[(2又は4)−イソアルキルフェノール]チオフォスフェート、3−(ジ−イソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチル−プロピオン酸、トリフェニルフォスフォロチオネート、β−ジチオホスフォリル化プロピオン酸、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメイト)、O,O−ジイソプロピル−ジチオフォスフォリルエチルプロピオネート、2,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブタンチオ)1,3,4−チアジアゾール及び2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール等の硫黄系添加剤;モノオクチルフォスフェート、ジオクチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、モノブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、モノフェニルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、モノイソプロピルフェニルフォスフェート、ジイソプロピルフェニルフォスフェート、トリイソプロピルフェニルフォスフェート、トリフェニルチオフォスフェート、モノオクチルフォスファイト、ジオクチルフォスファイト、トリオクチルフォスファイト、モノブチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、トリブチルフォスファイト、モノフェニルフォスファイト、ジフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、モノイソプロピルフェニルフォスファイト、ジイソプロピルフェニルフォスファイト、トリイソプロピルフェニルフォスファイト、モノ−tert−ブチルフェニルフォスファイト、ジ−tert−ブチルフェニルフォスファイト及びトリ−tert−ブチルフェニルフォスファイト等のリン系化合物;一般式(4)で表されるジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオリン酸金属塩(Sb,Mo等)、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn,Sb,Mo等)、ナフテン酸金属塩、脂肪酸金属塩、リン酸金属塩、リン酸エステル金属塩及び亜リン酸エステル金属塩等の有機金属化合物;その他、ホウ素化合物、モノ及びジヘキシルフォスフェートのアルキルアミン塩、リン酸エステルアミン塩及びトリフェニルチオリン酸エステルとtert−ブチルフェニル誘導体の混合物等が挙げられる。
【0045】
(式中、R
16〜R
19は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の第1級アルキル基、第2級アルキル基又はアリール基を表す。)
【0046】
一般式(4)において、R
16〜R
19は、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表し、こうした基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基等の1級アルキル基;2級プロピル基、2級ブチル基、2級ペンチル基、2級ヘキシル基、2級ヘプチル基、2級オクチル基、2級ノニル基、2級デシル基、2級ウンデシル基、2級ドデシル基、2級トリデシル基、2級テトラデシル基、2級ペンタデシル基、2級ヘキサデシル基、2級ヘプタデシル基、2級オクタデシル基、2級ノナデシル基及び2級イコシル基等の2級アルキル基;3級ブチル基、3級ペンチル基、3級ヘキシル基、3級ヘプチル基、3級オクチル基、3級ノニル基、3級デシル基、3級ウンデシル基、3級ドデシル基、3級トリデシル基、3級テトラデシル基、3級ペンタデシル基、3級ヘキサデシル基、3級ヘプタデシル基、3級オクタデシル基、3級ノナデシル基、及び3級イコシル基等の3級アルキル基;分岐プロピル基(イソプロピル基等)、分岐ブチル基(イソブチル基等)、分岐ペンチル基(イソペンチル基等)、分岐ヘキシル基(イソヘキシル基)、分岐ヘプチル基(イソヘプチル基)、分岐オクチル基(イソオクチル基、2−エチルヘキシル基等)、分岐ノニル基(イソノニル基等)、分岐デシル基(イソデシル基等)、分岐ウンデシル基(イソウンデシル基等)、分岐ドデシル基(イソドデシル基等)、分岐トリデシル基(イソトリデシル基等)、分岐テトラデシル基(イソテトラデシル基)、分岐ペンタデシル基(イソペンタデシル基等)、分岐ヘキサデシル基(イソヘキサデシル基)、分岐ヘプタデシル基(イソヘプタデシル基等)、分岐オクタデシル基(イソオクタデシル基等)、分岐ノナデシル基(イソノナデシル基等)、及び分岐イコシル基(イソイコシル基等)等の分岐アルキル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基及びベンジルフェニル基等のアリール基が挙げられる。これら摩耗防止剤の好ましい配合量は、基油に対して0.01〜3質量%、より好ましくは0.05〜2質量%である。
【0047】
摩擦調整剤としては、例えば、オレイルアルコール、ステアリルアルコール及びラウリルアルコール等の高級アルコール類;オレイン酸、ステアリン酸及びラウリン酸等の脂肪酸類;オレイン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、アルキルグリセリルエステル、アルケニルグリセリルエステル、アルキニルグリセリルエステル、エチレングリコールオレイン酸エステル、エチレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールラウリン酸エステル、プロピレングリコールオレイン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル及びプロピレングリコールラウリン酸エステル等のエステル類;オレイルアミド、ステアリルアミド、ラウリルアミド、アルキルアミド、アルケニルアミド及びアルキニルアミド等のアミド類;オレイルアミン、ステアリルアミン、ラウリルアミン、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン、ココビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、牛脂ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、N−(2−ヒドロキシヘキサデシル)ジエタノールアミン及びジメチル牛脂三級アミン等のアミン類;オレイルグリセリルエーテル、ステアリルグリセリルエーテル、ラウリルグリセリルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、アルケニルグリセリルエーテル及びアルキニルグリセリルエーテル等のエーテル類が挙げられる。これら摩擦調整剤の好ましい配合量は、基油に対して0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%である。
【0048】
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のスルフォネート、フェネート、サリシレート、フォスフェート及びこれらの過塩基性塩等が挙げられる。これらの中でも過塩基性塩が好ましく、過塩基性塩の中でもTBN(トータルベーシックナンバー)が10〜500mgKOH/gのものがより好ましい。これらの金属系清浄剤の好ましい配合量は、基油に対して0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。
【0049】
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤であれば特に制限なく用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体等が挙げられる。具体的には、コハク酸イミド、コハク酸アミド、コハク酸エステル、コハク酸エステル−アミド、ベンジルアミン、ポリアミン、ポリコハク酸イミド及びマンニッヒ塩基等が挙げられ、その誘導体としては、これら含窒素化合物にホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物、チオリン酸、チオリン酸塩等のリン化合物、有機酸及びヒドロキシポリオキシアルキレンカーボネート等を作用させたもの等が挙げられる。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下する場合があり、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化する場合がある。これらの無灰分散剤の好ましい配合量は、基油に対して0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。
【0050】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(以下、tert−ブチルをt−ブチルと略記する。)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4 −エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2− メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6− ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3, 5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t −ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5− ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールジエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールジエステル、4,4’−チオビス(3−メチル−6− t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル−ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t− ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3− (3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4− ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t− ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘプチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ノニル−3−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、[3,5−ビス(1,1−ジメチル-エチル)−4−ヒドロキシ]ベンゼンプロピオン酸C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4,8−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイルビス(2−メチルプロパン−2,1−ジイル)ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−リン酸ジエステル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2 −メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルアルキルエステル及びビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等のフェノール系酸化防止剤;
【0051】
1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、N−ナフチル−(1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニル)−1−アミン、アルキルフェニル−1−ナフチルアミン、p−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ノニルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミン及びフェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;N,N’−ジイソプロピル− p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p− フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジオクチル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン及びフェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系酸化防止剤;ジピリジルアミン、ジフェニルアミン、ジアルキルフェニルアミン、ビス(4−n−ブチルフェニル)アミン、ビス(4−t−ブチルフェニル)アミン、ビス(4−n−ペンチルフェニル)アミン、ビス(4−t−ペンチルフェニル)アミン、ビス(4−n−オクチルフェニル)アミン、ビス(4−(2−エチルヘキシル)フェニル)アミン、ビス(4−ノニルフェニル)アミン、ビス(4−デシルフェニル)アミン、ビス(4−ドデシルフェニル)アミン、ビス(4−スチリルフェニル)アミン、ビス(4−メトキシフェニル)アミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチルベンゾイル)ジフェニルアミン、p−イソプロポキシジフェニルアミン、ジピリジルアミン及びN−フェニルベンゼンアミンと2,2,4−トリメチルペンテンの反応生成物等のジフェニルアミン系酸化防止剤;フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、フェノチアジンカルボン酸エステル及びフェノセレナジン等のフェノチアジン系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい配合量は、基油に対して0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜4質量%である。
【0052】
摩擦低減剤としては、例えば、下記一般式(5)で表される硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、一般式(6)で表される硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート及び一般式(7)で表されるジアルキルアミンと5価又は6価のモリブデン原子を有する化合物との反応物等の有機モリブデン化合物が挙げられる。
【0054】
(式中、R
20〜R
23は、それぞれ独立して炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、X
1〜X
4は硫黄原子又は酸素原子を表す。)
【0056】
(式中、R
24〜R
27は、それぞれ独立して炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、X
5〜X
8は硫黄原子又は酸素原子を表す。)
【0058】
(式中、R
28及びR
29は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表すが、同時に水素原子であることはない。)
【0059】
一般式(5)において、R
20〜R
23は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、こうした基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基(これらの基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、1級でも2級でも3級でもよい。)等の飽和脂肪族炭化水素基;エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基(これらの基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、1級でも2級でも3級でもよい。)等の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等の芳香族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、メチルシクロヘプテニル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。一般式(6)のR
24〜R
27、一般式(7)のR
28及びR
29もまた、一般式(5)のR
20〜R
23と同様、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表し、こうした基としては、上記に記載したものと同様のものが挙げられる。これら摩擦低減剤の好ましい配合量は、基油に対してモリブデン含量で30〜2000質量ppm、より好ましくは50〜1000質量ppmである。
【0060】
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(C1〜18)アルキルメタクリレート、(C1〜18)アルキルアクリレート/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、ジメチルアミノエチルメタクリレート/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、エチレン/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体、オレフィンコポリマー(OCP)及びスターポリマー等が挙げられる。或いは、分散性能を付与した分散型若しくは多機能型粘度指数向上剤を用いてもよい。重量平均分子量は10,000〜1,500,000、好ましくは20,000〜500,000程度である。これらの粘度指数向上剤の好ましい配合量は、基油に対して0.1〜20質量%、より好ましくは0.3〜15質量%である。
【0061】
流動点降下剤としては、例えば、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリビニルアセテート等が挙げられ、重量平均分子量は1000〜100,000、好ましくは5000〜50,000程度である。これらの流動点降下剤の好ましい配合量は、基油に対して0.00 5〜3質量%、より好ましくは0.01〜2質量%である。
【0062】
防錆剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、酸化パラフィンワックスカルシウム塩、酸化パラフィンワックスマグネシウム塩、牛脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類アミン塩、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル(アルケニル基の分子量は100〜300程度)、ソルビタンモノエステル、ノニルフェノールエトキシレート及びラノリン脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。これらの防錆剤の好ましい配合量は、基油に対して0.01〜3質量%、より好ましくは0.02〜2質量%である。
【0063】
腐食防止剤、金属不活性化剤としては、例えば、トリアゾール、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール又はこれら化合物の誘導体である、2−ヒドロキシ−N−(1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ベンズアミド、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−[(1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]アミン、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−[(1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]アミン及び2,2’−[[(4又は5又は1)−(2−エチルヘキシル)−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチル]イミノ]ビスエタノール等が挙げられ、他にもビス(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスフィン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、テトラアルキルチウラムジサルファイド、N’1,N’12−ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジハイドラジド、3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)−N’−(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロパノイル)プロパンハイドラジド、テトラプロぺニルコハク酸と1,2−プロパンジオールのエステル化物、ジソディウムセバケート、(4−ノニルフェノキシ)酢酸、モノ及びジヘキシルフォスフェートのアルキルアミン塩、トリルトリアゾールのナトリウム塩及び(Z)−N−メチルN−(1−オキソ9−オクタデセニル)グリシン等が挙げられる。これら腐食防止剤の好ましい配合量は、基油に対して0.01〜3質量%、より好ましくは0.02〜2質量%である。
【0064】
消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、ジメチルシリコーンオイル、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート及びソルビタン部分脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの消泡剤の好ましい配合量は、基油に対して0.001〜0.1質量%、より好ましくは0.001〜0.01質量%である。
【0065】
本発明の多機能潤滑剤組成物を、摩耗防止剤等の潤滑用添加剤として用いる場合、潤滑基油には、本発明の潤滑基油以外の潤滑基油を用いることが好ましい。また、本発明の潤滑用添加剤の配合量は、潤滑基油100質量部に対して、0.01〜6質量部が好ましい。0.01質量部未満であると有効成分が不足し、耐摩耗剤としての効果を発揮しない場合があり、6質量部より多いと基油に対する溶解性が低下し、更には耐摩耗剤としての効果も見られなくなる場合がある。潤滑用添加剤として使用可能であるためには、基油への溶解性が良好であることが好ましく、基油100質量部に対して0.01〜6質量部溶解した際に、白濁等して不溶成分が見られることは好ましくない。
【0066】
また、本発明の多機能潤滑剤組成物を、摩耗防止剤等の潤滑用添加剤として用いる場合、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の添加剤を添加することが出来る。使用可能なその他添加剤としては、本発明の多機能潤滑剤組成物以外の摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦低減剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、耐荷重添加剤、消泡剤、金属不活性化剤、乳化剤、抗乳化剤及びかび防止剤等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上の化合物を0.001〜40質量部含有することが好ましい。また、これら添加剤は、本発明の多機能潤滑剤組成物を、難燃性潤滑用基油として用いる場合に使用可能な、その他添加剤として上記に列挙したものと同一のものである。
【0067】
また、本発明の多機能潤滑剤組成物を、摩耗防止剤等の潤滑用添加剤として用いる場合、使用可能な基油としては特に制限はなく、使用目的や使用条件に応じて適宜、鉱物基油、化学合成基油、動植物基油及びこれらの混合基油等から選ばれる。ここで、鉱物基油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油又はナフテン基系原油を常圧蒸留するか、或いは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油又はこれらを常法に従って精製することによって得られる精製油、具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油及び白土処理油等が挙げられる。化学合成基油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物及びアルキルベンゼン等が挙げられ、これらの中でも、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル及びポリオールエステル等は汎用的に使用することができ、ポリ−α−オレフィンとしては例えば、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン及び1−テトラデセン等をポリマー化又はオリゴマー化したもの、或いはこれらを水素化したもの等が挙げられ、ジエステルとしては例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等の2塩基酸と、2−エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール及びトリデカノール等のアルコールのジエステル等が挙げられ、ポリオールエステルとしては例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトール等のポリオールと、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸等の脂肪酸とのエステル等が挙げられる。動植物基油としては、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油及びヤシ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油及び鯨油等の動物性油脂が挙げられる。上記に挙げたこれらの各種基油は、一種を用いてもよく、二種以上を適宜組み合せて用いてもよい。
【実施例】
【0068】
以下本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0069】
・毒性データ
トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェートを含めた毒性データを下記表1に示す。ここで、ヒメダカ急性毒性96h−LC50mg/Lの値は「生態影響試験結果一覧(平成22年3月版、環境省)」を参考文献として使用し、ニジマス急性毒性96h−LC50mg/Lの値は「国際共通化学情報データベース(International Uniform Chemical Information Data Base)」、「アメリカ合衆国環境保護庁高生産化学物質情報システム」を参考文献として使用している。
【0070】
【表1】
【0071】
表1のトリ−tert−ブチルフェニル系(混合物)とは、トリ−tert−ブチルフェニルホスフェート、ジ−tert−ブチルフェニルホスフェート及びモノ−tert−ブチルフェニルホスフェートの混合物を表すが、これらの配合比は不明である。しかしながら、配合比は違うけれども、トリ−tert−ブチルフェニルホスフェートとは、本発明の多機能潤滑剤組成物中のリン化合物(C)であり、ジ−tert−ブチルフェニルホスフェートとは、本発明の多機能潤滑剤組成物中のリン化合物(B)であり、モノ−tert−ブチルフェニルホスフェートとは、本発明の多機能潤滑剤組成物中のリン化合物(A)であることから、本発明の多機能潤滑剤組成物は、上記表1のトリ−tert−ブチルフェニル系(混合物)と同等の毒性を表すことが予測される。
よって、本発明の多機能潤滑剤組成物は、トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェート等のリン化合物に比べて、毒性が低く、安全である。
【0072】
(実施例1:化合物IIの合成方法)
温度計、窒素導入管、減圧用の吸入管及び攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、オキシ塩化リン153.3g(1.0モル)及びp−tert−ブチルフェノール166.9g(1.1モル)を入れ、更に触媒として塩化マグネシウムを0.3g系内に添加した。窒素置換後、攪拌しながら系内の温度を130℃まで昇温し、2時間の常圧反応を行い、その後、系内の圧力を3.0×10
3Paまで減圧して2時間の減圧反応を行った。常圧に戻し、系内にフェノール180.6g(1.9モル)を添加し、更に130℃で5時間反応した。その後、系内の圧力を3.0×10
3Paまで減圧し3時間の減圧反応を行い、常圧に戻した後、水洗及び水洗後の水層の除去を行った。最後に、温度120℃、圧力3.0×10
3Paで2時間減圧脱水を行い、化合物IIを得た。
次に、上記合成方法と同様の方法にて、実施例2〜5を行い、化合物III〜VIを得た。
【0073】
(比較例1:化合物Iの合成方法)
温度計、窒素導入管、減圧用の吸入管及び攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、オキシ塩化リン153.3g(1.0モル)及びp−tert−ブチルフェノール151.7g(1.0モル)を入れ、更に触媒として塩化マグネシウムを0.3g系内に添加した。窒素置換後、攪拌しながら系内の温度を130℃まで昇温して2時間反応を行った。その後、系内にフェノール190.1g(2.0モル)を添加し、更に130℃で5時間反応した。その後、系内の圧力を3.0×10
3Paまで減圧し3時間の減圧反応を行い、常圧に戻した後、水洗及び水洗後の水層の除去を行い、更に温度120℃、圧力3.0×10
3Paで2時間減圧脱水を行い、化合物Iを得た。
次に、上記合成方法と同様の方法にて、比較例2を行い、化合物VIIを得た。
【0074】
合成後の化合物I〜VIIの組成を表2に示した。
【0075】
【表2】
【0076】
比較例1:リン化合物(A)100質量部に対してリン化合物(B)4質量部
実施例1:リン化合物(A)100質量部に対してリン化合物(B)27質量部。
実施例2:リン化合物(A)100質量部に対してリン化合物(B)30質量部。
実施例3:リン化合物(A)100質量部に対してリン化合物(B)36質量部。
実施例4:リン化合物(A)100質量部に対してリン化合物(B)38質量部。
実施例5:リン化合物(A)100質量部に対してリン化合物(B)41質量部 リン化合物(C)0.7質量部。
比較例2:リン化合物(A)100質量部に対してリン化合物(B)132質量
部、リン化合物(C)5質量部。
【0077】
・粘度データ
上記化合物I〜VIIの40℃での動粘度測定結果を表3に示す。用いた粘度測定機器は、Anton Paar社製のstabinger viscometer 「SVM 3000」である。
【0078】
【表3】
【0079】
本発明の多機能潤滑剤組成物は、潤滑用基油として用いる場合に求められる適切な粘度の範囲(40℃動粘度30〜55mm
2/s)を満たしており、添加剤として用いた場合も扱いやすい粘度といえる。一方、比較例2はリン化合物(B)及び(C)の影響で高粘度となっており、潤滑用基油として用いるに適しておらず、また、添加剤として用いた場合も扱いにくい場合がある。
【0080】
・溶解性データ
化合物I〜VIIを潤滑用添加剤として使用する場合、基油への溶解性が良好であることが必須となる。そこで、基油への溶解性試験を実施したので、その結果を表4に示す。試験方法は以下の通りである。
< 試験方法 >
化合物I〜VIIを基油100質量部に対して6質量部添加し、溶液I〜VIIを調整した。各溶液I〜VIIは、50℃で1時間加熱攪拌し、化合物I〜VIIを基油に溶解させた。その後数時間室温放置し、25℃の恒温槽にて一週間静置した。使用した基油は、40℃の動粘度19.5mm
2/s、粘度指数123の鉱物油である。
< 評価方法 >
溶解性試験終了後のサンプルが、完全に溶解しており、無色透明なものを◎、曇りが出てきたものを○、濁り・沈降物・不溶成分が出てきたものを△、試験を行う以前に不溶であったものを×として評価した。
【0081】
【表4】
【0082】
結果、本発明の多機能潤滑剤組成物は、良好な溶解性を示し、潤滑用添加剤として使用可能である。一方、比較例1は不溶成分による白濁が見られ、潤滑用添加剤として用いるに適していない。
【0083】
・潤滑特性試験
本発明の多機能潤滑剤組成物について、耐摩耗性の評価を行った。潤滑用基油として使用した化合物I〜VII原体、さらに、化合物II〜VIIを潤滑用添加剤として使用した溶液II〜VIIについて試験を実施した(化合物Iは前述した溶解性試験により基油への溶解性が悪いことから、添加剤としての耐摩耗性の評価は行わなかった)。
化合物II〜VIIを添加剤として使用した溶液II〜VIIは、更に基油で薄め、化合物II〜VIIが基油に対して0.1wt%となるように調整し、評価を行った。使用した基油は、溶解性試験同様、40℃の動粘度19.5mm
2/s、粘度指数123の鉱物油である。
試験は、SRV試験機(メーカー名 Optimol、型式 type3)を用い、以下条件で、点接触法(Ball on Disk)にて試験を行い、試験後のBallについた摩耗痕の大きさについて、評価した。
【0084】
試験条件
・ 荷重 200 N
・ 振幅 4.0 mm
・ 周波数 20 Hz
・ 温度 80 ℃
・ 時間 60 min
評価方法
◎ : 摩耗痕径 0.40 〜 0.55 mm
○ : 摩耗痕径 0.56 〜 0.70 mm
△ : 摩耗痕径 0.71 〜 0.85 mm
× : 摩耗痕径 0.86 〜 1.00 mm
【0085】
以下表5、6に、耐摩耗性の評価結果を示した。
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
以上より、本発明の多機能潤滑剤組成物は、潤滑用添加剤として使用すると非常に良好な耐摩耗性を示し、また、潤滑用基油として使用した場合も耐摩耗性を発揮することがわかった。
【0088】
・加水分解性データ
本発明の多機能潤滑剤組成物(実施例3)の加水分解性について調査した。
< 試験方法 >
リン化合物に1mass%の水を添加し、60℃の恒温槽で保存。経過日数毎の酸価を測定することでその加水分解性を評価した。結果を
図1に示す。
図1からわかるように、TPPは加水分解性が高く、これに比べ、本発明の多機能潤滑剤組成物(実施例3)は加水分解性が低いことがわかる。