(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学系を構成する光源からの光を照射して、前記光学系の解像度以下の周期の繰り返しパターンを有する試料について、前記繰り返しパターン自体の像を直接撮像した光学画像を取得する工程と、
前記光学画像の前記繰り返しパターン自体の像の各画素に階調値を付与し、前記繰り返しパターン自体の像を分割した所定の単位領域毎の平均階調値および前記単位領域における階調値のばらつきの少なくとも一方を求める工程と、
所定のパターンについて線幅と前記所定のパターン自体の光学像に対応する階調値の関係式を用いて前記平均階調値を前記繰り返しパターンの前記単位領域における平均的な線幅情報に換算する処理、および、前記階調値のばらつきを表す標準偏差をもとに当該階調値の標準偏差に比例する前記繰り返しパターンのエッジの凹凸(ラフネス)の標準偏差を算出する処理の少なくとも一方を行い、得られた換算値を用いることにより、前記試料の面内での前記平均的な線幅情報の分布を表すマップを、および、得られた算出値を用いることにより、前記試料の面内での前記ラフネスの分布を表すマップを、の少なくとも一方を作成する工程と、
を有することを特徴とするパターン評価方法。
前記繰り返しパターンは、ライン・アンド・スペースパターンであって、前記ラインの設計幅は40nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン評価方法。
前記光学画像を基準画像と比較して、これらの差分値が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する比較部を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のパターン評価装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、微細パターンを形成する技術として、ナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprintlithography;NIL)が注目されている。この技術は、ウェハ上のレジストに、ナノスケールの微細構造を有するモールド(型)を圧力印加することで、レジストに微細なパターンを形成するものである。
【0007】
ナノインプリント技術では、生産性を上げるために、原版となるマスターテンプレートを用いて、複製のテンプレート(レプリカテンプレート)を複数作成し、各レプリカテンプレートを異なるナノインプリント装置に装着して使用する。レプリカテンプレートは、マスターテンプレートに正確に対応するように製造される必要がある。このため、マスターテンプレートはもちろんのこと、レプリカテンプレートのパターンを評価する際にも高い精度が要求される。
【0008】
ところで、マスクは、一般に、回路寸法の4倍の寸法を持って形成される。かかるマスクを用い、縮小投影露光装置でウェハ上のレジストにパターンを縮小露光した後、現像することによって半導体の回路パターンが形成される。これに対し、ナノインプリントリソグラフィにおけるテンプレートは、回路寸法と等倍の寸法で形成される。このため、テンプレートのパターンにおける形状欠陥は、マスクのパターンにおけるそれよりも、ウェハ上に転写されるパターンへの影響度が大きい。したがって、テンプレートのパターンを評価するにあたっては、マスクのパターンを評価する場合よりもさらに高い精度が必要になる。
【0009】
しかしながら、回路パターンの微細化が進む昨今にあっては、パターン評価装置における光学系の解像度よりも、パターンの寸法の方が微細となってきている。例えば、テンプレートに形成されるパターンの線幅が40nm以下であると、光学系の実現が比較的容易な190〜200nm程度の波長をもつDUV(Deep Ultraviolet radiation:遠紫外)光を用いた光源では解像できない。そこで、EB(Electron Beam:電子ビーム)を用いた光源が使用されているが、スループットが低く、量産に適さないという問題がある。
【0010】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、微細なパターンを精度よく、また、スループットの低下を引き起こさずに評価することのできるパターン評価方法およびパターン評価装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、光学系を構成する光源からの光を照射して、前記光学系の解像度以下の周期の繰り返しパターンを有する試料を直接撮像した光学画像を取得する工程と、
前記光学画像の各画素に階調値を付与し、所定の単位領域毎の平均階調値および前記単位領域における階調値のばらつきの少なくとも一方を求める工程と、
所定のパターンについて線幅と階調値の関係式をたて、前記関係式を用いて前記平均階調値を前記繰り返しパターンの前記単位領域における平均的な線幅情報に換算する処理、および、前記階調値のばらつきを表す標準偏差をもとに当該階調値の標準偏差に比例する前記繰り返しパターンのエッジの凹凸(ラフネス)の標準偏差を算出する処理の少なくとも一方を行い、得られた換算値および算出値の少なくとも一方を用いて、前記平均的な線幅情報および前記ラフネスの少なくとも一方の分布を表すマップを作成する工程と、
を有することを特徴とするパターン評価方法に関する。
【0013】
本発明の第1の態様において、前記光の波長は、前記繰り返しパターンのピッチの2倍以上長いことが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様において、前記光は、遠紫外光であることが好ましい。
【0015】
本発明の第1の態様において、前記繰り返しパターンは、ライン・アンド・スペースパターンであって、
前記平均的な線幅情報は、前記ライン・アンド・スペースパターンのラインの幅の平均値であることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の態様において、前記繰り返しパターンは、ライン・アンド・スペースパターンであって、
前記ラフネスは、前記ライン・アンド・スペースパターンのラインのラフネスであることが好ましい。
【0017】
本発明の第1の態様において、前記ラインの設計幅は40nm以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の第2の態様は、画像センサによって評価対象となるパターンを直接撮像した光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記光学画像の各画素に階調値を付与し、所定の単位領域毎の平均階調値および前記単位領域における階調値のばらつきの少なくとも一方を求める光学画像処理部と、
所定のパターンについて線幅と階調値の関係式をたて、前記関係式を用いて前記平均階調値を前記パターンの前記単位領域における平均的な線幅情報に換算する処理、および、前記階調値のばらつきを表す標準偏差をもとに当該階調値の標準偏差に比例する前記繰り返しパターンのエッジの凹凸(ラフネス)の標準偏差を算出する処理の少なくとも一方を行い、得られた換算値および算出値の少なくとも一方を用いて、前記平均的な線幅情報および前記ラフネスの少なくとも一方の分布を表すマップを作成するマップ作成部とを有し、
前記光学画像取得部は、前記パターンに光を照射する光源と、前記パターンを透過または反射した前記光源からの光を前記画像センサに直接結像するレンズとを備えており、
前記光源からの光の波長と前記レンズの開口数によって定まる解像限界は、前記パターンを解像しない値であることを特徴とするパターン評価装置に関する。
【0019】
本発明の第2の態様において、前記光源からの光は、前記パターンのピッチの2倍以上長い波長であることが好ましい。
【0020】
本発明の第2の態様において、前記光源からの光は、遠紫外光であることが好ましい。
【0021】
本発明の第2の態様は、前記光学画像を基準画像と比較して、これらの差分値が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する比較部を有することが好ましい。
【0022】
本発明の第2の態様において、前記基準画像は、前記パターンの設計データから作成された参照画像であり、
前記参照画像を作成する参照画像作成部を有していて、
前記参照画像作成部で作成された参照画像が前記比較部に送られることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の態様によれば、微細なパターンを精度よく、また、スループットの低下を引き起こさずに評価することのできるパターン評価方法が提供される。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、微細なパターンを精度よく、また、スループットの低下を引き起こさずに評価することのできるパターン評価装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ウェハ上に形成されるパターンの多くは、ライン・アンド・スペースパターンなどの繰り返しパターン、すなわち、周期性を持って繰り返される規則的なパターンである。したがって、ナノインプリントリソグラフィで使用されるテンプレートにもかかる繰り返しパターンが形成される。
【0027】
DUV光を用いた光学系によって、線幅が40nm以下であるパターンを結像しようとする場合、理論限界のレンズ(開口数NA=1)を用いたとしても、このパターンを解像することはできない。しかしながら、かかるパターンが繰り返しパターンである場合において、パターンの一部でエッジラフネスが大きくなったり、パターンの一部が欠けたりすると、規則性に乱れが生じて光学画像の階調値が変化するようになる。
【0028】
図1は、ライン・アンド・スペースパターンを模式的に示したものである。
図1において、パターンの寸法は、光学系の解像限界より小さいとする。
【0029】
図1の領域Aでは、パターンエッジラフネスが大きくなっている。また、領域Bでは、ラインパターンの一部が欠けている。
【0030】
図2は、
図1のパターンの光学画像をシミュレーションにより求めたものである。
図2において、パターンは解像されていないが、
図1の形状欠陥に対応する位置(領域A’と領域B’)に、周囲とは階調値の異なる領域があることが分かる。
【0031】
このように、光学系の解像限界より小さい線幅のライン・アンド・スペースパターンであっても、エッジラフネスや欠けによる形状欠陥があると、パターンの規則性に乱れが生じて、形状欠陥がある箇所の階調値が、周囲の階調値とは異なるようになる。この特性を利用して、エッジラフネスの程度を算出することや、欠けによる形状欠陥の有無を検知することが可能となる。エッジラフネスは、描画やエッチングなどのパターンを形成する工程で発生する。したがって、ラフネスの程度およびそのラフネスの程度の面内分布を知ることは、前述の描画やエッチング工程の条件設定にフィードバックできるという有用性を有する。本発明では、このラフネスの程度をテンプレートの全域で計測し、その分布を表示することを可能とする。
【0032】
一方、規則性に乱れがない規則的なパターンであっても、そのパターンの平均階調値を計測することにより、ライン・アンド・スペースにおけるラインとスペースの比率を計測することが可能である。この場合、階調値が変化する原因は、次のように考えることができる。
【0033】
ナノインプリント用のテンプレートに形成されたパターンは、モールドによりパターンを転写する目的から、深さ数十nmの微細な凹凸により形成されている。このような形状を有する解像限界以下のライン・アンド・スペースに対して照射された光は、掘り込み領域(スペース)からの反射光と、残し領域(スペース)からの反射光とが干渉し、反射率が減衰ないしは増強される。ところが、ラインとスペースの割合が変化してどちらかに偏ると、干渉効果が減少し、反射率がフレネル反射のときの値に近づく。そして、スペース100%ないしはライン100%の極限条件では、フレネル反射の値に等しくなる。
【0034】
このように、ライン・アンド・スペースパターンにおいては、ラインの割合によって反射光の光量が変化する。尚、ラインとスペースは表裏の関係にあるため、スペースの割合によって反射光の光量が変化すると言うこともできる。この特性を利用して、ライン・アンド・スペースのパターンにおける、ラインとスペースの割合を算出することが可能となる。
【0035】
テンプレートの製造工程において、パターンピッチの精度は、描画装置の性能にのみ依存する。これに対して、線幅の精度は、エッチングなどの工程にも依存する。したがって、パターンピッチの精度は、線幅の精度に比較して高くなり、固定値とみなすことができる。このことは、前述のラインとスペースの割合によって線幅が表されることを意味している。ラインやスペースは、描画やエッチングなどのパターン形成工程で形成されるので、線幅という概念もパターン形成工程によって生まれる。それ故、線幅の面内分布を把握して、これを描画やエッチングの工程にフィードバックすることは、欠陥の低減の点から有用である。本発明では、平均階調値から得られる線幅情報をテンプレートの全域で計測し、その分布を表示することを可能とする。
【0036】
次に、本実施の形態のパターン評価方法について詳述する。この評価は、パターンの均一性に対して行われる。すなわち、パターンがどの程度均一に形成されているかを、パターンエッジの凹凸(ラフネス)、パターンの欠け、パターンの線幅異常、または、パターンの位置ずれの程度によって評価する。尚、上記で述べた光学系を、以下では観察光学系とも言う。
【0037】
まず、被評価試料の光学画像を取得する。
【0038】
被評価試料には、繰り返しパターンとしてのライン・アンド・スペースパターンが形成されている。例えば、被評価試料に対し、その上方に配置された光源から光を照射する。光源から出射される光は、パターンピッチの2倍以上長い波長であることが好ましい。被評価試料の下方には、対物レンズ、画像センサが配列されたフォトダイオードアレイ、センサ回路が配置されており、被評価試料を透過した光は、対物レンズを介して、フォトダイオードアレイに光学像として結像する。ここで、光源、対物レンズ、フォトダイオードアレイおよびセンサ回路によって観察光学系が構成される。光源からの光の波長(λ)と、対物レンズの開口数(NA)とによって定まる解像限界(R=λ/2NA)は、被評価試料に形成されたパターンを解像しない値である。光学系の倍率は、フォトダイオードアレイ1画素をテンプレート上の大きさに換算したときに、1画素のサイズが上記解像限界と等しいかそれ以下にすることが望ましい。これにより、ラフネス計測の精度を最大限に高めることが可能になる。
【0039】
尚、本実施の形態においては、被評価試料の下方から光を照射し、反射光を対物レンズでフォトダイオードアレイに結像させてもよい。
【0040】
光学画像における画素データは、画素毎の階調値で表現される。例えば、各画素に対して、256段階の階調値を有するグレースケールより、0階調から255階調のいずれかの値が与えられる。本実施の形態では、被評価試料の評価領域を所定の単位領域に分割し、各単位領域における平均階調値を取得する。所定の単位領域は、例えば、1mm×1mmの領域とすることができる。
【0041】
次いで、各単位領域の平均階調値を算出する。例えば、被評価試料における各ラインの幅および空隙が均一であるとする。この場合、各単位領域の平均階調値は一様な値となる。一方、例えば、特定の領域のラインの線幅が平均的に狭くなっていたり、あるいは、広くなっていたりすると、その線幅に応じて平均階調値に変化が生じる。そこで、算出された平均階調値を平均的な線幅情報に換算し、線幅のテンプレート面内での分布を出力する。
【0042】
また、各単位領域における階調値のばらつきを調べることで、パターンエッジの凹凸(ラフネス)の程度を計測することもできる。パターンのエッジに凹凸がなければ、階調値にばらつきは生じない。一方、パターンのエッジに凹凸があると、階調値にバラつきが生じる。階調値の標準偏差は、パターンエッジの凹凸の標準偏差に比例するため、階調値の標準偏差を求めることにより、パターンエッジの凹凸の標準偏差を算出することができる。これにより、各単位領域で算出された標準偏差のテンプレート面内の分布を出力することができる。
【0043】
本実施の形態の評価方法では、光学画像における画素毎の階調値と、評価領域を仮想的に分割する各単位領域の平均階調値とから、パターンの線幅の分布およびパターンエッジの凹凸(ラフネス)の分布の少なくとも一方を表すマップを作成する。具体的には、所定のパターンについて、寸法SEMで測定した線幅の値と、その光学像の階調値とを求めることにより、線幅と階調値の関係式を立てる。そして、この関係式を用いて、評価対象の光学画像から得られた平均階調値を、単位領域における線幅の平均値に換算する。同様にして、階調値のばらつき、すなわち、階調値の標準偏差をパターンエッジの凹凸(ラフネス)に換算する。次いで、換算された値を用いて、線幅の平均値の分布と、パターンエッジの凹凸(ラフネス)の分布の少なくとも一方を表わすマップを作成する。
【0044】
上記マップを作成することにより、試料上のパターンの均一性の程度を把握することができる。そして、線幅やパターンエッジの凹凸にばらつきが大きいことが分かれば、パターンを形成する際のフォトリソグラフィの条件にフィードバックして、ばらつきが小さくなるよう、レジストの露光条件やエッチング条件などを最適化することができる。
【0045】
次に、本実施の形態のパターン評価装置について説明する。
【0046】
図3は、本実施の形態におけるパターン評価装置の構成を示す図である。
図3に示すように、パターン評価装置100は、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。
【0047】
光学画像取得部Aは、光源5と、レンズ6,8,104と、ミラー7と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106とによって構成される観察光学系を有する。また、光学画像取得部Aは、水平方向(X方向、Y方向)に移動可能なXYテーブル3と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。尚、XYテーブル3は、回転方向(θ方向)にも移動可能な構造とすることができる。
【0048】
評価対象となる試料1は、垂直方向に移動可能なZテーブル(図示せず)の上に載置されている。Zテーブルは、XYテーブル3の上に設けられており、XYテーブル3によって水平方向にも移動可能である。ここで、試料1には、ライン・アンド・スペースパターンなどの繰り返しパターン、すなわち、周期性を持って繰り返される規則的なパターンが形成されている。試料1としては、例えば、ナノインプリント技術で用いられるテンプレートが挙げられる。
【0049】
尚、試料1は、Zテーブルに設けられた支持部材により、3点で支持されることが好ましい。試料1を4点で支持する場合には、支持部材に対して高精度の高さ調整が必要となる。また、高さ調整が不十分であると、試料1が変形するおそれがある。これに対して、3点支持によれば、試料1の変形を最小限に抑えながら、試料1を支持することができる。支持部材は、例えば、頭面が球状のボールポイントを用いて構成される。また、例えば、3つの支持部材のうちの2つの支持部材は、試料1の四隅のうちの対角でない、隣接する二隅で試料1に接する。3つの支持部材のうちの残る1つの支持部材は、他の2つの支持部材が配置されていない二隅の間の領域に配置される。
【0050】
上述した観察光学系は、試料1の上方および下方に配置されている。観察光学系の解像限界、すなわち、光源5からの光の波長(λ)と、レンズ104の開口数(NA)とによって定まる解像限界(R=λ/2NA)は、試料1に形成されたパターンを解像しない値である。
【0051】
観察光学系において、光源5は、試料1に対して、評価用の光を照射する。光源5から出射される光の波長は、パターンピッチの2倍以上である。パターン評価装置100は、線幅が40nm以下の微細パターンの評価に好適であり、光源5としては、DUV(Deep Ultraviolet radiation:遠紫外)光を照射するものを用いることが好ましい。DUV光によれば、微細なパターンを、EB(Electron Beam:電子ビーム)を用いる場合よりも高いスループットで評価することができる。
【0052】
光源5からの光は、レンズ6を透過し、ミラー7で向きを変えられた後、レンズ8によって試料1の上に集光される。試料1の下方には、フォトダイオードアレイ105が配置されており、試料1を透過した光は、レンズ104によってフォトダイオードアレイ105に結像する。これにより、後述する光学画像が生成される。
【0053】
尚、本実施の形態においては、試料1の下方から光を照射し、反射光をレンズでフォトダイオードアレイ105に結像させてもよい。
【0054】
図4は、試料1に形成されたパターンの形状欠陥を評価するための光学画像の取得手順を説明する図である。
【0055】
図4に示すように、試料1上の評価領域は、短冊状の複数のフレーム201,202,203,204,・・・に仮想的に分割されている。そして、各フレーム201,202,203,204,・・・が連続的に走査されるように、
図3のXYテーブル3の動作が制御される。具体的には、XYテーブル3がX方向に移動しながら、試料1の光学画像が取得される。そして、フォトダイオードアレイ105に、
図4に示されるような走査幅Wの画像が連続的に入力される。すなわち、第1のフレーム201における画像を取得した後、第2のフレーム202における画像を取得する。この場合、XYテーブル3が第1のフレーム201における画像の取得時とは逆方向に移動しながら光学画像を取得し、走査幅Wの画像がフォトダイオードアレイ105に連続的に入力される。第3のフレーム203における画像を取得する場合には、第2のフレーム202における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1のフレーム201における画像を取得した方向に、XYテーブル3が移動する。尚、
図4の斜線部分は、上記のようにして光学画像の取得が済んだ領域を模式的に表したものである。
【0057】
制御部Bでは、パターン評価装置100全体の制御を司る制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、画像処理回路108、マップ作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、CRT(Cathode Ray Tube)117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。尚、画像処理回路108は、本発明の光学画像処理部に対応する。また、マップ作成回路112は、本発明のマップ作成部に対応する。
【0058】
XYテーブル3は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータおよびY軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、リニアモータを用いることができる。
【0059】
上述したように、
図3の光学画像取得部Aは、試料1の光学画像(測定データ)を取得する。光学画像の具体的な取得方法の一例は、次の通りである。
【0060】
試料1は、垂直方向に移動可能なZテーブル(図示せず)の上に載置される。Zテーブルは、XYテーブル3によって水平方向にも移動可能である。具体的には、XYテーブル3は、制御計算機110の制御の下、テーブル制御回路114によって駆動され、X方向とY方向に駆動する駆動系によって移動可能となっている。X軸モータとY軸モータには、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYテーブル3の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。また、XYテーブル3上の試料1は、オートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後には自動的に排出される。
【0061】
光源5は、試料1に対して、評価用の光を照射する。光源5から出射された光は、レンズ6を透過し、ミラー7で向きを変えられた後、レンズ8によって試料1の上に集光される。尚、レンズ8と試料1との距離は、Zテーブルを垂直方向に移動させることによって調整される。
【0062】
光源5から照射されて試料1を透過した光は、レンズ104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。
【0063】
試料1の検査領域における光学画像の取得手順は、
図4を用いて説明した通りである。そして、
図3のフォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、画像センサが配置されている。本実施の形態の画像センサとしては、例えば、撮像素子としてのCCDカメラを一列に並べたラインセンサが用いられる。ラインセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサが挙げられる。XYテーブル3がX軸方向に連続的に移動しながら、TDIセンサによって試料1のパターンが撮像される。
【0064】
以上のようにして得られた光学画像は、
図3の画像処理回路108へ送られる。
【0065】
画像処理回路108では、光学画像における画素データが画素毎の階調値で表される。例えば、256段階の階調値を有するグレースケールより、0階調から255階調のいずれかの値が、各画素に与えられる。また、試料1の評価領域は、所定の単位領域に分割され、各単位領域における平均階調値が求められる。所定の単位領域は、例えば、1mm×1mmの領域とすることができる。
【0066】
画像処理回路108で得られた階調値と、各単位領域における平均階調値とは、マップ作成回路112へ送られる。
【0067】
マップ作成回路112では、平均階調値がパターンの線幅の平均値に関連付けられる。また、各単位領域における階調値のばらつきがパターンエッジの凹凸(ラフネス)に関連付けられる。例えば、所定のパターンについて、寸法SEMで測定した線幅の値と、その光学像の階調値とを求めることにより、線幅と階調値の関係式を立てる。そして、この関係式をマップ作成回路112に記憶させる。ユーザは、関係式を用いて、画像処理回路108で得られた平均階調値を、単位領域における線幅の平均値に換算することができる。また、この関係式から、階調値のばらつき、すなわち、階調値の標準偏差をパターンエッジの凹凸(ラフネス)に換算することもできる。
【0068】
次いで、マップ作成回路112は、線幅の平均値の分布と、パターンエッジの凹凸(ラフネス)の分布の少なくとも一方を表わすマップを作成する。作成されたマップは、例えば、磁気ディスク装置109に保存される。
【0069】
図5は、ライン・アンド・スペースパターンの線幅分布マップの一例である。図中の数値は、階調値である。この場合、階調値100の領域は、設計値に等しい線幅を有するパターンの領域に対応する。また、階調値90の領域は、設計値より線幅が2nm狭いパターンの領域に対応する。さらに、階調値110の領域は、設計値より線幅が2nm広いパターンの領域に対応する。つまり、この例では、パターンの左上に行くほど線幅が狭くなり、右下に行くほど線幅が広くなる。
【0070】
図6は、ライン・アンド・スペースパターンにおけるパターンエッジの凹凸(ラフネス)の分布マップの一例である。図中の数値は、階調値である。この場合、階調値98の領域は、階調値の標準偏差が2nmの領域に対応する。また、階調値102の領域は、階調値の標準偏差が3nmの領域に対応する。つまり、この例では、パターンの左下または右上に行くほど、パターンエッジの凹凸(ラフネス)が大きくなる。
【0071】
このように、
図3のマップ作成回路112で作成されたマップから、試料1におけるパターンの均一性の程度を把握することができる。そして、線幅やパターンエッジの凹凸にばらつきが大きいことが分かれば、磁気ディスク装置109に保存されたデータを、試料1のパターンを形成する際のフォトリソグラフィの条件にフィードバックすることができる。上記データに基づいて、レジストの露光条件やエッチング条件などを最適化することにより、ばらつきを小さくすることが可能である。
【0072】
本実施の形態のパターン評価装置は、
図3に示す構成要素以外に、試料1を評価するのに必要な他の公知要素が含まれていてもよい。
【0073】
また、本実施の形態のパターン評価装置に、検査機能を組み入れることもできる。例えば、
図3の構成に、展開回路、参照回路および比較回路を組み入れることができる。
【0074】
図7は、展開回路、参照回路および比較回路を有するパターン評価装置の構成図である。尚、
図7において、
図3と同じ符号を付した部分は同じものであることを示している。
【0075】
図7のパターン評価装置200では、ダイ−トゥ−データベース(die to database)方式による検査が可能である。この方式は、設計パターンデータをベースに参照画像を生成して、パターンを撮像して得られた光学画像と比較する手法である。
【0076】
図7において、磁気ディスク装置109には、データベース方式の基準データとなる設計パターンデータが格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路131に送られる。展開回路131では、設計パターンデータがイメージデータ(設計画素データ)に変換される。その後、このイメージデータは、参照回路132に送られて参照画像の生成に用いられる。生成された参照画像は、比較回路133へ送られる。一方、センサ回路106からの光学画像も比較回路133へ送られる。比較回路133では、センサ回路106から送られた光学画像と、参照回路132で生成した参照画像とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較され、誤差が所定の値を超えた場合にその箇所は欠陥と判定される。欠陥の座標と、欠陥判定の根拠となった光学画像および参照画像とは、磁気ディスク装置109に保存される。
【0077】
欠陥判定は、次の2種類の方法により行うことができる。1つは、参照画像における輪郭線の位置と、光学画像における輪郭線の位置との間に、所定の閾値寸法を超える差が認められる場合に欠陥と判定する方法である。他の1つは、参照画像におけるパターンの線幅と、光学画像におけるパターンの線幅との比率が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する方法である。この方法では、参照画像におけるパターン間の距離と、光学画像におけるパターン間の距離との比率を対象としてもよい。
【0078】
尚、ダイ−トゥ−データベース方式において、検査対象の光学画像と比較される基準画像は、上述した様に、設計パターンデータをベースに作成された参照画像である。一方、本実施の形態のパターン評価装置を、ダイ−トゥ−ダイ方式による検査方法と組み合わせることも可能であり、その場合の基準画像は、検査対象とは異なる光学画像になる。
【0079】
また、本実施の形態のパターン評価装置は、検査機能に加えてレビュー機能を有することも可能である。ここで、レビューとは、オペレータによって、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。
【0080】
例えば、
図7の比較回路133で欠陥と判定された箇所の座標と、欠陥判定の根拠となった光学画像および参照画像とがレビュー装置(図示せず)に送られる。オペレータは、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べてレビューする。具体的には、
図7に示すパターン評価装置200の観察光学系(光源5、レンズ6,8,104、ミラー7、フォトダイオードアレイ105、センサ回路106)を使って、試料1の欠陥箇所の画像を表示する。また同時に欠陥判定の判断条件や、判定根拠になった光学画像と参照画像などは、
図7に示す制御計算機110の画面を利用して表示される。レビューによって判別された欠陥情報は、
図3の磁気ディスク装置109に保存される。
【0081】
尚、レビューによって1つでも修正すべき欠陥が確認されると、試料1は、欠陥情報リストとともに、パターン評価装置200の外部装置である修正装置(図示せず)に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リストには、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0082】
ところで、上記例では、繰り返しパターンとしてライン・アンド・スペースパターンを挙げたが、本発明はこれに限られるものではない。本発明は、ホールパターンなどの繰り返しパターンにも適用可能である。
【0083】
例えば、試料上に、観察光学系の解像限界より小さいホール径のホールパターンが形成されている場合、エッジラフネスや欠けによる形状欠陥があると、パターンの規則性に乱れが生じて、形状欠陥がある箇所の階調値が、周囲の階調値とは異なる値を示すようになる。一方、形状欠陥がなく、規則的なパターンが繰り返される場合、光学画像の階調値は均一なものとなる。また、かかる階調値の変化は、パターンのホール径異常や、パターンの位置ずれによる隣接パターンとの空隙異常による形状欠陥にも見られる。
【0084】
したがって、試料の評価領域を所定の単位領域に分割し、各単位領域における階調値のばらつきを調べることで、エッジラフネスやパターン欠けによる形状欠陥を検出することもできる。尚、所定の単位領域は、例えば、1mm×1mmの領域とすることができる。
【0085】
また、各単位領域の平均階調値を比較することで、パターンのホール径異常や、パターンの位置ずれによる隣接パターンとの空隙異常による形状欠陥を検出することもできる。ホールの各径および空隙が均一であると、各単位領域の平均階調値は一様な値となる。一方、例えば、一部のホール径が小さくなっていると、ホール径異常が起きている単位領域の平均階調値と、ホール径が正常である単位領域の平均階調値との間に差異が生じる。また、パターンが位置ずれを起こしてパターン間の距離に変動が生じた場合にも、その単位領域の平均階調値と、他の単位領域の平均階調値との間で差異が生じる。
【0086】
図3のパターン評価装置100において、ホールパターンを有する試料1を評価する場合、パターンの光学画像は画像処理回路108へ送られる。画像処理回路108では、光学画像における画素データが画素毎の階調値で表される。具体的には、256段階の階調値を有するグレースケールより、0階調から255階調のいずれかの値が、各画素に与えられる。また、試料1の評価領域は、所定の単位領域に分割され、各単位領域における平均階調値が求められる。
【0087】
画像処理回路108で得られた階調値と、各単位領域における平均階調値とは、マップ作成回路112へ送られる。マップ作成回路112では、平均階調値がパターンのホール径の平均値に関連付けられる。また、各単位領域における階調値のばらつきがパターンエッジの凹凸に関連付けられる。例えば、所定のパターンについて、寸法SEMで測定したホール径の値と、その光学像の階調値とを求めることにより、ホール径と階調値の関係式を立てる。そして、この関係式をマップ作成回路112に記憶させる。ユーザは、関係式を用いて、画像処理回路108で得られた平均階調値をホール径の平均値に換算することができる。また、この関係式から、階調値のばらつき、すなわち、階調値の標準偏差をパターンエッジの凹凸(ラフネス)に換算することもできる。次いで、マップ作成回路112は、ホール径の平均値の分布と、パターンエッジの凹凸(ラフネス)の分布の少なくとも一方を表わすマップを作成する。作成されたマップは、例えば、磁気ディスク装置109に保存される。
【0088】
以上のようにして、マップ作成回路112で作成されたマップから、試料1におけるホールパターンの均一性の程度を把握することができる。そして、ホール径やパターンエッジの凹凸(ラフネス)にばらつきが大きいことが分かれば、試料1のパターンを形成する際のフォトリソグラフィの条件にフィードバックすることができる。具体的には、ばらつきが小さくなるように、レジストの露光条件やエッチング条件などを最適化することができる。
【0089】
以上述べたように、本実施の形態のパターン評価方法およびパターン評価装置では、試料の光学画像を取得するための観察光学系において、光源から出射される光に、DUV(Deep Ultraviolet radiation:遠紫外)光を用いることができる。したがって、EB(Electron Beam:電子ビーム)を光源に用いた場合と比較して、スループットの低下を引き起こさずに評価することができる。
【0090】
DUV光を用いた場合において、試料に形成されたパターンの寸法が、観察光学系の解像限界より小さくても、本実施の形態のパターン評価方法およびパターン評価装置によれば、形状欠陥を検出することが可能である。すなわち、評価する領域を所定の単位領域に分割し、各単位領域の平均階調値を比較することで、観察光学系の解像限界より小さい寸法のパターンにおける線幅や空隙異常を検出することができる。また、各単位領域における階調値のばらつきを調べることで、パターンエッジの凹凸やパターン欠けも検出することができる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、形状欠陥と階調値との関係を予め把握しておき、光学画像から得られた階調値を具体的な寸法に換算して、寸法マップを作成することにより、試料上のパターンの均一性の程度を把握することができる。かかるマップを基に、パターンのばらつきの程度が所定値以上である場合に、パターンを形成する際のフォトリソグラフィの条件にフィードバックするようにすれば、ばらつきが小さくなるようにすることが可能である。
【0092】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0093】
また、上記実施の形態では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全てのパターン評価方法およびパターン評価装置は、本発明の範囲に包含される。