(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343766
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】通信制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20180611BHJP
H04W 16/32 20090101ALI20180611BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20180611BHJP
【FI】
H04W48/16 135
H04W16/32
H04W84/10
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-107462(P2014-107462)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-222929(P2015-222929A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年2月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(出願人による申告)平成25年度、総務省、「ミリ波を活用するヘテロジニアスセルラネットワークの研究開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
(72)【発明者】
【氏名】難波 忍
(72)【発明者】
【氏名】小西 聡
(72)【発明者】
【氏名】阪口 啓
(72)【発明者】
【氏名】タン ザカン
(72)【発明者】
【氏名】下平 英和
【審査官】
大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−120975(JP,A)
【文献】
特開2013−197961(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0177706(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0125039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域を用いる第1のセルと第2の周波数帯域を用いる第2のセルとが、重複するカバレッジエリアを有するように配置されるセル構成において、前記第1のセルを供する第1の基地局装置と前記第2のセルを供する第2の基地局装置とに対して、複数の端末のそれぞれが、いずれの基地局装置との間で通信を行うかを決定する通信制御装置であって、
前記複数の端末のそれぞれが要求する第1の通信容量の情報を取得する取得手段と、
前記複数の端末のそれぞれの、前記第1のセルにおける第2の通信容量と、前記第2のセルにおける第3の通信容量とを算出する算出手段と、
前記第1の基地局装置と接続する端末については前記第1の通信容量と前記第2の通信容量のうちの小さい方の値を、前記第2の基地局装置に接続する端末については前記第1の通信容量と前記第3の通信容量のうちの小さい方の値を、前記複数の端末のそれぞれについて達成される容量とした場合の、当該達成される容量の総和に基づいて、当該複数の端末のそれぞれが、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのうちの、いずれとの間で通信を行うかを決定する決定手段と、
を有し、
前記決定手段は、前記総和が最大となるように又は前記総和が所定値以上となるように、当該複数の端末のそれぞれが、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのうちの、いずれとの間で通信を行うかを決定する、
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記第1の基地局装置に接続される端末と当該第1の基地局装置との間の単位帯域幅に対する通信容量に、当該第1の基地局装置が使用できる帯域幅を当該第1の基地局装置に接続される端末の数で除算した結果を乗じた値として、前記第2の通信容量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記第2の基地局装置に接続される端末と当該第2の基地局装置との間の単位帯域幅に対する通信容量に、当該第2の基地局装置が使用できる帯域幅を当該第2の基地局装置に接続される端末の数で除算した結果を乗じた値として、前記第3の通信容量を算出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記第1のセルはカバレッジエリアの広いセルであり、当該第1のセルの中に、複数の前記第2のセルが含まれる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記複数の端末のそれぞれに対して、複数の前記第2の基地局装置のうちの、単位帯域幅に対する通信容量が最大となる1つの第2の基地局装置について、前記第3の通信容量を算出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記複数の端末の少なくともいずれかの端末が複数の前記第1の基地局装置に接続しうる場合は、その複数の前記第1の基地局装置のうちの、単位帯域幅に対する通信容量が最大となる1つの第1の基地局装置について、前記第2の通信容量を算出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記複数の端末の少なくとも1つの端末に対して、当該少なくとも1つの端末に宛てて送信されるべきデータの量に基づいて、前記第1の通信容量を取得する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記取得手段は、前記複数の端末の少なくとも1つの端末に対して、当該少なくとも1つの端末が実行しているアプリケーションに基づいて、前記第1の通信容量を取得する、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記第1のセルと前記第2のセルとにおける無線リソースの使用率に基づいて、前記決定を行うか否かを判定する判定手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記使用率の偏りの大きさが所定の大きさを超える場合に、前記決定を行うと判定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の通信制御装置。
【請求項11】
前記複数の端末の少なくともいずれかと接続できる基地局装置が追加または除去されたことに応じて、前記決定を行うと判定する判定手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項12】
前記第1の基地局装置および前記第2の基地局装置は、無線周波数部分の処理を行う装置であると共に、当該第1の基地局装置および当該第2の基地局装置のベースバンドの処理を共通して実行する、前記通信制御装置を含む装置に接続される、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項13】
前記通信制御装置は、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのいずれかに含まれる、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載の通信制御装置を含むことを特徴とするネットワークノード。
【請求項15】
第1の周波数帯域を用いる第1のセルと第2の周波数帯域を用いる第2のセルとが、重複するカバレッジエリアを有するように配置されるセル構成において、前記第1のセルを供する第1の基地局装置と前記第2のセルを供する第2の基地局装置とに対して、複数の端末のそれぞれが、いずれの基地局装置との間で通信を行うかを決定する通信制御装置の制御方法であって、
取得手段が、前記複数の端末のそれぞれが要求する第1の通信容量の情報を取得する取得工程と、
算出手段が、前記複数の端末のそれぞれの、前記第1のセルにおける第2の通信容量と、前記第2のセルにおける第3の通信容量とを算出する算出工程と、
決定手段が、前記第1の基地局装置と接続する端末については前記第1の通信容量と前記第2の通信容量のうちの小さい方の値を、前記第2の基地局装置に接続する端末については前記第1の通信容量と前記第3の通信容量のうちの小さい方の値を、前記複数の端末のそれぞれについて達成される容量とした場合の、当該達成される容量の総和に基づいて、当該複数の端末のそれぞれが、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのうちの、いずれとの間で通信を行うかを決定する決定工程と、
を有し、
前記決定工程では、前記総和が最大となるように又は前記総和が所定値以上となるように、当該複数の端末のそれぞれが、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのうちの、いずれとの間で通信を行うかが決定される、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項16】
第1の周波数帯域を用いる第1のセルと第2の周波数帯域を用いる第2のセルとが、重複するカバレッジエリアを有するように配置されるセル構成において、前記第1のセルを供する第1の基地局装置と前記第2のセルを供する第2の基地局装置とに対して、複数の端末のそれぞれが、いずれの基地局装置との間で通信を行うかを決定する通信制御装置に備えられたコンピュータに、
前記複数の端末のそれぞれが要求する第1の通信容量の情報を取得する取得工程と、
前記複数の端末のそれぞれの、前記第1のセルにおける第2の通信容量と、前記第2のセルにおける第3の通信容量とを算出する算出工程と、
前記第1の基地局装置と接続する端末については前記第1の通信容量と前記第2の通信容量のうちの小さい方の値を、前記第2の基地局装置に接続する端末については前記第1の通信容量と前記第3の通信容量のうちの小さい方の値を、前記複数の端末のそれぞれについて達成される容量とした場合の、当該達成される容量の総和に基づいて、当該複数の端末のそれぞれが、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのうちの、いずれとの間で通信を行うかを決定する決定工程と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記決定工程では、前記総和が最大となるように又は前記総和が所定値以上となるように、当該複数の端末のそれぞれが、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのうちの、いずれとの間で通信を行うかが決定される、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末の接続先の基地局装置を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)において、大セル(マクロセル)のカバレッジ内に異なる周波数帯域を使用する小セル(スモールセル)を多数設置することが議論されている(非特許文献1参照)。例えば、
図1の例のように、2GHz帯の周波数帯域を使用するマクロセルのカバレッジエリア内に、3.5GHz帯の周波数帯域を使用するスモールセルが複数置局される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TR36.814 V9.0.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1のように、マクロセルとスモールセルとが互いに異なる周波数帯域を使用することにより、これらのセル間の干渉を防ぐことができ、システム全体としての周波数利用効率を向上させることができる。しかしながら、各セルのリソースは限られているため、1つ以上の端末(UE)が、それぞれのセルを供する基地局装置のうち、いずれに接続されるべきかをUEの希望を考慮して適切に決定しなければ、システム全体の容量を効率的に増加させることができない。例えば、あるUEが望む通信容量がある場合に、これを無視して、その通信容量を満たすことができないようなセルにそのUEを収容させると、結果として、そのUEに割り当てられた通信容量は無駄となる場合がある。また、あるUEが望む通信容量に対して、過剰な通信容量が割り当てられても、結果としてそのUEは必要な量の通信容量のみを使用することとなるため、その過剰な通信容量の多くが無駄となる場合がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、端末に割り当てるべき通信容量を考慮しながらシステム全体の通信容量を増加させるような、端末の接続先のセルの決定技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による通信制御装置は、第1の周波数帯域を用いる第1のセルと第2の周波数帯域を用いる第2のセルとが、重複するカバレッジエリアを有するように配置されるセル構成において、前記第1のセルを供する第1の基地局装置と前記第2のセルを供する第2の基地局装置とに対して、複数の端末のそれぞれが、いずれの基地局装置との間で通信を行うかを決定する通信制御装置であって、前記複数の端末のそれぞれが要求する第1の通信容量の情報を取得する取得手段と、前記複数の端末のそれぞれの、前記第1のセルにおける第2の通信容量と、前記第2のセルにおける第3の通信容量とを算出する算出手段と、前記第1の基地局装置と接続する端末については前記第1の通信容量と前記第2の通信容量のうちの小さい方の値を、前記第2の基地局装置に接続する端末については前記第1の通信容量と前記第3の通信容量のうちの小さい方の値を、前記複数の端末のそれぞれについて達成される容量とした場合の、当該達成される容量の総和に基づいて、当該複数の端末のそれぞれが、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのうちの、いずれとの間で通信を行うかを決定する決定手段と、を有
し、前記決定手段は、前記総和が最大となるように又は前記総和が所定値以上となるように、当該複数の端末のそれぞれが、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置とのうちの、いずれとの間で通信を行うかを決定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、端末に割り当てるべき通信容量を考慮しながら、システム全体の通信容量を増加させるように、その端末の接続先のセルを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】それぞれ異なる周波数帯域を使用するマクロセルとスモールセルとの配置例を示す概念図。
【
図2】通信制御装置の機能構成例を示すブロック図。
【
図3】通信制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図。
【
図4】実施形態に係る処理を実行した場合としなかった場合のシステム容量のシミュレーション結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(システム構成)
本実施形態に係る無線通信システムでは、第1の周波数帯域を用いる第1のセル(マクロセル)と、第2の周波数帯域を用いる第2のセル(スモールセル、ピコセル)が重複するカバレッジエリアを有するように配置されるセル構成を有する。例えば、
図1に示すように、マクロセルのカバレッジエリア内に、複数のスモールセルのカバレッジエリアが含まれるように、各セルを供する各基地局装置が配置される。また、マクロセルでは、2GHzの周波数帯域が用いられ、スモールセルでは、3.5GHzや60GHzなどの周波数帯域が用いられる。なお、
図1には示していないが、各カバレッジエリアには複数の端末が存在し、マクロセルまたはスモールセルを展開する基地局装置のいずれかとの間で接続を確立して通信を行う。また、
図1には、1つのマクロセルのみが示されているが、複数のマクロセルが存在しうることは明らかである。
【0011】
以下では、上述の無線通信システムにおいて、複数の端末のそれぞれがどの基地局装置との間で通信を行うかを決定する通信制御装置について説明する。通信制御装置は、例えば、マクロセルとスモールセルとをそれぞれ展開する基地局装置と、ネットワーク側において接続されるネットワークノードに含まれてもよいし、基地局装置に含まれてもよい。また、通信制御装置は、各セルを展開するアンテナ等の無線周波数部分の処理を行うRRH(Remote Radio Head)が接続されるBBU(BaseBand Unit)内、又はBBUと同じ位置に配置されてもよい。なお、BBUは、接続される複数のRRH(基地局装置)のベースバンド部分の処理を共通して実行する装置である。以下では、通信制御装置の配置に関しては特に限定しないが、各基地局装置と端末は、通信制御装置からの指示に従って、端末が決定された基地局装置と接続を確立するように制御を行う。
【0012】
(通信制御装置の構成)
図2に、通信制御装置の機能構成例を示す。
図2に示すように、通信制御装置は、例えば、端末所望容量取得部201、リンク容量算出部202、接続先決定部203、及び通信部204を有する。また、通信制御装置は、決定処理実行判定部205を有することもできる。
【0013】
端末所望容量取得部201は、複数の端末のそれぞれについて、端末のそれぞれが要求する(と考えられる)通信容量を取得する。端末所望容量取得部201は、例えば、各基地局装置を介して、複数の端末から明示的に要求する通信容量を示す情報を取得する。なお、端末所望容量取得部201は、各端末に宛てて送信されるべきデータ量(例えばバッファに蓄積されたデータ量)に基づいて、端末のそれぞれが要求する通信容量を推定してもよい。また、端末所望容量取得部201は、各端末が実行しているアプリケーション(通話、Webブラウジング、その他の通信を伴うアプリケーション等)に基づいて、端末のそれぞれが要求する通信容量を推定してもよい。
【0014】
リンク容量算出部202は、複数の端末のそれぞれが、マクロセルまたはスモールセルを展開する各基地局装置に接続されるとした場合に得られるリンク容量を算出する。ここで言うリンク容量とは、単位帯域幅に対する通信容量(例えばbps/Hz)である。リンク容量は、例えば、セル(i)及びUE(j)に対して、
・・・(1)
によって与えられる。ここで、Λ
i,jはチャネル行列から算出する固有値を要素とする対角行列であり、g
i,jはパスゲイン、Nはmin(M
t,M
r)で定まるMIMO多重数、n
iはセル間干渉である。また、η
B及びη
Sは修正シャノン容量の係数をそれぞれ示し、I
NはN次元の単位行列である。また、E{・}は期待値を表す。なお、各セルにおいてセル間干渉を低減するために、アンテナを用いて特定の指向性パターンで信号の送信を行う場合がある。この場合は、その指向性パターンによる影響を考慮して上述のリンク容量が算出される。なお、このリンク容量を計算するためのチャネルの状態などの各情報は、例えば通信部204を介して取得される。
【0015】
接続先決定部203は、端末所望容量取得部201で取得した各端末が要求する通信容量と、リンク容量算出部202が算出したリンク容量に基づいて得られる、各端末が各基地局に接続された場合に得られる通信容量とに基づいて、各端末の接続先を決定する。例えば、接続先決定部203は、各端末が要求する通信容量と、各端末が各基地局に接続された場合に得られる通信容量との小さい方を達成される容量として、各端末についての達成される容量の総和に基づいて、各端末の接続先基地局装置を決定する。ここで、この総和は、各端末が接続され得る基地局装置のいずれかに接続されると仮定した場合の総和であり、接続先を決定する際に実際に接続されている基地局装置に関してのみ考慮されるものではないことに留意されたい。そして、その総和が最大となるように、又は所定値以上となるように、各端末の接続先の基地局装置を決定する。接続先決定部203の処理の詳細については後述する。
【0016】
通信部204は、例えば、各基地局装置と接続され、接続先決定部203で決定した、各端末の接続先の情報を送信し、接続先決定のための情報を受信して取得する。なお、各基地局装置に通知された各端末の接続先の情報は、その各基地局装置から、例えば、決定された接続先の基地局装置へハンドオーバするような制御メッセージの形式で、端末に通知される。なお、通信制御装置が基地局装置の内部に含まれる場合は、通信部204は、例えば、他の基地局装置との間での通信と、基地局装置としての端末との無線通信とを行うように構成されうる。また、通信制御装置がBBUの内部に配置される場合は、通信部204は、RRHを通じて、基地局装置として端末との無線通信を行い、場合によっては隣接するエリアに対応するBBUとの間の通信を行うように構成されうる。すなわち、通信部204は、通信制御装置が配置される位置等によって通信の相手は変動しうるが、端末の接続先を決定するための情報を取得し、端末に対して(例えば基地局装置を介して)接続先の情報を伝達することができるように構成される。
【0017】
決定処理実行判定部205は、複数の端末の接続先決定処理を行うか否かを判定する。決定処理実行判定部205は、例えば、無線通信システムにおいて、新たな基地局装置が追加された場合(電源がオンにされた等の場合)、又は基地局装置が除去された場合に、接続先決定処理を実行する、と判定する。また、決定処理実行判定部205は、例えば、各セルにおける無線リソース(周波数リソース)の使用率に基づいて、接続先決定処理を行うか否かを判定してもよい。この場合、例えば、各セルにおける無線リソースの使用率の分散が算出され、その分散が所定の大きさを超える場合に、接続先決定処理が行われるようにする。すなわち、無線リソースの使用率はセルごとで偏るが、その偏りが所定の大きさより大きくなる場合は、一部のセルに過剰な数の端末が収容されており、他のセルには過小な数の端末のみが収容されていると考えられる。したがって、このような場合に、接続先決定処理を行うことにより、端末の接続先の基地局装置を適度に分散させることができると考えられる。
【0018】
以上のような通信制御装置は、例えば
図3に示すようなハードウェア構成で実現されうる。通信制御装置は、一例において、
図3に示すようなハードウェア構成を有し、例えば、CPU301、ROM302、RAM303、外部記憶装置304、及び通信装置305を有する。通信制御装置では、例えばROM302、RAM303及び外部記憶装置304のいずれかに記録された、通信制御装置の各機能を実現するプログラムがCPU301により実行される。そして、通信制御装置は、例えばCPU301により通信装置305を制御して、基地局装置や他のネットワークノードとの間の通信を行う。なお、通信制御装置は、各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、全機能をコンピュータとプログラムにより実行させてもよい。
【0019】
(接続先決定処理)
続いて、接続先決定部203が実行する接続先決定処理の例について説明する。まず、接続先決定部203は、複数の端末のそれぞれについて、接続先の候補となるマクロセルとスモールセルとを選択する。すなわち、1つの端末について、1つのマクロセルと1つのスモールセルとを選択する。例えば、上述のリンク容量算出部202の算出結果に基づき、各端末について、接続しうるマクロセルのうちの単位帯域幅に対する通信容量(リンク容量)が最大となる1つと、同様に接続しうるスモールセルのうちのリンク容量が最大となる1つが選択される。その後、各端末が選択されたマクロセルとスモールセルとのうちのいずれに接続されると、各端末の要求通信容量と、各セルにおけるユーザ数に応じて割り当てられうる帯域幅にリンク容量を乗じた値の小さい方の通信容量の総和が最大となるかを算出する。なお、接続先決定部203は、総和が所定値以上となるように、各端末の接続先を決定してもよい。
【0020】
ここで、通信容量の総和は、
・・・(2)
となる。ここで、W
Mはマクロセルの、W
Pはスモールセルの、それぞれ使用可能な帯域幅(Hz)を示す。なお、W
Pは、各スモールセルで異なる周波数帯域を用いる場合は、iの変数であるW
Pi(1≦i≦N
P)で置き換えられてもよい。C
M,uは、マクロセルについての上述のリンク容量(bps/Hz)であり、C
Pi,uは、i番目のスモールセルについてのリンク容量である。また、|U
M|はマクロセルに収容される端末の数であり、|U
Pi|はi番目のスモールセルに収容される端末の数である。なお、U
Mはマクロセルに収容される端末の集合を示し、U
Piはi番目のスモールセルに収容される端末の集合を示す。そして、L
uは、u番目の端末の要求通信容量(bps)である。
【0021】
ここで、W
M/|U
M|は、マクロセルで使用可能な帯域幅をそのマクロセルに収容される端末の数で除算したものであり、これは、各端末に割り当て可能な帯域幅に相当する。したがって、ある端末uに対してマクロセルで実際に達成されうる通信容量は、(W
M/|U
M|)×C
M,uとなる。すなわち、式(2)の右辺第1項では、マクロセルに収容される端末についての達成される通信容量として、実際に達成されうる通信容量と要求通信容量との小さい方が、選択的に加算されている。すなわち、要求通信容量が実際に達成されうる通信容量以下である場合は、その要求通信容量が達成され、一方で、要求通信容量が実際に達成されうる通信容量より大きい場合は、要求通信容量は達成できず、最大限割り当てられうる容量のみが割り当てられる。なお、スモールセルについては、式(2)の右辺第2項のように、N
P個のスモールセルが存在するものとして、各セルについて、マクロセルと同様の演算が行われ、その結果が加算される。
【0022】
接続先決定部203は、この式(2)で示されるSが最大となるように、各端末uの接続先をマクロセルとスモールセルとから選択する。すなわち、接続先決定部203は、上述のSが最大となるように、各uが集合U
MとU
Pi(1≦i≦N
P)のいずれに属するかを決定する。
【0023】
ここで、どのように各端末の接続先を決定するかについて数学的な観点から説明する。上述の式(2)を線型計画問題として解くために、式(2)を、
・・・(3)
のように近似する。ここで、U
Miは、i番目のスモールセルのエリアに存在し、マクロセルに接続するユーザの集合である。例えば、接続先の候補として、i番目のスモールセルが選択されたユーザで、マクロセルに収容されたユーザuが、この集合に含まれる。
【0024】
式(3)において、各スモールセルのエリアにおける通信容量の総和S
iは、
・・・(4)
のように変形することができる。ここで、Uは、i番目のスモールセルのエリアに存在する端末の総数である。また、x
uは、端末uがマクロセルに収容される場合は1、スモールセルに収容される場合は0となる変数である。ここで、X=[x
1、…、x
U]
Tとし、ψ
Uを要素が全て1で、要素数がUの列ベクトルとすると、Σ
u=1Ux
u=ψ
UTXと表される。なお、上付きのTは行列(ベクトル)の転置を表し、Xψ
UT=k(1≦k≦U−1)とする。ここで、式(4)について、右辺の中括弧で括られた2つの項の和をf
u,kと表し、第3項をa
u,kとして表すと、
・・・(5)
となる。
【0025】
したがって、接続先決定部203は、この問題を、制約条件
を満たしながら、
を最大化するベクトルX、すなわち、X=arg max
X(max
kν
k)を求める線型計画問題として解くことができる。このとき、接続先決定部203は、ベクトルXにおいて、要素x
uが1であれば端末uはマクロセルに収容されるべきであり、要素x
uが0であれば端末uはスモールセルに収容されるべきであることを決定する。
【0026】
なお、上述の式は、i番目のスモールセルに関するエリアに対するものである。このため、この決定処理は、各スモールセルに関するエリアについても同様に行われる。
【0027】
上述の処理を実行した場合としなかった場合との、システム全体の通信容量の大きさをシミュレーションにより比較した結果を
図4に示す。本シミュレーションでは、マクロセルにおける使用周波数帯域を2GHzとし、その帯域幅を10MHzとした。そして、このときのアンテナ高は25mとし、送信電力を46dBmとした。また、スモールセルにおける使用周波数帯域と帯域幅は、3GHz帯の100MHz帯域幅と、60GHz帯の2GHz帯域幅とを用いた。なお、この時のアンテナ高は、3GHz帯については10m、60GHz帯については3mとし、送信電力をそれぞれ30dBm、10dBmとした。また、端末の平均の要求通信容量は、4.8Gbpsとし、その分布はガンマ分布に従うものとした。
【0028】
図4において、実線が本実施形態に係る接続先決定処理を行った場合の、そして破線は、各端末が最も受信電力が強い基地局装置に接続した場合の、それぞれシステム容量を示す。なお、各点が丸で示されたグラフは、スモールセルが3GHz帯を用いた場合の特性であり、各点が四角で示されたグラフは、スモールセルが60GHz帯を用いた場合の特性である。
図4から、スモールセルが使用する周波数帯域によらず、本実施形態に係る接続先決定処理を行った場合に、システム全体の通信容量が大きくなっていることが分かる。
【0029】
このように、本実施形態に係る接続先決定処理により、各端末の要求通信容量を考慮しながら、システム全体の通信容量を十分に大きくすることが可能となる。