(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1軸受部及び前記第2軸受部は、前記案内軸が前記第1穴及び前記第2穴に挿通された場合、前記第1挿通穴の中心軸と前記第2挿通穴の中心軸と前記案内軸とが一致するように回転可能である
請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。下記の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、カメラシステム100の模式的断面図である。カメラシステム100は、レンズユニット200およびカメラボディ300を含む。
【0010】
なお、記載を簡潔にする目的で、以下の説明においては、カメラシステム100の撮影対象となる物体が位置する物体側を前側または先端側と記載する。また、カメラシステム100において、レンズユニット200に対してカメラボディ300が配置された側を後側または背面側と記載する。
【0011】
レンズユニット200は、固定筒210と固定筒210に収容されたレンズ群L
1、L
2、L
3および案内軸212とを有する。固定筒210の後端にはレンズ側マウント部260が設けられる。
【0012】
レンズ側マウント部260は、カメラボディ300のボディ側マウント部360と嵌合して、固定筒210をカメラボディ300に対して固定する。これにより、レンズユニット200とカメラボディ300とが機械的に結合される。
【0013】
レンズ側マウント部260およびボディ側マウント部360の嵌合は、特定の操作により解除できる。よって、レンズユニット200は、同じ規格のレンズ側マウント部260を有する他のレンズユニット200と交換できる。
【0014】
固定筒210の内部において、レンズ群L
1、L
2、L
3は、共通の光軸Xに沿って配置されて光学系を形成する。一対の案内軸212のそれぞれは、固定筒210から支持され、光軸Xと平行に固定される。
【0015】
少なくともひとつのレンズ群L
2は、一対の嵌合部230と単一の係合部250とを有する保持枠220に保持される。一対の嵌合部230は、案内軸212の延在方向に沿って離間して配され、各々に設けられた嵌合穴231に一方の案内軸212を共通に挿通される。嵌合穴231の各々は、内部に収容した軸受けブッシュ240を介して、案内軸212に対してそれぞれ摺動自在に嵌合する。
【0016】
保持枠220においては、単一の係合部250も、案内軸212に対して摺動自在に係合する。これにより、保持枠220に保持されたレンズ群L
2は、案内軸212に沿って、光軸Xと平行に移動する。これにより、レンズ群L
2は光軸Xと平行に移動する。レンズ群L
2が移動した場合、レンズ群L
1、L
2、L
3が形成する光学系の焦点距離、合焦位置等が変化する。
【0017】
レンズユニット200は、レンズ側制御部270も有する。レンズ側制御部270は、光学系の光路をはずれた位置に配され、レンズユニット200全体の制御を担うと共に、カメラボディ300に搭載されたボディ側制御部322とレンズユニット200側との通信も担う。これにより、カメラボディ300に装着されたレンズユニット200は、カメラボディ300と連携して動作する。
【0018】
カメラボディ300は、ボディ側マウント部360の後側にミラーユニット370を備える。ミラーユニット370は、メインミラー保持枠372およびメインミラー371を有する。メインミラー保持枠372は、メインミラー371を保持しつつ、メインミラー回動軸373により軸支される。
【0019】
また、ミラーユニット370は、サブミラー保持枠375およびサブミラー374を有する。サブミラー保持枠375は、サブミラー374を保持しつつ、サブミラー回動軸376によりメインミラー保持枠372から軸支される。メインミラー保持枠372が回動した場合、サブミラー374およびサブミラー保持枠375はメインミラー保持枠372と共に移動しつつ、メインミラー保持枠372に対して回動する。
【0020】
カメラボディ300において、ミラーユニット370の図中上方にはフォーカシングスクリーン352およびペンタプリズム354が順次配される。また、カメラボディ300において、ペンタプリズム354の図中後方にはファインダ光学系356および測光センサ390が配される。ファインダ光学系356の後端は、カメラボディ300の背面にファインダ350として露出する。測光センサ390は、入射した光の強度を検出する。
【0021】
カメラボディ300において、ミラーユニット370の図中後方には、フォーカルプレンシャッタ310、光学フィルタ332および撮像素子330が順次配される。フォーカルプレンシャッタ310は開閉して、撮像素子330に入射する被写体光束を導入または遮断する。
【0022】
光学フィルタ332は、撮像素子330の直前に設置され、撮像素子330に入射した光から赤外線および紫外線を除去する。また、光学フィルタ332は、撮像素子330の表面を保護する。更に、光学フィルタ332は、入射した被写体光束の空間周波数を減じるローパスフィルタを含む。これにより、光学フィルタ332は、撮像素子330のナイキスト周波数を越える空間周波数成分を入射光から除去してモアレの発生を抑制する。
【0023】
撮像素子330は、CCDセンサ、CMOSセンサなどの光電変換素子を含み、光学フィルタ332を透過して入射した光を受光する。撮像素子330の更に背後には、基板320、背面表示部340が順次配される。基板320には、ボディ側制御部322および画像処理部324等が実装される。背面表示部340は、液晶表示板等により形成され、カメラボディ300の背面に露出する。
【0024】
図示の状態にあるメインミラー371は、レンズユニット200を通じて入射した光を斜めに横切る観察位置にある。メインミラー371の一部はハーフミラー領域を形成して、入射した光の一部を透過させる。
【0025】
観察位置のメインミラー371のハーフミラー領域を透過した光は、メインミラー371の後方でサブミラー374に入射する。サブミラー374は、入射した光をミラーユニット370の図中下方に向かって反射する。サブミラー374により反射された光は、ミラーユニット370の図中下方に配された合焦光学系380を通じて合焦センサ382に入射する。
【0026】
また、観察位置にあるメインミラー371に反射された光は、フォーカシングスクリーン352に向かって反射される。フォーカシングスクリーン352は、撮像素子330の素子配列面と光学的に共役な位置に配され、レンズユニット200の光学系が形成した像を可視化する。フォーカシングスクリーン352に結ばれた像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から正立正像として観察される。
【0027】
ペンタプリズム354から射出された光の一部は、ファインダ光学系356の上方に配された測光センサ390に受光される。測光センサ390は、カメラボディ300のレリーズボタンが半押し状態になると、入射した光の光強度を検出する。
【0028】
ボディ側制御部322は、測光センサ390が検出した光強度に基づいて被写体輝度を算出し、更に、算出した被写体輝度に応じて、絞り値、シャッタ速度、ISO感度等の撮像条件を算出する。これにより、カメラシステム100は、適切な撮影条件で被写体を撮影できる状態になる。
【0029】
また、カメラボディ300のレリーズボタンが半押し状態になると、合焦センサ382は、レンズユニット200の光学系におけるデフォーカス量を検出して、ボディ側制御部322に通知する。ボディ側制御部322は、レンズ側制御部270と通信して、検知されたデフォーカス量を打ち消して光学系を合焦させるに足る移動量までレンズ群L
2を移動させる。
【0030】
これにより、レンズユニット200は、フォーカシングスクリーン352に被写体の鮮明な像を形成する。
【0031】
続いて、カメラシステム100においてレリーズボタンが深く押し込まれた場合、メインミラー保持枠372はメインミラー371と共に図中時計回りに回動し、退避位置に略水平に停止する。これにより、メインミラー371は、レンズユニット200の光学系を通じて入射した光の光路から退避する。
【0032】
メインミラー371が撮影位置に向かって回動する場合、サブミラー保持枠375も、メインミラー保持枠372と上昇すると共に、サブミラー回動軸376の回りに回動して、撮影位置において略水平に停止する。これにより、サブミラー374も入射した光の光路から退避する。
【0033】
メインミラー371およびサブミラー374が撮影位置に移動すると、続いてフォーカルプレンシャッタ310が開く。これにより、レンズユニット200の光学系を通じて入射した光は、光学フィルタ332を通過して撮像素子330に受光される。こうして、撮像素子330の素子配列面に形成された被写体の鮮明な像が、撮像素子330により電気信号に変換される。その後、フォーカルプレンシャッタ310の後膜が閉じ、メインミラー371およびサブミラー374は再び観察位置に復帰して、撮影に係る一連の動作が完了する。
【0034】
図2は、レンズユニット200の断面図である。
図2は、レンズ群L
2を含み、光軸Xと直交する断面を模式的に示す。
図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。レンズユニット200において、レンズ群L
2を保持する保持枠220は、図中上側に嵌合部230を、図中下側に係合部250を、それぞれ有する。
【0035】
一対の嵌合部230に設けられた嵌合穴231の各々は、軸受けブッシュ240を収容して支持する支持穴を形成する。軸受けブッシュ240の各々は、案内軸212の断面形状と略相補的な内面形状を有する挿通穴241を有し、案内軸212は、軸受けブッシュ240の挿通穴241に挿通される。これにより、嵌合部230は、図中上側の案内軸212に対して精度よく位置決めされる。
【0036】
嵌合部230の係合部250は、対向する一対の平行面の間に案内軸212を挟んで、案内軸212に対して係合する。これにより、保持枠220が、図中上側の案内軸212の周りを回動することが規制される。こうして、保持枠220は、光軸Xと平行な方向の移動を許容されつつ、他の方向への変位を規制される。
【0037】
図3は、保持枠220における嵌合部230の断面図である。
図3は、光軸Xを含む面における嵌合部230断面を示す。
図1および
図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0038】
嵌合部230は、案内軸212の長手方向に沿って離間した位置に一対設けられる。一対の嵌合部230のそれぞれにおいて、軸受けブッシュ240が嵌合穴231の内部に収容される。嵌合穴231に収容された軸受けブッシュ240は、嵌合部230から支持される。軸受けブッシュ240の各々は、案内軸212を挿通する挿通穴241を有する。
【0039】
嵌合穴231の各々は、図中に一点鎖線Aで示すように、レンズ群L
2の光軸Xに概ね沿った延在方向に形成される。よって、一対の嵌合穴231の内部に配された一対の軸受けブッシュ240に、1本の案内軸212を共通に挿通できる。このように、保持枠220は、1本の案内軸212に対して2箇所の嵌合部で嵌合するので、光軸Xに対するレンズ群L
2の傾きが規制される。
【0040】
なお、軸受けブッシュ240の各々において、挿通穴241は、案内軸212の外周面に対して円滑に摺動し得る間隙を有する。よって、軸受けブッシュ240は、案内軸212に沿って円滑に摺動する。嵌合部230の各々の嵌合穴231の内部には、軸受けブッシュ240を嵌合部230に結合する球面軸受け構造部281が形成される。次に、
図4を参照して球面軸受け構造部281について説明する。
【0041】
図4は、球面軸受け構造部281の断面図である。
図4には、
図3において図中右側に示した嵌合部230を単独で拡大して示す。
図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0042】
球面軸受け構造部281は、球面座232および球面部242を含む。即ち、嵌合部230を図中略水平に貫通して設けられた嵌合穴231の内面には、部分球面状の内面を有する球面座232が設けられる。また、軸受けブッシュ240の外周面には、部分球面状の外面を有する球面部242が、軸受けブッシュ240と一体的に設けられる。
【0043】
球面座232および球面部242は、互いに相補的な形状と寸法を有し、互いに嵌まり合って接する球面軸受け構造部281を形成する。ここで、球面座232がなす部分球面は、球面部242がなす部分球面よりも狭い。よって、球面部242と一体的な軸受けブッシュ240は、球面座232および球面部242の共通の中心を揺動軸として、嵌合部230の嵌合穴231の内部で揺動できる。
【0044】
換言すれば、軸受けブッシュ240は、球面軸受け構造部281により嵌合部230に結合されている。このため、軸受けブッシュ240が保持枠220に対して揺動自在な状態でありながら、軸受けブッシュ240の中心軸は、案内軸212の中心軸に対して決められた一定の位置関係が維持される。
【0045】
図5は、嵌合部230から軸受けブッシュ240を取り外した状態を示す分解断面図である。
図4と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0046】
軸受けブッシュ240における球面部242の外径R
0は、嵌合部230における嵌合穴231の小径部233の内径R
1よりも大きい。よって、軸受けブッシュ240が嵌合部230に設けられた嵌合穴231に圧入された場合、嵌合穴231の内部において、球面部242は、より小さな内径R
1を有する小径部233に挟まれて、嵌合穴231の内部から抜け出ることを規制される。このように、球面軸受け構造部281においては、軸受けブッシュ240は、嵌合部230に対して揺動自在な状態でありながら、当該揺動中心の嵌合部230に対する位置関係は変化しない状態になる。
【0047】
図6は、嵌合部230の断面図である。
図6は、案内軸212を挿通された嵌合部230の形状を、
図3と同じ視点から見た状態で誇張して示す。
【0048】
レンズユニット200において、案内軸212は固定筒210に対して固定されている。よって、案内軸212を挿通された挿通穴241の内面が規定する挿通穴241の延在方向は、図中に一点鎖線Aで示すように、案内軸212の延在方向と一致する。
【0049】
一方、一対の嵌合部230のうち、保持枠220から遠い図中右側の嵌合部230は、図中下端を回転軸として、光軸Xに対して反時計周りに角度θまで傾いている。このため、この嵌合部230においては、嵌合穴231の内周面が規定する嵌合穴231の延在方向が、案内軸212の延在方向に対して傾きを生じる。しかしながら、軸受けブッシュ240は、嵌合穴231の内部において、球面部242において球面座232により回転自在に支持されている。
【0050】
軸受けブッシュ240の挿通穴241の延在方向は、図中に二点鎖線Bで示すように、嵌合部230の嵌合穴231の延在方向に対して傾斜する。これにより、嵌合穴231の延在方向が案内軸212の延在方向に対して傾斜している場合であっても、嵌合穴231に対して揺動して、挿通された案内軸212を円滑に摺動させることができる。
【0051】
なお、一対の嵌合部230の一方が他方に対して傾いている場合、嵌合部230に形成された一対の嵌合穴231も延在方向が互いに異なる。即ち、図中に二点鎖線Aにより示すように、一方の嵌合穴231の延在方向は、他方の嵌合穴の延在方向と角度θをなす。このため、互いに中心軸の方向が異なる一対の嵌合穴に1本の案内軸212を挿通すると、嵌合部230が案内軸212に対して円滑に摺動しなくなる。
【0052】
また、案内軸212に対する間隙を大きくすることにより、嵌合穴231の中心軸の向きが異なっていても案内軸212に対して嵌合部230が円滑に摺動できる。しかしながら、嵌合部230と案内軸212との間に間隙が開いていると、案内軸212による嵌合部230の位置決め精度が低下する。
【0053】
このように、保持枠220は、球面軸受け構造部281により結合された軸受けブッシュ240をそれぞれの嵌合部230が有する。よって、嵌合部230の一方が傾いていても、軸受けブッシュ240が当該嵌合部230に対して揺動して、軸受けブッシュ240の中心軸を案内軸212の中心軸に一致させることができる。これにより、案内軸212による嵌合部230の位置決め精度を劣化させることなく、嵌合部230の案内軸212に対する円滑な摺動を維持できる。
【0054】
なお、上記の例では、一対の嵌合部230の各々において、軸受けブッシュ240を介して案内軸212を挿通した。しかしながら、一対の嵌合部230の一方に軸受けブッシュ240を用い、他方では省略した場合であっても、案内軸212を円滑に摺動させる効果は生じる。
【0055】
図7は、球面軸受け構造部281の断面図である。球面軸受け構造部281は、下記に説明する部分を除くと、
図4に示した球面軸受け構造部281と同じ構造を有する。よって、共通の要素には
図4と同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0056】
球面軸受け構造部281においては、軸受けブッシュ240が、嵌合部230に対して接着剤244で固定されている。即ち、この球面軸受け構造部281を有するレンズユニット200を製造する場合は、まず、軸受けブッシュ240を、嵌合部230の嵌合穴231に組み込んで、嵌合部230および軸受けブッシュ240を結合する。
【0057】
その後、軸受けブッシュ240が嵌合部230に対して揺動自在な状態で、案内軸212を軸受けブッシュ240に挿通する。これにより軸受けブッシュ240は揺動し、軸受けブッシュ240の中心軸は案内軸212の中心軸と平行になる。
【0058】
更に、案内軸212を軸受けブッシュ240に挿通した状態で、軸受けブッシュ240と嵌合部230とを接着剤244により固定する。これにより、軸受けブッシュ240の嵌合部230に対する揺動が制止され、案内軸212に対する間隙が小さくても、案内軸212に対して円滑に摺動する嵌合部230が形成される。よって、嵌合部230の案内軸212に対する位置決め精度を高く保ちつつ、嵌合部230を案内軸212に対して円滑に摺動させることができる。
【0059】
なお、単一の保持枠220が一対の嵌合部230を備える場合は、軸受けブッシュ240を嵌合部230に対して固定しなくても、保持枠220を案内軸212に対して位置決めすることができる。しかしながら、保持枠220に対して嵌合部230がひとつ設けられた構造の場合は、軸受けブッシュ240を嵌合部230に対して固定することにより、保持枠220の位置決めが完成する。
【0060】
また、上記の例では、接着剤244により軸受けブッシュ240を嵌合部230に固定したが、軸受けブッシュ240の固定方法は、接着剤に限られるわけではない。たとえば、嵌合部230および軸受けブッシュ240の一方が樹脂製品である場合は、溶着により軸受けブッシュ240を固定することができる。また、ねじ、ばね、ピン等により、軸受けブッシュ240を機械的に固定する構造にすることもできる。
【0061】
図8は、球面軸受け構造部282の断面図である。球面軸受け構造部282は、下記に説明する部分を除くと、
図4に示した球面軸受け構造部281と同じ構造を有する。よって、共通の要素には
図4と同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0062】
図示の球面軸受け構造部282において、軸受けブッシュ240は、球面部242を抑える環状部材234により嵌合部230に結合される。環状部材234の内周面は、軸受けブッシュ240の球面部242の外径R
0よりも小さな内径R
2を有する。また、環状部材234の外周面は、嵌合部230の嵌合穴231内面と螺合するねじ山を有する。
【0063】
球面軸受け構造部282において、嵌合部230に形成された嵌合穴231の一端は、軸受けブッシュ240の球面部242の外径R
0と同径あるいは外径R
0よりも大きな内径を有する。また、嵌合穴231の他端は、軸受けブッシュ240の球面部242の外径R
0よりも小さな内径R
1を有する。
【0064】
上記のような球面軸受け構造部282を有するレンズユニット200を製造する場合、まず、嵌合部230の嵌合穴231の一端から、軸受けブッシュ240の球面部242を挿入する。これにより、嵌合部230に設けられた球面部242を収容する嵌合穴231の内部において、球面部242の外径R
0よりも小さな内径R
1を有する嵌合穴231の小径部233と、嵌合穴231に螺入され、球面部242の外径R
0よりも小さな内径R
2の開口を有する環状部材234とで、軸受けブッシュ240の球面部242を挟むことにより、球面部242を嵌合穴231の内部に保持させることができる。
【0065】
なお、環状部材234の嵌合穴231に対する螺入が浅い場合、軸受けブッシュ240は嵌合穴231の内部で容易に揺動する。一方、環状部材234を嵌合穴231に深く螺入することにより、環状部材234により球面部242を押さえつけて、軸受けブッシュ240の嵌合部230に対する揺動を制止することもできる。
【0066】
こうして、案内軸212に対する間隙が小さくても、案内軸212に対して円滑に摺動する嵌合部230が形成される。よって、嵌合部230の案内軸212に対する位置決め精度を高く保ちつつ、嵌合部230を案内軸212に対して円滑に摺動させることができる。
【0067】
図9は、球面軸受け構造部283の断面図である。球面軸受け構造部283は、下記に説明する部分を除くと、
図4に示した球面軸受け構造部281と同じ構造を有する。よって、共通の要素には
図4と同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0068】
図示の球面軸受け構造部283において、軸受けブッシュ240は、クリップ236により嵌合部230に結合される。クリップ236は、嵌合部230の図中上端から嵌合部230の両側面に延在する。クリップ236の一端には、ラッチ237が設けられる。ラッチ237は、クリップ236が嵌合部230にはめられた場合に嵌合部230の段差に掛かって、クリップ236が嵌合部230から抜け落ちることを防止する。
【0069】
クリップ236の他端は、嵌合部230に形成された嵌合穴231の図中上端および下端にまたがって配される。クリップ236において、嵌合穴231と重なる領域には、軸受けブッシュ240の球面部242の外径R
0よりも小さな内径R
3が設けられる。
【0070】
これにより、嵌合部230に設けられて球面部242を収容する嵌合穴231の内部において、球面部242の外径R
0よりも小さな内径R
1を有する嵌合穴231の小径部233と、嵌合穴231に嵌着され、球面部242の外径R
0よりも小さな内径R
3の開口を有するクリップ236が、軸受けブッシュ240の球面部242を挟んで保持する止め具を形成する。よって、嵌合部230の球面部242が、嵌合穴231の内部に保持される。
【0071】
こうして、案内軸212に対する間隙が小さくても、案内軸212に対して円滑に摺動する嵌合部230が形成される。よって、嵌合部230の案内軸212に対する位置決め精度を高く保ちつつ、嵌合部230を案内軸212に対して円滑に摺動させることができる。
【0072】
このように、球面部242と球面座232とを組み合わせて球面軸受け構造部281、281、282、283を形成できる。ただし、上記の例では球面部242および球面座232がいずれも球面を有するが、球面部242および球面座232のいずれか一方が球面であれば、この球面上で異なる複数の位置において他方が接する形状を有する場合は、球面ではない場合であっても球面軸受け構造部281、281、282、283を形成できる。
【0073】
また、部分的な球面の中心が一致して同心状になっていれば、互いに径の異なる複数の球面を組み合わせて球面軸受け構造部281、281、282、283を形成することもできる。更に、嵌合部230の倒れ方向が予め判っており、且つ、倒れ量の大きさが不定の場合は、軸受けブッシュを一軸で支持する構造としてもよい。
【0074】
図10は、他の実施形態に係る筒状軸受け構造部284の断面図である。筒状軸受け構造部284は、嵌合部230と案内軸212との間隙を埋める筒状の軸受けブッシュ243を含む。
【0075】
筒状軸受け構造部284において、嵌合部230は、他方の嵌合部230に向かって僅かに倒れているので、内周面により規定される嵌合穴231の延在方向は、図中に二点鎖線Bで示すように、案内軸212の延在方向に対して傾斜する。
【0076】
軸受けブッシュ243の内周面となる挿通穴241は、案内軸212と摺動するので、図中に一点鎖線Aで示すように、案内軸212と同じ傾きを有する。このため、挿通穴241の延在方向は、嵌合穴231の延在方向に対して傾斜する。
【0077】
ここで、筒状軸受け構造部284における軸受けブッシュ243は、嵌合穴231の内周面と相補的な形状を有する外周面を有する。このため、軸受けブッシュ243の外周面は、嵌合穴231の内面に密着し、且つ、軸受けブッシュ243の内周面は、案内軸212の外周面に密着する。このように、軸受けブッシュ243は、互いに傾斜する嵌合穴231と挿通穴241との傾斜を吸収して、案内軸212を円滑に摺動させる。
【0078】
なお、筒状軸受け構造部284における嵌合穴231は球面座232を有しておらず、単純な円筒状を有する。よって、嵌合部230の成形が容易になる。また、嵌合部230に対する軸受けブッシュ243の組み付け作業も容易になる。よって、嵌合部230の光軸Xに対する傾きが予め判っている場合は、より簡潔な構造の筒状軸受け構造部284を形成できる。
【0079】
図11は、他のレンズユニット201の断面図である。
図1に示したレンズユニット200と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0080】
レンズユニット201は、5群のレンズ群L
1〜L5を有する。レンズユニット200の場合と同様に、最先端に位置するレンズ群L
1と、最後端に位置するレンズ群L
3は、固定筒210に対して固定される。また、レンズユニット200の場合と同様に、中央のレンズ群L
2は、嵌合部230および係合部250を有する保持枠220に保持され、案内軸212に案内されて光軸Xに沿って移動する。
【0081】
更に、レンズユニット201においては、レンズ群L
1およびレンズ群L
2の間に配されたレンズ群L
4と、レンズ群L
2およびレンズ群L
3の間に配されたレンズ群L
5とを有する。レンズ群L
4を保持する保持枠221と、レンズ群L
5を保持する保持枠222とは、連結筒290により相互に連結される。
【0082】
連結筒290は、一対の嵌合部239と単一の係合部259とを有する。嵌合部239は、それぞれ、案内軸212に対して嵌合する。また、係合部259は、案内軸212に対して係合する。これにより、レンズ群L
4およびレンズ群L
5は、案内軸212に案内されて、光軸Xと平行な方向に一体的に移動する。
【0083】
ここで、レンズ群L
2の支持および案内に与る一対の嵌合部230と、連結筒290の支持および案内に与る一対の嵌合部239とは、共通の案内軸212に対して嵌合する。また、レンズ群L
2の一対の嵌合部230の一方は、連結筒290の一対の嵌合部239に挟まれて配される。
【0084】
これにより、レンズユニット201においては、対になった嵌合部230の間隔をそれぞれ広くして、レンズ群L
2、L
4、L
5の倒れを抑制できる。また、嵌合部230の間隔をひろくしても、レンズ群L
2および連結筒290のそれぞれの移動量は確保される。
【0085】
更に、連結筒290においても、嵌合部239は、軸受けブッシュ249により、案内軸212に対する間隙を埋められている。すでに説明した通り、軸受けブッシュ249は、球面軸受け構造部281により嵌合部239に対して結合される。
【0086】
これにより、一対の嵌合部239の一方が他方に対して傾いていても、軸受けブッシュ249が当該嵌合部239に対して揺動して、軸受けブッシュ249の中心軸を案内軸212の中心軸に一致させることができる。よって、案内軸212による嵌合部239の位置決め精度を劣化させることなく、嵌合部239の案内軸212に対する円滑な摺動を維持できる。
【0087】
以上、レンズユニット200、201を交換できるカメラシステム100を例にあげて説明したが、レンズユニット200、201とカメラボディ300とが一体に形成されたカメラにおいても上記の構造を適用できる。また、メインミラー371を備えていないノンレフレックスカメラのレンズユニット200においても同様の構造を適用できる。更に、カメラ等の撮像装置以外に、案内軸212により案内されて移動する光学部材を備えた光学装置において、上記の構造を広く適用できる。
【0088】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。