特許第6343923号(P6343923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日亜化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6343923-発光装置 図000002
  • 特許6343923-発光装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343923
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20180611BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20180611BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20180611BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20180611BHJP
   F21V 5/10 20180101ALI20180611BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180611BHJP
【FI】
   H01L33/56
   F21V19/00 150
   F21V19/00 170
   F21V7/00 510
   F21V5/00 510
   F21V5/00 630
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-260757(P2013-260757)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-119013(P2015-119013A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年6月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】山田 元量
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 智則
(72)【発明者】
【氏名】近藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】伊延 元孝
(72)【発明者】
【氏名】藤川 康夫
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−114176(JP,A)
【文献】 特開2008−251604(JP,A)
【文献】 特開2006−165591(JP,A)
【文献】 特開2013−110233(JP,A)
【文献】 特開2010−234656(JP,A)
【文献】 特開平08−113678(JP,A)
【文献】 特開2011−213370(JP,A)
【文献】 特開2011−228463(JP,A)
【文献】 特開2012−069673(JP,A)
【文献】 特開2011−249476(JP,A)
【文献】 特開2011−044737(JP,A)
【文献】 特開2011−222830(JP,A)
【文献】 特開2009−130237(JP,A)
【文献】 特開2002−280601(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0301357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
F21V 19/00−19/06
F21V 5/00
F21V 5/10
F21V 7/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を有する基体と、前記基体上に間隔をあけて配置された複数の配線部と、前記配線部間の領域を跨ぐように前記配線部に接合された発光素子と、前記配線部間の領域に設けられ前記発光素子が前記配線部に接合されている部分を覆う樹脂部と、を備えた発光装置であって、
前記樹脂部は、前記発光素子の出射光を吸収する光吸収材と、前記発光素子の出射光を反射する光反射材と、を有するとともに、前記発光素子の側面を覆い、
前記光吸収材は、カーボンブラックであることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記基体は、可撓性を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記基体は、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)の少なくとも1種を有し、
前記発光素子の出射光は、少なくとも500nm以下の波長を有することを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記樹脂部は、波長変換材を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線部が配置された基板に複数の発光素子が接合される発光装置が提案された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−322937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の発光装置では、配線部間において露出する基板の表面が発光素子の出射光を受けて劣化(例:変色、強度低下)し、発光装置の絶縁耐圧を低下させ得るという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、配線部間において露出する基体の表面に発光素子の出射光が当たることを抑制する発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題は、次の手段により解決される。すなわち、樹脂を有する基体と、前記基体上に間隔をあけて配置された複数の配線部と、前記配線部間の領域を跨ぐように前記配線部に接合された発光素子と、前記配線部間の領域に設けられ前記発光素子が前記配線部に接合されている部分を覆う樹脂部と、を備えた発光装置であって、前記樹脂部は、前記発光素子の出射光を吸収する光吸収材を有することを特徴とする発光装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基体の劣化を抑制して発光装置の絶縁耐圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る発光装置の模式図であり、図1(a)は全体図、図1(b)は図1(a)中のA−A部分の拡大図である。
図2】本発明の実施形態に係る発光装置の模式的端面図であり、図2(a)は図1(b)中のB−B端面を示す図であり、図2(b)は図1(b)中のC−C端面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付した図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る発光装置の模式図であり、図1(a)は全体図、図1(b)は図1(a)中のA−A部分の拡大図である。図2は、本発明の実施形態に係る発光装置の模式的端面図であり、図2(a)は図1(b)中のB−B端面を示す図であり、図2(b)は図1(b)中のC−C端面を示す図である。なお、理解を容易にするため、図1(b)においては、樹脂部40に覆われている部分を破線で示している。また、理解を容易にするため、光反射層70は、図2においてのみ図示しており、図1においては図示していない。
【0011】
図1、2に示すように、本発明の実施形態に係る発光装置100は、樹脂を有する基体10と、基体10上に間隔をあけて配置された複数の配線部20と、配線部20間の領域Xを跨ぐように配線部20に接合された発光素子30と、配線部20間の領域Xに設けられ発光素子30が配線部20に接合されている部分を覆う樹脂部40と、を備えた発光装置であって、樹脂部40は、発光素子30の出射光を吸収する光吸収材を有する発光装置である。
【0012】
以下、順に説明する。
【0013】
[基体10]
基体10には、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)などの絶縁性樹脂を用いることができる。基体10は、樹脂を有していればよく、樹脂のみで構成されていてもよいし、例えば、細長いテープ状の銅箔やアルミニウム箔などが絶縁性樹脂などで被覆されることにより構成されていてもよい。なお、基体10が樹脂のみで構成されている場合には、発光素子30の出射光を受けて基体10が劣化しやすいが、本発明の実施形態によれば、このような劣化が抑制される。
【0014】
基体10には、例えば長尺部材を用いることができる。この場合、基体10の長手方向と短手方向の長さの比は、例えば、6:1、30:1、100:1とすることができる。具体的には、長手方向の長さが1150mmで、短手方向の長さが15mmの部材などは、基体10の一例となる。
【0015】
基体10の厚みは、例えば、10μm〜100μm程度とすることができる。基体10の厚みが数十μm程度と薄い場合、発光素子30の出射光は、基体10の表層を劣化させるだけではなく、基体10に貫通孔を形成してしまうことがあるが、本発明の実施形態によれば、このような劣化や貫通孔の形成を抑制することができる。
【0016】
基体10は、可撓性を有していてもよい。基体10が可撓性を有する場合は、発光装置100をロールツーロール工法で製造することができる。また、発光装置100をリールなどによってロール状に巻き取った状態で保管することができる。また、発光装置100を曲面に沿わせて取り付けることもできる。
【0017】
[複数の配線部20]
複数の配線部20は、基体10上に間隔をあけて配置されている。配線部20間の領域Xは、基体10の表面や接着材50(後述)などが露出しているため、発光素子30の出射光を受けて劣化しやすいが、本発明の実施形態によれば、このような劣化が抑制される。
【0018】
配線部20には、例えば銅やアルミニウムなどの金属または合金の単層または積層構造の導電性薄膜を用いることができる。
【0019】
配線部20の厚みは、例えば8μm〜200μmとすることができる。この程度の厚みであれば、基体10が可撓性を有する場合において、基体10の可撓性を損なわない。
【0020】
配線部20は、その平面視における角に丸みを帯びていてもよい。このようにすれば、配線部20の接着性(耐剥離性)を向上させて信頼性を高めることができる。角の曲率半径は、例えば、半径100μm以上とすることができる。
【0021】
配線部20は、基体10の表面上においてできるだけ広い面積で設けてもよい。このようにすれば、配線部20から熱が効率的に放熱されるため、発光装置100の放熱性を高めることができる。
【0022】
配線部20は、接着材50を介して基体10に配置されていてもよい。接着材50には、例えばエポキシ系、イミド系、アミド系、アクリル系、シリコーン系などの樹脂を用いることができる。接着材50の厚みは、例えば1μm〜50μmとすることができる。
【0023】
接着材50は、配線部20が配置されている領域のみならず、配線部20間の領域Xにも形成することができる。この場合、接着材50は、発光素子30の出射光を吸収する光吸収材を有していてもよい。このようにすれば、基体10の劣化がより抑制される。
【0024】
配線部20は、外部配線(外部電源と接続される配線)に接続される端子部としても機能する。端子部は、例えば、基体10の主面側の端部に形成することができる。外部配線は、基体10上に設けられる公知のコネクタなどに接続されていてもよい。
【0025】
複数の配線部20は、例えば、基体10の長手方向及び/又は短手方向に並べることができる。また、配線部20の平面形状は、基体10のサイズや必要な発光素子30の数などに応じて適宜変更することができる。
【0026】
配線部20間の領域Xは、配線部20が厚みを有しているため、例えば溝状となる。この場合、溝の幅は、例えば配線部20の幅より狭く、具体的には、例えば0.05mm〜5mm程度とすることができる。
【0027】
配線部20間の領域Xの平面形状は、例えば、直線状、曲線状、波線状、それらが組み合わされた形状などとすることができる。
【0028】
[複数の発光素子30]
複数の発光素子30は、配線部20間の領域Xを跨ぐように配線部20に接合されている。すなわち、配線部20間の領域Xにより離間されている一方の配線部20と他方の配線部20とに正負の電極がそれぞれ接続される。1つの配線部20間の領域Xを1つの発光素子30が跨いでいてもよいし、1つの配線部20間の領域Xを2つ以上の発光素子30が跨いでいてもよい。
【0029】
複数の発光素子30は、直列、並列、直並列、並直列などの任意の接続方法で、互いに電気的に接続することができる。
【0030】
発光素子30は、ワイヤボンディングのようにワイヤによって接続する方法やフリップチップ実装などにより配線部20に接合することができる。フリップチップ実装により接合される場合、発光素子30は、接合部材60を介して配線部20に接続される。接合部材60には、Sn−Ag−Cu系やAu−Sn系、Sn−Cu系などの半田やAuなどの金属、異方性導電ペースト、Agペーストなどを用いることができる。なお、ダイボンディングにより配線部20に接合する場合、ダイボンディングに用いるダイボンド材は、発光素子30の出射光を吸収する光吸収材を有していてもよい。このようにすれば、基体10の劣化がより抑制される。
【0031】
発光素子30には、その出射光が500nm以下の波長を有するものを用いることができる。ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)などの樹脂は、当該波長の光が当たると劣化しやすいが、本発明の実施形態によれば、これらの樹脂を有する基体10の劣化を抑制することができる。
【0032】
発光素子30は、例えば、半導体構造と、p側電極と、n側電極と、絶縁材料層と、を有している。半導体構造は、例えば、透光性を有するサファイア基板上に順次積層されたn型層、活性層、及びp型層を有している。n型層、活性層、及びp型層は、例えば窒化ガリウム系半導体によって構成することができる。
【0033】
発光素子30には、直接的にまたは間接的に波長変換部材を設けることができる。例えば、発光素子30の表面に電着法やスプレー塗布によって任意の波長の光を発する波長変換部材を形成してもよいし、後述するように樹脂部40や封止部材80に波長変換部材を含有させてもよい。
【0034】
[樹脂部40]
樹脂部40は、配線部20間の領域Xに設けられ発光素子30が配線部20に接合されている部分を覆っている。樹脂部40は、例えば、発光素子30と基体10との間に充填される樹脂材料(アンダーフィル材料)などにより構成することができる。
【0035】
樹脂部40には、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂、フッ素樹脂、及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂などを用いることができる。
【0036】
樹脂部40は、発光素子30が配線部20に接合されている部分を覆っていればよく、発光素子30の側面(発光素子30の活性層の側面)を覆っている必要はない。樹脂部40が発光素子30の側面(発光素子30の活性層の側面)を覆っていない場合は、基体10の反対側へより多くの光が取り出せるため、発光素子30の出射光が基体10に当たることを抑制することができる。なお、発光素子30の側面に撥水剤(撥油剤)を塗ってから樹脂部40を設ければ、樹脂部40が発光素子30の側面(発光素子30の活性層の側面)を覆わない形状を比較的容易に形成することができる。
【0037】
(光吸収材)
樹脂部40は、発光素子30の出射光を吸収する光吸収材を有している。これにより、基体10に向かう発光素子30の出射光が樹脂部40により吸収され、発光素子30の出射光が基体10に当たることを抑制することができる。
【0038】
光吸収材を有する樹脂部40の吸収係数は、例えば、500(cm−1)以上である。この場合は、厚みが10umの樹脂部40に入射した光のうち61%が樹脂部40を透過する。
【0039】
光吸収材は、樹脂部40において例えば均一分散されている。発光素子30の出射光が光吸収材に当たる確率は高くなるため、発光素子30の出射光が基体10に当たることを抑制することができる。あるいは、基体10に当たる発光素子30の出射光の光量を維持しつつ、光吸収材の使用量を減らすことができる。光吸収材にカーボンブラックなどの電気導電性を有する部材を用いる場合には、その使用量を少なくすることで発光装置100の絶縁耐圧をより向上させることができる。また、光吸収材としては、金属部材以外のものを用いることが好ましい。
【0040】
光吸収材には、例えば、カーボンブラック、顔料、染料などを用いることができる。また、光吸収材の形状は、例えば球形、鱗片、針状などである。また、光吸収材の粒径や長さなどは、例えば1nm〜50μm程度である。
【0041】
(光反射材)
樹脂部40は、さらに、発光素子30の出射光を反射する光反射材を有していてもよい。このようにすれば、光反射材により発光素子30の出射光を拡散させて、発光素子30の出射光の光路長が長くなるため、発光素子30の出射光が光吸収材に当たる確率が高くなり、発光素子30の出射光が基体10に当たることを抑制することができる。あるいは、基体10に当たる発光素子30の出射光の光量を維持しつつ、光吸収材の使用量を減らすことができる。光吸収材にカーボンブラックなどの電気導電性を有する部材を用いる場合には、その使用量を少なくすることで発光装置100の絶縁耐圧をより向上させることができる。
【0042】
光反射材は、例えば、基体10側により少なく設けることができる。このようにすれば基体10側へ漏れる光量を抑制しつつ、光取り出し面側への光量をより多くすることが出来る。
【0043】
光反射材には、例えば、樹脂部40との屈折率差による拡散反射作用のあるものを用いることができる。具体的には、SiO、TiO、Al、ZrO、MgO、BaSOなどの白色フィラーやサブミクロンオーダーの気孔などを用いることができる。また、干渉や金属膜を利用したミラー材料なども光反射材として用いることができる。
【0044】
(波長変換材)
樹脂部40は、さらに、発光素子30の発光波長を基体10が劣化しにくい波長に変換する波長変換材を有していてもよい。このようにすれば、劣化しやすい波長の光が基体10に当たることを抑制することができる。あるいは、基体10に当たる発光素子30の出射光の光量を維持しつつ、光吸収材の使用量を減らすことができる。光吸収材にカーボンブラックなどの電気導電性を有する部材を用いる場合には、その使用量を少なくすることで発光装置100の絶縁耐圧をより向上させることができる。
【0045】
波長変換材としては、例えば酸化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、フッ化物系蛍光体などを用いることができる。
【0046】
以上説明した本発明の実施形態に係る発光装置100によれば、発光素子30が配線部20に接合されている部分を覆う樹脂部40が配線部20間の領域Xに設けられ、この樹脂部40が光吸収材を有するものとされる。このため、配線部20間において露出する基体10の表面に発光素子30の出射光が当たることを抑制することができる。したがって、本発明の実施形態に係る発光装置100によれば、基体10の劣化を抑制して発光装置100の絶縁耐圧を向上させることができる。
【0047】
なお、本発明の実施形態に係る発光装置100は、さらに、光反射層70や封止部材80などを備えていてもよい。
【0048】
[光反射層70]
光反射層70は、基体10や配線部20を覆うように設けられている。光反射層70は、基体10表面の略全面を覆っているが、発光素子30が配置される領域Xには、配線部20の一部と配線部20間の領域Xの一部とが露出するように開口Yが形成される。
【0049】
光反射層70には、発光素子30の出射光や波長変換部材により波長変換された光を反射する材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、シリコーン系樹脂に酸化チタンを含有させた白レジストと呼ばれる絶縁性の白色インクを一例として挙げることができる。
【0050】
[封止部材80]
封止部材80は、発光素子30を封止している。1つの封止部材80が1つの発光素子30を封止していてもよいし、1つの封止部材80が2つ以上の発光素子30を封止していてもよい。
【0051】
封止部材80には、透光性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂など)や透光性のガラスなどを用いることができる。
【0052】
封止部材80は、光散乱材(硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素など)を有していてもよい。
【0053】
封止部材80は、発光素子30の出射光を吸収して異なる波長の光を出す波長変換部材を有していてもよい。このようにすれば、所望の発光色の発光装置100を得ることができる。波長変換部材は、封止部材80の内部に含有されていてもよいし、封止部材80の表面にのみ設けられていてもよい。封止部材80の表面にのみ設けられる場合はスプレー塗布などの方法で封止部材80の表面に波長変換層を形成することができる。また、発光素子30の近傍に波長変換材を含有した層を設け、その層を覆うように2層目の層を形成するなどし、封止部材80を複数層として形成してもよい。
【0054】
封止部材80が有する波長変換部材としては、例えば、酸化物系、硫化物系、フッ化物系、或いは窒化物系の蛍光体などを一例として挙げることができる。
【0055】
例えば、発光素子30に青色発光する窒化ガリウム系発光素子30を用いる場合には、青色光を吸収して黄色〜緑色発光するYAG系またはLAG系の蛍光体や、緑色発光するSiAlON系、クロロシリケート系、βサイアロン系の蛍光体や赤色発光するSCASN系、CASN系またはKSF系の蛍光体を、単独又は組み合わせて波長変換部材として用いることができる。このようにすれば、白色光を発光する発光装置100を得ることができる。
【0056】
また、液晶ディスプレイやテレビのバックライト等の表示装置に用いる発光装置100では、SiAlON系蛍光体、クロロシリケート系またはβサイアロン系とSCASN蛍光体またはKSF系蛍光体を組み合わせて波長変換部材として用いることができる。このようにすれば、色再現性の高い表示装置を得ることができる。
【0057】
また、照明用途に用いる発光装置100では、YAG系またはLAG系の蛍光体とSCASN系またはCASN系の蛍光体を組み合わせて波長変換部材として用いることができる。このようにすれば、演色性の高い照明装置を得ることができる。
【0058】
なお、波長変換部材は、発光装置100の外部、例えば発光装置100が発光源として用いられる表示装置や照明装置に設けることもできる。例えば、封止部材80に波長変換部材を含めることなく、または封止部材80に波長変換材に含めつつ、封止部材80を透過して出射された光を波長変換する波長変換部材を表示装置や照明装置に別途設けることもできる。このような別途設けられた波長変換部材としては、例えば、発光装置100全体の上部を覆うように配置されたシート状や板状のものを一例として挙げることができる。
【実施例1】
【0059】
基体10には25μm厚みのポリイミドシートを、配線部20には35μm厚のCuを用い、基体10と配線部20とを接着材50で接着する。接着材50には熱硬化性のエポキシ系接着材50を用いた。接着材50の厚みは、約10μmとした。
【0060】
基体10に平面視が600μm角の発光素子30(λd=450nm)を接合部材60としてSnCu半田を使用してフリップチップ実装し、シリコーン樹脂に平均粒径0.25μmの酸化チタンを30wt%練り込んだアンダーフィル材料を樹脂部40として発光素子30の周りに塗布する。樹脂部40には、カーボンブラックを1wt%含有させた。その後、封止部材80としてシリコーン樹脂をドーム状に成型した。
【0061】
このようにして形成した発光装置100では、発光素子30の出射光が基体10に当たることが抑制されており、基体10の裏側への光漏れも少ない。なお、ポリイミドは、これに含まれるイミド基中のC−N結合部の分解波長が448.9nmであるため、出射光が450nm付近の波長を有する発光素子30を用いる場合に劣化分解し、基体10に穴があき絶縁耐圧が低下するが、本実施例によれば、上記のとおり、この劣化が効果的に抑制され絶縁耐圧を確保することが出来る。
【0062】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、これらの説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらの説明によって何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
100 発光装置
10 基体
20 配線部
30 発光素子
40 樹脂部
50 接着材
60 接合部材
70 光反射層
80 封止部材
X 配線部間の領域
Y 開口
図1
図2