(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の光学系、光学装置及び光学系の製造方法について説明する。
本願の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とを有し、前記第2レンズ群が、正レンズと、負レンズとを少なくとも含み、前記第3レンズ群が、物体側から順に、正の屈折力を有する第3aレンズ群と、負の屈折力を有する第3bレンズ群と、第3cレンズ群とを有し、無限遠物体から近距離物体への合焦時に、前記第2レンズ群が光軸に沿って像側へ移動し、前記第3bレンズ群がシフトレンズ群として光軸と直交する方向の成分を含むように移動し、以下の条件式(1)〜(3)を満足することを特徴とする。
(1) 3.20<f/(−f2)<6.00
(2) νdp<30
(3) Ndn+0.0071×νdn−1.964<0
ただし、
f:無限遠物体合焦時の前記光学系の焦点距離
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
νdp:前記第2レンズ群中の前記正レンズの
うち最もアッベ数の小さい正レンズの硝材のd線(波長587.6nm)に対するアッベ数
Ndn:前記第2レンズ群中の前記負レンズの
うち最も屈折率の小さい負レンズの硝材のd線(波長587.6nm)に対する屈折率
νdn:前記第2レンズ群中の前記負レンズの
うち最も屈折率の小さい負レンズの硝材のd線(波長587.6nm)に対するアッベ数
【0012】
上記のように本願の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とを有し、前記第2レンズ群が、正レンズと、負レンズとを少なくとも含み、前記第3レンズ群が、物体側から順に、正の屈折力を有する第3aレンズ群と、負の屈折力を有する第3bレンズ群と、第3cレンズ群とを有し、無限遠物体から近距離物体への合焦時に、前記第2レンズ群が光軸に沿って像側へ移動する。この構成により、本願の光学系は近距離物体合焦時に球面収差を良好に補正することができる。
【0013】
また、上記のように本願の光学系は、前記第3bレンズ群がシフトレンズ群として光軸と直交する方向の成分を含むように移動、即ちレンズシフトする。この構成により、手ぶれ等に起因する像ぶれの補正、即ち防振を行うことができる。特に、レンズシフト時に偏芯コマ収差を良好に補正することができる。
【0014】
条件式(1)は、無限遠物体合焦時の本願の光学系の焦点距離と第2レンズ群の焦点距離との比の適切な範囲を規定するものである。本願の光学系は、条件式(1)を満足することにより、球面収差を良好に補正することができる。
【0015】
本願の光学系の条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群の屈折力が大きくなり過ぎて、球面収差を過剰に補正してしまうため好ましくない。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を5.80とすることがより好ましい。
【0016】
一方、本願の光学系の条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群の屈折力が小さくなり過ぎて、第1レンズ群で発生する球面収差を十分に補正することができなくなってしまうため好ましくない。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を3.80とすることがより好ましい。
【0017】
条件式(2)は、第2レンズ群中の正レンズの硝材のd線(波長587.6nm)に対するアッベ数の適切な範囲を規定するものである。本願の光学系は、条件式(2)を満足することにより、合焦時に色収差の変動を抑えることができる。
【0018】
本願の光学系の条件式(2)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群内での色消しが困難になり、合焦時に色収差の変動が大きくなってしまうため好ましくない。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を26.0とすることがより好ましい。
【0019】
なお、本願の光学系に用いる硝材のd線に対するアッベ数νd、g線とF線に対する部分分散比θgFは次式で求められる。ただし、フラウンホーファー線のg線(波長435.8nm)、F線(波長486.1nm)、d線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)に対する屈折率をそれぞれng、nF、nd、nCとする。
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θgF=(ng−nF)/(nF−nC)
【0020】
条件式(3)は、第2レンズ群中の負レンズの硝材の条件を規定するものである。本願の光学系は、条件式(3)を満足することにより、色収差と球面収差をバランスよく補正することができる。
【0021】
本願の光学系の条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群内で色収差と球面収差をバランスよく補正することが困難になるため好ましくない。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を−0.01とすることがより好ましい。
【0022】
以上の構成により、色収差をはじめとする諸収差を良好に補正し優れた光学性能を有する光学系を実現することができる。
【0023】
なお、本願の光学系において、第2レンズ群は条件式(2)を満足する正レンズと条件式(3)を満足する負レンズとを少なくとも1枚ずつ有していればよい。したがって、例えば第2レンズ群が負レンズを複数枚有する場合には、全ての負レンズが条件式(3)を満足する必要はない。
また、本願の光学系において、条件式(2)を満足する正レンズと条件式(3)を満足する負レンズとは接合されていることが望ましい。
また、第2レンズ群は、物体側から順に、負レンズと、条件式(2)を満足する正レンズと条件式(3)を満足する負レンズとからなる接合レンズとを有していることが望ましい。この構成により、近距離物体合焦時に球面収差、像面湾曲及び色収差等を良好に補正することができる。
【0024】
また、本願の光学系は、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4) 0<f/f12
ただし、
f:無限遠物体合焦時の前記光学系の焦点距離
f12:無限遠物体合焦時の前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の合成焦点距離
【0025】
条件式(4)は、無限遠物体合焦時の本願の光学系の焦点距離と無限遠物体合焦時の第1レンズ群と第2レンズ群の合成焦点距離との比の適切な範囲を規定するものである。本願の光学系は、条件式(4)を満足することにより、全長が増大することなく球面収差を良好に補正することができる。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を「<1.0」とすることがより好ましい。
【0026】
本願の光学系の条件式(4)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群の屈折力が小さくなる、又は第2レンズ群の屈折力が大きくなる。これにより、本願の光学系の全長の増大を招くとともに、球面収差を過剰に補正してしまうため好ましくない。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値を0.45とすることがより好ましい。
【0027】
また、本願の光学系は、前記シフトレンズ群が、少なくとも1枚の正レンズと、少なくとも1枚の負レンズとを含むことが望ましい。この構成により、レンズシフト時に色コマ収差を良好に補正することができる。
【0028】
また、本願の光学系は、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5) θgfn−0.6438+0.0016821×νdn<−0.001
ただし、
θgfn:前記第2レンズ群中の前記負レンズの
うち最も部分分散比の小さい負レンズの部分分散比
νdn:前記第2レンズ群中の前記負レンズの
うち最も部分分散比の小さい負レンズの硝材のd線(波長587.6nm)に対するアッベ数
【0029】
条件式(5)は、第2レンズ群中の負レンズの硝材の条件を規定するものである。本願の光学系は、条件式(5)を満足することにより、色収差を良好に補正することができる。
本願の光学系の条件式(5)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群内で色収差の2次スペクトルを補正することが困難になるため好ましくない。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を−0.002とすることがより好ましい。
【0030】
また、本願の光学系は、前記第1レンズ群が、少なくとも2枚の負レンズを含むことが望ましい。この構成により、球面収差と軸上色収差を良好に補正することができる。
【0031】
なお、本願の光学系は、前記第1レンズ群が、最も物体側に保護フィルタガラスを有することが好ましい。保護フィルタガラスは、実質的に屈折力を有しないレンズであって、その焦点距離が本願の光学系の焦点距離の10倍以上であることが好ましい。特に、本願の光学系は、保護フィルタガラスが物体側に凸面を向けた負メニスカス形状であることが好ましい。この構成により、ゴーストを良好にカットすることができる。
また、本願の光学系は、前記第3レンズ群が正の屈折力を有することが望ましい。
また、本願の光学系は、前記第3cレンズ群が正の屈折力を有することが望ましい。
【0032】
本願の光学装置は、上述した構成の光学系を有することを特徴とする。これにより、色収差をはじめとする諸収差を良好に補正し優れた光学性能を有する光学装置を実現することができる。
【0033】
本願の光学系の製造方法は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とを有する光学系の製造方法であって、前記第2レンズ群が、正レンズと、負レンズとを少なくとも含むようにし、前記第3レンズ群が、物体側から順に、正の屈折力を有する第3aレンズ群と、負の屈折力を有する第3bレンズ群と、第3cレンズ群とを有するようにし、無限遠物体から近距離物体への合焦時に、前記第2レンズ群が光軸に沿って像側へ移動するようにし、前記第3bレンズ群がシフトレンズ群として光軸と直交する方向の成分を含むように移動するようにし、前記光学系が以下の条件式(1)〜(3)を満足するようにすることを特徴とする。これにより、色収差をはじめとする諸収差を良好に補正し優れた光学性能を有する光学系を製造することができる。
(1) 3.20<f/(−f2)<6.00
(2) νdp<30
(3) Ndn+0.0071×νdn−1.964<0
ただし、
f:無限遠物体合焦時の前記光学系の焦点距離
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
νdp:前記第2レンズ群中の前記正レンズの
うち最もアッベ数の小さい正レンズの硝材のd線(波長587.6nm)に対するアッベ数
Ndn:前記第2レンズ群中の前記負レンズの
うち最も屈折率の小さい負レンズの硝材のd線(波長587.6nm)に対する屈折率
νdn:前記第2レンズ群中の前記負レンズの
うち最も屈折率の小さい負レンズの硝材のd線(波長587.6nm)に対するアッベ数
【0034】
以下、本願の数値実施例に係る光学系を添付図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は、本願の第1実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時のレンズ配置を示す断面図である。
本実施例に係る光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3とから構成されている。なお、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間には開口絞りSが備えられている。
【0035】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、保護フィルタガラスFLGと、平凸形状の正レンズL11と、両凸形状の正レンズL12と、両凹形状の負レンズL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15との接合レンズとからなる。なお、保護フィルタガラスFLGは、物体側に凸面を向けた負メニスカス形状をしており、実質的に屈折力を有していない。
【0036】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、平凹形状の負レンズL21と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL22と平凹形状の負レンズL23との接合レンズとからなる。
【0037】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、正の屈折力を有する第3aレンズ群G3aと、負の屈折力を有する第3bレンズ群G3bと、正の屈折力を有する第3cレンズ群G3cとから構成されている。
第3aレンズ群G3aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31と両凸形状の正レンズL32との接合レンズからなる。
第3bレンズ群G3bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL33と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL34と両凹形状の負レンズL35との接合レンズとからなる。
第3cレンズ群G3cは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL36と、両凹形状の負レンズL37と、両凸形状の正レンズL38とからなる。
【0038】
以上の構成の下、本実施例に係る光学系では、第2レンズ群G2を光軸に沿って像側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。なおこのとき、開口絞りSの位置は固定である。
【0039】
本実施例に係る光学系では、手ぶれ等の発生時には、第3bレンズ群G3bをシフトレンズ群(防振レンズ群)として光軸と直交する方向の成分を含むようにシフトさせることにより防振を行う。
【0040】
ここで、レンズ全系の焦点距離がf、防振係数(防振時の防振レンズ群の移動量に対する像面I上での像の移動量の比)がKであるレンズにおいて、角度θの回転ぶれを補正するためには、防振レンズ群を(f・tanθ)/Kだけ光軸と直交する方向へ移動させればよい。したがって、本実施例に係る光学系は、防振係数が−1.474、焦点距離が490.0(mm)であるため、0.149°の回転ぶれを補正するための第3bレンズ群G3bの移動量は−0.865(mm)となる。
【0041】
以下の表1に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
表1において、fは焦点距離、Bfはバックフォーカスを示す。
[面データ]において、面番号は物体側から数えた光学面の順番、rは曲率半径、dは面間隔(第n面(nは整数)と第n+1面との間隔)、ndはd線(波長587.6nm)に対する屈折率、νdはd線(波長587.6nm)に対するアッベ数、θgfは部分分散比をそれぞれ示している。また、物面は物体面、可変は可変の面間隔、絞りSは開口絞りS、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示している。
【0042】
[各種データ]において、FNOはFナンバー、2ωは画角(単位は「°」)、Yは像高、TLは本実施例に係る光学系の全長(第1面から像面Iまでの光軸上の距離)、dnは第n面と第n+1面との可変の間隔をそれぞれ示す。なお、βは撮影倍率を示す。
[レンズ群データ]には、各レンズ群の始面と焦点距離を示す。
[条件式対応値]には、本実施例に係る光学系の各条件式の対応値を示す。
【0043】
ここで、表1に掲載されている焦点距離f、曲率半径r及びその他の長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
なお、以上に述べた表1の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0044】
(表1)第1実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd θgf
物面 ∞ ∞
1 1200.37020 5.000 1.51680 63.88 0.54
2 1199.78950 1.000 1.00000
3 199.15420 13.200 1.43385 95.25 0.54
4 ∞ 80.900 1.00000
5 121.53210 15.500 1.43385 95.25 0.54
6 -467.23930 2.000 1.00000
7 -468.07830 5.200 1.61266 44.46 0.56
8 374.42080 56.520 1.00000
9 78.91620 3.500 1.69680 55.52 0.54
10 45.50200 11.000 1.49782 82.57 0.54
11 253.27430 可変 1.00000
12 ∞ 2.500 1.83400 37.18 0.58
13 82.22170 3.940 1.00000
14 -408.75480 3.900 1.80809 22.74 0.63
15 -94.71900 2.500 1.55298 55.07 0.54
16 ∞ 可変 1.00000
17(絞りS) ∞ 25.550 1.00000
18 96.56750 1.800 1.80809 22.74 0.63
19 47.00200 5.500 1.49782 82.57 0.54
20 -244.38620 4.500 1.00000
21 -634.04200 1.800 1.62299 58.12 0.54
22 142.83860 1.650 1.00000
23 -256.01900 4.700 1.61266 44.46 0.56
24 -42.18200 1.800 1.49782 82.57 0.54
25 69.59100 4.500 1.00000
26 45.69560 6.700 1.61266 44.46 0.56
27 -114.28170 12.908 1.00000
28 -62.33220 1.800 1.83481 42.73 0.56
29 50.30970 1.654 1.00000
30 63.83160 4.900 1.80100 34.92 0.59
31 -136.04010 Bf 1.00000
像面 ∞
[各種データ]
f 490.000
FNO 4.122
2ω 5.035
Y 21.63
TL 424.803
Bf 87.772
無限遠物体合焦時 中間距離物体合焦時 近距離物体合焦時
f又はβ 490.000 -0.033 -0.153
d11 14.505 17.427 28.403
d16 36.105 33.183 22.207
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 197.04184
2 12 -107.21029
3 18 618.12575
[条件式対応値]
(1) f/(−f2) = 4.57
(2) νdp = 22.74
(3) Ndn+0.0071×νdn−1.964 = -0.02
(4) f/f12 =
0.74
(5) θgfn−0.6438+0.0016821×νdn = -0.007
【0045】
図2(a)、及び
図2(b)はそれぞれ、本願の第1実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時の諸収差図、及び無限遠物体合焦時に0.149°の回転ぶれに対してレンズシフトした際のコマ収差図である。
図3(a)、及び
図3(b)はそれぞれ、本願の第1実施例に係る光学系の中間距離物体合焦時の諸収差図、及び近距離物体合焦時の諸収差図である。
【0046】
各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高をそれぞれ示す。dはd線(波長587.6nm)、gはg線(波長435.8nm)における収差をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。コマ収差図は、各像高Yにおけるコマ収差を示す。なお、後述する各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。
各収差図より、本実施例に係る光学系は無限遠物体合焦時から近距離物体合焦時にわたって諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有しており、さらにレンズシフト時にも優れた結像性能を有していることがわかる。
【0047】
(第2実施例)
図4は、本願の第2実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時のレンズ配置を示す断面図である。
本実施例に係る光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3とから構成されている。なお、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間には開口絞りSが備えられている。
【0048】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、保護フィルタガラスFLGと、両凸形状の正レンズL11と、両凸形状の正レンズL12と、両凹形状の負レンズL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15との接合レンズとからなる。なお、保護フィルタガラスFLGは、物体側に凸面を向けた負メニスカス形状をしており、実質的に屈折力を有していない。
【0049】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL22と両凹形状の負レンズL23との接合レンズとからなる。
【0050】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、正の屈折力を有する第3aレンズ群G3aと、負の屈折力を有する第3bレンズ群G3bと、正の屈折力を有する第3cレンズ群G3cとから構成されている。
第3aレンズ群G3aは、両凸形状の正レンズL31からなる。
第3bレンズ群G3bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL32と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL33と両凹形状の負レンズL34との接合レンズとからなる。
第3cレンズ群G3cは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL35と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL36と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL37とからなる。
【0051】
以上の構成の下、本実施例に係る光学系では、第2レンズ群G2を光軸に沿って像側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。なおこのとき、開口絞りSの位置は固定である。
【0052】
本実施例に係る光学系では、手ぶれ等の発生時には、第3bレンズ群G3bをシフトレンズ群として光軸と直交する方向の成分を含むようにシフトさせることにより防振を行う。
本実施例に係る光学系は、防振係数が−1.174、焦点距離が392.0(mm)であるため、0.167°の回転ぶれを補正するための第3bレンズ群G3bの移動量は−0.971(mm)となる。
以下の表2に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0053】
(表2)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd θgf
物面 ∞ ∞
1 1200.37020 5.000 1.51680 63.88 0.54
2 1199.78950 1.000 1.00000
3 237.23701 17.094 1.43385 95.25 0.54
4 -780.80894 55.000 1.00000
5 151.99218 18.000 1.43385 95.25 0.54
6 -434.28682 2.353 1.00000
7 -396.78779 5.200 1.61266 44.46 0.56
8 339.13983 94.399 1.00000
9 69.95818 3.500 1.76684 46.78 0.56
10 46.63731 11.000 1.49782 82.57 0.54
11 808.77894 可変 1.00000
12 -494.42249 2.500 1.83400 37.18 0.58
13 88.85487 3.814 1.00000
14 -421.85554 4.200 1.84666 23.78 0.62
15 -71.46098 2.500 1.61266 44.46 0.56
16 538.80053 可変 1.00000
17(絞りS) ∞ 21.500 1.00000
18 319.21962 4.139 1.48749 70.32 0.53
19 -96.89607 4.500 1.00000
20 -531.82331 2.000 1.72916 54.61 0.54
21 116.61020 1.764 1.00000
22 -431.49513 3.860 1.80610 33.27 0.59
23 -73.26709 1.800 1.49782 82.57 0.54
24 64.15266 4.500 1.00000
25 141.31626 3.889 1.72916 54.61 0.54
26 -140.22741 0.522 1.00000
27 -90.78808 1.800 1.80809 22.74 0.63
28 -951.12603 1.500 1.00000
29 83.00247 3.498 1.78590 44.17 0.56
30 514.51680 Bf 1.00000
像面 ∞
[各種データ]
f 392.000
FNO 2.868
2ω 6.245
Y 21.60
TL 398.807
Bf 82.991
無限遠物体合焦時 中間距離物体合焦時 近距離物体合焦時
f又はβ 392.000 -0.033 -0.145
d11 14.306 17.669 29.606
d16 20.680 17.316 5.380
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 188.28068
2 12 -91.64969
3 18 234.04474
[条件式対応値]
(1) f/(−f2) = 4.28
(2) νdp = 23.78
(3) Ndn+0.0071×νdn−1.964 = -0.04
(4) f/f12 = 0.64
(5) θgfn−0.6438+0.0016821×νdn = -0.005
【0054】
図5(a)、及び
図5(b)はそれぞれ、本願の第2実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時の諸収差図、及び無限遠物体合焦時に0.167°の回転ぶれに対してレンズシフトした際のコマ収差図である。
図6(a)、及び
図6(b)はそれぞれ、本願の第2実施例に係る光学系の中間距離物体合焦時の諸収差図、及び近距離物体合焦時の諸収差図である。
各収差図より、本実施例に係る光学系は無限遠物体合焦時から近距離物体合焦時にわたって諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有しており、さらにレンズシフト時にも優れた結像性能を有していることがわかる。
【0055】
(第3実施例)
図7は、本願の第3実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時のレンズ配置を示す断面図である。
本実施例に係る光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3とから構成されている。なお、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間には開口絞りSが備えられている。
【0056】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、保護フィルタガラスFLGと、両凸形状の正レンズL11と、両凸形状の正レンズL12と、両凹形状の負レンズL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15との接合レンズとからなる。なお、保護フィルタガラスFLGは、物体側に凸面を向けた負メニスカス形状をしており、実質的に屈折力を有していない。
【0057】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL22と平凹形状の負レンズL23との接合レンズとからなる。
【0058】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、正の屈折力を有する第3aレンズ群G3aと、負の屈折力を有する第3bレンズ群G3bと、正の屈折力を有する第3cレンズ群G3cとから構成されている。
第3aレンズ群G3aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31と両凸形状の正レンズL32との接合レンズからなる。
第3bレンズ群G3bは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL33と両凹形状の負レンズL34との接合レンズと、両凹形状の負レンズL35とからなる。
第3cレンズ群G3cは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL36と、両凹形状の負レンズL37と、両凸形状の正レンズL38とからなる。
【0059】
以上の構成の下、本実施例に係る光学系では、第2レンズ群G2を光軸に沿って像側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。なおこのとき、開口絞りSの位置は固定である。
【0060】
本実施例に係る光学系では、手ぶれ等の発生時には、第3bレンズ群G3bをシフトレンズ群として光軸と直交する方向の成分を含むようにシフトさせることにより防振を行う。
本実施例に係る光学系は、防振係数が−1.495、焦点距離が588.0(mm)であるため、0.136°の回転ぶれを補正するための第3bレンズ群G3bの移動量は−0.934(mm)となる。
以下の表3に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0061】
(表3)第3実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd θgf
物面 ∞ ∞
1 1200.37020 5.000 1.51680 63.88 0.54
2 1199.78950 1.000 1.00000
3 232.05690 17.300 1.43385 95.25 0.54
4 -1443.25300 75.000 1.00000
5 171.01460 16.836 1.43385 95.25 0.54
6 -481.22900 2.274 1.00000
7 -446.29160 5.200 1.61266 44.46 0.56
8 357.03330 115.998 1.00000
9 79.30560 3.500 1.69680 55.52 0.54
10 50.10590 11.000 1.49782 82.57 0.54
11 387.42990 可変 1.00000
12 -576.54480 2.500 1.83400 37.18 0.58
13 98.59630 3.688 1.00000
14 -314.34080 3.900 1.84666 23.78 0.62
15 -72.23670 2.500 1.61266 44.46 0.56
16 ∞ 可変 1.00000
17(絞りS) ∞ 26.500 1.00000
18 100.68080 1.800 1.80809 22.74 0.63
19 61.50240 5.500 1.49782 82.57 0.54
20 -178.46460 14.084 1.00000
21 103.14150 4.700 1.61266 44.46 0.56
22 -63.97380 1.800 1.49782 82.57 0.54
23 58.13640 3.427 1.00000
24 -112.49160 2.000 1.59349 67.00 0.54
25 59.83320 4.500 1.00000
26 50.64810 7.000 1.61266 44.46 0.56
27 -45.76020 0.551 1.00000
28 -45.73290 1.800 1.78590 44.17 0.56
29 56.67030 1.500 1.00000
30 66.94890 4.400 1.61266 44.46 0.56
31 -105.85340 Bf 1.00000
像面 ∞
[各種データ]
f 588.000
FNO 4.080
2ω 4.166
Y 21.60
TL 477.808
Bf 87.638
無限遠物体合焦時 中間距離物体合焦時 近距離物体合焦時
f又はβ 588.000 -0.033 -0.142
d11 15.664 19.116 30.912
d16 29.247 25.795 14.000
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 234.13893
2 12 -107.89870
3 18 768.78557
[条件式対応値]
(1) f/(−f2) = 5.45
(2) νdp = 23.78
(3) Ndn+0.0071×νdn−1.964 = -0.04
(4) f/f12 = 0.76
(5) θgfn−0.6438+0.0016821×νdn = -0.005
【0062】
図8(a)、及び
図8(b)はそれぞれ、本願の第3実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時の諸収差図、及び無限遠物体合焦時に0.136°の回転ぶれに対してレンズシフトした際のコマ収差図である。
図9(a)、及び
図9(b)はそれぞれ、本願の第3実施例に係る光学系の中間距離物体合焦時の諸収差図、及び近距離物体合焦時の諸収差図である。
各収差図より、本実施例に係る光学系は無限遠物体合焦時から近距離物体合焦時にわたって諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有しており、さらにレンズシフト時にも優れた結像性能を有していることがわかる。
【0063】
上記各実施例によれば、焦点距離が大きく、Fナンバーが小さく、無限遠物体合焦時から近距離物体合焦時にわたって色収差をはじめとする諸収差を良好に補正し優れた光学性能を維持しつつ、広範囲な撮影領域に対応し得る大口径比の内焦式光学系を実現することができる。なお、上記各実施例は本願発明の一具体例を示しているものであり、本願発明はこれらに限定されるものではない。以下の内容は、本願の光学系の光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
【0064】
本願の光学系の数値実施例として3群構成のものを示したが、本願はこれに限られず、その他の群構成(例えば、4群や5群等)の光学系を構成することもできる。具体的には、本願の光学系の最も物体側や最も像側にレンズ又はレンズ群を追加した構成でも構わない。なお、上記各実施例に係る光学系は、第1レンズ群中の最も物体側に保護フィルタガラスを備えているが、これを備えない構成としてもよい。
【0065】
また、本願の光学系は、無限遠物体から近距離物体への合焦を行うために、レンズ群の一部、1つのレンズ群全体、或いは複数のレンズ群を合焦レンズ群として光軸方向へ移動させる構成としてもよい。特に、第2レンズ群の少なくとも一部を合焦レンズ群とすることが好ましい。斯かる合焦レンズ群は、オートフォーカスに適用することも可能であり、オートフォーカス用のモータ、例えば超音波モータ等による駆動にも適している。
【0066】
また、本願の光学系において、いずれかのレンズ群全体又はその一部を、防振レンズ群として光軸に対して垂直な方向の成分を含むように移動させ、又は光軸を含む面内方向へ回転移動(揺動)させることにより、防振を行う構成とすることもできる。特に、本願の光学系では第3レンズ群の少なくとも一部を防振レンズ群とすることが好ましい。
【0067】
また、本願の光学系を構成するレンズのレンズ面は、球面又は平面としてもよく、或いは非球面としてもよい。レンズ面が球面又は平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、レンズ加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を防ぐことができるため好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないため好ましい。レンズ面が非球面の場合、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に成型したガラスモールド非球面、又はガラス表面に設けた樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでもよい。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)或いはプラスチックレンズとしてもよい。
【0068】
また、本願の光学系において開口絞りは第2レンズ群と第3レンズ群の間に配置されることが好ましく、開口絞りとして部材を設けずにレンズ枠でその役割を代用する構成としてもよい。
【0069】
また、本願の光学系を構成するレンズのレンズ面に、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。これにより、フレアやゴーストを軽減し、高コントラストの高い光学性能を達成することができる。
【0070】
次に、本願の光学系を備えたカメラを
図10に基づいて説明する。
図10は、本願の光学系を備えたカメラの構成を示す図である。
本カメラ1は、撮影レンズ2として上記第1実施例に係る光学系を備えたレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラである。
本カメラ1において、被写体である不図示の物体からの光は、撮影レンズ2で集光されて、クイックリターンミラー3を介して焦点板4に結像される。そして焦点板4に結像されたこの光は、ペンタプリズム5中で複数回反射されて接眼レンズ6へ導かれる。これにより撮影者は、被写体像を接眼レンズ6を介して正立像として観察することができる。
【0071】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー3が光路外へ退避し、不図示の被写体からの光は撮像素子7へ到達する。これにより被写体からの光は、当該撮像素子7によって撮像されて、被写体画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者は本カメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
【0072】
ここで、本カメラ1に撮影レンズ2として搭載した上記第1実施例に係る光学系は、上述のように色収差をはじめとする諸収差を良好に補正し優れた光学性能を有している。即ち本カメラ1は、高性能化を実現することができる。なお、上記第2、第3実施例に係る光学系を撮影レンズ2として搭載したカメラを構成しても、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。また、クイックリターンミラー3を有しない構成のカメラに上記各実施例に係る光学系を搭載した場合でも、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。
【0073】
最後に、本願の光学系の製造方法の概略を
図11に基づいて説明する。
図11は、本願の光学系の製造方法の概略を示す図である。
図11に示す本願の光学系の製造方法は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群とを有する光学系の製造方法であって、以下のステップS1〜S5を含むものである。
【0074】
ステップS1:第1〜第3レンズ群を準備し、第2レンズ群が、正レンズと、負レンズとを少なくとも含むようにする。
ステップS2:第3レンズ群が、物体側から順に、正の屈折力を有する第3aレンズ群と、負の屈折力を有する第3bレンズ群と、第3cレンズ群とを有するようにする。そして、第1〜第3レンズ群を鏡筒内に物体側から順に配置する。
【0075】
ステップS3:公知の移動機構を鏡筒に設けることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦時に、第2レンズ群が光軸に沿って像側へ移動するようにする。
ステップS4:公知の移動機構を鏡筒に設けることにより、第3bレンズ群がシフトレンズ群として光軸と直交する方向の成分を含むように移動するようにする。
【0076】
ステップS5:光学系が以下の条件式(1)〜(3)を満足するようにする。
(1) 3.20<f/(−f2)<6.00
(2) νdp<30
(3) Ndn+0.0071×νdn−1.964<0
ただし、
f:無限遠物体合焦時の光学系の焦点距離
f2:第2レンズ群の焦点距離
νdp:第2レンズ群中の前記正レンズの
うち最もアッベ数の小さい正レンズの硝材のd線に対するアッベ数
Ndn:第2レンズ群中の前記負レンズの
うち最も屈折率の小さい負レンズの硝材のd線に対する屈折率
νdn:第2レンズ群中の前記負レンズの
うち最も屈折率の小さい負レンズの硝材のd線に対するアッベ数
【0077】
斯かる本願の光学系の製造方法によれば、色収差をはじめとする諸収差を良好に補正し優れた光学性能を有する光学系を製造することができる。