(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液処理装置の実施の形態である塗布装置1について、図を参照しながら説明する。
図1、
図2は、夫々塗布装置1の横断平面図、縦断側面図である。塗布装置1は筐体11を備え、この筐体11内には左右方向に互いに並ぶように左側カップモジュール201と右側カップモジュール202とが設けられている。説明の便宜上、カップモジュー201、202の配列方向を左右方向(
図1及び
図2中X方向)、X方向に直交する水平な方向を前後方向(
図1中Y方向)とし、
図1中紙面奥側を前方、手前側を後方とする。
【0011】
左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202は互いに同様に構成され、
図3に示すように、基板であるウエハWを水平に保持する保持台であるスピンチャック21と、スピンチャック21上のウエハWを囲むように設けられたカップ22と、を備えている。
スピンチャック21は、ウエハWの裏面中央部を吸着保持し、回転駆動部211により鉛直軸回りに回転自在に構成されている。カップ22は、後述する液処理を行うときに、処理液や廃液等が外部へ飛散することを抑制するために設けられるものである。カップ22は、その上方側に、ウエハWを搬入出するための開口部20を備えると共に、カップ22の下方側は凹部状に形成されて環状の液受け部23として構成され、排液路24が接続されている。図中25は排気管であり、排気管25の側壁によって気体と液体とが分離される。
【0012】
図3中26はカップ22の上方内側へ向かって伸びる傾斜壁、27はガイド部材であり、これら傾斜壁26及びガイド部材27は、付着した処理液等を液受け部23にガイドする役割を有する。カップ22は、3本のピン(
図3では2本のみ表示)28と、ピン28を昇降させる昇降部29とを備えており、このピン28と図示しない外部の搬送機構との協働作業により、スピンチャック21に対してウエハWの受け渡しが行われる。
【0013】
図2に示すように、左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202のカップ22は例えば支持部12を介して基台13に設けられている。筐体11の側壁には、左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202の夫々のスピンチャック21にウエハWを受け渡すために2つの搬送口14が形成され、各搬送口14はシャッタ15により開閉自在に構成されている。
【0014】
左側カップモジュール201の左側の領域(以下「左側領域」という)16には、各々左右に並んで待機位置に待機する複数のノズル3からなる第1のノズル群301が設けられている。第1のノズル群301は、この例では5本のノズル3(3A〜3E)を備えており、これらノズル3は互いに同様に構成されている。
図3には代表してノズル3Aを示している。
ノズル3について
図4及び
図5を参照して説明する。ノズル3は先端部31を備え、この先端部31に設けられる吐出口32から垂直下方に処理液を吐出するように構成されている。先端部31の上側は、後述するノズル移動機構6により保持される本体部33を成しており、この本体部33の内部には、先端部31に処理液を供給するための流路331が形成されている。先端部31及び本体部33は、後述の給液管34に比べて硬質に構成される。
【0015】
第1のノズル群301のノズル3A〜3Eは、
図2及び
図5に示すように、待機位置をなす第1の待機部401にて待機するように構成されている。この第1の待機部401は例えば基台13上に固定されて設けられており、こうして第1の待機部401は、左側カップモジュール201に対して、その位置が固定される。
図5に示すように、第1の待機部401の上部には5個の待機用孔41が、左右方向に互いに間隔をおいて配列されている。各待機用孔41には、ノズル3A〜3Eの先端部31が各々進入して、これらノズル3A〜3Eが保持されるように構成されている。
【0016】
こうして第1の待機部401にノズル3A〜3Eを待機させたときに、本体部33は第1の待機部401の上方に位置し、後述するようにノズル移動機構6が本体部33を受け取れるようになっている。また第1の待機部401に待機するノズル3A〜3Eの吐出口32と、左側カップモジュール201のスピンチャック21上のウエハWに処理液を供給する処理位置(以下「左処理位置」という)であるウエハWの略中心とは左右方向に並ぶように、同一線上に設けられている。従って後述のようにノズル移動機構6によりノズル3A〜3Eを保持して右方向に水平移動すると、ノズル3A〜3Eの吐出口32が左処理位置の上方側に位置することになる。
【0017】
図4に戻ってノズル3の説明を続けると、吐出口32の上方における本体部33の上部には、平面形状が円形の搬送用凹部35が形成されている。そして搬送用凹部35の側壁にはその周に沿って多数の係合用凹部36が設けられている。なお第1の待機部401は
図2及び
図5以外では図示を省略している。
【0018】
第1のノズル群301を構成するノズル3A〜3Eの各々には、ノズル毎に用意された第1の給液管34A〜34Eの一端側が接続され、これら第1の給液管34A〜34Eにより、第1の給液管群341が構成されている(
図1及び
図2参照)。
これら第1の給液管34A〜34Eは、例えばフッ素樹脂等の可撓性の材料からなり、例えば第1の待機部401にて待機している対応するノズル3A〜3Eの夫々の本体部33に対して後方側から、その一端が接続されている。こうして第1の待機部401にノズル3A〜3Eを待機させているときにおいて、第1の給液管群341を構成する複数の第1の給液管34A〜34Eは、左側領域16において、各々横方向に並んで配列される。
【0019】
これら第1の給液管群341を構成する給液管34A〜34Eは、
図1に示すように左側カップモジュール201の後方の領域(以下「後方領域」という)17まで引き回されている。そして更に右側に屈曲されて左側カップモジュール201の後方側を右方向に向かって伸びるように設けられ、第1の規制部501に規制されている。この第1の規制部501は後で詳述するが、左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202の並びの中央寄りに設けられている。
【0020】
第1の給液管群341を構成する給液管34A〜34Eは、
図2に示すように、左側カップモジュール11の左側領域16の高さ位置が、後方領域17よりも高くなるように構成されている。具体的には、例えば
図7及び
図8に示すように、後方領域17にある第1の給液管群341は、第1の規制部501から基台13近傍での高さ位置にて左方向に伸びるように配置され、左側領域16に至るとカップ22の高さ方向に立ち上がり、カップ22の上端近傍の高さ位置にて前方向に伸びるように配置されている。なお
図7及び
図8は給液管34の配置及び動きを説明するものであり、第1の規制部501や第1の待機部401、後述する第2の規制部502や第2の待機部402、ノズル移動機構6については図示を省略している。
【0021】
続いて
図1及び
図2に戻って、右側カップモジュール202のノズル3及び給液管34について説明する。右側カップモジュール202の右側の領域(以下「右側領域」という)18には、各々左右に並んで待機位置に待機する複数のノズル3からなる第2のノズル群302が設けられている。第2のノズル群302は、この例では5本のノズル3F〜3Jを備えており、これらノズル3F〜3Jは、第1のノズル群301のノズル3A〜3Eと同様に構成されている。
【0022】
第2のノズル群302のノズル3F〜3Jは、待機位置をなす第2の待機部402(
図2参照)にて待機するように構成されている。この第2の待機部402は第1の待機部401と同様に構成され、例えば基台13上に固定されることにより、右側カップモジュール202に対して、その位置が固定されている。そして第2の待機部402に待機するノズル3F〜3Jの吐出口32と、右側カップモジュール202のスピンチャック21上のウエハWに処理液を供給する処理位置(以下「右処理位置」という)であるウエハWの略中心とは左右方向に並ぶように、同一線上に設けられている。こうして後述のようにノズル移動機構6によりノズル3F〜3Jを保持して左方向に水平移動すると、ノズル3F〜3Jの吐出口32が右処理位置の上方側に位置するようになっている。なお第2の待機部402は
図2以外では図示を省略している。
【0023】
第2のノズル群302を構成するノズル3F〜3Jの各々には、ノズル毎に用意された第2の給液管34F〜34Jの一端側が接続されている。これら第2の給液管34F〜34Jは第1の給液管34A〜34Eと同様に可撓性の材料より構成され、例えば第2のノズル待機部402にて待機する夫々の本体部33に対して、後方側からその一端が接続されている。こうして第2の待機部402にノズル3F〜3Jを待機させているときにおいて、第2の給液管群342を構成する複数の第2の給液管34F〜34Jは、右側領域18において各々横方向に並んで配列されている。
【0024】
また第2の給液管群342を構成する給液管34F〜34Jは、右側カップモジュール202の後方領域17まで引き回され、更に左側に屈曲されて右側カップモジュール202の後方側を左方向に向かって伸びるように設けられ、第2の規制部502に規制されている。この第2の規制部502は左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202の並びの中央寄りであって、第1の規制部501よりも右側に位置している。
さらに第2の給液管群342を構成する給液管34F〜34Jは、
図1に示すように、例えば後方領域17において第1の給液管群341を構成する給液管34A〜34Eの延長線上に伸びるように、互いに同一線上に配列されている。「同一線上に配列される」には、第1の給液管群341の給液管34A〜34Eの延長線上に、第2の給液管群342の給液管34F〜34Jの一部が重なる場合も含むものとする。
【0025】
第2の給液管群342は、
図2に示すように、右側カップモジュール11の右側領域18の高さ位置が、後方領域17よりも高くなるように構成されている。具体的には、例えば
図7及び
図8に示すように、後方領域17にある第2の給液管群342の給液管34F〜34Jは、第2の規制部502から基台13近傍の高さ位置にて右方向に伸びるように配置され、右側領域18に至るとカップ22の高さ方向に立ち上がり、カップ22の上端近傍の高さ位置にて前方向に伸びるように配置されている。
【0026】
ノズル移動機構6は、第1のノズル群301から選択されたノズル3A〜3Eを第1の待機部401と左処理位置又は右処理位置との間で移動させると共に、第2のノズル群302から選択されたノズル3F〜3Jを第2の待機部402と左処理位置又は右処理位置との間で移動させるように構成されている。このノズル移動機構6は、
図1に示すようにガイドレール61、水平移動部62及び垂直移動部63を備えている。ガイドレール61は後方領域17における、第1及び第2の給液管群341、342の後方側に、左右方向(X方向)に沿って直線状に敷設され、水平移動部62はこのガイドレール61に沿って移動自在に構成される。垂直移動部63は水平移動部62に昇降自在に設けられると共に、前方側へ水平に伸びる保持部材64を備えている。なお便宜上、
図1以外でのノズル移動機構6の図示は省略している。
【0027】
保持部材64の裏面の先端側にはノズル保持部65が設けられており、このノズル保持部65は円形の突起として構成されている。
図4を参照して説明すると、ノズル保持部65の内部には空間66が設けられると共に、ノズル保持部65の側壁には、空間66の圧力に応じて当該側壁の表面において突没自在な係合突起67が周方向に多数設けられている。
図4では、係合突起67を2つのみ表示している。
【0028】
図4中68、69は夫々ガス供給部、排気部であり、制御部100からの制御信号に従って空間66へのガス供給、空間66からの排気を夫々行い、それによって空間66の圧力が調整され、係合突起67の突没が行われる。
図4以外でのガス供給部68及び排気部69の図示は省略している。係合突起67がノズル保持部65の側壁表面に没した状態で、ノズル3の搬送用凹部35に対してノズル保持部65の進入及び退避が行われる。ノズル保持部65が搬送用凹部35内に進入した状態で、係合突起67がノズル保持部65の側壁表面から突出すると、係合用凹部36に係合する。それによって保持部材64がノズル3A〜3Jを保持することができる。そして保持部材64を水平移動部62及び垂直移動部63により水平方向及び垂直方向に移動させることにより、選択したノズル3を保持し、左側カップモジュール201の左処理位置及び右側カップモジュール202の右処理位置にノズル3が搬送される。
【0029】
第1の規制部501及び第2の規制部502は互いに同様に構成され、基台13における給液管34A〜34Fの基端側の位置を規制することにより、給液管34A〜34Fが既述のように配列される。第1の規制部501及び第2の規制部502は、給液管34A〜34Jと第1及び第2の規制部501、502の上流側の配管37A〜37Jとを夫々接続すると共に、温調する機能を備えている。
【0030】
図6は第1の規制部501の一部を概略的に示すものであり、この図を参照して第1の規制部501を例にして説明する。第1の規制部501は基台13に固定された規制部本体51を備え、この規制部本体51内には、給液管34A〜34E毎に処理液供給路52A〜52Eが形成されている。
図6は処理液供給路52Aを示しており、規制部本体51には処理液供給路52Aの下流端と接続するように給液管34Aが設けられると共に、処理液供給路52の上流端と接続するように配管37Aが設けられる。
【0031】
この例の給液管34A〜34Jは三重管構造を成しており、給液管34A〜34Jの周囲には温調流体供給用の流路である内側流路53A〜53J(53Aのみ図示)と、温調流体排出用の流路である外側流路54A〜54J(54Aのみ図示)とが夫々設けられている。規制部本体51内においては、これら内側流路53A〜53J及び外側流路54A〜54Jに夫々連通する流路55A〜55J(55Aのみ図示)、56A〜56J(56Aのみ図示)が形成される。そして規制部本体51には、流路55A〜55Jと連通するように温調流体の供給路57A〜57J(57Aのみ図示)が夫々接続されると共に、流路56A〜56Jと連通するように温調流体の排出路58A〜58J(58Aのみ図示)が夫々接続される。ノズル3A〜3Jの先端部では、内側流路53A〜53Jと外側流路54A〜54Jとは接続されており、内側流路53A〜53Jを介してノズルの先端部まで至った温調流体は外側流路54A〜54Jを介して第1及び第2の規制部501、502側に戻るように構成されている。なお給液管34A〜34Jは必ずしも三重管構造とする必要はない。
【0032】
これら第1及び第2の規制部501、502の上流側には、
図5に第1の規制部501を例にして示すように、処理液供給機構38A〜48Jが接続されている。
図5以外では、第1及び第2の規制部501、502より上流側の配管37A〜37Jの図示は省略している。
このように給液管34A〜34Jの基端側を第1及び第2の規制部501、502に夫々接続することにより、給液管34A〜34Jの基端側の位置が基台13上において規制される。また給液管34A〜34Jの先端側の位置はノズル3A〜3Jを介して第1及び第2の待機部401、402にて夫々規制されるので、ノズル3A〜3Jが待機位置にあるときには、給液管34A〜34Jは常に既述のように配列されることになる。
【0033】
処理液供給機構38A〜38Jは、処理液の貯留部、処理液を下流側に圧送するポンプ、圧送される処理液の流量を制御するマスフローコントローラ、バルブなどを含むものである。後述の制御部100から出力される制御信号に従って、これら処理液供給機構38A〜38Jからノズル3A〜3Jへの処理液の給断が、互いに独立して制御される。これら処理液供給機構38A〜38Jのうちの8つ、例えば処理液供給機構38A〜38E、38H〜38Jの貯留部には、互いに異なる種類のレジスト液が貯留されており、ノズル3A〜3E、3H〜3Jは、互いに異なるレジスト液をウエハWに供給する。また例えば処理液供給機構38F、38Gの貯留部にはシンナーと純水と夫々を貯留しており、これらはノズル3F、3Gを介して吐出される。シンナー及び純水は、ウエハWにレジスト液を供給する前に、ウエハWのレジスト液の濡れ性を高くするためにウエハWに供給される、いわゆるプリウエット用の処理液であり、シンナーまたは純水のいずれかがウエハWに供給される。
【0034】
図1、
図2、
図7及び
図8に示す39は、レジスト膜が形成されたウエハWの周縁部上にシンナーを吐出して、当該周縁部のレジスト膜を除去する膜除去用ノズルであり、カップモジュール201、202毎に設けられている。391はアームであり、その先端部にて膜除去用ノズル39を支持する。392はアーム391の基部に設けられ、アーム391を鉛直軸周りに回転させる回転部である。上記のシンナー液の吐出時を除いて、膜除去用ノズル39はカップ22の外側に退避している。
【0035】
塗布装置1にはコンピュータからなる制御部100が設けられる。制御部100は、不図示のプログラム格納部を備え、このプログラム格納部には、後述の作用で説明する塗布処理が行われるように命令が組まれた、例えばソフトウエアからなるプログラムが格納される。このプログラムが制御部100に読み出されることで、制御部100は塗布装置1の各部に制御信号を出力する。それによって、ピン28による外部の搬送機構とスピンチャック21との間のウエハWの受け渡し、ノズル3A〜3Jの搬送、レジスト液、シンナー液及び純水の吐出、などの各動作が行われ、後述のようにウエハWにレジスト塗布処理を行うことができる。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0036】
続いて塗布装置1にて行われる塗布処理について説明するが、塗布装置1では例えば先にカップ22に搬送されたウエハWから順に処理が行われる。また塗布装置1のユーザは、制御部100に設けられる図示しない操作部を介して例えばウエハWのロット毎にノズル3A〜3E、3H〜3Jのうち、いずれのノズルで処理を行うかを設定すること、及びシンナー液または純水のいずれかでプリウェットを行うかを設定することができるように構成されている。
【0037】
例えば左側カップモジュール201、右側カップモジュール202の順に、ウエハWが搬送されてこの順にレジスト塗布処理が行われ、シンナー液によりプリウェットを行う場合を例にして説明する。先ず搬送口14を開いて左側カップモジュール201のスピンチャック21に対して、外部の搬送機構とピン28の昇降との協働作業によりウエハWを受け渡し、搬送機構を退出させた後、搬送口14を閉じる。次いで搬送機構はロットの次のウエハWを右側カップモジュール202に搬送する。
【0038】
一方、左側カップモジュール201のウエハWに対してノズル3Fよりシンナー液を供給する。このとき既述のように、ノズル保持部65が第2の待機部402にあるノズル3Fの本体部33を保持することにより、ノズル移動機構6によりノズル3Fが選択され、左処理位置に移動される。このときノズル3Fの移動に伴って引き回される給液管34Fは、ノズル3Fが第2の待機部402に置かれているときの第2の給液管群342の高さ位置よりも高い位置を通って移動する。即ちノズル移動機構6により本体部33が保持されて持ち上げられ、右側カップモジュール202の上方側の領域を通過して左処理位置の上方側まで移動した後、所定の高さ位置まで下降する。従ってノズル3Fが左処理位置に移動するときには、
図7に示すように、給液管34Fは第2の規制部502から右側に伸び、さらに上側に曲げられて左方向に引き回される状態になる。
【0039】
こうして左処理位置にあるノズル3Fからシンナー液をウエハWに供給し、ウエハWを回転させることにより、遠心力によりシンナー液をウエハWの周縁部に広げる。この後ノズル3Fはノズル移動機構6により第2の待機部402に搬送され、次いでノズル移動機構6は第1の待機部401に移動してノズル3Aを選択して保持し、ノズル3Aを左処理位置に搬送する。
【0040】
このノズル3Aの移動に伴って引き回される給液管34Aは、ノズル3Aが第1の待機部401に置かれているときの第1の給液管群341の高さ位置よりも高い位置を通って移動する。即ちノズル移動機構6により本体部33が保持されて持ち上げられ、左側カップモジュール201の上方側の領域を通過して左処理位置の上方側まで移動した後、所定の高さ位置まで下降する。従ってノズル3Aが左処理位置に移動するときには、給液管34Aは第1の規制部501から左側に伸び、さらに上側に曲げられて右方向に引き回される状態になる。
こうして左処理位置にあるノズル3AからウエハWにレジスト液を吐出しながらウエハWを回転させることにより、レジスト液を遠心力によりウエハWの周縁部に行き渡らせてレジスト膜を形成する。
【0041】
右側カップモジュール202のウエハWに対しても、先ずノズル移動機構6により第2の待機部402にあるノズル3Fを保持して右処理位置に搬送し、ウエハWにシンナー液を吐出させてシンナー液の液膜を形成する(
図8参照)。そしてノズル移動機構6によりノズル3Fを第2の待機部402に搬送した後、第1の待機部401にあるノズル3Aを保持して右処理位置に移動し、ウエハWにレジスト液を吐出することによりレジスト膜を形成する。
【0042】
ここではノズル3A及び3Fを例にして説明したが、ノズル移動機構6により、第1のノズル群301から選択されて保持されたノズル3A〜3Eは、第1の待機部401と左処理位置又は右処理位置との間で移動される。また第2のノズル群302から選択されたノズル3F〜3Jは第2の待機部402と左処理位置又は右処理位置との間で移動される。このとき第1のノズル群301のノズル3A〜3Eの移動に伴って引き回される給液管34A〜34Eは、当該ノズル3A〜3Eが第1の待機部401に置かれているときの第1の給液管群341の高さ位置よりも高い位置を通るように構成されている。そして第1のノズル群301のノズル3A〜3Eが左処理位置及び右処理位置に移動するときには、第1の規制部501から左側に伸び、さらに上側に曲げられて右方向に引き回される状態になる。
【0043】
また第2のノズル群302のノズル3F〜3Jの移動に伴って移動する給液管34F〜34Jは、ノズル3F〜3Jが第2の待機部402に置かれているときの第2の給液管群342の高さ位置よりも高い位置を通るように構成されている。そして第2のノズル群302のノズル3F〜3Jが左処理位置及び右処理位置に移動するときには、第2の規制部502から右側に伸び、さらに上側に曲げられて左方向に引き回される状態になる。
【0044】
こうしてレジスト膜が形成された各カップモジュール201、202のウエハWの周縁部には、各々レジスト液が供給されてから所定の時間経過後に、膜除去用ノズル39からシンナーが供給され、当該周縁部におけるレジスト膜が除去される。周縁部のレジスト膜が除去されたウエハWは、その回転が停止され、搬送機構により塗布装置1から搬出される。
【0045】
この例ではノズル3Fにより左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202のウエハWへのシンナー液の供給を行ってから、ノズル3Aに持ち替えて左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202のウエハWへレジスト液を供給してもよい。またノズル3Fにより左側カップモジュール201のウエハWへのシンナー液の供給を行ってから、ノズル3Aに持ち替えて左側カップモジュール201のウエハWへレジスト液を供給する。次いで再びノズル3Fに持ち替えて右側カップモジュール202のウエハWへのシンナー液の供給を行ってから、ノズル3Aに持ち替えて右側カップモジュール202のウエハWへレジスト液を供給するようにしてもよい。上述の例ではシンナー液、洗浄液を供給するプリウェット用のノズルを第2のノズル群302に設けたが、これらプリウェット用のノズルは第1のノズル群301、第2のノズル群302以外に別個に設けるようにしてもよい。
【0046】
上述の実施形態によれば、左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202を互いに左右に並ぶように配置し、左側カップモジュール201の左側に第1のノズル群301を待機させると共に、右側カップモジュール202の右側に第2のノズル群302を待機させている。そして第1のノズル群301に接続された第1の給液管群341は後方領域17まで引き回され、更に右側に屈曲されて後方領域17を右方向に向かって伸びるように設けられる。また第2のノズル群302に接続された第2の給液管群342は、後方領域17まで引き回され、更に左側に屈曲されて後方領域17を左方向に向かって伸びるように設けられる。従って後方領域17には、第1の給液管群341及び第2の給液管群342を左右方向に分けて配列することができるため、後方領域17において少ないスペースで各給液管34A〜34E、34F〜34Jを配置することができ、装置1の前後方向の拡大を抑えて装置1の大型化を抑制することができる。
【0047】
また既述のように、第2の給液管群342を構成する給液管34F〜34Jを後方領域17において第1の給液管群341を構成する給液管34A〜34Eの延長線上に伸びるように、同一線上に配列することにより、後方領域17においてより一層少ないスペースで各給液管34A〜34Jを配置することができる。
【0048】
さらに後方領域17において、第1の給液管群341の給液管34A〜34E,第2の給液管群342の給液管34F〜34Jの高さ位置は基台13近傍に設定されている。そして第1のノズル群301のノズル3A〜3E例えば3Aを移動させるときには、当該ノズル3Aの給液管34Aは、第1の規制部501から左側に伸び、さらに上側に曲げられて右方向に引き回される状態になる。このためノズル3Aを移動させるときには、後方領域17においてノズルAの給液管34Aのみが高い位置にて引き回されることになり、他のノズル3B〜3Jの給液管34B〜34Jとは高さ位置が異なる領域を移動していく。これによりノズル3Aに伴って引き回される給液管34Aと隣接するズル3Bの給液管34Bとの干渉が抑えられる。
【0049】
同様に第2のノズル群302のノズル3F〜3Jを移動させるときには、当該ノズル3F〜3Jの給液管34F〜34Jは、第2の規制部502から右側に伸び、さらに上側に曲げられて左方向に引き回される状態になるので同様である。また第1の給液管群341及び第2の給液管群342は、後方領域17において第1の規制部501及び第2の規制部502にて夫々位置が規制されているので、ノズル3A〜34Jが待機位置にあるときには、可撓性の給液管34A〜34Jの位置が規制され、配列状態を維持することができる。またノズル3A〜3J例えば3Aの移動に伴う当該ノズル3Aの給液管34Aの動きが制限される。さらに可撓性のノズル3Aが移動するときにフレキシブルに動いて、その振動等の影響が他のノズル3B〜3Jの給液管34B〜34Jに対してあったとしても、隣接するノズル3Bの給液管34Bが動いて両者が接触するといったことも抑えられる。
【0050】
ここで
図9に示すように、第1のノズル群301及び第2のノズル群302を左側カップモジュール201及び右側カップモジュール202の間に配置した場合には、あるノズル3に伴って移動する給液管34が他のノズル3の給液管34と衝突してしまう。具体的に説明すると、
図9の構成では、後方領域17の前後方向のスペースを小さくするために、第1の給液管群341を構成する給液管34は、左側カップモジュール202の左端近傍から基台13近傍の高さ位置において右方向に伸び、次いで左側カップモジュール201と右側カップモジュール202の間の領域において上に曲がり、さらにカップ22の上端近傍の高さ位置にて前方向に伸びるように配列される。一方第2の給液管群342を構成する給液管34F〜34は、右側カップモジュール202の右端近傍から基台13近傍の高さ位置において左方向に伸び、次いで左側カップモジュール201と右側カップモジュール202の間の領域において上に曲がり、さらにカップ22の上端近傍の高さ位置にて前方向に伸びるように配列される。
【0051】
このような構成では、例えば第1のノズル群301のノズル3を左側カップモジュール201の左処理位置に移動させる場合や、第2のノズル群302のノズル3を右側カップモジュール202の右処理位置に移動する場合には、他のノズル3の給液管34との干渉を抑えることができる。しかしながら、第1のノズル群301のノズル3を右処理位置に移動させるときには、ノズル3を待機位置(
図9に示す位置)にある他のノズル3よりも持ち上げたとしても、待機位置にある給液管34がカップ22の上端近傍にあるため、移動するノズル3の給液管34が他のノズル3の給液管34と干渉してしまう。
【0052】
このように本実施形態では、ノズル3が移動するときに、当該ノズル3に伴って引き回される給液管と、待機位置にある他のノズルの給液管との干渉(接触)が抑えられるので、給液管同士の度重なる接触による給液管の摩耗が原因となるパーティクルの発生や、給液管の劣化の進行による寿命の低下を防ぐことができる。
【0053】
以上において、上述の例では
図10に示すように、後方領域17における給液管34の高さ位置と左側領域16及び右側領域18における第1及び第2の給液管群341、342の高さ位置とを揃えて配列するようにしてもよい。この場合には、ノズル3の移動時にノズル3に伴って引き回される給液管34の移動時の高さ位置と後方領域17にある他のノズル3の給液管34の高さ位置とが近い。このためノズル3の移動時に当該ノズル3の給液管34と後方領域17にある他の給液管34と干渉しやすくなるが、後方領域17の前後方向のスペースが小さくて済むため、装置の大型化を図ることができるからである。
【0054】
続いてノズルが移動するときに、当該ノズルに伴って移動する給液管と隣接するノズルの給液管との干渉を抑える他の実施形態について、
図11〜
図14を参照して説明する。
図11及び
図12はこの実施形態の塗布装置101の構成例であり、以下では上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。左側カップモジュール201、右側カップモジュール202は上述の実施形態と同様に構成されており、後方領域17に複数例えば10本のノズル3よりなるノズル群71の待機位置が設定されている。ノズル3については上述の実施形態と同様に構成されており、ノズルの本体部33に給液管81の一端側が接続され、この給液管81は後方領域17において右方向に伸び、右側カップモジュール202の中央辺りで下方側に曲げられるように構成されている。
【0055】
ノズル移動機構9は、左右方向(X方向)に伸びるように敷設されたガイドレール91と、このガイドレール91に沿って左右方向に移動自在、及び昇降自在に設けられた移動部92とを備えている。移動部92には支持部材93を介して鉛直軸周りに回動自在に構成された回転アーム94が取り付けられ、回転アーム94の裏面にはノズル保持部65(図示せず)が設けられている。こうして待機位置にあるノズル3は、ノズル移動機構9により選択して保持され、左側カップモジュール201の左処理位置又は右側カップモジュール202の右処理位置に搬送される。
【0056】
図13(a)は待機位置にあるときの給液管81について、後方領域17の奥側から見た側面図である。このように夫々の給液管81は側方から見たときに下方側から上方側に屈曲する部位82(以下「屈曲部位」という)を備え、対応するノズル3の移動に伴って屈曲部位82が移動するように構成されている。
全ての給液管81は屈曲部位82の上流側の給液管81と下流側の給液管81とが上下に重なるように設けられ、給液管81は
図14に示すように、屈曲部位82の下流側から上流側に亘って、屈曲自在な管状部材83の内部に設けられている。この管状部材83は例えば断面が角状であり、例えばステンレスより構成されている。
【0057】
給液管81において屈曲部位82を挟んで上方側の部位及び下方側の部位には、伸縮部材84の両端部が夫々固定されている。この伸縮部材84は、屈曲部位82の移動に伴って伸縮自在に構成された、例えばステンレスなどの剛性材からなり、給液管81の起立姿勢を維持するための部材である。例えば伸縮部材84はレール部材841とこのレール部材841に沿って移動する移動部材842とを備えている。この例では、屈曲部位82を挟んで下方に位置している管状部材83の上面には固定部851を介して第1の蝶番部材85が設けられ、屈曲部位82を挟んで上方に位置している管状部材83の直ぐ下流側の部位には接続部材861を介して管状部材83の下面側に第2の蝶番部材86が設けられている。第1の蝶番部材85及び第2の蝶番部材86には、伸縮部材84の両端部が夫々固定されている。その他の構成は上述の実施形態と同様であり、同じ構成部材については同符号を付し、説明を省略する。
【0058】
図13(a)には待機位置、
図11及び
図13(b)には左側カップモジュール201の左処理位置にノズル3を移動する位置、
図12及び
図13(c)には右側カップモジュール202の右処理位置にノズル3を移動する位置にある給液管81を夫々示す。このようにノズル3を待機位置から左処理位置及び右処理位置に移動させると、屈曲部位82が移動し、その位置及び形状が変化するが、この移動に伴って、第1の蝶番部材85及び第2の蝶番部材86の夫々の開度と、伸縮部材84の長さが自動的に変化する。このためノズル3が移動しても、常に給液管81の前後方向(Y方向)の位置が規制されるため、給液管81の起立姿勢が維持され、上方側の給液管81と下方側にある給液管82とが、互いに上下方向に重なった状態が保持される。
【0059】
また待機位置にあるノズル3に対しても、
図13(a)に示すように、給液管81の起立姿勢が伸縮部材84により維持される。従ってあるノズル3を移動するときに、当該ノズル3に伴って引き回される給液管81の移動時の動きに起因する振動等の影響が与えられたとしても、待機位置にあるノズル3の給液管81の起立姿勢が維持されていることからノズル3の給液管81同士の干渉が抑制される。
【0060】
以上において伸縮部材84は直接給液管81にその両端部を固定するように設けてもよい。また上述の実施形態の
図1に示す塗布装置1にこの伸縮部材84により給液管34の起立姿勢を維持する構成を適用するようにしてもよい。例えば後方領域17において左右方向に配置された第1の給液管群341及び第2の給液管群342を下方側から上方側に屈曲するように設け、給液管34に管状部材83を設ける。そして伸縮部材84の両端部を屈曲部位82を挟んで上方側の部位及び下方側の部位に夫々固定するように設ける。
【0061】
上述の実施形態において、給液管34が下方側から上方側に屈曲する屈曲部位82を備える場合には、上方側の給液管34はカップ22の上端近傍に位置することになる。このため既述のようにノズル3の移動時に当該ノズル3の給液管34が待機位置にある他のノズル3の給液管34と干渉しやすい。従って伸縮部材84を設けて給液管34の起立姿勢を維持することによって、ノズル3の移動時に当該ノズル3に伴って引き回される給液管34と他の給液管81との干渉を抑制することは有効である。
【0062】
また、上記の各例では装置にカップモジュールは2つ設けられているが、2つ以上の偶数個例えば4個設けてもよい。さらに第1のノズル群及び第2のノズル群を構成するノズルは、互いに異なる個数であってもよい。さらにまたウエハWに供給する処理液としては、レジスト液には限られず、例えば反射防止膜形成用の薬液や、絶縁膜形成用の薬液であってもよいし、現像液であってもよい。