(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明のアンテナ装置の一態様としての周波数共用アンテナ装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。この周波数共用アンテナ装置は、携帯電話機用の基地局アンテナとして用いられる。なお、以下の説明では、本実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置を高周波信号の送信に用いる場合について説明するが、この周波数共用アンテナ装置を受信のために用いることも可能である。
【0013】
(周波数共用アンテナ装置の機能構成)
図1(a)〜(d)は、本実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置の機能構成を示す概略図である。この周波数共用アンテナ装置は、1.5〜2GHz帯の水平偏波及び垂直偏波、ならびに700〜800MHz帯の水平偏波及び垂直偏波の各高周波信号を送信することが可能である。以下、1.5〜2GHz帯を第1周波数帯とし、700〜800MHz帯を第2周波数帯とする。
【0014】
図1(a)は第1周波数帯の水平偏波を送信することが可能な第1送信部1Aの構成例を示す概略構成図である。この第1送信部1Aは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Aに入力された信号を複数(本実施の形態では14個)の第1水平偏波アンテナ素子15Aに分配するように構成されている。
【0015】
具体的には、第1送信部1Aは、端子部10Aに入力された信号を分配する第1分配線路11Aと、第1分配線路11Aによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Aと、第2分配線路12Aによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Aと、第3分配線路13Aによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Aとを備え、第4分配線路14Aの端末部が第1水平偏波アンテナ素子15Aに接続されている。
【0016】
また、第1分配線路11Aと第2分配線路12Aとの間、及び第2分配線路12Aと第3分配線路13Aとの間には、それぞれ複数の移相器20が設けられている。この移相器20によって信号の位相を変化させることにより、複数の第1水平偏波アンテナ素子15Aから放射される電波の指向性を調節することが可能である。
【0017】
またさらに、第2分配線路12A又は第3分配線路13Aと第4分配線路14Aとは、後述する接続部材としての接続ピン30によって接続されている。
【0018】
図1(b)は、第1周波数帯の垂直偏波を送信することが可能な第2送信部1Bの構成例を示す概略構成図である。この第2送信部1Bは、第1送信部1Aと同様に構成されている。すなわち、第2送信部1Bは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Bに入力された信号を複数(本実施の形態では14個)の第1垂直偏波アンテナ素子15Bに分配するように構成されている。
【0019】
具体的には、第2送信部1Bは、端子部10Bに入力された信号を分配する第1分配線路11Bと、第1分配線路11Bによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Bと、第2分配線路12Bによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Bと、第3分配線路13Bによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Bとを備え、第4分配線路14Bの端末部が第1垂直偏波アンテナ素子15Bに接続されている。
【0020】
第1分配線路11Bと第2分配線路12Bとの間、及び第2分配線路12Bと第3分配線路13Bとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12B又は第3分配線路13Bと第4分配線路14Bとは、接続ピン30によって接続されている。
【0021】
図1(c)は、第2周波数帯の水平偏波を送信することが可能な第3送信部1Cの構成例を示す概略構成図である。この第3送信部1Cは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Cに入力された信号を複数(本実施の形態では10個)の第2水平偏波アンテナ素子15Cに分配するように構成されている。
【0022】
具体的には、第3送信部1Cは、端子部10Cに入力された信号を分配する第1分配線路11Cと、第1分配線路11Cによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Cと、第2分配線路12Cによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Cと、第3分配線路13Cによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Cとを備え、第4分配線路14Cの端末部が第2水平偏波アンテナ素子15Cに接続されている。
【0023】
第1分配線路11Cと第2分配線路12Cとの間、及び第2分配線路12Cと第3分配線路13Cとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12C又は第3分配線路13Cと第4分配線路14Cとは、接続ピン30によって接続されている。
【0024】
図1(d)は、第2周波数帯の垂直偏波を送信することが可能な第4送信部1Dの構成例を示す概略構成図である。この第4送信部1Dは、第3送信部1Cと同様に構成されている。すなわち、第4送信部1Dは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Dに入力された信号を複数(本実施の形態では10個)の第2垂直偏波アンテナ素子15Dに分配するように構成されている。
【0025】
具体的には、第3送信部1Dは、端子部10Dに入力された信号を分配する第1分配線路11Dと、第1分配線路11Dによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Dと、第2分配線路12Dによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Dと、第3分配線路13Dによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Dとを備え、第4分配線路14Dの端末部が第2垂直偏波アンテナ素子15Dに接続されている。
【0026】
第1分配線路11Dと第2分配線路12Dとの間、及び第2分配線路12Dと第3分配線路13Dとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12D又は第3分配線路13Dと第4分配線路14Dとは、接続ピン30によって接続されている。
【0027】
以下、第1水平偏波アンテナ素子15A,第1垂直偏波アンテナ素子15B,第2水平偏波アンテナ素子15C,第2垂直偏波アンテナ素子15Dを総称して、アンテナ素子15という。
【0028】
(周波数共用アンテナ装置の構成)
図2は、周波数共用アンテナ装置1の外観を示す外観斜視図である。
図3は、周波数共用アンテナ装置1のレドーム10の内部を示す構成図である。
【0029】
周波数共用アンテナ装置1は、高周波信号が伝搬する伝送線路100と、伝送線路100によって分配された高周波信号を送信可能な複数のアンテナ素子15と、移相器20の誘電体板20(後述)を移動させる移動機構6と、FRP(fiber reinforced plastics)等の絶縁性の樹脂からなるレドーム10とを備えている。
【0030】
レドーム10は、両端がアンテナキャップ(不図示)によって閉塞される円筒状であり、その長手方向が鉛直方向となるように一対の取付金具10aによってアンテナ塔等に取り付けられる。伝送線路100、複数のアンテナ素子15、及び移動機構6は、レドーム10内に配置されている。
【0031】
伝送線路100は、複数対の板状導体の間にそれぞれ中心導体を挟んでなるトリプレート構造を有している。本実施の形態では、伝送線路100が、電気的に接地された複数対の板状導体として第1乃至第3のグランド板41〜43を備え、第1乃至第3のグランド板41〜43のうち、対をなす第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に第1の中心導体51が配置され、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に第2の中心導体52が配置されている。
【0032】
第1乃至第3のグランド板41〜43は、互いに平行に配置され、第2のグランド板42が第1のグランド板41と第3のグランド板43との間に位置している。また、第1乃至第3のグランド板41〜43は、レドーム10の中心軸方向に長手方向を有する長板状である。なお、
図3では、第1乃至第3のグランド板41〜43ならびに第1及び第2の中心導体51,52の間に配置された後述するスペーサ等の部材の図示を省略している。レドーム10の中心軸方向の長さは、例えば1〜2.7mである。
【0033】
第1のグランド板41の長手方向の両端部には、第1のグランド板41をレドーム10に固定するための固定金具10bが固定されている。固定金具10bは、取付金具10aとの間にレドーム10を挟み、ボルト10cによってレドーム10に締結されている。
【0034】
図4及び
図5は、第3のグランド板43上に配置された複数のアンテナ素子15を示し、
図4は全体図、
図5は部分斜視図である。なお、第3のグランド板43は、周波数共用アンテナ装置1の使用状態において、
図4の図面上方が鉛直方向上側になるように設置される。
【0035】
複数のアンテナ素子15は、放射素子として機能する図略の配線パターンが板状の誘電体に形成されたプリント基板からなるプリントダイポールアンテナである。複数のアンテナ素子15のうち、第1水平偏波アンテナ素子15Aと第1垂直偏波アンテナ素子15Bとは、十字状に交差して配置されている。第2水平偏波アンテナ素子15Cは、その基板面が水平方向となるように配置されている。第2垂直偏波アンテナ素子15Dは、水平方向に向かい合う一対のプリント基板によって構成されている。
【0036】
複数のアンテナ素子15は、ボルト431及びナット432によって第3のグランド板43に固定されたL字状の取付金具433により、第3のグランド板43に対して垂直に固定されている。
【0037】
また、複数のアンテナ素子15には、第3のグランド板43に形成された開口を挿通する図略の凸部が設けられ、この凸部を介して放射素子として機能する配線パターンが第2の中心導体52に接続されている。
【0038】
図6は、第1の中心導体51の一部を示す斜視図である。第1の中心導体51は、誘電体からなる平板状の第1の基板510の表面に配線パターンとして設けられた銅等の金属箔によって形成されている。第1〜第4送信部1A〜1D(
図1参照)の第1分配線路11A,11B,11C,11D、第2分配線路12A,12B,12C,12D、及び第3分配線路13A,13B,13C,13Dは、第1の中心導体51によって構成されている。
【0039】
図7は、第2の中心導体52の一部を示す斜視図である。第2の中心導体52も、第1の中心導体51と同様に、誘電体からなる平板状の第2の基板520の表面に配線パターンとして設けられた銅等の金属箔によって形成されている。第1〜第4送信部1A〜1Dの第4分配線路14A,14B,14C,14Dは、第2の中心導体52によって構成されている。第1の基板510及び第2の基板520は、例えばガラスエポキシ等の電気絶縁性を有する樹脂からなり、その厚みは例えば0.8mmである。
【0040】
なお、第1の中心導体51としての配線パターンは、第1の基板510の両面に設けられていてもよく、一方の面のみに設けられていてもよい。同様に、第2の中心導体52としての配線パターンは、第2の基板520の両面に設けられていてもよく、一方の面のみに設けられていてもよい。
【0041】
(第1の基板及び第2の基板の支持構造)
図8(a)及び(b)は、伝送線路100における第1乃至第3のグランド板41〜43の固定構造及び第1乃至第2の基板510,520の支持構造を説明するための説明図である。
図8(a)は伝送線路100の組み付け前の状態を示し、
図8(b)は伝送線路100の組み付け後の状態を示している。
【0042】
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、及び第2のグランド板42と第3のグランド板43との間には、それぞれ導電体からなる金属スペーサ50が配置されている。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ50は、第1の基板510に形成された挿通孔510aを挿通している。第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された金属スペーサ50は、第2の基板520に形成された挿通孔520aを挿通している。
【0043】
金属スペーサ50は、導電性を有し、例えば銅メッキ又は錫メッキされた黄銅からなる。また、金属スペーサ50は、軸部501と雄ねじ部502とを一体に有し、軸部501には、ねじ穴500が形成されている。
図8(a)及び(b)では、このねじ穴500を破線で示している。本実施の形態では、金属スペーサ50の軸部501が六角柱状であるが、軸部501は円柱状であってもよい。
【0044】
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、ならびに第2のグランド板42と第3のグランド板43との間には、それぞれ金属スペーサ50の軸部501が介在し、この軸部501の長さに応じた空間が形成されている。軸部501の長さは、例えば5.0mmである。第1乃至第3のグランド板41〜43は、金属スペーサ50によって互いに電気的に接続されている。
【0045】
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置される金属スペーサ50の雄ねじ部502には、ナット54が螺合する。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置される金属スペーサ50のねじ穴500には、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置される金属スペーサ50の雄ねじ部502が螺合する。また、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置される金属スペーサ50のねじ穴500には、ボルト55の雄ねじ部551が螺合する。
【0046】
第1乃至第3のグランド板41〜43には、金属スペーサ50の雄ねじ部502又はボルト55の雄ねじ部551を挿通させる挿通孔41a,42a,43aがそれぞれ形成されている。
【0047】
このように、伝送線路100は、2つの金属スペーサ50、1つのナット54、及び1つのボルト55が相互に固定されることにより、第1乃至第3のグランド板41〜43がそれぞれ所定の間隔を以って互いに平行に配置される。なお、2つの金属スペーサ50、1つのナット54、及び1つのボルト55からなる固定構造は、伝送線路100の複数箇所に設けられ、第1乃至第3のグランド板41〜43ならびに第1及び第2の基板510,520の間隔が一定に保たれている。
【0048】
第1の基板510は、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に樹脂スペーサ56によって支持されている。第2の基板520は、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に樹脂スペーサ56によって支持されている。第1の基板510を支持する樹脂スペーサ56は、第1の基板510の両面に例えば接着によって固定されている。同様に、第2の基板520を支持する樹脂スペーサ56は、第2の基板520の両面に例えば接着によって固定されている。それぞれの樹脂スペーサ56の厚さは、例えば2.1mmである。
【0049】
(第1の中心導体と第2の中心導体との接続構造)
図9は、第1の中心導体51と第2の中心導体52との接続構造を示す概略図である。
図10は、
図9のA−A線断面図である。
【0050】
第2のグランド板42を挟んで配置された中心導体同士(第1の中心導体51と第2の中心導体52)は、
図9に示す接続部3において、第2のグランド板42に形成された接続ピン挿通孔42bに挿通された接続部材としての接続ピン30によって電気的に接続されている。
【0051】
接続ピン30は、例えば銅や黄銅等の良導電性の金属からなる軸状の部材である。本実施の形態では、接続ピン30が円柱状であるが、これに限らず、例えば四角柱状や六角柱状であってもよい。接続ピン30は、その両端部が第1の基板510に形成された挿通孔510b及び第2の基板520に形成された挿通孔520bにそれぞれ挿通され、第1の中心導体51及び第2の中心導体52に半田付けされている。また、接続ピン30は、その中心軸が第1の基板510,第2の基板520,及び第2のグランド板42に対して垂直となるように配置されている。
【0052】
この接続ピン30を用いた接続構造により、第1送信部1Aの第3分配線路13Aと第4分配線路14A、第2送信部1Bの第3分配線路13Bと第4分配線路14B、第3送信部1Cの第3分配線路13Cと第4分配線路14C、及び第4送信部1Dの第3分配線路13Dと第4分配線路14Dがそれぞれ接続される。
【0053】
接続ピン30の近傍には、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ50、及び第2のグランド板42と第3のグランド板43の間に配置された金属スペーサ50が配置されている。以下の説明では、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ50を「金属スペーサ50A」とし、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された金属スペーサ50を「金属スペーサ50B」とする。金属スペーサ50A及び金属スペーサ50Bは、電気的に接地された本発明の接地導体の一態様である。
【0054】
金属スペーサ50Aと金属スペーサ50Bとは、第2のグランド板42の挿通孔42aを介して連結されている。具体的には、金属スペーサ50Aのねじ穴500に金属スペーサ50Bの雄ねじ部502が螺合している。これにより、第2のグランド板42が金属スペーサ50A及び金属スペーサ50Bのそれぞれの軸部501の間に挟まれている。
【0055】
図10に示すように、第2のグランド板42に平行な方向における接続ピン30と金属スペーサ50Bとの間隔をd
1とすると、この間隔d
1は2.5mm以下である。なお、この間隔d
1は、第2のグランド板42に平行な方向において、接続ピン30の外周面30aと金属スペーサ50Bの外周面50aとの最短距離をいう。
【0056】
また、本実施の形態のように金属スペーサ50が断面多角形状である場合には、金属スペーサ50がその中心軸を中心とする周方向にどのような角度(位相)で固定されたとしても、接続ピン30との間隔d
1が2.5mm以下となるように、第2のグランド板42の挿通孔42a等の位置が設定されることが望ましい。すなわち、本実施の形態では、金属スペーサ50Bがその中心軸を中心とする周方向にどのような角度で固定されたとしても接続ピン30との間隔d
1が2.5mm以下となる位置に、金属スペーサ50Bが固定される。なお、図示は省略しているが、接続ピン30と金属スペーサ50Aとの間隔についても、上記と同様に2.5mm以下となるように、金属スペーサ50Aが固定されている。
【0057】
図11は、第1の中心導体51から第2の中心導体52に接続ピン30を介して2GHzの高周波信号を伝送する場合において、接続ピン30と金属スペーサ50A,50Bとの間隔d
1と、接続ピン30による第1の中心導体51と第2の中心導体52との接続部3における伝送損失(通過特性を示すSパラメータのS
21)との関係を示したグラフである。
【0058】
このグラフに示すように、接続ピン30と金属スペーサ50A,50Bとの間隔d
1を2.5mm以下とすれば、伝送損失を0.1dB以下に抑えることができる。すなわち、間隔d
1が2.5mm以下であれば、接続部3において良好な伝送特性が得られる。なお、接続ピン30の近傍に金属スペーサ50A,50Bを配置することによって伝送損失が低減される理由としては、接続ピン30を流れる電流の電流経路と、複数の金属スペーサ50を流れる電流経路との経路長の差が縮まることが一因と考えられる。
【0059】
なお、間隔d
1は、第1の中心導体51又は第2の中心導体52と金属スペーサ50A,50Bとの短絡防止や第1の基板510及び第2の基板520の加工上の制約により、1.0mm以上確保されていることが望ましい。
【0060】
(移相器及び移動機構の構成)
図12は、移相器20の構成例を示す斜視図である。
【0061】
移相器20は、第1のグランド板41と第1の中心導体51との間に配置された可動式の誘電体板21を有する誘電体挿入型の移相器である。この移相器20は、誘電体板21が第1の中心導体51に対して移動することで、複数のアンテナ素子15に分配される高周波信号の位相を変化させることが可能である。
【0062】
第1の中心導体51は、誘電体板21に対向する部分がミアンダ状に蛇行している。すなわち、第1の中心導体51は、誘電体板21の移動方向に対して直交する方向に延在する第1乃至第5の延在部511〜515を有している。
【0063】
誘電体板21は、第1の中心導体51の第1乃至第5の延在部511〜515のそれぞれに対応する第1乃至第5の誘電体部211〜215を有し、これら第1乃至第5の誘電体部211〜215が誘電体板21の長手方向に沿って連結されている。また、誘電体板21の長手方向の両端部には、誘電体板21のその長手方向に移動させるための駆動軸22が立設されている。駆動軸22は、誘電体板21を貫通し、第1の基板510に形成された長穴510cに沿って移動する。
【0064】
本実施の形態では、第1乃至第5の誘電体部211〜215が三角形状であり、誘電体板21がその長手方向に移動することにより、第1乃至第5の延在部511〜515と第1乃至第5の誘電体部211〜215とが重なる重複面積が増減する。そして、この重複面積の変化によって第1乃至第5の延在部511〜515における実効誘電率が変化し、これに伴って第1乃至第5の延在部511〜515の電気線路長が変化することにより、位相の調節が可能となる。
【0065】
誘電体板21は、
図3に示す移動機構6によってレドーム10の中心軸方向に移動する。移動機構6は、電動モータ61と、電動モータ61のトルクによって直線移動する直動軸62と、直動軸62の移動方向に対して直交する方向に延びる一対の腕部63と、一対の腕部63に連結された複数の連結棒64とを有している。連結棒64には、第1のグランド板41に形成された図略の長穴に挿通された誘電体板21の駆動軸22が連結されている。これにより、電動モータ61の回転によって複数の連結棒64が誘電体板21と共に移動し、複数のアンテナ素子15(第1水平偏波アンテナ素子15A,第1垂直偏波アンテナ素子15B,第2水平偏波アンテナ素子15C,第2垂直偏波アンテナ素子15D)から放射される第1周波数帯及び第2周波数帯の水平偏波及び垂直偏波の位相が調節される。
【0066】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、接続ピン30の近傍に電気的に接地された金属スペーサ50(金属スペーサ50A,50B)を配置することで、接続ピン30による第1の中心導体51と第2の中心導体52との接続部3における伝送損失が低減される。特に、接続ピン30と金属スペーサ50A,50Bとの間隔d
1を2.5mm以下にすれば、この伝送損失の低減効果が顕著となる。また、これらの金属スペーサ50は、第1乃至第3のグランド板41〜43を相互に固定する機能を兼ねているので、部品点数及び組み付け工数の削減に寄与することができる。
【0067】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0068】
[1]高周波信号が伝搬する伝送線路(100)、及び前記伝送線路(100)に接続された複数のアンテナ素子(15)を備え、前記伝送線路(100)は、互いに平行に配置され、電気的に接地された第1乃至第3の板状導体(41〜43)と、前記第1の板状導体(41)と前記第2の板状導体(42)との間に配置された第1の中心導体(51)、及び前記第2の板状導体(42)と前記第3の板状導体(43)との間に配置された第2の中心導体(52)と、前記第2の板状導体(42)に形成された挿通孔(42b)を挿通して前記第1の中心導体(51)と前記第2の中心導体(52)とを電気的に接続する接続部材(30)と、前記接続部材(30)の近傍に配置され、前記第2の板状導体(42)に電気的に接続された接地導体(50A,50B)と、を備えたアンテナ装置(1)。
【0069】
[2]前記第2の板状導体(42)に平行な方向における前記接続部材(30)と前記接地導体(50)との間隔(d
1)が2.5mm以下である、[1]に記載のアンテナ装置(1)。
【0070】
[3]前記第1の中心導体(51)は、誘電体からなる第1の基板(510)の表面に設けられた金属箔からなり、前記第2の中心導体(52)は、誘電体からなる第2の基板(520)の表面に設けられた金属箔からなり、前記接地導体(50)は、前記第1及び第2の基板(510,520)に形成された挿通孔(510a,520a)を挿通して前記第1の板状導体(41)と前記第3の板状導体(43)との間に配置された、[1]又は[2]に記載のアンテナ装置(1)。
【0071】
[4]前記接地導体(50)は、前記第1の板状導体(41)と前記第2の板状導体(42)との間、及び前記第2の板状導体(42)と前記第3の板状導体(43)との間に配置され、前記第1の板状導体(41)と前記第2の板状導体(42)との間に配置された前記接地導体(50)と、前記第2の板状導体(42)と前記第3の板状導体(43)との間に配置された前記接地導体(50)とが、前記第2の板状導体(42)に形成された挿通孔(42a)を介して連結された、[3]に記載のアンテナ装置(1)。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0073】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第1の中心導体51及び第2の中心導体52がそれぞれ第1の基板510及び第2の基板520の表面に設けられた金属箔からなる場合について説明したが、これに限らず、第1の中心導体51及び第2の中心導体52を例えば銅板を打ち抜いて所定形状に形成された線状の導体によって形成してもよい。
【0074】
また、金属スペーサ50Aと金属スペーサ50Bとが一体であってもよい。つまり、第1のグランド板41と第3のグランド板43との間に1つの導電体からなる金属スペーサが配置され、この金属スペーサが接続ピン30の近傍に配置されていてもよい。
【0075】
アンテナ装置の用途も、携帯電話の基地局用に限定されない。