特許第6345086号(P6345086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345086
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/12 20060101AFI20180611BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20180611BHJP
   C08L 25/16 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   C08L33/12
   C08L25/04
   C08L25/16
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-231755(P2014-231755)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-94550(P2016-94550A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】中原 淳裕
(72)【発明者】
【氏名】平岡 伸崇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達
(72)【発明者】
【氏名】高須賀 悠貴
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−13639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/12
C08L 25/04
C08L 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上であり、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が90質量%以上であり、重量平均分子量が30000〜200000であるメタクリル樹脂(A)と、
スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位の含有量が20質量%以上である芳香族ビニル系共重合体(B)とを含む樹脂組成物であって、
該樹脂組成物の
重量平均分子量が50000〜180000であり、
分子量15000未満の成分の含有量が0.2〜10質量%である
樹脂組成物。
【請求項2】
前記芳香族ビニル系共重合体(B)が、芳香族ビニル系単量体−メタクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−無水マレイン酸共重合体、芳香族ビニル系単量体−無水マレイン酸−メタクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム共重合体、芳香族ビニル系単量体−メタクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記メタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が99質量%以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
メタクリル樹脂(A)と芳香族ビニル系共重合体(B)の質量比(メタクリル樹脂(A)/芳香族ビニル系共重合体(B))が10/90〜90/10である請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記メタクリル樹脂(A)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が70%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかひとつに記載の樹脂組成物からなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。より詳細に、本発明は、透明性が高く、耐熱性が高く、屈折率が高く、強度が大きく、傷つき難く、成形性が良好な樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂は、透明性が高く、表面硬度が高く、成形性が良好であるため液晶ディスプレイなどの光学用途に使用されている。しかし、屈折率が低く、また耐熱性も低いため用途が限定されていた。
屈折率を高くし、かつ耐熱性を高める方法としては、特許文献1や非特許文献1に例示される芳香族ビニル系共重合体を添加することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2014/021264
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Macromolecules,31, 8988-8997(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の開示する樹脂組成物は強度が小さく、また傷つき易いという課題があった。一方、非特許文献1の樹脂組成物では、良好な成形体を得ることが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、透明性が高く、耐熱性が高く、屈折率が高く、強度の大きく、傷つき難くかつ成形性が良好な樹脂組成物およびその成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、以下の発明を完成するに至った。
【0008】
〔1〕三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上であり、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が90質量%以上であり、重量平均分子量が30000〜200000であるメタクリル樹脂(A)と、
芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位の含有量が20質量%以上である芳香族ビニル系共重合体(B)とを含む樹脂組成物であって、
該樹脂組成物の
重量平均分子量が50000〜180000であり、
分子量15000未満の成分の含有量が0.2〜10質量%である
樹脂組成物。
【0009】
〔2〕前記芳香族ビニル系単量体が、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選ばれる少なくとも1種類である、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕前記芳香族ビニル系共重合体(B)が、芳香族ビニル系単量体−メタクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−無水マレイン酸共重合体、芳香族ビニル系単量体−無水マレイン酸−メタクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム共重合体、芳香族ビニル系単量体−メタクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類である、〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕前記メタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が99質量%以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0010】
〔5〕メタクリル樹脂(A)と芳香族ビニル系共重合体(B)の質量比(メタクリル樹脂(A)/芳香族ビニル系共重合体(B))が10/90〜90/10である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔6〕前記メタクリル樹脂(A)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が70%以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0011】
〔1〕〜〔6〕のいずれかひとつに記載の樹脂組成物からなる成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、透明性が高く、耐熱性が高く、屈折率が高く、強度が大きく、傷つき難く、成形性が良好である。本発明の樹脂組成物を用いることによって、透明性が高く、耐熱性が高く、屈折率が高く、強度が大きく、傷つき難い成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、メタクリル樹脂(A)と芳香族ビニル系共重合体(B)とを含有する。以下、本発明の樹脂組成物を、樹脂組成物(C)と称することがある。
【0014】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が、58%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは63%以上である。メタクリル樹脂(A)の三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の上限は、特段に制限されないが、成形加工性の観点から、好ましくは99%、より好ましくは95%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは85%である。
【0015】
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(以下、単に「シンジオタクティシティ(rr)」と称することがある。)は、連続する3つの構造単位の連鎖(3連子、triad)中に在る2つの連鎖(2連子、diad)が、ともにラセモ(rrと表記する)である割合である。なお、ポリマー分子中の構造単位の連鎖(2連子、diad)において立体配置が同じものをメソ(meso)、逆のものをラセモ(racemo)と称し、それぞれm、rと表記する。
【0016】
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)は、重水素化クロロホルム中、30℃で、H-NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の、0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、式:(X/Y)×100にて算出した値である。
【0017】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、重量平均分子量Mwが、30000〜200000、より好ましくは50000〜150000、さらに好ましくは60000〜120000である。Mwが30000〜200000で、かつ、シンジオタクティシティ(rr)が58%以上あることで、得られる樹脂組成物(C)が成形し易く、樹脂組成物(C)を成形して得られる成形体は、強度が大きく、割れ難い。
【0018】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が、好ましくは1.01〜5.0、より好ましくは1.05〜3.5である。なお、MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
【0019】
なお、GPC測定は、次のようにして行う。溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いる。検出装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC−8320(品番)を使用した。試料は、メタクリル樹脂4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させた溶液を用いた。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試料溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定した。
【0020】
分子量が400〜5000000の範囲の標準ポリスチレンを測定し、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。クロマトグラムの高分子量側の傾きがゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。
【0021】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重の条件において測定される、メルトフローレートが、好ましくは0.1〜20g/10分、さらに好ましくは0.5〜15g/10分、最も好ましくは1.0〜10g/10分である。
【0022】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、耐熱性向上の観点からメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が、メタクリル樹脂(A)の質量を基準にして、90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0023】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位以外の構造単位を含んでいても良く、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸8−トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカニル、メタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体に由来する構造単位を挙げることができる。
【0024】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは123℃以上、さらに好ましくは124℃以上である。該メタクリル樹脂のガラス転移温度の上限は、通常130℃である。ガラス転移温度は、分子量やシンジオタクティシティ(rr)を調節することによって制御することができる。ガラス転移温度がこの範囲にあると、得られる成形体の熱収縮などの変形が起こり難い。なおガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して測定した値である。すなわち、本発明の共重合体を230℃まで一度目の昇温をし、次いで室温まで冷却し、その後室温から230℃までを10℃/分で二度目の昇温をさせる条件にて示差走査熱量測定法にてDSC曲線を測定し、二度目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明のガラス転移温度とした。
【0025】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)の23℃、50%RHで測定した波長587.6nm(D線)での屈折率n23Dは、得られるメタクリル樹脂組成物の透明性の観点から、好ましくは1.4880〜1.4940である。
【0026】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、1種のメタクリル樹脂によって前記特性を満たすようにしたものであってもよいし、複数種のメタクリル樹脂の混合物によって前記特性を満たすようにしたものであってもよい。
【0027】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)を構成する1種または2種以上のメタクリル樹脂は、公知の重合方法によって製造することができる。前述したメタクリル樹脂(A)の各特性は、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などの重合条件を調整することによって実現できる。
【0028】
メタクリル樹脂の製造に用いられる重合反応形態として、例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法などを挙げることができる。
【0029】
ラジカル重合法においては、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法などの重合手法を採用することができる。これらのうち、生産性および耐熱分解性の観点から、懸濁重合法、塊状重合法が好ましい。
アニオン重合法においては、塊状重合法、溶液重合法などの重合手法を採用することができる。
【0030】
本発明に用いられる芳香族ビニル系共重合体(B)は、少なくとも1種類の芳香族ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体以外の単量体との共重合体である。
【0031】
本発明の芳香族ビニル系共重合体(B)の原料である芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の化合物を挙げることができ、安価で、入手が容易という点でスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたは4−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル系単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0032】
本発明に用いられる芳香族ビニル系共重合体(B)は、芳香族ビニル系単量体以外の構造単位を含んでいる。このような芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、例えば、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロヘプセン、ビニルノルボルネンなどのビニル脂環式炭化水素;無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸8−トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカニル、メタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸誘導体;2−ビニルフラン、2−イソプロペニルフラン、2−ビニルベンゾフラン、2−イソプロペニルベンゾフラン、2−ビニルジベンゾフラン、2−ビニルチオフェン、2−イソプロペニルチオフェン、2−ビニルジベンゾチオフェン、2−ビニルピロール、N−ビニルインドール、N−ビニルカルバゾール、2−ビニルオキサゾール、2−イソプロペニルオキサゾール、2−ビニルベンゾオキサゾール、3−ビニルイソオキサゾール、3−イソプロペニルイソオキサゾール、2−ビニルチアゾール、2−ビニルイミダゾール、4(5)−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾリン、2−ビニルベンズイミダゾール、5(6)−ビニルベンズイミダゾール、5−イソプロペニルピラゾール、2−イソプロペニル1,3,4−オキサジアゾール、ビニルテトラゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−イソプロペニルピリジン、3−ビニルピリジン、3−イソプロペニルピリジン、2−ビニルキノリン、2−イソプロペニルキノリン、4−ビニルキノリン、4−ビニルピリミジン、2,4−ジメチル−6−ビニル−S−トリアジン、3−メチリデンジヒドロフラン−2(3H)−オン、4−メチル−3−メチリデンジヒドロフラン−2(3H)−オン、4−デシル−3−メチリデンジヒドロフラン−2(3H)−オンなどのエチレン性不飽和ヘテロ環式化合物;ジメチルメタクリロイルオキシメチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチルホスフェートなどのエチレン性不飽和基を有するリン酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
本発明に用いられる芳香族ビニル系共重合体(B)の具体例として好ましくは、芳香族ビニル系単量体−メタクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−無水マレイン酸共重合体、芳香族ビニル系単量体−無水マレイン酸−メタクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム共重合体、芳香族ビニル系単量体−メタクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、芳香族ビニル系単量体−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体が挙がられる。
これらの共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良い。メタクリル樹脂(A)との相溶性の観点からランダム共重合体が好ましい。これら共重合体は他の構造単位を含んでいてもよいが、含まないものがより好ましい。
【0034】
本発明に用いられる芳香族ビニル系共重合体(B)は、耐熱性向上の観点から芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位の含有量が、芳香族ビニル系共重合体(B)の質量を基準にして、20質量%以上である。より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位を20質量%以上含有することで、組成物の屈折率を高くすることができ、またメタクリル樹脂(A)との相溶性も良好となる。芳香族ビニル系共重合体(B)の屈折率n23Dは好ましくは1.5300以上であり、より好ましくは1.5500以上である。また、芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位の含有量が多いと、得られる樹脂組成物の吸水率が低下し、寸法安定性の高い成形体が得られる。また、ポリスチレンのように芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位が100質量%の場合、メタクリル樹脂(A)との相溶性が低く、得られる樹脂組成物(C)の透明性が低下してしまう。好ましくは芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位の含有量は95質量%以下である。
【0035】
本発明に用いられる芳香族ビニル系共重合体(B)は、重量平均分子量Mwが、好ましくは3万〜20万、より好ましくは5万〜18万、さらに好ましくは8万〜17万である。かかる重量平均分子量は、共重合体合成時の重合反応における重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0036】
本発明に用いられる芳香族ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量/数平均分子量の比(以下、この比を「分子量分布」と称する。)は、好ましくは1.60〜3.80、より好ましくは1.80〜3.50、さらに好ましくは1.90〜3.20である。重量平均分子量および分子量分布は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0037】
本発明に用いられる芳香族ビニル系共重合体(B)のガラス転移温度は、好ましくは80〜180℃、より好ましくは85〜160℃である。ガラス転移温度が低すぎると共重合体の耐熱性が不足し、使用できる用途が限定されてしまう。ガラス転移温度が高すぎると共重合体が脆く割れ易くなる。なおガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して測定した値である。すなわち、本発明の共重合体を230℃まで一度目の昇温をし、次いで室温まで冷却し、その後室温から230℃までを10℃/分で二度目の昇温をさせる条件にて示差走査熱量測定法にてDSC曲線を測定し、二度目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明のガラス転移温度とした。
【0038】
本発明に用いられる芳香族ビニル系共重合体(B)の製造方法に特に制限はない。通常、生産性の観点から、ラジカル重合法を採用して、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などを調整することによって、芳香族ビニル系共重合体(B)を製造する方法が好ましい。該ラジカル重合法は、無溶媒または溶媒中で行うことが好ましく、低不純物濃度の共重合体が得られるという観点から無溶媒で行うことが好ましい。成形体にシルバーや着色が発生するのを抑制する観点から、重合反応は溶存酸素量を低くして行うことが好ましい。また、重合反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物(C)に含有されるメタクリル樹脂(A)と芳香族ビニル系共重合体(B)の質量比(A)/(B)は、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20、最も好ましくは30/70〜70/30である。この範囲にあることで、樹脂組成物(C)の透明性と耐熱性と吸水率を良好にバランスさせることができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物(C)に含有されるメタクリル樹脂(A)と芳香族ビニル系共重合体(B)との合計量は、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは94〜100質量%、最も好ましくは96〜100質量%である。
【0041】
本発明の樹脂組成物(C)の屈折率n23Dは、好ましくは1.5000以上、より好ましくは1.5200以上である。
【0042】
本発明の樹脂組成物(C)は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。本発明の樹脂組成物(C)に含有し得るフィラーの量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
【0043】
本発明の樹脂組成物(C)には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリル系コアシェルゴム、アクリル系ブロック共重合体、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどを挙げることができる。本発明の樹脂組成物(C)に含有され得る他の重合体の量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
【0044】
本発明の樹脂組成物(C)には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体などの添加剤を含有していてもよい。
【0045】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単独で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などを挙げることができる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤を質量比で0.2/1〜2/1で使用するのが好ましく、0.5/1〜1/1で使用するのがより好ましい。
【0046】
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRUGAFOS168)、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサー3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などを挙げることができる。
【0047】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
【0048】
熱劣化防止剤としては、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジt−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
【0049】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物であり、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われるものである。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などを挙げることができる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、または波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが100dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
【0050】
ベンゾトリアゾール類は紫外線被照による着色などの光学特性低下を抑制する効果が高いので、本発明のフィルムを光学用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、2,2‘−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェノール](ADEKA社製;LA−31)、2−(5−オクチルチオ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどが好ましい。
【0051】
また、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤は、得られるフィルムの変色を抑制できる。このような紫外線吸収剤としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などを挙げることができる。
これら紫外線吸収剤の中、紫外線被照による樹脂劣化が抑えられるという観点からベンゾトリアゾール類が好ましく用いられる。
【0052】
また、波長380nm以下の短波長を効率的に吸収したい場合は、トリアジン類の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。このような紫外線吸収剤としては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)や、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;TINUVIN477やTINUVIN460)、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。
【0053】
さらに380〜400nmの波長の光を特に効果的に吸収したい場合は、国際公開第2011/089794号、国際公開第2012/124395号、特開2012−012476号公報、特開2013−023461号公報、特開2013−112790号公報、特開2013−194037号公報、特開2014−62228号公報、特開2014−88542号公報、および特開2014−88543号公報等に開示される複素環構造の配位子を有する金属錯体(例えば、下記式(A)で表される構造の化合物等)を紫外線吸収剤として用いることが好ましい。
【0054】
【化1】
【0055】
式(A)中、Mは金属原子である。
、Y、YおよびYはそれぞれ独立に、炭素原子以外の二価基(酸素原子、硫黄原子、NH、およびNR等)である。ここで、Rはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、およびアラルリル基等の置換基である。この置換基は、この置換基にさらに置換基を有してもよい。
およびZはそれぞれ独立に、三価基(窒素原子、CH、およびCR等)である。ここで、Rはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、およびアラルリル基等の置換基である。この置換基は、この置換基にさらに置換基を有してもよい。
、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、ハロゲノ基、アルキルスルホニル基、モノホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、およびピペラジノスルホニル基等の置換基である。この置換基は、この置換基にさらに置換基を有してもよい。
a、b、cおよびdはそれぞれR、R、RおよびRの数を示し、それぞれ1〜4のいずれかの整数である。
【0056】
複素環構造の配位子としては、2,2’−イミノビスベンゾチアゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾオキサゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾイミダゾール、(2−ベンゾチアゾリル)(2−ベンゾイミダゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾオキサゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾチアゾリル)メタン、ビス[2−(N−置換)ベンゾイミダゾリル]メタン、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0057】
金属錯体の中心金属としては、銅、ニッケル、コバルト、および亜鉛が好ましく用いられる。
【0058】
金属錯体を紫外線吸収剤として用いるために、低分子化合物あるいは重合体等の媒体に金属錯体を分散させることが好ましい。
金属錯体の添加量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。
金属錯体は380〜400nmの波長におけるモル吸光係数が大きいので、充分な紫外線吸収効果を得るために添加する量が少なくて済む。添加量が少なくなればブリードアウト等による成形体外観の悪化を抑制することができる。また、金属錯体は耐熱性が高いので、成形時の劣化あるいは分解が少ない。さらに金属錯体は耐光性が高いので、紫外線吸収性能を長期間保持することができる。
【0059】
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nm、光路長1cmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(MUV)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
εmax=[Amax/(10×10-3)]×MUV
【0060】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類を挙げることができる。
【0061】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などを挙げることができる。
【0062】
離型剤としては、成形品の金型からの離型を容易にする機能を有する化合物である。離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどを挙げることができる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、高級アルコール類/グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比が、2.5/1〜3.5/1の範囲で使用するのが好ましく、2.8/1〜3.2/1の範囲で使用するのがより好ましい。
【0063】
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤としては、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。具体的には、三菱レイヨン社製メタブレン−Pシリーズや、ダウケミカル社製のパラロイドシリーズが挙げられる。本発明の樹脂組成物(C)に配合する高分子加工助剤の量は、樹脂組成物(C)対して0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。配合量が0.1質量部以下であると良好な加工特性が得られず、配合量が5質量部以上であると得られる成形体の表面性の悪化などの問題が生じる。
【0064】
耐衝撃性改質剤としては、アクリル系架橋ゴムもしくはジエン系架橋ゴムをコア層成分として含むコアシェル型改質剤;架橋ゴム粒子を複数包含した改質剤などを挙げることができる。より具体的な架橋ゴムとしては、アクリル酸アルキルエステル単量体と架橋性単量体とその他のビニル系単量体との共重合体ゴム、共役ジエン系単量体と架橋性単量体とその他のビニル系単量体との共重合体ゴム、アクリル酸アルキルエステル単量体と共役ジエン系単量体と架橋性単量体とその他のビニル系単量体との共重合体ゴムなどを挙げることができる。
【0065】
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
蛍光体として、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などを挙げることができる。
【0066】
これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、メタクリル樹脂(A)や芳香族ビニル系共重合体(B)を製造する際の重合反応液に添加してもよいし、製造されたメタクリル樹脂(A)や芳香族ビニル系共重合体(B)に添加してもよいし、樹脂組成物(C)を調製する際に添加してもよい。本発明の樹脂組成物(C)に含有される添加剤の合計量は、成形体の外観不良を抑制する観点から、樹脂組成物(C)に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0067】
本発明の樹脂組成物(C)は、公知の方法によって製造することができる。本発明のメ樹脂組成物(C)は、例えば、メタクリル樹脂(A)および芳香族ビニル系共重合体(B)と他の重合体などとを溶融混練することによって製造することができる。溶融混練は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができる。混練時の温度は、メタクリル樹脂(A)、芳香族ビニル系共重合体(B)および他の重合体の軟化温度に応じて適宜設定することができ、好ましくは150℃〜300℃である。
【0068】
本発明の樹脂組成物(C)は、重量平均分子量Mwが、50000〜180000であり、より好ましくは60000〜150000、さらに好ましくは70000〜120000である。重量平均分子量がこの範囲にあることで、成形性の良好な樹脂組成物(C)が得られ、外観の良好な成形体が得られる。
【0069】
本発明の樹脂組成物(C)は、分子量15000未満の成分(低分子量成分)の含有量が0.2〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。樹脂組成物(C)が低分子量成分をこの範囲にて含有していることで、成形性が向上する。
分子量15000未満の成分の含有量は、GPCで得られるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積のうちの、分子量15000の標準ポリスチレンの保持時間より後に検出されるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積の割合として算出する。
【0070】
本発明の樹脂組成物(C)は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.2〜30g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分、最も好ましくは1.0〜10g/10分である。
【0071】
また、本発明の本発明の樹脂組成物(C)は、ガラス転移温度が、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上である。樹脂組成物(C)のガラス転移温度の上限は特に制限はないが、好ましくは150℃である。
【0072】
本発明の樹脂組成物(C)は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。
【0073】
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物(C)からなる。本発明の成形体の製造法は特に限定されない。例えば、Tダイ法(ラミネート法、共押出法など)、インフレーション法(共押出法など)、圧縮成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、真空成形法、射出成形法(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、サンドイッチ法など)などの溶融成形法ならびに溶液キャスト法などを挙げることができる。これらのうち、生産性の高さ、コストなどの点から、Tダイ法、インフレーション法または射出成形法が好ましい。成形体の態様としては特に制限はないが、厚さ5〜250μmの平面状成形体(主に「フィルム」に分類される。)および250μmより厚い平面状成形体(主に「シート」に分類される。)が例として挙げられる。
【0074】
本発明の成形体は、光学分野、食品分野、医療分野、自動車分野、電気・電子分野などの多岐の分野で利用することができる。例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機用ディスプレイカバーなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;ディスプレイ装置のフロントライト用導光板およびフィルム、バックライト用導光板及びフィルム、液晶保護板、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板、反射材などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどを挙げることができる。
【0075】
本発明の成形体は、透明性が高く、耐熱性が高く、屈折率が高く、強度が大きく、傷つき難い。そのため本発明の成形体は、例えば、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、また、映像・光記録・光通信・情報機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板の保護フィルム、光スイッチ、光コネクター、液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ用導光フィルム・シート、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ用導光フィルム・シート、プラズマディスプレイ、プラズマディスプレイ用導光フィルム・シート、電子ペーパー用導光フィルム・シート、位相差フィルム・シート、偏光フィルム・シート、偏光板保護フィルム・シート、偏光子保護フィルム・シート、波長板、光拡散フィルム・シート、プリズムフィルム・シート、反射フィルム・シート、反射防止フィルム・シート、視野角拡大フィルム・シート、防眩フィルム・シート、輝度向上フィルム・シート、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、タッチパネル用導光フィルム・シート、各種前面板と各種モジュール間のスペーサーなど、各種の光学用途へ特に好適に適用可能である。さらに本発明の成形体は、例えば、携帯電話、デジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイ等の各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、耐候性、柔軟性などに優れている点から、本発明の成形体は、例えば、建築用内・外装用部材、カーテンウォール、屋根用部材、屋根材、窓用部材、雨どい、エクステリア類、壁材、床材、造作材、道路建設用部材、再帰反射フィルム・シート、農業用フィルム・シート、照明カバー、看板、透光性遮音壁など、公知の建材用途へも特に好適に適用可能である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0077】
(重合転化率)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 Inert CAP 1(df=0.4μm、I.D.=0.25mm、長さ=60m)を繋ぎ、インジェクション温度180℃、検出器温度180℃、カラム温度を60℃で5分間保持、60℃から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して、200℃で10分間保持する条件にて測定し、その結果に基づいて重合転化率を算出した。
【0078】
(重量平均分子量Mw、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn、低分子量成分含有量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値を算出した。ベースラインはGPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。検量線を用いて算出した積分分子量分布から、分子量15000未満の成分(低分子量成分)の割合を算出した。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤: テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.35ml/分
カラム温度:40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
【0079】
(三連子表示のシンジオタクティシティ(rr))
核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、室温、積算回数64回の条件にて、1H−NMRスペクトルを測定した。そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積Aと、0.6〜1.35ppmの領域の面積Aとを計測し、次いで、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)を式:(A/A)×100にて算出した。
【0080】
(ガラス転移温度Tg)
JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC−50(品番))を用いて、230℃まで一度目の昇温をし、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で二度目の昇温をさせる条件にてDSC曲線を測定した。二度目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
【0081】
(メルトマスフローレート(MFR))
JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した。
【0082】
(全光線透過率)
JIS K7361−1に準じて、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて熱プレス成形による成形体の全光線透過率を測定した。
【0083】
(ヘイズ(23℃))
JISK7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて熱プレス成形による成形体のヘイズを23℃にて測定した。
【0084】
(屈折率n23D
カルニュー光学工業株式会社「KPR−200」を用いて、23℃、50%RHにて波長587.6nm(D線)で熱プレス成形による成形体の屈折率n23Dを測定した。また、樹脂組成物においては、250℃にて熱プレス成形し、30mm×30mm×厚さ3.0mmの成形体として、同様に樹脂組成物の屈折率n23D率を測定した。
【0085】
(成形性)
実施例および比較例で得られた樹脂組成物を、80℃で12時間乾燥させた。20mmφ単軸押出機(OCS社製)を用いて、樹脂温度260℃にて、樹脂組成物を150mm幅のTダイから押し出し、それを表面温度85℃のロールにて引き取り、幅110mm、厚さ160μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの表面を目視により観察し以下の基準で表面平滑性を評価し、その結果を成形性の評価とした。
A:表面が平滑である。
B:表面に凹凸がある。
【0086】
<3点曲げ評価>
実施例または比較例で得られた熱プレス成形による成形体を80mm×10mm、厚さ3.0mmの大きさに切り出した。これを試験片として用い、JIS K7171に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、23℃における3点曲げを実施し、最大点応力を曲げ強度とした。
【0087】
〔鉛筆硬度〕
テーブル移動式鉛筆引掻き試験機(型式P)(東洋精機社製)を用いて測定した。実施例および比較例で得られた樹脂組成物からなる熱プレス成形による成形体の表面に対して角度45度、荷重750gで鉛筆の芯を押し付けながら引っ掻き傷の傷跡の有無を確認した。鉛筆の芯の硬度は順に増していき、傷跡を生じた時点よりも1段階軟かい芯の硬度を鉛筆硬度とした。
【0088】
製造例1 (メタクリル樹脂〔A−1〕の製造)
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン1600g、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.49g(10.8mmol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液53.5g(30.9mmol)、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n−ヘキサン5%)7.07g(11.8mmol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、15℃にて、蒸留精製したメタクリル酸メチル550gを30分間かけて滴下した。滴下終了後、25℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチルの重合転化率は100%であった。得られた溶液にトルエン1500gを加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール100kgに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、Mw70000、Mw/Mn1.05、シンジオタクティシティ(rr)74%で、ガラス転移温度131℃、低分子量成分含有量0.02質量%、MFR1.9g/10分、n23D1.4885、およびメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量100質量%であるメタクリル樹脂〔A−1〕を得た。
【0089】
製造例2 (メタクリル樹脂〔A−2〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0052質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.23質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分間となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、反応器内の反応液温度を140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は55質量%であった。
【0090】
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、Mw101000、Mw/Mn1.87、シンジオタクティシティ(rr)52%、ガラス転移温度120℃、低分子量成分含有量2.54質量%、MFR1.6g/10分、n23D1.4906、およびメタクリル酸メチルに由来する構造単位含有量100質量%である、ペレット状のメタクリル樹脂〔A−2〕を得た。
【0091】
製造例3 (メタクリル樹脂〔A−3〕の製造)
メタクリル樹脂〔A−1〕57質量部およびメタクリル樹脂〔A−2〕43質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出して、Mw83300、Mw/Mn1.38、シンジオタクティシティ(rr)64%、ガラス転移温度126℃、低分子量成分含有量1.86質量%、MFR1.7g/10分、n23D1.4890、およびメタクリル酸メチルに由来する構造単位含有量100質量%である、ペレット状のメタクリル樹脂〔A−3〕を得た。
【0092】
メタクリル樹脂(A−1)〜(A−3)の物性を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
芳香族ビニル系共重合体(B)として以下のものを用いた。
(B−1):電気化学工業株式会社製 R−200
(B−1)は、スチレン−無水マレイン酸−メタクリル酸メチルランダム共重合体であり、その質量組成はスチレン単位56質量%、無水マレイン酸単位18質量%、メタクリル酸メチル単位26質量%である。(B−1)の物性は以下のとおりである。
Mw;168,000、Mw/Mn;2.49、低分子量成分含有量;4.21%、Tg;138℃、屈折率n23D;1.5550であった。
【0095】
(B−2):新日鉄住金化学株式会社製 AS−Y61
(B−2)は、スチレン−アクリロニトリルランダム共重合体であり、その質量組成はスチレン単位75質量%、アクリロニトリル単位25質量%である。(B−2)の物性は以下のとおりである。
Mw;145,000、Mw/Mn;2.14、低分子量成分含有量;2.79%、Tg113℃、屈折率n23D;1.5691
【0096】
使用した添加剤を以下に示す。
(UVA−1)紫外線吸収剤として、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(アデカ社製 LA−F70)を使用した。
【0097】
<実施例1>
メタクリル樹脂〔A−1〕50質量部およびスチレン−無水マレイン酸−メタクリル酸メチルランダム共重合体〔B−1〕50質量部を混ぜ合わせ、ラボプラストミル(東洋精機株式会社製)にて250℃、90rpmで3分間溶融混練して樹脂組成物〔C1−1〕を製造した。樹脂組成物〔C1−1〕の評価結果を表2に示す。
また得られた樹脂組成物を250℃にて熱プレス成形し、100mm×100mm×厚さ3.0mmの成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表2に示す。
【0098】
<実施例2〜3、比較例1〜4>
表2に示す配合にて、実施例1と同じ方法で、樹脂組成物〔C1−2〕〜〔C1−3〕および〔C2−1〕〜〔C2−4〕を製造した。樹脂組成物〔C1−2〕〜〔C1−3〕および〔C2−1〕〜〔C2−4〕およびこれらの成形体の評価結果を表2に示す。
【0099】
<比較例5>
非特許文献1のExperimental Sectionに記載の方法と同様にしてアニオン重合法によりMw222600、Mw/Mn1.23、シンジオタクティシティ(rr)86%、ガラス転移温度135℃、低分子量成分含有量0.00質量%、およびメタクリル酸メチルに由来する構造単位含有量100質量%である、メタクリル樹脂〔A−4〕を得た。得られたメタクリル樹脂〔A−4〕は分子量が高く、MFR測定が困難であった。また熱プレス成形も困難であり、屈折率の測定はできなかった。
得られたメタクリル樹脂〔A−4〕と〔B−2〕を表2に示す配合にて、実施例1と同じ方法で、樹脂組成物〔C2−5〕を得ようと試みたが、粘度が高く溶融混練ができなかった。また熱プレス成形も試みたが、透明な成形体は得られなかった。
【0100】
【表2】