【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのバイナリー発電システムは、
熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる蒸発器と、当該蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動するタービンと、当該タービンを回転駆動した後の低沸点作動流体を冷媒との熱交換により液化する凝縮器とに、記載の順に低沸点作動流体を循環させて、前記タービンの回転軸に連結される発電機を回転駆動して発電するバイナリー発電システムであって、その特徴構成は、
低沸点作動流体がフッ素系炭化水素であり、
少なくとも、低沸点作動流体を圧送する作動流体圧送ポンプと、冷媒を圧送する冷媒圧送ポンプと、外気を利用して冷媒を冷却する冷却塔ファンと、熱源流体を圧送する熱源流体圧送ポンプとを、電力消費機器として備え、
前記タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する流量調整ノズルを有し、
前記蒸発器は、蒸発器筐体の内部に配設されて熱源流体を通流する伝熱管を備え、前記蒸発器筐体と前記伝熱管との間に前記低沸点作動流体を通流させる形態で、熱源流体と低沸点作動流体とを熱交換させるように構成され、
前記蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を測定する作動流体流量測定手段と、前記蒸発器に流入する熱源流体の流量を測定する熱源流体流量測定手段と、前記蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を調整可能な流量調整弁とを備え、
前記作動流体流量測定手段及び前記熱源流体流量測定手段の測定結果に基づいて前記流量調整弁の弁開度を、前記蒸発器筐体内における低沸点作動流体の液面が前記伝熱管の伝熱面よりも上方に位置する状態を維持する開度に制御する弁開度制御手段と、
前記流量調整ノズルにより調整される低沸点作動流体の流量を、前記発電機にて発電される発電電力から前記電力消費機器にて消費される自家消費電力を減算した正味の発電電力としての正味回収電力が最大となるように制御するノズル制御手段とを備える点にある。
【0007】
本発明の発明者らは、用いる低沸点作動流体、例えば沸点が約15℃のHFC245fa(C
3H
3F
5)や沸点が約34℃のHFE7000(C
4H
3F
7O)では、熱力学的特性からバイナリー発電システムにおいて、蒸発器出口における過熱度を高めなくても、作動媒体がタービン内で湿り域に入らないため、タービン発電機での発電効率が低下せず、また過熱度を高めていないためにタービンを出た作動流体の過熱度が低いために、凝縮器の上流(タービンと凝縮器との間)において熱回収設備を設ける必要も無く、また凝縮器にて捨てられる熱エクセルギーも少ないことを、新たに見出した。
そこで、上述した本発明にあっては、まずもって、蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を測定する作動流体流量測定手段と、蒸発器に流入する熱源流体の流量を測定する熱源流体流量測定手段と、蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を調整可能な流量調整弁とを備え、弁開度制御手段が、作動流体流量測定手段及び熱源流体流量測定手段の測定結果に基づいて流量調整弁の弁開度を、蒸発器筐体内における低沸点作動流体の液面が熱源流体を通流する伝熱管の伝熱面よりも上方に位置する状態を維持する開度に制御する、即ち、蒸発器筐体内で蒸発した低沸点作動流体が蒸発した後で更に過熱されないように、当該低沸点作動流体の流量を制御する。
これにより、蒸発器において低沸点流体の過熱度の上昇を防止して、蒸発器とタービンと凝縮器とを記載の順に通流する低沸点作動流体の流量を増加させ、タービン発電機での発電量を増加させ、発電効率を高めることができる。
尚、本発明にあっては、熱源流体としては、大気圧において液体状態であり、例えば、工場排熱やコージェネレーションの排温水あるいは、温泉を熱源とする地熱水を想定しており、その温度は略一定(例えば、80℃〜98℃程度)に保たれていることを前提としている。
【0008】
更に、本発明にあっては、これまで注目されていなかったタービンへの流入流量に着目し、バイナリー発電システムにおける正味発電効率の最大化を図っている。
本発明にあっては、タービン発電機における発電電力は、タービンに流入する低沸点作動流体の流量が特定の値に達するまで増加し、当該特定の値に達した後は低下する。一方で、バイナリー発電システムに備えられる電力消費機器による自家消費電力は、電力消費機器が流体を圧送するポンプや冷却のためのファンが主であることから、タービンへ流入する低沸点作動流体の流量の増加に伴って増加する。
つまり、本願の発明者らは、低沸点作動流体の流量において、正味回収電力が変化し、当該正味回収電力は、低沸点作動流体の流量が特定の流量であるときに、最大となることを見出した。
そこで、上述の特徴構成においては、ノズル制御手段が、流量調整ノズルにより調整される低沸点作動流体の流量を、発電機にて発電される発電電力から電力消費器機器にて消費される自家消費電力を減算した正味の発電電力としての正味回収電力が最大となるように制御している。これにより、例えば、確保できる熱源流体の流量が小さく、且つその温度も高くないような状況においても、正味回収電力を高めることができるバイナリー発電システムを実現できる。
【0009】
本発明のバイナリー発電システムの更なる特徴構成は、
前記蒸発器は、熱源から圧送された熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる高温側蒸発器と、当該高温側蒸発器を通過した後の熱源流体を加熱源として低沸
点作動流体を蒸発させる低温側蒸発器とからなり、
前記タービンは、前記高温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する高圧タービンと、前記低温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する低圧タービンとからなり、
前記高圧タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する第1流量調整ノズルを有すると共に、前記低圧タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する第2流量調整ノズルを有し、
前記ノズル制御手段は、前記第2流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体の流量に対する、前記第1流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体の流量の比である流量比を1以上1.85以下に設定する点にある。
【0010】
本発明にあっては、蒸発器において低沸点作動流体の過熱度を上げない(過熱度を0℃にして)関係で、その分だけ低沸点作動流体の流量を増加させることができる。
このように、低沸点作動流体の流量を増加し、増加した低沸点作動流体にて、効率よく発電する意味からは、上述の特徴構成の如く、熱源から圧送された熱源流体(高温側の熱源流体)を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる高温側蒸発器と、高温側蒸発器を通過した後の熱源流体(低温側の熱源流体)を加熱源として低沸
点作動流体を蒸発させる低温側蒸発器とを備えると共に、高温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する高圧タービンと、低温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する低圧タービンとを備える構成を採用することが好ましい。
このような構成において、更に、本発明の発明者らは、高圧タービンに導かれる低沸点作動流体の流量と、低圧タービンに導かれる低沸点作動流体の流量との比が、特定の比であるときに、正味回収電力が高くなることを見出した。
即ち、上記特徴構成を有するバイナリー発電システムにあっては、ノズル制御手段が、第2流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体の流量に対する、第1流量調整ノズルにて調整される高圧タービンへ流入する低沸点作動流体の流量の比である流量比を1以上1.85以下に設定することで、正味回収電力を高く設定しているのである。
【0011】
本発明のバイナリー発電システムの更なる特徴構成は、
前記低温側蒸発器を通過した後の熱源流体と前記凝縮器を通過した後の低沸点作動流体とを熱交換する形態で、前記低沸点作動流体を予熱する予熱器を備えている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、低温側蒸発器を通過した後の熱源流体と凝縮器を通過した後の低沸点作動流体とを熱交換する形態で、低沸点作動流体を予熱する予熱器を備えているから、熱源流体が保有する熱を十分に活用でき得るシステム構成とできる。
【0013】
本発明のバイナリー発電システムの更なる特徴構成は、
前記高温側蒸発器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該高温側蒸発器内にて最近接するときの温度差と、前記低温側蒸発器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該低温側蒸発器内にて最近接するときの温度差と、前記予熱器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該予熱器内にて最近接するときの温度差と、の夫々が2℃以内となるように、前記ノズル制御手段が前記第1流量調整ノズルと前記第2流量調整ノズルとを制御する点にある。
【0014】
発明者らは、高温側蒸発器と低温側蒸発器と予熱器との夫々におけるピンチポイントを調整することで更なる正味回収発電量を増加することができることを見出した。
つまり、上記特徴構成を有するバイナリー発電システムにあっては、ノズル制御手段が、高温側蒸発器と低温側蒸発器と予熱器との夫々におけるピンチポイントが2℃以内となるように、第1流量調整ノズルと第2流量調整ノズルとを制御することで、このような制御をしない場合に比べて、正味回収電力を44%増加できることを、後述するシミュレーションにて確認している。
【0015】
本発明のバイナリー発電システムの更なる特徴構成は、
前記高温側蒸発器に流入する熱源流体は、温度が80〜98℃で、且つ流量が20〜100t/hの地熱水あるいは工場排熱やコージェネレーションの排温水である点にある。
【0016】
本発明のバイナリー発電システムにあっては、特に、熱源流体の下限温度が80℃で、且つ下限流量が20t/hのような従来は地熱発電の熱源あるいは工場排熱やコージェネレーションの排温水としては活用され難かった熱源流体をも有効に利用して、売り電可能電力15kWの発電を行うことができる。