特許第6345102号(P6345102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345102
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】バイナリー発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20180611BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   F01K25/10 C
   F01K27/02 D
   F01K27/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-255502(P2014-255502)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-114029(P2016-114029A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森田 輝
(72)【発明者】
【氏名】久角 喜徳
(72)【発明者】
【氏名】毛笠 明志
(72)【発明者】
【氏名】堀 司
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−169608(JP,A)
【文献】 特開2013−079587(JP,A)
【文献】 特開2014−202092(JP,A)
【文献】 実開昭58−136604(JP,U)
【文献】 特開2009−221961(JP,A)
【文献】 特開2013−011272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
F01K 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる蒸発器と、当該蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動するタービンと、当該タービンを回転駆動した後の低沸点作動流体を冷媒との熱交換により液化する凝縮器とに、記載の順に低沸点作動流体を循環させて、前記タービンの回転軸に連結される発電機を回転駆動して発電するバイナリー発電システムであって、
低沸点作動流体がフッ素系炭化水素であり、
少なくとも、低沸点作動流体を圧送する作動流体圧送ポンプと、冷媒を圧送する冷媒圧送ポンプと、外気を利用して冷媒を冷却する冷却塔ファンと、熱源流体を圧送する熱源流体圧送ポンプとを、電力消費機器として備え、
前記タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する流量調整ノズルを有し、
前記蒸発器は、蒸発器筐体の内部に配設されて熱源流体を通流する伝熱管を備え、前記蒸発器筐体と前記伝熱管との間に低沸点作動流体を通流させる形態で、熱源流体と低沸点作動流体とを熱交換させるように構成され、
前記蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を測定する作動流体流量測定手段と、前記蒸発器に流入する熱源流体の流量を測定する熱源流体流量測定手段と、前記蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を調整可能な流量調整弁とを備え、
前記作動流体流量測定手段及び前記熱源流体流量測定手段の測定結果に基づいて前記流量調整弁の弁開度を、前記蒸発器筐体内における低沸点作動流体の液面が前記伝熱管の伝熱面よりも上方に位置する状態を維持する開度に制御する弁開度制御手段と、
前記流量調整ノズルにより調整される低沸点作動流体の流量を、前記発電機にて発電される発電電力から前記電力消費機器にて消費される自家消費電力を減算した正味の発電電力としての正味回収電力が最大となるように制御するノズル制御手段とを備えるバイナリー発電システム。
【請求項2】
前記蒸発器は、熱源から圧送された熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる高温側蒸発器と、当該高温側蒸発器を通過した後の熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる低温側蒸発器とからなり、
前記タービンは、前記高温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する高圧タービンと、前記低温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する低圧タービンとからなり、
前記高圧タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する第1流量調整ノズルを有すると共に、前記低圧タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する第2流量調整ノズルを有し、
前記ノズル制御手段は、前記第2流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体の流量に対する、前記第1流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体の流量の比である流量比を1以上1.85以下に設定する請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項3】
前記低温側蒸発器を通過した後の熱源流体と前記凝縮器を通過した後の低沸点作動流体とを熱交換する形態で、低沸点作動流体を予熱する予熱器を備えている請求項2に記載のバイナリー発電システム。
【請求項4】
前記高温側蒸発器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該高温側蒸発器内にて最近接するときの温度差と、前記低温側蒸発器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該低温側蒸発器内にて最近接するときの温度差と、前記予熱器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該予熱器内にて最近接するときの温度差と、の夫々が2℃以内となるように、前記ノズル制御手段が前記第1流量調整ノズルと前記第2流量調整ノズルとを制御する請求項3に記載のバイナリー発電システム。
【請求項5】
前記高温側蒸発器に流入する熱源流体は、温度が80〜98℃で、且つ流量が20〜100t/hの地熱水あるいは工場排熱やコージェネレーションの排温水である請求項2〜4の何れか一項に記載のバイナリー発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる蒸発器と、当該蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動するタービンと、当該タービンを回転駆動した後の低沸点作動流体を冷媒との熱交換により液化する凝縮器とに、記載の順に低沸点作動流体を循環させて、タービンの回転軸に連結される発電機を回転駆動して発電するバイナリー発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通常の蒸気タービンには適さない低温熱源から発電できる発電システムとして、石油系炭化水素やアンモニア等の低沸点流体の蒸気を利用して発電するバイナリー発電システムが知られている。
当該バイナリー発電システムでは、比較的低温の熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる蒸発器と、当該蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動するタービンと、当該タービンを回転駆動した後の低沸点作動流体を冷媒との熱交換により液化する凝縮器と、タービンの回転軸に連結される発電機とを備えて構成されている。
そして、蒸発器と、タービンと、凝縮器とに、記載の順に低沸点作動流体を循環させる形態で、タービンの回転軸に連結される発電機を回転駆動して発電する(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−221961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術は、熱源の熱流体の温度が200℃程度で、熱源の熱量が非常に豊富にあり、システムによる自家消費電力が発電出力に占める割合は小さいため、システムに導入される熱源流体に対する発電効率をそれほど考慮しなくても、発電電力から自家消費電力を差し引いた正味の発電電力である正味回収電力を十分に得ることができ、投資回収効率を高めることができるものであった。
しかしながら、数多くある日本の温泉源、あるいは工場排熱やコージェネレーションの熱源として、200℃程度の温度で十分な流量の熱源水を得られるところは多くない。
そして、熱源水の温度が低い場合にあっては、発電電力に対する自家消費電力の割合が大きくなるため、正味回収電力を十分に得られない場合があり、このような場合にあっては、投資に対する回収が十分に行えず、改善の余地があった。
また、低沸点作動流体の特性として、蒸発器における過熱度が低い場合、蒸発器にて蒸発した作動媒体の蒸気がタービン内で湿り域に入り、タービン翼に衝突することにより、タービン発電機の発電効率が低下する。このため、蒸発器において低沸点作動流体を飽和状態で蒸発させた後、更に熱源流体で設定された過熱度に高めて低沸点作動流体をタービンへ送るように、低沸点作動流体の流量を制御している。上記特許文献1に開示のバイナリー発電システムでも同様の制御形態を採用していた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、供給される熱源流体の温度が比較的低い場合であっても、正味回収電力を高め得るバイナリー発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのバイナリー発電システムは、
熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる蒸発器と、当該蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動するタービンと、当該タービンを回転駆動した後の低沸点作動流体を冷媒との熱交換により液化する凝縮器とに、記載の順に低沸点作動流体を循環させて、前記タービンの回転軸に連結される発電機を回転駆動して発電するバイナリー発電システムであって、その特徴構成は、
低沸点作動流体がフッ素系炭化水素であり、
少なくとも、低沸点作動流体を圧送する作動流体圧送ポンプと、冷媒を圧送する冷媒圧送ポンプと、外気を利用して冷媒を冷却する冷却塔ファンと、熱源流体を圧送する熱源流体圧送ポンプとを、電力消費機器として備え、
前記タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する流量調整ノズルを有し、
前記蒸発器は、蒸発器筐体の内部に配設されて熱源流体を通流する伝熱管を備え、前記蒸発器筐体と前記伝熱管との間に前記低沸点作動流体を通流させる形態で、熱源流体と低沸点作動流体とを熱交換させるように構成され、
前記蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を測定する作動流体流量測定手段と、前記蒸発器に流入する熱源流体の流量を測定する熱源流体流量測定手段と、前記蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を調整可能な流量調整弁とを備え、
前記作動流体流量測定手段及び前記熱源流体流量測定手段の測定結果に基づいて前記流量調整弁の弁開度を、前記蒸発器筐体内における低沸点作動流体の液面が前記伝熱管の伝熱面よりも上方に位置する状態を維持する開度に制御する弁開度制御手段と、
前記流量調整ノズルにより調整される低沸点作動流体の流量を、前記発電機にて発電される発電電力から前記電力消費機器にて消費される自家消費電力を減算した正味の発電電力としての正味回収電力が最大となるように制御するノズル制御手段とを備える点にある。
【0007】
本発明の発明者らは、用いる低沸点作動流体、例えば沸点が約15℃のHFC245fa(C335)や沸点が約34℃のHFE7000(C437O)では、熱力学的特性からバイナリー発電システムにおいて、蒸発器出口における過熱度を高めなくても、作動媒体がタービン内で湿り域に入らないため、タービン発電機での発電効率が低下せず、また過熱度を高めていないためにタービンを出た作動流体の過熱度が低いために、凝縮器の上流(タービンと凝縮器との間)において熱回収設備を設ける必要も無く、また凝縮器にて捨てられる熱エクセルギーも少ないことを、新たに見出した。
そこで、上述した本発明にあっては、まずもって、蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を測定する作動流体流量測定手段と、蒸発器に流入する熱源流体の流量を測定する熱源流体流量測定手段と、蒸発器に流入する低沸点作動流体の流量を調整可能な流量調整弁とを備え、弁開度制御手段が、作動流体流量測定手段及び熱源流体流量測定手段の測定結果に基づいて流量調整弁の弁開度を、蒸発器筐体内における低沸点作動流体の液面が熱源流体を通流する伝熱管の伝熱面よりも上方に位置する状態を維持する開度に制御する、即ち、蒸発器筐体内で蒸発した低沸点作動流体が蒸発した後で更に過熱されないように、当該低沸点作動流体の流量を制御する。
これにより、蒸発器において低沸点流体の過熱度の上昇を防止して、蒸発器とタービンと凝縮器とを記載の順に通流する低沸点作動流体の流量を増加させ、タービン発電機での発電量を増加させ、発電効率を高めることができる。
尚、本発明にあっては、熱源流体としては、大気圧において液体状態であり、例えば、工場排熱やコージェネレーションの排温水あるいは、温泉を熱源とする地熱水を想定しており、その温度は略一定(例えば、80℃〜98℃程度)に保たれていることを前提としている。
【0008】
更に、本発明にあっては、これまで注目されていなかったタービンへの流入流量に着目し、バイナリー発電システムにおける正味発電効率の最大化を図っている。
本発明にあっては、タービン発電機における発電電力は、タービンに流入する低沸点作動流体の流量が特定の値に達するまで増加し、当該特定の値に達した後は低下する。一方で、バイナリー発電システムに備えられる電力消費機器による自家消費電力は、電力消費機器が流体を圧送するポンプや冷却のためのファンが主であることから、タービンへ流入する低沸点作動流体の流量の増加に伴って増加する。
つまり、本願の発明者らは、低沸点作動流体の流量において、正味回収電力が変化し、当該正味回収電力は、低沸点作動流体の流量が特定の流量であるときに、最大となることを見出した。
そこで、上述の特徴構成においては、ノズル制御手段が、流量調整ノズルにより調整される低沸点作動流体の流量を、発電機にて発電される発電電力から電力消費器機器にて消費される自家消費電力を減算した正味の発電電力としての正味回収電力が最大となるように制御している。これにより、例えば、確保できる熱源流体の流量が小さく、且つその温度も高くないような状況においても、正味回収電力を高めることができるバイナリー発電システムを実現できる。
【0009】
本発明のバイナリー発電システムの更なる特徴構成は、
前記蒸発器は、熱源から圧送された熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる高温側蒸発器と、当該高温側蒸発器を通過した後の熱源流体を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる低温側蒸発器とからなり、
前記タービンは、前記高温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する高圧タービンと、前記低温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する低圧タービンとからなり、
前記高圧タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する第1流量調整ノズルを有すると共に、前記低圧タービンが自身に流入する低沸点作動流体の流量を調整する第2流量調整ノズルを有し、
前記ノズル制御手段は、前記第2流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体の流量に対する、前記第1流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体の流量の比である流量比を1以上1.85以下に設定する点にある。
【0010】
本発明にあっては、蒸発器において低沸点作動流体の過熱度を上げない(過熱度を0℃にして)関係で、その分だけ低沸点作動流体の流量を増加させることができる。
このように、低沸点作動流体の流量を増加し、増加した低沸点作動流体にて、効率よく発電する意味からは、上述の特徴構成の如く、熱源から圧送された熱源流体(高温側の熱源流体)を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる高温側蒸発器と、高温側蒸発器を通過した後の熱源流体(低温側の熱源流体)を加熱源として低沸点作動流体を蒸発させる低温側蒸発器とを備えると共に、高温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する高圧タービンと、低温側蒸発器にて蒸発した低沸点作動流体にて回転駆動する低圧タービンとを備える構成を採用することが好ましい。
このような構成において、更に、本発明の発明者らは、高圧タービンに導かれる低沸点作動流体の流量と、低圧タービンに導かれる低沸点作動流体の流量との比が、特定の比であるときに、正味回収電力が高くなることを見出した。
即ち、上記特徴構成を有するバイナリー発電システムにあっては、ノズル制御手段が、第2流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体の流量に対する、第1流量調整ノズルにて調整される高圧タービンへ流入する低沸点作動流体の流量の比である流量比を1以上1.85以下に設定することで、正味回収電力を高く設定しているのである。
【0011】
本発明のバイナリー発電システムの更なる特徴構成は、
前記低温側蒸発器を通過した後の熱源流体と前記凝縮器を通過した後の低沸点作動流体とを熱交換する形態で、前記低沸点作動流体を予熱する予熱器を備えている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、低温側蒸発器を通過した後の熱源流体と凝縮器を通過した後の低沸点作動流体とを熱交換する形態で、低沸点作動流体を予熱する予熱器を備えているから、熱源流体が保有する熱を十分に活用でき得るシステム構成とできる。
【0013】
本発明のバイナリー発電システムの更なる特徴構成は、
前記高温側蒸発器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該高温側蒸発器内にて最近接するときの温度差と、前記低温側蒸発器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該低温側蒸発器内にて最近接するときの温度差と、前記予熱器を通流する熱源流体の温度と低沸点作動流体の温度とが当該予熱器内にて最近接するときの温度差と、の夫々が2℃以内となるように、前記ノズル制御手段が前記第1流量調整ノズルと前記第2流量調整ノズルとを制御する点にある。
【0014】
発明者らは、高温側蒸発器と低温側蒸発器と予熱器との夫々におけるピンチポイントを調整することで更なる正味回収発電量を増加することができることを見出した。
つまり、上記特徴構成を有するバイナリー発電システムにあっては、ノズル制御手段が、高温側蒸発器と低温側蒸発器と予熱器との夫々におけるピンチポイントが2℃以内となるように、第1流量調整ノズルと第2流量調整ノズルとを制御することで、このような制御をしない場合に比べて、正味回収電力を44%増加できることを、後述するシミュレーションにて確認している。
【0015】
本発明のバイナリー発電システムの更なる特徴構成は、
前記高温側蒸発器に流入する熱源流体は、温度が80〜98℃で、且つ流量が20〜100t/hの地熱水あるいは工場排熱やコージェネレーションの排温水である点にある。
【0016】
本発明のバイナリー発電システムにあっては、特に、熱源流体の下限温度が80℃で、且つ下限流量が20t/hのような従来は地熱発電の熱源あるいは工場排熱やコージェネレーションの排温水としては活用され難かった熱源流体をも有効に利用して、売り電可能電力15kWの発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るバイナリー発電システムに係る概略構成図
図2】第1実施形態に係るバイナリー発電システムで、正味回収電力等の低沸点作動流体の流量依存性を示すグラフ図
図3】第2実施形態に係るバイナリー発電システムに係る概略構成図
図4】第2実施形態に係るバイナリー発電システムで、正味回収電力等の低沸点作動流体の流量依存性を示すグラフ図
図5】第2実施形態に係るバイナリ発電システムで、蒸発器等におけるピンチポイントを2℃程度に設定した場合における正味回収電力等の低沸点作動流体の流量依存性を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係るバイナリー発電システム100は、供給される熱源流体の温度が比較的低い場合であっても、正味回収電力を高め得るバイナリー発電システムに関する。
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、図1に基づいて、本発明の実施形態に係るバイナリー発電システム100の第1実施形態について説明する。
第1実施形態に係るバイナリー発電システム100は、温泉から沸き出る地熱水あるいは工場排熱やコージェネレーションの排温水等の熱源流体HWを加熱源として、比較的沸点の低い低沸点作動流体LWを蒸発させる蒸発器HX1と、当該蒸発器HX1にて蒸発した低沸点作動流体LWにて回転駆動するタービンT1と、当該タービンT1を回転駆動した後の低沸点作動流体LWを水等の冷媒CWとの熱交換により液化する凝縮器HX4と、凝縮器HX4にて凝縮した低沸点作動流体LWを蒸発器HX1を通過した後の熱源流体HWと熱交換する形態で予熱する予熱器HX3とに、記載の順に低沸点作動流体LWを循環させて、タービンT1の回転軸に連結される発電機G1を回転駆動して発電するものである。
【0020】
本発明の実施形態に係るバイナリー発電システム100は、熱源流体HWとしては、例えば、80℃〜98℃程度の温度で、20t/h〜100t/h程度の流量のものを対象とできる。尚、以下の実施形態にあっては、熱源流体HWは、その代表的な値として、平均で、流量100t/h、温度95℃のものが供給されるものとして説明する。尚、当該熱源流体HWの温度に関しては、安定しており、大きな変動をするものではないものとする。
【0021】
熱源流体HWを通流する流路には、当該熱源流体HWの流量を測定する熱源流体流量センサF1と、当該熱源流体HWの圧力を、約3気圧(300kPa)程度まで昇圧する熱源流体圧送ポンプP1が設けられている。
【0022】
比較的沸点の低い低沸点作動流体LWとしては、フッ素系炭化水素(例えば、HFC245fa(C335):沸点約15℃、HFE7000(C437O):沸点約34℃)等が好適に用いられるが、当該実施形態では、低沸点作動流体LWとして、HFC245fa(C335)を用いることとする。
【0023】
蒸発器HX1は、蒸発器筐体HX1bの内部に配設されて熱源流体HWを通流する伝熱管HX1aを備え、蒸発器筐体HX1bと伝熱管HX1aとの間に低沸点作動流体LWを通流させる形態で、熱源流体HWと低沸点作動流体LWとを熱交換させるように構成されている。
詳細については後述するが、当該蒸発器HX1では、蒸発器筐体HX1bの内部において低沸点作動流体LWの液面が伝熱管HX1aの伝熱面よりも上方にくるように、即ち、伝熱管HX1aの伝熱面のすべてに低沸点作動流体LWが接触するように、低沸点作動流体LWの流量が制御されている。これにより、熱源流体HWの保有する熱が、蒸発器筐体HX1bの内部にて蒸発した低沸点作動流体LWの過熱に用いられることを防止している。
【0024】
蒸発器HX1にて蒸発した低沸点作動流体LWが導かれるタービンT1は、当該タービンT1に流入する低沸点作動流体LWの流量を調整する流量調整ノズル(図示せず)を備えたラジアルタービンが用いられる。
当該タービンT1の回転軸には発電機G1が連結されており、タービンT1の軸出力にて回転駆動して発電される。図示は省略するが、発電機G1は、分電盤等を介する形態で、電力線により商用電力系統に接続されており、発電機G1にて発電した電力を商用電力系統へ逆潮流可能に構成されている。また、発電機G1にて発電された電力の一部は、当該バイナリー発電システム100にて電力消費するポンプ等の電力消費機器へ給電可能に構成されている。
【0025】
タービンT1にて降圧・降温して凝縮器HX4へ導かれる低沸点作動流体LWは、冷媒CWとしての水と熱交換する形態で、冷却・凝縮・過冷却される。
ここで、冷媒CWに係る回路について説明を追加すると、凝縮器HX4を出た冷媒CWには、外気Aに補給水Wが追加されて混合器M1にて混合され、冷却塔CTにて外気と積極的に接触させられる形態で、気化潜熱が奪われて降温し、飽和状態となった外気VEはファンCPにより大気に放散される。その後、冷媒圧送ポンプP2により、再度、凝縮器HX4へ導かれる形態で、循環されるように構成されている。
ここで、冷媒圧送ポンプP2は、例えば、外気が20℃、相対湿度75%の場合、冷却塔CTにて冷媒CWが24℃から20℃まで降温すると共に、凝縮器HX4にて冷媒CWが24℃まで昇温するように、その回転数がインバータ制御される。
【0026】
凝縮器HX4にて冷却・凝縮・過冷却された低沸点作動流体LWは、作動流体圧送ポンプP3にて、予熱器HX3へ圧送される。当該作動流体圧送ポンプP3は、当該低沸点作動流体LWを安定的に循環するのに必要な流量調整弁V1の差圧100kPa程度が得られるように、インバータ制御又は定回転数制御される。
【0027】
予熱器HX3は、蒸発器HX1を通過した後の熱源流体HWと、作動流体圧送ポンプP3にて圧送された低沸点作動流体LWとを熱交換する形態で、低沸点作動流体LWを予熱する。
当該予熱器HX3にて予熱された低沸点作動流体LWを蒸発器HX1まで導く流路には、当該流路を通流する低沸点作動流体LWの流量を計測する作動流体流量センサF2(作動流体流量測定手段の一例)と、当該流路を通流する低沸点作動流体LWの流量を調整する流量調整弁V1とが設けられている。
制御装置10(弁開度制御手段の一例)は、作動流体流量センサF2及び熱源流体流量センサF1の測定結果に基づいて、流量調整弁V1の開度を、蒸発器HX1の蒸発器筐体HX1b内における低沸点作動流体LWの液面が伝熱管HX1aの伝熱面よりも上方に位置する状態を維持する開度に制御する。
これにより、蒸発器HX1の蒸発器筐体HX1bでの低沸点作動流体LWの過熱を防止し、低沸点作動流体LWの流量を増加させ、タービンT1にて回転駆動される発電機G1による発電出力を増加させている。
【0028】
更に、制御装置10は、熱源流体圧送ポンプP1、冷媒圧送ポンプP2、作動流体圧送ポンプP3、及び冷却塔CTにて外気Aを送風する送風ファンCP等の電力消費機器の自家消費電力を監視すると共に、タービンT1にて回転駆動される発電機G1の発電電力量を監視するように構成されている。
そして、制御装置10は、タービンT1の流量調整ノズル(図示せず)により調整される低沸点作動流体LWの流量を、発電電力から自家消費電力を減算した正味の発電電力としての正味回収電力が最大となるように制御する形態で、ノズル制御手段として機能する。
【0029】
以下、当該第1実施形態に係る構成で、制御装置10が流量調整ノズルを調整して、低沸点作動流体LWの流量を制御した場合におけるシミュレーション結果を図2のグラフ図に示す。
尚、当該シミュレーションの条件としては、外気の温度20℃、相対湿度75%とし、熱源流体圧送ポンプP1、冷媒圧送ポンプP2、作動流体圧送ポンプP3の断熱効率を夫々75%、及び冷却塔CTのファンの断熱効率を70%で各モータ効率90%とし、タービンT1の断熱効率75%、機械損失5%とし、発電機G1の発電効率を90%としている。また蒸発器HX1と予熱器HX3との夫々におけるピンチポイントを5℃、凝縮器HX4におけるピンチポイントを7℃としている。
【0030】
図2のグラフ図に示すように、制御装置10が、流量調整ノズルを、タービンT1へ流入する低沸点作動流体LWの流量を徐々に増加する形態で制御する場合、電力消費機器の消費電力である自家使用電力は、低沸点作動流体LWの流量の増加に伴って徐々に増加する。
一方、タービンT1の出力(発電電力)は、低沸点作動流体LWの流量の増加に伴い、特定の流量(図2のグラフ図では、80t/hを超える程度の流量)までは、徐々に増加し、当該特定の流量を超えた後は、徐々に減少している。
結果、当該発電電力から自家消費電力を減算した値である正味回収電力は、当該第1実施形態に係る構成で、上述した条件の場合には、低沸点作動流体LWの流量が、60t/h〜70t/hの間で最大となる。
【0031】
即ち、当該第1実施形態に係るバイナリー発電システム100にあっては、制御装置10は、低沸点作動流体LWの流量を60t/h〜70t/hの間の流量となるように、タービンT1の流量調整ノズルを制御することとなる。
【0032】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係るバイナリー発電システム100は、図3に示すように、第1実施形態に係る構成に加えて、タービン、発電機、蒸発器、流量調整弁、作動流体流量センサの夫々を、二つ設けている点が異なる。
以下では、第1実施形態に対して異なる点について、重点的に説明をすることとし、それ以外の構成については、第1実施形態と同一の符号を付すこととし、説明を割愛することがある。
【0033】
尚、当該第2実施形態では、第1実施形態におけるタービンT1を高圧タービンT1とし、発電機G1を第1発電機G1とし、蒸発器HX1を高温側蒸発器HX1とし、流量調整弁V1を第1流量調整弁V1とし、作動流体流量センサF2を、第1作動流体流量センサF2とする。
当該第2実施形態に係るバイナリー発電システム100では、熱源から圧送された熱源流体HWを加熱源として低沸点作動流体LWを蒸発させる高温側蒸発器HX1に加えて、当該高温側蒸発器HX1を通過した後の熱源流体HWを加熱源として低沸点作動流体LWを蒸発させる低温側蒸発器HX2が設けられており、熱源流体HWは当該低温側蒸発器HX2を通過した後に予熱器HX3へ導かれるように構成されている。
低温側蒸発器HX2は、高温側蒸発器HX1と同様に、低温側蒸発器筐体HX2bの内部に配設されて熱源流体HWを通流する伝熱管HX2aを備え、低温側蒸発器筐体HX2bと低温側伝熱管HX2aとの間に低沸点作動流体LWを通流させる形態で、熱源流体HWと低沸点作動流体LWとを熱交換させるように構成されている。
【0034】
更に、当該低温側蒸発器HX2にて蒸発した低沸点作動流体LWにて回転駆動する低圧タービンT2と、当該低圧タービンT2の回転軸に連結される形態で回転駆動する第2発電機G2とが設けられている。
ここで、低圧タービンT2には、当該低圧タービンT2に流入する低沸点作動流体LWの流量を調整する第2流量調整ノズル(図示せず)が設けられている。
高圧タービンT1を通過した後の低沸点作動流体LWと低圧タービンT2を通過した後の低沸点作動流体LWとは、同じタービン出口圧力にて混合器M2で混合された後、凝縮器HX4にて、冷却・凝縮・過冷却され、予熱器HX3にて予熱された後、分岐SP1にて分離される形態で、高温側蒸発器HX1の側と低温側蒸発器HX2の側とに、各別に導かれる。
【0035】
尚、当該第2実施形態においては、低沸点作動流体LWが通流する系統としては、高圧タービンT1の側と低圧タービンT2の側との2系統が存在するが、当該作動流体圧送ポンプP3は、分岐SP1の上流に単一のものを設ける構成とする。
【0036】
分岐SP1と低温側蒸発器HX2との間の流路には、当該流路を通流する低沸点作動流体LWの流量を計測する第2作動流体流量センサF3と、当該流路を通流する低沸点作動流体LWの流量を調整する第2流量調整弁V2とが設けられている。
【0037】
制御装置10(弁開度制御手段の一例)は、第1作動流体流量センサF2、第2作動流体流量センサF3、及び熱源流体流量センサF1の測定結果に基づいて、高温側蒸発器HX1の高温側蒸発器筐体HX1b内における低沸点作動流体LWの液面が高温側伝熱管HX1aの伝熱面よりも上方に位置する状態を維持し、且つ低温側蒸発器HX2の低温側蒸発器筐体HX2b内における低沸点作動流体LWの液面が低温側伝熱管HX2aの伝熱面よりも上方に位置する状態を維持するように、第1流量調整弁V1及び第2流量調整弁V2の開度を制御する。
これにより、高温側蒸発器HX1及び低温側蒸発器HX2での低沸点作動流体LWの過熱を防止し、高圧タービンT1及び低圧タービンT2へ導かれる低沸点作動流体LWの流量を増加させ、第1発電機G1及び第2発電機G2による発電出力を増加させている。
【0038】
制御装置10は、熱源流体圧送ポンプP1、冷媒圧送ポンプP2、作動流体圧送ポンプP3、及び冷却塔CTにて外気Aを送風する送風ファンCP等の電力消費機器の自家消費電力を監視すると共に、第1発電機G1及び第2発電機G2の発電電力を監視するように構成されている。
そして、制御装置10(ノズル制御手段)は、高圧タービンT1の第1流量調整ノズル(図示せず)により調整される低沸点作動流体LWの流量と、低圧タービンT2の第2流量調整ノズル(図示せず)により調整される低沸点作動流体LWの流量との合計流量を、発電電力から自家消費電力を減算した正味の発電電力としての正味回収電力が最大となるように制御する。
【0039】
更に、制御装置10は、低圧タービンT2に設けられる第2流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体LWの流量に対する、高圧タービンT1に設けられる第1流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体LWの流量の比である流量比を適切な値に設定している。
【0040】
上述の流量比を変動させた場合に、当該第2実施形態に係る構成にてシミュレーションにより導出した正味回収電力を、以下の〔表1〕に示す。
ここで、シミュレーションの条件は、上記第1実施形態に示したものに関しては、上記第1実施形態に示したものと同一であるとし、低圧タービンT2の断熱効率75%、機械損失5%とし、第2発電機G2の発電効率を90%としている。また、高圧タービンT1と低圧タービンT2、第1発電機G1と第2発電機G2、高温側蒸発器HX1と低温側蒸発器HX2は、同一の機能を有するものとする。
【0041】
【表1】
【0042】
上述のシミュレーション結果から、制御装置10は、低圧タービンT2に設けられる第2流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体LWの流量に対する、高圧タービンT1に設けられる第1流量調整ノズルにて調整される低沸点作動流体LWの流量の比である流量比を1以上1.85以下に設定する。
【0043】
以下、当該第2実施形態に係る構成で、制御装置10が第1流量調整ノズル及び第2流量調整ノズルを調整して、低沸点作動流体LWの合計流量を制御した場合におけるシミュレーション結果を図4のグラフ図に示す。尚、図4に示すシミュレーション結果は、上述の流量比を1.5に設定した場合のものである。
図4のグラフ図に示すように、制御装置10が、第1流量調整ノズル及び第2流量調整ノズルを、高圧タービンT1及び低圧タービンT2へ流入する低沸点作動流体LWの流量を徐々に増加する形態で制御する場合、第1実施形態の場合と同様に、自家使用電力は、低沸点作動流体LWの流量の増加に伴って徐々に増加し、高圧タービンT1及び低圧タービンT2の合計出力(発電電力)は、低沸点作動流体LWの流量の増加に伴い、特定の流量(図4のグラフ図では、90t/h程度の流量)までは、徐々に増加し、当該特定の流量を超えた後は、徐々に減少している。
結果、当該発電電力から自家消費電力を減算した値である正味回収電力は、当該第2実施形態に係る構成で、上述した条件の場合には、低沸点作動流体LWの流量が、70t/h〜80t/hの間で最大となる。
【0044】
即ち、当該第2実施形態に係るバイナリー発電システム100にあっては、制御装置10は、低沸点作動流体LWの合計流量を70t/h〜80t/hの間の流量となるように、高圧タービンT1の第1流量調整ノズル及び低圧タービンT2の第2流量調整ノズルを制御することとなる。
【0045】
更に、制御装置10が、高温側蒸発器HX1を通流する熱源流体HWの温度と低沸点作動流体LWの温度とが当該高温側蒸発器HX1内にて最近接するときの温度差と、低温側蒸発器HX2を通流する熱源流体HWの温度と低沸点作動流体LWの温度とが当該低温側蒸発器HX2内にて最近接するときの温度差と、予熱器HX3を通流する熱源流体HWの温度と低沸点作動流体LWの温度とが当該予熱器HX3内にて最近接するときの温度差と、冷却水CWの温度と高温タービンT1及び低温タービンT2とを出た低沸点作動媒体LWの温度が当該凝縮器HX4内にて最近接するときの温度差が、夫々大凡2℃となるように、第1流量調整ノズルと第2流量調整ノズルとを制御するように構成した場合のシミュレーション結果を、図5のグラフ図に示す。
当該構成によれば、図4のグラフ図に比べ、正味回収電力を44%増加できており、電力回収効率を向上する意味で有効であることがわかる。
【0046】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、高圧タービンT1と低圧タービンT2の二段式の発電システムを示したが、二段より多い多段式の発電システムであっても本発明の目的を良好に達成し得るバイナリー発電システムを提供できる。また、第2実施形態では、それぞれの高温タービンT1及び低温タービンT2により第1発電機G1及び第2発電機G2が駆動されるとしたが、直結もしくは多軸の減速機を用いて一台の発電機を駆動することもできる。
【0047】
(2)上記実施形態では、制御装置10は、流量調整弁V1、V2の開度を、作動流体流量センサF2、F3にて測定される低沸点作動流体LWの流量に基づいて、蒸発器HX1、HX2の蒸発器筐体HX1b、HX2b内の低温作動流体が伝熱管HX1a、HX2aの伝熱面を覆う状態を維持するように、決定される例を示した。
しかしながら、当該蒸発器HX1、HX2の蒸発器筐体HX1b、HX2b内の低温作動流体の液面は、伝熱管HX1a、HX2aを通流する熱源流体HWの温度、流量にも依存するものである。
そこで、制御装置10は、流量調整弁V1、V2の開度を、熱源流体HWの温度、流量にも基づいて、制御するように構成しても構わない。
更に、図1又は図3に示すように、蒸発器HX1、HX2の蒸発器筐体HX1b、HX2b内の液面を直接測定する液面センサWS1、WS2の測定結果にも基づいて、流量調整弁V1、V2の開度を制御するように構成しても構わない。
【0048】
(3)上記実施形態では、熱源流体HWの温度は、安定しており大きく変動するものでない場合の構成例を例示した。
しかしながら、当該熱源流体HWの温度が大きく変動する場合、熱源から凝縮器HX4へ供給される熱源流体HWの温度を測定する熱源流体温度センサを備える構成を採用すると共に、制御装置10は、当該熱源流体温度センサの測定結果をも考慮して、流量調整弁V1、V2の弁開度、及び流量調整ノズルにより調整される低沸点作動流体LWの流量を、制御するように構成しても構わない。
【0049】
(4)また、冷水塔CTと冷媒圧送ポンプP2の代わりに発電出力は低下するものの補給水が不要となる空冷式凝縮器を用いることもできる。
【0050】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のバイナリー発電システムは、供給される熱源流体HWの温度が比較的低い場合であっても、正味回収電力を高め得るバイナリー発電システムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 :制御装置
100 :バイナリー発電システム
CP :送風ファン
F1 :熱源流体流量センサ
F2 :第1作動流体流量センサ
F3 :第2作動流体流量センサ
G1 :第1発電機
G2 :第2発電機
HW :熱源流体
HX1 :蒸発器
HX1a :伝熱管
HX1b :蒸発器筐体
HX2 :低温側蒸発器
HX3 :予熱器
HX4 :凝縮器
LW :低沸点作動流体
P1 :熱源流体圧送ポンプ
P2 :冷媒圧送ポンプ
P3 :作動流体圧送ポンプ
SP1 :分岐
T1 :高圧タービン
T2 :低圧タービン
V1 :第1流量調整弁
V2 :第2流量調整弁
図1
図2
図3
図4
図5