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特許6346039印刷装置の画像処理装置及びその画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346039
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】印刷装置の画像処理装置及びその画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 5/30 20060101AFI20180611BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   B41J5/30 Z
   B41J2/01 201
   B41J2/01 209
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-183480(P2014-183480)
(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-55518(P2016-55518A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】久岡 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】福井 一希
(72)【発明者】
【氏名】連 国男
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−113312(JP,A)
【文献】 特開2013−176868(JP,A)
【文献】 特開平09−022170(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0314014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 5/30
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の搬送方向と直交する方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷媒体の搬送方向に沿って離間して配置された第1の印刷ヘッドと、前記第1の印刷ヘッドより下流側に配置された第2の印刷ヘッドとの少なくとも二つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理装置において、
前記第1の印刷ヘッドにより印刷される第1の画像と、前記第2の印刷ヘッドにより印刷される第2の画像との記録位置を取得する記録位置取得手段と、
前記記録位置取得手段によって取得された第1の画像と第2の画像の記録位置について、前記印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出手段と、
前記ズレ量と前記所定間隔との剰余がある場合には、前記第1の画像または第2の画像について前記剰余分に応じた重み付けを行って前記印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換手段と、
を備えていることを特徴とする印刷装置の画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置の画像処理装置において、
前記位置ズレ補間画像変換手段は、前記重み付けを行う際に、ずらす画像の1個の画素値を含む近傍の所定個数の画素値に相当する範囲の画素値について、前記剰余毎に求めてある重み付け係数を前記ずらす画像の1個の画素値から前記剰余分ずらした位置に適用することを特徴とする印刷装置の画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置の画像処理装置において、
前記所定個数は、4個であることを特徴とする印刷装置の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置の画像処理装置において、
前記印刷ユニットに前記位置ズレ補間画像を出力する際には、前記位置ズレ補間画像に対してずらす量に応じた網掛け処理を行う網掛け処理手段をさらに備えていることを特徴とする印刷装置の画像処理装置。
【請求項5】
印刷媒体の搬送方向と直交する方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷媒体の搬送方向に沿って離間して配置された第1の印刷ヘッドと、前記第1の印刷ヘッドより下流側に配置された第2の印刷ヘッドとの少なくとも二つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理方法において、
前記第1の印刷ヘッドにより印刷される第1の画像と、前記第2の印刷ヘッドにより印刷される第2の画像との記録位置を取得する記録位置取得過程と、
前記記録位置取得過程によって取得された第1の画像と第2の画像の記録位置について、前記印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出過程と、
前記ズレ量と前記所定間隔との剰余がある場合には、前記第1の画像または第2の画像について前記剰余分に応じた重み付けを行って前記印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換過程と、
を実施することを特徴とする印刷装置の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2個の印刷ヘッドを印刷媒体の搬送方向に離間して備えた印刷装置で印刷するための画像データを処理する印刷装置の画像処理装置及びその画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、連続紙を搬送させる搬送路と、搬送路に配置され、連続紙にインク滴を吐出して画像を形成する印刷ユニットと、印刷ユニットに印刷データを出力する画像処理装置とを備えたインクジェット印刷装置がある(例えば、特許文献1参照)。この印刷ユニットは、3個の印刷ヘッドが連続紙の搬送方向に離間して配置されている。
【0003】
このような構成のインクジェット印刷装置では、搬送路に沿って連続紙が搬送される際に、連続紙が斜行することがある。この状態で印刷を行うと、上流の印刷ヘッドから吐出したインク滴と、下流の印刷ヘッドから吐出したインク滴との位置関係が、画像データにおいて意図した位置関係からずれる位置ズレ(見当ズレともいう)を生じる。そこで、画像処理装置は、斜行量に応じて連続紙の幅方向に画像データをずらして補正を行い、印刷ユニットに補正画像データを出力する。そして、その補正画像データに基づいて印刷ユニットが印刷を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−176868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、斜行量に応じて印刷ユニットのノズル単位でずらし処理を行っている。したがって、ノズル間隔の整数倍とならないような斜行量によっては十分な補正ができず、位置ズレを十分に抑制できないことがある。なお、位置ズレを十分に抑制できないと、印刷品質の低下を招くので位置ズレの抑制は重要な課題である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、補正の仕方を工夫することにより、位置ズレを抑制することができる印刷装置の画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、印刷媒体の搬送方向と直交する方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷媒体の搬送方向に沿って離間して配置された第1の印刷ヘッドと、前記第1の印刷ヘッドより下流側に配置された第2の印刷ヘッドとの少なくとも二つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理装置において、前記第1の印刷ヘッドにより印刷される第1の画像と、前記第2の印刷ヘッドにより印刷される第2の画像との記録位置を取得する記録位置取得手段と、前記記録位置取得手段によって取得された第1の画像と第2の画像の記録位置について、前記印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出手段と、前記ズレ量と前記所定間隔との剰余がある場合には、前記第1の画像または第2の画像について前記剰余分に応じた重み付けを行って前記印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、位置ズレ量算出手段は、記録位置取得手段で取得された第1の画像と第2の画像の記録位置について印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する。位置ズレ補間画像変換手段は、ズレ量を所定間隔で除したときの剰余が存在する場合には、第1の画像または第2の画像について剰余分に応じた重み付けを行って印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像としているので、どのような斜行量であっても十分に位置ズレを抑制でき、印刷品質の低下を抑制できる。
【0009】
また、本発明において、前記位置ズレ補間画像変換手段は、前記重み付けを行う際に、ずらす画像の1個の画素値を含む近傍の所定個数の画素値に相当する範囲の画素値について、前記剰余毎に求めてある重み付け係数を前記ずらす画像の1個の画素値から前記剰余分ずらした位置に適用することが好ましい(請求項2)。
【0010】
ずらす画像の1個の画素値を含む近傍の所定個数の画素値に相当する範囲の画素値について、剰余毎に求めてある重み付け係数をずらす画像の1個の画素値から剰余分ずらした位置に適用するので、近傍の画素値を反映させて重み付けできる。したがって、補間しても画像が乱れるのを抑制できる。
【0011】
また、本発明において、前記所定個数は、4個であることが好ましい(請求項3)。
【0012】
一度に4個の画素値を対象に演算するだけでよいので、位置ズレ補間画像変換手段による変換処理の負荷を軽減することができる。
【0013】
また、本発明において、前記印刷ユニットに前記位置ズレ補間画像を出力する際には、前記位置ズレ補間画像に対してずらす量に応じた網掛け処理を行う網掛け処理手段をさらに備えていることが好ましい(請求項4)。
【0014】
網掛け処理手段により位置ズレ補間画像に網掛け処理を行うことにより、位置ズレ補間画像を印刷ユニットの複数個の記録部で印刷することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、印刷媒体の搬送方向と直交する方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷媒体の搬送方向に沿って離間して配置された第1の印刷ヘッドと、前記第1の印刷ヘッドより下流側に配置された第2の印刷ヘッドとの少なくとも二つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理方法において、前記第1の印刷ヘッドにより印刷される第1の画像と、前記第2の印刷ヘッドにより印刷される第2の画像との記録位置を取得する記録位置取得過程と、前記記録位置取得過程によって取得された第1の画像と第2の画像の記録位置について、前記印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出過程と、前記ズレ量と前記所定間隔との剰余がある場合には、前記第1の画像または第2の画像について前記剰余分に応じた重み付けを行って前記印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換過程と、を実施することを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]請求項6に記載の発明によれば、位置ズレ量算出過程は、記録位置取得過程で取得された第1の画像と第2の画像の記録位置について印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する。位置ズレ補間画像変換過程は、ズレ量を所定間隔で除したときの剰余が存在する場合には、第1の画像または第2の画像について剰余分に応じた重み付けを行って印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像としているので、どのような斜行量であっても十分に位置ズレを抑制でき、印刷品質の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る画像処理装置によれば、位置ズレ量算出手段は、記録位置取得手段で取得された第1の画像と第2の画像の記録位置について印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する。位置ズレ補間画像変換手段は、ズレ量を所定間隔で除したときの剰余が存在する場合には、第1の画像または第2の画像について剰余分に応じた重み付けを行って印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像としているので、どのような斜行量であっても十分に位置ズレを抑制でき、印刷品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図である。
図2】各印刷ヘッドとセンサとの位置関係を平面視で示した模式図である。
図3】斜行に起因する位置ズレの説明に供する模式図である。
図4】印刷処理を示すフローチャートである。
図5】重み付け処理を説明するための模式図である。
図6】実データによる画像と変換された位置ズレ補間画像とを示す模式図である。
図7】実データの画像に網掛け処理を行う際の説明に供する図である。
図8】(a)は、実データの画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図であり、(b)は、実データの画像を1ドット分だけシフトした位置ズレ補間画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図であり、(c)は、実データの画像を0.5ドット分だけシフトした位置ズレ補間画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図である。
図9】実データのずらしなしの画像と、各種ずらし量の画像とにおける階調の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は、実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図であり、図2は、各印刷ヘッドとセンサとの位置関係を平面視で示した模式図である。
【0020】
実施例に係るインクジェット印刷システムは、給紙部1と、インクジェット印刷装置3と、排紙部5とを備えている。
【0021】
給紙部1は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、インクジェット印刷装置3に対して連続紙WPを巻き出して供給する。また、排紙部5は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部1はインクジェット印刷装置3の上流側に配置されており、排紙部5はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0022】
インクジェット印刷装置3は、給紙部1からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ7を上流側に備えている。駆動ローラ7によって給紙部1から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ9に沿って下流側の排紙部5に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ9と排紙部5との間には、駆動ローラ11が配置されている。この駆動ローラ11は、搬送ローラ9上を搬送されている連続紙WPを排紙部5に向かって送り出す。
【0023】
なお、上記のインクジェット印刷装置3が本発明における「印刷装置」に相当し、上記の連続紙WPが本発明における「印刷媒体」に相当する。
【0024】
インクジェット印刷装置3は、駆動ローラ7と駆動ローラ11との間に、印刷ユニット13と、乾燥部15と、検査部17とを上流側からその順序で備えている。乾燥部15は、印刷ユニット13によって印刷された部分の乾燥を行う。検査部17は、印刷された部分に汚れや抜け等がないかを検査する。
【0025】
印刷ユニット13には、連続紙WPの搬送方向に沿って複数個の印刷ヘッド19が配置されている。本実施例では、例えば、4個の印刷ヘッド19を配置されている。各印刷ヘッド19は、インク滴を吐出する。
【0026】
本実施例では、各印刷ヘッド19を、上流側から順に第1の印刷ヘッド19aと、第2の印刷ヘッド19bと、第3の印刷ヘッド19cと、第4の印刷ヘッド19dと称し、4個の印刷ヘッド19をそれぞれ区別する必要がある場合にはこのように小文字のアルファベットを付して称する。各印刷ヘッド19は、搬送方向に向かって所定距離だけ互いに離間して配置されている。第1の印刷ヘッド19a、第2の印刷ヘッド19b、第3の印刷ヘッド19c、第4の印刷ヘッド19dは、それぞれインク滴を吐出する複数個のインクジェットノズル20を備えたノズル部21を備えている。
【0027】
これらの印刷ヘッド19a〜19dは、少なくとも2色のインク滴を吐出し、連続紙WPに多色印刷が可能に構成されている。例えば、第1の印刷ヘッド19aはブラック(K)であり、第2の印刷ヘッド19bはシアン(C)であり、第3の印刷ヘッド19cはマゼンタ(M)であり、第4の印刷ヘッド19dはイエロー(Y)である。また、各ノズル部21は、連続紙WPの搬送方向(図1における紙面の左右方向)にも複数個のインクジェットノズル20を備え、連続紙WPの搬送方向に直交する方向(図1における紙面の手前奥方向)にも複数個のインクジェットノズル20を備えている。ここでは、複数個のノズル20が連続紙WPの搬送方向から見て所定間隔Lで配置されているものとする。具体的には、例えば、所定間隔L=21μmであって、1200dpiの解像度で印刷が可能であるとする。例えば、印刷物における位置ズレの制御目標を35μm程度とすると、所定間隔Lのおよそ1/4に相当する5μm程度の単位で補正を行うことができれば、十分に制御目標内でズレを制御できる。
【0028】
なお、上述した複数個のインクジェットノズル20が本発明における「複数個の記録部」に相当する。
【0029】
印刷ユニット13の上流側には、第1のセンサ23が配置され、印刷ユニット13の下流側には、第2のセンサ25が配置されている。第1のセンサ23及び第2のセンサ25は、連続紙WPの搬送経路における幅方向の端部に配置され、幅方向における連続紙WPの側端面の位置を検出する。これらの第1のセンサ23と第2のセンサ25は、連続紙WPが正常に搬送されている際の搬送線にあたる「基準線」に対して、連続紙WPの側端面が傾斜したこと、及び、その斜行の度合いを検出し、電気信号で出力する。
【0030】
インクジェット印刷装置3は、制御部27を備えている。この制御部27は、図示しないCPUやメモリを備え、さらに、画像処理ユニット29を備えている。制御部27は、連続紙WPに描画する画像のデータである印刷データを外部コンピュータから受信し、その印刷データに基づいて連続紙WPを搬送させる。画像処理ユニット29は、記録位置取得部31と、位置ズレ量算出部33と、位置ズレ補間画像変換部35と、重み付け係数記憶部37と、網掛け処理部39とを備えている。
【0031】
記録位置取得部31は、制御部27が受信した印刷データに基づいて、各印刷ヘッド19で印刷される各画像の記録位置を取得する。また、位置ズレ量算出部33は、第1のセンサ23及び第2のセンサ25からの信号に基づいて斜行度合いを判断するとともに、各印刷ヘッド19における各画像の記録位置のズレ量を算出する。さらに、位置ズレ補間画像変換部35は、ズレ量と所定間隔Lとの剰余がある場合には、各画像について剰余分に応じた重み付けを行って各画像について斜行方向にずらした位置ズレ補間画像に変換する。重み付け係数記憶部37は、位置ズレ補間画像変換部35が変換を行う際に使用する重み付け係数を予め記憶している。重み付け係数は、例えば、ルックアップテーブルで記憶されている。網掛け処理部39は、位置ズレ補間画像に対して網掛け処理を施し、網掛け処理された各位置ズレ補間画像を各印刷ヘッド19に対して出力し、連続紙WPに対して印刷を行う。画像処理ユニット29は、第1のセンサ23と第3のセンサ25の出力に基づいて斜行が生じていることを検出し、そのズレ量と所定間隔Lとの剰余がない場合には、位置ズレ補間画像変換部35による位置ズレ補間画像への変換を行わず、ズレ量に応じて他のインクジェットノズル20から吐出を行わせるように画像を補正する。
【0032】
なお、上述した画像処理ユニット29が本発明における「画像処理装置」に相当し、記録位置取得手段が本発明における「記録位置取得手段」に相当し、位置ズレ量算出部33が本発明における「位置ズレ量算出手段」に相当し、位置ズレ補間画像変換部35が本発明における「位置ズレ補間画像変換手段」に相当し、網掛け処理部39が本発明における「網掛け処理手段」に相当する。
【0033】
ここで図2図3を参照して、斜行に起因する位置ズレについて説明する。なお、図2は、各印刷ヘッドとセンサとの位置関係を平面視で示した模式図であり、図3は、斜行に起因する位置ズレの説明に供する模式図である。以下の説明においては、発明の理解を容易にするために、第1の印刷ヘッド19aと第2の印刷ヘッド19bの2個の印刷ヘッド19だけを例にとって説明する。
【0034】
連続紙WPに斜行が生じてない場合には、連続紙WPは、その側端面が搬送路上の基準線RL(Y軸)に沿って移動する。しかし、連続紙WPに斜行が生じると、連続紙WPは、例えば、その側端面が、基準線RLから搬送方向と直交する方向に傾斜した斜行線GLに沿って移動する。なお、搬送方向に直交し、最上流に配置されている印刷ヘッド19aの長手方向に沿った線をX軸とする。例えば、印刷ヘッド19aに対する印刷ヘッド19bにおけるズレ量がMDとなる場合について説明する。このズレ量MDは、例えば、印刷ヘッド19aにより第1の画像FG1が印刷され、その下流にある印刷ヘッド19bにより第2の画像FG2が印刷され、斜行がなければそれらが同じ位置に重なる印刷データである場合には、第1の画像FG1に対して搬送方向と直交する方向にずれて第2の画像FG2が印刷されてしまう。このときの第1の画像FG1に対する第2の画像FG2のズレ量は、MDとなる(図3)。
【0035】
このズレ量MDは、第1のセンサ23及び第2のセンサ25と印刷ヘッド19a及び印刷ヘッド19bとの位置関係などに基づいて、上述した位置ズレ量算出部33によって算出される。このズレ量MDが所定間隔Lで割り切れる場合、つまり、ズレ量MDが所定間隔Lの整数倍である場合、換言すると、ズレ量MDを所定間隔Lで除して剰余がない場合には、位置ズレ補間画像変換部35は、印刷データを位置ズレ補間画像に変換することなく、ズレ量MDに応じてインクジェットノズル20単位(画素単位)で印刷データを斜行方向にシフトした補正画像を生成する。その一方、ズレ量MDが所定間隔Lで割り切れない場合、つまり、ズレ量MDが所定間隔Lの整数倍でない場合、換言すると、ズレ量MDを所定間隔Lで除して剰余がある場合には、位置ズレ補間画像変換部35は、後述するように剰余分に応じた重み付けを行って、印刷データを斜行方向にずらした位置ズレ補間画像に変換する。
【0036】
ここで、図4を参照し、上述したインクジェット印刷装置3による印刷動作について説明する。なお、図4は、印刷処理を示すフローチャートである。
【0037】
ステップS1
制御部27は、外部のコンピュータから印刷データを受信する。
【0038】
ステップS2(記録位置取得過程)
記録位置取得部31は、印刷データに基づいて、印刷ヘッド19a及び印刷ヘッド19bで印刷される第1の画像と第2の画像との記録位置を取得する。
【0039】
ステップS3(位置ズレ量算出過程)
位置ズレ量算出部33は、第1のセンサ23及び第2のセンサ25の出力信号に基づいて、印刷ヘッド19aと印刷ヘッド19bで印刷される画像データの記録位置についてズレ量MDを算出する。
【0040】
ステップS4
位置ズレ補間画像変換部35は、ズレ量MDと所定間隔Lとの剰余があるか否かによって処理を分岐する。剰余がある場合には、ステップS5に分岐し、剰余がない場合には、ステップS6に分岐する。
【0041】
ステップS5(位置ズレ補間画像変換過程)
位置ズレ補間画像変換部35は、インクジェットノズル20ごとに(画素ごとに)シフトしても適切に補正ができないので、例えば、印刷ヘッド19bで印刷される第2の画像を位置ズレ補間画像に変換する。
【0042】
ステップS6
位置ズレ補間画像変換部35は、印刷ヘッド19bで印刷される第2の画像をインクジェットノズル20ごとに(画素ごとに)シフトして補正画像を生成する。
【0043】
ステップS7
網掛け処理部39は、第1の画像と第2の画像(位置ズレ補間画像または補正画像)に対して網掛け処理を施す。
【0044】
ステップS8
制御部27は、網掛け処理された第1の画像と第2の画像を印刷ユニット13によって印刷させる。
【0045】
ここで、図5及び図6を参照して、上述した重み付け処理について説明する。なお、図5は、重み付け処理を説明するための模式図であり、図6は、実データによる画像と変換された位置ズレ補間画像とを示す模式図である。
【0046】
位置ズレ補間画像変換部35は、上述したように、ズレ量MDと所定間隔Lとに剰余がある場合には、例えば、印刷データの第2の画FG2を位置ズレ補間画像に変換する。第2の画像FG2は、所定間隔Lごとに実データを有する。重み付け係数CTは、例えば、三次のSINC関数である。このSINC関数を窓付きの有限長とし、ルックアップテーブルとして重み付け係数記憶部37に予め記憶してある。好ましくは、重み付け係数CTは、剰余ごとに求めて格納しておく。ここでは、剰余が所定間隔Lの1/4であるとし、この剰余に応じた重み付け係数CTを格納してあるものとする。
【0047】
位置ズレ補間画像変換部35は、ずらす画像である第2の画像FG2について、1個の画素を含む近傍の4個の画素値に相当する範囲の画素値について、重み付け係数CTを第2の画像FG2の1個の画素値から剰余分だけずらした位置に適用する。
【0048】
以下の式のように、第2の画像FG2の画素P(i):P1〜P4と、ずらしたSINC関数と位置が一致するものの値の積和をとることで、例えば、画素P2+1/4位置の画素の値をQ(i):Q1〜Q4として補間することができる。
【0049】
Q(i)=Σ(i=−1〜2)P(i)×SINC(i)
=P1×SINC1+P2×SINC2+P3×SINC3+P4×SINC4
【0050】
このようにして、第2の画像FG2が位置ズレ補間画像tFG2に変換される。これにより、ズレ量MDが所定間隔Lの整数倍でなく、所定間隔Lの1/4、2/4,3/4のズレであった場合であっても対応できる。但し、インクジェットノズル20は、1/4よりも大きな所定間隔Lであるので、そのままでは位置ズレ補間画像tFG2を適切に印刷できない。そこで、網掛け処理部39によって以下のような処理を施す。
【0051】
ここで、図7及び図8を参照する。なお、発明の理解を容易にするため、ここではズレ量MDが1/2であるとして以下に説明する。図7は、実データの画像に網掛け処理を行う際の説明に供する図である。また、図8(a)は、実データの画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図であり、図8(b)は、実データの画像を1ドット分だけシフトした位置ズレ補間画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図であり、図8(c)は、実データの画像を0.5ドット分だけシフトした位置ズレ補間画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図である。本実施例では、印刷ヘッド19が大滴と、中滴と、小滴の三種類のインク滴を吐出するものとする。
【0052】
大滴サイズ網データと、中滴サイズ網データと、小滴サイズ網データと、実データ(ここでは第2の画像FG2とする)の画素値とが図7に示すものであったとする。なお、各種網データのうち、大滴サイズ網データが優先的に施されるものとする。この場合には、第2の画像FG2の各画素値のうち、大滴サイズ網データの数値よりも大きな画素については大滴を適用する。次に、中滴サイズ網データ、小滴サイズ網データを適用する。すると、網掛けされた第2の画像hFG2が生成される。
【0053】
各種の実データと、網掛け処理後のデータを並べたのが図8である。図8(a)は、第2画像FG2と網掛け処理後の第2の画像hFG2である。図8(b)は、1ドットずらした第2の画像FG2aと網掛け処理後の第2の画像hFG2aである。図8(c)は、1/2ドットずらした第2の画像FG2の位置ズレ補間画像tFG2と網掛け処理後の第2の画像htFG2である。
【0054】
1ドットずらした第2の画像FG2a(図8(b))は、位置をずらしていない網掛け処理後の第2画像hFG2(図8(a))に対して右側へ1ドット大きくずれているのがわかる。また、1/2ドットずらした網掛け処理後の第2の画像htFG2(図8(c))は、位置をずらしていない網掛け処理後の第2画像hFG2(図8(a))と、1ドットずらした第2の画像FG2a(図8(b))との中間程度のズレが視覚的に得られていることがわかる。
【0055】
ここで、図9を参照する。なお、図9は、実データのずらしなしの画像と、各種ずらし量の画像とにおける階調の変化を示すグラフである。
【0056】
このグラフから、上記の処理により、オリジナルの印刷データから、所定間隔Lより小さな間隔(1/4,2/4,3/4)で1ドットまでずらしていくと、階調がなだらかにずれていくことがわわかる。これにより、ずらしていない画像から視覚的な重心が移動するので、画素単位のずらしを行わなくても視覚的に細かくずれたように見える。
【0057】
本実施例によると、位置ズレ量算出部33は、記録位置取得部31で取得された第1の画像FG1と第2の画像FG2の記録位置について連続紙WPの斜行に起因するズレ量MDを算出する。位置ズレ補間画像変換部35は、ズレ量MDを所定間隔Lで除したときの剰余が存在する場合には、第2の画像FG2について剰余分に応じた重み付けを行って連続紙WPの斜行方向にずらした位置ズレ補間画像tFG2に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像tFG2としているので、どのような斜行量であっても十分に位置ズレを抑制でき、印刷品質の低下を抑制できる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0059】
(1)上述した実施例では、第2の画像FGを位置ズレ補間画像tFG2としたが、第1の画像FG1を斜行方向とは反対方向にずらして位置ズレ補間画像tFG1としてもよい。
【0060】
(2)上述した実施例では、位置ズレ補間画像に変換する際に、三次のSINC関数を用いたが、本発明はこのような補間手法に限定されるものではない。
【0061】
(3)上述した実施例では、重み付けを行う際に、ずらす画像の1個の画素値を含む近傍の4個の画素値に相当する範囲を対象に処理したが、本発明はこの範囲に限定されるものではなく、負荷が問題にならなければ5個以上の画素値に相当する範囲を対象に処理してもよい。
【0062】
(4)上述した実施例では、インクジェット印刷装置3を例にとって説明したが、本発明は、印刷ヘッドが搬送方向に離間して配置されている各種の印刷装置に適用できる。
【0063】
(5)上述した実施例では、上述した実施例では、インクジェット印刷装置3の印刷媒体として連続紙WPを例にとって説明した。しかし、本発明は、印刷媒体が連続紙WPに限定されるものではなく、例えば、フィルムなどにも適用できる。
【符号の説明】
【0064】
WP … 連続紙
1 … 給紙部
3 … インクジェット印刷装置
5 … 排紙部
7,11 … 駆動ローラ
9 … 搬送ローラ
13 … 印刷ユニット
19 … 印刷ヘッド
19a、19b、19c、19d … 印刷ヘッド
20 … インクジェットノズル
21 … ノズル部
23 … 第1のセンサ
25 … 第2のセンサ
27 … 制御部
29 … 画像処理ユニット
31 … 記録位置取得部
33 … 位置ズレ量算出部
35 … 位置ズレ補間画像変換部
37 … 重み付け係数記憶部37
39 … 網掛け処理部
L … 所定間隔
FG1 … 第1の画像
FG2 … 第2の画像
MD … ズレ量
CT … 重み付け係数
fFG2 … 位置ズレ補間画像
hFG2 … 網掛けされた第2の画像
FG2a … 1ドットずらした補正画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9