(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の金属粉末冶金用潤滑剤は、下記の一般式(1)で表されるアミド系化合物及び下記の一般式(2)で表されるアミド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミド系化合物を含有する粒状体で構成される。
【0016】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素数13〜27の脂肪族炭化水素基を表し、mは1〜6の数を表す。)
【0018】
(式中、R
3は炭素数13〜27の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0019】
一般式(1)のR
1及びR
2は、それぞれ独立して炭素数13〜27の脂肪族炭化水素基を表す。こうした脂肪族炭化水素基としては、例えば、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、イソノナデシル基、エイコシル基、イソエイコシル基、ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ドコシル基、イソドコシル基、トリコシル基、イソトリコシル基、テトラコシル基、イソテトラコシル基、ペンタコシル基、イソペンタコシル基、ヘキサコシル基、イソヘキサコシル基、ヘプタコシル基、イソヘプタコシル基等のアルキル基;トリデセニル基、イソトリデセニル基、テトラデセニル基、イソテトラデセニル基、ペンタデセニル基、イソペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、イソヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、イソヘプタセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、ノナデセニル基、イソノナデセニル基、エイコセニル基、イソエイコセニル基、ヘンエイコセニル基、イソヘンエイコセニル基、ドコセニル基、イソドコセニル基、トリコセニル基、イソトリコセニル基、テトラコセニル基、イソテトラコセニル基、ペンタコセニル基、イソペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、イソヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、イソヘプタコセニル基等のアルケニル基が挙げられる。これらの中でも炭素数15〜21の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数15〜19の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0020】
一般式(1)のmは1〜6の数であり、mの変化に応じて2つのアミド基の間にある基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基又はヘキシレン基となる。これらの中でも入手が容易なことから、mは1〜4の数が好ましい。
【0021】
一般式(1)で表されるアミド系化合物の製造方法は限定されず、公知のいずれの方法で製造してもよいが、容易に製造が可能なことから、R
1COOH及びR
2COOHで表される脂肪酸それぞれ1モルと、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン又はヘキシレンジアミンとを脱水反応させる方法や、R
1COOMe及びR
2COOMeで表される脂肪酸メチルエステルそれぞれ1モルと、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン又はヘキシレンジアミンとを脱メタノール反応させる方法が好ましい。
【0022】
一般式(2)のR
3は、炭素数13〜27の脂肪族炭化水素基を表す。こうした脂肪族炭化水素基としては、例えば、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、イソノナデシル基、エイコシル基、イソエイコシル基、ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ドコシル基、イソドコシル基、トリコシル基、イソトリコシル基、テトラコシル基、イソテトラコシル基、ペンタコシル基、イソペンタコシル基、ヘキサコシル基、イソヘキサコシル基、ヘプタコシル基、イソヘプタコシル基等のアルキル基;トリデセニル基、イソトリデセニル基、テトラデセニル基、イソテトラデセニル基、ペンタデセニル基、イソペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、イソヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、イソヘプタセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、ノナデセニル基、イソノナデセニル基、エイコセニル基、イソエイコセニル基、ヘンエイコセニル基、イソヘンエイコセニル基、ドコセニル基、イソドコセニル基、トリコセニル基、イソトリコセニル基、テトラコセニル基、イソテトラコセニル基、ペンタコセニル基、イソペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、イソヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、イソヘプタコセニル基等のアルケニル基が挙げられる。これらの中でも炭素数15〜21の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数15〜19の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0023】
一般式(2)で表されるアミド系化合物の製造方法は限定されず、公知のいずれの方法で製造してもよいが、容易に製造が可能なことから、R
3COOHで表される脂肪酸1モルと、アンモニアガスとを脱水反応させる方法や、R
3COOCH
3などの脂肪酸エステル1モルと、アンモニアガスとを脱メタノール反応させる方法が好ましい。
【0024】
本発明の金属粉末冶金用潤滑剤を構成する粒状体に含有されるアミド系化合物は、上記一般式(1)で表されるアミド系化合物及び一般式(2)で表されるアミド系化合物からなる群から選択される。粒状体に含有されるアミド系化合物は、一般式(1)で表される1種以上のアミド系化合物のみで構成される場合、一般式(2)で表される1種以上のアミド系化合物のみで構成される場合、又は一般式(1)で表される1種以上のアミド系化合物と一般式(2)で表される1種以上のアミド系化合物との混合物で構成される場合がある。これらの中でも、潤滑性が良好で抜き出し圧が低くなる場合や、ラトラ値が良好になる場合があることから、該アミド系化合物としては、一般式(1)で表される1種以上のアミド系化合物と一般式(2)で表される1種以上のアミド系化合物との混合物であることが好ましく、下記の一般式(3)で表されるアミド系化合物(A)と、下記の一般式(4)で表されるアミド系化合物(B)と、下記の一般式(5)又は下記の一般式(6)で表されるアミド系化合物(C)との混合物であることがより好ましい。
【0026】
(式中、R
4及びR
5はそれぞれ独立して炭素数13〜27の直鎖アルキル基を表し、qは1〜6の数を表す。)
【0028】
(式中、R
6は炭素数13〜27の直鎖アルキル基を表す。)
【0030】
(式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して炭素数13〜27のアルケニル基又は分岐アルキル基を表し、
rは1〜6の数を表す。)
【0032】
(式中、R
9は炭素数13〜27のアルケニル基を表す。)
【0033】
一般式(3)のR
4及びR
5は、それぞれ独立して炭素数13〜27の直鎖アルキル基を表す。こうした直鎖アルキル基としては、例えば、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、イソノナデシル基、エイコシル基、イソエイコシル基、ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ドコシル基、イソドコシル基、トリコシル基、イソトリコシル基、テトラコシル基、イソテトラコシル基、ペンタコシル基、イソペンタコシル基、ヘキサコシル基、イソヘキサコシル基、ヘプタコシル基、イソヘプタコシル基等が挙げられる。これらの中でも潤滑性が良好なことから、炭素数15〜21の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数15〜19の直鎖アルキル基がより好ましい。
【0034】
一般式(3)のqは1〜6の数であり、qの変化に応じて2つのアミド基の間にある基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基又はヘキシレン基となる。これらの中でも入手が容易なことから、qは2〜4の数が好ましい。
【0035】
一般式(3)で表されるアミド系化合物の製造方法は限定されず、公知のいずれの方法で製造してもよいが、容易に製造が可能なことから、R
4COOH及びR
5COOHで表される脂肪酸それぞれ1モルと、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン又はヘキシレンジアミンとを脱水反応させる方法や、R
4COOMe及びR
5COOMeで表される脂肪酸メチルエステルそれぞれ1モルと、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン又はヘキシレンジアミンとを脱メタノール反応させる方法が好ましい。
【0036】
一般式(4)のR
6は、炭素数13〜27の直鎖アルキル基を表す。こうした直鎖アルキル基としては、例えば、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、イソノナデシル基、エイコシル基、イソエイコシル基、ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ドコシル基、イソドコシル基、トリコシル基、イソトリコシル基、テトラコシル基、イソテトラコシル基、ペンタコシル基、イソペンタコシル基、ヘキサコシル基、イソヘキサコシル基、ヘプタコシル基、イソヘプタコシル基等が挙げられる。これらの中でも潤滑性が良好なことから、炭素数15〜21の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数15〜19の直鎖アルキル基がより好ましい。
【0037】
一般式(4)で表されるアミド系化合物の製造方法は限定されず、公知のいずれの方法で製造してもよいが、容易に製造が可能なことから、R
6COOHで表される脂肪酸1モルと、アンモニアガスとを脱水反応させる方法や、R
6COOCH
3などの脂肪酸エステル1モルと、アンモニアガスとを脱メタノール反応させる方法が好ましい。
【0038】
一般式(5)のR
7及びR
8はそれぞれ独立して炭素数13〜27のアルケニル基又は分岐アルキル基を表す。こうした基としては、例えば、トリデセニル基、イソトリデセニル基、テトラデセニル基、イソテトラデセニル基、ペンタデセニル基、イソペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、イソヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、イソヘプタセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、ノナデセニル基、イソノナデセニル基、エイコセニル基、イソエイコセニル基、ヘンエイコセニル基、イソヘンエイコセニル基、ドコセニル基、イソドコセニル基、トリコセニル基、イソトリコセニル基、テトラコセニル基、イソテトラコセニル基、ペンタコセニル基、イソペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、イソヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、イソヘプタコセニル基等のアルケニル基;イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソノナデシル基、イソエイコシル基、イソヘンエイコシル基、イソドコシル基、イソトリコシル基、イソテトラコシル基、イソペンタコシル基、イソヘキサコシル基、イソヘプタコシル基等の分岐アルキル基が挙げられる。これらの中でも炭素数15〜21のアルケニル基又は分岐アルキル基が好ましく、炭素数15〜19のアルケニル基又は分岐アルキル基がより好ましい。
【0039】
一般式(5)のrは1〜6の数であり、rの変化に応じて2つのアミド基の間にある基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基又はヘキシレン基となる。これらの中でも入手が容易なことから、rは2〜4の数が好ましい。
【0040】
一般式(5)で表されるアミド系化合物の製造方法は限定されず、公知のいずれの方法で製造してもよいが、容易に製造が可能なことから、R
7COOH及びR
8COOHで表される脂肪酸それぞれ1モルと、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン又はヘキシレンジアミンとを脱水反応させる方法や、R
7COOMe及びR
8COOMeで表される脂肪酸メチルエステルそれぞれ1モルと、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン又はヘキシレンジアミンとを脱メタノール反応させる方法が好ましい。
【0041】
一般式(6)のR
9は、炭素数13〜27のアルケニル基を表す。こうした基としては、例えば、トリデセニル基、イソトリデセニル基、テトラデセニル基、イソテトラデセニル基、ペンタデセニル基、イソペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、イソヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、イソヘプタセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、ノナデセニル基、イソノナデセニル基、エイコセニル基、イソエイコセニル基、ヘンエイコセニル基、イソヘンエイコセニル基、ドコセニル基、イソドコセニル基、トリコセニル基、イソトリコセニル基、テトラコセニル基、イソテトラコセニル基、ペンタコセニル基、イソペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、イソヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、イソヘプタコセニル基等が挙げられる。これらの中でも炭素数15〜21のアルケニル基が好ましく、炭素数15〜19のアルケニル基がより好ましい。
【0042】
一般式(6)で表されるアミド系化合物の製造方法は限定されず、公知のいずれの方法で製造してもよいが、容易に製造が可能なことから、R
9COOHで表される脂肪酸1モルと、アンモニアガスとを脱水反応させる方法や、R
9COOCH
3などの脂肪酸エステル1モルと、アンモニアガスとを脱メタノール反応させる方法が好ましい。
【0043】
本発明におけるアミド系化合物(C)は、一般式(5)で表されるアミド系化合物又は一般式(6)で表されるアミド系化合物である。この中でも、ラトラ値が良好になることから、アミド系化合物(C)としては、一般式(6)で表されるアミド系化合物が好ましい。なお、アミド系化合物(C)は、一般式(5)又は一般式(6)で表されるアミド系化合物のどちらかを使用すればよいが、これらを混合して使用してもよい。
【0044】
本発明の金属粉末冶金用潤滑剤にアミド系化合物(A)〜(C)を使用する場合、その配合比は特定されず、任意の配合比であればよいが、本発明の効果を発揮しやすいことから、(A)成分10質量部に対して、(B)成分が3〜20質量部、(C)成分が0.3〜5質量部が好ましく、(A)成分10質量部に対して、(B)成分が5〜15質量部、(C)成分が0.5〜3質量部がより好ましく、(A)成分10質量部に対して、(B)成分が7〜13質量部、(C)成分が0.7〜1.5質量部が最も好ましい。(B)成分が少なすぎると、潤滑剤の一次粒子が硬くなり、圧縮性と抜出し圧が劣り、グリーン体のラトラ値が増大する場合があり、(B)成分が多すぎると、潤滑剤の粒子同士が凝集して焼結体密度の不均一化を生じる場合や焼結体の表面が荒れる場合がある。また、(C)成分が少なすぎると、グリーン体のラトラ値が増大する場合や、グリーン体の肌荒れが生じ外観不良となる場合があり、(C)成分が多すぎると、潤滑剤の粒子同士が凝集して焼結体密度の不均一化を生じる場合や焼結体の表面が荒れる場合がある。
【0045】
本発明の金属粉末冶金用潤滑剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内でその他の成分を含有することもできる。その他の成分としては、例えば、炭素数14〜22の脂肪酸、炭素数14〜22の脂肪酸メチルエステル、炭素数14〜22の脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル、炭素数14〜22の脂肪酸とエチレングリコールとのエステル、グラファイト、ポリエチレンワックス、熱可塑性エラストマ、ポリアミド、熱硬化性樹脂などの高分子材料、パラフィン、カルナバワックス、モンタンワックス、ポリエーテル等が挙げられる。これらを添加する場合は、粒状体を構成するアミド系化合物100質量部に対して0.1〜20質量部添加するのが好ましく、0.5〜10質量部添加するのがより好ましく、1〜5質量部が更に好ましい。
【0046】
本発明の金属粉末冶金用潤滑剤は、アミド系化合物を含む全ての成分を溶融混合して均一にした後、粒状体にすることで得ることができる。溶融混合方法は限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、溶融温度80〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃で溶融させればよい。粒状体にする方法も限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、溶融混合後に固化させたものを粉砕する方法や、溶融混合した溶液をスプレー噴霧で粒状体にする方法が挙げられる。
図1に、溶融混合後に固化させたものを粉砕して得られた金属粉末冶金用潤滑剤の電子顕微鏡写真、
図2に、溶融混合した溶液をスプレー噴霧して得られた金属粉末冶金用潤滑剤の電子顕微鏡写真を示す。中でも、粒状体を適度な大きさに制御でき、球状のものが得られるという点で、スプレー噴霧による方法が好ましい。
【0047】
本発明の金属粉末冶金用潤滑剤は粒状であるが、その粒子の大きさは制限される。本発明の金属粉末冶金用潤滑剤における粒径198μmより大きな粒子は1質量%未満(全粒子質量に対する198μmより大きな粒子の質量割合が1%未満)でなければならず、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは最大粒径が198μm以下、更により好ましくは最大粒径が150μm以下、最も好ましくは最大粒径が100μm以下である。また、粒径10μm以下の粒子は10質量%以下(全粒子質量に対する10μm以下の粒子の質量割合が10%以下)でなければならず、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更により好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下である。粒径198μmより大きな粒子が1質量%以上であると、冶金による成型後の成型体の表面が平滑にならず、いわゆる肌荒れと言われる状態になる場合やラトラ値が大きくなる場合がある。また、粒径10μm以下の粒子が10質量%より多くなると、肌荒れと言われる状態になる場合やラトラ値が大きくなる場合がある。このように粒子の大きさが本発明の範囲外になると、欠けが少なく密度バランスの良い成型体を得ることができない。よって、粒子作製後、粒径が本発明の範囲内にないときは、ふるいによる分級等によって粒径を調整すればよい。なお、本発明において、粒径198μmより大きな粒子とは、目開き198μmのふるいを通過しないものを意味し、粒径10μm以下の粒子とは、目開き10μmのふるいを通過したものを意味する。
【0048】
本発明の金属粉末冶金用潤滑剤は、得られるグリーン体の密度に関係なく使用することができるが、グリーン体のラトラ値を小さくすることができることから、欠けやすい低密度のグリーン体を作るのに使用することが好ましい。
【0049】
本発明の金属粉末組成物は、メディアン径5〜300μmの金属粒子100質量部に対して、本発明の金属粉末冶金用潤滑剤を0.01〜10質量部、好ましくは0.01〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜2.0質量部添加したものである。
本発明の金属粉末冶金製品の製造方法は、上記の金属粉末組成物をプレス成形して該金属粒子と同成分組成の溶製材に対する相対密度が90%以下のグリーン体を得て、これを焼成するものである。本発明の金属粉末冶金用潤滑剤の添加量が0.01質量部未満になると、ラトラ値が増大する場合があり、一方、添加量が10質量部を超えると、グリーン体の密度が不均一となってしまう場合がある。
【0050】
該金属粒子としては、メディアン径5〜300μmの金属粒子であれば、従来粉末冶金に使用できることが知られているものを特に制限なく使用することができ、例えば、鉄、銅、錫、亜鉛、チタン、タングステン、モリブデン、ニッケル、クロム、及びこれらの金属の合金等の金属粒子が挙げられる。合金の例としては、鉄−銅合金、鉄−銅−錫合金、鉄−銅−亜鉛合金、鉄−銅−亜鉛−錫合金、銅−錫合金、銅−鉄−錫−亜鉛合金等が挙げられる。また、上記金属粒子にグラファイト粉末が添加された上記金属粉末の混合粉末も使用することができ、従来の粉末冶金法で利用されるセラミック粒子も上記金属粒子と同様に使用することができる。なお、低密度のグリーン体を作る場合、金属粒子のメディアン径が小さいと混粉密度が増大して目的とする低密度粉末冶金製品を得にくくなるので、金属粒子のメディアン径は、30〜200μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
【0051】
グリーン体はプレス成形の圧力によってその密度が左右される。特に低密度グリーン体を得るには、金属粒子と同成分組成の溶製材に対する相対密度が90%以下である必要がある。また、低密度グリーン体の密度の下限は特に制限されるものではないが、極端に低いと冶金製品の強度が低くなって壊れやすくなるので、金属粒子と同成分組成の溶製材に対する相対密度は50〜90%が好ましく、60〜80%がより好ましい。
【0052】
本発明の金属粉末冶金製品の製造方法における焼成の方法は、何ら限定されるものではなく、従来の粉末冶金で用いられている焼成方法であれば何ら支障なく用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明する。
表1に記載の配合(質量部基準)で各化合物を配合し、150℃で均一になるまで溶融混合した後、スプレー噴霧器を用いて粒状化した。粒状体の粒径はスプレー噴霧器の使用条件で調整した。得られた粒状体の一部は、ふるいを使って分級して粒径及び量を調整した。試験に使用した化合物は以下の通りである。
【0054】
A−1:N,N’−エチレンビスミリスチン酸アミド(R
4=トリデシル基、R
5=トリデシル基、q=2)
A−2:N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド(R
4=ヘプタデシル基、R
5=ヘプタデシル基、q=2)
A−3:N,N’−エチレンビスベヘニン酸アミド(R
4=ヘンエイコシル基、R
5=ヘンエイコシル基、q=2)
B−1:ミリスチン酸モノアミド(R
6=トリデシル基)
B−2:ステアリン酸モノアミド(R
6=ヘプタデシル基)
B−3:ベヘニン酸モノアミド(R
6=ヘンエイコシル基)
C−1:オレイン酸モノアミド(R
9=ヘプタデセニル基)
C−2:N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド(R
7=ヘプタデセニル基、R
8=ヘプタデセニル基、r=2)
C−3:N,N’−エチレンビスイソステアリン酸アミド(R
7=イソヘプタデシル基、R
8=イソヘプタデシル基、r=2)
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
(グリーン体及び冶金製品の製造)
上記の実施例1〜21及び比較例1〜5でそれぞれ得られた金属粉末冶金用潤滑剤と金属粉(メディアン径75μmの還元純鉄粉(ヘガネスAB社製 商品名NC100.24))を、金属粉100質量部に対して金属粉末冶金用潤滑剤を1質量部の割合で混合し、Wコーン型混合機に投入し、回転速度25〜30rpmに設定して20分間混合して金属粉末組成物を調製した。得られた金属粉末組成物は3トンカムプレス機を用い、グリーン体の相対密度が該金属粒子と同成分組成の溶製材に対する密度の65〜70%となるように調整してプレス成形し、低密度グリーン体を作製した後、該低密度グリーン体を常法により焼成して低密度の冶金製品を得た。グリーン体及び焼成後の冶金製品に対して以下の試験を行った。試験結果を表4〜6に示す。
【0059】
<ラトラ値>
グリーン体のラトラ値はJPMA−P11−1992に準拠し、日本粉末冶金工業会で定められた圧粉試験用標準金型(内径φ11.285mm、有効長60mm)を用いて測定した。なお、製品として量産可能な目安は、グリーン体のラトラ値が3.0%以下である。
【0060】
<抜き出し圧及び密度>
グリーン体の金型からの抜出し圧はJPMA−P13−1992に準拠し、調製した金属粉末組成物を7.0g精秤し、これを圧粉試験用金型のキャビティーに流し込み、上下パンチで挟み込んで成形荷重800MPaで圧縮し、上パンチのみ抜き取り円筒キャップをかぶせて抜出し力を測定した。成形体の直径及び高さをノギスで測定して曲面の面積を求め、1cm
2あたりの抜出し力を抜出し圧とした。また、密度は、成形体の質量を精密天秤で計量し、単位体積あたりの質量を密度とした。
【0061】
<表面の粗さ>
焼成により得た冶金製品の表面を、拡大鏡で20倍に拡大し、表面の粗さを目視で観察した。評価は以下の基準による。
◎:表面が滑らかで製品としてまったく問題ない
○:表面にわずかな粗さが見られるが、製品としては問題ない
△:表面の粗さが目立ち、製品とはできない
×:表面の粗さが目立ち、更に表面に窪みが存在するため製品とはできない
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】