(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0038】
上述のように、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れたレジスト組成物の開発が求められていた。光酸発生剤から発生した酸の拡散が、解像度やリソグラフィー性能の低下の原因であることから、発生酸の拡散が抑制されたレジスト組成物が求められていた。本発明者らは発生酸の拡散が抑制された光分解性繰り返し単位を構築するために鋭意検討を重ね、スルホ基のβ位に電子求引性基であるトリフルオロメチル基を2つ有している構造が、レジスト組成物のリソグラフィー性能改善に寄与することに想到した。
【0039】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で示される化合物を重合させて得られる高分子化合物をベース樹脂として用いたレジスト組成物であれば、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れ、かつ精密な微細加工に極めて有効なレジスト膜を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0040】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【化9】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Aは単結合又はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、若しくは炭素数3〜30の分岐状若しくは環状の二価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。nは0又は1を示す。ただしAが単結合の場合、nは必ず0である。M
+はカチオンを示す。)
【0041】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
<一般式(1)で示される化合物>
本発明では、上記一般式(1)で示される化合物を提供する。
【0043】
上記一般式(1)中のAは、単結合又はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、若しくは炭素数3〜30の分岐状若しくは環状の二価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよいものである。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の飽和環状炭化水素基、及びフェニレン基、ナフチレン基等の不飽和環状炭化水素基が挙げられる。またこれらの基の水素原子の一部がメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基といったアルキル基で置換されていてもよい。あるいは、上記の基は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、また、上記の基の水素原子の一部又は全部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成していてもよい。原材料入手容易性の観点から、好ましくは非置換のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等である。
【0044】
上記一般式(1)で示される化合物の具体的なアニオン構造としては、下記に示すものが挙げられる。
【化10】
【0046】
M
+としては、例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン等のアルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン等が例示できる。またアンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオンが特に好ましい。
【0047】
また、上記一般式(1)で示される化合物は、アニオン構造のA部分や、カチオンM
+を自由に設計することができるため、構造設計の自由度が高い。そのため、露光波長、ベース樹脂における他の共重合単位、レジスト組成物のキャスト溶媒など、用途の変更に応じて最適な構造設計ができる。
【0048】
上記一般式(1)で示される化合物の具体的構造は、上述したアニオン構造及びカチオン構造の任意の組み合わせを挙げることができる。なお、本発明の上記一般式(1)で示される化合物は、上記の例示した構造に限定されるものではない。
【0049】
次に、上記一般式(1)で示される化合物の合成方法について述べる。合成方法の一例の具体的な工程を下記に示す。
【化12】
(式中、M
+、R
1、及びAは上記と同様である。X
a−はI
−、Br
−、Cl
−、CH
3SO
4−、CH
3SO
3−等のアニオンを示す。)
【0050】
上記の方法では、先ず、2,2−ビストリフルオロメチルオキシランと亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の硫黄化合物との反応から、中間体として、上記式(1d)で示されるオニウム塩を合成する。反応試剤として使用する硫黄化合物としては、亜硫酸水素ナトリウムが安価で取り扱いやすいため、好ましい。
【0051】
次に、上記得られた式(1d)で示される中間体に対して、スルホニウムハライド等のスルホニウム塩等とイオン交換を行うことにより、上記式(1e)で示されるオニウム塩化合物を合成することができる。なお、イオン交換反応ついては、例えば特開2007−145797号公報を参考にすることができる。
【0052】
続いて、上記一般式(1e)で示される得られたオニウム塩化合物をアシル化することで、上記一般式(1)で示される化合物を得ることができる。アシル化は、通常の有機化学的手法を用いて行うことができる。例えば、上記スキームのように、酸塩化物と上記一般式(1e)で示されるオニウム塩化合物を塩基性条件下反応させる手法が挙げられる。
【0053】
以上説明したような、本発明の化合物であれば、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れたレジスト組成物のベース樹脂として好適に用いられる高分子化合物の原料として、好適である。
【0054】
<一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物>
本発明では更に、高エネルギー線又は熱に感応し、下記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物を提供する。
【化13】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Aは単結合又はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、若しくは炭素数3〜30の分岐状若しくは環状の二価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。nは0又は1を示す。ただしAが単結合の場合、nは必ず0である。)
【0055】
上記一般式(1a)中のAとしては、具体的には、上記一般式(1)におけるAの例として挙げたものと同様のものを例示できる。
【0056】
本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物は、例えば、下記に示すように、露光により一般式(1c)で示される繰り返し単位が分解し、一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化するものである。
【化14】
(式中、R
1、A、及びnは上記と同様である。M
b+はスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。)
【0057】
本発明の一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物は、光酸発生剤のアニオン部位を繰り返し単位として含有している。これにより、発生酸の酸拡散を大きく抑制することが可能となる。このような発想は過去にもいくらか報告がある。例えば、特開2008−133448号公報や特開2010−077404号公報には、特定のアニオン構造を有する光酸発生剤を繰り返し単位として組み込んだ高分子化合物を用いたレジスト組成物に関する記載があるが、これらは本発明の高分子化合物をベースポリマーとして用いたレジスト組成物と比較して、LWRやCDU等のリソグラフィー性能が劣っている。これについては下記のように推測される。
【0058】
上記公報に記載の光分解性繰り返し単位は、スルホ基のα位に電子求引性基であるフッ素原子を有しているα−フルオロスルホン酸であることから、発生酸の酸強度が過度に強く、発生酸の拡散を十分に抑制することができない。ベース樹脂に酸発生単位を組み込んだとはいえ、上記公報に記載の光分解性繰り返し単位では、微細化が更に進んだ、32nmノードや、更にそれ以降のノードの微細パターンを形成するArF液浸リソグラフィーや電子線リソグラフィー、EUVリソグラフィーの適用段階においては、酸拡散の抑制は未だ不十分である。
【0059】
一方、本発明の高分子化合物に組み込まれているスルホン酸発生繰り返し単位は、スルホ基のβ位に電子求引性基であるトリフルオロメチル基を2つ有していることから、α−フルオロスルホン酸よりも発生酸の酸強度は弱い。従って、本発明の高分子化合物に組み込まれているスルホン酸発生繰り返し単位から、酸不安定基を切断するために必要な仕事量はα−フルオロスルホン酸よりも少なく、見かけ上酸拡散長が短くなる。この結果、特に酸拡散の影響が大きいLWRやCDUを改善することができるものと考えられる。
【0060】
なお、スルホ基のα位及びβ位のいずれにも電子求引性基を有していないスルホン酸や、β位に一つだけ電子求引性基を有しているスルホン酸を発生する構造の光分解性繰り返し単位を組み込んだ場合では、酸不安定基を切断するためには酸性度が小さすぎてしまい、低感度かつ低解像性となってしまう。すなわち、本発明の光分解性繰り返し単位を含有する高分子化合物は、その繰り返し単位の最適な構造設計によりレジスト組成物のリソグラフィー性能改善に寄与するものである。
【0061】
本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物は、更に下記一般式(2)で示される繰り返し単位及び/又は下記一般式(3)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物であることが好ましい。
【化15】
(式中、R
1aは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Z
aは単結合又は(主鎖)−C(=O)−O−Z’−を示す。Z’はヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環のいずれかを有していてもよい炭素数1〜10の直鎖状、若しくは炭素数3〜10の分岐状若しくは環状のアルキレン基、あるいはフェニレン基又はナフチレン基を示す。XAは酸不安定基を示す。R
2aはヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜10の直鎖状、若しくは炭素数3〜10の分岐状若しくは環状の一価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。pは1〜3の整数である。qは0≦q≦5+2r−pを満たす整数である。rは0又は1である。n1は0又は1である。)
【0062】
上記一般式(2)で示される繰り返し単位として具体的には、特開2014−225005公報の段落[0014]〜[0054]に記載のものが例示できる。このとき、上記一般式(2)で示される繰り返し単位における酸不安定基として、特に好ましい構造としては、脂環式基含有の三級エステル構造が挙げられる。
【0063】
また、上記一般式(3)で示される繰り返し単位として具体的には、下記のものが例示できる。特に、フェニレン基を含有するものが好ましい。
【化16】
【0065】
本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物は、更に、下記一般式(p1)で示される繰り返し単位又は下記一般式(p2)で示される繰り返し単位を含むことが、より好ましい。
【化18】
(式中、R
1a、R
2a、p、q及びrは前記と同様である。YLは水素原子、あるいはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及びカルボン酸無水物から選択されるいずれか1つ以上の構造を有する極性基を示す。)
【0066】
上記一般式(p1)で示される繰り返し単位としては、具体的には下記に示すものが挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化19】
【化20】
【0067】
上記一般式(p2)で示される繰り返し単位としては、具体的には下記に示すものを例示できる。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
【化21】
【0068】
上記一般式(p1)で示される繰り返し単位又は一般式(p2)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物をレジスト組成物のベース樹脂として用いることで、レジスト組成物の基板との密着性を向上させたり、現像液に対する溶解速度を調整したりすることができる。
【0069】
本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物は、更に、下記一般式(d1)で示される繰り返し単位又は下記一般式(d2)で示される繰り返し単位を含んでもよい。
【化22】
(式中、R
1aは上記と同様である。L’は単結合又は炭素数2〜5のアルキレン基を示す。R
Yはヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状若しくは炭素数3〜20の分岐状若しくは環状の一価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。A’は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R
11、R
12及びR
13はそれぞれ、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、若しくは炭素数6〜18のアリール基を示し、これらの置換基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。また、R
11、R
12及びR
13のうちのいずれか2つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。L’’は単結合又はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、若しくは炭素数3〜20の分岐状若しくは環状の二価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。mは0又は1を示すが、L’’が単結合のとき、mは必ず0である。)
【0070】
上記一般式(d1)中のL’として、具体的には単結合、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0071】
上記一般式(d1)中の具体的なアニオン構造としては、特開2014−177407号公報の段落[0100]〜[0101]に記載のアニオン構造が例示できる。
【0072】
上記一般式(d2)の具体的な構造としては、特開2010−77404号公報の段落[0021]〜[0027]に記載のものや、特開2010−116550号公報の段落[0021]〜[0028]に記載のものが例示できる。
【0073】
本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物は、更に、酸不安定基によりアルコール性水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位を含有していても構わない。このような繰り返し単位としては、アルコール性水酸基が保護された構造を1つ、又は2つ以上有し、酸の作用により保護基が分解されてアルコール性水酸基が生成されるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、特開2014−225005公報の段落[0055]〜[0065]に記載のものが例示できる。
【0074】
また、本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物は、更に他に、単量体を重合させて得られる繰り返し単位を含有していても構わない。上記単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン誘導体等の環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、インデン、アセナフチレン等の芳香族化合物等が挙げられる。また、開環メタセシス重合体の水素添加物は特開2003−66612号公報に記載のものを用いることができる。
【0075】
本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは3,000〜100,000である。上述した高分子化合物の重量平均分子量が範囲内のものであれば、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることを防ぐことができる。分子量の測定方法としては、ポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等が挙げられる。
【0076】
本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物中の、各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)であるが、これに限定されるものではない。
本発明の上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物は、
(I)上記一般式(1a)で示される繰り返し単位に変化する繰り返し単位の1種又は2種以上を合計1〜30モル%、好ましくは1〜20モル%、より好ましくは1〜10モル%含有し、
(II)更に、上記一般式(2)又は一般式(3)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計1モル%以上60モル%以下、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、更に、必要に応じて、
(III)上記一般式(p1)又は一般式(p2)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0モル%以上60モル%以下、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、更に、必要に応じて、
(IV)上記一般式(d1)又は一般式(d2)のいずれか1つの繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%含有し、更に、必要に応じて、
(V)その他の単量体に基づく繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜50モル%含有するものであることが好ましい。
【0077】
以上説明したような本発明の高分子化合物であれば、レジスト組成物のベース樹脂として用いた際に、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れたレジスト組成物を提供することができる。
【0078】
<一般式(1b)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物>
また、本発明では、下記一般式(1b)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物を提供する。
【化23】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Aは単結合又はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、若しくは炭素数3〜30の分岐状若しくは環状の二価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。nは0又は1を示す。ただしAが単結合の場合、nは必ず0である。M
a+はアルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを示す。)
【0079】
上記一般式(1b)中のAとしては、具体的には、上記一般式(1)におけるAの例として挙げたものと同様のものを例示できる。
【0080】
上記一般式(1b)中のM
a+は、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを示すものである。M
a+として具体的には、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましい。またアンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオンが特に好ましい。M
a+がこのようなカチオン種であれば、イオン交換後に生じるM
a+X
−が高水溶性となり除去しやすく、従って反応が進行しやすいので好適である。
【0081】
また、本発明の上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物は、上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物に含有されていてもよい繰り返し単位として例示した、上記一般式(2)、(3)、(p1)、(p2)、(d1)、(d2)等で示される繰り返し単位や、その他の単量体に基づく繰り返し単位を含んでもよい。
【0082】
本発明の上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは3,000〜100,000である。この範囲内の重量平均分子量であれば、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることを防ぐことができる。分子量の測定方法としては、ポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等が挙げられる。
【0083】
本発明の上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物中の、各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)であるが、これに限定されるものではない。
本発明の上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物は、
(I)上記一般式(1b)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計1〜30モル%、好ましくは1〜20モル%、より好ましくは1〜10モル%含有し、
(II)更に、上記一般式(2)又は一般式(3)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計1モル%以上60モル%以下、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、更に、必要に応じて、
(III)上記一般式(p1)又は一般式(p2)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0モル%以上60モル%以下、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、更に、必要に応じて、
(IV)上記一般式(d1)又は一般式(d2)のいずれか1つの繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%含有し、更に、必要に応じて、
(V)その他の単量体に基づく繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜50モル%含有するものであることが好ましい。
【0084】
上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成方法については、例えば、上記一般式(1)で示される化合物のうちM
+=M
a+であるものを用いて、有機溶剤中、ラジカル開始剤を加えて加熱し、ラジカル重合させる方法を挙げることができる。必要に応じて他の繰り返し単位となる化合物共にラジカル重合させることもできる。
【0085】
重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示できる。加熱温度としては、50〜80℃が好ましい。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0086】
上記一般式(2)等に含まれる酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、重合後保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0087】
上記説明したような高分子化合物であれば、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れたレジスト組成物のベース樹脂として好適に用いられる高分子化合物を、イオン交換によって、容易に製造することができる。
【0088】
<一般式(1c)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物>
また、本発明では、下記一般式(1c)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物を提供する。
【化24】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Aは単結合又はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、若しくは炭素数3〜30の分岐状若しくは環状の二価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。nは0又は1を示す。ただしAが単結合の場合、nは必ず0である。M
b+は下記一般式(a)で示されるスルホニウムカチオン又は下記一般式(b)で示されるヨードニウムカチオンを示す。)
【化25】
(式中、R
100、R
200、R
300、R
400及びR
500はそれぞれ独立に、ヘテロ原子であるか、あるいはヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、若しくは炭素数3〜20の分岐状若しくは環状の一価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。また、R
100、R
200及びR
300のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0089】
上記一般式(1c)中のAとしては、具体的には、上記一般式(1)におけるAの例として挙げたものと同様のものを例示できる。
【0090】
上記一般式(a)及び(b)において、R
100、R
200、R
300、R
400及びR
500はそれぞれ独立に、ヘテロ原子であるか、あるいはヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、若しくは炭素数3〜20の分岐状若しくは環状の一価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよいものであり、また、R
100、R
200及びR
300のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R
100、R
200、R
300、R
400及びR
500として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等を例示できる。またこれらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基と置換されていてもよく、あるいは炭素原子の一部の間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成していてもよい。
【0091】
上記一般式(1c)のカチオン構造であるM
b+の具体的構造としては、下記に示すものが挙げられる。
【化26】
【0093】
また、本発明の上記一般式(1c)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物は、上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物に含有されていてもよい繰り返し単位として例示した、上記一般式(2)、(3)、(p1)、(p2)、(d1)、(d2)等で示される繰り返し単位や、その他の単量体に基づく繰り返し単位を含んでもよい。
【0094】
本発明の上記一般式(1c)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは3,000〜100,000である。上述した
高分子化合物の重量平均分子量が、この範囲内であれば、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることを防ぐことができる。分子量の測定方法としては、ポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等が挙げられる。
【0095】
本発明の上記一般式(1c)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物中の、各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)であるが、これに限定されるものではない。
本発明の上記一般式(1c)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物は、
(I)上記一般式(1c)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計1〜30モル%、好ましくは1〜20モル%、より好ましくは1〜10モル%含有し、
(II)更に、上記一般式(2)又は一般式(3)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計1モル%以上60モル%以下、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、更に、必要に応じて、
(III)上記一般式(p1)又は一般式(p2)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0モル%以上60モル%以下、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、更に、必要に応じて、
(IV)上記一般式(d1)又は一般式(d2)のいずれか1つの繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%含有し、更に、必要に応じて、
(V)その他の単量体に基づく繰り返し単位の1種又は2種以上を合計0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜50モル%含有するものであることが好ましい。
【0096】
また、一般式(1c)で示される繰り返し単位は、アニオンのA部分や、カチオンM
b+を自由に設計することができるため、構造設計の自由度が高い。そのため、露光波長、ベース樹脂における他の共重合単位、レジスト組成物のキャスト溶媒など、用途の変更に応じて最適な構造設計ができる。
【0097】
また、上記一般式(1c)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成方法としては、例えば、上記一般式(1)で示される化合物のうちM
+=M
b+であるものを用いて、有機溶剤中、ラジカル開始剤を加えて加熱し、ラジカル重合させる方法を挙げることができる。必要に応じて他の繰り返し単位となる化合物共にラジカル重合させることもできる。
【0098】
上記ラジカル重合としては、例えば、上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成方法と同様の方法を挙げることができる。
【0099】
重合時に使用する有機溶剤や重合開始剤としては、例えば、上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成方法と同様の方法を挙げることができる。また、加熱温度や、反応時間としても、上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成方法と同様とすればよい。
【0100】
また、本発明の一般式(1c)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物は、下記の反応で合成することも可能である。
【化28】
(式中、R
1、A、n、M
a+、M
b+及びX
a−は上記と同様である。)
【0101】
上記一般式(1b)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物をイオン交換反応することによって、上記一般式(1c)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物を製造することができる。なお、イオン交換反応については、例えば特開2007−145797号公報を参考にすることができる。
【0102】
上記説明したような、本発明の高分子化合物であれば、レジスト組成物のベース樹脂として用いた際に、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れたレジスト組成物を提供することができる。
【0103】
<レジスト組成物>
本発明では、(A)上記高分子化合物と、(B)有機溶剤を含有するレジスト組成物を提供する。
【0104】
本発明のレジスト組成物は、より具体的には、
(A)ベース樹脂と、
(B)有機溶剤を含有し、更に必要に応じて、
(C)上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造以外の酸を発生する光酸発生剤、
(D)含窒素化合物、
(E)水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)を含有することができる。
【0105】
[(A)ベース樹脂]
ベース樹脂として、上記一般式(1a)で示されるスルホン酸構造を有する高分子化合物に変化する高分子化合物、又は上記一般式(1b)又は(1c)で示される、光酸発生剤として機能する繰り返し単位を有する高分子化合物を使用することができる。
【0106】
[(B)有機溶剤]
本発明のレジスト組成物に含有される(B)成分としての有機溶剤は、上記本発明の高分子化合物、及び下記光酸発生剤、含窒素化合物、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれのものでも構わない。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられる。アセタール類の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等を加えることもできる。
【0107】
本発明では上記有機溶剤の中でも、レジスト組成物中の光酸発生剤の溶解性が特に優れている1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。有機溶剤の使用量は、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対して200〜7,000質量部、特に400〜5,000質量部が好適である。
【0108】
[(C)上記一般式(1a)で示される構造以外の酸を発生する光酸発生剤]
本発明のレジスト組成物は、光酸発生剤としての機能を有する繰り返し単位を分子内に組み込まれている高分子化合物をベース樹脂として用いていることを特徴としているが、リソグラフィー性能を微調整するために非高分子型の光酸発生剤を含有しても構わない。使用される光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれのものでも構わないが、好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等が例示できる。これらは単独、又は2種以上を混合して用いることができる。光酸発生剤より発生する酸としては、スルホン酸が最も好ましく、その他、(ビスパーフルオロアルカンスルホニル)イミド、(トリスパーフルオロメタンスルホニル)メチドのように、酸不安定基を切断するために十分な酸性度を有している光酸発生剤も、好ましく用いられる。
【0109】
このような光酸発生剤としては、下記一般式(4)で示される構造のものが好ましい。
【化29】
(式中、M
b+は上記と同様であるRは水素原子、又はヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜27の直鎖状、若しくは炭素数3〜20の分岐状若しくは環状の一価炭化水素基を示し、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。)
【0110】
上記一般式(4)中のRとして具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等を例示できる。またこれらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、あるいは炭素原子の一部の間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成していてもよい。
【0111】
レジスト組成物のベース樹脂として用いられる本発明の高分子化合物に含有される酸不安定基が、三級エステル又は三級エーテルで保護されている場合には、上記一般式(4)中のスルホ基のα位がフッ素で置換されているものが好ましい。これは、発生酸の酸強度が十分強い方が、保護基が切断されやすいためである。このようなα,α−ジフルオロスルホネートをアニオン構造に有する光酸発生剤として具体的には、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載の化合物、特開2014−001259号公報の段落[0088]〜[0092]に記載の化合物、特開2012−41320号公報の段落[0015]〜[0017]に記載の化合物、特開2012−106986号公報の段落[0015]〜[0029]に記載の化合物等が挙げられる。
【0112】
また、レジスト組成物のベース樹脂として用いられる本発明の高分子化合物に含有される酸不安定基が、アセタールで保護されている場合には、上記一般式(4)におけるスルホ基のα位がフッ素で置換されていないものが好ましい。これは、上述のα,α−ジフルオロスルホン酸のような強酸を発生する光酸発生剤ではないため、保護基の切断能が強すぎることによる制御不能な酸拡散を避けることができるためである。このような光酸発生剤としては、下記に例示する具体的なアニオン構造と、上記一般式(4)におけるM
b+で示される任意のカチオン構造との組み合わせを挙げることができる。ただし、本発明に使用される光酸発生剤はこれらに限定されるものではない。
【化30】
【0114】
上述の(C)光酸発生剤の添加量は、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対して0〜40質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜40質量部であり、0.1〜20質量部が特に好ましい。このような光酸発生剤の添加量であれば、光酸発生剤の添加量が多すぎることにより生じる解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において生じる異物を避けることができる。
【0115】
[(D)含窒素化合物]
本発明のレジスト組成物には、必要に応じてクエンチャーとして含窒素化合物を添加することもできる。本明細書においてクエンチャーとは、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際に、拡散速度を抑制することができる化合物を意味する。このような含窒素化合物としては、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合等のいずれかを有するアミン化合物が、好ましいクエンチャーとして挙げられる。また、特許第3790649号公報に記載の化合物のように、1級又は2級アミンがカーバメート基として保護された化合物を挙げることもできる。このようなアミノ基が保護されたアミン化合物は、レジスト組成物中塩基に対して不安定な成分があるときに有効である。
【0116】
なお、上記含窒素化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.001〜12質量部、特に0.01〜8質量部が好ましい。上記含窒素化合物を添加することにより、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制できる。更に、基板や環境依存性を少なくして、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させたり、基板密着性を向上させることもできる。
【0117】
更に、本発明のレジスト組成物は、クエンチャーとして、上記含窒素化合物に加えて、必要に応じて含窒素置換基を有する光分解性オニウム塩を含有していてもよい。このような化合物は、未露光部ではクエンチャーとして機能し、露光部では自身からの発生酸との中和によってクエンチャー能を失う、いわゆる光崩壊性塩基として機能する。このような光崩壊性塩基を用いることによって、露光部と未露光部のコントラストをより強めることができる。このような光崩壊性塩基としては、例えば特開2009−109595号公報、特開2012−46501号公報、特開2013−209360号公報等に記載のものを使用することができる。
【0118】
なお、上記含窒素置換基を有する光分解性オニウム塩の添加量としては、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対し0〜40質量部が好ましく、0.1〜40質量部がより好ましく、0.1〜20質量部が特に好ましい。このような光分解性オニウム塩の添加量であれば、上記含窒素置換基を有する光分解性オニウム塩の添加量が多すぎることにより生じる解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において生じる異物を避けることができるためである。
【0119】
[(E)水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)]
本発明のレジスト組成物には(E)界面活性剤を添加することができ、例えば特開2008−111103号公報の段落[0166
]に記載のものが挙げられる。水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、住友スリーエム社製FC−4430、セイミケミカル社製サーフロンS−381や、上記公報に記載の界面活性剤、特に旭硝子社製KH−20及びKH−30や、日信化学工業社製サーフィノールE1004が好ましく用いられ、また下記一般式(surf−1)にて示されるオキセタン開環重合物も好適である。これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化32】
(式中、R、Rf、A、B、C、m、nは、上述の記載に拘わらず、上記一般式(surf−1)のみに適用される。Rは二〜四価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には二価のものとしてエチレン、1,4−ブチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,5−ペンチレンを示し、好ましくは1,4−ブチレン又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレンである。三価又は四価の脂肪族基としては下記のものが挙げられる。Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは0〜3の整数、nは1〜4の整数であり、nとmの和はRの価数を示し、2〜4の整数である。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくは、Bは4〜20の整数、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。)
【化33】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0120】
部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書などに詳しい。
【0121】
水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光において保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有し、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げることができる。また、露光後、ポストベーク後のアルカリ現像時にはアルカリ現像液に可溶であるため欠陥の原因となる異物にもなり難く、有用である。この界面活性剤は水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な性質であり、疎水性樹脂とも呼ばれ、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。このような高分子型の界面活性剤は下記に示すことができる。
【化34】
(式中、R
114はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R
115はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基若しくはフッ素化アルキル基を示し、同一単量体内のR
115はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、合計して炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。R
116はフッ素原子又は水素原子であるか、あるいはR
117と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数の和が3〜10の非芳香環を形成してもよい。R
117は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。R
118は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基であるか、あるいはR
117とR
118が結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環である炭素数の総和が2〜12の三価の有機基を示す。R
119は単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基である。R
120は同一でも異なってもよく、単結合、−O−、又は−CR
114R
114−である。R
121は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であるか、あるいは同一単量体内のR
115と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜6の非芳香環を形成する。R
122は1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、又は1,4−ブチレン基を示す。Rfは炭素数3〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基、3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基、又は6H−パーフルオロヘキシル基を示す。X
2はそれぞれ同一でも異なってもよく、−C(=O)−O−、−O−、又は−C(=O)−R
123−C(=O)−O−であり、R
123は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基である。また、(a’−1)、(a’−2)、(a’−3)、b’及びc’は、0≦(a’−1)<1、0≦(a’−2)<1、0≦(a’−3)<1、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)<1、0≦b’<1、0≦c’<1であり、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)+b’+c’≦1である。)
【0122】
上記高分子型の界面活性剤の繰り返し単位としては、以下のものが例示できる。
【化35】
【0123】
上記水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤としては、特開2008−122932号公報、特開2010−134012号公報、特開2010−107695号公報、特開2009−276363号公報、特開2009−192784号公報、特開2009−191151号公報、特開2009−98638号公報、特開2010−250105号公報、特開2011−42789号公報に記載のものも、例示できる。
【0124】
上記高分子型の界面活性剤の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000である。この範囲内であれば、表面改質効果が十分でなかったり、現像欠陥を生じたりすることがなく、好適である。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値を示す。添加量は、レジスト組成物のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部の範囲である。これらは特開2010−215608号公報に詳しい。
【0125】
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させることもできる。
【0126】
<パターン形成方法>
本発明では、更に、上述したレジスト組成物を基板上に塗布し、加熱処理してレジスト膜を形成する工程と、フォトマスクを介してKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子線及びEUVのいずれかを用いて前記形成したレジスト膜を露光する工程と、更に前記露光したレジスト膜を加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0127】
本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。例えば、基板にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように上述のレジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間加熱処理(プリベーク)し、レジスト膜を形成する。次いで、目的のパターンを形成するためのフォトマスクを上記形成したレジスト膜上にかざし、高エネルギー線を照射し、露光する。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間加熱処理(PEB:ポストエクスポージャベーク)する。更に、現像液を用いて0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、基板上に目的のパターンを形成することができる。なお、現像には、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ現像液を用いて露光部を現像/溶解させるポジティブトーン現像の手法を用いてもよいし、有機溶剤を用いて未露光部を現像/溶解させるネガティブトーン現像の手法を用いてもよい。
【0128】
[基板]
基板としては、特に限定されないが、例えば集積回路製造用の基板(Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass)、SOG(Spin on Glass)、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi等)を用いることができる。
【0129】
[露光]
露光は、通常の露光法の他、投影レンズとレジスト膜の間を液浸する液浸露光(Immersion)法で行うこともできる。このとき、投影レンズとレジスト膜の間に介在させる液体としては、屈折率1.0以上の液体が好ましい。また、液浸露光を行う場合、レジスト膜の上に、更に保護膜を塗布し、保護膜と投影レンズとの間に上記屈折率1.0以上の液体を介在させて、液浸露光を行うことも可能である。
【0130】
(保護膜)
上述した保護膜は、水に不溶なものであり、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられる。このような保護膜には、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型であり、もう1種類はアルカリ現像液に可溶で、レジスト膜可溶部と共に除去されるアルカリ可溶型である。後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に可溶な1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとしており、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。
【0131】
(高エネルギー線)
レジスト膜の露光に使用される高エネルギー線としては、特に限定されないが、例えばKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子線、EUV等を用いることができる。高エネルギー線は、露光量が好ましくは1〜200mJ/cm
2、より好ましくは10〜100mJ/cm
2となるように照射する。
【0132】
[現像液]
有機溶剤現像を行う場合の現像液としては、例えば、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0133】
また、更に、レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤やパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0134】
また、本発明のパターン形成方法には、ArFリソグラフィーの32nmまでの延命技術として行われているダブルパターニング法を適用することができる。ダブルパターニング法としては、1回目の露光とエッチングで1:3トレンチパターンの下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3トレンチパターンを形成して1:1のパターンを形成するトレンチ法や、1回目の露光とエッチングで1:3孤立残しパターンの第1の下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3孤立残しパターンを第1の下地の下に形成された第2の下地を加工してピッチが半分の1:1のパターンを形成するライン法が挙げられる。
【0135】
以上のように、本発明の化合物であれば、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れたレジスト組成物に好適に用いられる高分子化合物の原料として好適である。また、本発明の高分子化合物をベース樹脂として用いたレジスト組成物であれば、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れたレジスト膜を形成することができる。また、このようなレジスト組成物を用いた本発明のパターン形成方法であれば、フォトリソグラフィーにおける微細なパターンルールを実現することができ、精密な微細加工に極めて有効である。
【実施例】
【0136】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0137】
<PAG(Photo Acid Generator)中間体の合成>
[実施例1−1]
特開2010−215608号公報記載の方法に準じて、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホン酸ナトリウムの水溶液を合成した。次いでこの水溶液1200g(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホン酸ナトリウム1mol相当)にベンジルトリメチルアンモニウムクロリド223g、塩化メチレン2000gを加えて10分攪拌した後、有機層を分取した。分取した有機層を水で洗浄した後、減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行い、析出した固体を回収して減圧乾燥を行うことで、目的物であるベンジルトリメチルアンモニウム=3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート(PAG中間体1)354gを白色固体として得た(収率86%)。
【0138】
[実施例1−2]
トルエン溶媒中において、3−メタクリロイルオキシ−1−アダマンタンカルボン酸とオキザリルクロリドとを反応させ、カルボン酸クロリドを合成した。得られたカルボン酸クロリドに塩化メチレンを加えて25質量%溶液とした。
続いて、PAG中間体1 123g、トリエチルアミン45g、4−ジメチルアミノピリジン9g、塩化メチレン600gの混合溶液を調製し、得られた混合溶液に上述のカルボン酸クロリドの塩化メチレン溶液を、氷冷下において滴下した。滴下後、室温で10時間熟成させた後、希塩酸を加えて反応を停止させた。続いて有機層を分取し、水洗を行った後、減圧濃縮を行って得られた濃縮残渣にジイソプロピルエーテル1500gを加えて結晶を析出させた。得られた結晶をろ別して回収し、減圧乾燥を行うことで、目的物であるベンジルトリメチルアンモニウム=3,3,3−トリフルオロ−2−(3−メタクリロイルオキシ−1−アダマンタンカルボニルオキシ)−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート(PAG中間体2)126gを白色結晶として得た(収率64%)。
【0139】
<PAGの合成>
[実施例1−3]
PAG中間体2 66g、トリフェニルスルホニウム=メチルサルフェート41g、塩化メチレン400g、純水200gの混合溶液を調製した後、室温で30分撹拌した。その後有機層を分取して水洗し、減圧濃縮を行ってメチルイソブチルケトン300gを加えた。これを再び水洗し、次いで減圧濃縮を行った後、濃縮残渣をジイソプロピルエーテルで洗浄したところ、トリフェニルスルホニウム=3,3,3−トリフルオロ−2−(3−メタクリロイルオキシ−1−アダマンタンカルボニルオキシ)−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート(PAG Monomer1)72gを得た(収率93%)。
【化36】
【0140】
得られたPAG Monomer1のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR,
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図1及び
図2に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、塩化メチレン、メチルイソブチルケトン)及びDMSO−d
6中の水が観測されている。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M
+263((C
18H
15S
+相当)
NEGATIVE M
−507((C
14H
19O
2COO)−C(CF
3)
2−CH
2SO
3−相当)
【0141】
[実施例1−4]
PAG中間体2を6.5g、10−フェニルフェノキサチイニウムクロリド3.1g、塩化メチレン50g、純水40gの混合溶液を調製した後室温下で30分撹拌した。その後有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮をしてメチルイソブチルケトン50gを加えた。これを再び水洗し、次いで減圧濃縮を行った後、濃縮残渣をジイソプロピルエーテルで洗浄したところ、10−フェニルフェノキサチイニウム=3,3,3−トリフルオロ−2−(3−メタクリロイルオキシ−1−アダマンタンカルボニルオキシ)−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート(PAG Monomer2)6.9gを得た(収率88%)。
【化37】
【0142】
得られたPAG Monomer2のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR、
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図3及び
図4に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル)及びDMSO−d
6中の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(D−ATR;cm
−1)
2918、1760、1715、1461、1441、1330、1272、1238、1220、1197、1166、1128、1072、1041、1029、970、884、841、768、758、616、594cm
−1。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M
+277((C
18H
13OS
+相当)
NEGATIVE M
-507((C
14H
19O
2COO)−C(CF
3)
2−CH
2SO
3-相当)
【0143】
[比較例1−1〜1−4]
比較例として、下記の重合性基含有光酸発生剤PAG Monomer3〜PAG Monomer6を合成した。
PAG Monomer3:特開2010−077404号公報の段落[0199]に記載の化合物
PAG Monomer4:特開2010−077404号公報の段落[0199]を参考に合成
PAG Monomer5:特開2010−164963号公報に記載の化合物
PAG Monomer6:国際公開WO2007/069640号公報の段落[0062]及び特開2010−215608号公報の段落[0218]〜[0219]を参考に合成
【0144】
【化38】
【0145】
<高分子化合物の合成>
[実施例2−1]
窒素雰囲気としたフラスコに、PAG Monomer2 46.0g、メタクリル酸3−エチル−3−exo−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカニル24.1g、メタクリル酸4−ヒドロキシフェニル10.4g、メタクリル酸4,8−ジオキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−5−オン−2−イル19.7g、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル19.7g、2−メルカプトエタノール0.69g、メチルエチルケトン(MEK)175gをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに58gのMEKをとり、撹拌しながら80℃まで加熱し、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、MEK100gとヘキサン900gの混合溶剤に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン600gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、下記式(P−1)で示される白色粉末固体状の高分子化合物を得た。収量は92.1g、収率は92%であった。
【0146】
【化39】
【0147】
[実施例2−2〜2−8、比較例2−1〜2−6]
各単量体の種類、配合比以外は、実施例2−1と同様の手順により、表1に示す構造の高分子化合物を製造した。各繰り返し単位の構造を表2〜4に示す。なお、表1において、導入比は導入された繰り返し単位のモル比を示す。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】
【0152】
<レジスト組成物の調製>
[実施例3−1〜3−10、比較例3−1〜3−7]
上記製造した高分子化合物、更に下記光酸発生剤、アミンクエンチャー及びアルカリ可溶型界面活性剤(F−1)を下記表5に示す組成で、下記界面活性剤(F−2)(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解させ、孔径0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト組成物(R−01〜R−17)をそれぞれ調製した。
【0153】
[光酸発生剤]
PAG−A:トリフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート
(特開2010−215608号公報に記載の化合物)
PAG−B:トリフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート(特開2007−145797号公報に記載の化合物)
PAG−C:トリフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)エタンスルホネート(特開2010−155824号公報に記載の化合物)
[有機溶剤]
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO:シクロヘキサノン
GBL:ガンマブチロラクトン
[アミンクエンチャー]
(Q−1):ラウリン酸2−モルホリノエチル
[界面活性剤]
アルカリ可溶型界面活性剤(F−1):ポリ(メタクリル酸=3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)(特開2008−122932号公報に記載の化合物)
重量平均分子量(Mw)=7,300、分散度(Mw/Mn)=1.86
【化40】
界面活性剤(F−2):3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)
重量平均分子量(Mw)=1,500
【化41】
【0154】
【表5】
【0155】
<レジスト組成物の評価1(EUV露光)>
[実施例4−1〜4−6、比較例4−1〜4−5]
EUV露光評価では、上記調製したレジスト組成物を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径4インチ(100mm)のSi基板上にスピンコートし、ホットプレート上にて105℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を形成した。形成したレジスト膜に、NA0.3、ダイポール照明でEUV露光を行った
。露光後直ちにホットプレート上で60秒間の熱処理(PEB)を行った後、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0156】
[評価方法]
得られたレジストパターンの評価を行った。35nmのラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量をレジストの感度、この時の露光量における最小の寸法を解像度とし、35nmLSのLWRをSEM(走査型電子顕微鏡)で測定した。レジスト組成と、EUV露光における感度、解像度、及びLWRの結果を下記表6に示す。
【0157】
【表6】
【0158】
上記表6に示した結果より、本発明の高分子化合物を有するレジスト組成物(実施例4−1〜4−6)が、EUV露光において、感度が良好であり、解像性に優れ、またLWRの値も小さいことが確認できた。
【0159】
<レジスト組成物の評価2(ArF露光、有機溶剤現像によるホールパターン評価)>
[実施例5−1〜5−4、比較例5−1〜5−2]
基板上に信越化学工業社製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボン含有率80質量%)が200nmの膜厚で、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素含有率43質量%)が35nmの膜厚で成膜されたトライレイヤープロセス用の基板上に、上記調製したレジスト組成物をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
【0160】
これをArF液浸エキシマレーザーステッパー(ニコン社製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ダイポール照明)を用いて、ウエハー上寸法がピッチ80nm、幅40nmのX方向のラインが配列されたマスクを用いて第一回目の露光を行い、続いて、ウエハー上寸法がピッチ80nm、幅40nmのY方向のラインが配列されたマスクを用いて第二回目の露光を行い、露光後60秒間の熱処理(PEB)を施した後、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後、静止パドル現像を27秒間行い、ネガ型のパターンを得た。
【0161】
[評価方法]
作製したレジストパターンを電子顕微鏡にて観察し、80nmピッチにおいてホール径40nmとなる露光量を最適露光量(感度、mJ/cm
2)とした。結果を表7に示す。
【0162】
(寸法均一性(CDU)の評価)
最適露光量において同一露光ショット内の異なる箇所50点のホール径を測定し、寸法ばらつきの3σ値をCDUとした。結果を表7に示す。CDUの値が小さいほど寸法制御性がよく、好ましい。
【0163】
(マスクエラーファクター(MEF:Mask Error Factor)評価])
上記マスクを用いた評価において、マスクのピッチは固定したまま、マスクのライン幅を変えて、前記感度評価における最適露光量で照射しパターン形成した。マスクのライン幅を変化させたとき、対応するパターンのスペース幅をプロットして得られた直線の傾きを求め、これをMEFとした。この値が1に近いほど性能が良好である。結果を表7に示す。
【0164】
(焦点深度(DOF:Depth Of a Focus)マージン評価)
上記最適露光量におけるホール寸法を日立ハイテクノロジーズ社製TDSEM(S−9380)で測定し、40nm±5nmになっているDOFを求めた。この値が大きいほど焦点深度の変化に対するパターン寸法変化が小さく、DOFマージンが良好である。評価結果を表7に示す。
【0165】
【表7】
表7の結果より、本発明のレジスト組成物を用いて有機現像によってパターンを形成した場合(実施例5−1〜5−4)、CDU、MEF及びDOFマージンに優れていることがわかった。
【0166】
以上のことから本発明の高分子化合物をベース樹脂として用いたレジスト組成物であれば、高解像度かつ高感度であり、LWRやCDU等のリソグラフィー性能のバランスに優れたレジスト膜を形成できることが明らかとなった。
【0167】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。