特許第6346389号(P6346389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6346389
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】金属粒子含有組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20180611BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20180611BHJP
   B23K 20/16 20060101ALI20180611BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20180611BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20180611BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20180611BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20180611BHJP
   C22C 12/00 20060101ALN20180611BHJP
【FI】
   B23K35/363 D
   B23K35/363 E
   B23K20/00 310M
   B23K20/16
   H01B5/00 L
   B23K35/26 310A
   B23K35/28 310D
   B23K35/26 310C
   !C22C13/00
   !C22C12/00
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-504311(P2018-504311)
(86)(22)【出願日】2017年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2017027675
【審査請求日】2018年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-152793(P2016-152793)
(32)【優先日】2016年8月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】石井 智紘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英道
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−120089(JP,A)
【文献】 特開2016−113629(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/108395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
B23K 20/00
B23K 20/16
H01B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の粒子径が1nm以上500nm以下であり、かつバルクの融点が420℃超えである金属元素(M)を含む金属微粒子(P1)と、
融点が420℃以下の金属又は合金からなり、不可避的に酸素を含有する低融点金属粉(P2)と、
水の生成を伴わずに酸素原子と結合可能なリン又は硫黄を分子構造中に一つ以上含んでいる活性化剤(A)とで構成していることを特徴とする金属粒子含有組成物。
【請求項2】
前記金属元素(M)が、銅、銀、金及びニッケルの中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項3】
前記低融点金属粉(P2)の一次粒子の粒子径が、500nm超え50μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項4】
前記低融点金属粉(P2)が、スズ金属粉、又は銅、銀、亜鉛、リン、アルミニウム、及びビスマスの中から選択される少なくとも1種がスズと固溶しているスズ合金粉であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項5】
前記活性化剤(A)が、少なくとも1つの炭素原子を分子構造中に含む有機リン化合物(A1)であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項6】
前記有機リン化合物(A1)が、ホスフィン類及びホスファイト類の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項7】
前記活性化剤(A)が、少なくとも1つの炭素原子を分子構造中に含む有機硫黄化合物(A2)であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項8】
前記有機硫黄化合物(A2)が、スルフィド類、ジスルフィド類、トリスルフィド類及びスルホキシド類の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項9】
一次粒子の粒子径が500nm超え50μm以下であり、かつバルクの融点が420℃超えである金属元素(M)からなる金属粉(P3)をさらに有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の金属粒子含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などの金属間の接合に使用可能な金属微粒子の金属粒子含有組成物に関し、具体的には加熱により電子部品等の金属間の接合が可能な、複数種の金属粒子が含まれる金属微粒子分散液、金属微粒子分散粉体などの金属粒子含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品同士の物理的、電気的な接合手段として、はんだ付けとろう付けが知られている。はんだ付けとろう付けは、ともに接合する母材よりも融点の低い溶加材(ろう又ははんだ)を溶かして一種の接着剤として用いることにより、母材自体は溶融させずに複数の部品を接合する方法である。ろう又ははんだ中の親和性のある原子は、接合する母材表面の原子に近づきやすいだけでなく、溶融ろう又ははんだ中の元素が母材に入り込む拡散現象も起きていると考えられている。
【0003】
はんだ付け接合には、Sn−Pb共晶合金がはんだとして広く利用されてきた。Sn−Pb共晶合金はその溶融温度が低く、また接合時の高温条件では拡散性にも優れていたが、Sn−Pbはんだ素材を溶融すると、鉛や酸化鉛の蒸散、飛散が不可避的に生ずるので鉛を含まないはんだ素材の開発が進められてきた。また、はんだ付けでは、母材の酸化被膜の除去、はんだの濡れ現象を促進することなどを目的として、フラックスがはんだに配合されるが、はんだ付け作業後に、このフラックス成分を洗浄する工程が必要となるという問題点もある。
【0004】
また、ろう付けについては、銅ろう、金ろう、パラジウムろう、銀ろうが知られており、ろう付け温度はそれぞれ1090℃、1040℃、900℃、750℃程度と高い。また、銅管接合用にはリン銅系のろう付けペーストなどが用いられているが、この場合にも約600℃以上の高温加熱が必要となるため、作業者の技量が要求されて自動化が難しいプロセスとなっている。ろうは、ワイヤー状、帯状、粒状または粉末状等の形状で使用されている。
【0005】
従来技術として、特許文献1には、2つの金属体を金属超微粒子の融合層を介して接合する接合方法が開示されている。具体的に、当該接合方法では、2つの金属体の接合面間に、有機系の物質で被覆された粒径が1〜100nmの金属超微粒子からなる層を配置して、150〜500℃の温度に加熱等の処理を行うことにより金属超微粒子の融合層を形成し、融合層を介して2つの金属体を接合する。
【0006】
特許文献2には、鉛を含まないはんだ素材を利用した、バルク金属間のろう付け接合方法が開示されている。具体的に、当該接合方法では、接合すべきバルク金属の対向する面間の間隙に、表面がアミン化合物により被覆された平均粒子径1〜100nmの金属超微粒子が有機溶媒中に均一に分散されてなる金属コロイド分散液を塗布・充填し、加熱することで、バルク金属表面と超微粒子との接触界面における相互拡散融着、ならびに、超微粒子間の融着を行い接合層を形成する。
【0007】
特許文献3には、Sn−Ag系合金はんだと同等のインク状のはんだ組成物として、平均粒子径がナノサイズのスズナノ粒子、銀ナノ粒子、及びフラックス成分を含み高沸点の無極性溶媒中に該スズナノ粒子と銀ナノ粒子を均一に分散してなるインク状のはんだ組成物が開示されている。具体的に、当該はんだ組成物では、スズナノ粒子と銀ナノ粒子の混合比率を、95:5〜99.5:0.5の範囲、スズナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択し、またスズナノ粒子10質量部当たりフラックス成分の添加量を、0.5質量部〜2質量部の範囲に選択し、沸点が200℃〜320℃の範囲の炭化水素系溶剤を選択している。
【0008】
特許文献4には、十分なろう付け強度を有する低融点ろう材の提供を目的として、加工性の良い貴な金属としてAu、Ag、Cu、Ni、Pt及びPdより選ばれる1種以上の金属の粉末と、低融点で加工性の良い金属としてSn、Pb、Cd、In及びZnより選ばれる1種以上の金属の粉末とを混合し、圧縮固化して所要形状に成形されている、低融点ろう材、が開示されている。
【0009】
特許文献5には、鉛を使用しない高温はんだ代替として、平均粒径100nm程度以下の金属粒子からなる核の周囲をC,H及び/またはOを主成分とする有機物で結合・被覆した複合型金属ナノ粒子を接合の主剤とした接合材料が開示されている。
【0010】
特許文献6には、鉛成分を含有せず、高い接合強度・破壊靱性が得られる接合材と、これを接合層として有する半導体装置を提供するため、次の構成からなる半導体装置が開示されている。すなわち、接合層が、10〜1000nmの結晶粒からなるAgマトリックス中にAgよりも硬度が高い金属Xが分散相を形成した複合金属焼結体で、複合金属焼結体は、Agマトリックスと金属X分散相との界面が金属接合し、前記電子部材の最表面とAgマトリックスとの界面が金属接合し、電子部材の最表面と金属X分散相との界面が金属接合しており、金属X分散相のそれぞれは、単結晶体または多結晶体であり、多結晶体の金属X分散相は、その内部粒界が酸化皮膜層を介さずに金属接合している。
【0011】
特許文献7には、酸化を防止することができるろうペーストとして、銀及び銅を少なくとも含有する銀ろうの微粉末と、酸化防止剤と、溶媒とを含む銀ろうペーストが開示されている。
【0012】
特許文献8には、はんだ付を行うプリント配線基板及び電子部品の金属表面酸化膜を効率的に除去するため、はんだ付用フラックスの表面酸化膜除去剤として、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル又はリン酸エステルを用いることが、開示されている。
【0013】
特許文献9には、はんだ粉末が溶融する時又はこの時近くにおいてのみ反応性になるようにするため、はんだ組成物の架橋剤として、無水物、カルボン酸、アミド、イミド、アミン、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、ニトロ化合物、ニトリル、カルバメート、イソシアネート、アミノ酸、ベプチド、チオール、スルホンアミド、セミカルバゾン、オキシム、ヒドラゾン、シアノヒドリン、尿素、リン酸、リン酸エステル、チオリン酸、チオリン酸エスエル、ホスホン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホンアミド、スルホン酸及びスルホン酸エステルを用いることが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−225180号公報
【特許文献2】特開2002−126869号公報
【特許文献3】特開2009−6337号公報
【特許文献4】特開平08−057681号公報
【特許文献5】特開2004−107728号公報
【特許文献6】特開2010−50189号公報
【特許文献7】特開平08−164494号公報
【特許文献8】特開平07−88687号公報
【特許文献9】特許第2972338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、粒子径がナノサイズで比較的高融点の金属微粒子と、比較的低融点の低融点金属粉と、を含む接合用の金属粒子含有組成物を用いることで、比較的低温で、金属微粒子が低融点金属粉に溶け込み電子部品等の金属間の接合が可能である。さらに、当該接合用の金属粒子含有組成物が、接合時の加熱により低融点金属粉に含まれる酸素原子を除去する活性化剤を含むことにより、接合の際に活性化剤の活性化効果が金属微粒子の触媒作用により増強し、低融点金属粉に含まれる酸素原子が速やかに除去される。
【0016】
しかしながら、活性化剤として、従来からはんだペーストに用いられていたカルボン酸系の化合物もしくは金属微粒子の添加剤として用いられていたポリオール系の化合物などを用いると、低融点金属粉から酸素原子を除去する過程で活性化剤の分子構造中に含まれる水素原子が酸素原子と化合して蒸発潜熱の大きい水が生成されてしまう問題が生じてしまった。
【0017】
また、上述した特許文献1、特許文献2、及び特許文献5に開示された発明では、金属超微粒子の融点降下の特性によって金属微粒子同士が固相で焼結するため、焼結した金属微粒子の間に空隙ができてしまい、緻密な接合体を得ることが困難であるという問題点がある。
【0018】
また、特許文献3に開示の発明では、粒子径が100nm以下のナノメートルサイズのスズ粒子と高沸点の炭化水素系の無極性溶媒等とを併用するため、従来のSn−Ag系はんだを用いた場合に比べて、長時間加熱しなければ接合対象部材を接合できないという実用上の制約があり、接合対象部材の耐熱性を十分に確保できないという問題がある。
【0019】
また、特許文献4に開示の発明では、金属粉末を高温で圧縮、固化し、次いで押出し加工や圧延加工などで形状を成形することが求められるため、工程が複雑になるだけでなく、接合させる材料の形状など使用条件に大きな制限をもたらすことになる。
【0020】
また、特許文献6に開示の発明では、接合層の結晶粒サイズの制約だけでなく、銀がマトリックス相として必須であるため接合する材料の仕様によっては銀のマイグレーションの問題も生じ得る。
【0021】
また、特許文献7に開示の発明では、ペーストを構成する金属組成と粒子サイズから鑑みるに低温での接合が見込めず、また銅の酸化によって性能が著しく低下するおそれがあるという問題点がある。
【0022】
また、特許文献8及び9に開示された発明は、表面酸化膜除去作用、架橋作用を目的として、リン酸などを用いることが開示されているに過ぎない。
【0023】
本発明は、上記問題点を解決して、比較的低温で電子部品等の金属間の接合が可能であり、かつ高強度の接合が可能な金属粒子含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らが鋭意研究した結果、下記の知見が得られた。
【0025】
粒子径がナノサイズで比較的高融点の金属微粒子と、比較的低融点の低融点金属粉と、接合時の加熱により低融点金属粉に含まれる酸素原子を除去する活性化剤を含む、接合用の金属粒子含有組成物を使用することにより、接合の際に活性化剤の活性化効果が金属微粒子の触媒作用により増強し、低融点金属粉に含まれる酸素原子が速やかに除去される。さらに、低融点金属粉が良好な濡れ性を保ちながら溶融した後に、金属微粒子の少なくとも一部または大部分が低融点金属に溶融して合金を形成する結果、接合後の融点が向上することで耐熱性と導電性に優れ、かつ接合強度も向上した接合体が得られる。
【0026】
具体的には、スズ、鉛、亜鉛等の比較的低融点の金属種から構成される融点が420℃以下の低融点金属粉(P2)に加えて、バルク状態のときの融点が420℃超えの金属元素(M)からなる金属微粒子(P1)を併用することで、加熱接合時に金属微粒子(P1)の主成分である金属元素(M)微粒子が低融点金属粉(P2)に溶け込み、金属元素(M)と低融点金属粉(P2)とから融点の向上した合金または金属間化合物が形成されることによって、金属管や電子部品等の材料間が接合されることになる。さらに、金属元素(M)と低融点金属粉(P2)とから形成された合金または金属間化合物の接合層は、低融点金属粉(P2)単体から形成される接合層よりも融点が相当に向上するので耐熱性も改良されて、比較的高温における接合強度も向上する。
【0027】
上述した金属微粒子(P1)の主成分である金属元素(M)の低融点金属粉(P2)への溶け込みについては、金属微粒子の粒子径が小さいほど金属原子の拡散性が高まり溶け込みやすくなるが、低融点金属粉(P2)が活性化されず十分に溶融しない状態だと、溶け込みが起こらずに金属微粒子どうしの焼結反応が進行して低融点金属と相分離するため、低融点金属粉(P2)を十分に溶融させるための活性化処理が必要になる。ここで、活性化剤として、従来からはんだペーストに用いられていたカルボン酸系の化合物もしくは金属微粒子の添加剤として用いられていたポリオール系の化合物などを用いると、低融点金属粉(P2)から酸素原子を除去する過程で活性化剤の分子構造中に含まれる水素原子が酸素原子と化合して蒸発潜熱の大きい水が生成されてしまう問題が生じる。一般に、水などの蒸発潜熱の大きい生成物は加熱によって激しい突沸を引き起こし構造中のボイド形成を誘発する。
【0028】
そこで、本発明者は、原子価の増加に伴って酸素原子と結合するリンまたは硫黄を分子構造中に一つ以上含んでいる活性化剤(A)を用いることで、水の生成を伴わずに酸素原子を除去して低融点金属粉(P2)を活性化することができることを見出した。すなわち、活性化剤(A)に含まれるリンまたは硫黄が直接的に酸素原子と結合する際にリンまたは硫黄の原子価が増加する変化を伴うのみで、活性化剤(A)から水などの余分な副生成物が発生しないのである。酸素原子を取り込んだ後の活性化剤(A)は金属微粒子の触媒作用によって揮発しやすい低分子量の有機物へと分解される効果も示すのでボイド形成を抑制しながらも有機物残渣を少なくすることが可能となり、本発明を完成するに至った。
【0029】
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
【0030】
(1)一次粒子の粒子径が1nm以上500nm以下であり、かつバルクの融点が420℃超えの金属元素(M)を含む金属微粒子(P1)と、融点がである420℃以下の金属又は合金からなり、不可避的に酸素を含有する低融点金属粉(P2)と、水の生成を伴わずに酸素原子と結合可能なリン又は硫黄を分子構造中に一つ以上含んでいる活性化剤(A)とで構成していることを特徴とする金属粒子含有組成物。
【0031】
(2)前記金属元素(M)が、銅、銀、金及びニッケルの中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載の金属粒子含有組成物。
【0032】
(3)前記低融点金属粉(P2)の一次粒子の粒子径が、500nm超え50μm以下であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の金属粒子含有組成物。
【0033】
(4)前記低融点金属粉(P2)が、スズ金属粉、又は銅、銀、亜鉛、リン、アルミニウム及びビスマスの中から選択される少なくとも1種がスズと固溶しているスズ合金粉であることを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれかに記載の金属粒子含有組成物。
【0034】
(5)前記活性化剤(A)が、少なくとも1つの炭素原子を分子構造中に含む有機リン化合物(A1)であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の金属粒子含有組成物。
【0035】
(6)前記有機リン化合物(A1)が、ホスフィン類及びホスファイト類の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記(5)に記載の金属粒子含有組成物。
【0036】
(7)前記活性化剤(A)が、少なくとも1つの炭素原子を分子構造中に含む有機硫黄化合物(A2)であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の金属粒子含有組成物。
【0037】
(8)前記有機硫黄化合物(A2)が、スルフィド類、ジスルフィド類、トリスルフィド類及びスルホキシド類の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(7)に記載の金属粒子含有組成物。
【0038】
(9)一次粒子の粒子径が500nm超え50μm以下であり、かつバルクの融点が420℃超えである金属元素(M)からなる金属粉(P3)をさらに有することを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載の金属粒子含有組成物。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、比較的低温で電子部品等の金属間の接合が可能であり、かつ高強度の接合が可能な金属粒子含有組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、低融点金属粉(P2)としてスズ粉末に形成される酸化膜の膜厚を一定と仮定した場合の、酸素量と粒径の関係を計算値で示した図である。
図2図2は、実施例4で調製したサンプルを用いて銅板を接合した断面SEM像を示した図である。
図3図3は、比較例4で調製したサンプルを用いて銅板を接合した断面SEM像を示した図である。
図4図4は、比較例7で調製したサンプルを用いて銅板を接合した断面SEM像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明の金属粒子金属微組成物、及びその製造方法等について説明する。
【0042】
〔1〕金属粒子含有組成物
本発明の金属粒子含有組成物は、一次粒子の粒子径が1nm以上500nm以下である、バルク状態の融点(ここで、バルク状態の融点とは、融点降下が金属粒子径によって顕著に表れない融点のことである。以下、同じ。)が420℃超えの金属元素(M)を含む金属微粒子(P1)と、バルク状態の融点が420℃以下の金属又は合金からなり、不可避的に酸素を含有する低融点金属粉(P2)と、水の生成を伴わずに酸素原子と結合可能なリン又は硫黄を分子構造中に一つ以上含んでいる活性化剤(A)と、で構成していることを特徴とする。さらに、一次粒子の粒子径が500nm超え50μm以下であり、かつ融点が420℃超えである金属元素(M)からなる金属粉(P3)を含んでいてもよい。
【0043】
(1)金属微粒子(P1)
金属微粒子(P1)は、一次粒子の粒子径が1nm以上500nm以下である、融点(バルク状態の融点)が420℃超えの金属元素(M)を含む金属微粒子である。
【0044】
(イ)金属元素(M)
前記金属元素(M)は、融点(バルク状態の融点をいう。以下、特に記載がない限り、融点はバルク状態の融点を意味する。)が420℃超えで、低融点合金粉(P2)と合金を形成することができれば使用可能である。
【0045】
金属元素(M)の融点が420℃超えであるのは、420℃よりも低い温度で低融点合金粉(P2)と合金を形成することを防止しつつ、接合の際に低融点合金粉(P2)と合金を形成して形成された接合部の融点を高く維持して接合部の耐熱性を向上させるためである。
【0046】
ここで、金属元素(M)は、金属粒子含有組成物中では一次粒子の粒子径が1nm以上500nm以下であることから、微粒子状態での融点が、粒子径が小さくなるほどバルク状態(420℃超え)よりも低い温度になる傾向があるが、目安としてバルク状態の融点を基準とする。また、上記接合の際の融点、接合後の導電性等を考慮すると、金属微粒子(P1)を形成する金属元素(M)としては、銅、銀、金、及びニッケルの中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、上記金属元素の他に、金属微粒子の形成が可能なパラジウム、コバルト、クロム、カドミウム、インジウム等を使用することも可能である。
【0047】
(ロ)金属微粒子(P1)の一次粒子の粒子径
還元反応溶液中の金属元素(M)のイオン等から、無電解還元反応又は電解還元反応により、比較的容易な操作で、めっき膜状やデンドライト状に凝集していない、高純度で顆粒状のナノサイズの金属微粒子を得ることができる。金属微粒子(P1)は、一次粒子の粒子径が1nm以上500nm以下の範囲である。ここで、一次粒子の粒子径とは、二次粒子を構成する個々の金属等の微粒子の一次粒子の直径の意味である。該一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定された値で、金属元素(M)微粒子からなるコア部だけでなく、表面に存在する被覆物も含めたものである。すなわち、金属微粒子(P1)の「粒子径が1nm以上500nm以下の範囲」とは、表面に存在する被覆物も含めた範囲を意味する。
【0048】
上述したように、金属微粒子(P1)の粒径がナノメートルサイズ(1nm以上500nm以下)まで小さくなると、1粒子当たりの構成原子数が少なくなると共に粒子の体積に対する表面積が急激に増加して、バルク状態の金属と比較して融点や焼結温度が低下することが知られている。金属微粒子(P1)の粒径が100nm以下になるとその傾向は顕著になり、特に、金属微粒子(P1)の粒径が10〜20nm程度になると、バルク状態の該金属の有する融点より相当に低い温度でもその表面が溶融して、相互に焼結するようになる。
【0049】
(ハ)金属微粒子(P1)の融点
金属微粒子(P1)を構成する金属元素(M)のバルク状態の融点は420℃超えである。バルク状態の融点が420℃超えの金属微粒子(P1)を使用することにより、加熱して接合部を形成する際に溶融状態にある低融点金属粉(P2)と合金を形成し、冷却後に該接合部の融点を比較的高い温度に維持できて、耐熱性を向上することが可能になる。
【0050】
金属元素(M)のバルク状態の融点は、低融点金属粉(P2)のバルク状態の融点より高い温度であれば、上述した融点向上効果を得ることが可能になる。
【0051】
(ニ)金属微粒子(P1)の混合物
金属微粒子(P1)には、金属元素(M)と、酸化物や水酸化物などの酸素含有化合物との混合物であってもよい。酸素含有化合物とは、例えば、酸化第1銅、酸化第2銅、水酸化銅、酸化ニッケル、水酸化ニッケルなどである。また、金属元素(M)の酸化物や水酸化物は、加熱時に活性化剤(A)によって分解除去される。つまり、金属微粒子(P1)が酸素含有化合物等の混じった混合物であっても、活性化剤(A)が、金属元素(M)の酸素含有化合物等から酸素を奪うこととなる。
【0052】
(ホ)金属微粒子(P1)の表面被覆物
金属微粒子(P1)は、その表面が有機化合物で被覆されていてもよい。有機化合物は、官能基の非共有電子対を有する原子部分が、金属元素(M)からなる微粒子の表面に吸着して、分子層を形成することが知られている。つまり、金属微粒子(P1)の表面に被覆される有機化合物は、微粒子間の焼結を適度に妨げる効果や、金属微粒子の分散性を高める効果が期待される。具体的に、このような効果を発揮する有機化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、2−ピロリドン、及びアルキル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上が例示できるが、有機化合物は、前記効果を発揮するものであれば上記例示に限定されるものではない。また、接合の際に上記効果を示すためには有機化合物の沸点又は分解点は、低融点金属粉(P2)のバルク状態の融点以上であることが好ましい。
【0053】
また、金属元素(M)からなる微粒子の表面を有機化合物で被覆する方法は特に限定されるものではないが、有機化合物を含有した溶液中で該微粒子の表面を被覆する方法であることが好ましい。
【0054】
被覆方法の具体例として、還元反応水溶液中で金属元素(M)のイオン等を無電解還元又は電解還元により還元反応を行って、金属元素(M)からなる微粒子を製造する際に、還元反応水溶液中へ添加剤として有機化合物を配合しておく方法が挙げられる。この場合の有機化合物は、金属元素(M)が還元されて金属元素(M)の微粒子結晶核が顆粒状に生成するのを助長し、更に析出してくる金属元素(M)の微粒子を被覆して分散性を向上させ、顆粒状の結晶粒子がめっき膜状もしくはデンドライト状に成長するのを抑制する効果を発揮する。金属微粒子の一部が有機化合物で覆われている場合、分散性の効果と、顆粒状の結晶粒子がめっき膜状もしくはデンドライト状に成長するのを抑制する効果は顕著に発揮される。
【0055】
また、還元反応により生成した金属微粒子を、有機化合物が含まれる溶媒に添加して、有機化合物の追加被覆を行うことにより、有機化合物の被覆効果を向上することも可能である。このような有機化合物の追加被覆処理は、例えば、水、アルコール若しくはトルエンを溶媒とした有機化合物の溶液中へ添加して、撹拌することにより得ることができる。
【0056】
(2)低融点金属粉(P2)
低融点金属粉(P2)は、金属粒子含有組成物中に分散して存在している、バルク状態の融点が420℃以下の金属または合金からなる金属粉で、不可避的に酸素を含有する。具体的には、低融点金属粉(P2)は、製造工程もしくは空気酸化などの影響で表面もしくは内部に酸素原子を含有する。また、低融点金属粉(P2)は、加熱接合の際に、金属微粒子(P1)表面から金属元素(M)が拡散可能となった状態で金属元素(M)の全部又は一部と、溶融状態で合金を形成して、接合体を形成する。
【0057】
低融点金属粉(P2)は、加熱接合する際に比較的低温で溶融させるため、バルク状態の融点が420℃以下の金属または合金からなり、具体的には金属元素(M)と合金を形成することができて、低温での材料間の接合が可能なスズ金属粉、又は銅、銀、亜鉛、リン、アルミニウム、及びビスマスの中から選択される少なくとも1種がスズと固溶しているスズ合金粉であることが好ましい。また、低融点金属粉(P2)の一次粒子の粒子径は、加熱接合の際に速やかに溶融状態を形成させるため、500nm超え50μm以下であることが好ましい。
【0058】
低融点金属粉(P2)が不可避的に含有する酸素量について、図1を参照して説明する。図1は、低融点金属粉(P2)としてスズ粉末に形成される酸化膜の膜厚を一定と仮定した場合の、酸素量と粒径の関係を計算値で示した図である。より具体的に、図1では、粒径が10μmのスズ粉末の酸化量を0.035質量%と仮定し、酸化第一スズの膜厚が5.6nmとなることを条件として、酸素量と粒径の関係を示している。例えば、低融点金属粉(P2)の粒径が500nm超え50μm以下とすると、図1から明らかなように、0.005〜1質量%程度の酸素を不可避的に含有している。
【0059】
(3)金属粉(P3)
金属粉(P3)は一次粒子の粒子径が500nm超え50μm以下であり、かつ融点が420℃超えである金属元素(M)からなり、金属粒子含有組成物を構成する成分に含まれていても良い。金属元素としては、銅、銀、金、及びニッケルの中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0060】
(4)活性化剤(A)
活性化剤(A)は、金属粒子含有組成物により被接合体と接合する際に、低融点金属粉(P2)の融点付近の温度で低融点金属粉(P2)から酸素原子を除去する作用を発揮する。また、金属微粒子(P1)に酸素原子が含まれている場合には、金属微粒子(P1)から酸素原子を除去する作用も発揮する。
【0061】
活性化剤(A)としては、水の生成を伴わずに酸素原子と結合可能であり、酸素原子を除去する作用を発揮するリンまたは硫黄を分子構造中に一つ以上含んでいる化合物であれば使用可能である。特に、活性化剤(A)としては、少なくとも1つの炭素原子を分子構造中に含む、有機リン化合物(A1)または有機硫黄化合物(A2)であることが好ましい。
【0062】
ここで、有機リン化合物(A1)及び有機硫黄化合物(A2)が水の生成を伴わずに酸素原子と結合して酸素原子を除去する作用について説明する。
【0063】
下記の化学式(1)は、アルコール系の活性化剤を用いて酸素原子を除去した反応式である。下記の化学式(2)は、カルボキシル系の活性化剤を用いて酸素原子を除去した反応式である。下記の化学式(3)は、有機リン化合物(A1)の活性化剤を用いて酸素原子を除去した反応式である。下記の化学式(4)は、有機硫黄化合物(A2)の活性化剤を用いて酸素原子を除去した反応式である。ただし、下記の化学式(1)〜(4)において、Rは、それぞれ独立して、有機基を示し、Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。Meは金属元素を表す。
【0064】
【化1】
上記の化学式(1)及び(2)から明らかなとおり、アルコール系の活性化剤、及びカルボキシル系の活性化剤を用いた場合には、水の生成を伴って金属酸化物から酸素原子を除去する。一方、上記の化学式(3)及び(4)から明らかなとおり、有機リン化合物(A1)の活性化剤、及び有機硫黄化合物(A2)の活性化剤を用いた場合には、水の生成を伴わずに金属酸化物から酸素原子を除去することができる。
【0065】
また、有機リン化合物(A1)は、ホスフィン類及びホスファイト類の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。ホスフィン類として、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、4-(ジフェニルホスフィノ)スチレン、メチレンビス(ジフェニルホスフィン)、エチレンビス(ジフェニルホスフィン)、トリメチレンビス(ジフェニルホスフィン)、テトラメチレンビス(ジフェニルホスフィン)を用いることができる。また、ホスファイト類として、例えば、亜りん酸トリメチル、亜りん酸トリエチル、亜りん酸トリイソプロピル、亜りん酸トリブチル、亜りん酸トリオクチル、亜りん酸トリス(2-エチルヘキシル)、亜りん酸トリイソデシル、亜りん酸トリオレイル、亜りん酸トリフェニル、亜りん酸トリ-p-トリル、亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、亜りん酸トリステアリル、亜りん酸トリス(ノニルフェニル)、トリチオ亜りん酸トリラウリルを用いることができる。
【0066】
また、有機硫黄化合物(A2)はスルフィド類、ジスルフィド類、トリスルフィド類及びスルホキシド類の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。スルフィド類として、例えば、ビス(4-メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、2-メチルチオフェノチアジン、ジアリルスルフィド、エチル2-ヒドロキシエチルスルフィド、ジアミルスルフィド、ヘキシルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、n-オクチルスルフィド、フェニルスルフィド、4-(フェニルチオ)トルエン、フェニル p-トリルスルフィド、4-tert-ブチルジフェニルスルフィド、ジ-tert-ブチルスルフィド、ジフェニレンスルフィド、フルフリルスルフィド、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィドを用いることができる。また、ジスルフィド類として、例えば、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、アミルジスルフィド、ヘプチルジスルフィド、シクロヘキシルジスルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(3-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ベンジルジスルフィドを用いることができる。トリスルフィド類として、例えば、ジメチルトリスルフィド、ジイソプロピルトリスルフィドを用いることができる。スルホキシド類として、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジ-n-オクチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、p-トリルスルホキシドを用いることができる。
【0067】
また、ボイドの少ない緻密な接合状態を得るためには、低融点金属が溶融状態となるまで、金属粒子含有組成物中で活性化剤(A)を枯渇させないことが望ましい。このため、活性化剤(A)の沸点または分解点(T)は低融点金属粉(P2)の融点(Tp)と同等以上(T≧Tp)となるようにすることで、従来のはんだ付けのような低温の加熱でも、耐熱性が改良された高強度の接合状態を得ることが可能となる。具体的には、分子量に応じて沸点が異なる複数種類の活性剤(A)を組み合わせて、少なくとも一種類以上の活性剤(A)が上記T≧Tpの関係を満たすことが好ましい。
【0068】
(5)金属粒子含有組成物
(イ)金属粒子含有組成物の成分と組成
金属粒子含有組成物を構成する成分は、上記の通り、少なくとも金属微粒子(P1)、低融点金属粉(P2)、活性化剤(A)からなる。なお、粘度を調整するための溶媒を含んでいてもよいし、一次粒子の粒子径が500nm超え50μm以下であり、かつ融点が420℃超えである金属元素(M)からなる金属粉(P3)を含んでいてもよい。
【0069】
金属粒子含有組成物において、金属微粒子(P1)の含有量は、0.5〜80質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。金属微粒子(P1)の割合が0.5質量%未満であると接合層の融点向上効果が低下して耐熱性の向上が期待できなくなる虞がある。一方、金属微粒子(P1)の割合が80質量%を超えると金属微粒子(P1)同士の凝集が生じて低融点金属粉(P2)との合金層形成が不十分になる虞がある。
【0070】
金属粒子含有組成物において、金属微粒子(P1)と低融点金属粉(P2)を合わせた金属量(P1+P2)の割合(質量%)は、5〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましい。この金属量の割合が5質量%未満であると接合層の膜厚が不均一となってクラックやボイドが発生する虞がある。一方、この金属量の割合が95質量%を超えると活性化剤(A)の還元作用が低下して強度が不十分な接合状態になる虞がある。なお、金属微粒子(P1)と低融点金属粉(P2)の割合は、形成される合金・金属種に応じた値を用いることが望ましい。
【0071】
金属粒子含有組成物中の活性化剤(A)の含有割合は、上記金属量(P1+P2)との質量比(A/(P1+P2))で0.03〜1が好ましく、0.1〜0.3がより好ましい。この質量比が0.03未満であると活性化剤(A)の還元作用が十分に発揮されない虞がある。一方、この質量比が1を超えると未反応の活性化剤(A)が多く残存してしまい不均一な接合状態になる虞がある。
【0072】
(ロ)金属粒子含有組成物の製造方法
金属粒子含有組成物の製造方法としては、金属微粒子(P1)、低融点金属粉(P2)、及び活性化剤(A)を添加して、分散性を向上させるために、混錬手段を採用することが望ましい。混錬方法としては、公知の混錬方法を採用することができるが、遠心混錬方法と乳鉢混錬方法を併用するのが好ましい。混錬時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能で、混錬時間が長い方が分散性は向上する。なお、粘度を調整するための溶媒を加えてもよい。
【0073】
(ハ)金属粒子含有組成物の用途
本発明の金属粒子含有組成物は、電子材料用の導電性ペーストのように配線形成材料、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接合等に利用することができる。
【0074】
(6)金属粒子含有組成物から形成される接合体
上述した金属粒子含有組成物を被接合体の接合面に配置(又はパターニング)して、加熱、接合後に常温まで冷却して得られる接合体には、加熱温度、時間等の接合条件により、1〜20体積%程度の空隙率の接合層を形成することができる。上述した金属粒子含有組成物を使用して得られる接合体は、引張り強さ、ダイシェア強度等の機械的強度、及び耐熱性を向上することが可能になる。
【実施例】
【0075】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に本実施例、比較例における評価方法を記載する。
【0076】
(1)金属微粒子(P1)の一次粒子径の測定方法
実施例1〜12、及び比較例1〜8における、「一次粒子径の範囲」は、走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))を使用した観察により、任意に100個の観察可能な微粒子の一次粒子径の測定値の範囲であり、「微粒子の平均一次粒子径」とは数平均粒子径である。観察用試料の調製は、エタノールに分散した微粒子をフィルターに通過させながら溶媒を乾燥除去した後、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。
【0077】
(2)金属微粒子(P1)の金属組成の同定方法
走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(SEM−EDX)を使用して、微粒子に対して金属組成の分析を実施した。また、X線回折測定装置((株)リガク製、型式:Geigerflex RAD-A)を用いた、X線源としてCuKαを用いたX線回折測定による微粒子の基本的な結晶構造分析も必要に応じて行った。
【0078】
(3)金属微粒子(P1)表面の有機化合物の同定方法
金属微粒子(P1)表面の有機化合物の同定は、顕微ラマン分光装置((株)東京インスツルメンツ製、型式:Nanofinder@30)とフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、型式:FT/IR−4100)を用いて解析した。なお、顕微ラマン分光装置では必要に応じて、局在表面プラズモン共鳴によってラマン散乱強度を高めることが可能なナノサイズの凹凸構造体(Ag又はCu)に試料を塗布して解析した。また、被覆物である有機化合物の含有量は、炭素・硫黄分析計((株)堀場製作所製、型式:EMIA−920V2)を用いて、金属微粒子(P1)中における有機化合物の割合([有機化合物/金属微粒子(P1)]×100(質量%))を求めた。ただし、測定値が作成した検量線や分析装置の検出限界を下回る場合には、原則的に測定対象の物質は未検出として算出した。
【0079】
[実施例1]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ粉末(100%Sn)、活性化剤(A)として亜りん酸トリオクチルが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0080】
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)200g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)13.6gを使用して、還元反応水溶液10Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.5であった。
【0081】
次に、この溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温25℃で、電流密度15A/dmで15分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、エタノール洗浄と水洗浄して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0082】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、20〜400nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0083】
(ロ)銅微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、有機化合物に帰属する明瞭なピークは検出されなかった。
【0084】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径55nmの銅微粒子2.7g、平均一次粒径5μmのスズ粉末10.8g、亜りん酸トリオクチル1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0085】
[実施例2]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ粉末(100%Sn)、金属粉(P3)として銅粉末(100%Cu)、活性化剤(A)として亜りん酸トリフェニルが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0086】
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)200g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)13.6gを使用して、還元反応水溶液10Lを調製した。この還元反応水溶液のpHは約5.5であった。
【0087】
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温40℃で、電流密度10A/dmで15分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、エタノール洗浄と水洗浄して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0088】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、80〜500nmの範囲で、平均一次粒子径は200nmであった。また、銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0089】
(ロ)銅微粒子の被覆物の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、有機化合物に帰属する明瞭なピークは検出されなかった。
【0090】
(3)金属粒子含有組成物の調製
得られた平均一次粒径200nmの銅微粒子2.7g、平均一次粒径1μmの銅粉末0.3g、平均一次粒径5μmのスズ粉末10.8g、亜りん酸トリフェニル1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0091】
[実施例3]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ粉末(100%Sn)、金属粉(P3)として銅粉末(100%Cu)、活性化剤(A)として亜りん酸トリス(ノニルフェニル)が含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0092】
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)200g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン300g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)16gを使用して、還元反応水溶液10Lを調製した。該還元反応水溶液のpHは約5.8であった。
【0093】
次に、この溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温25℃で、電流密度15A/dmで10分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、エタノール洗浄と水洗浄して溶媒を乾燥除去した後、4.5gの銅微粒子を得た。
【0094】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、1〜80nmの範囲で、平均一次粒子径は15nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0095】
(ロ)銅微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、N−ビニル−2−ピロリドンで被覆された金属微粒子(P1)中の有機分散剤の割合は、2質量%であった。
【0096】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径15nmの銅微粒子0.44g、平均一次粒径5μmの銅粉末3.33g、平均一次粒径5μmのスズ粉末8.8g、亜りん酸トリス(ノニルフェニル)1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0097】
[実施例4]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として無電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ粉末(100%Sn)、活性化剤(A)として亜りん酸トリオクチルが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0098】
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として水酸化銅14.6g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン5gを蒸留水960gへ添加して撹拌した後、この水溶液を窒素ガス雰囲気中に移した。次に、水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として上記水溶液へ添加することで還元反応水溶液1L(リットル)を調製した。調製した還元反応水溶液の酸化還元電位は標準水素電極基準で−400mV以下、pHは約13であった。この還元反応水溶液を撹拌しながら浴温20℃で60分の間、酸化還元電位を−400mV以下となるように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた結果、溶液中に銅微粒子が析出した。得られた銅微粒子分散水溶液を遠心分離機に入れ、銅微粒子成分を沈殿回収した。回収した銅微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で銅微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0099】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、20〜200nmの範囲で、平均一次粒子径は35nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0100】
(ロ)銅微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、ポリビニルピロリドンで被覆された金属微粒子(P1)中の有機分散剤の割合は、0.1質量%であった。
【0101】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径35nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径5μmのスズ粉末8.8g、亜りん酸トリオクチル1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0102】
[実施例5]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として無電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ−銀−銅粉末(96.5%Sn−3%Ag−0.5%Cu)、活性化剤(A)としてフェニルスルフィドが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0103】
(1)銅微粒子の調製
実施例4と同様にして、銅微粒子を得た。
【0104】
(2)生成した銅微粒子の評価
実施例4と同様の評価が得られた。
【0105】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径35nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径10μmのスズ−銀−銅粉末8.8g、フェニルスルフィド1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0106】
[実施例6]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として無電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ−亜鉛−アルミニウム粉末(91.99%Sn−8%Zn−0.01%Al)、活性化剤(A)としてフェニルスルフィドとトリチオ亜りん酸トリラウリルが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0107】
(1)銅微粒子の調製
実施例4と同様にして、銅微粒子を得た。
【0108】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
実施例4と同様の評価が得られた。
【0109】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径35nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径10μmのスズ−亜鉛−アルミニウム粉末8.8g、フェニルスルフィド1.4g、トリチオ亜りん酸トリラウリル0.1gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0110】
[実施例7]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として無電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ−ビスマス粉末(42%Sn−58%Bi)、活性化剤(A)として亜りん酸トリブチルが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0111】
(1)銅微粒子の調製
有機分散剤としてポリビニルピロリドン70g、酸化還元電位を−800mV以下となるように制御し、その他の条件については実施例4と同様にして、銅微粒子を得た。
【0112】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、1〜50nmの範囲で、平均一次粒子径は15nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0113】
(ロ)銅微粒子の被覆物の同定
上記(1)得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、ポリビニルピロリドンで被覆された金属微粒子(P1)中の有機分散剤の割合は、10質量%であった。
【0114】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径15nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径0.55μmのスズ−ビスマス粉末8.8g、亜りん酸トリブチル1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0115】
[実施例8]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として無電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)として亜鉛粉末(100%Zn)、活性化剤(A)として亜りん酸トリス(ノニルフェニル)、4-(ジフェニルホスフィノ)スチレンが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0116】
(1)銅微粒子の調製
有機分散剤としてポリビニルピロリドン5gとポリアクリルアミド100g、酸化還元電位を−300mV以下となるように制御し、その他の条件については実施例4と同様にして、銅微粒子を得た。
【0117】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、40〜500nmの範囲で、平均一次粒子径は70nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0118】
(ロ)銅微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)とポリアクリルアミドに帰属するピークが検出された。炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、ポリビニルピロリドンとポリアクリルアミドで被覆された金属微粒子(P1)中の有機分散剤の割合は、30質量%であった。
【0119】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径70nmの銅微粒子1.8g、平均一次粒径5μmの亜鉛粉末10.2g、亜りん酸トリス(ノニルフェニル)1.6g、4-(ジフェニルホスフィノ)スチレン0.1gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0120】
[実施例9]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として電解還元反応により生成した銅微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ−亜鉛−ビスマス粉末(89%Sn−8%Zn−3%Bi)、活性化剤(A)としてジヘキシルスルフィドが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0121】
(1)銅微粒子の調製
有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン200g、N−メチル−2−ピロリドン200gとなるように制御し、その他の条件については実施例4と同様にして、銅微粒子を得た。
【0122】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、1〜100nmの範囲で、平均一次粒子径は25nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0123】
(ロ)銅微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンとN−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、N−ビニル−2−ピロリドンとN−メチル−2−ピロリドンで被覆された金属微粒子(P1)中の有機分散剤の割合は、3質量%であった。
【0124】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径25nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径5μmのスズ−亜鉛−ビスマス粉末8.8g、ジヘキシルスルフィド1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0125】
[実施例10]
表1に示すように、金属微粒子(P1)として電解還元反応により生成した銅-ニッケル合金微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ−亜鉛−ビスマス粉末(89%Sn−8%Zn−3%Bi)、活性化剤(A)として亜りん酸トリス(ノニルフェニル)が含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0126】
(1)銅−ニッケル合金微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、ニッケルの供給源として酢酸ニッケル(II)の4水和物2.6gを添加し、その他の条件については実施例4と同様にして、銅−ニッケル合金微粒子を得た。
【0127】
(2)生成した銅−ニッケル合金微粒子の評価
(イ)銅-ニッケル合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径は、30〜150nmの範囲で、平均一次粒子径は50nmであった。また、該銅−ニッケル合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、ニッケル10質量%(以下、銅−10%ニッケル合金のように表示することがある。)であった。
【0128】
(ロ)銅−ニッケル合金微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた銅−ニッケル合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。炭素・硫黄分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、N−ビニル−2−ピロリドンで被覆された金属微粒子(P1)中の有機分散剤の割合は、1質量%であった。
【0129】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径50nmの銅−ニッケル合金微粒子2.2g、平均一次粒径5μmのスズ−亜鉛−ビスマス粉末8.8g、亜りん酸トリス(ノニルフェニル)1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0130】
[実施例11]
表1に示すように、金属微粒子(P1)としてポリオール還元反応により生成した金微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ粉末(100%Sn)、活性化剤(A)として亜りん酸トリス(ノニルフェニル)が含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0131】
(1)金微粒子の調製
金属元素である金の供給源として塩化金酸4水和物12g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン50gとポリビニルアルコール1gをエチレングリコール500gへ添加することで還元反応溶液を調製した。調製した還元反応溶液を撹拌しながら浴温130℃で60分の間、反応させ続けた結果、溶液中に金微粒子が析出した。得られた金微粒子分散液をエタノールで希釈してから遠心分離機に入れ、金微粒子成分を沈殿回収した。回収した金微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で金微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、2.9gの金微粒子を得た。
【0132】
(2)生成した金微粒子の評価
(イ)金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した金微粒子の一次粒子径は、5〜100nmの範囲で、平均一次粒子径は25nmであった。また、該金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、金100質量%であった。
【0133】
(ロ)金微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。炭素・硫黄分析計を用いた金微粒子の分析では、ポリビニルピロリドンで被覆された金属微粒子(P1)中の有機分散剤の割合は、1質量%であった。
【0134】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径25nmの金微粒子8g、平均一次粒径50μmのスズ粉末2g、亜りん酸トリス(ノニルフェニル)2.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0135】
[実施例12]
表1に示すように、金属微粒子(P1)としてポリオール還元反応により生成した銀微粒子、低融点金属粉(P2)としてスズ粉末(100%Sn)、金属粉(P3)として銀粉末(100%Ag)、活性化剤(A)として亜りん酸トリス(ノニルフェニル)が含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。
【0136】
(1)銀微粒子の調製
金属元素である銀の供給源として硝酸銀7g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン50gとポリビニルアルコール1gをエチレングリコール500gへ添加することで還元反応溶液を調製した。調製した還元反応溶液を撹拌しながら浴温130℃で60分の間、反応させ続けた結果、溶液中に銀微粒子が析出した。得られた銀微粒子分散液をエタノールで希釈してから遠心分離機に入れ、銀微粒子成分を沈殿回収した。回収した銀微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で銀微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、2.8gの銀微粒子を得た。
【0137】
(2)生成した銀微粒子の評価
(イ)銀微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銀微粒子の一次粒子径は、5〜120nmの範囲で、平均一次粒子径は35nmであった。また、該銀微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銀100質量%であった。
【0138】
(ロ)金微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた銀微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。炭素・硫黄分析計を用いた銀微粒子の分析では、ポリビニルピロリドンで被覆された金属微粒子(P1)中の有機分散剤の割合は、1.2質量%であった。
【0139】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径35nmの銀微粒子6.6g、平均一次粒径50μmの銀粉末0.2g、平均一次粒径50μmのスズ粉末4.4g、亜りん酸トリス(ノニルフェニル)1.9gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0140】
[比較例1]
表1に示すように、低融点金属粉としてスズ粉末(100%Sn)の代わりにアンチモン粉末(100%Sb)とした以外は実施例4と同様にして、金属粒子含有組成物を調製した。
【0141】
(1)銅微粒子の調製
実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0142】
(2)生成した銅微粒子の評価
実施例4と同様の評価結果が得られた。
【0143】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径35nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径5μmのアンチモン粉末8.8g、亜りん酸トリオクチル1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0144】
[比較例2]
表1に示すように、活性化剤として、亜りん酸トリオクチルの代わりにn-オクタン酸とした以外は実施例4と同様にして、金属粒子含有組成物を調製した。
【0145】
(1)銅微粒子の調製
実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0146】
(2)生成した銅微粒子の評価
実施例4と同様の評価結果が得られた。
【0147】
(3)金属粒子含有組成物の調製
得られた平均一次粒径35nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径5μmのスズ粉末8.8g、n-オクタン酸1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0148】
[比較例3]
表1に示すように、活性化剤として亜りん酸トリオクチルの代わりにジエチレングリコールとした以外は実施例4と同様にして、金属粒子含有組成物を調製した。
【0149】
(1)銅微粒子の調製
実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0150】
(2)生成した銅微粒子の評価
実施例4と同様の評価結果が得られた。
【0151】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径35nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径5μmのスズ粉末8.8g、ジエチレングリコール1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0152】
[比較例4]
表1に示すように、活性化剤として亜りん酸トリオクチルの代わりにトリブチルホスフィンオキシドとした以外は実施例4と同様にして、金属粒子含有組成物を調製した。
【0153】
(1)銅微粒子の調製
実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0154】
(2)生成した銅微粒子の評価
実施例4と同様の評価結果が得られた。
【0155】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径35nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径5μmのスズ粉末8.8g、トリブチルホスフィンオキシド0.5g、粘度調整剤としてヘキサン1gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0156】
[比較例5]
表1に示すように、活性化剤として亜りん酸トリオクチルの代わりにイソプロピルメチルスルホンとした以外は実施例4と同様にして、金属粒子含有組成物を調製した。
【0157】
(1)銅微粒子の調製
実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0158】
(2)生成した銅微粒子の評価
実施例4と同様の評価結果が得られた。
【0159】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径35nmの銅微粒子2.2g、平均一次粒径5μmのスズ粉末8.8g、イソプロピルメチルスルホン1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0160】
[比較例6]
表1に示すように、銅微粒子の一次粒子径が500nmを超えるようにした以外は実施例2と同様にして、金属粒子含有組成物を調製した。
【0161】
(1)銅微粒子の調製
酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)を1g、浴温を60℃に制御し、その他の条件については実施例2と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0162】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、550〜2000nmの範囲で、平均一次粒子径は900nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0163】
(ロ)銅微粒子の被覆物の同定
上記(1)で得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、有機化合物に帰属する明瞭なピークは検出されなかった。
【0164】
(3)金属粒子含有組成物の調製
上記(1)で得られた平均一次粒径900nmの銅微粒子2.7g、平均一次粒径5μmのスズ粉末10.8g、亜りん酸トリフェニル1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0165】
[比較例7]
表1に示すように、銅微粒子を使用しなかった以外は比較例3と同様にして、金属粒子含有組成物を調製した。つまり、平均粒径5μmのスズ粉末11g、ジエチレングリコール1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0166】
[比較例8]
表1に示すように、金属微粒子(P1)を使用せずに、低融点金属粉としてスズ粉末(100%Sn)と亜鉛粉末(100%Zn)、活性化剤(A)として亜りん酸トリオクチルが含まれるように金属粒子含有組成物を調製した。つまり、平均粒径5μmのスズ粉末8.8g、平均粒径5μmの亜鉛粉末2.2g、亜りん酸トリオクチル1.5gを窒素雰囲気下で混合して、乳鉢と乳棒による混練処理を施すことで金属粒子含有組成物を調製した。
【0167】
【表1】
【0168】
[評価試験]
以上の実施例1〜12および比較例1〜8で調製した金属粒子含有組成物について、以下の評価試験を行った。
【0169】
(1)溶け込み反応の評価試験
実施例1〜12および比較例1〜8でそれぞれ調製した金属粒子含有組成物を用いて、金属微粒子(P1)の主成分である金属元素(M)の低融点金属粉(P2)への溶け込みの反応性の評価を行った。
【0170】
まず、上記実施例1〜12および比較例1〜8でそれぞれ得られた金属粒子含有組成物を銅基板(サイズ:2cm×2cm)に加熱後の厚みが20〜300μmとなるように乾燥塗布した。その後、銅基板(サイズ:2cm×2cm)を塗布膜上に載せた試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気または大気雰囲気において、250〜430℃の温度範囲で10〜60分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結体を介して金属製の板材と銅基板とを接合した。
【0171】
上記工程により得られた接合体試料の断面構造を観察し、接合層に金属微粒子(P1)または低融点金属粉(P2)の粒子形状が観察されない場合を良好、金属微粒子(P1)または低融点金属粉(P2)が粒子形状を保ったままの場合を不良と判断した。実施例1〜12および比較例1〜8の評価結果を表2に示す。
【0172】
(2)板材の接合評価試験
上記実施例1〜12および比較例1〜8でそれぞれ得られた金属粒子含有組成物を用いて接合した板材の接合評価を行った。
【0173】
まず、上記実施例1〜12および比較例1〜8でそれぞれ得られた金属粒子含有組成物を金属基板(サイズ:2cm×10cm)に加熱後の接合面積が2cm×2cm、加熱後の接合部材の厚みが20〜300μmとなるように塗布した。その後、金属基板(サイズ:2cm×10cm)を塗布膜上に載せた試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気または大気雰囲気において、250〜430℃の温度範囲で10〜60分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結体を介して金属製の板材と銅基板とを接合した。
【0174】
上記工程により得られた接合体試料を、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に準拠した方法により、接合された接合部の引張り強度を評価した。
【0175】
また、接合部の断面SEM像を撮影した。断面SEM像の具体例を、図2乃至図4に示す。つまり、図2は、実施例4で調製したサンプルを用いて銅板101、102を接合した断面SEM像であって、銅−スズ合金相111と、スズリッチ相112とボイド113を示している。図3は、比較例4で調製したサンプルを用いて銅板201、202を接合した断面SEM像であって、スズリッチ相211とボイド212とを示している。図4は、比較例7で調製したサンプルを用いて銅板301、302を接合した断面SEM像であって、スズリッチ相311とボイド312とを示している。実施例1〜12および比較例1〜8をそれぞれ用いて銅板を接合した接合部について、撮影した画像の空隙部分のピクセルを黒、空隙部分以外の部分を白の2階調化した後に、画像数値化ソフトを利用して空隙率を数値データ化した。実施例1〜12および比較例1〜8の評価結果を表2に示す。
【0176】
(3)チップ接合評価
上記実施例1〜12および比較例1〜8でそれぞれ得られた金属粒子含有組成物を用いて基板表面に接合されたシリコンチップの接合評価を行った。
【0177】
まず、上記実施例1〜12および比較例1〜8でそれぞれ得られた金属粒子含有組成物を銅基板(サイズ:2cm×2cm)に加熱後の接合部材の厚みが20〜300μmとなるように乾燥塗布した。その後、半導体シリコンチップ(サイズ:4mm×4mm)を4MPaの加圧力で塗布膜上に押し付けた試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気または大気雰囲気において、250〜430℃の温度範囲で10〜60分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結体を介して半導体素子と導体基板とを接合した。
【0178】
上記工程により基板表面に接合されたシリコンチップを米国MIL‐STD‐883に準拠したダイシェア強度評価装置を用いて、25℃において、ダイシェア強度を評価した。実施例1〜12および比較例1〜8の評価結果を下記の表2に示す。
【0179】
【表2】
【0180】
[評価結果に対する考察]
板材の接合評価において、本発明の構成を満たした金属粒子含有組成物を用いた実施例では明らかに比較例よりも接合強度が良好であった。接合部の空隙率も実施例のほうが低い傾向となった。さらに、チップ接合評価でも比較例よりも実施例の方がダイシェア強度が高かった。
【0181】
このように実施例で良好な接合強度を実現できるのは、原子価の増加に伴って酸素原子と結合するリンまたは硫黄を分子構造中に一つ以上含んでいる活性化剤(A)を用いることで、水の生成を伴わずに酸素原子を除去して低融点金属粉(P2)を活性化することができる。すなわち、活性化剤(A)に含まれるリンまたは硫黄が直接的に酸素原子と結合する際にリンまたは硫黄の原子価が増加する変化を伴うのみで、活性化剤(A)から水などの余分な副生成物が発生しないのである。酸素原子を取り込んだ後の活性化剤(A)は金属微粒子の触媒作用によって揮発しやすい低分子量の有機物へと分解される効果も示すのでボイド形成を抑制しながらも有機物残渣を少なくすることが可能となる。
【0182】
以上のように、本発明の構成の金属粒子含有組成物を用いることで、材料の接合強度を大きく向上させることが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0183】
101、102、201、202、301、302 銅板
111 銅−スズ合金相
112、211、311 スズリッチ相
113、212、312 ボイド
【要約】
比較的低温で電子部品等の金属間の高強度の接合が可能な金属粒子含有組成物を提供する。一次粒子の粒子径が1nm以上500nm以下であり、かつバルクの融点が420℃超えである金属元素(M)を含む金属微粒子(P1)と、融点が420℃以下の金属又は合金からなり、不可避的に酸素を含有する低融点金属粉(P2)と、水の生成を伴わずに酸素原子と結合可能なリン又は硫黄を分子構造中に一つ以上含んでいる活性化剤(A)とで構成していることを特徴とする金属粒子含有組成物。
図1
図2
図3
図4