【文献】
P. M. Anisimov et al.,Influence of Transverse Magnetic Fields and Depletion of Working Levels on the Nonlinear Resonance Farady Effect,Journal of Experimental and Theoretical Physics,2003年11月,vol.97, no.5,pp.868-874
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルカリ金属セルに入射するレーザ光は、前記光源と前記アルカリ金属セルとの間に設置された光強度変調器によりパルス列状に強度変調されていることを特徴とする請求項1に記載の原子発振器。
前記アルカリ金属セルに入射するレーザ光は、前記光源と前記アルカリ金属セルとの間に設置された光強度変調器によりパルス列状に強度変調されていることを特徴とする請求項8に記載のCPT共鳴の検出方法。
前記アルカリ金属セルに入射するレーザ光は,前記光源と前記アルカリ金属セルとの間に設置された光強度変調器によりパルス列状に強度変調されていることを特徴とする請求項15または16に記載の磁気センサ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0009】
〔第1の実施の形態〕
ところで、原子発振器は、一般に高い周波数安定度が要求され、各種無線機器の基地局用基準発信源等として用いる場合には、特に、短期安定度が重要となる。周波数安定度の指標として用いられるアラン標準偏差において、短期安定度σ
y(τ)は、数1に示される式で表わされる。ここで、Qは原子共鳴の共振Q値であり、数2に示される式で表わされる。尚、f
RFはRF周波数であり、FWHM(full width at half maximum)はRF周波数f
RFにおける半値全幅、τは積算時間を示す。また、S/Nは、S(シグナル)/N(ノイズ)比であり、具体的には、RF周波数f
RFの強度とノイズとの比を示すものであり、本実施の形態においては、コントラストCtと記載する場合がある。また、
図1は、CPT共鳴の説明図を示す。
【0011】
【数2】
以上より、数1に示される短期安定度σ
y(τ)は、更に、数3に示される式で表わされる。
【0012】
【数3】
数3に示される式より、短期安定度σ
y(τ)は、原子共鳴の共振Q値とコントラストCt(S/N比)に依存して定まる。即ち、原子共鳴の共振Q値、または、コントラストCtを大きくすることにより、短期安定度σ
y(τ)を小さくすることができる。しかしながら、CPT共鳴を励起する場合には、励起用レーザ光の強度を高くすることにより、大きな共鳴振幅を得ることは可能ではあるが、同時に、パワーブロードニング効果により線幅が広がってしまう。従って、一般的には、Q値の向上とコントラストCt(S/N比)の向上とは、トレードオフの関係にある。
【0013】
本実施の形態における原子発振器は、原子共鳴の共振Q値とコントラストCt(S/N比)のうち、コントラストCt(S/N比)を高くすることにより、原子発振器の安定性を高めたものである。
【0014】
(原子発振器)
次に、
図2に基づき本実施の形態における原子発振器の構造について説明する。本実施の形態における原子発振器は、レーザ光源110、コリメートレンズ120、第1の偏光板131、第2の偏光板132、アルカリ金属セル140、光検出器150等を有している。尚、本実施の形態における原子発振器は、レーザ光源110を周波数変調させることによりサイドバンドを発生させ、このサイドバンドである2つの異なる波長のレーザ光をアルカリ金属セル140に入射させる。これにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により変調周波数を制御するものである。
【0015】
レーザ光源110は、励起用のレーザ光源であり、本実施の形態においては、面発光半導体レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)が用いられている。レーザ光源110より出射されるレーザ光は、
133CsのD
1線と略等しい波長が895nmのレーザ光である。尚、VCSELは、小型で、かつ、低消費電力でレーザ光を出射させることができるため、VCSELをレーザ光源110に用いた場合、より一層消費電力を低くすることができるため好ましい。
【0016】
アルカリ金属セル140は、例えば、直径22.5mm、光路長20.0mmの円筒型の形状で形成されている。アルカリ金属セル140には、アルカリ原子CsとバッファガスとしてNeが封入されており、アルカリ金属セル140の内部の圧力が、約4.0kPaとなっている。
【0017】
本実施の形態においては、レーザ光源110より出射されたレーザ光は、コリメートレンズ120、第1の偏光板131を介し、直径が約5mmのビーム径のレーザ光となりアルカリ金属セル140に入射する。アルカリ金属セル140に入射したレーザ光は、アルカリ金属セル140を透過し、第2の偏光板132を透過した光が、フォトダイオード等からなる光検出器150により検出される。
【0018】
本実施の形態では、レーザ光源110より出射されるレーザ光の波長を安定化させるために、ロックインアンプ161によるロックイン検波を行い、レーザ光源110であるVCSELを駆動する電流量をカレントドライブ162等により制御している。この制御では、アルカリ金属セル140におけるアルカリ原子の吸収量が最大となるように制御している。また、レーザ光源110であるVCSELの温度は、一定に保たれている。尚、このような動作のため、ロックインアンプ161及びカレントドライブ162には、ファンクションジェネレータ163が接続されている。
【0019】
アルカリ金属セル140には、磁場に対して最も変動の少ないCPT共鳴を測定するため、不図示のヘルムホルツコイルにより、磁束密度Bが32μTとなる静磁場が印加されており、ゼーマン分裂させることでCPT共鳴を選別している。また、地磁気などによる外部磁場を遮断するため、アルカリ金属セル140及びヘルムホルツコイルを磁気シールドで覆い、温度槽141内に設置して温度を一定に保っている。本実施の形態においては、アルカリ金属セル140の温度は、30℃から55℃までの範囲に保たれており、例えば、最もCPT共鳴のコントラストが高くなる42.00℃の温度に保たれている。尚、本願においては、磁場と記載した場合には、磁束密度Bを意味する。CPT共鳴の励起用レーザ光は、ゼーマン副準位の偏りを避けるため、第1の偏光板131により直線偏光のレーザ光となっている。本実施の形態においては、
図3に示されるように、|F=3,m=−1),|F=4,m=1)と|F=3,m=1),|F=4,m=−1)の2つのCPT共鳴が重畳した共鳴が観測される。即ち、一点鎖線において示されるCPT共鳴CPTaと、実線で示されるCPT共鳴CPTbとが観測される。
【0020】
また、検出されたレーザ光の光量に対応した光検出器150からの出力は、DMM(Digital Multi Meter)171、オシロスコープ172を介し、コンピュータ(PC)等からなる制御部173に入力している。また、制御部173からは、アナログシグナルジェネレータ174に制御信号が送られる。また、測定器の基準周波数源にはCs一次標準器175が用いられており、アナログシグナルジェネレータ174に接続されている。
【0021】
本実施の形態における原子発振器は、レーザ光源110となる面発光半導体レーザにRFを印加してFM変調させ、このFM変調により生じたサイドバンドをCPT共鳴に用いるものである。このような原子発振器において、コントラストCt(S/N比)を高くする場合、一般的に光学系が複雑なものとなる。このように光学系が複雑なものとなると、原子発振器が大型で高コストなものとなるため好ましくない。
【0022】
次に、一般的な原子発振器において、コントラストCt(S/N比)をあまり高くすることができない理由について説明する。
図4に示されるように、CPT方式の原子発振器は、レーザ光源110より出射されたレーザ光が、アルカリ金属セル140に入射し、このうちCPT共鳴に寄与する波長のレーザ光の一部がアルカリ金属セル140内におけるアルカリ金属と相互作用する。このように、アルカリ金属セル140内におけるアルカリ金属と相互作用した光は、フォトダイオード等の光検出器150において、信号(S)として検出される。
【0023】
また、レーザ光源110から出射されたレーザ光のうち、CPT共鳴に寄与する波長のレーザ光であっても原子と相互作用していない光や、CPT共鳴に寄与しない波長のレーザ光もアルカリ金属セル140を透過する。このように、アルカリ金属セル140を透過したCPT共鳴に寄与する波長のレーザ光であって原子と相互作用していない光や、CPT共鳴に寄与しない波長のレーザ光は、光検出器150において、ノイズ(N)として検出される。このような、光検出器150において、ノイズ(N)として検出される光の成分が多いと、コントラストが低下してしまう。
図5は、光検出器150に入射するレーザ光の周波数と光検出器150により検出される光量との関係を示す。
【0024】
本実施の形態における原子発振器においては、
図6に示されるように、レーザ光源110とアルカリ金属セル140との間に、第1の偏光板131が設置されており、アルカリ金属セル140と光検出器150との間には、第2の偏光板132が設置されている。本実施の形態においては、
図7に示されるように、第1の偏光板131は、入射した光のうちX軸方向の偏光方向の光を透過するように設置されており、第2の偏光板132は、入射した光のうちY軸方向の偏光方向の光を透過するように設置されている。即ち、第1の偏光板131の偏光方向と、第2の偏光板132の偏光方向とが直交するように、第1の偏光板131及び第2の偏光板132が設置されている。
【0025】
ところで、第1の偏光板131を透過し、アルカリ金属セル140に入射したレーザ光のうち、アルカリ金属セル140内におけるアルカリ金属原子と相互作用したレーザ光は、アルカリ金属原子との相互作用により、ファラデー効果を受ける。このように、ファラデー効果を受けたレーザ光は、偏光方向が回転するため、
図8に示されるように、一部が第2の偏光板132を透過し、光検出器150において検出される。これに対し、CPT共鳴に寄与する波長のレーザ光であっても原子と相互作用していない光や、CPT共鳴に寄与しない波長のレーザ光は、偏光方向が変化しないため、第2の偏光板132を殆ど透過することはなく、光検出器150において検出されない。このように、本実施の形態においては、CPT共鳴とは関係のないCPT共鳴に寄与する波長のレーザ光であっても原子と相互作用していない光や、CPT共鳴に寄与しない波長のレーザ光が、光検出器150において検出されない。よって、ノイズを少なくすることができるため、S/N比を向上させることができる。
【0026】
(印加される磁場による影響)
前述した
図3は、
133CsのD
1線におけるエネルギー準位図であり、直線偏光により励起される2つのCPT共鳴CPTa、CPTbを示している。即ち、直線偏光の光をアルカリ金属セル140に入射することにより、一点鎖線で示されるCPT共鳴CPTaと、実線で示されるCPT共鳴CPTbとが励起され、
図9に示されるように、2つのCPT共鳴CPTa、CPTbが重なり合った信号が観測される。尚、
図9は、アルカリ金属セル140に印加される磁束密度とf
hfsとの関係を示すものである。また、アルカリ金属セル140に印加される静磁場は、磁束がアルカリ金属セル140に入射するレーザ光の進行方向と平行となるように印加されている。
【0027】
また、
図10に示されるように、アルカリ金属セル140に印加される磁束密度と2つのCPT共鳴における周波数差(f
a−f
b)とは線形の関係にあり、磁束密度を高くすることにより2つのCPT共鳴における周波数差(f
a−f
b)を大きくすることができる。従って、周波数差(f
a−f
b)を精度よく検出するためには、アルカリ金属セル140に印加される磁束密度としては、10μT以上であることが好ましい。尚、アルカリ金属セル140に円偏光の光を入射させた場合には、
図11に示されるように、励起されるCPT共鳴は1つである。
【0028】
数4は、2つのCPT共鳴における周波数差(f
a−f
b)と磁束密度Bとの関係を示す式であり、計算により得られたものである。周波数f
aは、
図3において一点鎖線で示されるCPT共鳴CPTaによるものであり、周波数f
bは、実線で示されるCPT共鳴CPTbによるものである。
【0029】
【数4】
次に、
図12、
図13、
図14に基づき磁束密度Bが、B<0、B=0、B>0の場合におけるファラデー回転角について説明する。
図13に示されるように磁場が印加されていない場合、即ち、磁束密度Bが0の場合では、CPT共鳴CPTaとCPT共鳴CPTbとが打ち消しあう。よって、
図13(b)に示されるようにCPT共鳴CPTa+CPT共鳴CPTbにおけるファラデー回転角の変化は殆ど検出されない。
【0030】
これに対し、
図12に示されるように、印加される磁場が負である場合、即ち、磁束密度B<0である場合には、CPT共鳴CPTaとCPT共鳴CPTbとにおけるファラデー効果が重なり合う。よって、
図12(b)に示されるように特定の周波数において、CPT共鳴CPTa+CPT共鳴CPTbにおけるファラデー回転角の変化が大きくなり検出しやすくなる。同様に、
図14に示されるように、印加される磁場が正である場合、即ち、磁束密度B>0である場合には、CPT共鳴CPTaとCPT共鳴CPTbとにおけるファラデー効果が重なり合う。よって、
図14(b)に示されるように特定の周波数において、CPT共鳴CPTa+CPT共鳴CPTbにおけるファラデー回転角の変化が大きくなり、検出しやすくなる。
【0031】
尚、本実施の形態における説明では、第1の偏光板131における偏光方向と第2の偏光板132における偏光方向とが直交する場合について説明した。しかしながら、第1の偏光板131の偏光方向と第2の偏光板132の偏光方向とが異なっていれば、程度の違いはあるものの、本実施の形態における効果と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態における原子発振器は、レーザ光源110より出射されるレーザ光が直線偏光である場合には、第1の偏光板131を設置することなく、第2の偏光板132のみを設置してもよい。この場合、レーザ光源110より出射されるレーザ光の偏光方向と第2の偏光板132における偏光方向とが異なる方向となるように設置する。この際、レーザ光源110より出射されるレーザ光の偏光方向と第2の偏光板132における偏光方向とが直交するように設置することが好ましい。
【0032】
(実施例)
次に、本実施の形態における実施例として、
図2に示される構成の原子発振器と同様の構成の測定装置を用いて、実験を行った。レーザ光源110となる励起用レーザには、面発光半導体レーザ(VCSEL)を用いた。レーザ光の波長は
133CsのD
1線(895nm)である。アルカリ金属セル140に入射するレーザ光の強度は、1.1mW/cm
2である。アルカリ金属セル140は、直径が22.5mm、光路長が20.0mmの円筒型で、アルカリ金属としてCs原子とバッファガスとしてNeとが封入されており、圧力が4kPaとなっている。アルカリ金属セル140に入射するレーザ光のビーム径は、直径5mmであり、アルカリ金属セル140にレーザ光を入射させることにより、アルカリ金属セル140を透過する。このように、アルカリ金属セル140を透過した光はフォトダイオード等の光検出器150において検出される。
【0033】
この際、レーザ光源110であるVCSELの温度は一定に保たれている。また、地磁気等による外部磁場を遮断するため、アルカリ金属セル140及び不図示のヘルムホルツコイルを不図示の磁気シールドで覆い、更に温度槽141内に設置することにより温度を一定に保っている。また、不図示のヘルムホルツコイルに流す電流によって、アルカリ金属セル140に所定の静磁場が印加されている。アルカリ金属セル140の温度は、30℃から55℃までの温度範囲で、最もCPT共鳴のコントラストが高くなる42.00℃の温度に保った。測定器の基準周波数源となるCs一次標準器175には、Symmetricom社のCs周波数標準5071A(High performance tube)を用いた。第1の偏光板131、第2の偏光板132には、シグマ光機の偏光板SPFN-30C-26を用いた。尚、励起用偏光板となる第1の偏光板131と検出用偏光板となる第2の偏光板132の透過軸及びレーザ光の光軸は、
図15に示されるように配置されている。
【0034】
次に、
図16はCPT共鳴の測定結果を示す。
図16における実線16Aで示されるものは、本実施の形態におけるものであり、
図2等に示されるように、第1の偏光板131と第2の偏光板132の双方を設置したもののCPT共鳴の測定結果である。また、一点鎖線16Bは、第2の偏光板132を減光フィルタに置き換え、第1の偏光板131を設置したもののCPT共鳴の測定結果である。実線16Aに示される第1の偏光板131と第2の偏光板132の双方を設置したものにおいては、磁束密度94μTの静磁場を印加した場合においては、CPT共鳴の線幅(FWHM)は1.15kHzであり、コントラストは90.1%であった。尚、第1の偏光板131と第2の偏光板132との位置は最適化されているものとする。
【0035】
これに対し、一点鎖線16Bに示される第2の偏光板132を減光フィルタに置き換えたものにおいては、磁束密度5μTの静磁場を印加した場合においては、CPT共鳴の線幅(FWHM)は2.32kHzであり、コントラストは3.3%であった。
【0036】
(角度θとコントラストの関係)
次に、検出用偏光板である第2の偏光板132における角度θとコントラストとの関係を調べた実験結果を
図17から
図19に示す。尚、これらの実験結果は、アルカリ金属セル140に磁束密度30μTの静磁場が印加されている状態において測定した結果である。
【0037】
図17は、第2の偏光板132における角度θとDC levelとの関係を示している。尚、第2の偏光板132における角度θは、
図15に示されるように、第1の偏光板131の偏光方向に垂直となる方向に対する角度である。CPT共鳴に寄与しない波長成分は、角度θがゼロ近傍において、0に近い値となり検出されなくなる。
【0038】
また、
図18は、第2の偏光板132における角度θとCPT共鳴における振幅との関係を示している。尚、CPT共鳴に寄与する波長成分は角度θが0近傍において小さくなる。しかしながら、ファラデー効果によって偏光角度が変化するため、
図17とは異なる振る舞いを示している。
【0039】
また、
図19は、第2の偏光板132における角度θとCPT共鳴のコントラストとの関係を示すものであり、計算により得られた結果である。角度θが0°近傍においては、コントラストが高くなる傾向が示されている。尚、本実施の形態においては、角度θの値が、−15°以上、15°以下であることが好ましい。従って、本実施の形態においては、第1の偏光板131の偏光方向と、第2の偏光板132の偏光方向とは平行でなければよい。また、更には、第2の偏光板132における偏光方向が、第1の偏光板131の偏光方向に垂直となる方向に対し15°以下となるように設置されていることが好ましい。
【0040】
図17から
図19に示される結果より、CPT共鳴においてはファラデー効果によりCPT共鳴に寄与する波長成分の偏光が回転すること、及び、角度θがゼロとなる状態の近傍においてコントラストが高くなることが解る。
【0041】
(静磁場とコントラストの関係)
次に、静磁場に対するコントラストとの関係を調べた実験結果を
図20及び
図21に示す。第2の偏光板132における角度θの値は、
図18において最もコントラストの高い−3°に設定した。
【0042】
図20は、静磁場とDC level及び共鳴振幅との関係を示すものである。CPT共鳴の振幅(Signal)は、静磁場の強度に伴い線形に増加している。これは
図3に示される2つの準位、即ち、一点鎖線で示されるCPT共鳴CPTaと実線で示されるCPT共鳴CPTbとにおいて周波数差が生じ、ファラデー効果の重なりが大きくなるからである。一方、DC levelは、磁場の強度に依存することなく一定の値を示している。
【0043】
図21は、静磁場とコントラストとの関係を示すものである。コントラストは下記の数5に示される式のように定義される。
【0044】
【数5】
コントラストは静磁場が大きくなるほど高くなる傾向にある。尚、静磁場における磁束密度が90μT以上の領域においては、DC levelが略一定となるものと考えられるため、静磁場を大きくするほどコントラストは100%に近づいていくものと推察される。本実施の形態においては、磁束密度BはB>16μTであることが好ましい。
【0045】
(静磁場と線幅の関係)
静磁場とCPT共鳴の線幅との関係について調べた実験結果を
図22に示す。角度θは、
図18において最もコントラストの高い−3°に設定した。
図22に示されるように、静磁場に対して、CPT共鳴の線幅は略線形に増加している。これは
図3に示される2つの準位、即ち、一点鎖線で示されるCPT共鳴CPTaと実線で示されるCPT共鳴CPTbとにおいて周波数差が生じるため、線幅が広がったものと考えられる。
【0046】
(静磁場と性能指数(Figure of merit)との関係)
静磁場とCPT共鳴の性能指数との関係を
図23に示す。性能指数は非特許文献1に基づいて、コントラストをFWHMにより除した値を示している。磁束密度BがB<30μTの範囲においては、性能指数は急激に上昇しており、磁束密度Bが30μT≦B≦60μTの範囲においては、性能指数はゆるやかに上昇している。しかしながら、磁束密度Bが60μT<Bの範囲においては、性能指数は緩やかな下降に転じている。これは、磁束密度BがB<30μTの範囲においては、特にコントラストの上昇が支配的となり性能指数が上昇するが、磁束密度Bが60μT<Bの範囲においては、FWHMの広がりが支配的となるため性能指数は緩やかに下降するものと考えられる。従って、本実施の形態においては、磁束密度Bは、性能指数が最大となる30μT≦B≦60μTの範囲であることが好ましい。
【0047】
上記においては、アルカリ金属セル140がガラスガスセルにより形成されているものについて説明したが、Si基板等の基板に貫通孔を形成し、基板の両面にガラス基板を貼り付けて形成するMEMSガスセルにより形成されているものであってもよい。このようなMEMSガスセルを用いることにより、小型化、低コスト化にすることができる。
【0048】
また、アルカリ金属セル140に用いられるアルカリ金属としてセシウム(Cs)の場合について説明したが、他のアルカリ金属であるルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)のいずれかを用いてもよい。
【0049】
また、アルカリ金属セル140において光が通過する壁面に、第1の偏光板131及び第2の偏光板132のいずれか、または、双方を密着させることにより壁面を介しアルカリ金属セル140を加熱するものであってもよい。第1の偏光板131及び第2の偏光板132に入射したレーザ光のうち第1の偏光板131及び第2の偏光板132において消失したレーザ光は熱になる。よって、この熱によりアルカリ金属セル140において光が通過する壁面を加熱することにより、壁面にセシウムが付着することを防ぐことができ、光量を安定にすることができる。
【0050】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、CPT共鳴の線幅が静磁場に対して線形になること、更には、CPT共鳴の振幅が静磁場に対して線形になることを利用した、磁気センサである。
【0051】
従来のCPT磁気センサは、非特許文献5に示されるように、磁場感度の高い磁気副準位と磁場感度の低い磁気副準位の周波数差を測定し磁場を推定している。磁気副準位間の周波数差は,磁場の大きさに伴って大きくなる。しかしながら、強い磁場が印加される場合、大きく周波数を掃引する必要があるため、測定の精度及び確度が低下するおそれがある。
【0052】
また、磁束密度が高い場合(50mT以上)においては、磁場感度の最も高い磁気副準位と磁場感度の最も低い磁気副準位の周波数差が非線形となることが知られている。従って、精度良く磁束密度の値を得るためには、非線形性を考慮して周波数差を換算する必要がある。
【0053】
本実施の形態における磁気センサは、
図24に示されるように、第1の実施の形態と同様に、レーザ光源110、アルカリ金属セル140、光検出器150等を有している。更に、レーザ光源110とアルカリ金属セル140との間には、第1の偏光板131が設置されており、アルカリ金属セル140と光検出器150との間には第2の偏光板132が設置されている。本実施の形態における磁気センサでは、検出される磁束密度Bsは、アルカリ金属セル140における磁場の値であるため、
図2に示されている原子発振器とは異なり、アルカリ金属セル140には、ヘルムホルツコイル等により静磁場の印加はなされていない。
【0054】
このような、本実施の形態における磁気センサは、CPT共鳴の半値全幅から磁束密度の値を検出するものであるため、従来の問題点を解決することができる。即ち、本実施の形態における磁気センサでは、一つのCPT共鳴のFWHMまたは振幅を測定する方法であるため、周波数を大きく掃引する必要がなく、簡便にかつ精度よく磁場の測定が可能となる。また、原理的にFWHM及び振幅は磁場に比例するため、従来とは異なり、磁気副順位の非線形性を考慮する必要がない。更には、従来のものよりもS/N比を向上させることができる。
【0055】
次に、本実施の形態における磁気センサについて、より詳細に説明する。
【0056】
(共鳴線幅(半値幅(FWHM))と磁束密度とが線形になることを利用した磁気センサ)
図3は、
133CsのD
1線におけるエネルギー準位図であり、直線偏光により励起される2つのCPT共鳴を示している。即ち、直線偏光により、一点鎖線で示されるCPT共鳴CPTaと実線で示されるCPT共鳴CPTbとが励起され、2つのCPT共鳴が重なり合った信号が観測される。その他の準位によるCPT共鳴は、磁場に対する周波数のシフトが大きいため、アルカリ金属セル140に静磁場を印加して分離して測定している。
【0057】
2つの準位の周波数f
a、f
bは、磁束密度Bに対して、数6に示される式となる。
【0058】
【数6】
従って、2つの準位の周波数差(f
a−f
b)は、数7に示される式となり、磁束密度に対して比例する。
【0059】
【数7】
観測されるCPT共鳴の半値全幅は磁束密度Bに比例するため、CPT共鳴の半値全幅から磁束密度Bを算出することが可能である。また、磁束密度BとFWHM等との関係は、線形性が高いため、測定される磁場の範囲が広範囲であっても、高い精度の磁束密度Bの測定が可能である。
【0060】
図25は、磁束密度BとFWHMとの関係についての測定結果を示すものである。
図25に基づくならば、磁束密度に対する周波数の変化量は、3.99Hz/μTである。また、相関係数は、0.9936であり非常に高い線形性が得られている。従って、本実施の形態においては、磁気センサとして高い精度を得ることができる。
【0061】
(共鳴振幅と磁場とが線形になることを利用した磁気センサ)
また、共鳴振幅についても同様に、ある程度の磁場範囲であれば磁気センサとしての利用が可能である。但し、共鳴振幅を使用するためには、以下の2つを考慮する必要がある。
【0062】
一つは、磁場測定の原理はゼーマン効果なので、共鳴振幅は間接的に変化が生じるパラメータである。よって、磁場以外の要因(光強度やガスセル温度)にも影響されるので、磁束密度を測定するためには、種々のパラメータの影響を考慮する必要がある。
【0063】
もう一つは、磁場が強い場合、共鳴振幅は磁束密度に対して線形性がなくなる。非常に強い磁場においては、共鳴振幅が飽和することが実験により確認された。これは2つのΔm=2の重なり合いが、強い磁場条件から外れた場合に生じる。従って、強い磁場においては、線形性がなくなるため、弱い磁場における磁束密度の検出に用いることができる。
【0064】
上記における2つの内容を考慮すれば、共鳴振幅を用いて磁場センサとして利用することが可能である。また、共鳴振幅とFWHMとを複合して測定を行うことも可能である。
【0065】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。原子発振器においては、
図26に示されるように、光強度変調器210が用いられる場合がある。
図26に示す場合には、コリメートレンズ120と第1の偏光板131との間に、光強度変調器210が設けられている。
【0066】
光強度変調器210は、アルカリ金属セル140に入射するレーザ光を強度変調する光学素子であればよい。具体的には、光強度変調器210として用いられるものとしては、光チョッパ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッター、音響光学変調器、液晶等が挙げられる。
【0067】
次に、
図27に、光強度変調器210を必要としない直接変調する方法を示す。パルス励起においては、アルカリ金属セル140に入射するレーザ光の光強度を変調すればよいので、光源ドライバ220により、レーザ光源110に入力する電力をパルスに印加することにより、発生した光パルスをアルカリ金属セル140に入射させればよい。
【0068】
偏光子法は、CPTにおけるファラデー効果を利用している。CPTのファラデー効果は、直線偏光励起により励起される2つの共鳴(Δm=2)の重なり合いにより生じる。従って、重なり合いを大きくするために、比較的大きい磁場を印加する必要がある。しかしながら、大きい磁束密度の印加は2次のゼーマンシフトを大きくするため、周波数の長期安定度を劣化させる要因となりうる。即ち、偏光子法において、周波数の長期安定度改善のためには、ガスセルに印加する磁束密度を低くすることが好ましい。
【0069】
本実施の形態においては、2次のゼーマンシフトを低減させるために、パルス励起と偏光子法を組み合わせた方法を提案するものである。パルス励起により、CPT共鳴のパワーブロードニングが抑制され、より細い線幅の共鳴を得ることで、印加する磁場を連続励起の時より小さくすることが可能である。
【0070】
ところで、連続励起におけるCPT共鳴の線幅を決定する因子としては、自然広がり、入射するレーザの強度、バッファガス圧力に依る衝突広がり、磁場の不均一さがある。特に、連続励起によるCPT共鳴の線幅は入射するレーザの強度に比例する。このレーザの強度に比例して共鳴線幅が広がる現象は、パワーブロードニング効果と呼ばれ、CPT共鳴の線幅を広げる支配的な要因である。これに対し、パルス励起により得られるCPT共鳴の線幅はレーザの強度に依存しないことが知られており、得られる線幅はパルスオフの時間(自由発展時間)に依存し、数8に示される式が与えられる。
【0071】
【数8】
従って、強いレーザ強度を入射する条件において、パルス励起は連続励起に比べ細い線幅が得られる。
【0072】
次に、本実施の形態における原子発振器の原理について説明する。パルス励起によるCPT共鳴の吸収スペクトルは、コサイン関数に近似することができる。従って、クラマース・クロニッヒの関係により、分散スペクトル、即ち、偏光回転はサイン関数である。共鳴aに関する偏光回転をθ
a、共鳴bに関する偏光回転をθ
bすると、CPTによる偏光回転は重ね合わせにより、数9に示される式となる。
【0073】
【数9】
ここで、
1.偏光回転はサイン関数であること、
2.共鳴の対称性から2つの偏光回転θ
aとθ
bは異符号であること、
3.ゼーマンシフトにより2つの共鳴は異なる方向に周波数シフトすること、
以上の3つを考慮し、数9に示される式を数10に示される式のように書き換える。
【0074】
【数10】
尚、θ
0はθ
aとθ
bの最大回転角、f
Bは周波数差(f
a−f
b)に相当する。数10に示される式より、回転角θを最大にする磁束密度の条件は、数11に示される式となる。
【0075】
【数11】
ここで、数8に示される式と、数11に示される式と、数12に示されるf
Bと磁束密度の関係式より、数13に示される式が得られる。
【0077】
【数13】
即ち、数13に示されるように、線幅が細いほど、回転角を最大にする磁束密度は小さくなる。例えば、Csの場合では、f
Bは数14に示される式のようになる。
【0078】
【数14】
従って、パルスの繰り返し周波数が1000Hz(T=0.5ms)の場合には、回転角度を最大にする磁束密度Bは44μTであり、800Hz(T=0.625ms)の場合では、36μTであると予想される。また、600Hz(T=0.833ms)の場合では、27μTであり、400Hzの場合では、18μTであると予想される。以上の内容を下記の表1に示す。
【0080】
図28は、パルス励起と偏光子法を組み合わせた場合におけるCPT共鳴のスペクトルを示している。パルスの繰り返し周期は400Hzに設定し、印加した磁束密度は16μTである。得られた共鳴の振幅(Signal)は22.35mVに対し、DC levelは3.05mVと非常に小さい。このときのコントラストは86%である。また線幅(FWHM)は4.6GHzに対し170Hzであった。パルスの繰り返し周期から予測される線幅は200Hzであることから、得られたCPT共鳴の線幅は理論値よりも小さく、20%程度の差があった。
【0081】
図29は、磁場の変化に対し、パルスの繰り返し周波数を変えた場合における共鳴振幅を示している。それぞれ共鳴振幅は、最大値となる磁束密度があることがわかる。磁束密度は7.8μT刻みで測定した。
【0082】
連続励起の場合、共鳴振幅が最大となる磁束密度は93μTであったが、パルス励起においては、共鳴線幅の狭窄化により、パルスの繰り返し周波数が1000Hzの場合に31μT、400Hzの場合に16μTであった。このように、パルス励起に必要な磁束密度は、連続励起に必要な磁束密度よりも十分に低い。以上の値を表2に示す。
【0084】
表2に示されるように、理論と同様に、パルスの繰り返し周波数を小さくする(パルス周期を長くする)ほど、最大となる磁束密度は小さくなる傾向がある。また、実験値の磁束密度Bは理論値を下回り、20%程度の差が生じている。得られる線幅が20%近く細い線幅が得られていることから、実験と理論の磁束密度の差が生じているものと考えられる。
【0085】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。尚、本実施の形態は、磁気センサであるが、特徴となる構造の一部は、第3の実施の形態と同様のものである。
【0086】
偏光子法は、CPTにおけるファラデー効果を利用している。CPTのファラデー効果は、直線偏光励起により励起される2つの共鳴(Δm=2)の重なり合いにより生じる。本実施の形態は、偏光子法による磁気センサでは、2つの共鳴間のゼーマンシフトに基づいて、得られる共鳴の線幅もしくは振幅から印加されている磁束密度を推定する方法を提案するものである。
【0087】
一般的に磁場センサには高い分解能が要求される。また、分解能は磁場の感度に依存する。従って、磁束密度の分解能を向上させるためには、磁束密度に対する共鳴特性の感度を高めることが要求される。
【0088】
磁束密度に対する共鳴特性の感度改善のため、パルス励起と偏光子法を組み合わせた方法を提案する。パルス励起により、CPT共鳴のパワーブロードニングが抑制され、より細い線幅の共鳴を得ることができるため、磁場密度に対する共鳴振幅の変化を向上させることが可能となる。
【0089】
ところで、連続励起におけるCPT共鳴の線幅を決定する因子としては、自然広がり、入射するレーザの強度、バッファガス圧力に依る衝突広がり、磁場の不均一さがある。特に、連続励起によるCPT共鳴の線幅は入射するレーザの強度に比例する。このレーザの強度に比例して共鳴線幅が広がる現象はパワーブロードニング効果と呼ばれ、CPT共鳴の線幅を広げる支配的な要因である。これに対し、パルス励起により得られるCPT共鳴の線幅はレーザの強度に依存しないことが知られており。得られる線幅はパルスオフの時間(自由発展時間)に依存し、数15に示される式が与えられる。
【0090】
【数15】
従って、強いレーザ強度を入射する条件において、パルス励起は連続励起に比べ細い線幅が得られる。
【0091】
次に、磁場に対する偏光回転の感度(∂θ/∂B)について計算し、連続励起およびパルス励起における共鳴の特性を比較する。具体的には、計算結果を比較し、パルス励起における、磁場に対する偏光回転の感度(∂θ/∂B)が連続励起よりも高いことを明らかにする。
【0092】
(連続励起)
連続励起の場合におけるCPT共鳴の吸収スペクトルは、ローレンツ関数に近似できる。従って、クラマース・クロニッヒの関係により、分散スペクトル、すなわち偏光回転のスペクトルはローレンツ関数の微分である。共鳴aに関する偏光回転をθ
a、共鳴bに関する偏光回転をθ
bすると、CPTによる偏光回転は重ね合わせにより、数16に示される式となる。
【0093】
【数16】
ここで、
1.偏光回転はローレンツ関数の微分であること、
2.共鳴の対称性から2つの偏光回転θ
aとθ
bは異符号であること、
3.ゼーマンシフトにより2つの共鳴は異なる方向に周波数シフトすること、
以上の3つを考慮し、数16に示される式を書き換えると数17に示される式となる。
【0094】
【数17】
尚、θ
0はθ
aとθ
bの最大回転角に相当する。また対称性からθ
a =θ
b と仮定する。簡単のため、半値半幅γで周波数離調δとゼーマンシフト量f
Bを規格化する。規格化した周波数離調をd = δ/γ 、ゼーマンシフト量をb = f
B/2γとすると、数17に示される式は、数18に示される式となる。
【0095】
【数18】
また、偏光の回転角は、d = 0で最大である。よって、数18に示される式に、d = 0を代入すると、数19に示される式となる。
【0096】
【数19】
また、bは磁束密度Bの関数であり、線形に比例することから、比例定数をkとするとb=kBである。従って、磁場に対する偏光回転の感度(∂θ/∂B)は、数20に示される式で表わされる。
図30は、数20に示される式の関数をプロットしたものである。
【0097】
【数20】
従って、感度の最大値はB=0のとき最大となるため、数21に示される式となる。
【0098】
【数21】
ここで、数22に示される式の関係にあるため、数23に示される式が成り立つ。よって、数22及び数23に示される式を数20に示される式に代入すると、磁場に対する偏光回転の感度(∂θ/∂B)の最大は、数24に示される式で表わされる。
【0101】
【数24】
数24に示される式より、共鳴の半値半幅γが小さいほど感度が高いことがわかる。
【0102】
(パルス励起)
パルス励起によるCPT共鳴の吸収スペクトルは、コサイン関数に近似できる。従って、クラマース・クロニッヒの関係により、分散スペクトル、即ち、偏光回転はサイン関数である。共鳴aに関する偏光回転をθ
a、共鳴bに関する偏光回転をθ
bすると、CPTによる偏光回転は重ね合わせにより、数25に示す式となる。
【0103】
【数25】
ここで、
1.偏光回転はサイン関数であること、
2.共鳴の対称性から2つの偏光回転θ
aとθ
bは異符号であること、
3.ゼーマンシフトにより2つの共鳴は異なる方向に周波数シフトすること、
以上の3つを考慮し、数25に示される式を書き換えると、数26に示される式となる。
【0104】
【数26】
ここで、θ
0はθ
aとθ
bの最大回転角に相当する。また、対称性からθ
a =θ
b と仮定する。簡単のため、半値半幅γで周波数離調δとゼーマンシフト量f
Bを規格化する。規格化した周波数離調をd = δ/γ 、ゼーマンシフト量をb = δ/2γとすると、数26に示される式は、数27に示される式となる。
【0105】
【数27】
次に、偏光回転の感度(∂θ/∂B)を求める。数27に示す式より、(∂θ/∂B)は、数28に示す式で表わすことができる。
【0106】
【数28】
ここで、d = 0とした場合、数28に示される式は数29に示される式となる。
【0107】
【数29】
数29に示される式は、cos(πb/2)を含むため、周期性があることがわかる。したがって、感度の最大値はB=0の場合に最大となり、数30に示す式となる。
【0108】
【数30】
ここで、数31に示される式の関係にあるため、数32に示される式が成り立つ。よって、数31及び数32に示される式を数29に示される式に代入すると、磁場に対する偏光回転の感度(∂θ/∂B)の最大は、数33に示される式で表わされる。
【0112】
(比較)
連続励起において、磁場に対する偏光回転の感度(∂θ/∂B)の最大は、数24に示される式と同じ数34に示される式で表わされる。
【0113】
【数34】
一方、パルス励起おいて、磁場に対する偏光回転の感度(∂θ/∂B)の最大は、数33に示される式と同じ数35に示される式で表わされる。
【0114】
【数35】
尚、連続励起の半値半幅をγ
CW、パルス励起の半値半幅をγ
PLとする。強い光強度においては、γ
CW>γ
PLの関係が成り立つため、数36に示される式の関係が成り立つ。
【0115】
【数36】
従って、連続励起に比べて、パルス励起の磁場に対する偏光回転の感度が高い。即ち、パルス励起による線幅の狭窄化により、磁束密度に対する感度を向上させることができる。
【0116】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。