特許第6346558号(P6346558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346558
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】水分吸収性に優れた飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20180611BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20180611BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20180611BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   A23L2/00 F
   A23L33/17
   A23L2/00 A
   A61K31/198
   A61K35/20
   A61K31/7016
   A61K31/7004
   A61K33/00
   A61P3/02
   A61P43/00 121
   A61K38/00
   A61K31/194
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-503571(P2014-503571)
(86)(22)【出願日】2013年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2013056662
(87)【国際公開番号】WO2013133442
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-52776(P2012-52776)
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100170221
【弁理士】
【氏名又は名称】小瀬村 暁子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山地 健人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕之
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−169642(JP,A)
【文献】 特開2006−304775(JP,A)
【文献】 特開2004−123642(JP,A)
【文献】 特表平09−508804(JP,A)
【文献】 特表2003−500036(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116635(WO,A1)
【文献】 特開昭58−170440(JP,A)
【文献】 特開昭64−060360(JP,A)
【文献】 特表平10−508744(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/091511(WO,A1)
【文献】 特開2010−213703(JP,A)
【文献】 特開昭52−041273(JP,A)
【文献】 伊藤健太郎,乳タンパク質および乳タンパク質由来ペプチドの水分補給機能に関する研究,日本大学博士論文, [retrieved on 2017-07-28],2016年,表紙, 目次, p.1, 27-43, 63, 67-68,<http://repository.nihon-u.ac.jp/xmlui/bitstream/handle/11263/1133/Ito-Kentaro-3.pdf?sequence=3>
【文献】 日本食品工業学会誌,1991年,Vol.38, No.5,pp.377-383
【文献】 川崎医療福祉学会誌,2008年,Vol.18, No.1,pp.305-314
【文献】 渇いたカラダへミネラルチャージ「ザバス スポーツウォーター」新発売,明治製菓プレスリリース,2010年 1月13日,<URL:http://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2010_meika/detail/20100113_03.html>
【文献】 Beverage Japan, 2006, 290(2), p.24
【文献】 化学工業日報,2005年 8月12日,第4頁
【文献】 日本食糧新聞,2010年 4月14日,第6頁
【文献】 日本栄養・食糧学会誌, 1996, 49(1), pp.46-51
【文献】 栄養学雑誌, 1997, 55(1), pp.1-12
【文献】 信州医誌, 1997, 45(1), pp.3-13
【文献】 医学のあゆみ, 1988, 145(1), pp.773-774
【文献】 Japanese Journal of Physiology, 1987, 37, pp.1019-1029
【文献】 スポーツ科学研究, 2011, 8, pp.144-154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 − 2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3〜6.0重量%のホエイペプチド若しくはカゼインペプチドであるタンパク質加水分解物及び/又は20〜30 mMのアラニン若しくはリジンであるアミノ酸と、0.5〜1.0重量%のトレハロースである糖質と、電解質として10〜30 mMのナトリウムとを含有し、浸透圧が50〜200 mOsm/kg H2Oである、水分補給用の飲食品組成物。
【請求項2】
0.3〜6.0重量%のホエイペプチド若しくはカゼインペプチドであるタンパク質加水分解物と、0.5〜3.0重量%のグルコースである糖質と、電解質として10〜30 mMのナトリウムとを含有し、浸透圧が50〜200 mOsm/kg H2Oである、水分補給用の飲食品組成物。
【請求項3】
電解質としてカリウム、カルシウム、及びマグネシウムをさらに含む、請求項1又は2に記載の飲食品組成物。
【請求項4】
クエン酸をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲食品組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の飲食品組成物を調製するためのプレミックス組成物であって、ホエイペプチド若しくはカゼインペプチドであるタンパク質加水分解物及び/又はアラニン若しくはリジンであるアミノ酸と、トレハロースである糖質と、電解質としてナトリウムとを含有するプレミックス組成物。
【請求項6】
請求項2に記載の飲食品組成物を調製するためのプレミックス組成物であって、ホエイペプチド若しくはカゼインペプチドであるタンパク質加水分解物と、グルコースである糖質と、電解質としてナトリウムとを含有するプレミックス組成物。
【請求項7】
前記タンパク質加水分解物及び/又は前記アミノ酸1 g当たり、0.06〜12 gの前記糖質及び0.1〜12 mmolのナトリウムを含む、請求項5に記載のプレミックス組成物。
【請求項8】
前記タンパク質加水分解物1 g当たり、0.06〜12 gの前記糖質及び0.1〜12 mmolのナトリウムを含む、請求項6に記載のプレミックス組成物。
【請求項9】
電解質としてカリウム、カルシウム、及びマグネシウムをさらに含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載のプレミックス組成物。
【請求項10】
クエン酸をさらに含む、請求項5〜9のいずれか1項に記載のプレミックス組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の飲食品組成物を調製するための、ホエイペプチド若しくはカゼインペプチドであるタンパク質加水分解物及び/又はアラニン若しくはリジンであるアミノ酸と、トレハロースである糖質と、電解質としてナトリウムとを含有するプレミックス組成物の使用。
【請求項12】
請求項2に記載の飲食品組成物を調製するための、ホエイペプチド若しくはカゼインペプチドであるタンパク質加水分解物と、グルコースである糖質と、電解質としてナトリウムとを含有するプレミックス組成物の使用。
【請求項13】
プレミックス組成物が、電解質としてカリウム、カルシウム、及びマグネシウムをさらに含む、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
プレミックス組成物がクエン酸をさらに含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分吸収性、特に水分吸収性及び胃排出速度を高めた水分補給に有用な飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炎天下におけるスポーツの練習や競技、建設現場の重作業、製鉄・冶金業等の高温下における工場労働等において、大量発汗による脱水症や熱中症を防止する目的で、さまざまな飲料が上市されている。
【0003】
スポーツにおけるパフォーマンスの向上や、高温下作業における熱中症対策等のためには、スポーツ等により発生した熱を体外に効率的に放出(放熱)する必要がある。この放熱は、皮膚血液流量及び発汗量の増加に伴って行われるため、水分を効率的に補給して、失われた体液量を速やかに回復させなくてはならない。そのためには、腸管における水分吸収速度を速める必要があり、水分補給用の飲料が有効である。
【0004】
ここで、水分補給用の飲料に求められる機能としては、腸管における水分吸収速度を速めるだけでなく、胃排出速度を速めることも重要となる。例えば、胃排出速度が遅い飲料を摂取した直後に運動した場合、胃もたれ、ゲップ及び横腹痛を発生しやすいことが報告されている(非特許文献1)。また、胃排出速度が非常に遅い飲料を摂取した場合、小腸での水分吸収が速かったとしても、その分だけ経口摂取後の全体としての水分吸収速度は遅くなる。
【0005】
スポーツ飲料は、スポーツによって消費される炭水化物の補給、発汗によって失われる水分及び電解質の補給を目的とした清涼飲料水の一種である。炭水化物の補給量が高いほど、スポーツ(競技)において、エネルギーを有効活用する面などから有利になる。一方、炭水化物の補給量が高いほど、胃排出速度が遅くなることも知られており、両方の要因を考慮して、炭水化物の濃度が設定されている。また、スポーツにおけるパフォーマンスの向上や、熱中症の予防のためには、速やかな水分吸収性も求められる。しかしながら、基本的に市販のスポーツドリンクは、口当たり等の嗜好性も求められることから、ナトリウム濃度を低めに設定していること等もあり、水分吸収速度という面では必ずしも十分ではない。ラットを用いた試験によると、市販のスポーツ飲料では、小腸における水分吸収性は、経口補水液に劣るという結果も報告されており(非特許文献2)、改善の余地がある。
【0006】
一方、脱水症の治療を目的とした飲料として、経口補水液(Oral Rehydration Solution、ORS)がある。このORSは、ナトリウムを大量に喪失する分泌性の下痢を引き起こす、コレラの治療を目的として開発された飲料である。その後にORSは、ナトリウムの喪失の少ない非分泌性の下痢を引き起こす感染性胃腸炎への対応のため、ナトリウム濃度が変更された。ORSの成分・組成は、WHO(非特許文献3)や米国小児科学会(American Academy of Pediatrics;AAP)のガイドライン(非特許文献4)等で定められている。ORSでは、市販のスポーツドリンクと含有する成分がほぼ同一であるが、各成分の濃度が異なる。嘔吐や下痢を伴うような病的な脱水時には、水分だけでなく電解質も多く失われているため、ORSでは、スポーツ飲料よりもナトリウム濃度が高い組成となっている。経口補水液は、水分吸収性に優れているものの、下痢や嘔吐など、大量のナトリウムの喪失を伴う脱水症のために設計されており、スポーツや日常生活における水分補給に対して最適な組成ではない。また、ナトリウム濃度が高いため、塩味が強くて飲みづらいなどの問題点がある。
【0007】
近年、スポーツ飲料には、有用な生理機能を付加するために、分岐鎖アミノ酸をはじめ、様々な栄養成分が添加されている。また、最近の研究により、運動中や運動後に良質なタンパク質を有する乳製品を摂取することで、水分保持効果のあるアルブミンの合成を促進することができ、体液管理に有効であるとの研究が報告されている。したがって、アミノ酸やペプチド等のタンパク質源を配合することで、水分吸収速度だけではなく、体内の水分を保持する効果を持ったスポーツ飲料を開発することができると考える。
【0008】
しかし、一般に、糖質やアミノ酸等の栄養素を多量に配合すると、その分だけ浸透圧が上昇し、腸管における水分吸収速度や胃排出速度が低下してしまい、結果として、体内への水分吸収速度が遅くなるという問題が生じる。
【0009】
水分補給効果とアミノ酸等の栄養補給効果の両方の実現を目指した飲料としては、トレハロースを使用した等張又は低張なスポーツ飲料がある(特許文献1)。この特許文献1において、トレハロースは比較的に水分の大きな取込みを助長するという記述がある。しかしながら、トレハロースが水分吸収性において、他の糖質よりも優れていることは示されていない。また、実際の水分吸収性に関して比較・検討されていない。
【0010】
胃排出速度を速めることを目指した飲料としては、高度分岐環状デキストリンを含む飲料(特許文献2)がある。この特許文献2において、水分吸収を第一の目的とするコンディショニング系スポーツ飲料ではなく、高濃度の糖質を補給することを第一の目的とした、エルゴジェニック系スポーツ飲料に分類されるものを対象としている。一般的なエルゴジェニック系スポーツ飲料では、大量の糖質を含み浸透圧が高いために、胃排出速度が遅くなるという問題点に対して、高度分岐環状デキストリンを配合することで、浸透圧を低く調整し、その問題点を解決している。しかしながら、腸管における水分吸収性に関しては考慮されておらず、水分補給効果を高めるためには、腸管における水分吸収速度を速めることが必要である。
【0011】
アミノ酸やペプチドの飲料への添加が水分吸収性に及ぼす影響に関しては、これまでにも研究がなされているが、その効果は下痢などの病的な脱水症を対象としたものであり、限定的なものである。アミノ酸に関しては、経口補水液等へ配合した場合の水分吸収性に関する報告がいくつかなされている。例えば、非特許文献5では、コレラトキシン誘発下痢ラットモデルを用い、経口補水液へのグリシンの配合の効果を検討したが、水分吸収・ナトリウム吸収の点で有効性は見出されなかったとの報告がある。また、コレラトキシン誘発下痢ウサギモデルを用いた検討で、グルタミンを配合した経口補水液が、WHOの経口補水液よりも高い水分・ナトリウム吸収を示したとの報告もある(非特許文献6)。これらはいずれも下痢のモデルであり、スポーツあるいは日常生活における動態とは異なると考える。また、アミノ酸の種類によっては水分吸収に対して逆効果の働きをする事が知られる。例えば、非特許文献7では、5〜40mMのアルギニンを配合した生理食塩水を投与した場合、腸管からの水分泌が示された。また、5 mM又は15mMのリジンを配合した生理食塩水は腸管からの水吸収が見られたが、40mMでは水分泌したとの報告がある。
【0012】
以上のように、水分の補給(水分の吸収性)と、アミノ酸やペプチドの補給を高いレベルで同時に実現できる飲食品は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表平10-508744号公報
【特許文献2】特開2003-169642号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】B. T. Plunkett et al., Med. Sci. Sports Exer., 31, 1169-1175, 1999.
【非特許文献2】D. Nishinaka et al., Pediatrics. International, 46, 315-321, 2004.
【非特許文献3】WHO, ORAL REHYDRATION SALTS Production of the new ORS, 2006.
【非特許文献4】Use of Oral Fluid Therapy and Posttreatment Feeding Following Enteritis in Children in a Developed Country PEDIATRICS Vol. 75 No. 2 February pp. 358-361, 1985.
【非特許文献5】R.M. Cunha Ferreira et al., Acta Paediatr., 46-50, 81(1), 1992.
【非特許文献6】A.C. Silvia et al., J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr., 26(5), 513-519, 1998.
【非特許文献7】J.E. Hegarty et al., Gut, 22(2), 108-113, 1981.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、水分吸収性を高めた水分補給に有用な飲食品組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ホエイペプチドなどのタンパク質加水分解物及び/又は特定のアミノ酸を、糖質及び電解質と共に含有し、浸透圧が40〜250 mOsm/kg H2O程度である飲食品組成物が、腸管における水分吸収性を顕著に高めることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は以下を包含する。
【0018】
[1]タンパク質加水分解物及び/又はアミノ酸と、糖質と、電解質とを含有し、浸透圧が40〜250 mOsm/kg H2Oである飲食品組成物。
【0019】
[2]0.25〜7.5重量%のタンパク質加水分解物を含有する、上記[1]の飲食品組成物。
【0020】
[3]0.5〜3.0重量%の糖質及び10〜30 mMのナトリウムを含有する、上記[1]又は[2]の飲食品組成物。
【0021】
[4]浸透圧が50〜200 mOsm/kg H2Oである、上記[1]〜[3]の飲食品組成物。
【0022】
[5]タンパク質加水分解物が、ホエイペプチド、カゼインペプチド、及び大豆ペプチドからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[4]の飲食品組成物。
【0023】
[6]アミノ酸が、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、及びバリンからなる群から選ばれる少なくとも1つである、上記[1]〜[5]の飲食品組成物。
【0024】
[7]糖質が、グルコース及び/又はグルコースを構成単糖として含む糖質を含む、上記[1]〜[6]の飲食品組成物。
【0025】
[8]電解質が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムを含む、上記[1]〜[7]の飲食品組成物。
【0026】
[9]クエン酸をさらに含む、上記[1]〜[8]の飲食品組成物。
【0027】
[10]水分補給用の、上記[1]〜[9]の飲食品組成物。
【0028】
[11]上記[1]〜[10]の飲食品組成物を調製するための、タンパク質加水分解物及び/又はアミノ酸と、糖質と、電解質とを含有するプレミックス組成物。
【0029】
[12]タンパク質加水分解物及び/又はアミノ酸1 g当たり、0.06〜12 gの糖質及び0.1〜12mmolのナトリウムを含む、上記[11]のプレミックス組成物。
【0030】
[13]タンパク質加水分解物が、ホエイペプチド、カゼインペプチド、及び大豆ペプチドからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[11]又は[12]のプレミックス組成物。
【0031】
[14]電解質が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムを含む、上記[11]〜[13]のプレミックス組成物。
【0032】
[15]糖質が、グルコース及び/又はグルコースを構成単糖として含む糖質を含む、上記[11]〜[14]のプレミックス組成物。
【0033】
[16]クエン酸をさらに含む、上記[11]〜[15]のプレミックス組成物。
【0034】
本発明者らはまた、特定のアミノ酸及び/又は乳清ペプチド(ホエイペプチド)、糖質、電解質を含有した飲食品が、腸管における水分吸収性を高めて、かつ、胃排出速度も速めることも見出した。
【0035】
すなわち、本発明はまた以下を包含する。
【0036】
[A]アミノ酸及び/又は乳清ペプチド、糖質、電解質を含有する水分吸収性に優れた飲料。
【0037】
[B]アミノ酸が、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、バリンから選ばれる少なくとも1種以上を含有する前記[A]に記載の水分吸収性に優れた飲料。
【0038】
[C]アミノ酸が、リジン及び/又はアラニンを含有する前記[A]〜[B]に記載の水分吸収性に優れた飲料。
【0039】
[D]乳清ペプチドが、ホエイ酵素分解処理物である前記[A]に記載の水分吸収性に優れた飲料。
【0040】
[E]糖質が、トレハロース及び/又はグルコースである前記[A]に記載の水分吸収性に優れた飲料。
【0041】
[F]電解質が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムである前記[A]に記載の水分吸収性に優れた飲料。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、水分吸収性、好ましくは水分吸収性及び胃排出速度を高めた水分補給効果の高い飲食品を提供できる。
【0043】
本明細書は本願の優先権主張の基礎となる日本国特願2012−052776の内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】ラット小腸灌流試験の概要図である。
図2】小腸における各飲料の平均水分吸収速度を平均値+標準偏差で示したグラフである。各群はn=3である。グラフ中、O:アクアサポート(明治)、H:低張性の飲料、Val:バリン配合飲料、Leu:ロイシン配合飲料、Ile:イソロイシン配合飲料、Gly:グリシン配合飲料、Ala:アラニン配合飲料、Glu:グルタミン酸配合飲料、Asp:アスパラギン酸配合飲料、Lys:リジン配合飲料、Arg:アルギニン配合飲料である。*はO(アクアサポート)と比較して有意差があることを示す(p<0.05)。
図3】小腸における各飲料の平均水分吸収速度を平均値+標準偏差で示したグラフである。各群はn=4である。グラフ中、S:スポーツドリンク、O:アクアサポート(明治)、H:低張性の飲料、P:ペプチド配合飲料である。異なる文字(a、b)の間には有意差があることを示す(p<0.05)。
図4】小腸灌流試験におけるラット血液中のヘマトクリット値(%)を平均値+標準偏差で示したグラフである。各群はn=4である。グラフ中、S:スポーツドリンク、O:アクアサポート(明治)、H:低張性の飲料、P:ペプチド配合飲料である。異なる文字(a、b)の間には有意差があることを示す(p<0.05)。
図5】各飲料の投与後の5分間における胃排出率を平均値+標準偏差で示したグラフである。各群はn=3〜4である。グラフ中、C:市販の高分岐環状デキストリン配合飲料、Lys:リジン配合飲料、Ala:アラニン配合飲料、P:ペプチド配合飲料、S:市販のスポーツ飲料、O:市販の経口補水液である。
図6】飲料のナトリウム濃度と水分吸収性の関係を示すグラフである。数値は平均値+標準偏差で示した。各群はn=5である。OS-1を対照群とするダネット(Dunnett)の検定を行った。*はp<0.05、**はp<0.01を表す。
図7】異なるナトリウム濃度のペプチド配合飲料を用いた小腸灌流試験において測定された血中ヘマトクリット値を示すグラフである。数値は平均値+標準偏差で示した。各群はn=5である。OS-1を対照群とするダネット(Dunnett)検定を行った。*はp<0.05、**はp<0.01を表す。
図8】ホエイペプチド濃度と平均水分吸収速度との関係を示すグラフである。数値は全て平均値+標準誤差で示した。各群はn=4〜6である。対照飲料としての低張性溶媒(ペプチド0%)を対照群とするSteelの検定を行った。有意水準は5%とした。
図9】ペプチド混合物の種類と平均水分吸収速度の関係を示すグラフである。数値は全て平均値+標準誤差で示した。各群はn=4〜6である。ペプチド混合物含有飲料の4群間でTukey-kramerの検定を行った。有意水準は5%とした。
図10】糖質濃度と水分吸収性の関係を示すグラフである。数値は全て平均値±標準誤差で示した。各群はn=4である。4群間でTukey-kramerの検定を行った。有意水準は5%とした。異なる文字(a、b)の間には有意差がある事を示す。
図11】ホエイペプチドとホエイタンパク質の水分吸収性に対する効果を比較したグラフである。WPIはホエイタンパク質を表す。数値は平均値+標準誤差で示した。各群はn=4である。ペプチド混合物含有飲料の4群間でSteel-Dwassの検定を行った。有意水準は5%とした。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に述べる個々の形態には限定されない。
【0046】
本発明は、タンパク質加水分解物及び/又はアミノ酸と、糖質と、電解質とを含有する、飲食品組成物(飲料組成物又は食品組成物)に関する。本発明に係る飲食品組成物は、腸管からの優れた水分吸収性を示す。
【0047】
一実施形態では、本発明に係る飲食品組成物は、糖質と電解質に加えて、少なくとも1種のアミノ酸を含有する。本発明に係る飲食品組成物は、以下に限定するものではないが、10〜150 mM、好ましくは10〜50mM、より好ましくは20〜30 mMのアミノ酸を含有する。特に、本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物は、特定のアミノ酸を含有することを特徴とする。本発明の飲食品組成物に含めるアミノ酸には、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、バリンなどが挙げられる。本発明の飲食品組成物は、好ましくは、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、及びバリンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する。これらのアミノ酸は、天然物及び合成物のいずれでもよく、これらアミノ酸の単体又は混合物でもよい。また、これらアミノ酸を添加する際には、遊離アミノ酸のみならず、それらのアミノ酸のナトリウム塩、塩酸塩、酢酸塩等を使用してもよい。本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物には、後述する実施例で示されるように、リジン及び/又はアラニンを配合することが水分吸収性を高める観点で特に好ましい。またさらに、リジンは、糖代謝や脂質代謝を高める効果があるため、本発明の水分吸収性を高めることに加え、抗疲労効果の点で有用であり、アラニンは、グリコーゲンの分解を促進するグルカゴンを分泌する作用が知られており、運動中のエネルギー補給にも有用である。
【0048】
別の実施形態では、本発明に係る飲食品組成物は、糖質と電解質に加えて、タンパク質加水分解物を含有する。本発明の飲食品組成物は、糖質、電解質、及びタンパク質加水分解物に加えてアミノ酸を含有してもよい。本発明において「タンパク質加水分解物」とは、タンパク質を加水分解酵素により主にオリゴペプチド(10アミノ酸長以下のペプチド、好ましくはジペプチド及び/又はトリペプチド)まで加水分解して得られるペプチド混合物を意味する。本発明に係る飲食品組成物において用いるタンパク質加水分解物は、食品添加物であるペプチド製品、例えば、ホエイペプチド(乳清ペプチド)及びカゼインペプチドのような乳由来ペプチド、大豆ペプチド、コラーゲンぺプチド、ミルクペプチド、卵ペプチド等又はそれらの組み合わせであってよく、ホエイペプチド、カゼインペプチド、及び大豆ペプチドからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。本発明に係る飲食品組成物に用いるタンパク質加水分解物は、平均分子量が1500以下、好ましくは1200以下、例えば1100以下のものであり得る。本発明の飲料は、タンパク質加水分解物を、好ましくは0.25〜7.5重量%、より好ましくは0.3〜6重量%、特に好ましくは1.0〜3.0重量%含有する。本発明に係る飲食品組成物に用いるタンパク質加水分解物は、食品由来タンパク質をプロテアーゼで加水分解することにより調製することができる。一実施形態では、本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物は、ホエイペプチドを含有することを特徴とする。本発明のホエイペプチドとしては、ホエイ、ホエイタンパク質単離物(WPI)、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、ウシラクトフェリン及び乳タンパク質濃縮物(MPC)からなる群より選ばれる乳タンパク質の酵素(加水)分解物が挙げられる。本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物においては、ホエイペプチドであれば、特に制限なく使用できるが、消化吸収性の良いダイマー〜テトラマーのホエイペプチドの割合が高いこと、さらに付加価値として、抗炎症作用を有しているホエイペプチドを採用することも好ましい。
【0049】
本発明に係る飲食品組成物は、1種以上の糖質を、以下に限定するものではないが、例えば0.1%〜4.0%、好ましくは0.5〜3.0重量%、より好ましくは0.5〜2.5重量%、さらに好ましくは0.5〜1.0重量%含有する。本発明に係る飲食品組成物に用いる糖質は、グルコース等の単糖、トレハロース等の二糖、多糖等であってよい。そのような糖質としては、グルコース、ショ糖、果糖、麦芽糖などの還元糖、トレハロース、エリスリトール、マルチトール、パラチノース、キシリトールなどの非還元糖、デキストリンなどが挙げられるが、グルコース及び/又はグルコースを構成単糖として含む糖質(トレハロースやショ糖、パラチノース等の二糖、デキストリン等の多糖)がより好ましい。グルコースは、小腸でナトリウムイオンの吸収を促進するという利点を有する観点等から好適である。また、トレハロースなどのグルコースを含む糖質は、小腸に発現するトレハラーゼなどの酵素により分解され、グルコースとして吸収されるため、グルコースと同様にして好適である。また、トレハロースは非還元性の糖質のため、アミノ酸やペプチドと同時に配合して加熱殺菌した場合でも、メイラード反応を起こさず、飲食品組成物等の製造適性の観点等から好適である。
【0050】
本発明に係る飲食品組成物は、電解質を含有することを特徴とする。本発明に係る飲食品組成物で用いる電解質としては、限定するものではないが、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラル等が挙げられる。本発明に係る飲食品組成物は、脱水、発汗により失われた電解質の成分を経口摂取により腸管から効率よく吸収させるために、電解質として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の少なくとも1つをイオンとして含有することが好ましく、特にナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムをイオンとして含有することがより好ましい。本発明に係る飲食品組成物は、ナトリウムを、例えば10〜30 mM、好ましくは10mM〜20mMで含有することが好ましい。本発明に係る飲料の好ましい実施形態では、0.5〜3.0重量%の糖質及び10〜30 mM(好ましくは10mM〜20mM)のナトリウムを含有し得る。
【0051】
本発明に係る飲食品組成物には、pH調整剤として、クエン酸、乳酸、りんご酸、酒石酸、リン酸、酢酸等の食品添加物やレモンなどの天然物等をさらに用いることができる。本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物は、これらのpH調整剤を用いて、そのpHを3〜6、好ましくは3〜5に設定することで、その製造における加熱時や保存時の風味を劣化させることなく、あるいは、それを口腔内に含んだときに爽快感が得られ、嗜好性を向上させることができる。本発明に係る飲食品組成物は、クエン酸をさらに含むことも好ましく、例えば、0.5〜5.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%のクエン酸を含んでもよい。
【0052】
さらに、本発明では、ビタミン類として、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビオチン、葉酸、パントテン酸及びニコチン酸類等を用いることができる。これらビタミン類は、糖代謝、脂質代謝、アミノ酸代謝など種々の代謝に関与する。特に、ビタミンB1とその誘導体は、解糖系の補酵素として糖代謝に関係するものであり、飲食品等に含まれている糖質を効率よくエネルギーに変換する働きが期待できる。
【0053】
本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物には、その水分吸収性や胃排出速度に悪影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、飲食品の製造において通常で使用されている着色料、着香料、保存料、防かび剤、酸化防止剤、乳化剤、ゲル化剤等を配合することができる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明に係る飲食品組成物は、典型的には、全体量の80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上の水分量を有する。ここでいう水分量は、飲食品組成物中の液体の水に加え、氷、ゼリー等を構成する水の量も含む。本発明に係る飲食品組成物は、液体(水溶液、コロイド溶液、懸濁液等)であっても、ゲル化物、凍結物又は半凍結物等の固体又は半固体(例えば、ゼリー、氷、シャーベット等)であってもよいし、又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。本発明に係る飲食品組成物の水分量は、その原料の重量比から算出することができる。本発明に係る飲食品組成物は、液状、半固体状等の飲用可能な任意の形態であってよい。本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物は、酸性清涼飲料、栄養強化飲料、特定保健食品飲料、乳酸菌飲料等の飲料類(ドリンク類)や、固形状のゼリー、氷菓等の菓子製品として製剤化したものでもよい。
【0055】
本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物は、その浸透圧として、生理的浸透圧である285 mOsm/kg H2Oよりも低張性であることが、腸管から水分や電解質を速やかに吸収させる上で重要な因子である。また、一方で、本発明の水分吸収性に優れた飲食品組成物は、電解質と糖質を適当量で含有していることも、腸管から水分や電解質をより速やかに吸収させる上で重要な因子である。電解質や糖質の含有量が低すぎるために、浸透圧が低くなると、かえって腸管から水分や電解質を吸収しにくくなり、それらの吸収速度は抑制される。したがって、腸管へ水分や電解質を効果的に吸収させるためには、至適な浸透圧の範囲の存在と、前述した複数の要因の影響を考慮する必要がある。このとき、例えば、浸透圧の範囲として、40〜250 mOsm/kg H2Oが好ましい。本発明に係る飲食品組成物は、その浸透圧が40〜250 mOsm/kg H2Oであることが好ましく、50〜220 mOsm/kg H2Oであることがより好ましく、50〜200 mOsm/kg H2Oであることがさらに好ましく、例えば50〜150 mOsm/kg H2O、50〜100 mOsm/kg H2O又は45〜95 mOsm/kg H2Oであることも好ましい。本発明に係る飲食品組成物の浸透圧の測定は、氷点降下法により行うことが好ましい。この浸透圧の測定は、例えば、浸透圧分析装置OM-6060(アークレイ(株))を用いて、超過冷却方式による氷点降下法により行うことができる。本発明に係る飲食品組成物が凍結物又は半凍結物である場合には、摂取後を想定し、解凍後に浸透圧を測定すればよい。同様に、本発明に係る飲食品組成物がゲル化物である場合には、摂取後を想定し、適当なサイズに破砕後に浸透圧を測定すればよい。
【0056】
本発明に係る飲食品組成物は、優れた水分吸収性を有する。本発明に係る飲食品組成物はまた、良好な胃排出速度を示す。本発明に係る飲食品組成物における水分吸収性は、当業者には周知のラット小腸灌流試験を用いて評価することができる。ラット小腸灌流試験の詳細は後述の実施例の記載を参照すればよい。本発明に係る飲食品組成物は、限定するものではないが、例えば、ラット小腸灌流試験において、180 μL/min〜500 μL/min、より好ましくは200〜400 μL/minの平均水分吸収速度を示すことができる。したがって本発明に係る飲食品組成物は、水分補給用に好適である。
【0057】
本発明に係る飲食品組成物は当業者に周知の製造方法によって調製することができる。本発明に係る飲食品組成物は、プレミックス組成物を水性溶媒(蒸留水など)に溶解することによって調製することもできる。本発明に係る飲食品組成物は、水性溶媒に溶解したプレミックス組成物を、摂取時に水分を放出可能な形態に加工することによって調製してもよく、例えば、凍結若しくは半凍結させたり、又は寒天やタンパク質等のゲル化剤を添加してゲル化したりすることによって調製することもできる。本発明におけるプレミックス組成物は、本発明に係る飲食品組成物の成分である上記のようなタンパク質加水分解物及び/又はアミノ酸と、糖質と、電解質との混合物を、水性溶媒に溶解可能な形態で含有する組成物である。タンパク質加水分解物、アミノ酸、糖質、及び電解質、並びに他の成分の詳細については、本発明に係る飲食品組成物について上述したとおりである。本発明は、そのようなプレミックス組成物にも関する。本発明に係るプレミックス組成物は、好ましくは、タンパク質加水分解物及び/又はアミノ酸1 g当たり、0.06〜12 g(より好ましくは0.1〜8 g)の糖質及び0.1〜12 mmol(より好ましくは0.2〜7 mmol)のナトリウムを含む。
【0058】
本発明に係るプレミックス組成物は、上記のタンパク質加水分解物及び/又はアミノ酸と、糖質と、電解質に加えて、上述のような食品添加物や保存剤等の、本発明に係る飲食品の他の成分を含んでもよい。例えば本発明に係るプレミックス組成物は、クエン酸を含有してもよい。本発明に係るプレミックス組成物は、固形物、破砕物、顆粒、粉末、濃縮液体、ゼリーなどの半固体、ゲル等の任意の形態であってよい。本発明に係るプレミックス組成物は、その成分を混合し、当業者に周知の任意の製剤方法で製剤することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」表示は特に明記する場合を除き、重量%を示すものとする。
【0060】
[実施例1]アミノ酸と水分吸収性の検討
各アミノ酸を飲料に配合(添加)した場合において、水分吸収性に与える影響を所定の試験系により検討した。この試験系は、ラット小腸灌流試験であり、小腸における飲料の水分吸収性の評価系として確立されている。
【0061】
今回の試験には、表1に示す飲料を用いた。低張性の飲料は、表1の組成になるように水溶液として調製した。表1中、低張性の飲料及びアミノ酸配合飲料に含まれる糖質はトレハロースである。アミノ酸配合飲料は、低張性の飲料に対して、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン(9種類)をそれぞれ1種類ずつ、25mmol/Lの濃度で添加して調製したものであり、低張性である。対照群は、市販されている経口補水液(アクアサポート、明治社製)と低張性の飲料(アミノ酸配合飲料からアミノ酸を除いた組成の飲料)である。また、各飲料には、非吸収性の内部標準物質として、フェノールスルホンフタレイン(PSP)を20mg/Lで配合した。
【表1】
【0062】
ラット小腸灌流試験の方法は次の通りである。7週齢の雄性SD系ラットを購入し、1週間以上で馴化させてから、実際の経口投与試験の前日から一晩絶食させた。ラットにウレタンを1.4g/kgで皮下投与してから、1時間以上が経過した後に、試験を開始した。ラット小腸灌流試験の概要図を図1に示す。ラットを電気マット上に保定し、ラットの腹部をオスバン消毒液で消毒してから正中線で開腹した。十二指腸の幽門部から約1 cmの部分を切開し、灌流液の注入のためのカテーテルを挿入し、結紮して固定した。灌流液の回収のためのカテーテルを回腸の終端部に挿入し、結紮して固定した。各試験溶液を30mLずつシリンジから、ゆっくりと手動で注入し、小腸内を洗浄した。シリンジポンプにより試験溶液を0.5 mL/minの速度で注入して、灌流した。1時間で平衡化した後に、回腸終端から出た灌流液を30分間採取した。大動脈血は、その一部をEDTA処理し、血球分析装置により、ヘマトクリット値、赤血球数等の測定に用いた。
【0063】
平均水分吸収速度の測定は次の通りである。灌流前の飲料と、回収した灌流液に、NaOH水溶液を加えた後に、560nmの吸光度を測定し、PSP濃度を定量した。次式により、平均水分吸収速度を計算した。
【0064】
平均水分吸収速度(μL/min) = V×(1−Pi/P)× 1000
V : 注入速度(mL/min)
Pi : 試験前(灌流前)の飲料のPSP濃度(mg/L)
P : 回収した灌流液のPSP濃度(mg/L)
今回の試験によって得られた数値を平均値+標準偏差で表した。この統計解析には、Bartlettの検定により、等分散性が仮定できることを確認し、経口補水液の摂取群を対照群としてDunnettの検定を用いた。いずれの検定も有意水準は両側5%とした。これらの検定には、StatLight#04多群の比較(ユックムス(株))を使用した。
【0065】
小腸における各飲料の平均水分吸収速度の平均値を図2に示す。今回の試験で検討した本発明のアミノ酸(9種類)のうち、アスパラギン酸以外を配合したアミノ酸配合飲料では、溶媒(対照)として用いた低張性の飲料よりも、水分吸収速度が速い傾向を示した。そして、それらアミノ酸のうち、アラニン、リジンの水分吸収速度が特に速く、経口補水液と比較して有意な数値を示した。アルギニンやリジンに関しては、腸管からの水分泌を促進して、水分吸収を抑制するという結果が報告されているが、今回の低浸透圧の条件では、その結果とは逆に、水分吸収を促進する可能性が示唆された。以上から、アスパラギン酸以外のアミノ酸配合飲料では、経口補水液よりも、小腸における水分吸収性が高く、それらアミノ酸のうち、特に、アラニン、リジンが水分吸収性を高めることが明らかとなった。
【0066】
[実施例2]ホエイペプチドと水分吸収性の検討
ホエイペプチドを飲料に配合(添加)した場合において、水分吸収性に与える影響を所定の試験系により検討した。この試験系は、実施例1と同様である。
【0067】
今回の試験には、表2に示す組成の水溶液である飲料を用いた。表2中、低張性の飲料及びペプチド配合飲料に含まれる糖質はトレハロースである。低張性の飲料(Na:24mg/100mL)は、表2の組成になるように水溶液として調製した。ペプチド配合飲料は、低張性の飲料に対して、ホエイペプチド(Arla Foods 社製、重量平均分子量:700〜1100)を3g/Lの濃度で添加して調製した。対照群は、市販されている経口補水液(アクアサポート、明治社製)、市販されているスポーツドリンク(ポカリスエット、大塚製薬社製)を用いた。また、各飲料には、非吸収性の内部標準物質として、フェノールスルホンフタレイン(PSP)を20mg/Lで配合した。
【表2】
【0068】
小腸における各飲料の平均水分吸収速度の平均値を図3に示す。また、小腸灌流試験におけるラット血液中のヘマトクリット値を図4に示す。ラット小腸灌流試験の方法、平均水分吸収速度の測定、統計解析の方法は実施例1と同様である。スポーツドリンクでは、他の3群と比較して、水分吸収速度が有意に遅かった。低張性の飲料では、アクアサポートと水分吸収速度が同程度であった。本発明のホエイペプチド配合飲料では、アクアサポートや低張性の飲料よりも、水分吸収速度が速い傾向を示した。また、アクアサポート、ペプチド配合飲料では、スポーツドリンクと比較して、ヘマトクリット値が低かった。血漿量が増えることで、ヘマトクリット値は低くなることから、アクアサポート、ペプチド配合飲料では、スポーツドリンクよりも、灌流後に血漿量が増えたことが示唆された。以上から、ホエイペプチドを配合した飲料では、従来のスポーツ飲料や経口補水液よりも、脱水時の水分補給等に有用であることが明らかとなった。
【0069】
[実施例3]アミノ酸飲料及びペプチド飲料の胃排出速度の検討
アミノ酸とホエイペプチドを飲料に配合(添加)した場合において、胃排出速度に与える影響をラット試験により検討した。
【0070】
今回の試験には、表3と表4に示す組成の水溶液である飲料を用いた。表3中、アミノ酸配合飲料及びペプチド配合飲料に含まれる糖質はトレハロースである。アミノ酸配合飲料(リジン配合飲料、アラニン配合飲料)、ペプチド配合飲料、市販されている高分岐環状デキストリン配合飲料(CCDドリンク、グリコ社製)を用いた。なお、この高分岐環状デキストリン配合飲料では、市販品の1袋(42.5g)を蒸留水の500mLに溶かして調製した。
【0071】
試験方法は次の通りである。6週齢の雄性SD系ラットを購入し、1週間以上で馴化させてから、実際の経口投与試験の24時間前から絶食させ、4時間前から絶水させた。この馴化・試験の期間中の飼料には、固形のCRF-1を用いた。ここで、経口投与の前に、各飲料に非吸収性の内部標準物質として、フェノールスルホンフタレイン(PSP)を50mg/Lで配合し、約37℃に加温した。ラットに各飲料を20mL/kgの容量で単回強制経口投与した。そして、その経口投与から5分後に、頚椎脱臼により、ラットを速やかに安楽死させ、速やかに開腹して、胃の噴門部と幽門部を結紮後に、胃を摘出し、胃内容物を採取した。
【0072】
胃排出率の測定は次の通りである。経口投与前の飲料と、胃内容物に、NaOH水溶液を加えた後に、560nmの吸光度を測定し、PSP濃度を定量した。次式により、胃排出率を計算した。
【0073】
胃排出率(%) = (1−胃内容物のPSP/経口投与前の飲料のPSP)×100
【表3】
【表4】
【0074】
各飲料の投与後の5分間における胃排出率を図5に示す。リジン配合飲料、アラニン配合飲料、ペプチド配合飲料では、高分岐環状デキストリン配合飲料(従来の胃排出速度の速い飲料)と比較して、同等以上の胃排出率を示した。このことから、リジン配合飲料、アラニン配合飲料、ペプチド配合飲料は、高分岐環状デキストリン配合飲料と比較して、胃排出速度が速いことが明らかとなった。
【0075】
[実施例4]ペプチド配合飲料のナトリウム濃度と水分吸収性の関係の検討
異なるナトリウム濃度を有する低張性のペプチド配合飲料について、ラット小腸灌流試験により、小腸における水分吸収性を評価し、飲料のナトリウム濃度と水分吸収性の関係を調べた。試験飲料としては表5に示す組成を有する水溶液である4種類のペプチド配合飲料を用いた。表5中、ペプチド配合飲料に含まれる糖質はグルコースである。ラット小腸灌流試験は実施例1と同様の方法で実施した。対照飲料として経口補水液OS-1(大塚製薬社製)を用いた。各飲料には、非吸収性の内部標準物質として、フェノールスルホンフタレイン(PSP)を終濃度20 mg/Lで添加して試験に供した。
【表5】
【0076】
測定された平均水分吸収速度を図6に、ヘマトクリット値を図7に示す。ヘマトクリット値は、体内に水分が吸収され、血漿量が増えると低下する。
【0077】
図6において、10 mM以上のナトリウム濃度を有する低張性のペプチド配合飲料の投与により、経口補水液OS-1と比較して統計学的に有意に高い平均水分吸収速度が示された。特に20 mM〜30mMのナトリウム濃度を有する低張性のペプチド配合飲料はさらに高い平均水分吸収速度を示した。また図7に示すように、10 mM以上のナトリウムを含むペプチド配合飲料を投与することによりヘマトクリット値が顕著に低下し、すなわち血漿量が増加したことから、血中への水分補給効果も裏付けられた。
【0078】
したがって、低張性ペプチド配合飲料に10 mM以上のナトリウムを添加することで、高い水分吸収速度と高い水分補給効果を実現することに成功した。
【0079】
[実施例5]ホエイペプチド濃度と水分吸収性の関係の検討
異なるペプチド濃度(0.1、0.2、0.3、1.0、3.0、6.0、及び10%濃度)を有する低張性のペプチド配合飲料について、ラット小腸灌流試験により小腸における水分吸収性を評価し、飲料のペプチド濃度と水分吸収性の関係を調べた。試験飲料としては、表6に示す組成の低張性溶媒(水溶液)中に0.1、0.2、0.3、1.0、3.0、6.0、及び10%濃度のホエイペプチドを含む6種類の飲料を用いた。ホエイペプチドは実施例2で用いたものと同じである。対照飲料としては、表6に示す組成の低張性溶媒(水溶液)を、ホエイペプチドを添加せずに用いた(ペプチド濃度0%)。各飲料には、非吸収性の内部標準物質として、フェノールスルホンフタレイン(PSP)を終濃度20 mg/Lで添加して試験に供した。
【表6】
【0080】
ラット小腸灌流試験による水分吸収性の評価は実施例1と類似した方法で実施した。購入した7週齢の雄性SDラットは1週間以上馴化させてから試験に用いた。小腸灌流試験では、まず、ラットを一晩(16時間以上20時間以内)絶食させた後、ラットにウレタンを1.5g/kg皮下投与し、麻酔をかけた。十二指腸の幽門部から1〜2 cmの部分及び回腸の終端部にカテーテルを挿入し、結紮して固定した。シリンジから各試験飲料約30 mLをゆっくりと手動で注入し、小腸内を洗浄した。シリンジポンプにより試験飲料を0.75 mL/minの速度で注入し、灌流した。40分後から、灌流液を20分間回収した。灌流液回収の終了後、腹部大動脈から全採血した。十二指腸〜回腸を摘出し、凍結乾燥して乾燥重量を測定した。採取した血液は、体内水分状態の指標としてヘマトクリット値、ヘモグロビン濃度などを血球分析装置により測定した。
【0081】
平均水分吸収速度の測定は次のようにして行った。灌流前の試験飲料と回収した灌流液にNaOHを終濃度1Mで加えてアルカリ性にした後、波長560nmでの吸光度測定を行い、PSP濃度を定量した。次式から平均水分吸収速度を算出した。
【0082】
平均水分吸収速度(μL/min)= V×(1−Pi/P) ×1000
V: 注入速度(mL/min)
Pi: 灌流前の試験飲料のPSP濃度(mg/L)
P: 回収した灌流液のPSP濃度(mg/L)
その結果を図8に示す。図8から、0.2%を超え6%程度までのペプチド濃度の飲料では、対照飲料である低張性溶媒(ぺプチド0%)と比較して平均水分吸収速度が増加することが示された。図8では、ペプチド濃度が1%以上では平均水分吸収速度の上昇が頭打ちになり、3%を超えると逆に低下した。ペプチドの吸収とともに水が吸収される効果と、腸管内のペプチド由来の浸透圧によって水が腸管内へと分泌される効果の双方が共に生じる結果、1〜3%がホエイぺプチドの至適濃度となると考えられる。ヘマトクリット値についても、ペプチド濃度0.3〜6%では、対照飲料のぺプチド濃度0%と比較して低い値を示した。一方、ペプチド濃度6%超では、対照飲料のぺプチド濃度0%と比較してむしろ高いヘマトクリット値を示した。
【0083】
この結果から、水分吸収性の点からは、低張性ペプチド配合飲料中のペプチド濃度は0.2%を超え10.0%未満まで、およそ0.25%〜0.75%が好適であり、とりわけ1.0%〜3.0%は水分吸収効果が非常に高いことが示された。
【0084】
[実施例6]ペプチド製品の種類と水分吸収性の関係の検討
実施例5で示されたように、低張性ペプチド配合飲料の水分吸収性の向上には、糖質と電解質だけではなく、ペプチドの存在も大きく関与していた。そこで次に、ホエイペプチドを始めとする、タンパク質加水分解物である各種のペプチド製品を含む低張性ペプチド配合飲料を試験飲料として、ラット小腸灌流法により、ペプチド製品の種類と水分吸収性の関係を検討した。評価するペプチド製品としては、ホエイペプチドの他、食品素材としてよく用いられているカゼインペプチド、大豆ペプチドを用いた。また、ペプチド製品を製造する際に用いるタンパク質加水分解法が水分吸収性に影響するかどうかを調べるため、2種のホエイペプチドを用いた。なおホエイペプチドAは、実施例2〜5で使用したものと同じである。小腸灌流法による水分吸収性の評価は実施例5に記載されたようにして行った。試料飲料は、実施例5で用いた低張性溶媒(表6)に、ペプチド製品を終濃度1.0%で添加することにより調製した。対照飲料としては、実施例5と同じぺプチド濃度0%の低張性溶媒を用いた。使用したペプチド製品は、以下の市販品である。
【0085】
・ホエイペプチドA(Arla Foods 社製)、重量平均分子量:700〜1100
・ホエイペプチドB(Tatua社製)
・カゼインペプチド CE90GMM(日本新薬社製)、重量平均分子量:450
・大豆ペプチド ハイニュートAM(不二製油社製)
測定された平均水分吸収速度を図9に示す。4種のペプチド製品はほぼ同じ値を示し、群間に有意差は見られなかった。なお、今回使用したペプチド製品はいずれもジペプチド/トリペプチドを多く含み、平均分子量は1100程度以下であった。
【0086】
このように異なる原料タンパク質由来のペプチド製品を用いた試験で、水分吸収性に差が見られなかったことから、ペプチド製品のアミノ酸組成や含まれるペプチド断片の配列は低張性ペプチド配合飲料の水分吸収性に大きく影響しないことが示された。飲料に配合するペプチド製品の分解度や平均分子量が同程度であることにより、ペプチド製品の種類が水分吸収性に大きな影響を及ぼさなかったと考えられる。
【0087】
[実施例7]糖質濃度と水分吸収性の関係の検討
異なる糖質濃度を含む低張性ペプチド配合飲料を試験飲料として、ラット小腸灌流法により、糖質濃度と水分吸収性の関係を検討した。試験飲料としては表7に示す組成を有する水溶液である、グルコース濃度0.5%、1.0%、2.5%、及び5.0%のペプチド配合飲料(ナトリウム濃度20 mM、ペプチド濃度0.3%)を用いた。小腸灌流法による水分吸収性の評価は実施例5と同様の方法で行った。
【表7】
【0088】
測定された平均水分吸収速度を図10に示す。グルコース濃度0.5%〜2.5%の上記ホエイペプチド配合飲料は良好な水分吸収速度を示したが、グルコース濃度5%ではほとんど水分吸収が認められなかった。
【0089】
[実施例8]浸透圧の測定
実施例1、2及び4〜6で試験に使用した飲料について、浸透圧分析装置OM-6060(アークレイ(株))により、浸透圧を測定した。その結果を表8に示す。
【表8】
【0090】
表8に示されるように、好適なペプチド又はアミノ酸濃度を有する飲料について、水分吸収速度の点で浸透圧は、40〜250 mOsm/kg H2O、特に50〜200 mOsm/kg H2O程度が適していることが示された。
【0091】
[実施例9]ペットボトル飲料の製造
糖質、電解質及びその他の成分を飲料100mlあたり表9に示す量で、攪拌しながら蒸留水に添加し溶解させた後、殺菌(110℃、60秒)し、90℃まで冷却した後にペットボトルに充填することにより、ペットボトル飲料を製造した。ホエイペプチドとしては実施例1と同じものを用いた。この飲料について測定した浸透圧は84 mOsm/kg H2Oであった。
【表9】
【0092】
[実施例10]ホエイペプチドとホエイタンパク質の効果比較
ホエイペプチドを含む低張性ペプチド配合飲料と、ホエイタンパク質を含む低張性ペプチド配合飲料を試験飲料として用いてラット小腸灌流法により水分吸収速度を測定し、ホエイペプチドとホエイタンパク質の効果を比較した。試験飲料としては表10に示す組成を有する水溶液を用いた。対照試料として、Lewis et al.らの報告(Lewis et al., Journal of Athletic Training (2012) 47(1); 61-66)に従って調製した、ホエイタンパク質を配合した等張水溶液を用いた(表10)。小腸灌流法による水分吸収性の評価は実施例1と同様の方法で行った。
【表10】
【0093】
測定された平均水分吸収速度を図11に示す。低張性のホエイペプチド配合飲料は、低張性のホエイタンパク質配合飲料よりも高い水分吸収性を示した。等張性ホエイタンパク質配合飲料は十分な水分吸収性を示さなかった。水分吸収性の面では、タンパク質よりも加水分解されたペプチドの形態の方が有利である事が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明により、胃排出速度が速く、かつ、腸管における水分吸収性が優れた飲食品組成物を提供することができる。
【0095】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11