特許第6346705号(P6346705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6346705-卵加工品 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6346705
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】卵加工品
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20180611BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20180611BHJP
   A23B 5/04 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   A23L15/00 D
   A23L3/36 A
   A23B5/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-231115(P2017-231115)
(22)【出願日】2017年11月30日
【審査請求日】2017年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】市川 絢香
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 洋
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−131215(JP,A)
【文献】 特開2004−236580(JP,A)
【文献】 特開2005−034036(JP,A)
【文献】 特開2005−034034(JP,A)
【文献】 特開2009−034019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00−17/50
A23B 4/00− 5/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理された卵白部に卵黄部が内包された加熱調理済卵様の卵加工品であって、
色差計により測定された前記卵黄部のL値と、前記卵白部を介して測定された前記卵黄部の最小L値との差が25以下である
卵加工品。
【請求項2】
請求項1に記載の卵加工品であって、
前記卵白部の硬さが20000N/m以下である
卵加工品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の卵加工品であって、
前記卵黄部が液状である
卵加工品。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の卵加工品であって、
前記卵加工品が冷凍品である
卵加工品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
卵は、栄養価が高い身近な食材であり、多様な調理方法により加工されてきた。例えば、茹で卵、温泉卵、ポーチドエッグ等の加熱調理品は、卵を加熱調理することで容易に得られる。さらに、これらの加熱調理品は、そのまま食されるだけでなく、料理のトッピングや具材等として様々なメニューに取り入れることができる。
【0003】
これらの卵を用いた調理品は、少人数用の料理として調理するには大きな問題はないが、これを外食産業や中食産業において大量に生産し顧客に供する際には、品質の安定性、保存性の面等の種々の問題があった。
これらの問題に対して、例えば特許文献1では、殻剥きする手間がかからずそのまま料理に用いることができる半割り茹卵様卵加工品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−034019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記卵の加熱調理品において、卵白に内包された卵黄が透けて特有の色味を呈する場合、食卓に彩りを添えるとともに、卵黄特有の風味を感じさせて食欲をそそるものとして特に好まれてきた。
しかしながら、このような食欲をそそる手作り風の彩りのよい外観を有し、かつ、品質の安定性、保存性等の面においても取り扱いやすい卵加工品については知られていなかった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、卵白に卵黄が内包された加熱調理済卵様であって、食欲をそそる彩りのよい外観を有する卵加工品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、卵白部が卵黄部を内包しており、かつ、卵白部を介して測定された卵黄部の色差を所定の値とすることで、卵白部から卵黄部が透けて見え、所望の彩りを付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)卵白部に卵黄部が内包された卵加工品であって、
色差計により測定された前記卵黄部のL値と、卵白部を介して測定された前記卵黄部の最小L値との差が25以下である
卵加工品、
(2)(1)に記載の卵加工品であって、
前記卵白部の硬さが20000N/m以下である、
卵加工品、
(3)(1)又は(2)に記載の卵加工品であって、
前記卵黄部が液状である
卵加工品、
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の卵加工品であって、
前記卵加工品が冷凍品である
卵加工品、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、卵白に卵黄が内包された加熱調理済卵様であって、食欲をそそる彩りのよい外観を有する卵加工品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施態様の卵加工品の縦断面を示す模式図である。
図2】本発明の一実施態様の卵加工品の製造方法における放出過程の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
<卵加工品>
本発明の卵加工品とは、卵白部に卵黄部が内包されており、かつ、卵白部から卵黄部が所定の程度透けて見えるものをいう。これにより、本発明では、卵黄がわずかに透けて見えるような絶妙な彩りを表現することができる。
本発明における加工とは、卵白を含む卵白加工液と卵黄を含む卵黄加工液とを調製し、これらに対して加熱処理等の所定の処理を行うことをいう。すなわち、本発明の卵加工品には、殻付き卵や割卵した全卵等に対して加熱処理のみを行った加熱調理品は含まれない。
後述するように、本発明の卵加工品は、調製された卵白加工液及び卵黄加工液を用いて製造されることで、上記の彩りを各製品において均質に付与することができる。さらに、当該卵加工品は、後述するように凍結させて冷凍品とすることができ、長期の保存も可能となる。
したがって、本発明によれば、手作りの加熱調理品と同等の彩りのよい外観と、業務用として有用な見た目の均質性、保存性、調理の容易性等を兼ね備えた卵加工品を提供することができる。
【0013】
<卵加工品の形状>
図1は、本発明の卵加工品の縦断面図である。以下、卵加工品10の形状について、図1を用いて説明する。なお、本発明の卵加工品10の形状は、図1の形状に限定されない。
本発明の卵加工品10は、卵白部1と、卵黄部2とを有する。
卵白部1は、本発明の卵加工品10の外形をなす。卵白部1の外表面は、典型的には、上方に向けて突出した曲面形状の上面と、略平坦な底面とを有する。卵加工品10の上面とは、上方に凸な曲面で構成される面をいう。卵白部1の上面は、例えば、略半球面状、略半楕円球面状、これらを扁平にした形状等であるとよい。卵白部1の形状は、卵白部1の凝固の程度によっても規定される。例えば後述する半熟状の卵白部1の場合は、製造工程において略半球形状に成形された場合でも、盛り付けた際に自重により扁平形状となる。
卵黄部2は、卵白部1に内包され、卵黄部2の上面側が卵白部1で薄く覆われた構成を有する。このため、本発明の卵加工品10は、平円状の卵白部の上面に卵黄部が乗った目玉焼きとも構成が異なる。卵黄部2は、例えば扁平球状を有するが、これに限定されず、種々の形状を採り得る。
また、卵加工品10を上面から観察したとき、中央部に卵黄部2が透けて見えるとよい。これにより、より良好な外観を得ることができる。
卵黄部2は、全体として卵白部1の上面側に偏在するように配置されるとよく、あるいは一部が当該上面に近接するように配置されるとよい。これにより、上面側から見た時に、卵白部1を介して、卵黄部2が透けて見える外観を有する卵加工品10が得られる。
【0014】
<卵黄部に対する卵白部の質量比>
本発明の卵白部1は、1部の卵黄部2に対して、2部より多くてもよく、さらに2.5部より多くてもよい。また、卵白部1は、卵黄の風味が感じられるという観点から、1部の卵黄部2に対して、7部以下であるとよい。ここで、一般的な鶏卵では、卵白は、1部の卵黄に対して、約2部含まれる。即ち、本発明の卵加工品10では、鶏卵よりも卵白部1の量が多い構成としてもよい。これにより、十分な量の卵白部1で、卵黄部2を確実に内包させることができる。
【0015】
<卵黄部>
本発明の卵黄部2は、卵黄を含む。
本発明で用いられる卵黄は、卵を割卵して卵白と分離した卵黄、また、液卵黄、乾燥卵黄、乾燥卵黄を水戻ししたもの、冷凍処理後解凍したもの、加熱殺菌処理したもの、脱コレステロール処理したもの、酵素処理したもの、食塩又は糖類等の混合処理したもの等が含まれる。また、当該卵黄は、これらを1種又は2種以上含むものであるとよい。
また、卵黄部2は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加物を含んでもよい。当該添加物としては、清水、澱粉及びキサンタンガム等の増粘多糖類、菜種油及び大豆油等の食用油脂、寒天及びゼラチンなどのゲル化剤、水飴等の糖類等が挙げられる。
【0016】
<色差>
本発明の卵加工品10では、卵黄部2のL値(L)と、卵白部1を介して測定された卵黄部2の最小L値(L)とを測定し、LとLのL値の差(L−L)を色差として求めることで、卵黄部2が透けて見える程度について規定する。
また、卵黄部2のL値(L)とは、Lを測定した部分の卵白部1を除去し、卵黄部2を直接観察したときのL値をいう。
本発明の色差の測定は、色差計を用いて行い、冷凍品の場合は解凍後に行うものとする。また、測定時の品温は、10℃程度とする。
ここで、L値とは、物質が有する色の明度(lightness)を規定する値をいい、0〜100の間の数値で表される。L値が100である場合、白色を示す。L値が下がるに従い有色となって色が濃くなり、L値が0である場合黒色を示す。
卵白部1を介して測定された卵黄部2の最小L値(L)は、有色の卵黄部2を直接見たときのL値(L)よりも白色に近くなるため、より高い値となる。具体的には、卵黄部2の上面側を覆う卵白部1が厚いほど、白色に近くなるためL値(L)が上昇し、L−Lの値が大きくなる。また、卵黄部2の上面側を覆う卵白が薄いほど、有色の卵黄部2がより明瞭に見えるためL値(L)が低くなり、L−Lの値が小さくなる。
【0017】
<色差の範囲>
本発明の卵加工品において、色差計により測定された卵黄部2のL値(L)と、卵白部1を介して測定された卵黄部2の最小L値(L)との差(L−L)が、25以下であり、13以上22以下であり、さらに14以上18以下であるとよい。また、卵白部1が卵黄部2を内包していない場合は、卵黄部2のL値(L)を定義できないため、ここでいう色差は、0より大きい値をいうものとする。
本発明の卵加工品10における色差が25以下であることにより、卵黄部2が絶妙に透けて見える。これにより、見た目からも卵黄特有のとろっとした風味やホクホクした風味が感じられ、彩りのよい外観を有する美味しそうな卵加工品が得られる。さらに、L値の範囲が規定されることで、個々の卵加工品の見た目のバラつきを抑えることができる。
【0018】
<卵白部>
本発明の卵白部1は、卵黄部2を内包しており、加熱調理された卵白と同様の色調(白色)、食感、風味を有する。
本発明の卵白部1は、加熱調理された卵白と同様の色調、食感、風味等を付与する観点から、卵白を含むとよい。本発明の卵白とは、後述する原料卵白が加熱処理されたものをいう。
卵白部の卵白量は特に限定されず、例えば生換算で10%以上100%以下であるとよく、さらに20%以上85%以下であるとよく、20%以上50%であるとよりよい。
また、卵白部1は、本発明の効果を損なわない範囲で、増粘剤、ゲル化剤、食用油脂、水飴等の糖類、その他の添加剤等を含むことができる。
【0019】
<卵白部の硬さ>
本発明の卵白部1の硬さとは、卵白部1の上下方向(厚み方向)にプランジャーを設置し、卵加工品10に圧縮速度10mm/secで2kgfの荷重を付加した場合に測定された、最大の応力の値をいう。当該プランジャーは、卵加工品10の厚さに対してストレイン95%(クリアランス5%)の条件となるようにセットされるとよい。
本発明の卵白部1の硬さは、20000N/m以下であるとよく、さらに、13000N/m以下であるとよい。これにより、卵白部1を柔らかく形成することができ、半熟状の茹で卵の卵白のように料理に絡みやすい卵加工品10が得られる。
また、卵白部1の硬さを例えば3000N/m以上とすることで、卵白部1の形状を保持することができ、卵白に卵黄が内包された加熱調理済卵様の外観を有する卵加工品10が得られる。
【0020】
<液状の卵黄部>
本発明の卵黄部2は、液状であってもよい。本発明の液状とは、卵黄部2がほぼ凝固しておらず、流動性を有することをいう。すなわち、本発明では、卵黄部2の一部が凝固していても、流動性を有する部分がある場合は「液状の卵黄部」というものとする。卵黄部2を液状に形成することにより、卵白部1と馴染み易く、料理に絡みやすい卵加工品10が得られる。
【0021】
<卵白を含む卵黄部>
本発明の卵黄部2は、卵白を含むとよい。この場合、卵黄部2は、例えば、生卵を割卵して溶きほぐして調製した生液全卵、生液卵黄と生液卵白とを任意の割合で混合したもの等を含む。また、これらに乾燥処理、酵素処理、脱糖処理、コレステロール処理、食塩又は糖類等の混合処理等の1種又は2種以上の処理を施したものを含んでもよい。
卵黄部2における卵白の量は、生換算で、2質量%以上20質量%以下であるとよく、さらに2質量%以上10質量%以下であるとよい。上記範囲とすることで、卵黄部2に全卵を用いることができ、後述するように製造上有利になるとともに、凝固しやすい卵白を含んでいても液状の卵黄部2が得られやすくなる。
【0022】
<卵加工品の用途例>
本発明の卵加工品10の用途は、特に限定されないが、卵白部1と卵黄部2の凝固の状態に応じて様々な食品のトッピングや具材として用いることができる。
例えば、卵白部1を半熟状、卵黄部2を液状とした場合、主に、サラダ、パスタ、牛丼、ハンバーグ等の料理のトッピングとして用いることができる。これにより、卵加工品10をほぐしたときに、半熟状の柔らかな卵白部1が料理の上に緩やかに広がるとともに、流動性を有する卵黄部2がとろっと流れ出る。したがって、卵白部1及び卵黄部2の双方が料理と絡みやすく、トッピングとして適した卵加工品10を提供することができる。
一方、卵白部1を凝固させた場合は、例えば、ラーメンや、サンドイッチ等の具材として用いることができる。この場合は、卵加工品10が卵らしい彩り豊かな外観を呈していることから、卵黄部2を視認させるための半分に割る等の処理を不要とし、手間をかけずに具材として用いることができる。
【0023】
<卵加工品の製造方法>
本発明の卵加工品の製造方法は、卵白加工液及び卵黄加工液を調製する工程と、卵白加工液を放出した後、卵黄加工液を放出して上記卵白加工液に上記卵黄加工液を内包させる工程と、放出された上記卵黄加工液及び上記卵白加工液を加熱する工程と、を含む。
以下具体的に説明する。
【0024】
<調製工程>
まず、卵白加工液及び卵黄加工液をそれぞれ調製する。
各加工液は、所定量の原料を常法にしたがって均一に混合しながら調製される。各加工液の材料の混合は、例えば、ミキサーやマグネチックスターラー等で攪拌することにより行われる。
卵白加工液及び卵黄加工液の材料及び配合は、後述するように、放出工程において卵白加工液が卵黄加工液を内包できるように適宜調製されるとよい。
【0025】
<卵白加工液>
本発明の卵白加工液は、原料卵白を含有する。
本発明の原料卵白とは、液卵白、これを乾燥処理した乾燥卵白等をいう。本発明の液卵白とは、鶏卵等の卵を割卵し卵黄を分離して得られる生液卵白、これに凍結解凍処理、加熱殺菌処理、脱糖処理、脱リゾチーム処理、濃縮処理等を施したものをいう。本発明の原料卵白は、これらを2種以上含むこともでき、一例として、液卵白と乾燥卵白とを含むとよい。これにより、卵加工品の食感を向上させることができる。
本発明の卵白加工液は、粘度の調整等の観点から、増粘剤を含むとよい。上記増粘剤としては、特に限定されないが、加工澱粉及び未加工澱粉を含む澱粉、グルコマンナン等のマンナン、キサンタンガム等のガム質等が挙げられる。
さらに、本発明の卵白加工液は、成型性、品質保持等の観点から、ゼラチン及び寒天等のゲル化剤、菜種油及び大豆油等の食用油脂、水飴等の糖類、乳化剤、その他の添加剤を含むことができる。
【0026】
<卵白加工液の卵白量>
本発明の卵白加工液の卵白量とは、卵白加工液中における原料卵白の生換算の量をいう。卵白加工液の卵白量は、例えば10%以上100%以下であるとよく、20%以上85%以下であるとよく、さらに20%以上50%以下であるとよりよい。卵白加工液の卵白量を10%以上100%以下とすることで、卵黄部が内包され、かつ色差が25以下となるように卵黄部が透けて見える卵加工品が得られやすい。また、当該卵白量を20%以上85%とすることで、卵黄部がより絶妙に透けた卵加工品が得られる。さらに20%以上50%とすることで、卵白部を柔らかく形成することができ、食品により絡みやすい卵加工品が得られる。
【0027】
<卵白加工液の粘度>
卵白加工液の粘度は、例えば3000〜17000mPa・sであり、さらに4000〜10000mPa・sであるとよい。卵白加工液の粘度を3000〜17000mPa・sとすることで、色差が25以下となるように卵黄部が透けて見える卵加工品が得られやすい。4000〜10000mPa・sにすることで、卵黄部がより絶妙に透けた卵加工品が得られやすい。
卵白加工液の粘度は、例えば、BH型粘度計により、品温30±2℃、回転数10rpmの条件で測定することができる。
【0028】
<卵白加工液の比重>
卵白加工液の比重は、例えば1.0より大きく、1.1以下であるとよい。卵白加工液の比重をこのような範囲とすることで、放出工程において卵黄加工液を内包する形状に成型しやすくなる。
卵白加工液の比重は、例えば以下のように測定できる。まず、重量及び容量が既知の容器に卵白加工液を充填する。このとき、卵白加工液が当該容器から表面張力でぎりぎりこぼれない程度の満杯となるように充填し、当該容器から溢れた分は摺り切るようにする。続いて、卵白加工液が充填された容器の重量を測定し、当該重量から容器の重量を減じることで、卵白加工液の重量を求める。さらに、卵白加工液の重量を水の重さ(容器の容量)で除することで、比重を求めることができる。比重の測定時における卵白加工液の温度は、20〜40℃とすることができ、例えば30℃とすることができる。
【0029】
<卵黄加工液>
本発明の卵黄加工液は、原料卵黄を含む。
本発明の原料卵黄とは、液卵黄を含む原料液をいい、液卵黄、液全卵等が挙げられる。本発明の液卵黄とは、鶏卵等の卵を割卵し卵白を分離して得られる生液卵黄、これに冷凍及び解凍処理、加熱殺菌処理、脱糖処理、脱リゾチーム処理、濃縮処理等を施したものをいう。本発明の液全卵とは、鶏卵等の卵を割卵し攪拌して得られる生液全卵、これに上記処理を施したもの、上記液卵黄と上記液卵白とを所定の割合で混合したもの等が挙げられる。
本発明の卵黄加工液は、卵白加工液と同様に、上記増粘剤を含むとよい。さらに、本発明の卵黄加工液は、生液卵黄と同様の色調、風味を付与する等の観点から、食用油脂、水飴等の糖類、その他の添加剤を含むことができる。
【0030】
<卵黄加工液の卵黄量/卵白量>
本発明の卵黄加工液の卵黄量とは、卵黄加工液中における原料卵黄の生換算の量をいう。本発明の卵黄加工液の卵黄量は、特に限定されないが、例えば、生換算で1%以上であるとよく、さらに2%以上であるとよい。原料卵黄量を1%以上とすることで、卵黄の風味が感じられる卵加工品がより得られやすい。
また、本発明の卵黄加工液は、上述のように、液全卵や液卵白を添加すること等により、卵白を含んでいてもよい。上述のように卵黄加工液における卵白量は、生換算で、2質量%以上20質量%以下であるとよく、さらに2質量%以上10質量%以下であるとよい。上記範囲とすることで、凝固しやすい卵白を含んでいても液状の卵黄部が得られやすくなる。
【0031】
<卵黄加工液の粘度>
卵黄加工液の粘度は、卵白加工液の粘度等に応じて調整することができ、例えば2000〜12000mPa・sであるとよく、さらに4000〜12000mPa・sであるとよい。
上記粘度を2000〜12000mPa・sとすることで、後述する放出工程において卵黄加工液が卵白加工液によって内包され易くなるとともに、色差が25以下となるように卵黄部が透けて見える卵加工品が得られやすい。さらに、上記粘度を4000〜12000mPa・sにすることで、卵黄部がより絶妙に透けた卵加工品が得られやすくなる。卵黄加工液の粘度は、卵白加工液と同様に、原料卵黄の配合量や増粘剤の種類及び量等により調整可能である。
卵黄加工液の粘度は、卵白加工液と同様に、例えば、BH型粘度計により、品温30±2℃、回転数10rpmの条件で測定することができる。
【0032】
<卵黄加工液の比重>
卵黄加工液の比重は、特に限定されないが、例えば1.0より大きく1.1以下であるとよい。また、卵黄加工液が卵白加工液よりも比重を重くすることで、放出工程において卵黄加工液を内包する形状に成型しやすくなる。
卵黄加工液の比重は、卵白加工液と同様に測定することができる。
【0033】
<放出工程>
次に、上記調製された卵白加工液を放出した後、上記調製された卵黄加工液を放出して卵白加工液に卵黄加工液を内包させる。卵白加工液及び卵黄加工液は、後述する凹型充填部材等の所定の容器内に放出される。
卵白加工液及び卵黄加工液の放出量は、例えば20g程度とすることができる。
卵白加工液及び卵黄加工液を放出するタイミングは、卵白加工液に卵黄加工液を内包できればよく、卵白加工液及び卵黄加工液の粘度等に応じて、適宜調整可能である。例えば、卵白加工液の放出を開始した直後、卵黄加工液の放出を開始し、卵白加工液と卵黄加工液とを並行して放出してもよい。また、卵白加工液の全量を放出後、卵黄加工液を放出してもよい。さらに、最初に所定量の卵白加工液を放出後、卵黄加工液を全量放出し、最後に残りの卵白加工液を放出して、卵黄加工液を内包させてもよい。
両液の粘度と併せて放出タイミングを適宜変更することで、卵黄加工液を卵白加工液の表層側に偏在するように分布させることができる。
また、卵白加工液に卵黄加工液が内包されるように、両液を放出するノズルの口径や、流速等が適宜調整されてもよい。
【0034】
<卵白加工液及び卵黄加工液の放出量の比>
卵白加工液及び卵黄加工液の放出量の比は、卵黄加工液1部に対して卵白加工液2部より多いとよく、さらに卵黄加工液1部に対して卵白加工液2.5部より多いとよい。これにより、卵白加工液を十分な量放出し、卵白加工液に卵黄加工液を内包させやすくする。
【0035】
<二重管ノズルを用いた放出>
本発明の放出工程において、二重管ノズルを用いて卵白加工液及び卵黄加工液を放出してもよい。
図2は、本発明の一実施態様の卵加工品の製造方法における放出過程の一例を示す模式図である。以下具体的に説明する。
二重管ノズル20は、外側ノズル21と、内側ノズル22を有する。
図2に示すように、卵白加工液Aを外側ノズル21(第2吐出口)から放出し、かつ内側ノズル22(第1吐出口)から卵黄加工液Bを卵白加工液A中へ放出することで、卵白加工液Aに卵黄加工液Bを内包させてもよい。
本発明の卵加工品の製造方法の放出工程において、卵白加工液A及び卵黄加工液Bを放出するノズルは、図2の二重管ノズル20に限定されず、例えば、内側ノズル22の周囲に複数の外側ノズル21が配置される構成であってもよい。
二重管ノズルを用いることにより、卵黄加工液Bを中央部に放出し、卵白加工液Aをその周縁部に放出することができ、卵白加工液Aにより卵黄加工液Bを内包しやすくすることができる。
【0036】
<凹型充填部材>
本発明の卵白加工液及び卵黄加工液は、凹部が半球状の凹型充填部材に放出されてもよい。
本発明で用いられる凹型充填部材とは、1つ分の卵加工品に相当する量の卵白加工液及び卵黄加工液を収容することが可能であり、半球状の凹部を有する容器をいう。凹型充填部材は、一例として、底面が半球状のカップ(半球状カップ)でもよい。凹型充填部材は、製造される卵加工品の大きさや形状に合わせて、容量や形状を適宜設定可能である。凹型充填部材の材質は、耐熱性や熱伝導率等を鑑みて選択することができ、例えば、樹脂を用いることができる。
凹型充填部材は、典型的には、加工液が充填された状態で加熱される。これにより、卵白加工液が凹型充填部材の形状に応じた半球状に成形され、卵加工品を所望の丸い形状に成形することができる。
【0037】
<加熱工程>
続いて、放出された卵白加工液及び卵黄加工液を加熱する。これにより、卵白加工液が加熱により凝固し、卵白部が卵黄部を内包した状態が保持される。この結果、卵白部1を介して卵黄部2が透けて見える、彩りのよい卵加工品10が得られる。
加熱する方法は、特に限定されないが、蒸気による加熱、湯中での加熱、熱水シャワーによる加熱等を適宜選択できる。
また上述のように、卵白加工液及び卵黄加工液は、容器(例えば凹型充填部材)ごと加熱されるとよい。これにより、容器の形状に応じた形状に卵加工品が成形される。具体的には、容器の底面形状に対応する形状の上面部と、卵白加工液の液面に相当する略平坦な底面とを有する卵加工品が得られる。
【0038】
<蒸気による加熱>
加熱工程において、凹型充填部材等の容器に放出された卵白加工液及び卵黄加工液は、蒸気によって加熱されることが好ましい。例えば、卵白加工液及び卵黄加工液を75〜95℃の蒸気に10〜60分間程度さらすとよい。蒸気を用いることで、卵白加工液及び卵黄加工液を徐々に加熱することができる。卵白加工液及び卵黄加工液の凝固がゆっくりと進行することで、加熱ムラを抑え、全体に均一な硬さの卵加工品が得られやすい。
蒸気のさらし方は特に限定されないが、容器が配置された室内に、細孔を通して下から上へと蒸気を通す、あるいはさらに容器の上側からも蒸気を送風してさらす等の方法が挙げられる。
【0039】
<包装工程>
本発明の卵加工品の製造方法は、包装工程を含んでもよい。
包装工程は、加熱工程前に行ってもよく、加熱工程後に行ってもよい。
包装形態としては、例えば、凹型充填部材ごと包装されてもよい。これにより、包装時に凹型充填部材から卵加工品を一つずつ取り出す手間を省けるとともに、保存や流通の際の型崩れを防止することができる。あるいは、凹型充填部材等の容器から卵加工品を取り出し、1又は複数個ずつ、包装袋に密封されてもよい。
包装袋の材質は、特に限定されず、例えば、ナイロン、ホリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル又はナイロン−ポリエチレン複合シート等が挙げられる。
これにより、卵加工品を包装品とすることができ、保存及び流通が容易になる。また、本発明の卵加工品は、茹で卵や温泉卵のような殻付き卵の加熱調理品と異なり、使用時に殻を取り除く手間を省くことができ、包装袋から取り出すだけで容易に供することができる。さらに、殻を取り除く時に形状が崩れたり、殻が混入したりする恐れもないため、利便性にも優れる。
【0040】
<凍結工程>
本発明の卵加工品の製造方法では、得られた卵加工品に凍結処理を施す工程を含んでもよい。これにより、本発明の卵加工品を冷凍品とすることができる。
凍結工程は、加熱工程後に行われる。また凍結工程は、包装工程の前に行っても、後に行ってもよい。
凍結方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、包装工程で密封された卵加工品10を、−40〜−10℃で凍結することができる。
本発明の卵加工品は、調製された卵白加工液と卵黄加工液とを用いて製造されるため、増粘剤等によって所望の冷凍耐性を付与することができる。すなわち、解凍時の離水を防止し、解凍後の味や外観の劣化を防止することができる。したがって、卵加工品は、冷凍品であっても下記の作用効果を十分に発揮することができる。さらに、卵加工品を冷凍品とすることで、長期保存が可能となり、業務用としても特に好ましい。
【0041】
<本発明の作用効果>
本発明の卵加工品は、卵白部に卵黄部が内包されたものであり、卵白部を介して卵黄部が透けて見える構成を有する。このため、本発明の卵加工品は、トッピングや具材として用いられたときに、例えば卵特有の丸みを帯びた形状の卵白部に卵黄部の色味が添えられ、豊かな彩りを演出することができる。さらに、外観から、卵黄部のとろっとした、あるいはホクホクした好ましい感じを想起させ、食欲をそそる効果も奏する。
さらに、本発明の卵加工品は、卵白部を半熟状、卵黄部を液状に形成できる。半熟状の卵の加熱調理品としては、温泉卵やポーチドエッグが挙げられるが、本発明の卵加工品はこれらとも異なる。
一般に温泉卵とは、卵黄が凝固し、卵白が半熟状であるものをいう。このため、トッピングとして用いた場合に、卵白は柔らかく広がるが、卵黄が凝固しており料理と絡みにくい。
ポーチドエッグは、割卵した全卵を湯中で加熱して調理されるため、表面側の卵白が加熱されやすく、凝固しやすい。このため、特に卵白が料理と絡みにくく、トッピングとしては必ずしも適したものとはいえない。
一方で、本発明の卵加工品は、卵白部が半熟状、卵黄部が液状とすることができるため、ほぐしたときに卵白部が柔らかく広がるとともに、卵黄部もとろっと流れ出る。これにより、卵白部及び卵黄部のいずれも料理と絡みやすい。したがって、温泉卵やポーチドエッグと比較しても、トッピングとしてより適した卵加工品を提供することができる。
さらに、卵は、凝固温度の異なる複数種の卵白蛋白質や卵黄蛋白質を含む。このため、卵の加熱調理品は、加熱条件の調整が難しく、調理品毎に凝固の程度に差異が出やすい。この点においても、本発明の卵加工品は、卵白及び卵黄の量が調整された加工液を用いて製造されるため、手作りの加熱調理品よりも凝固の速さや状態を制御しやすい。したがって、細かな加熱条件の設定をせずとも、所望の品位の卵加工品を安定して製することができる。
これに加えて、本発明の卵加工品では、後述するように、卵白加工液及び卵黄加工液の配合や粘度、比重等を変えることで多様な品位の卵加工品を製することができる。言い換えれば、卵白加工液及び卵黄加工液の配合や物性により大きな制限を受けることなく、上記好ましい外観の卵加工品を製することができる。
また、本発明の卵加工品は、冷凍品として提供可能であり、流通性や保存性を高めることができる。さらに、加工液の配合を調整することで、冷凍耐性を高め、味や外観の劣化を防止することができる。
したがって、本発明によれば、食欲をそそる彩りのよい外観を有し、かつ安定した品位の卵加工品を製することができる。これにより、大量かつ迅速な提供が求められる外食産業、中食産業等においても、手作り風の彩りのよい加熱調理済卵様のトッピングや具材を提供することができる。
【0042】
以下、本発明を実施例等に基づき、さらに説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0043】
[調製工程]
(卵白加工液サンプルの調製)
まず、表1に示すような配合で、卵白加工液のサンプル(卵白サンプル)1〜8を調製した。なお、液卵白は、生換算での量を示している。製した各卵白サンプル中の卵白量(生卵白換算)は、表1に示すように、14%(サンプル7)以上80.5%(サンプル4)以下であった。
【0044】
【表1】
【0045】
(卵白加工液の粘度及び比重の測定)
各卵白サンプルの粘度を、BH型粘度計(東機産業(株)製)により、品温30℃、回転数10rpm、ローターNo.4の条件で測定した。表1に示すように、各卵白サンプルの粘度は、サンプル8で530mPa・sであり、最低値であった。サンプル1〜7では、4140mPa・s(サンプル7)以上13400mPa・s(サンプル2)以下であった。
また、以下の方法により、卵白サンプルの比重を測定した。まず、プラスチック製カップ(容量230ml)に各卵白サンプルを充填した。このとき、各卵白サンプルが当該カップから表面張力でぎりぎりこぼれない程度の満杯となるように充填し、当該カップから溢れた分は摺り切った。続いて、カップに充填された各卵白サンプルの重量を測り、当該重量を水の重さ(230g)で除することで、比重を求めた。比重の測定時における各卵白サンプルの温度は、30℃とした。各卵白サンプルの比重は、1.038(サンプル5)以上1.064(サンプル3,6)以下であった。
【0046】
(卵黄加工液サンプルの調製)
続いて、表2に示すような配合で、卵黄加工液のサンプル(卵黄サンプル)1〜6を調製した。卵黄サンプルは、各原料を混合した後、澱粉を糊化させるため70℃程度で加熱された。製した各卵黄サンプル中の卵黄量は、表2に示すように、生換算で2.0%(サンプル1,2,3,5)以上8.0%(サンプル6)以下であった。各卵黄サンプル中の卵白量は、生換算で4.0%(サンプル1,2,3,5)以上16.0%(サンプル6)以下であった。
卵黄サンプル1〜5は、加熱した際でも黄色の半熟又は液状の色調であったが、卵黄量が8.0%の卵黄サンプル6は、加熱した際に白っぽい色調となり、上記色調とは異なった。
【0047】
【表2】
【0048】
(卵黄加工液の粘度及び比重の測定)
各卵黄サンプルの粘度を、BH型粘度計(東機産業(株)製)により、品温30℃、回転数10rpm、ローターNo.3又は4の条件で測定した。なお、各サンプルで用いたローターNo.については、表2に示している。各卵黄サンプルの粘度は、表2に示すように、2210mPa・s(サンプル4)以上9800mPa・s(サンプル6)以下であった。
また、卵白サンプルと同様に、卵黄サンプルの比重を測定した。各卵黄サンプルの比重は、1.030(サンプル4)以上1.100(サンプル2)以下であった。
【0049】
[実施例1]
卵白加工液として卵白サンプル1を用い、卵黄加工液として卵黄サンプル1を用いて、実施例1の卵加工品を製した。
まず、卵白加工液と卵黄加工液を、二重管ノズルを備えた充填機のホッパー内にセットした。その際、卵黄加工液は上記二重管状ノズルの内側ノズルに連通する充填機のホッパー内に収容した。そして、上記二重管状ノズルと対向するように半球状カップをセットした。そして、二重管状ノズルの外側ノズルから、半球状カップに向けて卵白加工液の放出を開始し、その直後に内側ノズルから卵黄加工液の放出を開始した。その後、卵白加工液を放出しつつ、卵黄加工液を放出した。卵黄加工液の放出を停止した後も卵白加工液の放出を続け、所定量充填したところで卵白加工液の放出を停止した。1つのカップに対して、卵白加工液を15g、卵黄加工液を5g放出し、合計で20gの加工液を充填した。
続いて、半球状カップに充填された卵黄加工液と卵白加工液を、90℃の蒸気で25分間加熱した。半球状カップ内の卵白加工液の表面は、凝固変性によりゲル化され、卵白加工液に卵黄加工液が内包された状態が保持された。
半球状カップを冷却後、半球状カップを回転させて排出し、さらに−30℃で凍結することで、冷凍品としての実施例1の卵加工品が得られた。当該卵加工品は、卵黄部が卵白部に内包されたものであった。
なお、以下の各評価においては、冷蔵庫に一晩静置し、解凍させたものを用いた。
【0050】
[実施例2〜10]
実施例2〜9では、卵白サンプルと卵黄サンプルの組み合わせを表3に記載するものとし、放出工程の方法を変更した以外は、実施例1と同様に卵加工品を製した。なお、実施例6以外は、凍結させ冷凍品として製したが、実施例6は凍結させず、冷蔵品とした。
実施例2〜9の放出工程では、卵白サンプル及び卵黄サンプルのそれぞれに対応するノズルを有する充填機を用い、最初に所定量の卵白サンプルのみを放出し、次に卵白サンプルの放出を停止して卵黄サンプルの全量を放出し、最後に残りの卵白サンプルを放出した。これらの卵加工品は、卵黄部が卵白部に内包されたものであった。
また、表3には示していないが、実施例10として、卵白サンプル1と卵黄サンプル7の組み合わせたものを実施例2と同様に製した。この卵加工品も、卵黄部が卵白部に内包され、かつ卵黄部が卵白部を介して透けて見えているものであった。
以下の各評価においては、実施例6以外は冷蔵庫に一晩静置し、解凍させたものを用いた。実施例6については、冷蔵庫で冷蔵保存したものを用いた。
【0051】
【表3】
【0052】
[比較例1]
比較例1では、表3に示すように、卵白サンプル8と卵黄サンプル1とを用いて、実施例2〜10と同様に放出工程を行い、凍結させて卵加工品を製した。しかしながら、当該卵加工品は、卵黄部が卵白部に内包されたものではなく、卵黄部が卵白部から突出したものであった。以下の各評価においては、冷蔵庫に一晩静置し、解凍させたものを用いた。
【0053】
[卵白部の硬さの評価]
実施例1〜9及び比較例1の卵加工品の硬さを、テクスチャ―アナライザー(Stable Micro Systems社製、Texture Analyzer TA.XT Express)を用いて測定した。まず、品温が10℃の各サンプルを上記装置のステージに直接載せ、卵白部が最も透けて見える(Lが最小になる)位置にプランジャーをセットした。このとき、ストレイン95%の条件となるようにプランジャーをサンプルに刺してセットした。プランジャーとしては、ロードセル(荷重)2kgf、直径5mmの円柱プランジャーを用いた。続いて、圧縮速度10mm/secとなるように卵加工品にプランジャーを負荷し、得られた最大の応力の値を硬さの値とした。測定時の品温は、10℃であった。測定した結果を表3に示す。
実施例1〜9では、硬さの測定値が5872.8N/m(実施例8)以上15107.7N/m(実施例6)以下であった。これらの実施例1〜9の卵白部は、いずれも半熟卵白様であって柔らかく、平面に静置した場合に自重で扁平な球状となり、好ましい形状であった。
【0054】
[色差の測定]
続いて、実施例1〜9及び比較例1の卵加工品に対し、色差計(コニカミノルタセンシング(株)製)を用いて、卵白を介して測定される卵黄部の最小L値(L)と、卵黄部を直接測定したL値(L)とを測定した。Lは、卵加工品の表層の上方から測定した。一方Lは、卵黄部上を被覆する卵白部を取り除き、上方から測定した。測定結果からLとLとの差(L−L)を色差として求めた値を表1に示す。
実施例1〜9では、いずれも色差が25以下であった。特に、色差が14以上18未満の実施例1(15.7),実施例5(17.5)及び実施例7(14.5)では、いずれも卵黄部が絶妙に透けて見えており、彩り豊かな卵加工品が得られた。これらの差が最大値(24.9)となる実施例9でも、卵白部から卵黄部がうっすら透けて見えており、彩りのよい卵加工品であった。
一方、比較例1では、上述のように卵黄部が卵白部に内包されておらず、上記の方法で色差は求められなかった。
【0055】
[外観の評価]
さらに、測定された色差に基づいて、実施例1〜9及び比較例1の卵加工品の外観を詳細に評価した。以下に、評価基準を示す。
(評価基準)
A:色差が14.0以上18.0未満で、卵黄部が十分内包されているとともに、卵黄部が適度に透けて見える。
B1:色差が13.0以上14.0未満で、卵白部がやや薄いが、卵黄部は十分に内包されている。
B2:色差が18.0以上22.0未満で、卵白部はやや厚いが、卵黄部は十分に透けて見えるである。
C1:色差が0より大きく13.0未満で、卵黄部は内包されているが、卵白部が薄い。
C2:色差が22.0以上25.0以下で、卵黄部が透けて見えるが卵白部が厚い。
D1:卵黄部が卵白部に内包されていない。
D2:色差が25よりも大きく、卵黄部が透けて見えない。
実施例1〜9は、いずれも卵黄部が卵白部に内包されており、C以上の評価であった。但し、卵黄加工液の比重が低く粘度が軽い実施例2は、卵白部が薄く、C1であった。また、卵白加工液の粘度が高く卵黄加工液の比重が重い実施例8は、卵白部が厚く、C2の評価であった。
また、卵白加工液の粘度が低い実施例1、卵白加工液中の卵白蛋白質量の多い実施例5、卵白加工液の比重が軽い実施例7では、卵黄部が適度に透けており、外観が良好であった。
乾燥卵白が比較的多い実施例9では、実施例1,5,7よりも卵白部がやや薄いが、実施例2よりも卵白部は厚く、B1の評価であった。また、卵白加工液と卵黄加工液の粘度が高い実施例3、実施例4、及び未凍結の実施例6では、実施例1,5,7よりも卵白部がやや厚いが、実施例8よりも卵白部は薄く、B2の評価であった。
一方で、上述のように、卵白加工液中の卵白蛋白質量が少ない卵白加工液中の比較例1では、やはり解凍後の外観についても卵黄部が内包されておらず、D1の評価となって所望の外観の卵加工品は得られなかった。
また、参考例として、沸騰した熱湯中に割卵した全卵を投下し、常法にしたがってポーチドエッグを製した。当該ポーチドエッグを平板上で観察したところ、卵黄はほとんど透けて見えなかった。平板の上方から実施例と同様に色差を測定したが、25よりも大きく、D2の評価であった。
【0056】
[結果及び総括]
本実施例の結果から、実施例1〜9は、いずれも卵黄部が卵白部に内包され、かつ卵黄部が透けて見える良好な外観を有していた。一方、比較例1では、卵白加工液が卵黄加工液を内包できず、卵白部が卵黄部を内包する形状が得られなかった。
【0057】
(加工液の粘度について)
まず卵白加工液の粘度の観点から、比較例1の卵白加工液の粘度は530mPa・sである一方で、実施例1〜9では同粘度が4140mPa・s(実施例9)以上13400mPa・s(実施例3,4)であった。この結果から、卵白加工液の粘度が3000mPa・s以上であると、卵白部が卵黄部を内包する形状が得られやすいと言える。
卵黄加工液の粘度から卵白加工液の粘度を引いた差(以下「粘度差」と称する)の観点から、比較例1の粘度差は7330mPa・sと大きかった。これにより、卵白加工液の粘度が低く、卵黄加工液の粘度が高い場合は、卵白部が卵黄部を内包する形状が得られにくいことが確認された。
一方で、実施例4のように卵黄加工液の粘度が9600mPa・sと高くても、卵白加工液の粘度が13400mPa・sと高く、粘度差が0以下(−3800Pa・s)であれば、十分所望の外観が得られることが確認された。また、実施例8のように、卵黄加工液の粘度が2210mPa・sと低くても、卵白加工液の粘度が6820mPa・sとある程度高ければ、所望の外観が得られることが確認された。
各加工液の粘度と外観とのより詳細な関係については、後述する。
【0058】
(加工液の配合について)
卵白加工液の卵白量の観点からは、14.0%(実施例9)以上80.5%(実施例6)以下と幅広い卵白蛋白質量の範囲で所望の外観の卵加工品が得られることが確認された。また、卵白加工液の原料卵白として、実施例9のように、液卵白の量が少なく(7.0%)、乾燥卵白の量が比較的多い(1.0%)場合でも、本発明の卵加工品が得られることが確認された。
卵黄加工液については、液全卵を用いても、すなわち卵白を含んでいても、本発明の卵加工品が得られることが確認された。
【0059】
(加工液の比重について)
実施例8のように卵黄加工液の比重(1.030)が卵白加工液の比重(1.064)よりも軽くても、卵黄部が透けて見える外観が得られることが確認された。一般的には、比重が重い方が沈みやすいため、卵黄加工液の比重が重い方が卵黄部が透ける外観を得られやすいと考えられる。しかし、この実施例8の結果から、卵黄加工液の比重が軽い場合でも、卵白加工液の粘度がある程度(例えば6820mPa・s)大きければ十分本発明の卵加工品が得られることが確認された。
【0060】
(加工液の粘度及び卵白加工液の卵白量並びに外観(色差)との関係について)
さらに、各加工液の粘度及び卵白加工液の卵白量と、外観(色差)との間には、以下のような関係が見られた。
実施例1,5,7では、上述のように、外観の評価がAであった。このことから、卵白加工液の粘度が4000mPa・s以上10000mPa・s以下であり、卵黄加工液の粘度が4000mPa・s以上12000mPa・s以下であり、かつ卵白加工液中の卵白量が20.0%以上50.0%以下であると、卵黄部が絶妙に透けて見える、非常に好ましい外観の卵加工品が得られることが確認された。
一方で、外観の評価がB1の実施例9により、卵白加工液中の卵白量が上記範囲内でなく10.0%以上100.0%未満の範囲内であっても、卵白加工液及び卵黄加工液の粘度が上記範囲内であると、実施例1,5,7よりも卵白部がやや薄いが好ましい外観の卵加工品が得られることが確認された。
また、外観の評価がB2の実施例3,4,6により、卵白加工液の粘度が4000mPa・s以上10000mPa・s以下でなく3000mPa・s以上17000mPa・s以下の範囲内であっても、卵黄加工液の粘度が4000mPa・s以上12000mPa・s以下であれば、卵白部がやや厚いが、卵黄部が透けて見える好ましい外観の卵加工品が得られることが確認された。また、実施例6に示すように、卵白加工液中の卵白量が20.0%以上50.0%以下でなく20.0%以上85.0%以下であっても、卵黄加工液の粘度が上記範囲内であれば、上記好ましい外観が得られることが確認された。
一方で、外観の評価がC1,C2の実施例2,8により、卵黄加工液の粘度が4000mPa・s以上12000mPa・s以下でない場合は、卵白加工液の粘度及び卵白加工液中の卵白量が好ましい範囲であっても、若干外観が劣ることが確認された。具体的には、実施例2、4のいずれも卵黄加工液の粘度が2000mPa・s以上4000mPa・s未満であるが、実施例2は卵白部が薄くC1、実施例8は卵白部が厚くC2の評価であった。このことから、卵黄加工液の粘度を4000mPa・s以上12000mPa・s以下とすることにより、特に安定した品位の卵加工品が得られることが確認された。
【0061】
(総括)
以上のように、本実施例から、卵白加工液と卵黄加工液の粘度、並びに各液における原料卵白及び原料卵黄の量等を調整することで、本発明の卵加工品が得られることが確認された。また、上述のように、卵白加工液の粘度は3000〜17000mPa・s程度、卵黄加工液の粘度は2000〜12000mPa・s程度と広い範囲で調整できることが確認された。また、卵白加工液中の卵白量も10〜100%程度と広い範囲で調整可能であった。このように、本発明における上記色差が25以下で卵白部が卵黄部を内包する形状の卵加工品は、卵白加工液と卵黄加工液の配合の自由度が高いため、所望の硬さや風味、食感、冷凍耐性等を容易に得ることができる。
また、上述のように、卵白加工液及び卵黄加工液の粘度並びに卵白加工液の卵白量を好ましい範囲に調整することで、卵黄部が適度に透けて見える良好な外観の卵加工品を得ることができる。特に、卵黄加工液の粘度を4000〜12000mPa・sに調整することで、安定した品位の卵加工品を得ることができる。
【要約】      (修正有)
【課題】卵白に卵黄が内包された加熱調理済卵様であって、食欲をそそる彩りのよい外観を有する卵加工品を提供する。
【解決手段】卵白部1に卵黄部2が内包された卵加工品であって、色差計により測定された前記卵黄部2のL値と、卵白部1を介して測定された前記卵黄部2の最小L値との差が25以下である卵加工品。好ましくは、卵白部1の硬さが20kN/mであり、卵黄部2が液状あり、更に加熱後に冷凍した冷凍品である卵加工品。
【選択図】図1
図1
図2