(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は工業的に幅広い用途で使用されている。代表的な分野としては光学材料がある。最近光学分野においてガラス代替材料としてプラスチックが盛んに用いられているが、その材料としてポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂がよく知られている。一般的に(メタ)アクリル樹脂に代表されるプラスチック材料は、軽量性、安全性、意匠性を有している反面、屈折率の面では無機ガラスより低く、分厚くなりやすいという欠点がある。そこで、近年、高屈折率を有するプラスチック材料に対する要望が高くなってきている。特に、高屈折率プラスチック材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、ホログラム、光ファイバー、光導波路等への検討が盛んに行われている。
【0003】
プラスチック材料の屈折率を高くする方法としては、プラスチック材料の原料であるモノマーの屈折率を高くする必要があり、一方で、ガラス代替材料に要求される特性として、寸法安定性があるが、(メタ)アクリル樹脂は吸水率による寸法変化率が大きなことが欠点とされており、低吸水性のものが求められている。そのためには、(メタ)アクリル樹脂の分子構造中に芳香環を導入することが有用であることは既に良く知られている。
【0004】
上上記芳香環としてはベンゼン環、ナフタレン環、3環以上の多環芳香族を有する高屈折率材料が知られている(特許文献1、2等)。しかし、ベンゼン環を用いた場合、屈折率が十分でない。また、3環以上の多環芳香族であるアントラセン環、フルオレン環を用いた場合、高屈折率が期待されるが、吸収波長の長波長化により、光硬化性だけでなく透明性、耐候性が低下し、さらにモノマーの溶解性の低下の問題がある。
【0005】
一方、ナフタレン環は、ベンゼン環のモノマーに比べ、屈折率は高くなる。また、3環以上の多環芳香族ほど吸収波長を長波長化しないため、光硬化性、透明性、耐候性、モノマー溶解性の低下の問題が少ない利点がある。
【0006】
上記のような利点が期待されることから、ナフタレン環を有するアクリル樹脂が合成されてきた(特許文献3、4)が、これらに記載のアクリレート化合物は、高屈折率性には優れるが、融点が常温域にないなどのため、ハンドリング性の点で十分でなく、光学材料への工業的適用に困難を生じる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアクリル樹脂組成物は、一般式(1)で表されるアクリレート化合物と重合開始剤を必須成分とする。
【0015】
本発明のアクリレート化合物は、一般式(1)で表される。このアクリレート化合物はナフタレン構造とベンゼン構造が柔軟鎖であるオキシメチレン鎖で結合しており、かつ分子量あたりの(メタ)アクリロイル基数が適当であることで、高屈折率性に優れ、かつ低吸水性、透明性等に優れた樹脂を与える。
【0016】
上記一般式(1)において、Xは水素原子又はメチル基を表すが、樹脂組成物としての光硬化性の点から、水素原子であることが好ましい。
【0017】
また、上記一般式(1)において、ここで、Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立にC1〜C3のアルキル基又はC1〜C3のアルコキシ基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。好ましくは、C1〜C3のアルキル基である。aは0〜4の数を示し、bは0〜3の数を示し、cは0〜4の数を示す。そして、この化合物の融点は100℃以下であることがよく、30℃以下であることがより好ましく、それによりハンドリング性に優れるものとなる。融点はZ
1、Z
2及びZ
3や、a、b、cを変化させることにより、調整可能である。この観点からはa、b、及びcの合計は、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2である。
【0018】
上記一般式(1)で表されるアクリレート化合物は、一つの例として、クロロメチルベンジルオキシナフタレン化合物とアクリル酸又はメタクリル酸(以下、併せてアクリル酸類という。)とを反応させアクリレート化を行うことで製造することができる。
例えば、クロロメチルベンジルオキシナフタレン化合物を、NpOPh-CH
2-Clで表わし、アクリル酸類をCH
2=CHX-COOHで表わすと、下記式の反応が生じる。
NpOPhCH
2-Cl + CH
2=CHX-COOH = NpOPh-CH
2-O-CO-CHX=CH
2 + HCl
ここで、Np及びPhはナフチル基及びフェニレン基であり、置換基Z
1、Z
2又はZ
3を有してもよい。
【0019】
クロロメチルベンジルオキシナフタレン化合物は、たとえば、ナフトール類とビスクロロメチルベンゼン類とを反応させる方法等により得ることができる。この場合、一般式(1)におけるZ
1、Z
2及びZ
3の種類は、原料として使用されるナフトール類及びビスクロロメチルベンゼン類の置換基によって定まる。
【0020】
本発明のアクリレート化合物は、各種樹脂のモノマーとして有用であり、多官能モノマーと併用すれば熱硬化樹脂を与える。本発明のアクリレート化合物から得られる樹脂は透明性や屈折率等の光学的特性が良好であるので、光学材料として優れる。
【0021】
本発明のアクリル樹脂組成物に含まれる重合開始剤としては、ビニル化合物の重合開始剤として使用される公知の重合開始剤で良く、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射よる重合(光重合)又は熱による重合(熱重合)を開始させる重合開始剤である。通常は、光重合の場合は光重合開始剤を使用し、熱重合の場合はラジカル重合開始剤を使用することがよい。
【0022】
紫外線照射による硬化に際しては、光重合開始剤を予め樹脂組成物中に添加することが好ましい。
【0023】
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、紫外線の照射により励起されてラジカルを発生するタイプの通常の光重合開始剤が挙げられ、具体的には、適当な開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−iso−プロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、9,10−アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン類、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の含イオウ化合物類等が例示される。
【0024】
また、光重合開始剤による光重合反応を促進するために、光増感剤を添加してもよい。この光増感剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン類、チオジクリコール等のチオエーテル類等が例示され、その配合量としては、重合性化合物の合計量に対して0.01〜5重量%程度が推奨される。
【0025】
紫外線の光源としては、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。
【0026】
電子線により硬化する場合には、光増感剤を用いる必要はなく、汎用の電子線発生装置により、通常、1〜20メガラッド程度の線量の電子線を照射すればよい。
【0027】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、具体的には、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、過酸化ラウロイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が例示され、これらの重合開始剤は単独でも2種以上の併用でもよい。
【0028】
重合開始剤は、熱重合用のものと光重合用のものを用途に応じて使い分けることが好ましい。
【0029】
これらの重合開始剤の使用量は、重合禁止剤の使用の有無、使用する場合の重合禁止剤の種類や量により異なるが、重合性化合物の合計量100重量部に対して0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜5重量部であることがよく、さらに好ましくは0.01〜1重量部である。但し、この使用量は使用する重合開始剤の種類により大きく変化するので最適条件を適宜決定することが必要である。
【0030】
本発明のアクリル樹脂組成物は、樹脂組成物の保存等のために、公知の重合禁止剤を添加することができる。但し、この種類及び添加量は使用する重合開始剤並びに下記重合性モノマーの種類及び量により大きく変化するので最適条件を適宜決定することが必要である。
【0031】
また、本発明のアクリル樹脂組成物には、必要に応じて一般式(1)で表されるアクリレート化合物以外の他のアクリレートを含むことができる。さらに、アクリレート以外の熱又は光によりラジカル重合する重合性モノマー(以下、他の重合性モノマーという)を添加することができる。
【0032】
これらの他のアクリレートとしては、公知の熱又は光によるアクリレートで良く、単官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート、アクリル系重合性オリゴマー等のアクリレート類が好ましく挙げられる。硬化性の樹脂組成物を与えるためには、多官能性(メタ)アクリレートが好ましく挙げられ、必要により他の重合性モノマー(単官能性モノマーであってもよい)を、含むことができる。
【0033】
単官能性(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロムプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0034】
二官能性(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.2.02,5 ]デカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシメチル]シクロヘキサン、トリメチロールプロパンとピバルアルデヒドとのアセタールのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ビスフェノールA−ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0035】
三乃至四官能性(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0036】
アクリル系重合性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、ポリアミド型(メタ)アクリルオリゴマー、メラミン(メタ)アクリレート、シクロペンタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、シリコーンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が例示される。
【0037】
また、上記他の重合性モノマーとしては、アクリレート以外のモノマーであり、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、アクロレイン、ジビニルベンゼン等のビニル系化合物、エチレン、ブタジエン等のα−オレフィン等を適宜併用することができる。
【0038】
これらの他の重合性モノマーは単独でも2種以上の併用でもよい。熱又は光による重合性モノマーは、熱重合性モノマーと光重合性モノマーを用途に応じて使い分けることが好ましい。
【0039】
特に好ましい他のアクリレート及び特に好ましい他の重合性モノマーとしては、ラジカル共重合が可能な不飽和結合を2以上有する多官能不飽和化合物である。好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物である。そして、アクリル樹脂組成物中のモノマー(重合性のオリゴマー等を含む。)の1〜100重量%が、一般式(2)で表される化合物であることが、高屈折率、低吸水性を有するアクリル樹脂硬化物を与えるため好適である。
X(-A)n (2)
【0040】
一般式(2)において、Xは5又は6員環を2〜7個、好ましくは2〜5個有する環含有基である。この環含有基の複数の環は、a)単結合により環同士直接結合しているもの、b)炭素数3以内のアルキレン基、エーテル基、又はチオエーテル基のいずれかを介して環同士が結合しているもの、又はc)環同士が縮合しているものがあり、上記a、b及びcの2種類以上の結合を有しているものであってもよい。
【0041】
Xを例示すると、下記式(3)〜(19)のような環状構造を有するn価の基がある。一般式(2)で表わされる化合物は、これらの環状構造にn個の原子団Aが置換したものである。これらの環状構造は、さらに置換基を有してもよい。
【0043】
上記式(3)〜(13)の構造を有するn価の基は、本発明のアクリル樹脂組成物から得られるの高屈折率性を向上させる点で好ましく、上記式(14)〜(19)の構造を有するn価の基は、低吸水率性を向上させる点で好ましい。
【0044】
一般式(2)において、Aは-CH=CH
2、-CH
2OCOCH=CH
2、-CH
2OCOC(CH
3)=CH
2、-O(CH
2O)mCOCH=CH
2、又は-O(CH
2O)mCOC(CH
3)=CH
2で表される基のいずれかである。好ましくは、(メタ)アクリレート含有基である。Aが-CH
2OCOCH=CH
2及び-CH
2OCOC(CH
3)=CH
2である場合、他のアクリレートに相当し、その他は、他の重合性モノマーに相当する。mは0〜4の整数である。また、一般式(2)において、nは2〜4の整数であるが、nが2である化合物は、材料の入手の容易さからさらに好適である。
さらに好ましい他のアクリレートとしては、ジシクロペンタニルジアクリレート等の脂肪族環を有するアクリレートがある。ジシクロペンタニルジアクリレート等の脂肪族環を有するアクリレートは一般に粘度が低く、粘度を低下させるための反応性希釈剤としても適する。また、MIWON社製「ミラマーM1142」の商標で販売されているオルトフェニルフェノキシエチルアクリレートも、粘度が低く、粘度を低下させるための反応性希釈剤としても適する。
【0045】
上記他の重合性モノマーの種類及び添加量は、アクリル樹脂組成物における他の構成物質の種類及び量により適宜決定することができるが、好ましくは、十分な効果を得るために、硬化前の全樹脂成分(モノマーを含む)に占める割合が、5重量%、好ましくは10重量%以上添加する。しかし、60重量%以下とすることがよい。特に、硬化性の樹脂組成物とする場合、多官能アクリレート化合物を、10〜60重量%程度配合することが望ましい。
【0046】
本発明のアクリル樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、繊維、カップリング剤、難燃剤、離型剤、発泡剤等のその他の成分を添加することができる。この際の充填剤としては、例えばポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、石英、シリカ、珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石膏、ベントナイト、蛍石、二酸化チタン、カーボンブラック、黒鉛、酸化鉄、アルミニウム粉末、鉄粉、タルク、マイカ、カオリンクレー等が挙げられる。繊維としては、例えばセルロース繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。難燃剤としては、例えば臭素化ビスフェノールA、三酸化アンチモン、燐系化合物等が挙げられる。離型剤としては、例えばステアリン酸塩、シリコーン、ワックス等が挙げられる。発泡剤としては、例えばフロン、ジクロロエタン、ブタン、ペンタン、ジニトロペンタメチレンテトラミン、パラトルエンスルホニルヒドラジッド、あるいは、フロン、ジクロロエタン、ブタン、ペンタン等が塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体やスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の殻内に充填されている膨張性熱可塑性樹脂粒子等が挙げられる。
【0047】
本発明のアクリル樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に熱可塑性又は熱硬化性アクリル樹脂硬化物又は成形体とすることができる。例えば本発明のアクリレート化合物に重合開始剤、多官能性重合性モノマー、必要により熱又は光による他の重合性モノマー、及びその他の添加剤とを、押出機,ニーダ,ロール、攪拌機等を用いて均一になるまで充分に混合してアクリル樹脂組成物を得、そのアクリル樹脂組成物をロールコーター、溶融後注型あるいはトランスファー成形機などを用いて成形し、さらに80〜200℃に加熱又は光照射することによりアクリル樹脂硬化物を得ることができる。
【0048】
また、本発明のアクリル樹脂組成物が、硬化性アクリル樹脂組成物である場合、これを溶剤に溶解させ、ガラス繊維,カーボン繊維,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維,アルミナ繊維,紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることなどもできる。例えば本発明のアクリル樹脂組成物及びその他の添加剤などを均一になるまで加熱、撹拌し、これをガラスクロスに含浸させ加熱半乾燥して溶剤分を飛ばしたプリプレグを、必要枚数重ねて80〜200℃で1時間以上加熱プレスすることによりガラスクロス積層板を作製することができる。ただし、本発明の光学材料を、光を透過させる用途に使用する場合は、上記基材が透明材料であることが好ましい。一方、本発明の光学材料を、光を反射・拡散させる用途に使用する場合は、上記基材が、上記反射・拡散させる光の波長について不透明であることが好ましい。
【0049】
また、本発明のアクリル樹脂組成物を溶剤に溶解させて使用することもできる。この際、用いうる希釈用溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ等が好ましく、その使用量は、アクリル樹脂組成物と該希釈用溶剤の合計重量に対し、10〜70重量%、好ましくは、15〜65重量%である。
また、低粘度の他のアクリレート又は低粘度の他の重合性モノマーを、アクリル樹脂組成物の粘度を低下させるための反応性希釈剤として使用することもできる。ここで、低粘度とは、500cp以下であり、好ましくは200cp以下である。反応性希釈剤の使用量は、一般式(1)で表わされるアクリレートの等重量以下、好ましくは50重量%以下であることがよい。
【0050】
こうして得られるアクリル樹脂硬化物は高屈折率性に優れるとともに、低吸水性、透明性等に優れた光学材料を与える。光学材料としては、レンズ用途等のガラス代替材料、液晶のカラーフィルター等の保護膜、光学材料の保護用コーティング材料、電子ペーパー用、液晶スペーサー用等の微粒子、光ディスク、光ファイバー用等の接着剤等の各種光学材料に好適に使用される。
【0051】
本発明でいう光学材料は、光を透過させる用途、又は光を反射させる用途に使用される材料を意味し、好適にはレンズ用、光透過膜用等の光透過性用の光学材料であり、更に好適にはレンズ用途の光学材料である。
【実施例】
【0052】
次に、本発明を更に明確にするため実施例を挙げて具体的に説明する。なお、文中の「部」、「%」は全て重量基準を示すものである。
【0053】
合成例1
窒素吹き込み管、冷却器、滴下ロート、温度計を備えた1000ml四つ口フラスコに、291.1gのジメチルホルムアミド及び50・9gの1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンをいれ、窒素雰囲気下、30℃にて攪拌し溶解した。滴下ロートに、211.4gのジメチルホルムアミドに11.2gの水酸化ナトリウム及び42.0gの2−ナフトールを溶解させたものを入れ、窒素雰囲気下、30℃にて攪拌しながら、2時間で滴下した。滴下終了後、3時間反応させた。
反応終了後、ろ過を行い、不溶分を除去したのち、ジメチルホルムアルデヒドを50℃で減圧留去した。留去後の反応混合物に400gのクロロホルムを加え溶解した後、200gの蒸留水を加え水洗をおこなった。分液を行い、クロロホルム相を分離したのち、クロロホルムを、50℃で減圧留去し、前駆体1の粗結晶を得た。
この結晶を冷メタノールにて洗浄し、39.9gの2−(4−クロロメチル)ベンジルオキシ-ナフタレン(前駆体1)を得た。
【0054】
【化3】
【0055】
空気吹き込み管、冷却器、排気管、温度計を備えた500ml四つ口フラスコに245gのジメチルホルムアミド、8.7gの無水炭酸カリウム、0.006gのメチルヒドロキノン及び28.9gの前駆体1を入れ、空気を吹き込みながら、50℃に加熱し、9.5gのアクリル酸を120分かけて滴下した。滴下終了後、70℃で2時間反応させた。
反応終了後、不溶分を、ろ別した。減圧下、60℃にてジメチルホルムアルデヒドを留去し、300gのトルエンを加え溶解した。200gの蒸留水を加え水洗をおこなった。分液を行い、クロロホルム相を分離したのち、クロロホルムを、50℃で減圧留去し、式(1b)で表わされる2−(4−アクリロキシメチル)ベンジルオキシ-ナフタレン(化合物1b)の粗結晶を得た。
【0056】
この粗結晶を冷メタノールにて洗浄し、21.7gの精製化合物1b(白色結晶)を得た。融点測定、及び
1H-NMR測定により、得られた化合物1bの構造同定を行った。融点は87℃であった。化合物1bの
1H−NMRスペクトルを
図1に示す。
【0057】
合成例2
【化4】
【0058】
合成例1において、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンの代わりに、1,3−ビス(クロロメチル)ベンゼンを用いた以外は、合成例1と同様に合成をおこない、無色透明液体の20.3gの式(1c)で表わされる2−(3−アクリロキシメチル)ベンジルオキシ-ナフタレン(化合物1c)を得た。
化合物1cの
1H−NMRスペクトルを
図2に示す。
【0059】
実施例1
50重量部の合成例1で得られた化合物1b、50重量部のEO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールAジアクリレート(FA−324A、日立化成工業(株)製)、光重合開始剤として1重量部の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び熱重合開始剤として0.5重量部のパーヘキサ25Bを混合し、アクリル樹脂組成物A−1を得た。このアクリル樹脂組成物A−1を、ロールコーターを用いて、厚さ1.0mmになるようにキャスト(流延)し、70mW/cmの高圧水銀ランプを用い、5400mJ/cm
2の積算露光量で硬化させた。さらにオーブン内で熱キュアを実施し、シート状のアクリル樹脂硬化物B−1を得た。
【0060】
実施例2
化合物1bのかわりに、合成例2で得られた化合物1cを用いて、実施例1と同様にアクリル樹脂硬化物B−2を得た。
【0061】
比較例1
化合物1bのかわりにo−フェニルフェノールアクリレート(MIWON社 MIRAMER M1142、無色液体)を用いて、実施例1と同様にアクリル樹脂硬化物B−3を得た。
【0062】
次に、得られたアクリル樹脂硬化物B−1、B−2及びB−3を、長さ20mm、幅5mmの試料として、その屈折率及び吸水率の分析を行った。
屈折率は、アッベ屈折計を使用して、25℃・光源波長589nmにおける屈折率を測定した。
吸水率は、水に24時間浸漬した前後のシート重量より算出した。
これらの結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
上記のように本発明のアクリル樹脂組成物及びその硬化物は高屈折率性、低吸水性に優れる。