特許第6346786号(P6346786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346786
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20180611BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   H01L21/78 S
   H01L21/302 105A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-99384(P2014-99384)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-216297(P2015-216297A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】横尾 晋
(72)【発明者】
【氏名】松崎 栄
(72)【発明者】
【氏名】田渕 智隆
【審査官】 石丸 昌平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−251349(JP,A)
【文献】 特開2006−210577(JP,A)
【文献】 特開2006−210401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング領域と非エッチング領域とを備えた被加工物のエッチング方法であって、
該非エッチング領域のみに保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
該保護膜形成ステップを実施した後、被加工物にエッチングを施して被加工物の該エッチング領域をエッチングするエッチングステップと、を備え、
被加工物は、表面に形成された複数のデバイスと、該デバイスが複数形成されたデバイス領域を区画する複数のストリートとを有し、
該非エッチング領域は該デバイス領域であり、
該エッチング領域は該ストリートであり、
該保護膜形成ステップは、該液状の保護膜剤を微小液滴として噴射して該デバイス領域の外周縁に沿った土手を形成する第一工程と、
該第一工程を実施した後、該土手の内周側に該保護膜剤を供給して該デバイス領域に保護膜を形成する第二工程と、
を含み、
該非エッチング領域の少なくとも一部に液状の保護膜剤を微小液滴として噴射して該保護膜を形成する被加工物のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハに対してエッチングを施すエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
格子状の分割予定領域によって区画され表面に複数のデバイスを有するウェーハを分割して個々のデバイスごとのチップとする方法としては、例えば、切削ブレードを用いてダイシングして分割する方法や、プラズマダイシング(ドライエッチングによるダイシング)によって分割する方法がある。
【0003】
プラズマダイシングに際し、ウェーハ上においてエッチングを施したくない非エッチング領域には、レジスト膜となる保護膜をあらかじめ形成している。保護膜としては、感光性樹脂からなるフォトレジストが広く利用されている。ウェーハの非エッチング領域に保護膜を形成する工程では、通常、ウェーハの表面全面にフォトレジストをスピンコートした後、プリベーク(軽い焼きしめ)、露光、露光後の焼きしめを順次行い、その後、現像液をウェーハの表面全面にスプレーコートやスピンコートで塗布する現像処理工程を経て非エッチング領域にのみ保護膜を形成している(例えば下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−114825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したようなプラズマダイシングにおいては、レジストを塗布する塗布装置、マスクパターンを転写する露光装置、露光用マスク、現像処理を行う現像装置等、様々な設備等が必要となる上、処理工程も煩雑であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、エッチングをより簡易的に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エッチング領域と非エッチング領域とを備えた被加工物のエッチング方法であって、該非エッチング領域のみに保護膜を形成する保護膜形成ステップと、該保護膜形成ステップを実施した後、被加工物にエッチングを施して被加工物の該エッチング領域をエッチングするエッチングステップと、を備え、被加工物は、表面に形成された複数のデバイスと、該デバイスが複数形成されたデバイス領域を区画する複数のストリートとを有し、該非エッチング領域は該デバイス領域であり、該エッチング領域は該ストリートであり、該保護膜形成ステップは、該液状の保護膜剤を微小液滴として噴射して該デバイス領域の外周縁に沿った土手を形成する第一工程と、該第一工程を実施した後、該土手の内周側に該保護膜剤を供給して該デバイス領域に保護膜を形成する第二工程と、を含み、該非エッチング領域の少なくとも一部に液状の保護膜剤を微小液滴として噴射して該保護膜を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるエッチング方法は、保護膜形成ステップにおいて、被加工物のうちエッチングを施したくない非エッチング領域の少なくとも一部に液状の保護膜剤を微小液滴として噴射するため、被加工物の表面全面に保護膜を形成する必要がなく、保護膜剤の使用量を抑えることができる。また、被加工物のマスクパターンを転写する露光装置、露光用マスク、現像処理を行う現像装置等様々な設備が不要となるため、現像液も現像時間も不要となり、エッチングの処理工程を簡素化して処理時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
さらに、保護膜形成ステップが、液状の保護膜剤を微小液滴として噴射してデバイス領域の外周縁に沿った土手を形成する第一工程と、土手の内周側に保護膜剤を供給してデバイス領域に保護膜を形成する第二工程とを含むため、ストリート上に余分な保護膜を形成することなく、土手で囲まれたデバイス領域のみに保護膜を確実に形成することができ、デバイス領域がエッチングされるのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ウェーハの一例を示す斜視図である。
図2】ウェーハを示す拡大断面図である。
図3】保護膜形成ステップを示す断面図である。
図4】保護膜形成ステップを実施した後のウェーハを示す拡大断面図である。
図5】ストリートのエッジを示す拡大平面図である。
図6】エッチングステップを示す拡大断面図である。
図7】保護膜形成ステップの第一工程を示す拡大断面図である。
図8】第一工程実施後のウェーハを示す拡大平面図である。
図9】保護膜形成ステップの第二工程を示す拡大断面図である。
図10】第二工程実施後のウェーハを示す拡大平面図である。
図11】第二工程実施後のウェーハに対するエッチングステップを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1 ウェーハの構成
図1に示すウェーハWは、被加工物の一例であって、その表面Waには、複数のデバイスDと、デバイスDがそれぞれ形成されたデバイス領域を区画する複数の格子状のストリートSとを有している。ウェーハWの表面Waと反対側の面にある裏面Wbには、デバイスDが形成されていない。以下では、ウェーハWに対してエッチングを施す方法について説明する。このウェーハWは、図2に示す表面WaにデバイスDが形成されたデバイス領域が、ウェーハWに対してエッチングを施したくない非エッチング領域A1となっている。一方、ウェーハWの表面WaにストリートSが形成された領域が、ウェーハWに対してエッチングを施すべきエッチング領域A2となっている。
【0012】
2 エッチング方法の第一例
保護膜形成ステップ
まず、図3に示すように、例えばウェーハWの上方側に配置されたインクジェットノズル1を用いてデバイスDが形成されたデバイス領域(非エッチング領域A1)のみに保護膜を形成する。インクジェットノズル1は、その先端に形成された噴射口1aと、図示しないピエゾ素子とを有しており、ピエゾ素子の振動によって液状の保護膜剤を微小液滴として噴射口1aから噴射させることができる。なお、インクジェットノズル1はこの構成に限られるものではない。
【0013】
ウェーハWの表面Waに保護膜を形成する際には、噴射口1aを下向きにしてインクジェットノズル1をデバイスDの上方側に位置づけ、噴射口1aから液状の保護膜剤2を微小液滴としてデバイスDが形成されたデバイス領域に向けて噴射し、図4に示すように、デバイスDの表面全域に保護膜3を形成する。次いで、全てのデバイス領域に対し保護膜剤2の噴射を繰り返し行い、図2で示した非エッチング領域A1のみに保護膜3を形成する。
【0014】
デバイスDが形成されたデバイス領域のみに向けて微小液滴を噴射するため、図4に示すように、ストリートS上に保護膜3が形成されることはなく、ストリートSは露出した状態となっている。なお、図5に示すように、幅Lを有するストリートSの幅方向全体を確実に露出させたい場合には、ストリートSの幅方向の端部であるエッジS1(デバイスDとの境界)に露光及び現像を施すことにより、エッジS1に被覆された保護膜3を除去することが望ましい。
【0015】
エッチングステップ
保護膜形成ステップを実施した後、図6に示すように、表面WaのストリートS(図2に示すエッチング領域A2)に沿ってエッチングを施す。エッチングステップは、例えば特開2004−247454号公報で開示されるプラズマエッチング装置を用いて実施してもよいし、異なるエッチング装置を用いて実施してもよい。ここで、ウェーハWの基板がシリコンで形成され、深さ100μmのエッチング溝を形成する場合には、下記のエッチング条件A及びエッチング条件Bに基づいてエッチングを実施する。
【0016】
[エッチング条件A]
エッチングガス:SF6
処理圧力:10[Pa]
ガス供給量:1500[cc/分]
プラズマ発生部に印加する高周波電力:3000[W]
基板側に印加する高周波電力:300[W]
【0017】
[エッチング条件B]
エッチングガス:C4F8
処理圧力:10[Pa]
ガス供給量:1000[cc/分]
プラズマ発生部に印加する高周波電力:3000[W]
基板側に印加する高周波電力:0[W]
【0018】
図6(a)に示すように、ウェーハWの上方に配置されたガス供給部10は、エッチング条件Aに基づいて、ストリートSに向けてSF6からなるエッチングガスを処理圧力(10Pa)で例えば0.6秒間噴射する。続いて、ガス供給部10は、エッチング条件Aをエッチング条件Bに変えてストリートSに向けてC4F8からなるエッチングガスを処理圧力(10Pa)で例えば0.4秒間噴射する。このようにエッチング条件Aに基づく0.6秒のエッチングとエッチング条件Bに基づく0.4秒のエッチングとを交互に繰り返し行い、ウェーハWのストリートSに沿って4分間エッチングする。その結果、図6(b)に示すように、ウェーハWには、ストリートSに沿った溝11が形成される。このようにエッチング条件Aとエッチング条件Bとを交互に繰り返して行うことによって、エッチング条件Aのもとではシリコンが高速にエッチングされ、エッチング条件Bのもとではエッチングされた部分の側壁に保護膜が形成されることから、溝11の形成を高速に行うことができる。
【0019】
エッチングステップの条件Aで用いるエッチングガスとしては、SF6のほか、NF3やXeF2を用いてもよく、ウェーハWの材質に応じて使用するエッチングガスを適宜選定する。
【0020】
ストリートSに沿った溝11を形成した後、例えば光励起アッシングやプラズマアッシングを実施して保護膜3のみをデバイスDから除去する。具体的には、例えばオゾン等ガスが充填したアッシング装置の処理室内にウェーハWを搬送し、該処理室内でウェーハWに向けて紫外線照射等を行い、レジストとガスとの化学反応を利用して保護膜3のみをデバイスDから除去する。
【0021】
また、アッシングのほか、ウェーハWを洗浄することで保護膜3を除去してもよい。この場合は、例えば純水の水蒸気と窒素との混合流体や、ドライアイス粒と高圧エアーとの混合流体をウェーハWの表面Waに向けて噴射しデバイスDから保護膜3を剥離する。
【0022】
デバイスDから保護膜3を除去した後は、図6(b)に示すウェーハWの裏面Wbを研削砥石によって研削することによって溝11を表出させてウェーハWを個々のチップに分割してもよいし、ブレーキング装置によってウェーハWを個々のチップに分割してもよい。また、溝11を形成するのではなく、上記エッチングステップにおけるエッチングによりフルカットしてウェーハWを個々のチップに分割してもよい。
【0023】
このように、エッチング方法の第一例では、保護膜形成ステップにおいて、ウェーハWの表面WaのうちデバイスDが形成されたデバイス領域(非エッチング領域A1)のみに保護膜3を形成するため、保護膜剤の使用量を抑えることができる。また、ウェーハWの表面Wa全面に保護膜3を形成しないため、レジストを塗布する塗布装置、マスクパターンを転写する露光装置、露光用マスク、現像処理を行う現像装置等の設備が不要となる。そのため、現像液も現像時間も不要となり、エッチングの処理工程を簡素化して処理時間の短縮やコスト削減が可能となる。
【0024】
3 エッチング方法の第二例
保護膜形成ステップ
本例では、保護膜形成ステップを、以下に示す第一工程と第二工程とに分ける。
【0025】
(1−1)第一工程
図7に示すように、上記したインクジェットノズル1と同様の構成を有するインクジェットノズル4を用いて第一工程を実施する。具体的には、噴射口4aを下向きにしてインクジェットノズル4をデバイスDの上方側に位置づけ、噴射口4aから液状の保護膜剤5を微小液滴としてデバイス領域の一部である外周縁D1に沿って噴射する。このようにして保護膜剤5を外周縁D1に堆積させて土手6を形成する。そして、全てのデバイス領域の外周縁D1に沿って保護膜剤5の噴射を繰り返し行い、該外周縁D1に沿った土手6を形成する。土手6の内周側には凹部が形成され、図8に示すように、第一工程時は、デバイスDの表面が露出した状態となっている。
【0026】
(1−2)第二工程
第一工程を実施した後、ポッティングによってデバイス領域に保護膜を形成する第二工程を実施する。具体的には、図9に示すように、吐出口8aを下向きにしてポッティング用ノズル8をデバイスDの上方に位置づけ、吐出口8aから液状の保護膜剤7aを滴下して土手6の内周側に向けて供給する。
【0027】
土手6の内周側の凹部に保護膜剤7aが溜まることで、デバイスDの表面全域に保護膜7を形成することができる。この際、土手6の内周側に供給された保護膜剤7aは、周囲の土手6によって塞き止められてストリートSに流れることがないため、ストリートS上に保護膜7が形成されることはない。このようにして、図10に示すように、図8に示した各土手6に囲まれた各デバイスDのデバイス領域に対して保護膜剤7aの供給を繰り返し行い、図2で示した非エッチング領域A1のみに保護膜7を形成する。なお、ポッティングのほか、スクリーン印刷によって保護膜7を非エッチング領域A1にのみ形成するようにしてもよい。
【0028】
(2)エッチングステップ
保護膜形成ステップを実施した後、図11に示すように、ストリートS(図2に示すエッチング領域A2)に沿って上記エッチング方法の第一例のエッチングステップと同様のエッチングを施す。すなわち、図11(a)に示すように、ウェーハWの上方に配置されたガス供給部10aは、エッチング条件Aに基づいて、ストリートSに向けてSF6からなるエッチングガスを処理圧力(10Pa)で例えば0.6秒間噴射する。続いて、ガス供給部10aは、エッチング条件Aをエッチング条件Bに変えてストリートSに向けてC4F8からなるエッチングガスを処理圧力(10Pa)で例えば0.4秒間噴射する。このようにエッチング条件Aに基づく0.6秒のエッチングとエッチング条件Bに基づく0.4秒のエッチングとを交互に繰り返し行い、ウェーハWのストリートSに沿って4分間エッチングする。その結果、図11(b)に示すように、ウェーハWには、ストリートSに沿った溝11aが形成される。
【0029】
ストリートSに沿った溝11aを形成した後は、上記エッチング方法の第一例と同様に、アッシングや洗浄を実施してデバイスDから保護膜7及び土手6を除去し、その後、ウェーハWを個々のチップに分割する。
【0030】
以上のとおり、エッチング方法の第二例では、保護膜形成ステップの第一工程を実施してデバイス領域の外周縁D1に沿って保護膜剤5を微小液滴として噴射して土手6を形成した後、保護膜形成ステップの第二工程を実施して土手6の内周側に液状の保護膜剤5aを供給するため、土手6で囲まれたデバイス領域(非エッチング領域A1)のみに保護膜7を確実に形成することができる。よって、ストリートS上に余分な保護膜を形成することがなくなり、デバイス領域がエッチングされるのを確実に防ぐことができる。
【0031】
図1に示したデバイスDを構成する機能層(例えばlow-k膜やTEG)が、ストリートS上に延在している場合には、第一例、第二例のいずれにおいても、エッチングステップを実施する前に、例えばサンドブラストを実施して該機能層を分断するようにしてもよい。
【0032】
なお、ウェーハWは、ストリートSが格子状に形成されているものには限られない。例えば、デバイスが多角形状に形成されストリートSが屈曲して形成されていたり、ストリートSが曲線状に形成されていたりしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1:インクジェットノズル 2:保護膜剤 3:保護膜
4:インクジェットノズル 5,5a:保護膜剤 6:土手
7:保護膜 7a:保護膜剤 8:ポッティング用ノズル 8a:吐出口
10,10a:ガス供給部 11,11a:溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11