(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ノルボルネン系重合体>
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
【0021】
開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、耐熱性、機械的強度、及び防湿性などの観点から好ましい。
【0022】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.0
1,6.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、並びにテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0023】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、及び8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
【0024】
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0025】
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘブテン、及びシクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0026】
これらの、ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体とを開環共重合する場合は、開環重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と開環共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常70:30〜99:1、好ましくは80:20〜99:1、より好ましくは90:10〜99:1の範囲となるように適宜選択される。
【0027】
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0028】
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0029】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、又は、チタン、ジルコニウム、タングステン、及びモリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
【0030】
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル及びパラジウムに代表される遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0031】
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
【0032】
<水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー>
本発明で使用される水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーにおける「水素添加」の意味は、水素添加したもののこと、又は、重合性単量体としてブチレンなどの炭素−炭素二重結合を1個有するものを用い、重合後、結果として水素添加したものと同等なもののことを言う。本発明において、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーには、「水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体」と、「芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体」とがある。
【0033】
<水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体>
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体は、ハードセグメントであるポリスチレンブロックと、ソフトセグメントである共役ジエン重合体ブロックとを有するものであり、低温では加硫ゴム状物性を示し、加熱状態では加熱溶融して流動性を示すものである。
【0034】
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体としては、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、部分水添スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(部分水添SEBS)、及びスチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)などが例示される。これらの中でも、樹脂組成物の透明性や耐光性の観点からスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、及びスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などの共役ジエン部分の水素転化率が実質的に100%であるものが好ましく、特にスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が、特に好ましい。
【0035】
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、容器に使用した場合の機械的強度や透明性の観点から、一般に、40,000〜1,000,000 の範囲であると好ましく、40,000〜800,000の範囲であるとより好ましく、40,000〜500,000の範囲であると特に好ましい。
【0036】
そして、本発明において、本発明の樹脂組成物を容器に用いた場合の機械的強度や加工性を考慮すると、ノルボルネン系重合体と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体との重量割合は、ノルボルネン系重合体が50〜99重量%、好ましくは60〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0037】
<芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体>
本発明における芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体とは、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック及びイソブチレンを主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体である。
【0038】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、及びビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの中でも、工業的な入手性やガラス転移温度の点から、スチレン、α−メチルスチレン、及びこれらの混合物が好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0039】
また、イソブチレン系重合体ブロックは、イソブチレンに由来するユニットが60重量%以上、好ましくは80重量%以上から構成される重合体ブロックである。
【0040】
いずれの重合体ブロックも、共重合成分として、相互の単量体を使用することができるほか、その他のカチオン重合可能な単量体成分を使用することができる。このような単量体成分としては、脂肪族オレフィン類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、及びアセナフチレンなどの単量体が例示できる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
脂肪族オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、オクテン、及びノルボルネンなどが挙げられる。
【0042】
ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、及びエチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0043】
ビニルエーテル系単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、及びエチルプロペニルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
シラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0045】
本発明の芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとから構成されている限り、その構造には特に制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状、及び星状などの構造を有するブロック共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、及びマルチブロック共重合体などのいずれも選択可能である。好ましい構造としては、物性バランス及び成形加工性の点から、芳香族ビニル系重合体ブロック−イソブチレン系重合体ブロック−芳香族ビニル系重合体ブロックで構成されるトリブロック共重合体が挙げられる。これらは所望の物性及び/又は成形加工性を得る為に、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
芳香族ビニル系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとの割合に関しては、特に制限はないが、柔軟性、屈折率及びゴム弾性の点から、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体における(a)芳香族ビニル系重合体ブロックの含有量が15重量%以上であることが好ましく、30重量%超過35重量%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体の分子量にも特に制限はないが、流動性、成形加工性、及びゴム弾性などの面から、GPC測定による重量平均分子量で30,000〜300,000であることが好ましく、30,000〜250,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が30,000よりも低い場合には機械的な物性が十分に発現されない傾向があり、一方300,000を超える場合には流動性、加工性が悪化する傾向がある。さらには加工安定性の観点からイソブチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量/数平均分子量が1.4以下であることが好ましい。
【0048】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体の製造方法については特に制限はないが、例えば、下記一般式で表される化合物の存在下に、単量体成分を重合させることにより得られる。
(CR
1R
2X)nR
3
(式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基又はアシロキシ基から選ばれる置換基、R
1、R
2はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基でR
1、R
2は同一であっても異なっていても良く、R
3は一価若しくは多価芳香族炭化水素基又は一価若しくは多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。)
【0049】
上記一般式で表わされる化合物は開始剤となるものでルイス酸などの存在下、炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。
【0050】
本発明で用いられる一般式の化合物の例としては、(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン、及び1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(t−ブチル)ベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、特に好ましいのはビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C
6H
4(C(CH
3)
2Cl)
2]、及びトリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[(ClC(CH
3)
2)
3C
6H
3]である。
【0051】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体を製造する際には、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl
4、TiBr
4、BCl
3、BF
3、BF
3・OEt
2、SnCl
4、SbCl
5、SbF
5、WCl
6、TaCl
5、VCl
5、FeCl
3、ZnBr
2、AlCl
3、及びAlBr
3等の金属ハロゲン化物;Et
2AlCl及びEtAlCl
2等の有機金属ハロゲン化物;などを好適に使用することができる。中でも触媒の反応性の高さ及び工業的な入手の容易さから、TiCl
4、BCl
3、及びSnCl
4が好ましい。ルイス酸の使用量は、特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度などを考慮して設定することができる。上記一般式で表される化合物に対して、通常0.1〜100モル当量使用することができ、好ましくは1〜50モル当量の範囲である。
【0052】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体の製造に際しては、さらに必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって、分子量分布の狭い、構造が制御された重合体を生成することができる。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、及び金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物などを挙げることができる。
【0053】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体の重合は必要に応じて有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければ、特に制約なく使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油;などを挙げることができる。
【0054】
これらの溶媒は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性などのバランスを考慮して、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。溶媒の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0055】
実際の重合を行うに当たっては、各成分を冷却下例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、特に好ましい温度範囲は−30℃〜−80℃である。
【0056】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体の配合量は、ノルボルネン系重合体50〜99重量%に対して、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体1〜50重量%である。好ましくは、ノルボルネン系重合体100重量部に対して1〜50重量部が好ましく、3〜25重量部がさらに好ましい。ブロック共重合体が少なすぎると耐衝撃性が不充分となり、逆に多すぎると剛性と耐衝撃性のバランスが悪くなるおそれがある。
【0057】
<その他配合剤>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、その他の各種配合剤(樹脂工業において通常用いられる配合剤)を単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0058】
その他の配合剤としては、熱可塑性樹脂材料で通常用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、及びその他の樹脂などの配合剤が挙げられる。
【0059】
老化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤などが挙げられるが、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、ノルボルネン系重合体と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有する樹脂組成物100重量%に対して通常0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の範囲である。
【0060】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、及び金属錯体系紫外線吸収剤などが挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0061】
近赤外線吸収剤は、例えば、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤;などが挙げられる。
【0062】
染料としては、均一に分散・溶解するものであれば特に限定されないが、本発明で用いられる樹脂組成物との相溶性が優るので油溶性染料(各種C.I.ソルベント染料)が広く用いられる。油溶性染料の具体例としてはThe Society of Diyes and Colourists社刊Color Index vol.3に記載される各種のC.I.ソルベント染料などが挙げられる。
【0063】
顔料としては、ジアリリド系顔料、アゾレーキ系顔料、縮合アゾ系顔料、ペンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、及びアントラキノン系顔料などが挙げられる。
【0064】
可塑剤としては、燐酸トリエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤、及び主骨格が主にC−C又はC=C構造である常温で液状の炭化水素ポリマーなどが使用できるが、これらの中でも燐酸トリエステル系可塑剤が好ましく、トリクレジルフォスフェート及びトリキシリルフォスフェートが特に好ましい。
【0065】
帯電防止剤としては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの長鎖アルキルアルコール、グリセリンモノステアレート、及びペンタエリスリトールモノステアレートなどの多価アルコールの脂肪酸エステルなどが挙げられるが、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールが特に好ましい。
【0066】
その他の樹脂としては、柔軟性を付与するためのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0067】
これらの配合剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、ノルボルネン系重合体と水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとの合計量100重量%に対して、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。
【0068】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明では、上記各成分を必要に応じて混合して使用される。混合方法は、重合体中に配合剤が十分に分散する方法であれば、特に限定されない。例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、及び押出機などで樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、又は直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。
【0069】
二軸混練機を用いる場合、混練後は、通常は溶融状態で棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化して用いられることが多い。
【0070】
分子量が1000以下の低分子量成分含量が3重量%以下である樹脂組成物を得るためには、(I)ノルボルネン系重合体の低分子量成分の蒸発除去(以下、この方法を「直接乾燥法」という)、(II)ノルボルネン系重合体の良溶媒と貧溶媒とを用いた再沈(以下、「再沈法」という)、(III)成形加工前の樹脂組成物(通常はペレット状態)に対する予備乾燥が挙げられる。これらの方法は、単独でも、適宜組み合わせでも用いることができるが、ノルボルネン系重合体に配合するスチレン系熱可塑性エラストマー由来の低分子量成分をも除去できることから(III)の方法が好ましい。
【0071】
低分子量成分の分子量は、通常、シクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリイソプレン換算値として測定した
分子量である。本発明においては、樹脂組成物中、
分子量1000以下の低分子量成分の含有量が3重量%以下であり、2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
【0072】
(I)直接乾燥法
直接乾燥法は、ノルボルネン系重合体の合成後の反応溶液を、減圧下(常圧以下の圧力)で加熱して、溶媒及びノルボルネン系重合体中に含まれる低分子量成分を蒸発除去する方法である。直接乾燥法における、反応溶液などの有機溶媒溶液の加熱温度は、通常270〜340℃、好ましくは275〜330℃の範囲である。加熱温度が低すぎると、ノルボルネン系重合体中の低分子量成分や残留溶媒の除去効率が低下する。加熱温度が高すぎると、熱によるノルボルネン系重合体の分解を生じるおそれがある。直接乾燥法において、減圧時の圧力は、通常26.7kPa以下、好ましくは13.4kPa以下、より好ましくは6.7kPa以下である。直接乾燥法を適用するに際して、加熱温度及び減圧時の圧力を段階的又は連続的に変化させて乾燥させることができる。特に、2段階で加熱温度及び/又は減圧時の圧力を変化させることが好ましい。
【0073】
2段階での乾燥は、加熱及び減圧可能な溶媒除去装置を2基以上用いることにより容易に実施することができる。溶媒除去装置としては、掻き取り式薄膜蒸発器及び遠心式薄膜蒸発器を用いるのが好ましい。好ましい2段階乾燥法としては、ノルボルネン系重合体の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液を、第1段目として、270〜340℃の温度で、6.7〜26.7kPaの減圧下に加熱することにより、有機溶媒とともに、その他の低分子量物を除去し、次いで、第2段目として、270〜340℃の温度で、6.7kPa未満の減圧下に加熱することにより、残りの低分子量物をさらに除去する乾燥方法を挙げることができる。
【0074】
直接乾燥法において、ノルボルネン系重合体の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液に、酸化防止剤を添加してから、減圧下に加熱乾燥することがノルボルネン系重合体の分解を抑制する上で好ましい。酸化防止剤の添加量は、ノルボルネン系重合体100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.8重量部、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。酸化防止剤の添加量が多すぎると、それ自体又はその分解物が低分子量成分となって、ガス発生の原因となるおそれがある。
【0075】
(II)再沈法
再沈法とは、良溶媒にノルボルネン系重合体を溶解させた後、貧溶媒を用いて析出させると、貧溶媒中に溶解した低分子量成分が除去されるという方法である。上記良溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、及び1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系溶媒;乳酸メチル、及び乳酸エチル等のエステル系溶媒;シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、及び1,2−ジメチルシクロヘキサン等のシクロオレフィン系溶媒;2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、及びクロロホルム等のハロゲン含有溶媒;テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル系溶媒;などが挙げられる。
【0076】
また、上記貧溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2−プロパノール、及び1−ブタノール等のアルコール系溶媒;ジアセトンアルコール、アセトン、2−ブタノン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;などが挙げられる。
【0077】
上記再沈法の具体的条件は、ノルボルネン系重合体を上記良溶媒中に、温度5〜50℃、好ましくは10〜30℃下で、濃度0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜15重量%の条件で溶解し、次いで、この溶液を、該溶液の5〜50重量倍、好ましくは10〜30重量倍で、温度が5〜50℃、好ましくは10〜30℃の上記貧溶媒中に投入して再沈する。再沈は、1回でもよいが、必要に応じて、2〜5回程度、繰り返すこともできる。
このようにすると、ノルボルネン系重合体の低分子量成分を低減することができる。
【0078】
(III)成形加工前の予備乾燥
本発明のノルボルネン系重合体の押出加工、成形加工方法としては、分解による低分子量成分の生成を防止するために、加工前に予備乾燥する方法が挙げられる。予備乾燥の条件としては、温度が高く、乾燥時間の長い方が効果的であるが、温度が樹脂のガラス転移温度を超えて高すぎるとノルボルネン系重合体のペレットどうしが熱融着して使用しにくくなること、及び数時間で効果が飽和することから、好ましくは(Tg−30)〜(Tg−5)℃、特に好ましくは(Tg−20)〜(Tg−5)℃で、好ましくは2時間以上24時間以下、特に好ましくは4時間以上12時間以下で処理することが望ましい。予備乾燥の方法が、真空乾燥であっても、空気又は窒素雰囲気下での常圧乾燥であっても、分解による低分子量成分の生成の防止効果が得られる。
【0079】
また、本発明のノルボルネン系重合体の押出加工、成形加工の工程は、低酸素濃度雰囲気下で行うことが好ましく、特に、樹脂溶融工程を低酸素濃度雰囲気下で行うことによって、ノルボルネン系重合体の分解による低分子量成分の生成を防止することができる。ここで、「低酸素濃度雰囲気」とは、通常、酸素分圧で100hPa以下、好ましくは50hPa以下、より好ましくは20hPa以下の雰囲気をいう。低酸素濃度雰囲気とするには、装置を減圧状態にするか、不活性ガスなどを使用して、装置内の空気をこれらのガスで置換することで達成される。不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、及びキセノンなどが挙げられるが、入手の容易さから窒素ガスを使用することが好ましい。
【0080】
例えば、加工機の原料供給用のホッパー部分に窒素を吹き込む方法、ホッパー部分を減圧状態にする方法が挙げられる。
【0081】
<樹脂組成物の形成加工>
本発明の樹脂組成物の成形加工方法としては、成形が可能な限り特定の成形方法に限定されないが、例えば、射出成形法、エクストルージョンブロー成形法、インジェクションブロー成形法、二段ブロー成形法、多層ブロー成形法、コネクションブロー成形法、延伸ブロー成形法、回転成形法、真空成形法、押出成形法、カレンダー成形法、溶液流延法、熱プレス成形法、及びインフレーション法などが挙げられる。
【0082】
また、本発明の樹脂組成物のフィルムの成形方法としては、溶剤キャスト法(溶液流延法)や溶融押出法などが挙げられるが、製造コスト面においては溶融押出法が好ましい。
【0083】
<医療用薬剤容器>
医療用薬剤容器の具体例としては、広口瓶、狭口瓶、バイアル瓶、プレフィラブル・シリンジ、プレフィルド・シリンジ、ワクチン用プレフィルド・シリンジ、抗がん剤用プレフィルド・シリンジ、ニードルレス・シリンジ、アンプル及びプレス・スルー・パッケージ、輸液用バッグ、点滴薬容器、及び点眼薬容器などの液体、粉体、又は固体の薬品容器、血液検査用のサンプリング用試験管、採血管、及び検体容器などのサンプル容器などが挙げられる。
【0084】
中でも、本発明の樹脂組成物からなるバイアル、プレフィルド・シリンジは、タンパク質の吸着性が低く薬剤の保存性が良好であるため、これらの成形品に好適に用いられる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、部又は%は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0086】
各種物性の測定法は次のとおりである。
(1)ノルボルネン系重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリイソプレン換算値として測定した。
(2)水素添加率は、
1H−NMRにより測定した。
【0087】
(3)ガラス転移温度は、JIS K 7121に基づき、示差走査熱量分析計(ナノテクロノジー社製、製品名「DSC6220S11」)を用い、ガラス転移温度より30℃以上に加熱した後、冷却速度−10℃/分で室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で昇温する過程で測定した。
【0088】
(4)低分子量成分比率は、(1)記載のシクロヘキサンを溶媒とするGPCを用い、樹脂組成物の分子量を測定した際の
分子量1000
超のピーク面積(M1)及び
分子量1000以下のピーク面積(M2)を求め、M2/(M1+M2)×100より、低分子量成分の比率を計算した。
【0089】
(5)タンパク質吸着性は、1%シクロヘキサン溶液を作成後、センサーチップ上にキャストし、窒素雰囲気中、70℃、2時間の過熱で溶媒を揮発させ、膜厚1μmのキャストフィルムを作成し、分子間相互作用測定装置(コニカミノルタオプト社製、製品名「MI−Affinity(登録商標)」)を用いて、送液速度20μl/min.、測定温度25℃の条件で、インスリン水溶液(濃度:3.53mg/ml、pH:7.8)をキャストフィルム上に300秒間流し、吸着による膜厚の増加を測定した。
【0090】
(6)耐衝撃性は、射出成形によって作成した厚さ4.0mm×長さ80mm×幅10.0mmの試験片(ノッチ付き)を用い、JIS K 7110に基づいてアイゾッド衝撃試験を行なった。
【0091】
[製造例1]
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)76部と、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(以下「TCD」と略す)70部と、テトラシクロ[7.4.0.0
2,7.1
10,13]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(以下「MTF」と略す)54部と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、並行して2時間かけて連続的に添加し重合した。次いで、重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。得られた開環重合体を含有する反応溶液をガスクロマトグラフィー分析したところ、各モノマーの重合転化率は、99.5%であった。
【0092】
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素添加触媒としてケイソウ土担持ニッケル触媒(ニッケル担持率58重量%、細孔容積0.25ml/g、比表面積180m
2/g)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、8時間反応させ、DCP/TCD/MTF開環共重合体水素添加物を含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去し、次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、次いで水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを得た。このペレット化された開環共重合体水素添加物(ノルボルネン系重合体A)のMwは34,000、重合体中の炭素−炭素結合の内、水素添加率は99.8%、Tgは136℃、比重は1.01g/cm
3であった。
【0093】
[製造例2]
シクロヘキサン258リットルを装入した反応容器に、常温、窒素気流下でビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「NB」という)(120kg)を加え、5分間撹拌を行った。さらにトリイソブチルアルミニウムを系内の濃度が1.0ml/リットルとなるように添加した。続いて、撹拌しながら常圧でエチレンを流通させ系内をエチレン雰囲気とした。オートクレーブの内温を70℃に保ち、エチレンにて内圧がゲージ圧で6kg/cm
2となるように加圧した。10分間撹拌した後、予め用意したイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリド及びメチルアルモキサンを含むトルエン溶液0.4リットルを系内に添加することによって、エチレンとNBとの共重合反応を開始させた。このときの触媒濃度は、全系に対してイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドが0.018mmol/リットルであり、メチルアルモキサンが8.0mmol/リットルである。
【0094】
重合中、系内にエチレンを連続的に供給することにより、温度を70℃、内圧をゲージ圧で6kg/cm
2に保持した。60分後、イソプロピルアルコールを添加することにより、重合反応を停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、その後、水1m
3に対し濃塩酸5リットルを添加した水溶液と1:1の割合で強撹拌下に接触させ、触媒残渣を水相へ移行させた。この接触混合液を静置したのち、水相を分離除去し、さらに水洗を2回行い、重合液相を精製分離した。
【0095】
次いで精製分離された重合液を3倍量のアセトンと強撹拌下で接触させ、共重合体を析出させた後、固体部(共重合体)を濾過により採取し、アセトンで十分洗浄した。さらに、ポリマー中に存在する未反応のモノマーを抽出するため、この固体部を40kg/m
3となるようにアセトン中に投入した後、60℃で2時間の条件で抽出操作を行った。抽出処理後、固体部を濾過により採取し、窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥し、エチレン・NB共重合体(ノルボルネン系重合体B)を得た。
【0096】
[製造例3]
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体(C)の製造方法
2リットルのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、注射器を用いてn−ヘキサン456.4ml及び塩化ブチル656.3ml(いずれもモレキュラーシーブスで乾燥したもの)を加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した。イソブチレンモノマー235ml(2910mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン0.733g(3.2mmol)及びα−ピコリン1.30g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67ml(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から3時間同じ温度で撹拌を行なったのち、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー149g(1433mmol)、n−ヘキサン14.1ml及び塩化ブチル20.4mlの混合溶液を重合容器内に添加した。さらに2.5時間後大量の水を加えて反応を終了させた。
【0097】
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することによりMwが160000であるブロック共重合体(C)を得た。
【0098】
[製造例4]
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体(D)の製造方法
2リットルのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)456.1ml及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)656.5mlを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー196ml(2425mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にポリテトラフルオロエチレン製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン0.647g(2.8mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド1.22g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67ml(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行ったのち、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー124g(1194mmol)、n−ヘキサン23.9ml及び塩化ブチル34.3mlの混合溶液を重合容器内に添加した。この混合溶液を添加してから45分後に、約40mlのメタノールを加えて反応を終了させた。
【0099】
反応溶液から溶剤を留去した後、析出した固形物をトルエンに溶解し、2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することによりMwが100000であるブロック共重合体(D)を得た。
【0100】
[実施例1]
製造例1で得られたノルボルネン系重合体A99部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとして芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(E)(旭化成ケミカルズ社製、タフテック(登録商標)H1043)1部、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.5部とを、ブレンダーで混合し、次いで75℃で6時間、0.1hPaで真空乾燥した。ホッパーを窒素置換した2軸混練機を用い、245℃のシリンダー温度で混練して押し出し、ペレット化した樹脂組成物1を得た。このペレット化した樹脂組成物1について、低分子量成分量の測定を行った。
【0101】
このペレットを、シクロヘキサンに溶解し、1%溶液を作成し、1μmのキャストフィルムを作成した。このキャストフィルムを用い、タンパク質吸着性試験を行った。
【0102】
また、このペレットを樹脂温度280℃、型温度75℃で射出成形し、厚さ4.0mm×長さ80mm×幅10.0mmの試験片を作成した。成形した試験片を用い、耐衝撃性を測定した。
【0103】
[実施例2]
ノルボルネン系重合体A95部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(E)5部に変えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物2を得た。
【0104】
[実施例3]
ノルボルネン系重合体A90部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(E)10部に変えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物3を得た。樹脂組成物3の成形時の型温度は60℃とした。
【0105】
[実施例4]
ノルボルネン系重合体A80部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(E)20部に変えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物4を得た。樹脂組成物4の成形時の型温度は50℃とした。
【0106】
[実施例5]
ノルボルネン系重合体A50部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(E)50部に変えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物5を得た。樹脂組成物5の成形時の型温度は50℃とした。
【0107】
[実施例6]
製造例2で得られたノルボルネン系重合体B70部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(E)30部に変えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物6を得た。樹脂組成物6の成形時の型温度は50℃とした。
【0108】
[比較例1]
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(E)を含まないこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物15を得た。
【0109】
[比較例2]
ノルボルネン系重合体A30部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(EC)70部に変えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物16を得た。樹脂組成物16の成形時の型温度は30℃とした。
【0110】
[比較例3]
真空乾燥及びポッパー窒素置換を行わず、シリンダー温度を300℃にした以外は実施例3と同様にして、樹脂組成物17を得た。
【0111】
[比較例4]
真空乾燥及びホッパー窒素置換を行わない以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物18を得た。
【0112】
[比較例5]
真空乾燥及びホッパー窒素置換を行わない以外は実施例2と同様にして、樹脂組成物19を得た。
実施例1〜6、比較例1〜5の結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
[実施例7]
製造例1で得られたノルボルネン系重合体(A)99部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(C)1部、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.5部とを、ブレンダーで混合し、次いで75℃で6時間、0.1hPaで真空乾燥した。ホッパーを窒素置換した2軸混練機を用い、245℃のシリンダー温度で混練して押し出し、ペレット化した樹脂組成物7を得た。このペレット化した樹脂組成物7について、低分子量成分量の測定を行った。
【0115】
このペレットを、シクロヘキサンに溶解し、1%溶液を作成し、1μmのキャストフィルムを作成した。このキャストフィルムを用い、タンパク質吸着性試験を行った。
【0116】
また、このペレットを樹脂温度280℃、型温度75℃で射出成形し、厚さ4.0mm×長さ80mm×幅10.0mmの試験片を作成した。成形した試験片を用い、耐衝撃性を測定した。
【0117】
[実施例8]
ノルボルネン系重合体A95部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(C)5部に変えた以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物8を得た。
【0118】
[実施例9]
ノルボルネン系重合体A90部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(C)10部に変えた以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物9を得た。樹脂組成物9の成形時の型温度は60℃とした。
【0119】
[実施例10]
ノルボルネン系重合体A80部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(C)20部に変えた以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物10を得た。樹脂組成物10の成形時の型温度は50℃とした。
【0120】
[実施例11]
ノルボルネン系重合体A50部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(C)50部に変えた以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物11を得た。樹脂組成物11の成形時の型温度は50℃とした。
【0121】
[実施例12]
ノルボルネン系重合体A90部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(D)10部に変えた以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物12を得た。樹脂組成物12の成形時の型温度は60℃とした。
【0122】
[実施例13]
ノルボルネン系重合体A50部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(D)50部に変えた以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物13を得た。樹脂組成物13の成形時の型温度は50℃とした。
【0123】
[実施例14]
製造例2で得られたノルボルネン系重合体(B)90部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(C)10部に変えた以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物14を得た。樹脂組成物14の成形時の型温度は50℃とした。
【0124】
[比較例6]
ノルボルネン系重合体A35部と芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体(C)65部に変えた以外は実施例9と同様にして、樹脂組成物20を得た。樹脂組成物20の成形時の型温度は30℃とした。
【0125】
[比較例7]
真空乾燥及びホッパー窒素置換を行わず、シリンダー温度を300℃にした以外は実施例9と同様にして、樹脂組成物21を得た。
【0126】
[比較例8]
真空乾燥及びホッパー窒素置換を行わない以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物22を得た。
【0127】
[比較例9]
真空乾燥及びホッパー窒素置換を行わない以外は実施例8と同様にして、樹脂組成物23を得た。
実施例7〜14、比較例6〜9の結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
この結果から、以下のことがわかる。
本発明の樹脂組成物を用いた成形体は、耐衝撃性とタンパク質吸着性に優れることがわかる(実施例1〜14)。
【0130】
それに対して、ノルボルネン系重合体のみでは、耐衝撃性が劣る(比較例1)。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしての芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の割合が高い場合には、タンパク質吸着性が劣る(比較例2)。また、真空乾燥などを行わず、2軸混練による分解が生じ、低分子量成分の割合が増加した場合には、タンパク質吸着性が劣ることがわかる(比較例3〜5)。
【0131】
また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体の割合が高い場合には、タンパク質吸着性が劣る(比較例6)。また、真空乾燥などを行わず、2軸混練による分解が生じ、低分子量成分の割合が増加した場合には、タンパク質吸着性が劣ることがわかる(比較例7〜9)