(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347594
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】サンプルをサンプリングし得られた情報の表示方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20180618BHJP
H01J 37/24 20060101ALI20180618BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
H01J37/22 502B
H01J37/24
H01J37/22 502L
H01J37/22 502Z
H01J37/28 B
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-242518(P2013-242518)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2014-107271(P2014-107271A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】12194321.1
(32)【優先日】2012年11月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】パベル ポトツェク
(72)【発明者】
【氏名】マルチヌス ペトルス マリア ビエルホフ
(72)【発明者】
【氏名】トマース ヴィスタベール
(72)【発明者】
【氏名】ルカース ドライブチャーク
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−002364(JP,U)
【文献】
特開2007−299768(JP,A)
【文献】
特開昭59−214151(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0153145(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00 −37/02
H01J 37/05
H01J 37/09 −37/244
H01J 37/252−37/295
G01N 23/225
H04N 7/18
H04N 19/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルをサンプリングし、得られた情報を表示装置上に表示する方法であり、前記方法は:
・一系列のN個の重なるサブフレームにおいて、一度に1つのサブフレームずつ、前記サンプルにわたってビームをスキャンする(インターレーススキャンを除く。)段階であって、それぞれのサブフレームはMn個のスキャン位置を含み、それぞれのサブフレームのスキャン位置は他のサブフレームのスキャン位置と重ならず、それにより前記ビームは前記サンプルをN×Mn個のスキャン位置で照射し、前記N×Mn個のスキャン位置が視野を形成する、段階;
・検出器を用いて、前記ビームによる前記サンプルの照射に応じて前記サンプルから生じるシグナルを検出する段階であって、前記シグナルはそれぞれのスキャン位置についてサンプリングされる、段階;及び
・前記サブフレームを少なくともN×Mn個の画素を持つ表示装置上に、一系列のN個のスキャン後には、それぞれの画素は1又複数のスキャン位置からのシグナルから得られる情報を表示するように表示する段階を含み、
・第1のサブフレームのスキャン後、それぞれの画素が、前記第1のサブフレームのスキャン位置から得られる情報を表示し;及び
・第2のサブフレームのスキャン後、それぞれの画素が、前記第1のサブフレーム、前記第2のサブフレーム又は両方のサブフレームのスキャンの際に得られた情報を表示すること、を特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、サブフレームあたりのスキャン位置の数及び画素の数が全てのサブフレームで同じである、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であり、N=(kx×ky)であり、ここでkx及びkyは正整数であり、kx及びkyの少なくとも1つは1より大きい整数である、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法であり、前記ビームが、赤外線光、可視光又はX線からなる群、又は電子、イオン、荷電クラスタ、荷電分子、原子又は分子からなる群から選択されるビームである、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法であり、前記系列のN個のサブフレームのうち少なくとも1つについて、他の1又は複数のサブフレームに関するそのサブフレームの位置が、前記サンプルのドリフト及び/又は振動及び/又は変位について補正される、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法であり、サブフレームの新しい系列が、既定の値よりも大きい変位が最後に得られたサブフレームと少なくとも1つのより前に得られたサブフレームとの間で検出された後に、開始される、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法であり、ユーザーが新しいサブフレームの系列を開始することができるか、又は新しいサブフレーム系列が、サンプルが載せられているサンプルステージが動いた後、前記視野の変化後、又は検出器設定の変更後に開始される、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法であり、前記第1のサブフレームのスキャン後に画素の少なくとも一部が、2以上のスキャン位置から得られる情報を示す、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法であり、前記検出器が、前記サンプルから発する、X線光子、光光子、二次電子又は後方散乱電子の数及び/又はエネルギー及び/又は角度分布を検出する、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法であり、それぞれのサブフレームのスキャン時間が、お互いのサブフレームのスキャン時間と等しい、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルをサンプリングし及び得られた情報の表示装置上へ表示する方法に関するものであり、前記方法は:
・一系列のNの重なるサブフレームで、1つのサブフレームを一度に、前記サンプルをビームスキャンすることを含み、それぞれのサブフレームはM
nのスキャン位置を含み、それぞれのサブフレームのスキャン位置は他のサブフレームの前記スキャン位置と重ならず、それにより前記ビームは前記サンプルをNxM
n位置で照射し、前記NxM
nスキャン位置が視野を形成し;
・前記ビームにより前記サンプルの照射に応じた前記サンプルから生じるシグナルを検出する検出装置を用いることを含み、前記シグナルはそれぞれのスキャン位置でサンプリングされ;及び
・前記サブフレームを少なくともNxM
n画素を持つ表示装置上に、前記画素それぞれの一系列のNのスキャン後に、1又複数のスキャン位置からのシグナルから誘導される情報を表示するように、表示することを含む。
【背景技術】
【0002】
かかる方法は、インターレースラスタスキャンを装備する、NovaNanoSEM走査電子顕微鏡(FEIカンパニー,ヒルズボロ,アメリカ合衆国)で使用されるインターレーススキャンで知られたものである。
【0003】
走査電子顕微鏡(SEM)では、例えば200eVと30keVの間の選択可能なエネルギーを持つ電子収束ビームがサンプル上にスキャンされる。前記サンプルに入る電子ビームに応じて、サンプルからは、50eV未満のエネルギーの二次電子(SE)、50eVを超えるエネルギーの後方散乱電子(BSE)、光及びX線などが放射される。これらの1又を複数の放射線が検出器でサンプリング/検出され得る。
【0004】
前記スキャンパターンは、連続スキャンパターン又はインターレーススキャンパターンであり得る。NovaNanoSEM(非特許文献1、特に7ページの「ユーザーインターフェイス」参照)の冊子によれば、インターレーススキャンパターンの利点は、興味対象領域が(より煩雑ではあるが)より迅速にスキャンされることから、インターレーススキャンは、前記興味対象領域(わずかに異なる走査位置ではあるが)を再スキャンする前に電荷が拡散することを可能にし、それにより最適化無電荷画像を達成する、ということである。
【0005】
留意すべきことは、よりよい電荷分布及び拡散はまた、より少ない滞在(dwell)時間(ひとつの点にビームが滞在する時間)を用いてより迅速にスキャンすることと、例えば前記画像積算又は平均化を組み合わせることで達成され得るということである。しかし、この欠点は、必ずしも全ての検出器が迅速なサンプリング時間に適合するものではなく(検出器が十分な帯域幅を持たない)、又はシグナル対ノイズ比の悪化を示すということである。又は前記サンプルに関してある物理的現象が時間を制限する可能性があり、例えば蛍光観察などであり:蛍光は長い減衰時間を持ち、従って迅速なサンプリングで検出することには適していない。
【0006】
かかる方法はまた、MUSE方式(多重サブサンプリング方式)類似HDTVのサンプリング/表示スキームにおいて知られている。
【0007】
MUSEにおいては、
図1に示されるサンプリングスキームが使用されるが、これについては非特許文献2(Interlace and MPEG−Can motion compensation help,J.O.Drewery.International Broadcasting Convention 1994(IBC1994))を参照のこと。4つのサブフレームの数が定義され、それぞれのサブフレームはスキャン位置を含み、ここで「1」、「2」、「3」及び「4」とそれぞれ表される対応する表示装置(テレビスクリーン)上の画素に対応する。第1に、前記第1のサブフレームがスキャンされ、伝送され表示され、次に前記第2のサブフレームと続く。それにより完全な画像が、4つのサブフレームの伝送後に形成される。インターレーススキャン/伝送を用いることで、画像上のちらつきを低減させる。前記フレームは通常は、15Hzのフレームレート(従ってサブフレームレートは60Hz)で伝送される。第1系列サブフレームの第4サブフレームが表示された後、第2系列画像の第1サブフレームが表示される。これは、画像メモリの部分であるメモリセルでの情報を変更することで達成されるか、又は例えば、電子ビームを、対応する画素の位置に制御された電流を持つ蛍光スクリーンへ向けることで達成され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Brochure for the Nova NanoSEM,FEI Company: http://www.fei.com/products/scanning−electron−microscopes/nova−nanosem/nanosembrochure.aspx
【非特許文献2】Interlace and MPEG−Can motion compensation help?,J.O.Drewery,International Broadcasting Convention 1994(IBC1994) http://www.bbc.co.uk/rd/pubs/papers/pdffiles/jodibc94.pdf
【非特許文献3】A Fast Super Resolution Algorithm for SEM Image,L.Hengshu,Proc.of SPIE Vol.6623 66231Z
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、改良されたスキャニング方法/画像化方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、前記第1のサブフレームをスキャン後、前記それぞれの画素は前記第1のサブフレームの前記スキャン位置から得られる情報を表示し;及び前記第2のサブフレームをスキャン後、前記それぞれの画素は、前記第1のサブフレーム、前記第2のサブフレーム又はそれらの両方のスキャニングの際に得られる情報を表示する。前記第1サブフレーム後すでに、画像が全画素を用いて表示され、従って正しい全体コントラスト/明るさレベルを持つ。そのように得られた情報は、全画素を用いる第1の迅速画像のために使用され得るが、同じ情報がまた続くより高解像度を持つ続く画像で使用される。
【0011】
留意すべきことは、前記第1の画像ですでに得られた画像のみならず続く画像において例えば補完技術が表示される解像度を強化するために使用され得る、ということである。
【0012】
さらに留意すべきことは、従来技術の方法では、全てのNのサブフレームがスキャンされるまで、前記画素の一部のみが情報を表示し、残る画素は黒いままであり、このことは全てのサブ画像がスキャンされるまで全体の明るさレベルが悪い画像を与えることとなる、ということである。他の従来技術方法では、全てのNのサブフレームがスキャンされるまで、画素の一部が古い情報、例えば前記サンプルが他の位置にある際にサンプリングされた情報を示すものであるか、又は前記検出器が他の設定がなされてこれにより少なくとも部分的に悪いコントラスト、明るさ又は位置情報を示す画像を与えるものである。
【0013】
確かに、HDTVではこれは重要な問題ではない、というのは4つのサブフレーム後に完全な画像が存在することから、及びそれぞれの時間で新しいサブフレームが古いサブフレームに交換されて表示されるからである。このことは全て迅速に起こり、1/15秒の開始(スタートアップ)(1/15秒はフレームレート)後、全ての画素は常に使用され、かつそれぞれのフレームレート後に新しい情報に更新される。
【0014】
例えばSEMでは、スキャン時間は変動され、通常フレームレート25Hzから1秒で1フレーム又はさらに例えば1分で1フレームを示す。スキャン時間1秒で1フレームのフレームレートを用いると、前記時間の区分内で低解像度画像を観察することが有益となり、それにより例えば、視野(画像領域)が興味対象構造を含んでいるかどうかを決定することが可能となる。続くサブフレームは次に高分解能化に寄与し得るものであり、さらにサブフレームが使用された後、前記画像のシグナル対ノイズ比を改善するために使用され得る。
【0015】
ひとつの実施態様では、サブフレームにつきスキャン位置及び画素の数は全てのフレームで同一である。
【0016】
好ましくは、サブフレームにつきスキャン位置及び画素の数は全てのフレームで同一であることが好ましいが、必要とするものではない。1又は複数のサブフレームは、例えばスキャン位置の列及び/又は行を欠いてよい。
【0017】
本発明のひとつの実施態様では、N=(k
xxk
y)で、k
x及びk
yは正整数であり、k
x及びk
yの少なくとも1つは1より大きく、より好ましくはN=k
2であり、kは1より大きい整数である。
【0018】
N=(k
xxk
y)(k
x及びk
yは正整数)を選択することで、異なるサブフレームの対応する画素が、長方形にグループ化され、N=k
2とすることで異なるサブフレームの対応する画素が正方形にグループ化される。
【0019】
本発明の他の実施態様では、前記ビームは、赤外線光、可視光又はX線光からのビーム、又は電子イオン、電荷クラスタ、電荷分子、原子又は分子からの粒子ビームである。
【0020】
本発明はSEMを用いて説明されているが、本発明はまた、電子ビーム以外の他のビームを用いる装置を用いる場合で使用され得る。
【0021】
本発明のさらなる実施態様では、前記サブフレームの少なくとも1つのNサブフレーム系列は他のサブフレームの1又は複数に対して、前記サンプルのドリフト及び/又は振動について補正される。
【0022】
異なるサブフレームを比較することで、前記画像間のシフトが例えば補正技術により検出され得る。検出されたドリフトは次に、それを表示する際に得られたデータを単純にシフトさせることで、又は以下に記載されるより精巧な技術を用いて相殺させることができる(例えば欧州特許出願第12188958号、又は「A Fast Super Resolution Algorithm for SEM Image」,L.Hengshu,Proc.of SPIE Vol.6623 66231Z(非特許文献3)参照)。
【0023】
本発明の他の実施態様では、新たな系列のサブフレームは、既定値より大きい変位が前記最後に得られたサブフレームと少なくとも1つのより前に得られたサブフレームとの間で検出された後、開始される。
【0024】
この実施態様では、新たなNサブフレーム系列の表示は、既定値より大きい変位が前記最後に得られたサブフレームと少なくとも1つのより前に得られたサブフレームとの間で検出された後できるだけ早く開始される。前記変位は、サンプル位置での変化によるものであり、従って前記サンプルが載せられたステージが移動する間低解像度画像を与えるものであり、前記ステージが静止した場合に高解像度画像を与える結果となる(全サブフレームを用いる)。
【0025】
本発明の他の実施態様では、ユーザーは、サブフレームの新たな系列の開始を引き起こすことができ、又はサブフレームの新たな系列がサンプルが載せられたサンプルステージが動いた後に開始されるか、又はサブフレームの新たな系列がサンプルが載せられたサンプルステージが動き、視野の変化又は検出設定の変化があった後に開始され得る。
【0026】
特に低い更新頻度(リフレッシュレート)及び高いN数では、新たな画像を構築する時間は長くなる。そこで、サンプルが載せられたステージが動かされた後に、新たな画像構築をユーザー要求により又は自動的に開始することが好ましい。「バッファをフラッシュする」とは新たな画像が開始されることである。
【0027】
本発明の他の実施態様では、前記第1のサブフレームのスキャン後、前記画素の少なくとも一部分が2以上のスキャン位置から得られる情報を示す。
【0028】
前記第1のサブフレームがスキャンされた際、前記第1のサブフレームの情報を用いて第1の画像が表示される。しかし、2以上のスキャン位置から得られる情報間を補完することで、改善された仮想解像度を持つ画像が表示され得る。より多くのサブフレームのデータが画像化されても、補完は好ましいものであり、全てのNサブフレームがサンプリングされた際、前記表示がNxM画素を持つと仮定して、いわゆる超高解像度を持つ画像が表示されることとなる。
【0029】
本発明の他の実施態様では、前記検出器は、前記サンプルからの、X線光子、光光子、二次電子又は後方散乱電子の数及び/又はエネルギー及び/又は角度分布を検出する。
【0030】
サンプルからの放射を検出する検出器は、X線検出器(検出原理としてEDX又はWDXを用いる)、光子検出器(例えばSi−PMT、光ダイオード又はCMOS又はCDD検出器)、SE検出器(例えばE−T(Everhart−Thornley)検出器、又は半導体検出器)、BSE検出器(例えば半導体検出器)、サンプルを通過して伝達される電子の検出器(低減エネルギー分光装置)及びその他多数である。
【0031】
本発明の好ましい実施態様では、前記それぞれのサブフレームのスキャン時間はそれぞれ他のサブフレームのスキャン時間に等しい。
【0032】
前記異なるサブフレームのスキャン時間は同じであることは必要ではないが、大抵の場合これは最も容易な選択である。
【0033】
本発明は以下、添付図面を参照しつつ説明される。ここで図中の同じ符号は対応する構成を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、MUSE方式で使用される前記スキャニング方法を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、MUSE方式で使用されるスキャニング方法を模式的に示す。
【0036】
MUSE方式では、1つのフレームは4つのサブフレームをからなる。それぞれのサブフレームは前記他のサブフレームに関して変位されている。前記第1のサブフレームは、「1」とマークされた前記スキャン位置からなり、これらのスキャン位置を表示装置の対応する位置に表示する。同様に第2のサブフレームは、「2」とマークされた前記スキャン位置からなり、これらのスキャン位置を表示装置の対応する位置上に表示する。結晶に類似して、いくつかの「単位セル」が定義され、例えば単位セル10、単位セル11及び単位セル12などである。これらのセルのそれぞれは、最小変位を持つNのサブフレームのそれぞれのひとつのスキャン位置を含む。具体的には、ダイヤモンド形状の単位セル12は、Nサブフレームの完全な画像を満たすためのセルとして使用に好適であるが、その方向は、それが、直線端部を示す画像のようなN*Mスキャン位置に適合しにくいものである。
【0037】
MUSE方式スキャンスキームは多くのスキャンされない領域15を含む。前記単位セルで見られるように、前記サンプルのわずか半分がスキャンされるだけであり、その結果過少サンプリングとなる(サンプルの全領域がサンプリングされない)。過小サンプリングを防止するために、やや過大なサイズスポット20が画像をスキャンするために使用される。これは、過小サンプリングを低減させるが、(前記スポットの直径及びスキャンラスタに依存して)やや過大サンプリングを与える結果となり、ひとつのサンプルが他の位置の情報も同様に含むこととなる。
【0038】
図2は、本発明による方法を実施するためのSEM装置を模式的に示す。
【0039】
図2は、電子顕微鏡カラム241、同じく電力供給と制御ユニット245を持つ装置200を示す。電子ビーム232が、カソード253から、カソード253とアノード254間に電圧を供給することで放出される。電子ビーム232は、収束レンズ256と対物レンズ258の手段で微細点に収束される。電子ビーム232は、偏向コイル260手段により前記サンプル上に2次元的にスキャンされる。前記偏向コイルは、前記ビームを前記x軸及び前記y軸に沿って偏向し、前記ビームを、単純な又は複雑なパターン、例えばラスタースキャン、蛇行スキャン又はヒルバートスキャンなどでサンプル表面をスキャンさせることを可能にする。偏向装置は磁気又は静電的であり得る。凝集レンズ256、対物レンズ258及び偏向コイル260の操作は、電力供給及び制御装置245で制御される。
【0040】
システム制御装置233が、前記装置200の種々の部分の操作を制御する。真空チャンバ210はイオンポンプ268及び機械ポンプシステム269で、真空制御装置234による制御の下で真空にされる。
【0041】
電子ビーム232はサンプル202上に収束され、前記サンプルは真空チャンバ210内のX−Yステージ204上に載せられている。電子ビームの電子がサンプル202を衝撃すると、前記サンプルは放射を与える。後方散乱電子は後方散乱電子検出器242、好ましくはセグメント化シリコン検出器で検出される。
【0042】
データプロセッサ220は、コンピュータプロセッサ、プログラム可能ゲートアレイ、又は他のデジタル又はアナログプロセス手段;オペレータインターフェイス手段(例えばキーボードやコンピュータマウスなど);データ又は実行可能命令を記憶するプログラムメモリ222;データ入力及び出力、実行可能なコンピュータプログラムコードで実装された実施可能なソフトウェア命令のためのインターフェイス手段;及びビデオ回路292の方法で結果を表示するための表示装置244を含む。
【0043】
データプロセッサ220は、標準の実験室パーソナルコンピュータの一部であってよく、通常は少なくともコンピュータ読み取り可能媒体の形で接続されている。揮発性及び不揮発性媒体、可動又は非可動媒体の両方を含むコンピュータ読み取り可能な媒体は、データプロセッサ220にアクセスされ得る全ての利用可能な媒体であり得る。例示として、限定するものではないが、コンピュータ読み取り可能な媒体はコンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータなどの情報の記憶のための任意の方法及び技術で実装される、揮発性及び不揮発性、可動又は非可動媒体を含む。例えば、コンピュータ記憶媒体には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又はその他の光学ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又はその他の磁気記憶装置、又は望ましい情報を記憶し、プロセッサ220にアクセス可能な任意の媒体が含まれる。
【0044】
又、プログラムメモリ222は、可動及び/又は非可動、揮発性及び/又は不揮発性メモリの形のコンピュータ記憶装置を含み、コンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール及びその他のデータの記憶を提供し得るものである。
【0045】
適切な命令を持つプログラムメモリをロードすることで、前記装置は本発明による方法を実施し得るようになる。
【0046】
留意すべきことは、ここで電子顕微鏡カラムを備える装置に基き説明がなされたが、イオンビーム収束カラム、レーザービームカラム、電荷クラスタカラムなどを備える装置、これらの組み合わせ装置もまた同様に使用され得る、ということである。
【0047】
さらに留意すべきことは、長いドウェル(滞留)時間が必要となる場合もあるということであり:これは前記サンプルによる(例えば蛍光又はリン光が長時間の減衰を与え、長いサンプリング時間を要することとなる)、又は検出器による(例えば、短いサンプリング時間又は制限された帯域幅を持つ場合に、シグナル対ノイズ比が悪化する)結果である。
いくつかの態様を記載しておく。
〔態様1〕
サンプルをサンプリングし、得られた情報を表示装置上へ表示する方法であり、前記方法は:
・一系列のNの重なるサブフレームで、1つのサブフレームを一度に、前記サンプルをビームスキャンすることを含み、それぞれのサブフレームはMnのスキャン位置を含み、それぞれのサブフレームのスキャン位置は他のサブフレームのスキャン位置と重ならず、それにより前記ビームは前記サンプルをNxMnスキャン位置で照射し、前記NxMnスキャン位置が視野を形成し;
・前記ビームにより前記サンプルの照射に応じた前記サンプルから生じるシグナルを検出する検出装置を用いることを含み、前記シグナルはそれぞれのスキャン位置でサンプリングされ;及び
・前記サブフレームを少なくともNxMn画素を持つ表示装置上に、前記画素それぞれの一系列のNのスキャン後に、それぞれの画素は1又複数のスキャン位置からのシグナルから得られる情報を表示するように表示することを含み、
・第1のサブフレームのスキャン後、それぞれの画素が、前記第1のサブフレームのスキャン位置から得られる情報を表示し;及び
・第2のサブフレームのスキャン後、それぞれの画素が、前記第1のサブフレーム、前記第2のサブフレーム又は両方のサブフレームのスキャンの際に得られた情報を表示すること、を特徴とする、方法。
〔態様2〕
態様1に記載の方法であり、サブフレームあたりのスキャン位置及び画素の数が全てのサブフレームで同じである、方法。
〔態様3〕
態様1又は2のいずれか一項に記載の方法であり、N=(kxxky)であり、ここでkx及びkyは正整数であり、kx及びkyの少なくとも1つは1より大きく、より具体的にはN=k2でありここでkは1より大きい整数である、方法。
〔態様4〕
態様1乃至3のいずれか一項に記載の方法であり、前記ビームが、赤外線光、可視光又はX線からなる群、又は電子、イオン、荷電クラスタ、荷電分子、原子又は分子からなる群から選択されるビームである、方法。
〔態様5〕
態様1乃至4のいずれか一項に記載の方法であり、前記少なくとも1つのN系列サブフレームについて、他の1又は複数のサブフレームに関して前記サブフレームの位置が、前記サンプルのドリフト及び/又は振動及び/又は変位について補正される、方法。
〔態様6〕
態様1乃至5のいずれか一項に記載の方法であり、サブフレームの新しい系列が、既定の値よりも大きい変位が最後に得られたサブフレームと少なくとも1つのより前に得られたサブフレームとの間で検出された後に、開始される、方法。
〔態様7〕
態様1乃至6のいずれか一項に記載の方法であり、ユーザーが新しいサブフレームの系列を開始することができるか、又は新しいサブフレーム系列が、サンプルが載せられているサンプルステージが動いた後、前記視野の変化後、又は検出器設定の変更後に開始される、方法。
〔態様8〕
態様1乃至7のいずれか一項に記載の方法であり、前記第1のサブフレームのスキャン後に画素の少なくとも一部が、2以上のスキャン位置から得られる情報を示す、方法。
〔態様9〕
態様1乃至8のいずれか一項に記載の方法であり、前記検出器が、前記サンプルから発する、X線光子、光光子、二次電子又は後方散乱電子の数及び/又はエネルギー及び/又は角度分布を検出する、方法。
〔態様10〕
態様1乃至9のいずれか一項に記載の方法であり、それぞれのサブフレームのスキャン時間が、お互いのサブフレームのスキャン時間と等しい、方法。