(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
増粘剤として加工澱粉を含有するとともに、前記加工澱粉の含有量が1.0質量%以上6.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
増粘剤として加工澱粉及び増粘多糖類を含有するとともに、前記加工澱粉の含有量が1.0質量%以上5.0質量%以下であり、前記増粘多糖類の含有量が前記加工澱粉の含有量の半分以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
前記液状調味料は、醤油の含有量が1質量%以上20質量%以下の和風煮物料理用であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、脂っこくなく比較的あっさりとした肉類煮物料理(例えば、和風の肉類煮物料理)を上記従来技術の方法にて造りたいときには、例えば、だしを含有する一方で油脂分が少ない液状調味料と、具材である肉類とをパウチ内で混ぜ合わせて電子レンジで加熱調理を行えばよい。しかしながら、この場合には急速な加熱に伴ってだし風味が消失してしまい、肉類煮物料理としての嗜好性が損なわれやすいという問題があった。その一方で、だし風味を維持できる程度の穏やかな加熱条件で調理を行うと、肉類(特に畜肉)に対する調理効果が低下して液状調味料の染み込みが悪くなり、煮物料理として肉類の柔らかさが不十分になるという問題があり、上記のだし風味の維持との両立が困難であった。
【0006】
また、特許文献3等に示す従来のパウチ詰め液状食品は、電子レンジ内にて平置きの状態で加熱調理されるのが一般的である。その際、液状調味料の液面がファスナー及び蒸気抜き機構の極めて近くに位置することになるため、液状調味料が噴きこぼれたり、突沸したりしやすいという問題があった。そこで本願発明者らは、スタンディングパウチに液状調味料をあらかじめ充填封入しておく商品形態を選択し、調理時にはファスナーを開けて具材を投入して再びファスナーを閉じた後、電子レンジ内で縦置きの状態で加熱調理することを考えている。しかしながら、このような特殊な調理方法を採用した場合、加熱調理中にパウチが座屈することが予想され、このような座屈の防止と、噴きこぼれ・突沸の防止等とを同時に解決することが望ましいと考えられる。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、縦置き状態で電子レンジにて加熱調理したときに、だしの風味が十分に効いていて肉類が十分に柔らかい肉類煮物料理を得ることができる電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料を提供することにある。また、その第2の目的は、縦置き状態で電子レンジにて加熱調理したときでもパウチの座屈や噴きこぼれ・突沸を起こしにくい電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料を提供することにある。また、本発明の第3の目的は、上記の好適な液状調味料を用いて確実にかつ簡単に嗜好性の高い肉類煮物料理を得ることができる調理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、液状調味料におけるだしの含有量と常温での粘度とに着目し、それらの範囲の適正化を図ることで、だしの風味を消失しない程度の比較的穏やかな加熱条件で調理を行ったときでも肉類に対する好適な調理効果を維持できることを新規に知見した。そして、本発明者らは上記の知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、下記の発明を完成させるに至ったのである。
【0009】
上記の課題を解決するための手段[1]〜[
7]を以下に列挙する。
【0010】
[1]
魚節に由来するだしを含有する液状調味料が
縦横寸法比0.50以上0.95以下であって、容量が100mL以上1500mL以下であるスタンディングパウチに充填封入されてなり、具材である
畜肉類を
主体固形材料として投入しかつ縦置きにした状態で
、電子レンジにて
前記液体調味料及び前記具材の合計質量300gあたり2400W・分以上6000W・分以下の条件下で加熱調理することにより、煮物料理を得られるようにするスタンディングパウチ入り液状調味料であって、
前記だしの含有量が固形分量として
0.849質量%以上2.83質量%以下であり、20℃における粘度が
418mPa・s以上6280mPa・s以下であ
り、食用油脂の含有量が1質量%以下であり、前記具材である畜肉類の予定投入量が、液状調味料1質量部あたり0.4質量部以上2.4質量部以下であることを特徴とする電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
【0011】
[2]増粘剤として加工澱粉を含有するとともに、前記加工澱粉の含有量が1.0質量%以上6.0質量%以下であることを特徴とする手段1に記載の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
【0012】
[3]増粘剤として加工澱粉及び増粘多層類を含有するとともに、前記加工澱粉の含有量が1.0質量%以上5.0質量%以下であり、前記増粘多糖類の含有量が前記加工澱粉の含有量の半分以下であることを特徴とする手段1に記載の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
【0013】
[4]前記液状調味料は
、醤油の含有量が1質量%以上20質量%以下の和風煮物料理用であることを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
【0015】
[
5]前記スタンディングパウチに前記具材である
畜肉類を
主体固形材料として投入しかつ縦置きにした状態において、パウチ底面を基準とした前記液状調味料の液面の高さが、パウチ底面を基準とした前記具材の高さの0.6倍以上1.1倍以下であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
【0016】
[
6]塩分の含有量が1質量%以上5質量%以下、ブリックスが10%以上30%以下、pHが3.5以上5.5以下であることを特徴とする手段1乃至5のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料。
【0017】
[
7]
だしを含有する液状調味料が充填封入されたスタンディングパウチに、具材である肉類を投入して前記液状調味料とともに揉み込んだ後、縦置きにした状態で電子レンジにて加熱調理することにより、肉類煮物料理を得る
方法であって、前記だしが魚節に由来するだしであり、前記液状調味料が、縦横寸法比0.50以上0.95以下であって、容量が100mL以上1500mL以下である前記スタンディングパウチに充填封入され、前記具材である肉類が、畜肉類でありかつ主体固形材料として前記スタンディングパウチに投入され、前記電子レンジによる加熱調理が、前記液体調味料及び前記具材の合計質量300gあたり2400W・分以上6000W・分以下の条件下で行われ、前記だしの含有量が、固形分量として0.849質量%以上2.83質量%以下であり、20℃における粘度が418mPa・s以上6280mPa・s以下であり、食用油脂の含有量が1質量%以下であり、前記具材である畜肉類の予定投入量が、液状調味料1質量部あたり0.4質量部以上2.4質量部以下であることを特徴とする肉類加熱調理方法。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、請求項1〜
6に記載の発明によると、縦置き状態で電子レンジにて加熱調理したときに、だしの風味が十分に効いていて肉類が十分に柔らかい肉類煮物料理を得ることができる電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料を提供することができる。また、特に請求項3に記載の発明によると、縦置き状態で電子レンジにて加熱調理したときでも突沸を起こしにくいものとすることができ、また、請求項
1,5に記載の発明によると、縦置き状態で電子レンジにて加熱調理したときでもパウチの座屈や噴きこぼれを起こしにくいものとすることができる。
【0019】
請求項
7に記載の発明によると、上記の好適な液状調味料を用いて確実にかつ簡単に嗜好性の高い肉類煮物料理を得ることができる調理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料、及びそれを用いた肉類加熱調理方法について詳細に説明する。
【0022】
本発明の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料は、肉類煮物料理を得るにあたって、具材である肉類をスタンディングパウチに投入しかつ当該パウチを縦置きにした状態で電子レンジにて加熱調理する際に使用するものである。
【0023】
上記のスタンディングパウチ入り液状調味料は、脂っこくなく比較的あっさりとした和風の肉類煮物料理を得るのに適したものであり、それゆえこの液状調味料中には、だしが所定量含有される一方で、油脂分が全く含有されていないかあるいは少しだけ含有されたものとなっている。
【0024】
本発明のスタンディングパウチ入り液状調味料は、肉類煮物料理を得るためのものであることから、具材である肉類を主たる調理対象物としている。肉類としては、鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉等の畜肉類が好適例として挙げられるほか、猪肉、鹿肉、兎肉、カンガルー肉などの獣肉類も同様に好適例として挙げられる。このほかの肉類としては、例えば、カツオ、マグロ、スズキ、タラ、サケ、タイ、サバ、アジ等の魚肉類等を挙げることもできる。ただし、魚介類に比較して肉組織が硬い畜肉類・獣肉類のほうが液状調味料の染み込みが悪く、煮物料理として肉類の柔らかさが不十分になるという問題が顕著になるため、畜肉類・獣肉類を具材としたときに本発明の技術を適用する意義がある。
【0025】
ところで、上記具材は必ずしも肉類のみで構成されていなくてもよく、肉類を主体固形材料として含んでいれば肉類以外の固形材料を含んでいてもよい。肉類以外の固形材料として、例えば、キャベツ、もやし、ホウレン草、小松菜、ナス、ブロッコリー、カリフラワー、ダイコン、カボチャ、ジャガイモ、とうもろこし、サツマイモ、ニンジン、カブなどの野菜類や、インゲン、大豆、小豆、そらまめなどの豆類や、まいたけ、しめじ、えのき、しいたけ、エリンギなどのキノコ類や、カツオ、マグロ、スズキ、タラ、たこ、いか、エビ、あさりなどの魚介類などを含んでいてもよい。なお、肉類等を主体とする上記具材は、大きさ及び形状は特に限定されないが、パウチ内に封入しやすくて食べやすい大きさ及び形状(例えば5mm〜50mm程度の塊状、片状、棒状など)にカットして使用することが好ましい。具材は未処理のものであってもよいが、必要に応じて、下ゆで、油通し、あく抜き等の下処理をしておいてもよい。
【0026】
本発明のスタンディングパウチ入り液状調味料は、上述したように「だし」を必須要素として含有している。ここで「だし」とは、魚介類、海藻類、畜肉類、野菜類、キノコ類などに含まれる旨味成分(アミノ酸や核酸など)を抽出した液体のことを指すものであって、一般的には液状調味料に旨味や香味を与えるために添加される。好適なだしとしては、魚節から抽出した液体を挙げることができる。だしの抽出に使用される「魚節」としては、特に限定されず、原料である魚肉を煮て乾燥させた保存性のある物を広く指す。魚節としては、例えば、鰹節、宗田節、まぐろ節、鯖節、むろ節、枯節、うるめ節、いわし節、さんま節、煮干類などを用いることができる。この場合の液状調味料としては、できるだけ脂質含有量が少ない魚節を用いることが好ましい。その理由は、脂質含有量が多い魚節の粉末を用いると、液中に脂分が溶出する結果、外観の悪化や、脂分による酸化劣化が起こるからである。具体的には、例えば脂質含有量が15質量%未満の魚節(好ましくは12質量%未満の魚節)の粉末を用いることがよく、この場合には液中に脂分が溶出しにくくなる。また、魚節はロースト加工を施したものであることが好ましく、これを用いた場合には生臭味を抑制できるばかりでなく、液体調味料そのものに香ばしさを付与することができる。なお、ロースト加工の方法は特に限定されず、例えば、煮た魚肉を遠赤外線で熱処理する方法でもよいし、煮た魚肉を鉄板上で直接的に焼く方法でもよい。また、本発明のスタンディングパウチ入り液状調味料が和風の煮物料理を得るためのものであるときには、魚節に由来するだしを選択することが好ましく、とりわけ鰹節に由来するだし(即ち鰹だし)を選択することが好ましい。鰹節を選択した場合、和風料理として好ましい十分なだし風味を確実に付与することができるからである。なお、和風の煮物料理を得るにあたっては、鰹節由来のだしばかりでなく、例えば魚介類(例えば昆布)由来のだしや、畜肉類(例えば鶏がら)由来のだしなどを少量使用しても構わない。
【0027】
本発明の液状調味料において、だしは固形分量として0.1質量%以上3.0質量%以下含有されている。その理由は、この範囲内であると風味バランスを崩すことなく十分なだし風味(だし感)を料理に付与することができるからである。だしが固形分量として0.1質量%未満であると、旨味の絶対量が少ないため十分にだし感を付与することができないからである。逆に、だしが固形分量として3.0質量%超であると、旨味の絶対量は問題とならないが、燻煙臭や生臭みなどの不快な雑味が強くなり風味バランスが崩れてしまうからである。なお、本発明において鰹節等のような魚節に由来するだしを用いた場合、だしは固形分量として0.5質量%以上2.5質量%以下含有されていることが好適である。
【0028】
本発明のスタンディングパウチ入り液状調味料は、上述したように「油脂分」を全く含有していないか、あるいは少しだけ含有(例えば0.01質量%以上1.0質量%以下程度含有)したものとされている。後者の場合において油脂分は、主に液状の食用油脂というかたちで液状調味料に含まれている。食用油脂としては特に限定されず、例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、コーン油、ひまわり油、米油、綿実油、パーム油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ごま油などといった植物由来の油脂などが使用可能である。これらの食用油脂は、未処理品としてそのまま用いてもよいほか、精製して用いたり、あるいは化学的処理や酵素処理を施して用いたりしてもよい。また、上記の液状の食用油脂は、単独で用いてもよいほか、2種以上組み合わせて用いても勿論よい。
【0029】
本発明のスタンディングパウチ入り液状調味料は、必須ではないが増粘剤として加工澱粉を含有している。この液状調味料に含有される加工澱粉は、主として液状調味料に好適な粘度を付与する役割を果たしており、例えば、小麦粉澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチなどの生澱粉に常法によりアルファ化処理を行ったアルファ化澱粉、生澱粉に常法により湿熱処理を行った湿熱澱粉、生澱粉に常法により架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理などの処理を行った架橋澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などが使用可能である。
【0030】
本発明において増粘剤としての加工澱粉の含有量は特に限定されないが、例えば7.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上6.0質量%以下であることがより好ましい。加工澱粉の含有量が1.0質量%未満であると、液状調味料の粘度が低くなりすぎて、具材表面に液状調味料が留まりにくくなる。その結果、液状調味料の肉類への染み込み性が悪化し、肉類に十分な柔らかさを付与できなくなるからである。逆に、加工澱粉の含有量が6.0質量%超になると、液状調味料の粘度が高くなりすぎて突沸が起こりやすくなるばかりでなく、加工澱粉自体に独特の風味が強まること等に起因してだし風味が低下してしまうからである。以上のことから、加工澱粉の含有量は1.0質量%以上5.0質量%以下とすることがより好ましい。
【0031】
さらに、液状調味料における増粘剤として、加工澱粉を単独で使用してもよいが、加工澱粉と増粘多糖類とを併用してもよい。このような増粘多糖類としては、例えば、グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、モナトウガム、トラガントガム等が好適例として挙げられる。このような増粘多糖類は、1種類だけ使用されてもよく、2種類以上組み合わせて使用されてもよい。ただし、増粘多糖類の含有量は加工澱粉の含有量よりも少なくてよく、具体的には半分以下の量であることが好ましい。即ち、本発明の液状調味料において基本的には、加工澱粉により大部分の粘性が付与され、増粘多糖類が粘性の不足分を一部補うかたちで使用されているからである。言い換えると、増粘多糖類を使用した場合には、加工澱粉の含有量をある程度抑えつつ所望とする粘度に液状調味料を調整することが可能となるからである。従って、増粘剤として加工澱粉及び増粘多糖類を含有させた場合において、加工澱粉の含有量を1.0質量%以上5.0質量%以下としたときには、増粘多糖類の含有量を加工澱粉の含有量の半分以下に設定すること好適であり、これによれば加熱調理時の突沸を起こすことなく、だしの風味が十分に効いていて肉類が十分に柔らかい肉類煮物料理を得ることができる。
【0032】
本発明の液状調味料は、常温(20℃)にてB型粘度計(ローターNo.3、回転数:30rpmの条件)で測定した粘度が、400mPa・s以上8000mPa・s以下となるように設定される。粘度が400mPa・s未満であると、具材表面に液状調味料が留まりにくくなる結果、液状調味料の肉類への染み込み性が悪化し、肉類に十分な柔らかさを付与できなくなるからである。逆に、粘度が8000mPa・s超であると、加工澱粉自体に独特の風味が強まること等に起因してだし風味が低下してしまうからである。以上の事情から、粘度は800mPa・s以上6500mPa・s以下に設定されることがよりよく、1500mPa・s以上5500mPa・s以下に設定されることがさらによい。
【0033】
本発明の液状調味料において必須ではないが、食酢、醤油、味噌、糖原料、柑橘類、調味料類、香料、香辛料、酒類、添加剤などが適宜配合されていてもよい。柑橘類としては、例えば、ゆず、すだち、レモン、ミカン、カボス等が挙げられる。調味料類としては、例えば、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等が挙げられる。香料としては、ごま香料や柑橘類の香気を付与する目的の香料など、必要に応じて種々のものが使用できる。香辛料としては、ニンニク、唐辛子、胡椒、山椒などが挙げられる。酒類としては、日本酒、紹興酒、焼酎、ワイン等が挙げられる。添加剤としては、殺菌剤などが挙げられる。また、本発明の液状調味料には、みりん、つゆ、ケチャップ、マヨネーズ、ソース等が配合されていてもよい。
【0034】
食酢としては、例えば、穀物酢、米酢、米黒酢、りんご酢、醸造アルコールを原料に製造される醸造酢や、合成酢等が好適例として挙げることができる。液状調味料における食酢の含有量は、製品の種類等にもよるが例えば0.1質量%以上10質量%程度とすることができる。食酢等の酸性原料が含有されている液状調味料は酸性(pH7未満)の液状調味料となるが、風味や保存性等の向上の観点から例えばpH3.5以上5.5以下程度であることが好ましい。また、液状調味料の酸度(TA)は特に限定されないが、例えば0.05%以上2%以下、好ましくは0.1%以上1%以下であることがよい。
【0035】
本発明の液状調味料において塩分は、食塩、醤油、味噌等というかたちで含まれている。醤油としては、例えば、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、再仕込醤油、白醤油等が挙げられる。味噌としては、例えば、白味噌、赤味噌、麦味噌、仙台味噌、八丁味噌、米味噌等が挙げられる。液状調味料の塩分(TA)の含有量は特に限定されないが、例えば1質量%以上5質量%以下に設定されることがよく、好ましくは2質量%以上4質量%以下に設定されることがよい。また、本発明の液状調味料が和風煮物料理用であるような場合には、食用油脂の含有量を1質量%以下とし、醤油の含有量を1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0036】
本発明の液状調味料においてブリックス(Brix)は、砂糖を始めとする糖原料(例えば果糖、液糖、転化糖、ブドウ糖など)の含有量により調整される値となっている。ブリックスの値は特に限定されないが、例えば10%以上30%以下であることがよい。
【0037】
本発明では、液状調味料を入れるための耐熱性容器としてスタンディングパウチを使用しており、
図1〜
図4にはその一例が示されている。言うまでもなく、本発明で使用されるスタンディングパウチの構造は、図示されたものに限定されるわけではなく、スタンディングパウチとしての基本構成を備えているものであれば広く使用することが可能である。ここで、
図1は、一実施形態におけるスタンディングパウチ(液状調味料封入前のもの)を示している。
図2は、一実施形態におけるスタンディングパウチ(液状調味料封入後のもの)を縦置きにした状態を示している。
図3は、上記スタンディングパウチに対し、具材である肉類を投入する際の様子を示している。
図4は、上記スタンディングパウチを縦置きにした状態で加熱調理する際の様子を示している。
【0038】
図1、
図2に示されるように、本発明のスタンディングパウチ1は、袋本体2とその袋本体2と一体形成されかつ袋本体2を下方から支持する底ガゼット3とを有している。スタンディングパウチ1における袋本体2の部分の容積は特に限定されないが、電子レンジ内にて縦置き状態で加熱調理する際の一連の作業の便宜を考慮すると、例えば2000mL以下であることが好ましく、さらには100mL〜1500mL以下程度であることがより好ましい。底ガゼット3は拡開可能な構造を有しており、底ガゼット3を拡開することでスタンディングパウチ1を自立させた状態で縦置きすることが可能となっている(
図2参照)。
図1、
図2に示されるように、スタンディングパウチ1における袋本体2は、液状調味料4を収容可能な内部空間5、及びその内部空間5に具材6を入れるために上部に設けられた開口部7と、開口部7を開封及び密封するためのファスナー8とを備えている。袋本体2には、内部空間5から蒸気を抜くための蒸気通過部9が設けられている。また、袋本体2の最上端には、上部シール部10がファスナー8の全域にわたって設けられている。このスタンディングパウチ3における側縁シール部11,12の形状は図示されたものに限定されることはなく、例えば非直線状であってもよく、幅が変化するようなものであってもよい。例えば、この幅が広いと(あるいは広くなっている部分があると)、加熱調理後にスタンディングパウチ3から調理済みの具材を取り出すにあたり、側縁シール部11,12の部分を持つときに、持ちやすくなるというメリットがある。また、直線状かつ等幅のシール部と比較して強度を増すことが可能なため、この場合には座屈の防止を図りやすくなるというメリットが期待できる。
【0039】
スタンディングパウチ1を形成する材料としては、基本的に可撓性及び耐熱性を有する合成樹脂材料が使用され、その合成樹脂材料は透明であっても不透明であってもよい。スタンディングパウチ1の表面側には、必須ではないが各種の印刷が施されていてもよい。例えば、
図1に示されるものの場合、袋本体2の上部において蒸気通過部9の近傍には、注意喚起のために加熱調理時に蒸気が通過する部分があることを教示する表示部(第1表示部14)が印刷されている。ここでは使用者がわかりやすいように「蒸気が出ます」という文言が付されている。なお、この文言は必ずしも「蒸気が出ます」に限定されず、他の文言(例えば「蒸気注意」、「熱くなります」、「CAUTION」)でもよいほか、注意を喚起するイラストなどであってもよい。また、袋本体2の略中央部には、調理手順や調理時の注意事項を教示する表示部(第2表示部15)が印刷されている。本発明では、縦置きでの電子レンジ加熱調理という特殊な調理方法を採用していることから、使用者にとってわかりやすいように手順に番号が付され、各々イラスト及び文章にて説明がなされている。そのほか、袋本体2の上端両側には切り口16がそれぞれ設けられており、それらの切り口16間には、開口部7が形成されるべき箇所であることを示す帯状の表示部が印刷されていてもよい。ちなみに、第1表示部14及び第2表示部15は、
図1のみにおいて描かれており、それ以外の図においては省略されている。なお、このような第1表示部14及び第2表示部15は、印刷に寄らなくてもよく、例えばシールであってもよいほか、エンボス加工であってもよい。
【0040】
本発明のスタンディングパウチ1の縦寸法L1及び横寸法L2の大小関係については特に限定されないが、強いていえば
図1に示すもののように縦寸法L1よりも横寸法L2のほうが大きく設定されていることがよい。その理由は、このような寸法関係であると縦置き状態で加熱調理する際に安定化し、座屈も起こりにくくなるからである。この場合において縦横寸法比(L1/L2比)は0.50以上0.95以下程度とすることが好ましく、さらには0.70以上0.90以下程度がよりよい。縦寸法L1が横寸法L2に比べてあまりに小さすぎると、縦置き状態にて安定化する一方で噴きこぼれや突沸が起きやすくなるおそれがあるからである。
【0041】
本発明の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料は、次のようにして使用する。まず、
図3に示すように、切り口16の箇所を起点として上部シール部10を切り離し、開口部7を広げるようにした後、あらかじめ所定の大きさにカットしておいた具材6(肉類)をその開口部7を介して袋本体2内に投入する。この後、ファスナー8を閉じた状態で具材6である肉類と液状調味料4をよく揉み込んだ後、縦置きにした状態で電子レンジにて加熱調理する(
図4参照)。
【0042】
電子レンジでの加熱は、液状調味料4及び具材6を煮物料理とするべく必要十分な量の熱を付与できる条件下で行われ、具体的には、液状調味料4及び具材6の合計質量300gあたり、600W×4分〜10分相当の条件下で行われることが好ましい。加熱調理は、出力600Wの電子レンジを用いるのが好ましいが、勿論それ以外の出力であってもよい。ここで600W×4分相当とは、出力300Wであれば8分、出力400Wであれば6分というように、出力ワット数と時間との積の値が同じになるように換算して計算した条件以上の電子レンジ加熱を行うことを指す。また、液状調味料4及び具材6の合計質量が例えば600gであれば、出力ワット数と時間との積の値が300gの場合の2倍となるように電子レンジ加熱を行うことを指す。電子レンジでの加熱が上記条件(即ち、合計質量300gあたり2400W・分という条件)を下回ると、液状調味料4及び具材6を煮物料理とするのに必要十分な量の熱を付与できなくなり、所望とする風味や食感を実現できないおそれがある。電子レンジでの加熱が上記条件(即ち、合計質量300gあたり4800W・分という条件)を上回ると、液状調味料4及び具材6を煮物料理とするのに必要十分な量を超える熱が付与されてしまうおそれがある。
【0043】
具材6である肉類の予定投入量は、液状調味料1質量部あたり0.4質量部以上4.0質量部以下であることが好ましい。その理由は以下のとおりである。即ち、肉類の予定投入量が液状調味料1質量部あたり0.4質量部未満であると、液状調味料4の比率が大きくなりすぎてしまい、一度に加熱調理できる具材6の量が少なくなるからである。一方、肉類の予定投入量が液状調味料1質量部あたり4.0質量部超であると、噴きこぼれや座屈が起こりやすくなるからである。
【0044】
スタンディングパウチ1に具材4である肉類を投入しかつ縦置きにした状態において、パウチ底面17を基準とした液状調味料4の液面の高さT1が、パウチ底面17を基準とした具材6の最高点の高さT2の0.6倍以上1.1倍以下であることが好ましい(
図4参照)。上記の比(T1/T2比)が0.6倍未満であると、液面の高さT1が低くなりすぎて具材6である肉類が十分に浸漬されないため、十分なだし風味を付与することも、十分に肉類を柔らかくすることも困難となるからである。逆に、T1/T2比が1.1倍超であると、液面の高さT1が高くなりすぎて、噴きこぼれや座屈が起こりやすくなるからである。
【0045】
以下、実施形態の電子レンジ調理用のスタンディングパウチ入り液状調味料をより具体化して行ったいくつかの試験について説明する。
【0046】
(1)試験1(好適な粘度範囲を決める試験)
【0047】
この試験では、
図5の表1の配合量に従い以下の手順で和風煮物料理用の液状調味料を作製した。まず、タンクに、水、鰹だし、醤油、砂糖、食酢、食塩、増粘剤である加工澱粉(松谷化学社製:パインエース#5)、増粘剤である増粘多糖類(キサンタンガム)を投入した後、攪拌して液状調味料(1000g)を作製した。なお、ここでは加工澱粉の含有量を一定にし、キサンタンガムの含有量を0.0g〜6.0gの9段階(即ち0.0質量%〜0.6質量%の9段階)に設定し、これらを試験例1a〜1iのサンプルとした。次に、
図1に示すものと同じ構造のスタンディングパウチを用意しておき、これに液状調味料を同じ分量(125g)ずつ充填封入した後、非レトルト条件にて加熱殺菌処理を行った。スタンディングパウチの縦寸法L1は約170mm、横寸法L2は約20mmであり、縦横寸法比(L1/L2比)は約0.85であった。加熱殺菌処理の後、スタンディングパウチの開口部を開けて、あらかじめ一口大の大きさ(20mm〜30mm程度の塊状)にカットしておいた具材としての肉類(鶏肉)を所定量(300g)だけ投入し、開口部を閉じて液状調味料と鶏肉とを揉み込んでよく混ぜ合わせた。続いて、液状調味料及び鶏肉の入ったスタンディングパウチを電子レンジ内にて自立かつ縦置き状態にして、電子レンジにて600W×5分の条件で加熱調理を行い、試験例1a〜1iの各サンプルについて和風煮物料理を得た。
【0048】
ところで、試験例1a〜1iの液状調味料サンプルについては、それぞれ従来公知の分析を行い、酸度TA(w/w%)、塩分NA(w/w%)の値を調査した。また、市販のブリックス糖度計を用いた従来公知の手法によりブリックス(Bx:%)の値を測定するとともに、B型粘度計による20℃での粘度(mPa・s)も測定した。表1にその結果を示す。これによると、基本的にキサンタンガム含有量(つまり増粘剤の総含有量)が多くなるほど、粘度が高くなるという測定結果が得られ、液状調味料の粘度が増粘剤の総含有量に依存していることが確認された。同様にブリックスの値に関しても若干増加するという測定結果が得られた。なお、塩分の値は一定であった。ちなみに、ここでは液状調味料に食用油脂を含有させていないため、油脂量は極めて少なかった。また、鰹だしの含有量を計算により求めたところ、固形分量として0.849質量%であった。さらに、加熱料理前の具材(鶏肉)の含有量と、加熱調理前の液状調味料との質量比(具/液の質量比)を計算した結果、いずれも2.4であった。また、パウチ底面を基準とした具材(鶏肉)の最高点の高さT2は5.0cm〜5.8cmである一方、パウチ底面を基準とした液面の高さT1は4.0cm〜4.7cmであったので、T1/T2比(即ち、液/具の高さ比)は0.7〜0.9となった。
【0049】
次に、上記9種類の試験例1a〜1iの液状調味料サンプルを用いて得た9種類の加熱調理品サンプルについて、下記の官能検査による評価を行った。具体的には、加熱調理直後に5名の官能検査官がまず目視観察して「噴きこぼれ」、「突沸」及び「座屈」の3項目につき評価を行い、次いでこれを実際に食してみて「だし感」及び「肉の柔らかさ」の2項目につき官能評価を行った。その結果を
図5の表1に示す。
【0050】
なお、上記の各評価項目のうち「だし感」及び「肉の柔らかさ」の項目については、1点〜4点の評点にて評価することとした。具体的にいうと、だし感(ここでは鰹節由来の独特の風味や旨味を感じる程度の強弱)の項目については、1点:だし感を感じない、2点:だし感を感じるがやや弱い、3点:だし感を十分に感じる、4点:だし感を強く感じる、の4段階の絶対評価とした。肉の柔らかさの項目については、1点:硬いと感じる、2点:やや硬いと感じる、3点:やや柔らかいと感じる、4点:十分に柔らかいと感じる、の4段階の絶対評価とした。「噴きこぼれ」、「突沸」及び「座屈」の項目については、(−)なし、やや有り、有りの3段階評価とした。また、その他香味の特徴についても検討し、これを総合評価に反映させた。総合評価としては1点〜4点のいずれかを付与することとした。その結果を同じく
図5の表1に示す。
【0051】
表1に示されるように、試験例1a〜1iのサンプルのいずれについても、噴きこぼれ、突沸及び座屈は起こらなかった。だし感に関しては、試験例1a(粘度:836mPa・s)〜試験例1f(粘度:5120mPa・s)が4点で最もよい評価となり、それに続き試験例1g(粘度:6280mPa・s)が3点、試験例1h(粘度:7960mPa・s)が2点という評価となった。これに対し、サンプル1i(粘度:10240mPa・s)では1点という低い評価となった。つまり、試験1の条件範囲内では、増粘剤の総含有量が少ないサンプルほどだし感が強くなり、増粘剤の総含有量が多いサンプルほどだし感が弱くなることがわかった。
【0052】
肉の柔らかさに関しては、試験例1e(粘度:3120mPa・s)〜試験例1i(粘度:10240mPa・s)が4点で最もよい評価となり、それに続き試験例1c(粘度:1728mPa・s)〜試験例1d(粘度:2480mPa・s)が3点、試験例1a(粘度:836mPa・s)〜試験例1b(粘度:1440mPa・s)が2点という評価となった。つまり、試験1の条件範囲内では、増粘剤の総含有量が少ない試験例ほど肉が柔らかくなりにくく、増粘剤の総含有量が多い試験例ほど肉が十分に柔らかくなることがわかった。
【0053】
よって、以上の結果に基づく総合評価としては、試験例1e及び1fが4点で最も高く、それに次いで試験例1c、1d及び1gが3点、試験例1a、1b及び1hが2点であった。これに対し、他のものよりも粘度が高い試験例1iは、最も低い評価となった。
【0054】
(2)試験2(具/液の質量比、液/具の高さ比に関する試験)
【0055】
この試験では、基本的に上記試験1の手順に準拠して、
図6の表2の配合量に従い和風煮物料理用の液状調味料(1000g)を作製した。次に、上記スタンディングパウチに液状調味料を充填封入した後、非レトルト条件にて加熱殺菌処理を行った。加熱殺菌処理の後、スタンディングパウチの開口部を開けて、具材としての肉類(鶏肉)を投入し、開口部を閉じて液状調味料と鶏肉とを揉み込んでよく混ぜ合わせた。続いて、液状調味料及び鶏肉の入ったスタンディングパウチを電子レンジ内にて自立かつ縦置き状態にして、電子レンジにて600W×5分の条件で加熱調理を行い、10種類の和風煮物料理を得た。そして試験2では、加熱調理前の液状調味料の量(25.0g〜500.0g)と、加熱調理前の鶏肉の量(50.0g〜300.0g)とをいくつか組み合わせて設定し、これらを試験例2a〜2jのサンプルとした。
【0056】
加熱料理前の鶏肉の量と加熱調理前の液状調味料の量との質量比(具/液の質量比)を計算した結果、試験例2aでは12.0、試験例2bでは6.0、試験例2cでは4.0、試験例2dでは1.6、試験例2eでは1.0、試験例2fでは0.4、試験例2gでは2.0、試験例2hでは1.5、試験例2iでは1.0、試験例2jでは0.6であった。また、パウチ底面を基準とした液面の高さT1と、パウチ底面を基準とした鶏肉の最高点の高さT2との比(T1/T2比(液/具の高さ比))は、試験例2aでは0.4、試験例2bでは0.6、試験例2cでは0.6、試験例2dでは0.8、試験例2eでは0.8、試験例2fでは0.9、試験例2gでは0.9、試験例2hでは0.9、試験例2iでは1.1、試験例2jでは1.2であった。
【0057】
次に、上記10種類の試験例の加熱調理品サンプルについて、試験1のときと同様の手法で、「噴きこぼれ」、「突沸」、「座屈」、「だし感」及び「肉の柔らかさ」の5項目につき評価を行った。その結果を
図6の表2に示す。
【0058】
表2に示されるように、だし感に関しては、試験例2d、2e、2f、2g、2h、2i及び2jが4点で最も高い評価となり、試験例2cがややよいという評価となったのに対し、試験例2a及び2bについては低い評価となった。肉の柔らかさに関しては、試験例2d、2g、2h、2i及び2jが4点で最も高い評価となり、それに次いで試験例2e及び2fが3点でよい評価となり、試験例2cがややよいという評価となった。これに対し、試験例2a及び2bについては低い評価となった。なお、上記2項目について低評価のものは、具/液の質量比が6.0以上であって、他のものよりも具/液の質量比が大きいという共通点があった。また、液/具の高さ比が0.6以下であって、他のものよりも液/具の高さ比が小さいという共通点があった。また、試験2においては、一部の試験例にて噴きこぼれ、突沸が起こっていたが、具/液の質量比が所定値より小さい場合や、液/具の高さ比が所定値よりも大きい場合に、このような問題が起きることがわかった。
【0059】
(3)試験3(好適なだしの種類、含有量を決める試験)
【0060】
この試験では、基本的に上記試験1の手順に準拠して、
図7の表3の配合量に従い和風煮物料理用の液状調味料(1000g)を作製した。次に、上記スタンディングパウチに液状調味料を充填封入した後、非レトルト条件にて加熱殺菌処理を行った。加熱殺菌処理の後、スタンディングパウチの開口部を開けて、具材としての肉類(鶏肉)を投入し、開口部を閉じて液状調味料と鶏肉とを揉み込んでよく混ぜ合わせた。続いて、液状調味料及び鶏肉の入ったスタンディングパウチを電子レンジ内にて自立かつ縦置き状態にして、電子レンジにて600W×5分の条件で加熱調理を行い、5種類の和風煮物料理を得た。そして試験3では、だしの種類と含有量とを適宜変更して、5種類の試験例3a〜3eのサンプルとした。具体的には、鰹だしを5.0g含有させたもの(固形分量として0.1415質量%)を試験例3aとし、鰹だしを50.0g含有させたもの(固形分量として1.415質量%)を試験例3bとし、鰹だしを100.0g含有させたもの(固形分量として2.830質量%)を試験例3cとした。一方、鰹だしの代わりに昆布だしを30.0g含有させたもの(固形分量として1.125質量%)を試験例3dとし、鰹だしの代わりに鶏がらだしを30.0g含有させたもの(固形分量として1.533質量%)を試験例3eとした。
【0061】
次に、上記5種類の試験例の加熱調理品サンプルについて、試験1のときと同様の手法で、「噴きこぼれ」、「突沸」、「座屈」、「だし感」及び「肉の柔らかさ」の5項目につき評価を行った。その結果を
図7の表3に示す。
【0062】
表3に示されるように、試験例3a〜3eのいずれについても、噴きこぼれ、突沸及び座屈は起こらないことに加え、肉の柔らかさにつき4点という高い評価となった。だし感に関しては、鰹だしを固形分量として1.415質量%含有させた試験例3bと、鰹だしを固形分量として100.0g含有させた試験例3cが4点となり、最も高い評価となった。これに次いで、昆布だしを固形分量として1.125質量%含有させた試験例3d、鶏がらだしを固形分量として1.533質量%含有させた試験例3eが3点となり、これについても比較的高い評価であった。また、鰹だしを固形分量として0.1415質量%含有させた試験例3aは2点となり、ややよいという評価となった。以上の結果からすると、だしの含有量を固形分量として0.1415質量%〜2.830質量%とした場合にだし感を強くすることができ、特に1.4150質量%〜2.830質量%とした場合にだし感を確実に強くすることができることがわかった。また、だしの種類として鰹だしを選択した場合に、他のものに比較してだし感を確実に強くすることができることもわかった。
【0063】
(4)試験4(増粘剤である加工澱粉の含有量を決める試験)
【0064】
この試験では、基本的に上記試験1の手順に準拠して、
図8の表4の配合量に従い和風煮物料理用の液状調味料(1000g)を作製した。次に、上記スタンディングパウチに液状調味料を充填封入した後、非レトルト条件にて加熱殺菌処理を行った。加熱殺菌処理の後、スタンディングパウチの開口部を開けて、具材としての肉類(鶏肉)を投入し、開口部を閉じて液状調味料と鶏肉とを揉み込んでよく混ぜ合わせた。続いて、液状調味料及び鶏肉の入ったスタンディングパウチを電子レンジ内にて自立かつ縦置き状態にして、電子レンジにて600W×5分の条件で加熱調理を行い、7種類の和風煮物料理を得た。なお、ここでは加工澱粉の配合量を1000gあたり0.0g〜80.0gの範囲(即ち0.0質量%〜8.0質量%の範囲)で設定し、キサンタンガムの配合量を1000gあたり0.0g〜4.0gの範囲(即ち0.0質量%〜0.4質量%の範囲)に設定し、これらを試験例4a〜4gとした。具体的には、加工澱粉の含有量を0.0質量%及びキサンタンガムの含有量を0.0質量%としたものを試験例4aとした。加工澱粉の含有量及びキサンタンガムの含有量を、それぞれ0.8質量%、0.02質量%としたものを試験例4bとし、それぞれ1.0質量%、0.3質量%としたものを試験例4cとし、それぞれ1.0質量%、0.4質量%としたものを試験例4dとし、それぞれ1.6質量%、0.4質量%としたものを試験例4eとし、それぞれ3.2質量%、0.08質量%としたものを試験例4fとし、それぞれ8.0質量%、0.2質量%としたものを試験例4gとした。粘度を測定したところ、試験例4aで3mPa・s、試験例4bで28mPa・s、試験例4cで712mPa・s、試験例4dで1100mPa・s、試験例4eで418mPa・s、試験例4fで864mPa・s、試験例4gで98500mPa・sであった。
【0065】
次に、上記7種類の試験例の加熱調理品サンプルについて、試験1のときと同様の手法で、「噴きこぼれ」、「突沸」、「座屈」、「だし感」及び「肉の柔らかさ」の5項目につき評価を行った。その結果を
図8の表4に示す。
【0066】
表4に示されるように、各試験例について「噴きこぼれ」及び「座屈」は起こらなかったが、唯一、最も高粘度を示した試験例4gにおいて「突沸」が起きていた。だし感に関しては、試験例4a〜4fにて4点という高い評価となったのに対し、上記試験例4gについては2点であったため、これらに劣る結果となった。肉の柔らかさに関しては、試験例4c〜4fにて3点という比較的高い評価が得られ、試験例4gにて2点という評価が得られた。これに対し、加工澱粉の含有量及びキサンタンガムの含有量がゼロまたは極めて少ない試験例4a〜4bでは、鶏肉があまり柔らかくならず、1点という低い評価となった。
【0067】
以上の結果からすると、増粘剤である加工澱粉の含有量を多くしすぎた(例えば6.0質量%超である)ような場合、液状調味料の粘度が増大しすぎてしまい、突沸が起こりやすくなることがわかった。また、加工澱粉の含有量を多くしすぎると、加工澱粉自体に独特の風味が強まること等に起因し、かえってだし感が弱まってしまうことがわかった。さらに、増粘剤である加工澱粉の含有量を少なくしすぎた(例えば1.0質量%未満である)ような場合、液状調味料の粘度が低くなりすぎて、具材表面に液状調味料が留まりにくくなる。その結果、液状調味料の肉類への染み込み性が悪化し、肉類に十分な柔らかさを付与できなくなることもわかった。
【0069】
試験5〜7では、基本的に上記試験1の手順に準拠して、
図9の表5の配合量に従い和風煮物料理用の液状調味料(1000g)を作製した。次に、上記スタンディングパウチに液状調味料を充填封入した後、所定の加熱殺菌処理を行った。加熱殺菌処理の後、スタンディングパウチの開口部を開けて、具材としての肉類(鶏肉)を投入し、開口部を閉じて液状調味料と鶏肉とを揉み込んでよく混ぜ合わせた。続いて、液状調味料及び鶏肉の入ったスタンディングパウチを電子レンジ内にて自立かつ縦置き状態にして、電子レンジにて600W×5分の条件で加熱調理を行い、3種類の和風煮物料理を得た。
【0070】
そして試験5では、上記の加熱殺菌処理を非レトルト条件ではなくレトルト条件に設定し、より高温・高圧下にて液状調味料入りのスタンディングパウチを殺菌する工程を経て、試験例5のサンプルを作製した。なお、試験6、7ではこれまでと同様に非レトルト条件で上記の加熱殺菌処理を行った。
【0071】
試験6では、具材として肉類(鶏肉)以外のものを含めるようにした。具体的にいうと、上記試験1では具材として300gの鶏肉のみを用いたが、試験6では200gの鶏肉のほかに100gのキノコを混ぜたものを具材として用いることで、試験例6のサンプルを作製した。なお、試験5、7ではこれまでと同様に、300gの鶏肉のみを用いた。
【0072】
試験7では、添加剤としてのビタミンB1ラウリル硫酸を液状調味料1000gあたり0.015g添加し、試験例7のサンプルを作製した。なお、試験5、6ではこれまでと同様に、ビタミンB1ラウリル硫酸不添加とした。
【0073】
レトルト条件にて加熱殺菌処理を行った試験例5については、非レトルト条件にて加熱殺菌処理を行った試験例に比べて、本来であればだし感の消失が顕著であると考えられる。しかしながら、試験例5ではだし感に関して評価が3点であり、この場合においても十分なだし感を付与できることがわかった。また、肉の柔らかさについても4点となり、高い評価が得られた。
【0074】
試験例6については、だし感及び肉の柔らかさの評価がともに3点となり、比較的高い評価が得られた。このことから、具材として肉類のみを使用した場合に限らず、肉類以外のものが混合されている場合についても、本発明の液状調味料は有効であることがわかった。
【0075】
試験例7については、だし感及び肉の柔らかさの評価がともに4点となり、高い評価が得られた。このことから、ビタミンB1ラウリル硫酸のような添加剤を添加した場合についても、本発明の液状調味料は有効であることがわかった。
【0077】
上述したように、本実施形態によると、縦置き状態で電子レンジにて加熱調理したときに、だしの風味が十分に効いていて肉類が十分に柔らかい肉類煮物料理を得ることができる。また、このような加熱調理を行ったときでも、パウチの座屈、噴きこぼれ、突沸を起こしにくいものとすることができる。以上の結果、確実にかつ簡単に嗜好性の高い和風肉類煮物料理を得ることができ、電子レンジを使わない従来の加熱調理方法と遜色のない和風肉類煮物料理を家庭でも容易に実現することができる。
【0078】
次に、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記肉類は畜肉であること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記肉類は鶏肉であること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、レトルト加熱を施したものであること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、レトルト加熱を施してないものであること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記だしは、主として魚節由来のものであること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記だしは、主として鰹節由来のものであること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記だしは、鰹節由来のだし、昆布由来のだし及び畜肉由来のだしを含み、前記鰹節由来のだしの含有比率が最も多いものであること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記煮物料理は和風煮物料理であること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記液体調味料は食酢を含有するとともに、酸度が0.05%以上2%以下、pHが3.5以上5.5以下であること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記スタンディングパウチは、袋本体とその袋本体を下方から支持する底ガゼットとを有すること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記スタンディングパウチにおける袋本体は、前記液状調味料を収容可能な内部空間と、前記内部空間に前記具材を入れるために上部に設けられた開口部と、前記開口部を開封及び密封するためのファスナーとを備えること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記スタンディングパウチにおける袋本体の側縁シール部は、前記袋本体の前記側縁シール部から前記袋の外方に向けて突出したタブ形状を呈していること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記スタンディングパウチにおける袋本体は、その上部に前記袋本体の内部空間から蒸気を抜くための蒸気通過部を有すること。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記スタンディングパウチの横寸法が縦寸法よりも大きいこと。
・上記手段1乃至8のいずれか1項において、前記スタンディングパウチの縦横寸法比は、0.50以上0.95以下(好ましくは0.70以上0.90以下)であること。