特許第6347710号(P6347710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347710
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】硬化性組成物及び光学部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/05 20060101AFI20180618BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20180618BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   C08L83/05
   G02B1/04
   G02C7/00
【請求項の数】3
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-197164(P2014-197164)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-69411(P2016-69411A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−82305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/05
G02B 1/04
G02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるビニル基含有化合物と、(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有する硬化性組成物。
【化1】
(式(1)中、W及びWは独立に下記式(2)で表される基を示し、環Y及び環Yベンゼン環を示し、Rは単結合を示し、R1a及びR1bは独立にシアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を示し、n1及びn2は独立に0〜4の整数を示す。)
【化2】
(式(2)中、環Zはベンゼン環又はナフタレン環を示し、Xは単結合を示し、Rは1価炭化水素基;水酸基;−OR3aで示される基;−SR3bで示される基;アシル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;カルボキシ基;アミノ基;カルバモイル基;−NHR3cで示される基;−N(R3dで示される基;(メタ)アクリロイルオキシ基;スルホ基;又は1価炭化水素基、−OR3aで示される基、−SR3bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、−NHR3cで示される基、若しくは−N(R3dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が1価炭化水素基、水酸基、−OR3aで示される基、−SR3bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR3cで示される基、−N(R3dで示される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基、若しくはスルホ基で置換された基;を示し、R3a〜R3dは独立に1価炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示す。)
【請求項2】
前記(B)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有するフルオレン化合物と、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物とのヒドロシリル化反応により得られ、且つ、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物を含む請求項記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬化性組成物を硬化してなる光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物及び光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックレンズ等に対し、高屈折率、高耐熱性等の性能が要求され続けている。高い屈折率と耐熱性とを有するプラスチックレンズ等の材料として、炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有するフルオレン化合物と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する有機系化合物とを含有する硬化性組成物が紹介されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−229356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記硬化性組成物であっても、高い屈折率と高い耐熱性が求められる光学部品等の用途においては、それらの特性が不十分であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、光学部品等の用途における高い要求をも満たすべく、硬化物において従来よりも高い屈折率と高い耐熱性とを併せ持つ、硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、新規なビニル基含有フルオレン系化合物を、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物とともに用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
[1]本発明の第一の態様は、(A)下記式(1)で表されるビニル基含有化合物と、(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有する硬化性組成物である。
【化1】
(式中、W及びWは独立に下記式(2)で表される基を示し、環Y及び環Yは同一の又は異なる芳香族炭化水素環を示し、Rは単結合;置換基を有してもよいメチレン基;置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基;−O−で示される基;−NH−で示される基;又は−S−で示される基;を示し、R1a及びR1bは独立にシアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を示し、n1及びn2は独立に0〜4の整数を示す。)
【化2】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Xは単結合又は−S−で示される基を示し、Rは1価炭化水素基;水酸基;−OR3aで示される基;−SR3bで示される基;アシル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;カルボキシ基;アミノ基;カルバモイル基;−NHR3cで示される基;−N(R3dで示される基;(メタ)アクリロイルオキシ基;スルホ基;又は1価炭化水素基、−OR3aで示される基、−SR3bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、−NHR3cで示される基、若しくは−N(R3dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が1価炭化水素基、水酸基、−OR3aで示される基、−SR3bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR3cで示される基、−N(R3dで示される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基、若しくはスルホ基で置換された基;を示し、R3a〜R3dは独立に1価炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示す。)
[2]本発明の第二の態様は、上記[1]記載の硬化性組成物を硬化してなる光学部品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い屈折率及び高い耐熱性を有する硬化物を与える硬化性組成物、及び、当該硬化性組成物を硬化してなる光学部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、(A)上記式(1)で表されるビニル基含有化合物と、(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有する。以下、本発明の硬化性組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0010】
[(A)式(1)で表されるビニル基含有化合物]
本発明の硬化性組成物に含有されるビニル基含有化合物は、下記式(1)で表されるものである。本明細書において、当該「式(1)で表されるビニル基含有化合物」を「ビニル基含有化合物(A)」又は「(A)成分」ということがある。上記ビニル基含有化合物(A)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0011】
【化3】
【0012】
上記式(1)において、W及びWは独立に下記式(2)で表される基を示す。
【0013】
【化4】
【0014】
上記式(2)において、環Zとしては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Zは、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましく、ナフタレン環であるのがより好ましい。Wに含まれる環ZとWに含まれる環Zとは、同一でも異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよいが、いずれの環もナフタレン環であることが特に好ましい。また、W及びWの両方が直結する炭素原子にXを介して結合する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、上記炭素原子に結合する環Zに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基等であってもよい。
【0015】
上記式(2)において、Xは、独立に単結合又は−S−で示される基を示し、典型的には単結合である。
【0016】
上記式(2)において、Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基等)、シクロアルキル基(シクロへキシル基等のC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、より好ましくはC5−6シクロアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、より好ましくはC6−8アリール基等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等のC6−10アリール−C1−4アルキル基等)等の1価炭化水素基;水酸基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1−12アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、より好ましくはC1−6アルコキシ基等)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基等のC5−10シクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等のC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)等の−OR3aで示される基[式中、R3aは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のC1−12アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、より好ましくはC1−6アルキルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基等のC5−10シクロアルキルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等のC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)等の−SR3bで示される基[式中、R3bは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アシル基(アセチル基等のC1−6アシル基等);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等のC1−4アルコキシ−カルボニル基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等);ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;カルボキシ基;アミノ基;カルバモイル基;アルキルアミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等のC1−12アルキルアミノ基、好ましくはC1−8アルキルアミノ基、より好ましくはC1−6アルキルアミノ基等)、シクロアルキルアミノ基(シクロへキシルアミノ基等のC5−10シクロアルキルアミノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基等のC6−10アリールアミノ基)、アラルキルアミノ基(例えば、ベンジルアミノ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルアミノ基)等の−NHR3cで示される基[式中、R3cは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジ(C1−12アルキル)アミノ基、好ましくはジ(C1−8アルキル)アミノ基、より好ましくはジ(C1−6アルキル)アミノ基等)、ジシクロアルキルアミノ基(ジシクロへキシルアミノ基等のジ(C5−10シクロアルキル)アミノ基等)、ジアリールアミノ基(ジフェニルアミノ基等のジ(C6−10アリール)アミノ基)、ジアラルキルアミノ基(例えば、ジベンジルアミノ基等のジ(C6−10アリール−C1−4アルキル)アミノ基)等の−N(R3dで示される基[式中、R3dは独立に1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];(メタ)アクリロイルオキシ基;スルホ基;上記の1価炭化水素基、−OR3aで示される基、−SR3bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、−NHR3cで示される基、若しくは−N(R3dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が上記の1価炭化水素基、水酸基、−OR3aで示される基、−SR3bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR3cで示される基、−N(R3dで示される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基、若しくはスルホ基で置換された基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基等のC1−4アルコキシC6−10アリール基)、アルコキシカルボニルアリール基(例えば、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基等のC1−4アルコキシ−カルボニルC6−10アリール基等)]等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、代表的には、Rは、1価炭化水素基、−OR3aで示される基、−SR3bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−NHR3cで示される基、−N(R3dで示される基等であってもよい。
【0018】
好ましいRとしては、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)等]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基等)等が挙げられる。特に、Rは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)等]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)等]等の1価炭化水素基(特に、アルキル基)であるのが好ましい。
【0019】
なお、mが2以上の整数である場合、Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、Wに含まれるRとWに含まれるRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
上記式(2)において、Rの数mは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0〜4、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2であってもよい。なお、WにおけるmとWにおけるmとは、同一でも異なっていてもよい。
【0021】
上記式(1)において、環Y及び環Yとしては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Y及び環Yは、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましい。なお、環Y及び環Yは、同一でも異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよい。
【0022】
上記式(1)において、Rは単結合、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基、−O−で示される基、−NH−で示される基、又は−S−で示される基を示し、典型的には単結合である。ここで、置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等のC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基等のC6−10アリール基)等]等が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、珪素原子等が挙げられる。
【0023】
上記式(1)において、R1a及びR1bとしては、通常、非反応性置換基、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等のC6−10アリール基)等]等が挙げられ、シアノ基又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等のC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)等が例示できる。なお、n1が2以上の整数である場合、R1aは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、n2が2以上の整数である場合、R1bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。更に、R1aとR1bとが同一であってもよく、異なっていてもよい。また、環Y及び環Yに対するR1a及びR1bの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数n1及びn2は、0又は1、特に0である。なお、n1及びn2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0024】
上記式(1)で表される化合物は、優れた光学的特性及び熱的特性を保持しつつ、ビニロキシ基を有するため、高い反応性を有する。特に、環Y及び環Yがベンゼン環であり、Rが単結合である場合、上記式(1)で表される化合物は、フルオレン骨格を有し、光学的特性及び熱的特性に更に優れる。上記式(1)で表される化合物は、ビニロキシ基の形で含まれる2個のビニル基が別々の分子と反応することができるため、架橋剤として好適に用いることができる。上記式(1)で表される化合物は、高い硬度を有する硬化物を与え、組成物中の基材成分として好ましい。上記式(1)で表される化合物は、光ファイバー、光導波路、プリズムシート、ホログラム、高屈折フィルム、再帰反射フィルム等の光学部材;光学材料に用いることができる。
【0025】
上述の通り、環Y及び環Yがベンゼン環であり、Rが単結合である場合、上記一般式(1)で表される化合物は、フルオレン骨格を有し、光透過率、屈折率等の光学的特性及び熱的特性に更に優れるため好ましい。また、上記一般式(1)で表される化合物は、W及びWとしての上記一般式(2)においてビニロキシ基が直接結合するので、特に、光学的特性及び熱的特性は格段に向上する傾向があり好ましい。上記一般式(2)におけるXが単結合である場合には光透過率、屈折率等の光学特性はより優れる傾向がある。
【0026】
上記式(1)で表される化合物のうち、特に好ましい具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0027】
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物の固形分に対して、1〜95質量%であることが好ましく、3〜80質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることが更に好ましい。上記ビニル基含有化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる組成物の硬化性に優れ、高い屈折率及び高い耐熱性を有する硬化物を得やすい。
【0028】
[式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)の製造方法]
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)は、例えば、下記の製造方法1〜3により製造することができる。
【0029】
・製造方法1
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)は、例えば、特開2008−266169号公報に記載の製造方法に従い、遷移元素化合物触媒及び無機塩基の存在下、下記式(13)で表されるビニルエステル化合物と、下記式(3)で表される水酸基含有化合物とを反応させることにより、合成することができる。上記無機塩基は、粒子径150μm未満の粒子を10重量%以上含有する固体の無機塩基であることが好ましい。具体的には、上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)は、後述する合成例1〜2のようにして合成することができる。
【0030】
−CO−O−CH=CH (13)
(式中、Rは、水素原子又は有機基を示す。)
【0031】
【化6】
(式中、W及びWは独立に下記式(4)で表される基を示し、環Y、環Y、R、R1a、R1b、n1、及びn2は上記のとおりである。)
【0032】
【化7】
(式中、環Z、X、R、及びmは上記のとおりである。)
【0033】
なお、上記式(3)で表される水酸基含有化合物は、例えば、酸触媒の存在下、下記式(14)で表される化合物及び/又は下記式(15)で表される化合物と、下記式(16)で表される化合物とを反応させることにより、合成することができる。適宜、下記式(14)で表される化合物及び下記式(15)で表される化合物の組み合わせ方や添加量等を調整することにより、上記式(3)で表される所望の水酸基含有化合物を得ることができる。また、反応後に、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の分離方法により、目的とする水酸基含有化合物を分離してもよい。
【0034】
【化8】
(式中、環Y、環Y、環Z、R、R、R1a、R1b、m、n1、及びn2は上記のとおりである。)
【0035】
上記式(3)で表される水酸基含有化合物の合成に用いられる酸触媒、反応条件等としては、例えば、特開2011−201791号公報又は特開2002−255929号公報において、特許請求の範囲に記載されたフルオレン系化合物の製造方法に用いることができると記載されているもの等が挙げられる。
【0036】
・製造方法2
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)は、例えば、上記式(3)で表される水酸基含有化合物から、下記式(5)で表される脱離基含有化合物を経由して、上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)を得ることを含む製造方法により、合成することもできる。
【0037】
【化9】
(式中、W及びWは独立に下記式(6)で表される基を示し、環Y、環Y、R、R1a、R1b、n1、及びn2は上記のとおりである。)
【0038】
【化10】
(式中、Eは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基、又はベンゼンスルホニルオキシ基で置換された炭素数1〜4のアルキルオキシ基を示し、環Z、X、R、及びmは上記のとおりである。)
【0039】
上記式(5)で表される脱離基含有化合物は、例えば、上記式(3)で表される水酸基含有化合物と脱離基含有化合物とを反応させることにより、合成することができる。脱離基含有化合物としては、例えば、塩化チオニル、下記式で表される化合物等が挙げられる。また、反応温度としては、例えば、−20〜150℃等が挙げられ、−10〜140℃が好ましく、30〜130℃がより好ましい。
【0040】
【化11】
【0041】
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)は、例えば、上記式(5)で表される脱離基含有化合物とビニル化剤とを反応させることにより、合成することができる。ビニル化剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロウンデセン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられ、好ましくはジアザビシクロウンデセン、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられ、より好ましくはカリウム−t−ブトキシドが挙げられる。また、反応温度としては、例えば、−20〜150℃等が挙げられ、−10〜100℃が好ましく、0〜60℃がより好ましい。
【0042】
・製造方法3
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)は、例えば、下記式(7)で表されるヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物から、上記式(5)で表される脱離基含有化合物を経由して、上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)を得ることを含む製造方法により、合成することもできる。
【0043】
【化12】
(式中、W及びWは独立に下記式(8)で表される基を示し、環Y、環Y、R、R1a、R1b、n1、及びn2は上記のとおりである。)
【0044】
【化13】
(式中、lは1〜4の整数を示し、環Z、X、R、及びmは上記のとおりである。)
【0045】
上記式(7)で表されるヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物は、例えば、酸触媒の存在下、下記式(17)で表される化合物及び/又は下記式(18)で表される化合物と、上記式(16)で表される化合物とを反応させることにより、合成することができる。適宜、下記式(17)で表される化合物及び下記式(18)で表される化合物の組み合わせ方や添加量等を調整することにより、上記式(7)で表される所望のヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物を得ることができる。また、反応後に、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の分離方法により、目的とするヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物を分離してもよい。上記式(7)で表される化合物の合成に用いられる酸触媒、反応条件等としては、例えば、上記式(3)で表される水酸基含有化合物の合成方法の説明中で例示したものが挙げられる。
【0046】
【化14】
(式中、環Z、R、l及びmは上記のとおりである。)
【0047】
上記式(5)で表される脱離基含有化合物は、例えば、上記式(7)で表されるヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物と脱離基含有化合物とを反応させることにより、合成することができる。脱離基含有化合物及び反応温度としては、例えば、上記製造方法2について例示したものが挙げられる。
【0048】
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)は、例えば、上記式(5)で表される脱離基含有化合物とビニル化剤とを反応させることにより、合成することができる。ビニル化剤及び反応温度としては、例えば、上記製造方法2について例示したものが挙げられる。
【0049】
[(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物]
本発明の硬化性組成物は、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物を含有する。本明細書において、当該「SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物」を「化合物(B)」又は「(B)成分」ということがある。この化合物(B)と上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)とが反応することで、高い屈折率及び高い耐熱性を有し、光学的特性に優れる硬化物が形成される。上記化合物(B)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0050】
SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)としては、特に限定されないが、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物であることが好ましい。
SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物としては、特に限定されないが、例えば、環状化合物又は直鎖若しくは分岐の鎖状化合物における主鎖がシロキサン単位(−Si−O−)のみから構成されるオルガノシロキサン(B1)であることが好ましい。
本明細書において、オルガノシロキサン化合物についての「主鎖」とは、環状化合物を環状たらしめる鎖、及び、直鎖又は分岐の鎖状化合物を直鎖又は分岐の鎖状たらしめる鎖を意味し、環状部分と鎖状部分とを併有する化合物にあっては環状部分を環状たらしめる鎖と鎖状部分を鎖状たらしめる鎖とから構成される鎖を意味する。本明細書において、上記「鎖」とは、化合物において、隣接する少なくとも2以上の原子の間を繋ぐ結合と、当該原子とから構成される部分を意味する。上記「主鎖」は、例えば、後述の式(21)で表される直鎖状オルガノシロキサンの場合、−Si−O−(Si−O)−Si−(yは後述のとおりである。)で表される鎖である。
【0051】
SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物としては、下記式(20)で表されるオルガノシランの1種以上を加水分解縮合させて得られ、SiH基を1分子中に少なくとも2個有し且つ下記Rに由来する炭素数1〜50の一価の有機基を1分子中に少なくとも1個有する加水分解縮合物(B1a)等が好ましい。
【化15】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜50の一価の有機基であり、Rは一価の有機基であり、xは0〜2の整数を示す。)
上記加水分解縮合物(B1a)は、上述した、主鎖がシロキサン単位(−Si−O−)のみから構成されるオルガノシロキサン(B1)に属する。
【0052】
ここで、一価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基等が挙げられ、なかでも、アルキル基及びアリール基が好ましい。
としての炭素数1〜50の一価の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基若しくはアリール基が好ましい。
アルキル基の炭素数としては、1〜5が好ましく、具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、アルキル基の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0053】
上記式(20)で示されるオルガノシランの具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0054】
((20−1)x=0の場合)
x=0の場合、上記式(20)で示されるオルガノシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン等が挙げられる。
【0055】
(20−2)x=1の場合)
x=1の場合、上記式(20)で示されるオルガノシランとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン等のトリアルコキシシラン;モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシラン、モノプロピルトリメトキシシラン、モノプロピルトリエトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン;モノフェニルトリメトキシシラン、モノフェニルトリエトキシシラン等のモノフェニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0056】
((20−3)x=2の場合)
x=2の場合、上記式(20)で示されるオルガノシランとしては、例えば、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン等のジアルコキシシラン;モノメチルジメトキシシラン、モノメチルジエトキシシラン、モノメチルジプロポキシシラン、モノエチルジメトキシシラン、モノエチルジエトキシシラン、モノエチルジプロポキシシラン、モノプロピルジメトキシシラン、モノプロピルジエトキシシラン、モノプロピルジプロポキシシラン等のモノアルキルジアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジフェニルジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0057】
上記加水分解縮合物(B1a)としては、上記式(20)で表されるオルガノシランの2〜1000量体が好ましく、2〜100量体がより好ましく、2〜10量体が更に好ましく、2〜6量体が特に好ましい。
【0058】
上記式(20)で表されるオルガノシランとしては、x=2の化合物とx=3の化合物とを混合して用いるか又はx=2の化合物を用いることが好ましく、なかでも、ジアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシランを用いることがより好ましく、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランを用いることが更に好ましい。
また、上記加水分解縮合物(B1a)としては、上記式(20)で表されるオルガノシランの加水分解縮合により形成されるシロキサン結合(Si−O−Si)により構成される主鎖が、鎖状である鎖状オルガノシラン、又は環状である環状オルガノシランのいずれであってもよい。鎖状オルガノシランとしては、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、ビニル基含有化合物(A)との相溶性の観点からは、直鎖状オルガノシランが好ましい。
【0059】
SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物のうち直鎖状化合物としては、例えば、下記式(21)で表される直鎖状オルガノシロキサン等が挙げられる。
【化16】
(式中、R及びRは、それぞれ同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜50の一価の有機基であり、R及びRのうち少なくとも2個は水素原子である。yは0〜1000の整数を示す。)
及びRとしては、特に限定されないが、例えば、上述のRと同様である。
【0060】
SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物のうち環状化合物としては、例えば、下記式(22)で表される環状オルガノシロキサン等が挙げられる。
【化17】
(式中、Rは、それぞれ同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜6の有機基であり、それぞれのRのうち少なくとも2個は水素原子である。zは2〜10の整数を示す。)
上記式(22)におけるRとしては、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜6の有機基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましい。また、zは3〜10の整数であることが好ましい。
【0061】
上記式(22)で表される環状オルガノシロキサンとしては、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンが好ましい。
【0062】
上記式(21)で表される直鎖状オルガノシロキサン及び上記式(22)で表される環状オルガノシロキサンは、上述の式(20)で表されるオルガノシランを加水分解縮合させることにより得ることができるが、市販品が存在する化合物もある。
上記式(20)で表されるオルガノシランの加水分解縮合反応は、特に限定されないが、例えば常法により行うことができ、有機溶媒に上記オルガノシランを投入した後、当該オルガノシランを加水分解するための水を添加し、酸触媒又は塩基触媒の存在下で反応させることが好ましい。
【0063】
SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)としては、入手性の観点からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状オルガノシロキサンが好ましい。また、ビニル基含有化合物(A)との相溶性の観点からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノシロキサン、又は分子量が10000以下の直鎖状オルガノシロキサンが好ましい。また耐熱性の観点からは1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノシロキサンが好ましい。
【0064】
SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)としては、また、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する化合物(b1)と、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物(b2)とのヒドロシリル化反応により得られ、且つ、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B2)であることが好ましい。
【0065】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する化合物(b1)としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物であれば特に限定されないが、例えば、有機骨格部分と、その有機骨格部分に共有結合する、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とからなるものが挙げられる。上記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、有機骨格のどの部位に共有結合していてもよい。
【0066】
上記化合物(b1)が有する、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、SiH基と反応性を有するものであれば特に制限されず、例えば、原料の入手の容易さの観点から下記式(23)で表されるアルケニル基が好ましく、
【化18】
(式中、Rは水素原子又はメチル基である。)
得られる硬化物の耐熱性の高さの観点から、下記式(24)で表されるアルケニル基が好ましい。
【化19】
(式中、R10及びR11は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基である。)
【0067】
上記式(23)で表されるアルケニル基としては、反応性の高さの観点から、HC=CH−が好ましい。
上記化合物(b1)が有する、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、フェノキシエチルアクリル基、フェノキシエチルビニル基、フェノキシエチルアリル基、フェノキシアクリル基、フェノキシビニル基、フェノキシアリル基がより好ましい。
【0068】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する化合物(b1)としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有するフルオレン化合物等が挙げられ、下記式(25)で表されるフルオレン化合物が好ましい。
【化20】
(式中、R12は、同一又は異なって、エチレン性の不飽和結合を有する基を示す。)
【0069】
上記式(25)で表されるフルオレン化合物が有する、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、反応性の観点からビニル基、アリル基、フェノキシエチルビニル基、フェノキシエチルアリル基、フェノキシビニル基、フェノキシアリル基が好ましい。
【0070】
上記式(25)で表されるフルオレン化合物としては、例えば、上述の式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)を用いることができる。
上記式(25)で表されるフルオレン化合物としては、屈折率の高さの観点から、ジビニルフルオレン、ジアリルフルオレン、フルオレンビスフェノキシエチルアクリレート、フルオレンビスフェノキシエチルビニルエーテル、フルオレンビスフェノキシエチルアリルエーテル、フルオレンビスフェノキシアクリレート、フルオレンビスフェノキシビニル、フルオレンビスフェノキシアリルが好ましく、また、反応性の観点から、ジビニルフルオレン、ジアリルフルオレン、フルオレンビスフェノキシエチルビニルエーテル、フルオレンビスフェノキシエチルアリルエーテル、フルオレンビスフェノキシビニル、フルオレンビスフェノキシアリルが好ましい。
【0071】
SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物(b2)としては、特に限定されないが、例えば、上述した、主鎖がシロキサン単位(−Si−O−)のみから構成されるオルガノシロキサン(B1)等が挙げられ、当該オルガノシロキサン(B1)としては、環状オルガノシロキサン又は直鎖若しくは分岐の鎖状オルガノシロキサンのいずれであってもよいが、なかでも、屈折率の高さの観点から、環状オルガノシロキサンが好ましく、上述の式(22)で表される環状オルガノシロキサンがより好ましい。
【0072】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する化合物(b1)と、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物(b2)とのヒドロシリル化反応としては、特に限定されない。化合物(b1)と、オルガノシロキサン化合物(b2)との混合比率は、ヒドロシリル化反応した後に1分子中に少なくとも2個のSiH基が残る範囲であれば特に限定されないが、得られる硬化物の強度の観点から、化合物(b1)中の、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(X)と、オルガノシロキサン化合物(b2)中のSiH基のモル数(Y)との比は、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。当該Y/Xの好ましい比は、化合物(b1)として、上述の式(25)で表されるフルオレン化合物を用いる場合にも適用することができる。
【0073】
以上のような、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)としては、ビスフェノールフルオレンジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、フルオレンジアリルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物が好ましい。
【0074】
SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)は、単独若しくは2種以上のものを混合して用いることができる。また、当該化合物(B)が上述した、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する化合物(b1)と、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサン化合物(b2)とのヒドロシリル化反応により得られ、且つ、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B2)である場合、当該化合物(b1)及び/又は当該オルガノシロキサン化合物(b2)は、それぞれ、単独若しくは2種以上のものを混合して用いることができる。
【0075】
化合物(b1)と、オルガノシロキサン化合物(b2)とをヒドロシリル化させる際、適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば後述するヒドロシリル化触媒(C)を用いることができ、その添加量、助触媒、反応条件等は、後述する、式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)と、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)とのヒドロシリル化反応と同様に設定することができる。
【0076】
もっとも、化合物(b1)と、オルガノシロキサン化合物(b2)とをヒドロシリル化させる反応の温度は、種々設定できるが、下限としては30℃が好ましく、50℃がより好ましく、上限としては200℃が好ましく、150℃がより好ましい。
反応温度が上記下限以上であると、十分に反応させるための反応時間が長くなりすぎない傾向があり、上記上限以下であると、工業的に有利な場合が多い。
反応は、一定の温度で行ってもよく、また、必要に応じて多段階又は連続的に温度を変化させてもよい。
【0077】
[(C)ヒドロシリル化触媒]
本発明の硬化性組成物は、ヒドロシリル化触媒(C)を含有する。
ヒドロシリル化触媒(C)としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO));白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を示し、a及びbは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0078】
また、ヒドロシリル化触媒(C)として白金化合物以外の触媒としては、特に限定されないが、例えば、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0079】
ヒドロシリル化触媒(C)としては、触媒活性の観点から、なかでも、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましい。
ヒドロシリル化触媒(C)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
ヒドロシリル化触媒(C)の添加量は、特に限定されないが、十分な硬化性を有し且つ硬化性組成物のコストを比較的低く抑える観点から、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)のSiH基1モルに対して、下限としては10−10モルが好ましく、10−8モルがより好ましく、上限としては10−1モルが好ましく、10−3モルがより好ましい。
ヒドロシリル化触媒(C)の添加量は、また、[(A)成分+(B)成分]100質量部に対して0.00001〜10質量部である。(C)成分が3質量部以下で、それ以外は
本発明の硬化性組成物と同じとしたときの硬化性組成物を硬化させてなる硬化物のガラス
転移温度が低いと耐熱性が低く、また硬化物の材料強度が低くなる恐れがある。硬化物の
材料強度が低いとクラックが発生しやすくなる。
【0081】
ヒドロシリル化触媒(C)には助触媒を併用することができる。助触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は、特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限としては10−2モルが好ましく、10−1モルがより好ましく、上限としては10モルが好ましく、10モルがより好ましい。
【0082】
助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒(C)1モルに対して、下限としては10−5モルが好ましく、10−3モルがより好ましく、上限としては10モルが好ましく、10モルがより好ましい。
【0083】
本発明の硬化性組成物は、更に、下記式(26)〜(28)で表される化合物の少なくとも一つを含有するものであってもよい。
【化21】
(式中、R12は、同一又は異なって、エチレン性の不飽和結合を有する基を示し、R13は、−O−、−CH−、−C(CH−、−C(CF−及び−S(=O)−から選択される2価の基を示し、p及びqは、0〜4の整数を示す。)
【0084】
上記式(26)〜(28)で表される化合物が有するR12としては、炭素−炭素二重結合を有する基であれば特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられ、反応性の観点から、ビニル基、アリル基、メタリル基が好ましい。
【0085】
上記式(26)〜(28)で表される化合物の分子量としては、特に限定されないが、取扱い性の観点から、5万以下が好ましい。本明細書において、分子量とは、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量を示す。
【0086】
上記式(26)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、耐熱性の観点から、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等に代表されるイソシアヌレート誘導体等が挙げられ、例えば下記構造式で表すことができる。
【化22】
【0087】
上記式(26)で表される化合物としては、また、入手性の観点から、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートが好ましい。
【0088】
上記式(27)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、入手性の観点から、ビスフェノールFジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールSジアリルエーテルに代表されるビスフェノール誘導体等が挙げられ、例えば下記構造式で表すことができる。
【化23】
(式中、R13は、上記のとおりである。)
【0089】
上記式(27)で表される化合物としては、また、耐熱性の観点から、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールSジアリルエーテルが好ましい。
【0090】
上記式(28)で表される化合物としては、相溶性の観点から、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルナフタレン等が挙げられ、また、屈折率の観点から、ジビニルベンゼン類(純度80〜100%のもの)、ジビニルナフタレンが好ましい。
【0091】
[その他の添加物]
本発明の硬化性組成物の基材との接着性を向上させる目的でシラノール縮合触媒を使用することができる。使用できるシラノール縮合触媒としては、特に限定されないが、具体的に例示すれば、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイド等を好適に用いることができる。
【0092】
本発明の硬化性組成物は、溶剤を添加して粘度を調整し、作業性を向上させることもできる。使用できる溶剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸n−ブチル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤等が挙げられ、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。溶剤は、単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶剤として用いることもできる。
【0093】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応を均一且つ促進させるためには、式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)を完全に溶解できる量が好ましい。溶媒は、ビニル基含有化合物(A)100質量部に対して、下限としては20質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、上限としては500質量部が好ましく、300質量部がより好ましい。
溶媒の使用量は、また、[(A)成分+(B)成分]100質量部に対して、下限としては0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部が更に好ましく、上限としては100質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、30質量部が更に好ましい。溶媒の使用量が上記下限以上であると、低粘度化の効果が得られる傾向があり、また、上記上限以下であると、材料に溶剤が残留することによる耐熱性の低下等の問題が生じにくく、またコスト上も有利になり易い傾向がある。
【0094】
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、又は、ヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上併用してよい。
【0095】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、プロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が挙げられる。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が挙げられる。有機硫黄化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が挙げられる。窒素含有化合物としては、アンモニア、1−3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が挙げられる。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が挙げられる。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル等が挙げられる。
【0096】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0097】
硬化遅延剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒(C)1モルに対して、下限としては10−1モルが好ましく、1モルがより好ましく、上限としては10モルが好ましく、50モルがより好ましい。
【0098】
本発明の硬化性組成物の特性を改質する目的で添加することができる種々の樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて無機フィラーを添加したものであってもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上等に効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ等が挙げられる。
【0100】
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の硬化性組成物が含有するように添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げられる。
【0101】
本発明で得られる硬化性組成物は老化防止剤を添加したものであってもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0102】
本発明の硬化性組成物はラジカル禁止剤を添加したものであってもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0103】
本発明の硬化性組成物は紫外線吸収剤を添加したものであってもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0104】
本発明の硬化性組成物は、その他、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工安定剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、接着性付与剤、物性調整剤等を、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加したものであっってもよい。
【0105】
[硬化性組成物の調製方法]
本発明の硬化性組成物は、上記各成分を混合等することにより得られる。
【0106】
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)にヒドロシリル化触媒(C)を混合したものを、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)に混合する方法が好ましい。ビニル基含有化合物(A)と化合物(B)との混合物にヒドロシリル化触媒(C)を混合する方法では反応の制御が困難な場合がある。また、化合物(B)とヒドロシリル化触媒(C)を混合したものにビニル基含有化合物(A)を混合する方法では、ヒドロシリル化触媒(C)の存在下、化合物(B)が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0107】
[硬化性組成物の硬化方法]
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで硬化させることもできるし、加熱して硬化させることもできる。硬化反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して硬化させる方法が好ましい。
【0108】
硬化温度としては種々設定できるが、下限としては25℃が好ましく、50℃がより好ましく、100℃が更に好ましく、上限としては300℃が好ましく、280℃がより好ましく、260℃が更に好ましい。硬化温度が上記下限以上であると、十分に硬化させるための時間が長くなりすぎない傾向があり、上記上限以下であると、製品の熱劣化が生じにくくなる傾向がある。
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
【0109】
硬化時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【0110】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な観点からは、20時間以内が好ましく、10時間以内がより好ましい。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という観点から、大気圧−5MPaが好ましく、大気圧−2MPaがより好ましい。
【0111】
ヒドロシリル化反応後に、溶媒並びに/又は未反応のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α)と1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の温度の上限としては120℃が好ましく、100℃がより好ましい。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0112】
[硬化物の特性]
本発明の硬化性組成物は、レンズ、光ファイバー、光導波路等の光学部品として使用することができる。
【実施例】
【0113】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるもの
ではない。
【0114】
<上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)、及び比較化合物>
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物としては、下記式で表される化合物A1及びA2を準備した。また、比較のため、下記式で表される比較化合物A3〜A5を準備した。
【0115】
化合物A1
【化24】
化合物A2
【化25】
比較化合物A3
【化26】
比較化合物A4
【化27】
比較化合物A5
【化28】
【0116】
化合物A1及びA2並びに比較化合物A3の合成法を下記に示す。合成例で用いた材料は下記のとおりである。
【0117】
[無機塩基]
(1)軽灰炭酸ナトリウム
粒子径分布:250μm以上;3重量%
150μm以上250μm未満;15重量%
75μm以上150μm未満;50重量%
75μm未満;32重量%
なお、上記の粒子径分布は、60メッシュ(250μm)、100メッシュ(150μm)、200メッシュ(75μm)のふるいを用いて仕分けた後、最終的に得られた篩上成分及び篩下成分各々の重量を測定することにより算出した。
【0118】
[遷移元素化合物触媒]
(1)ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I):[Ir(cod)Cl]
【0119】
[ヒドロキシ化合物]
(1)9,9’−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン
(2)9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン
【0120】
[ビニルエステル化合物]
(1)プロピオン酸ビニル
【0121】
[合成例1]化合物A1の合成
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl](839mg、1.25mmol)、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、9,9’−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(225g、0.5mol)、プロピオン酸ビニル(125g、1.25mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cmの撹拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、撹拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、9,9’−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンの転化率は100%であり、9,9’−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンを基準として9,9’−ビス(6−ビニロキシ−2−ナフチル)フルオレン(化合物1)が81%、ビス6−ナフトールフルオレンモノビニルエーテルが4%の収率で生成していた。
H−NMR(CDCl):4.47(dd、2H、J=1.5Hz、5.0Hz)、4.81(dd、2H、J=3.5Hz、12.0Hz)、6.71(dd、2H、J=6.0Hz)、7.12−7.82(m、20H)
【0122】
[合成例2]化合物A2の合成
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl](839mg、1.25mmol)、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(186g、0.5mol)、プロピオン酸ビニル(125g、1.25mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cmの撹拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、撹拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの転化率は100%であり、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを基準として、9,9’−ビス(4−ビニロキシフェニル)フルオレン(化合物3)が72%、ビス4−フェノールフルオレンモノビニルエーテルが9%の収率で生成していた。
H−NMR(CDCl):4.47(dd、2H)、4.81(dd、2H)、6.71(dd、2H)、7.12−7.82(m、16H)
【0123】
[比較合成例1]比較化合物A3の合成
500mLフラスコにビスフェノールフルオレン70.1g、炭酸カリウム60.8g、アセトン140gを仕込み、攪拌しながら50℃まで加熱した後、臭化アリルを1時間かけて滴下した。滴下後、60℃に昇温し、7時間反応させた。反応後、トルエン200gを加えて残渣をろ過した。その後、アセトン、トルエン、臭化アリルを減圧留去して再度トルエン200gに溶解した。その溶液を1N水酸化ナトリウム水溶液50mL、1N塩酸50mL、純水50mLで3回洗浄し、炭酸ナトリウムで脱水した後、トルエンを留去した。反応生成物をヘキサンにより再結晶してフルオレンビスフェノキシジアリルエーテルの白色固体50gを得た。
【0124】
<SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)>
化合物(B)としては、下記式で表される化合物B1〜B4を準備した。
化合物B1
【化29】
化合物B2
【化30】
化合物B3:1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン
【化31】
化合物B4:1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン
【化32】
【0125】
化合物B1及びB2の合成法を下記に示す。合成例で用いた材料は下記のとおりである。
【0126】
[合成例3]化合物B1の合成
500mLフラスコにトルエン80.0g及び1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン130.0gを加えて、内温が90℃になるように加熱した。そこに、ビスフェノールSジアリルエーテル33.0g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.65g及びトルエン33.0gのスラリー溶液を5分割して30分間隔で添加した。最終添加から2時間加熱還流させた。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がビスフェノールSジアリルエーテルと反応したもの(上記化合物B1)、SiH価:6.8mmol/g)であることがわかった。
【0127】
[合成例4]化合物B2の合成
200mLフラスコにトルエン13.0g及び1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン26.0gを加えて、内温が105℃になるように加熱した。そこに、ビスフェノールフルオレンジアリルエーテル8.6g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.21g及びトルエン25.8gのスラリー溶液を5分割して30分間隔で添加した。最終添加から2時間加熱還流させた。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がビスフェノールフルオレンジアリルエーテルと反応したもの(上記化合物B2)、SiH価:7.6mmol/g)であることがわかった。
【0128】
<硬化性組成物及びその硬化物の調製>
[実施例1〜8]
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)として化合物A1又はA2を用い、SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物(B)として化合物B1〜B4のいずれかを用い、ヒドロシリル化触媒(C)として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)(C1)を用い、添加剤として硬化遅延剤である1−エチニル−1−シクロヘキサノールを用い、溶剤としてシクロヘキサノンを用い、表1に示した配合割合(単位:質量部)で配合し、攪拌、脱泡して硬化性組成物を作製した。
得られた硬化性組成物を、2枚のガラス板に1mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに流し込み、室温から130℃まで6℃/分で昇温し、130℃40分、180℃15分で加熱して硬化物を得た。
【0129】
[比較例1〜6]
ビニル基含有化合物(A)に代り比較化合物A3〜A5のいずれかを用いること以外は、実施例と同様にして、表1に示した配合割合(単位:質量部)で組成物を作製し、硬化物を得た。
【0130】
<屈折率の測定>
得られた硬化物について、波長633nmでの屈折率を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:1.70以上、○:1.60以上1.70未満、△:1.50以上1.60未満、×:1.50未満
【0131】
<耐熱性の測定>
得られた硬化物を室温(約20℃)から1分間に10℃ずつの割合で昇温加熱して大気中で熱重量分析を行い、分析開始時の質量を基準として、質量が5%減少する温度Td5%を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:320℃以上、△:290℃以上320℃未満、×:290℃未満
【0132】
【表1】
【0133】
表1から分かるように、化合物A1又はA2を含有する硬化性組成物は、化合物B1〜B4のいずれを用いた場合でも、屈折率及び耐熱性に優れていた。特に、化合物A1と化合物B2とを含有する硬化性組成物は、実施例及び比較例における他の組成物と比較して、屈折率に優れる傾向を示した。これに対し、比較化合物A3〜A5のいずれかを含有する組成物は、化合物B1〜B4のいずれを用いた場合でも、化合物A1又はA2を含有する硬化性組成物と比較して、屈折率及び耐熱性に劣っていた。特に化合物A3は、アリル基を有する点でのみ、ビニル基を有する化合物A2と化学構造が異なるだけであるにもかかわらず、屈折率及び耐熱性の差異は顕著であった。