(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、全体を通して、各図における同一の各構成部分については説明を省略することがある。
(第1の実施の形態)
〈装置の基本構成〉
本実施の形態では、複合型の自動分析装置(以下、単に自動分析装置、または装置と称することがある)の一例として、血液や尿等の生体試料(以下、単に試料と称する)および試薬を混合してから生化学分野の分析項目を処理し、また、血液凝固分野の分析項目を処理することができる装置を例にとって説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の基本構成を概略的に示す図である。
【0015】
図1において、自動分析装置100は、主として、検体分注プローブ(試料分注機構)101、検体ラック102、試薬分注プローブ(試薬分注機構)106、試薬ラック107、反応容器ストック部111、反応容器搬出搬送機構112、検出ユニット113、反応容器廃棄部117、操作部118、記憶部119及び制御部120から構成されている。
【0016】
検体分注プローブ101は、時計回り及び反時計回りに回転する検体ラック102に配置された検体容器(試料容器)103に収容された検体(試料)や精度管理試料容器(図示せず)に収容された精度管理試料を吸引し、反応容器104へ吐出する。検体分注プローブ101は、検体用シリンジポンプ105と接続され、制御部120であるコンピュータにより制御されて検体の吸引、吐出の動作を実行する。
【0017】
試薬分注プローブ106は、試薬ラック107に配置された試薬容器108に収容された試薬を吸引し、検体が収容された反応容器104へ吐出する。ここで、検体(検体の希釈液も含む)と試薬の混合溶液を、反応溶液という。試薬分注プローブ106は、試薬用シリンジポンプ110と接続され、制御部120であるコンピュータにより制御されて試薬の吸引、吐出の動作を実行する。
【0018】
ここで、血液凝固分野の分析を行うため、試薬分注プローブ106の内部には、試薬昇温機構109が内蔵することができる。制御部120が試薬昇温機構109を制御することにより、試薬分注プローブ106によって吸引された試薬の温度は昇温され、適温(所定の温度)に調整される。
【0019】
反応容器搬送機構112は、反応容器104の搬送及び設置を行うものである。反応容器搬送機構112は、反応容器104を保持して水平方向に回動することにより、反応容器104を反応容器ストック部111から検出ユニット113の反応容器設置部114へ搬送及び設置する。
【0020】
検出ユニット113は、反応容器104を載置するための1つ以上(本実施の形態では、一例として1つの場合を示している)の反応容器設置部114を有しており、反応容器設置部114に挿入した反応容器104の光強度の測定を行う。なお、本実施の形態においては、検出ユニット113を1つ配置した場合を示したがこれに限られず、複数の検出ユニット113を有するように構成してもよい。
【0021】
検出ユニット113の光源115は、反応容器104へ光を照射する。光源115から照射された光は、反応容器104内に収容された反応溶液で減衰して透過し、または、散乱される。検出部(光センサ)116は、フォトダイオードなどから構成されている。検出部116は、反応容器104内の反応溶液で減衰して透過した透過光、または、散乱された散乱光を受光し、光/電流変換を行うことによって、受光強度を示す測光信号をA/D変換器121に出力する。A/D変換器121でA/D変換された透過光または散乱光の測定信号は、インタフェース122を介して制御部120に入力される。検出ユニット113の動作は、制御部120であるコンピュータにより制御される。
【0022】
反応容器搬送機構112は、測定が終了した反応容器104を保持し、反応容器廃棄部117へ搬送し、廃棄する。
【0023】
自動分析装置100で分析される試料の分析項目は、入力手段としてのキーボード118bや表示部118cに表示された操作画面を介して操作部118から制御部120へ入力される。なお、表示部118cに表示された分析項目をマウス118aによりポインタ等で操作することによって分析項目を入力するGUI(Graphical User Interface)を用いるように構成してもよい。
【0024】
ここで、制御部120について説明する。制御部120は、主として、全体制御部120a、測定制御部120b等から構成される。
【0025】
全体制御部120aは、上述した試料や試薬の分注、反応容器104の移設、反応容器104の廃棄などの自動分析装置100の動作を制御する。
【0026】
測定制御部120bは、試料と試薬との混合反応の程度に応じて時間変化する光強度の測定値を演算処理し、予め取得したキャリブレーション値をもとに、分析対象物の濃度もしくは反応時間(血液凝固分野では凝固時間などを指す)を算出する。また、予め定めた判定閾値との比較結果に基づいて、試料に含まれる分析対象物の濃度や反応時間を判断し、良否の判定を実施することもできる。算出された濃度もしくは反応時間は、表示部118cに出力されるとともに、記憶部119に記憶される。なお、算出結果としての濃度もしくは反応時間を、インタフェース122を介してプリンタ123に印字出力してもよい。
【0027】
〈検体ディスクの基本構成〉
図2は、本実施の形態に係る検体ラック102の基本構成を概略的に示す図である。
【0028】
図2において、検体容器103を設置するための設置位置には位置情報として番号が1から順に振られており、設置位置1(10)、設置位置2(11)、設置位置3(12)を代表位置として図示している。本図では、検体ラック102が、内周、外周ともに20カ所ずつの設置位置を備えた構成について示している。
〈動作フローについて〉
図11〜13を用いて、本実施の形態に係る基本的な動作フローについて説明する。
【0029】
図11は、本実施の形態に係る自動分析装置における検体ラックの登録パターンの作成〜分析までの基本的な動作を示すフローチャートである。
【0030】
本動作フローは、制御部120の制御により実行される。ここで、本図では各ステップにおいての概要を説明するが、詳細については
図12を用いて説明する。なお、登録パターンとは、検体ラック102における検体容器103の設置位置に関する情報と、検体容器103に収容される検体等に関する情報とを関連付けた情報のことをいう。
【0031】
ステップ1101では、検体ラック102について、登録パターン、及び詳細項目を作成する(S1101)。ここで、詳細項目とは、例えば、QCやキャリブレーション等の分析にて実行する各処理における、個々の項目のことをいう。例えば、QC処理にもQC−A、QC−B、・・・というようにその内容によってより詳細に分類される。ここで、登録パターン及び詳細項目については、どちらを先に作成してもよく、分析や種々の状況に応じて変更するように適用可能である。登録パターンは、後述するように登録パターン1、2、3・・・というように複数個作成することができる。以下、登録パターンを複数個作成し、分析に応じて選択する手法について説明するが、単一の登録パターンのみを作成することも可能である。
【0032】
次に、ステップ1102では、ステップ1101にて作成した詳細項目を、登録パターンにて決定された各設置位置に対応づけるように割り当てる(S1102)。
【0033】
ステップ1103では、ステップ1102にて詳細項目が割り当てられた登録パターンのうち、分析に使用する登録パターンを選択する(S1103)。
【0034】
ステップ1104では、依頼された分析の内容を取り込み、または入力を行う(S1104)。分析の内容としては、例えば、生化学分析、血液凝固検査等がある。
【0035】
次に、ステップ1105では、ステップ1104にて取り込みまたは入力された分析内容に基づいて、必要な検体や、試料、各種容器等の消耗品を自動分析装置内に設置する(S1105)。ここで、当該設置は、制御部120によりオペレーターへの指示を表示部118cに表示することで、オペレーターが実施してもよく、また、試料容器の移動機構等によって装置が自動で行うこともできる。
【0036】
上記の設置が完了したら、依頼された分析を実行し、得られた分析の結果を出力する(S1106)。
【0037】
図12は、本実施の形態に係る自動分析装置における基本的な動作をより詳細に示すフローチャートである。本図を用いて、
図11にて示した各動作についてより詳細に説明する。ここで、
図11に示した各動作に付した記号A〜Gは、本図に示される記号a〜gにそれぞれ対応している。つまり、例えば、
図11において記号Aが付された動作には、より詳細には
図12において記号a1〜a3が含まれているものとする。
【0038】
まず、ステップ1201では、作成する登録パターンの番号を選択する(S1201)。例えば、6つの登録パターンの作成が必要な場合、番号1〜6のうちいずれの番号の登録パターンを作成するのかを選択する。
【0039】
次に、ステップ1202では区画を分類する(S1202)。ここで区画とは、検体ラックにおける複数の設置位置に対して、例えば精度管理試料やキャリブレーター、各種の検体等をそれぞれ配置する開始番号の位置から終了番号の位置までの領域をいう。
【0040】
ステップ1203にて、必要な全ての登録パターンの作成が完了しているかどうかを判断し(S1203)、完了していない場合には、残りの登録パターンに対してステップ1201以降の処理を実行する。一方、必要な全ての登録パターンの作成が完了している場合には、ステップ1204、ステップ1205の完了と併せてステップ1206へ進む。
【0041】
ここで、ステップ1204では、上述した詳細項目を作成する(S1204)。ステップ1205にて、全ての詳細項目を作成し、リストへの登録が完了しているかどうかを判断し(S1205)、完了していない場合には、残りの詳細項目についてもステップ1204にて作成する。一方、リストへの登録が完了している場合には、ステップ1206へと進む。
【0042】
ここで、ステップ1201〜ステップ1203の登録パターンの作成[a1〜a3:
図11のAに相当]と、ステップ1204〜ステップ1206の詳細項目の作成[b1、b2:
図11のBに相当]は、どちらを先に実行しても良い。両者の作成が完了したところで、ステップ1206がスタートする。
【0043】
ステップ1206では、作成した詳細項目を割り当てるべき登録パターンを選択する(S1206)。
例えば、6つの登録パターンを作成した場合、番号1〜6のうちいずれの番号の登録パターンについて、詳細項目を割り当てるのかを選択する。
【0044】
ステップ1207では、対象とする種類の検体等に相当する、ステップ1202にて分類した区画を選択し(S1207)、ステップ1208にて、選択された区画に対して詳細項目を各設置位置単位で割り当てる(S1208)。
【0045】
ステップ1209において、必要な全ての割り当てを完了したかどうかを判断し(S1209)、完了していない場合には、再度ステップ1207を実行する。
【0046】
ステップ1206にて選択した登録パターンに対して、必要な全ての割り当てが完了している場合には、必要な全ての登録パターンについての割り当てが完了しているかどうかを判断する(S1210)。完了していない場合には、ステップ1203に戻り、残りの登録パターンのうち割り当てが必要なものを選択し、同様の処理を行う。
【0047】
一方、必要な全ての登録パターンについての割り当てが完了している場合には、ステップ1211にて、分析内容を依頼し(S1211)、ステップ1212にて、この分析内容に応じた必要な登録パターンが選択されているかどうかを判断する(S1212)。
【0048】
ここで、必要な登録パターンが選択されている場合には、ステップ1213にて依頼された分析内容の取り込み、または入力を行う(S1213)。一方、選択されていない場合には、ステップ1214にて登録パターンを必要なものへ変更し(S1214)、ステップ1215にて、依頼された分析内容の取り込みまたは入力を行う(S1215)。
【0049】
その後、ステップ1216にて依頼された分析内容に応じた検体等の設置を行うようオペレータに指示、もしくは上述の通り自動で設置し(S1216)、設置が完了したら、ステップ1217にて分析を実行し(S1217)、ステップ1218にて得られた分析結果の出力を行う(S1218)。
【0050】
図13は、
図12にて示したフローチャートの変形例を示す。ステップ1301〜1311、及びステップ1317〜1318は、それぞれ
図12にて示したステップ1201〜1211、及びステップ1217〜1218にしているため、説明を省略する。ここでは、ステップ1312において、ステップ1311で依頼された分析内容に応じて検体等の設置を行うようオペレータに指示する(S1312)。設置が完了したら、次に、ステップ1313にて必要な登録パターンが選択されているかどうかを判断し(S1313)、選択されている場合には、ステップ1314にて依頼された分析内容の取り込みまたは入力を行う(S1314)。一方、選択されていない場合にはステップ1315にて登録パターンを必要なものへ変更し(S1315)、ステップ1316にて、依頼された分析内容の取り込みまたは入力を行う(S1316)。
【0051】
ここで、当然のことながら、上述のように
図12、
図13を用いて説明したフローチャートの一例以外にも、実際の運用では手順等を適宜変更することが可能である。
〈表示画面について〉
図3乃至5は、本実施の形態に係る表示部118cを概略的に示す図である。
図3Aは、本実施の形態に係る表示部上における登録パターンの作成等を説明する図である。
図3Aでは、表示部118cは、登録パターン表示部301にて、登録パターン1から登録パターン5までの、5通りの検体情報の登録パターンを選択して表示する例を示す。検体情報として、少なくとも検体ラック102の設置位置の番号と、そこに割り当てられた検体等の種類が登録され、これらは検体情報表示部302に表示されている。例えば、検体ラック102の設置位置がNo.1〜110まで提供される場合には、精度管理試料やキャ
リブレーター、各種の検体や、洗浄液の設置位置を、設置位置の開始番号と終了番号とで区画を区切り、登録する。ここで、登録パターン表示部301や、選択された登録パターンに関する検体等の情報を表示する検体情報表示部302は、分析動作中も常に表示することができる。
【0052】
図3Bは、本実施の形態に係る表示部上における登録パターンの作成等の他の例を説明する図である。
上述の例の他に、区画の登録方法として、
図3Bに示すように、検体情報表示部302において精度管理試料やキャリブレーター等といった検体等の登録数をオペレーターが入力することで、装置は登録数に応じてそれらの開始番号及び終了番号順序よく自動的に割り振ることもできる。
【0053】
図3Aに示す表示部118cの形態では、一連の検査業務のサイクルのなかで、主に分析性能のキャリブレーションを行う状況に適した登録パターンを示しており、1番目の登録パターンの識別名称である“登録パターン1”に“キャリブレーション1”という名称で登録している。登録パターンの識別名称は、識別名称表示部308に表示される。登録パターンの識別名称のかわりに、単に“1”や“2”といった識別番号を使用してもよい。登録パターン及び識別名称はオペレーターが任意に作成や削除、名称の決定、選択等を実行することができる。
【0054】
図3Aに示すように、設置位置No.1〜20には精度管理試料を設置することができ、設置位置No.21〜80にはキャリブレーターを設置することができる。また、検体は、一般検体や、1度目の検査の結果として何らかの理由で再検査の有効性が認められる再検検体や、緊急検査が必要なことから、事前に分析項目や順序をスケジューリングされた一般検体群に割り込んで分析を行う緊急検体などに分類することができるが、
図3Aにおいて、一般検体と再検検体をいずれも設置位置No.81〜90の同一の区画内に設置することができる。また、血液凝固検査に用いられる因子欠乏血漿や凝固希釈液といった検体等を設置位置No.91〜97に設置可能である。さらに、検体分注プローブの洗浄等に使用する洗浄液は設置位置No.98〜100に設置可能である。
【0055】
前述のように、設置位置を開始番号から終了番号までの連続した位置情報として分類したのち、さらにそれぞれの分類において詳細情報を登録する。たとえば、精度管理試料の設置位置No.1〜20では、精度管理試料の種類等をNo.1、2、3から20までの各番号に割り当て、それぞれの位置に精度管理試料の識別情報を登録することができる。同様に、キャリブレーターについても設置位置ごとにキャリブレーターの種類等の割り当てと識別情報を登録することができる。一般検体または再検検体の設置位置No.81〜90や、緊急検体の設置位置No.101〜110では患者情報や分析項目などの分析情報が紐付けられた検体番号などの識別情報を入力することができる。
【0056】
また、詳細項目表示部303には、大分類に対して、上述したより詳細な項目を設定、表示できる。
【0057】
図3Cは、本実施の形態に係る表示部上における詳細項目の割り当て等を説明する図である。
図3Cでは、精度管理試料(図中ではコントロールやQCとして表示)を、図中の左側に示す登録リスト表示部304に示すリストに予め登録しておき、図中の右側に表形式で用意された設置位置割り当て表示部305に示される設置位置(図中ではPos.として表示)に割り当てることができる。詳細項目を設定すべき対象は、詳細項目設定対象表示部307により選択することができる。
【0058】
上述のように、精度管理試料やキャリブレーターなどの大きな分類で区画を定めた後に、それぞれの区画における各設置位置に詳細な識別情報を登録するため、同一の登録パターンにおいて、検体等を設定された区画に適合しない設置位置に登録し直したい場合には、まず区画を登録し直してから詳細な識別情報を登録することができる。
【0059】
また、上記の例の他に、よりオペレーターフレンドリーな機能として、オペレーターは設定された区画に合致しない位置に検体等を設置するために、詳細な識別情報を登録し、その識別情報に応じて装置は区画を修正することの可否をオペレーターに問いかけ、合意する場合には自動的に区画を変更することができる。
【0060】
検体等を合致する区画から2つ以上離れた設置位置に新たに登録する場合には、新たに登録しようとする設置位置と、すでに登録されている区画との間にある設置位置も同一の種類の区画に一度に登録し直すことができる。これは、例えば精度管理試料の設置位置がNo.1〜10で、キャリブレーターの設置位置がNo.11〜20に区画されている場合に、新たにNo.5の設置位置にキャリブ―レターを登録仕様とする場合には、その詳細な識別情報を登録すれば、その区画は、合致する区画であるキャリブレーターに更新されるか、あるいは、現在の登録された区画であるNo.11との間に挟まれた、No.6、7、8、9、10が追随してキャリブレーターの区画に更新される。
【0061】
このとき、すでに内容を登録され、分析結果等の情報を持った詳細な識別情報は、区画の更新により登録パターン上からは区画を消去されるが、その情報は別の保存領域に確保されており、本作業を行っている同一の登録パターンの別の設置位置や、他の登録パターンに呼び出して登録することができる。
【0062】
このように、詳細情報を格納することができる個々の詳細な識別情報は、共通の記憶領域に確保されており、それぞれの登録パターンに自由に呼び出して登録と消去を行うことができる。登録パターン上で区画を変更した際に、設定や画面上からは消去される個々のデータは、共通領域から呼び出して、別の設定位置や、他の登録パターン上で呼び出して登録することができる。
【0063】
装置は、この詳細情報に従って、必要な検体等を決定し、キャリブレーターや一般検体等の分類が自動的に入力される。
【0064】
これによれば、登録パターンの作成をより迅速に行うことができる。個々のキャリブレーション結果や、精度管理結果は、詳細情報の番号や名称と紐付けられており、マウス118aを用いて選択することで、別の表示画面(図示せず)へ遷移しオペレーターは結果を確認することができる。
【0065】
また、緊急検体の設置位置No.101〜110を変更できないように制限してもよい
。緊急検体は検査室に持ち込まれるタイミングによらず、優先的に分析されることが必要であり、これは検体ラック102の登録パターンによらず常に一に定められた位置を確保することで、オペレーターは容易に設置位置を把握し、緊急検体の検体容器103を確実に設置することができる。
【0066】
また、装置にこの緊急検体を分析するためのショートカットボタン(図示せず。以下、STATボタンとする)を設けることができる。装置が分析状態にあるとき、検体ラック102の近傍に設けられたSTATボタンをオペレーターが押し下げると、装置はすでに装置内に設置されている一般検体について新たな検体分注を停止する。
【0067】
このとき、すでに分注が終了した検体については、分析を継続することができる。検体ラック102上で緊急検体が割り当てられた設置位置No.101〜110が装置の前面に移動し、オペレーターは緊急検体を設置することができる。引き続きオペレーターは装置に分析開始を指示することで、装置は設置された緊急検体を優先的に分析し、結果を出力する。
【0068】
また、検体情報は検体容器103に貼り付けられたバーコードなどの識別情報および、光学式バーコードリーダーなどの識別情報読み取り装置を通じて、自動分析装置に自動的に入力する方式であってもよい。
【0069】
また、区画を一の検体等の種類に割り当てる場合と、複数の検体等の種類にまとめて割り当てる場合とを自由に設定することができる。一例として、一般検体と、それ以外の精度管理試料やキャリブレーターとをまとめたグループとに分類可能とすると、区画の登録方法を簡素にすることができ、オペレーターの装置使用の状況ごとにより最適化することができる。
【0070】
また、表示部118cにはマウス118aやキーボード118bを介して、登録パターンの識別名称や登録名に加え、説明を追加することができる。
【0071】
キャリブレーターや一般検体といったそれぞれの検体等の分類されたグループは、連続した設置位置に固めて設置するように制限することが望ましい。また、キャリブレーターや精度管理試料、一般検体等の設置位置を、検体ラック102の設置位置の番号が若い順に登録できるような制限を設けることもできる。このようにすることで、オペレーターが設置した検体等と、登録パターンとの不一致を避けることができる。
【0072】
図4は、本実施の形態に係る表示部上における登録パターン等の作成等のさらに他の例を説明する図である。
【0073】
すなわち、
図4に示す表示部118cの形態では、一連の検査業務のサイクルのなかで、検体分析を中心に行う状況に適した登録パターンを示している。識別名称表示部408には、2番目の登録パターンの識別名称である“登録パターン2”に対して、“ルーチン1”という名称で登録している。上述した“キャリブレーション1”では多数のキャリブレーターを設置するのに対し、“ルーチン1”では多数の一般検体を設置し、処理できることを特徴としている。
【0074】
表示部118cに表示された画面中に表示された適用ボタン406をマウス118aなどの入力部で選択すると、該当する登録パターンが装置に適用される。また、装置上に番号1〜5について独立したボタンとして、検体等の登録パターンと対応させたハードウェアスイッチを設けておくこともできる(図示せず)。これによれば、オペレーターは操作部118のキーボード118bやマウス118cといった入力部を介して所望の登録パターンを装置に適用することができ、また、別の手段として、所望の登録パターンが紐付けられたハードウェアスイッチスイッチを押し下げすることで登録パターンを装置に適用することができる。
【0075】
ハードウェアスイッチ付近には、個々のハードウェアスイッチと対応したLEDによる表示灯が設けてあり、装置に適用されている登録パターンと対応して点灯・消灯する。これにより、オペレーターは適用されている登録パターンを装置上で確認することができる。このとき、表示部118cをハードウェアスイッチを通じて適用された登録パターンは、表示部118cに表示されるため、オペレーターはハードウェアスイッチの表示灯もしくは表示部118cのどちらからも適用されている登録パターンを確認することができる。
【0076】
また、適用されている登録パターンを示す表示灯の代わりに登録パターンの名称や識別番号、説明や内容の全てもしくはいずれかを表示する装置表示部を設けることができる(図示せず)。
【0077】
分析内容が依頼されると、装置は検体等の設置を、表示部118cへの表示等によってオペレータに指示する。オペレーターは適用された登録パターンの内容に従って、検体ラック102の検体容器103の設置位置に検体等を設置する。もしくは、上述の通り装置が自動で設置することもできる。引き続き、操作部118を介して、オペレーターは自動分析装置に分析開始の指示を与える。この指示を受けて、自動分析装置は検体ラック102の回転等の位置決め動作を実行し、検体分注プローブ101の検体吸引位置に、予めスケジュールされた前記検体を含む検体容器103が位置するよう停止させる。この後、自動分析装置は、検体等の吸引とその後の工程である分析動作を順次実行する。
【0078】
オペレーターが登録パターンを装置に適用することができるタイミングについて説明する。自動分析装置は、大きく分けて、3つの装置状態に分類することができる。第1の状態は分析待機状態であり、オペレーターが分析開始前の準備を行うためのステップである。これは、分析に使用する検体や試薬の登録と設置、分析依頼の登録、装置の消耗品の補充などを完了するステップである。検体ラック102の登録パターンの確認・変更・適用ともに可能である。本状態では、装置に設置する検体等と、装置に登録する検体等の情報との一致を得やすく、オペレーターが装置状態をより正確に認識できる状態といえる。
【0079】
第2の状態は分析動作状態である。オペレーターが分析開始の入力をすることで、装置は依頼された分析をスケジュールに従って処理していく。設置された検体等は順次にもしくはバッチで処理され、依頼された分析項目に必要な分析時間が経過したのちに、分析結果が得られた検体等から順次、結果が表示部118cに出力される。
【0080】
図6は、本実施の形態に係る表示部上における登録パターンの適用・入力・確認等を説明する図である。表示部118cのステータス表示部609には、“状態”の枠内に、現在の装置状態である“分析中”と、この処理途中である分析に使用されている登録パターンの識別名称である“登録パターン2”とが表示されている。
【0081】
ここで、登録パターンの誤認を防止するため、“分析中”の状態と紐付けられた登録パターンである“登録パターン2”は、この標識名称のタブをマウス118aで選択することで登録内容を確認することができるが、変更はできないように制限を設ける。一方で、その他の識別名称として例示している“登録パターン1”“登録パターン3”“登録パターン4”“登録パターン5”は、標識名称のタブをマウス118aで選択することで、登録内容を確認することができ、また変更することもできる。
【0082】
これにより、オペレーターは現在の分析で適用している登録パターンと、次回以降の分析で適用する予定の登録パターンとを誤認することなく、また、装置が分析動作中であっても次回以降の分析で適用する予定の登録パターンを入力・設定でき、装置を効率的に使用することができる。
【0083】
また、登録パターンの確認や設定を行う画面から、分析結果を示す画面や、装置状態を示す画面などに容易に遷移できるよう、画面上にリンクを設定する。表示部118cの分析結果表示ボタン610をマウス118aで選択すると、得られた分析結果や、装置の状態が表示される。また、この分析結果や装置の状態の画面から登録パターンの画面へ戻る場合も、容易に遷移できるようにリンクを設定する。
【0084】
さらに拡張的な機能として、スケジュール機能を設けて、より多種・多数の検体等の処理に対応することができる。依頼された分析を遂行するのに、単一の登録パターンでは項目が不足し、複数の登録パターンを切り替えて適用していく場合に対応することができる。
【0085】
ここで、
図7は、本実施の形態に係る表示部上における複数の登録パターンの切り替えと、適用・入力・確認等を説明する図である。表示部118cのステータス表示部709には、“状態”の枠内に、現在の装置状態である“分析中”と、この処理途中である分析に使用されている登録パターンの識別名称である“登録パターン2”、及び、後述するスケジュール表示部711におけるスケジュールの順番である番号“1”とが表示されている。
【0086】
ここで、スケジュール表示部711では、登録パターンのスケジュールが示されており、処理の順番と、この順番に対応するラック番号が表示されている。
【0087】
このスケジュールの順序として“1”の他に、“2”、“3”と、登録パターンに紐付けられた標識名称が表示され、それぞれが次回以降の分析で適用されるラックに対応した登録パターンが割り当てられていることを示す。本図では、1番目にラック番号2が分析され、その後2、3、4番目にはそれぞれラック番号3、1、5が分析される予定となっていることが示される。
【0088】
オペレーターはスケジュールされた登録パターンの内容を確認等するために、スケジュール番号もしくは標識名称の表示をマウス118aで選択し、登録パターンの内容を表示することができる。分析が依頼されると、それらを分析するのに必要な登録パターンが分析項目ごとに検索および照会され、該当する検体等が設定されている登録パターンとその設置位置とが紐付けされ、スケジュールが決定される。スケジュールされる順序はオペレーターが手動で決定してもよく、装置によって自動的に決定することもできる。さらに、検体容器103を検体ラック102に自動で設置する移送機構を設けることができる。
【0089】
また、上述の
図6の説明と同様に、分析結果表示ボタン710をマウス118aで選択すると、得られた分析結果や装置の状態を表示することができ、元の画面に戻すことも容易にできる。
【0090】
オペレーターが装置の状態と適用されている登録パターンをよりわかりやすく認識するための手段として次のような構造を適用することができる。表示部118cで表示される登録パターンが、分析中の登録パターンであるか、または、次回以降の分析で適用される予定の登録パターンであるかを明示するため、画面の色調を変化させてもよい。また、画面を左右や上下などに分割し、左側もしくは上側に分析中の登録パターンを表示し、右側もしくは下側に次回以降の分析で適用される予定の登録パターンを表示してもよい。上記の構造は、必ずしも同時に搭載するのみならず、適宜に選択・組み合わせすることでも効果を奏することは明らかである。これにより、多数・多種類の検体等の連続分析を実行することができる。
【0091】
第3の状態はスタンバイ状態への復帰動作状態である。装置は依頼された分析を終了し、分析結果が順次出力されており、同時に、反応容器104の洗浄もしくは廃棄、各機械装置の待機位置への戻り動作などの装置状態の初期化が行われている。このとき、装置には新たに検体容器103を設置可能であり、新たに分析依頼を行うことができるため、登録内容の確認・変更・適用ともに可能である。もしくは、分析結果が出力途中であることを考慮し、対応する登録パターンの内容の変更と、これとは異なる登録パターンの適用を制限することができる。
【0092】
オペレーターは、検体等を検体ラック102に設置し、分析依頼項目を登録したのち、分析開始を装置に指示することができる。
【0093】
ここで、
図15は、本実施の形態に係る表示部上における登録パターンの確認等を説明する図である。分析開始時において、オペレーターが分析依頼項目や適用されている登録パターンを最終確認できるよう、
図15に示すように、分析開始を指示するスタートボタン1509を表示する画面上に、登録パターン情報表示部1510を設け、ここに登録パターン(図中ではラック番号として示す)や、各設置位置における登録内容、詳細情報を表示させる。該スタートボタン1509、登録パターン情報表示部1510の表示方法は、同一画面にすべて表示する、もしくは、順次切り替えて表示することができる。また、
図15に示すように、登録パターンの各区画に対する分類が容易に確認できるように、色分け等により可視化することができる。
【0094】
上述した実施の形態、自動分析装置に設置された検体ラック102を取り換えることなく、単一の検体ラック102における検体容器103の収容数よりも多くの検体等の登録が可能であり、また、その登録情報を瞬時に呼び出すことができ、多数、多種の検体等を効率よく分析処理することができる。
【0095】
さらに、本実施の形態に係る自動分析装置には、登録パターンの設定をタイマーによって自動化する、または、装置の電源を入れた場合など動作をトリガーとした自動化する機能を追加することができる。
【0096】
臨床検査室において、使用する検体等の種類は、日付、曜日や季節などによって変動することが想定される。たとえば1週間の各曜日において使用する検体等がおおよそ固定されている場合には、その内容に対応する検体ラック102の登録パターンを装置の電源を入れた曜日によって自動的に選択して設定する機能を設けることで、より効率的な運用を図ることができる。たとえば、装置、検体、試薬等の状態を確認することが多い月曜日の午前中では、多くのキャリブレーションを実施するため、キャリブレーターの設置位置を増やした登録パターンを予め作成しておき、これを自動的に適用することができる。一般検体が多く持ち込まれる、火曜日〜金曜日には一般検体の設置位置を増やした登録パターンを予め作成しておき、これを自動的に適用することができる。また、精度管理試料を用いて分析性能を確認するタイミングを各曜日の午後に設ける場合は、精度管理試料の設置位置を増やした登録パターンを予め作成しておき、これを自動的に適用することができる。また、毎朝の装置の電源を入れた際には、常に、キャリブレーターや精度管理試料の設置位置を増やした登録パターンを予め作成しておき、これを自動的に適用することもできる。これによれば、装置の設定にかける時間を節約することができる。
【0097】
検体ラック102は複数設けることができる。それぞれの検体ラック102ごとに登録パターンを入力し、確認し、適用することができる。このようにすることで、より多数、多種の検体を分析処理することができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、生化学分析や血液凝固分析等の分析手法が単独で、もしくは混在した登録パターンを作成する自動分析装置の例について説明した。
【0098】
本実施の形態では、生化学や血液凝固といった複数の分析手法に対して、検体等の設置位置を分けた登録パターンを利用する自動分析装置の例について説明する。
【0099】
図5は、本実施の形態に係る表示部上における登録パターンの作成等を説明する図である。ここで、識別情報表示部508には、登録パターン表示部501における3番目の登録パターンの識別名称である“登録パターン3”に“ルーチン2(生化学・凝固)”という名称を付して登録している。大分類の項目に加えて、ここでは分析手法によるグルーピング(この例では生化学および凝固)を追加したものである。
【0100】
設置位置1〜50までは生化学分析に必要な検体等を登録し、設置位置56〜97までは血液凝固分析に必要な検体等を登録している。このように分析手法ごとに設置場所を分けることで、オペレーターにとって設置位置と分析手法に関連した検体等の識別を容易にすることができる。例えば、検体ラック102の検体等の設置位置が、内周側に55カ所、外周側に55カ所それぞれあり、合計110カ所であるような場合では、設置位置1〜55に相当する外周は生化学分析に割り当て、設置位置56以降に相当する内周は血液凝固分析と、洗浄液や緊急検体等の両分析手法の共通部とに割り当てることで、オペレーターが視覚を通じてスケジュールされた分析と、実際に検体ラック102に設置された検体等の対応を確認することができ、正確に設置ことができる。
【0101】
また、装置構成や装置動作、結果表示や結果の管理などと分析手法ごとの検体等の設置位置を関連させて、装置性能を向上させることが考えられる。この例として、異なる直径の、リング状の円形ラックを同心円状に複数配置し、それぞれを分析手法ごとにグルーピングし、区画を割り当てることができる。内周と外周の円形ラックでは異なる分析手法の検体等を設置するものとすることで、装置がいずれか一方の分析を行い、円形ラックからの検体分注プローブ101による検体等の採取を連続している場合でも、この検体等の採取を妨げることなく、新たに発生した、異なる分析手法の検体等の設置を可能とし、分析を開始することができる。このように、複数の分析手法を並列処理可能な装置では、検体等の発生頻度や数量が異なる場合が考えられるが、本発明によれば装置を停止させることなく複数の分析手法による分析を継続・開始・終了することができ、効率的に使用することができる。
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、登録パターンの作成において、検体等の分類ごとに連続した位置番号を自動的に割り当てることができる自動分析装置について説明する。
【0102】
図8は、本実施の形態に係る表示部上における登録パターンの作成等を説明する図である。
【0103】
図8において、表示部118cでは、検体ディスク情報表示部810における検体ラック102、検体ラック102上に検体等の設置位置を表示する実線または点線の枠と、該枠が示す検体等の種類を表示している。
図8で示した登録パターンは、
図5を用いて上述した登録パターンと同一の内容であり、生化学分析と血液凝固分析とで設置位置を分けている。検体等の種類が割り当てたそれぞれの枠は一つずつ設定することができ、開始の設置位置でマウス118aのボタンを押し下げし、終了の設置位置までマウス118aをドラッグして離すと、その間の設置位置が枠で囲まれるように表示される。それぞれの枠を同様に設定すると、検体ラック102の登録パターンを入力することができ、この登録パターンを標識名称である“登録パターン1”や“登録パターン2”ごとに設定し、マウス118aで適用ボタン806を選択することで、所望の登録パターンを装置に適用することができる。これによれば、検体等の分類ごとに連続した位置番号を自動的に割り当てることができ、異なる分類の、たとえば、一般検体が割り当てられた位置番号の間にキャリブレーターが割り込むといったような混ざり込みを防止することができ、オペレーターによる誤操作を防止することができる。
(第4の実施の形態)
本実施の形態では、表示灯を備えた検体ラックの例について説明する。
【0104】
図9は、本実施の形態に係る検体ラックの基本構成を示す図である。検体ラック102の検体容器103のそれぞれの設置位置に相当する表示灯21を、検体ラック102の外側に設けた図である。検体ラック102の外周に相当する表示灯21と、内周に相当する表示灯22とを備えており、検体ラックの設置位置の銘番番号と表示灯21の銘番番号とが対応する位置を、検体ラック102の回転動作の原点位置とする。
【0105】
検体ラック102を原点位置に復帰させ、停止させた状態で、表示灯21の色、点灯や消灯、点滅といった点灯方法によって各設置位置に登録された検体等の種類を示すことができる。また、検体ラック102は原点位置でなくとも、停止した任意の位置で、検体ラック102の設置位置と対応する表示灯21を点灯させ、登録内容を示すことができる。これによれば、オペレーターは表示部118cで適用されている検体等の種類を知ることができ、さらに、装置上で確認することができ、登録した内容と異なる検体等の設置を防止することができる。
【0106】
この表示灯と同様の効果をもたらすための変形例として、登録パターンの内容を表示するシートを、検体ラック102上の中央部などに設置してもよい(図示せず)。登録パターンごとに異なるシートを用意しておき、設定されている登録パターンと対応するシートをオペレーターが設置することで、検体等の設置位置を誤るリスクを低減することができる。シートには登録パターンだけでなく、詳細項目などを必要に応じて記録・表示させることができ、より効率よく装置を運用することができる。
(第5の実施の形態)
本実施の形態では、識別部材を備えた検体ラックの例について説明する。
【0107】
図10は、本実施の形態に係る検体ラックの基本構成を示す図である。検体ラック102の検体容器103のそれぞれの設置位置には、区画を決定するための識別情報を有する識別部材1001a〜fが設置されている。本実施の形態では、オペレーターは、
図10に示されるように、検体ラック102に対して、検体等の種類についての区画の開始位置を示す識別情報を有する識別部材1001a〜fを設置し、区画決定動作を開始する旨の指示を制御部120へ送信し、表示部118cに表示する。検体ラック102は回転し、外周と内周とのそれぞれに設置された識別部材1001a〜fの識別情報を、内周と外周との読み取り位置に設置されたバーコードリーダー124で読み取り、識別部材1001a〜fの識別情報と、設置された位置との情報とを連結させて、記憶部119(
図1参照)に記憶する。
【0108】
このとき、検体ラック102は、識別情報を読み取ることができる通過速度であれば、停止することなく回転することができ、また、必要に応じて、識別情報をバーコードリーダーが読み取りを行う位置において、一時停止してもよい。
【0109】
図10では、設置位置No.1の位置の識別部材1001aには精度管理試料の区画の開始位置であることを示しており、設置位置No.3の位置の識別部材1001bには、キャリブレーターの区画の開始位置であることを示している。以降、設置位置No.10、21、30の設置位置に設置された識別部材1001c〜eについても同様に、それぞれ対応する区画の開始位置であることが示されている。
【0110】
なお、バーコードリーダー124は検体情報の読み取りの用途としても共通に使用してもよい。得られた識別情報と、設置位置に関する情報は、制御部120で演算され、新たな区画の登録パターンとして登録される。このとき、併せて登録パターンの番号を入力することができる。表示部118cには登録パターンが表示され、オペレーターはその内容を確認することができる。
【0111】
識別部材1001a〜eには、オペレーターが判別することのできる文字や色、記号等を付与することで、区画登録の際にオペレーターが意図した通りに配置されているかをわかりやすくすることができ、さらに、分析中にも設置したままにしておくことができる。このとき、誤って検体分注プローブ101で分注動作が行われないように、制御部120は、当該設置位置には識別用の識別部材が設置されている記録情報に基づいて、正しく制御する。
【0112】
また、検体等の設置位置を標識用の識別部材1001で占有することなく、かつ、上述した本実施の形態に係る区画の登録を行うために、識別情報を有する識別部材1002を設置する専用の識別部材設置位置125を設けることができる。試験管の設置位置の構造を利用し、試験管の設置を妨げない形状を有するように構成された、識別情報を印字されたアダプターを取り付けることも可能である。
【0113】
図10では識別部材設置位置125は設置位置No.1に対応するもののみを図示しており、他は省略しているが、各設置位置に対応して設けることが可能である。オペレーターは、識別部材設置位置125に識別部材を配置し、意図した通りに区画された登録パターンを作成することができ、また、検体等を設置する際の目印としても使用することができる。
【0114】
装置に登録された、または適用された登録パターンは表示部118cの画面に表示され、オペレーターは画面を通じてその内容を容易に確認することができる。
【0115】
また、画面上で任意の登録パターンの区画を変更した場合、装置は検体ラック102に設置された識別部材1001a〜fの標識を読み取り、両者の区画に差異がある場合は、オペレーターに警告を発する。これによりオペレーターは画面を通じて区画を修正するか、また、検体ラック102の標識部品の設置位置を修正するか、または、その両方を修正し、内容が合致するように修正するかのいずれかの対処を行う。
(第6の実施の形態)
上述の実施の形態では、区画の登録ができる単位を全検体ラック102ごととしたが、本変形例では、単一の検体ラック102をより小さい領域に分割し、そのそれぞれの領域において、登録パターンとして区画登録することができる場合について説明する。
【0116】
この領域はオペレーターが自由に設定することができる。例えば、検体ラック102において内周と外周とに独立した領域を設定する場合を考える。ここではオペレーターは内周と外周のそれぞれにおいて、キャリブレーターや精度管理試料、一般検体等を選択・登録して、登録パターンを作成する。
【0117】
すなわち、例えば、内周を生化学分析に割り当て、外周を凝固時間分析に割り当てるように、異なる分析方法を同時に実施するような状況において、お互いの分析に必要な検体等を交雑させることなく、設置・運用することができるので、検体等の設置場所を誤るリスクを低減することができる。
【0118】
また別の例としては、検体ラック102の一部を一般検体に割り当てることで十分に処理することが可能なほど、比較的に分析数が少ない場合や、また、多種の分析を行う機会が多く、したがって多種類のキャリブレーターを使う機会が多い場合には、内周をキャリブレーターに割り当て、オペレーターは外周を一般検体と精度管理試料に割り当てることができ、有効である。
【0119】
新たなキャリブレーターを使用するために、内周の登録パターンを新たに作成する、または、既存の登録内容を変更さえすればよく、外周の登録パターンは変更する必要がないため、最小限の作業で対応することができるからである。
【0120】
また、検体ラック102を分割した領域のいずれかを優先的に分析するように、また、3つ以上の領域に分割した場合にはその領域ごとに順序を決めて分析するように、設定することができる。このようにすることで、検体ラック102に割り振られた設置位置の番号順や、登録された検体等ごとに詳細な順序の割り振りを行うのが煩雑であるような場合に、より効率的に運用することができる。
(第7の実施の形態)
本実施の形態では、複数の分析を実行する場合における登録パターンの切り替え時に、エラーを検知する機能(以下、単にエラー検知機能と称することがある)を備えた自動分析装置の例について説明する。
【0121】
オペレーターが検体ラック102の登録パターンを切り替えるときに、検体ラック102に設置されたままの検体等があれば、オペレーターはその検体等が切り替えられる前の登録パターンに合致するように設置されたものであるのか、またその逆に、切り替えられた後の登録パターンに合致するように設置されたものであるかが判然としない課題となるケースが発生しうる。本実施の形態は、このようなケースに対応するものである。
【0122】
図14は、本実施の形態に係る自動分析装置における登録パターンの切り替えの際のエラーを検知する動作を示すフローチャートである。
【0123】
ステップ1401では、前回の分析結果を出力する(S1401)。
【0124】
次に、ステップ1402にて新たな分析内容が依頼され(S1402)、ステップ1403にて、依頼された分析の内容に対して必要な登録パターンが選択されているかどうかを判断する(S1403)。登録パターンの選択は、上述の通りオペレーターが操作部118を介して行うことができる。
【0125】
ここで、必要な登録パターンが選択されている場合には、ステップ1404にて、ラック上の検体等の有無を確認するかどうかを決定する(S1404)。確認する場合、後述するステップ1406以降の処理へ進む。確認が不要な場合には、ステップ1411に進み、依頼された分析内容の取り込みまたは入力を行う(S1411)。
【0126】
一方、必要な登録パターンが選択されていない場合には、ステップ1405にて登録パターンを変更し(S1405)、ステップ1406にてラック上における検体等の有無を確認する(S1406)。確認は、具体的には検体ラック102を回転させ、回転方向に沿って内周および外周の設置位置に対し、検出器(図示せず)によって検体ラック102の検体等の有無を判別することで行われる。ここで、検出器の代わりに、または、検出器と併せて設置したバーコードリーダー124で識別情報を読み取り、検体等の有無を判別するのみならず、登録パターンとの合致を判別してもよい。
【0127】
ここで、ラック上に検体等が設置されていなければ、ステップ1411にて依頼された分析内容の取り込みまたは入力を行う(S1411)。一方、ラック上に検体等が設置されている場合には、ステップ1408にて、設置されている検体等が分析対象であるかどうかを判断する(S1408)。この判断は、設置されている検体等が、切り替え前の登録パターンに一致するものであるのか、それとも、切り替え後に選択した登録パターンに一致するものであるのかを確認することで行われる。
【0128】
確認の結果、設置済みの検体が分析対象であった場合には、ステップ1411にて依頼された分析内容の取り込みまたは入力を行う(S1411)。この場合、設置されている検体等は再検査を目的としていることが想定される。一方、分析対象でなかった場合には、ステップ1409にてオペレータに注意喚起する(S1409)。ここで、注意喚起には種々の方法が含まれるが、例えば表示部118c上の画面にその旨を表示し、分析エラーを発生するリスクのある検体等であることを示す等の方法がある。
【0129】
なお、上述の例では、設置済みの検体が分析対象であった場合には注意喚起は行わない場合について説明しており、この場合、分析の効率を高め、スループットをあげることができる。但し、ステップ1407にて検体等の設置が確認された場合に、ステップ1408に進む前にまずはオペレータに注意喚起することも可能である。この場合、オペレータはより慎重に検体等の確認を行うことができる。
【0130】
さらに、上述の例の他に、ステップ1408の確認の結果、設置済みの検体等が分析対象でなかった場合にも、オペレーターに注意喚起をしないように設定することも可能である。例えば、洗浄液や検体希釈液などのように検体ラック102には常時設置されることが望ましいようなものもあるので、このように構成することで、装置は不要な注意喚起をすることを防止することができる。
【0131】
図14のフローチャートに戻り、ステップ1409における注意喚起をうけ、オペレーターは検体等を確認し、残留した検体等が意図せずに残った検体等であれば、ステップ1410にてこれを取り出すよう指示することができる(S1410)。このようにすることで、ラックに設置されている検体等と分析依頼の内容との一致を図ることができる。ここで、ステップ1409を省略し、装置が自動で検体等の取り出し操作を実行することもできる。
【0132】
ステップ1412では、ステップ1411にて取り込みまたは入力された分析内容(必要な検体等と、これに対応する設置位置)に基づいて、検体等をラック上の対応する位置へ設置する(S1412)。設置後、ステップ1413にて分析を実行し(S1413)、ステップ1414にて得られた分析結果を出力する(1414)。
【0133】
ここで、上述した試薬ラック102上の検体等の有無を検出する検出器、もしくはバーコードリーダー124による識別情報の読み取りが、その新たな分析にて使用する設置位置のみを確認対象とすることで、確認時間を短縮することができる。また、それ以外の設置位置に残留する検体等の取り出しにかかる時間と、オペレーターの手間を省略することができる。すなわち、分析のスループットを向上することができる。
【0134】
また、ステップ1407の検体等の有無を確認する動作を開始するタイミングを、ステップ1405における登録パターンの変更の直後以外のタイミングで行うこともできる。例えば、オペレーターが操作部118を通じて分析の再開を指示したのちであって、装置が分析動作を再開する前段階であれば、他のタイミングで、この有無を確認する動作シーケンスを実施するように設定することができる。登録パターンを変更するよりも前に残された検体等を撤去するのが非効率であると考えるようなオペレーターの好みや操作部118の構成に応じて様々な態様に設定することができる。
【0135】
また、前述した検体ラック102を分割した領域を設定可能とする装置構成と、登録パターンを切り替える際に検体ラック102に残留している検体等を検出する装置構成とを組み合わせることもできる。検体ラック102に満遍なく検体等が設置され、分析が実施され、その分析が完了する前、すなわち分析依頼に従い、全ての検体等が検体分注プローブ101で吸引採取される前に、新たに割り込みで分析を行う必要のある検体等が持ち込まれたとする。さらに、その検体等は、現在の登録パターンにはないキャリブレーターであるとし、オペレーターは、割り込みで発生したキャリブレーターの分析をまず完了し、その後、検体ラック102に設置されたままの、分析を完了していない検体等の分析を再開することを所望しているとする。このような状況に効率的に対処するため、検体ラック102は内周と外周に領域を分割し、切り替え前の登録パターンはいずれも、一般検体を中心とした構成としている。予め設置されて検体等の分析は内周から開始され、外周の途中で検体の採取を停止させる。ここで、割り込みのキャリブレーターを分析するため、内周に残された分析を完了した検体等を撤去したのちに、内周の登録パターンのみをこのキャリブレーターに対応する登録パターンに変更する。ここのようにすれば、外周の登録パターンは変更する必要がない。検体ラック102に残された検体と切り替え後の登録パターンとの不一致を検出するための動作が実施されると、内周における不一致を未然に検出すると同時に、外周に残された検体については、これを問題としない。これによれば、内周の検体等を分析したのちに、外周に残された検体等の分析を自動的に再開することができるので、より分析の効率を高めることができる。
【0136】
このように、検体ラック102のある領域における登録パターンが変更された場合に、その領域に設置された検体等を優先的に分析するように設定することができる。これによれば、上述のようにキャリブレーターのみならず、精度管理試料や緊急検体など、検体種にかかわらず優先的に分析することができるため、装置をより効率的に運用することができる。