【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、封止空間を形成する一組の基材と、前記一組の基材の少なくとも一つに形成され前記封止空間と連通する少なくとも一つの貫通孔と、前記貫通孔を封止する封止部材と、を含む封止構造であって、前記貫通孔が形成される前記基材の表面上に、金、銀、パラジウム、白金の少なくともいずれかよりなるバルク状金属からなり、少なくとも前記貫通孔の周辺部を包囲するように形成された下地金属膜を備え、前記封止部材は、前記下地金属膜に接合しつつ前記貫通孔を封止しており、前記封止部材は、前記下地金属膜に接合される、純度99.9質量%以上の金、銀、パラジウム、白金から選択される一種以上の金属粉末の圧縮体からなる封止材料と、前記封止材料に接合される、金、銀、パラジウム、白金の少なくともいずれかよりなるバルク状金属からなる蓋状金属膜と、からなり、前記封止材料は、前記下地金属膜と接する外周側の緻密化領域と、前記貫通孔に接する中心側の多孔質領域からなり、前記緻密化領域は、任意断面における空隙率が面積率で10%以下である、封止構造である。
【0011】
本発明に係る封止構造は、貫通孔を封止するための封止部材として、ろう材を主体とした従来技術に対して、所定の金属粉末の圧縮体を適用するものである。ここで、本願発明で適用する金属粉末の圧縮体に関しては、既に、本願出願人が封止材料としての有用性を示している(特許文献2)。この金属粉末圧縮体は、所定の純度、粒径の金属粉末と溶剤とからなる金属ペーストを塗布し、焼成することで生成する金属粉末焼結体を前駆体として形成される。金属粉末焼結体は、加圧することで緻密化して金属粉末圧縮体となる。加圧による焼結体の緻密化の機構は、金属粉末の塑性変形・結合という物理的変化と、熱的エネルギーによって生じる再結晶という金属組織的な変化の協同によって緻密化が進行する。そして、その様にして形成された金属粉末圧縮体は、高い気密性を発揮することが期待でき、貫通孔を封止部材としての可能性が示唆される。
【0012】
しかし、本発明者等の検討によれば、金属粉末焼結体を直接貫通孔を有する基材に被せて圧縮した場合、基材と接する貫通孔周辺部の焼結体は緻密化が進行するが、貫通孔と連通する焼結体は十分に圧縮されずに多孔質組織を残し、このままでは十分な気密性が確保されないことが分かった。また、緻密化した貫通孔周辺部の焼結体も、それ自体は封止効果を発揮できる程度に緻密化されても、基材との接触界面付近には隙間が残存し、気密性が不足する場合があることも確認された。そこで、本発明者等は、貫通孔を確実に気密封止する構造について検討した結果、金属粉末焼結体の上下に、下地金属膜と蓋状金属膜という2つの金属膜を配した上で金属粉末圧縮体を形成することで、気密性が極めて高い封止部材となり得ることを見出した。
【0013】
金属粉末焼結体という多孔質体を、バルク状の金属膜を接触させながら圧縮すると、緻密化された圧縮体が形成されるだけではなく、金属膜との接触界面において、圧縮前に存在していた微小な隙間を潰して密着性が向上する。従って、金属粉末圧縮体と基材との接触界面付近での密閉性が確保される。また、金属粉末圧縮体の貫通孔と連通する領域にはボイドが包含されているものの、その上方に密着させたバルク状の金属膜(蓋状金属膜)が強固な蓋体として気密性を発揮する。このように本発明は、金属粉末焼結体の上下に2つのバルク状金属膜(下地金属膜と蓋状金属膜)を配し、それらの間で形成された金属粉末圧縮体を主要構成とすることを特徴とした封止構造である。
【0014】
以下、本発明に係る封止構造の各構成について詳細に説明する。尚、本発明において、封止空間を形成する一組の基材とは、気密封止パッケージを構成するベースとキャップとを組み合わせた独立したパッケージの他、気密封止パッケージを同時に複数形成するため、封止空間が複数設定された基板の組み合わせも含む概念である。本発明は、ウエハレベルパッケージにも応用可能な技術だからである。一組の基材とは、2以上の基材の組み合わせの意義である。
【0015】
また、本発明は、封止空間に連通する貫通孔を閉塞・封止するための封止構造に関するものであり、基材に形成された貫通孔の存在が前提となる。貫通孔は、封止空間に少なくとも一つ設定されていれば良く、その位置、寸法、及び形状は限定されない。更に、封止空間を形成する一組の基材に対して、どの基材に設定されるかも限定されていない。
【0016】
本発明に係る封止構造は、少なくとも貫通孔を包囲するように設けられた下地金属膜に、所定の金属粉末の圧縮体からなる封止材料と封止材料に接合される蓋状金属膜とからなる封止部材によって構成される。下地金属膜は、封止材料の基材に対する密着性を確保し、基材との接合界面における気密性を向上させるために設置される。この下地金属膜は、金、銀、パラジウム、白金の少なくともいずれかよりなる。封止材料である金属粉末と相互に熱拡散して密着状態を発現させるためにこれらの金属が適用される。下地金属膜の純度は、高純度であることが好ましいが、金属粉末圧縮体ほどの高純度でなくとも良い。好ましい純度は、99質量%以上とする。下地金属膜は、より好ましくは、貫通電極を構成する金属粉末の金属と同材質の金属が好ましい。下地金属膜は、バルク体の金属からなり、メッキ(電解メッキ、無電解メッキ)、スパッタリング、蒸着、CVD法等により形成されたものが好ましい。尚、本発明において、バルク体とは、本発明の金属粉末圧縮体及びその前駆体である金属粉末焼結体とを区別するための状態を意味し、いわゆるバルク(塊)状金属である。溶解・鋳造や析出法等で製造された金属であり、当該金属の密度に対して0.97倍以上の緻密質の金属を意図するものである。
【0017】
下地金属膜は、少なくとも貫通孔の周辺部を包囲するようになっていれば良く、貫通孔の外縁に添って枠状・リング状の状態のものでも良い。この場合、下地金属膜の幅は、接合される封止材料と同幅以上とするのが好ましい。また、下地金属膜は基材全面に形成されていても良い。
【0018】
下地金属膜の厚さは、0.01μm以上10μm以下とするのが好ましい。基材への密着性確保のための最低限の厚さと、デバイスの小型化に対応するための上限を示す範囲である。
【0019】
また、下地金属膜は、基材表面に直接成膜されていても良いが、他の金属膜を介して成膜されたものであっても良い。他の金属膜とは、下地金属膜の基材に対する接合性を向上させるための金属膜である。他の金属膜の材質としては、チタン、クロム、タングステン、チタン−タングステン合金、ニッケル、白金、パラジウムのいずれかよりなるものが好ましい。これら他の金属膜も、メッキ、スパッタリング、蒸着、CVD法等により形成されたものが好ましく、0.005μm以上10μm以下の厚さのものが好ましい。
【0020】
以上説明した下地金属膜に接合される封止部材は、封止材料と蓋状金属膜とからなる。封止材料は、純度99.9質量%以上の金、銀、パラジウム、白金から選択される一種以上の金属粉末の圧縮体からなる。この金属粉末圧縮体は、平均粒径が0.01μm以上1.0μm以下である金、銀、パラジウム、白金から選択される一種以上の金属粉末が焼結してなる焼結体を圧縮することで形成されるものが好ましい。
【0021】
封止材料は、貫通孔を閉塞し封止空間を気密封止するためのものであるので、その横断面積は当然に貫通孔の横断面積より大きくなる。封止材料の横断面の面積は、好ましくは貫通孔の横断面の面積の1.2倍以上6倍以下とする。また、封止材料の厚さは、0.1μm以上10μm以下のものが好ましい。尚、ここでの横断面積とは、貫通孔の径方向の面積である。
【0022】
そして、本発明に係る封止構造では、封止材料に金、銀、パラジウム、白金の少なくともいずれかよりなるバルク状金属からなる蓋状金属膜が接合されている。蓋状金属膜により封止材料の上方の気密性が確保されている。前述の通り、封止材料は、圧縮後も貫通孔と連通する中心部において多孔質構造のままとなっている。蓋状金属膜はこの多孔質部分の一端を封止することで、貫通孔の封止を完成させるための部材(蓋)となっている。
【0023】
蓋状金属膜も、封止材料である金属粉末と良好な密着状態を発現させるために金、銀、パラジウム、白金の少なくともいずれかよりなる金属が適用される。その純度は、高純度であることが好ましいが、金属粉末圧縮体ほどの高純度でなくとも良い。好ましい純度は、99質量%以上とする。蓋状金属膜も、封止材料を構成する金属粉末の金属と同材質の金属が好ましく、バルク体の金属からなり、メッキ(電解メッキ、無電解メッキ)、スパッタリング、蒸着、CVD法等により形成されたものが好ましい。蓋状金属膜の厚さは、0.01μm以上10μm以下であるものが好ましい。
【0024】
そして、本発明に係る封止構造において、金属粉末圧縮体からなる封止材料は、下地金属膜に接触する外周側の領域と、貫通孔に接触する中心側の領域で緻密性が相違している。つまり、封止材料は、貫通孔と略等しい断面形状の筒体と、その外周側面を覆う筒体の2重構造となっている。本発明では、前者を多孔質領域、後者を緻密化領域と称する。多孔質領域では圧縮体の前駆体である金属粉末焼結体が包含していた空隙(ボイド)が比較的多く残留している。一方、緻密化領域では、空隙の殆どが消失した緻密な構造を有する。このような緻密性の相違が生じるのは、封止材料の形成過程において、外周側の緻密化領域は下地金属膜と蓋状金属膜の双方に挟まれた状態で加圧を受けているからである。上下でバルク状金属膜に接触している部分の金属粉末は、上下方向から加圧され均一に塑性変形・再結晶化して緻密性を増す。一方、貫通孔の上方に位置する部分では、上方の蓋状金属膜からの加圧のみを受けて形成さているので、焼結体のボイドが残留した状態となっている。
【0025】
このように、緻密性の相違する2つの領域からなる封止材料において、本発明者等の検討によれば、緻密化領域においては、任意断面において測定される空隙の割合(空隙率)が面積率で10%以下とすることで十分な封止作用を発揮する。金属粉末圧縮体において、気密封止作用を発揮する上で空隙の存在が忌避されるのは当然である。もっとも、本発明者等によれば、その割合は必ずしも0%或いはそれに近似できるほどになっている必要はない。重要なのは、空隙が相互に繋がり連続的な空隙が形成されているか否かにある。本発明者等の検討によれば、本発明で適用する金属粉末焼結体から形成される圧縮体においては、封止特性維持の観点から許容される空隙率は面積率で最大で10%であり、それを超えると空隙の連結を確実に抑制できず、封止材料としての機能が低下する。この空隙率は、5%以下がより好ましい。尚、空隙率の下限値については、当然に0%が好ましいが、封止工程の効率及び実用的観点から、下限値としては0.1%としても良い。
【0026】
尚、緻密化領域の空隙率に対して、封止材料の中心部の多孔質領域の空隙率に関する規定の必要はない。多孔質領域に封止特性の発揮は期待されていないからである。但し、本発明で上記の緻密化領域が形成されたとき、多孔質領域の空隙率は20%以上30%以下となっていることが多い。参考までに、前駆体である金属粉末焼結体の空隙率は、30%以上40%以下であるので、この多孔質領域においてもある程度の緻密化は生じているといえる。
【0027】
以上の空隙率の測定については、各領域について断面観察を行い、その組織写真を基に適宜に空隙の割合を測定すれば良い。この場合の断面観察については、任意の部位で任意の方向から観察すれば良い。空隙率算出には、画像解析ソフトウェア等の計算機ソフトウェアを使用しても良い。
【0028】
次に、本発明に係る封止構造を適用したパッケージの気密封止方法について説明する。本発明では、貫通孔が形成された基材に下地金属膜を成膜すると共に、2層構造(封止材料/蓋状金属膜)の封止部材を接合し、貫通孔を閉塞して封止空間を気密封止する。封止部材の中心的要素である封止材料は、金属粉末焼結体を圧縮して形成される。そして、封止材料の前駆体である金属粉末焼結体は、所定の粒径の金属粉末が溶剤に分散した金属ペーストを焼結させることで形成できる。従って、基材の貫通孔に下地金属膜を成膜して金属ペーストを塗布・焼結し、更に蓋状金属膜を成膜した後に加圧することで本発明に係る封止構造を形成することができる。但し、ウエハレベルパッケージのような一枚の基材に複数の封止空間が形成されている場合、個々の貫通孔に順次封止構造を形成するのでは効率が良いとは言えない。
【0029】
そこで本発明者等は、封止材料の前駆体である金属粉末焼結体の特性を活かし、複数の貫通孔に対して同時に封止することができる方法を見出している。即ち、本発明に係る封止方法は、封止領域を形成する基材の貫通孔の位置に対応する位置に、蓋状金属膜と純度が99.9質量%以上であり平均粒径が0.01μm以上1.0μm以下である金、銀、パラジウム、白金から選択される一種以上の金属粉末が焼結してなる金属粉末焼結体とを備える転写基板を用意する工程と、貫通孔が形成された前記基材の表面に、少なくとも貫通孔の周辺部を包囲するように下地金属膜を形成する工程と、前記金属粉末焼結体が前記下地金属膜に接しつつ、前記貫通孔を封止するように、前記転写基板と前記基材とを対向させて重ねる工程と、前記転写用基板を押圧し、前記封金属粉末焼結体から封止材料を形成すると共に前記下地金属に接合させる工程と、を含む方法である。
【0030】
上記した本発明に係る封止方法では、気密封止の対象となる基材とは別部材である基板(転写基板)を用意し、ここに封止材料の前駆体となる金属粉末焼結体を予め形成しておく。そして、封止作業の際に転写基板を基材に押し当てて加圧することで、金属粉末焼結体を圧縮しつつ形成された封止材料を基材に転写する。この転写基板を適用する封止方法は、金属粉末焼結体が圧縮されたとき、封止対象となる基材に形成された下地金属膜に対して強い接合力が生じることを利用したプロセスである。そして、転写基板による封止方法には、予め転写基板に蓋状金属膜と金属粉末焼結体を複数形成することで、貫通孔が複数ある基材の封止を1回の転写操作で実行できるという利点がある。以下、本発明に係る転写基板を利用した封止方法について説明する。
【0031】
封止方法において用意する転写基板は、基板と、封止領域を形成する基材の貫通孔の位置に対応する位置に形成され突起部と、少なくとも前記突起部の上に形成され、金、銀、パラジウム、白金の少なくともいずれかよりなるバルク状金属からなる蓋状金属膜と、前記蓋状金属膜の上に形成され、純度が99.9質量%以上であり平均粒径が0.01μm以上1.0μm以下である金、銀、パラジウム、白金から選択される一種以上の金属粉末が焼結してなる焼結体からなる封止材料と、を含む。
【0032】
そして、本発明で使用する転写基板は、蓋状金属膜及び金属粉末焼結体に加えて、基板の突起部と蓋状金属膜との間に、酸化皮膜を含む転写膜を備えている。この転写膜は、基材から転写されるべき蓋状金属膜と基板との結合力を調整するための金属膜である。即ち、転写基板の基板材質としては、シリコン、ガラス、セラミックス等が適用できるが、蓋状金属膜である金、銀、パラジウム、白金等の貴金属薄膜はこれら基板の構成材料との結合力が弱すぎる。そのため、基板に直接蓋状金属膜を形成した場合、容易に剥離する可能性がある。そこで、基板と貴金属薄膜の双方に対して接合性の良いクロム、チタン、タングステン、及びこれらの金属の合金の薄膜を形成して蓋状金属膜の剥離を抑制する。但し、クロムやチタン等の金属薄膜は、貴金属薄膜と密着性が良すぎるので、それらを直接接触させると、転写基板としての機能を損ねる。蓋状金属膜と封止材料は、封止作業の際には貫通孔を有する基材側に移動(転写)されなければならないからである。そこで、蓋状金属膜との密着性を調整するため、クロム等の金属膜の表面に酸化皮膜を形成した状態のものを転写膜とした。
【0033】
以上説明した転写基板は、基板上の任意の位置に突起部が形成され、その上に転写膜、蓋状金属膜、金属粉末焼結体を順次積層させることで製造できる。
【0034】
転写基板の基板は、上記の通り、シリコン、ガラス、セラミックス等からなる板材である。この基板は、封止対象となる基材の貫通孔位置に対応する位置に突起部を有する。突起部を形成してその上に封止材料等を形成することで、後の転写工程の際に当該部位で優先的な加圧を生じさせて効果的に封止材料等の転写がなされる。また転写基板の位置決めもし易くなる。
【0035】
突起部は、その断面積が対応する貫通孔の断面積の1.2倍以上6倍以下となっているものが好ましい。突起部は封止材料を貫通孔に転写させるための構造部材であり、封止材料とほぼ同じ寸法になるからである。また、突起部の高さは、1μm以上20μm以下となっているのが好ましい。突起部の形成に当たっては、基板にメッキ等で突起を形成しても良いが、基板をエッチング加工(ドライエッチング、ウェットエッチング)或いは研削加工等をして基板と一体的な突起部としても良い。
【0036】
転写膜は、クロム、チタン、タングステン、及びこれらの金属の合金からなる薄膜であり、メッキ(電解メッキ、無電解メッキ)、スパッタリング、蒸着、CVD法等により形成できる。そして、クロム等の金属膜を成膜後、一旦、基板を大気中或いは酸素雰囲気中の酸化雰囲気に暴露して表面に酸化皮膜を形成する。この酸化条件は、室温から200℃で1時間〜24時間程度の大気暴露とするのが好ましい。転写膜は、厚さ0.001μm以上0.1μm以下が好ましく、そのうち、酸化皮膜の厚さは0.0001μm以上0.01μm以下であるのが好ましい。
【0037】
転写膜形成後、蓋状金属膜を形成する。上記の通り、蓋状金属膜は純度が99.9質量%以上の金、銀、パラジウム、白金のバルク体の金属からなる。メッキ(電解メッキ、無電解メッキ)、スパッタリング、蒸着、CVD法等により形成するのが好ましい。蓋状金属膜の厚さは、0.01μm以上10μm以下であるものが好ましい。
【0038】
金属粉末焼結体は、純度99.9質量%以上であり平均粒径が0.01μm以上1.0μm以下である金、銀、パラジウム、白金から選択される一種以上の金属粉末が焼結したものである。この金属粉末焼結体は、上記純度及び粒径の金属粉末と有機溶剤とからなる金属ペーストを焼成することで形成される。そして、構成する金属粉末のバルク金属の密度に対する比(焼結体/バルク金属)が0.6〜0.7程度の多孔質体である。金属粉末の純度を99.9%以上としているのは、焼結体及び圧縮体にするときに、金属粒子の塑性変形と再結晶化が促進されることを考慮したからである。また、金属粉末の平均粒径を0.01μm以上1.0μm以下とするのは、0.01μm未満の粒径では、金属ペースト中で凝集しやすくなり、均一塗布が困難となるからである。1.0μmを超える粒径の金属粉では、気密封止に必要な緻密な圧縮体を形成し難くなるからである。
【0039】
金属ペーストで用いる有機溶剤としては、エステルアルコール、ターピネオール、パインオイル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、カルビトール、イソボルニルシクロヘキサノール(製品名としてテルソルブMTPH: 日本テルペン化学株式会社製等がある)、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(製品名として日香MARS: 日本香料薬品株式会社製等がある)、ジヒドロ・ターピネオール(製品名として日香MHD: 日本香料薬品株式会社製等がある)が好ましい。尚、金属ペーストは、添加剤を含んでも良い。この添加剤としては、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキッド樹脂から選択される一種以上がある。例えば、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル重合体を、セルロース系樹脂としては、エチルセルロースを、アルキッド樹脂としては、無水フタル酸樹脂を、それぞれ挙げることができる。これらの添加剤は、金属ペースト中での金属粉末の凝集を抑制する作用を有し、金属ペーストを均質なものとする。添加剤の添加量は、金属ペーストに対して2質量%以下の割合とすることが好ましい。安定した凝集抑制効果を維持しつつ、金属粉含有量を貫通孔充填に十分な範囲内とすることができる。金属ペーストの金属粉末と有機溶剤との配合割合については、金属粉末を80質量%以上99質量%以下とし、有機溶剤を1質量%以上20質量%以下として配合するのが好ましい。
【0040】
転写膜と蓋状金属膜が形成された基板に金属ペーストを塗布して焼成することで、金属粉末焼結体が形成される。金属ペーストの塗布厚さについては、金属粉末の配合割合にもよるが、その後の焼結と加圧による緻密化を考慮して、1μm以上20μm以下の厚さで塗布するのが好ましい。尚、基板への金属ペーストの塗布方法については、特に限定はない。
【0041】
金属ペースト塗布後、金属粉末焼結体を生成するための加熱温度は、150℃以上300℃以下とするのが好ましい。150℃未満では、金属粉末を十分に焼結できないからであり、300℃を超えると、焼結が過度に進行し、金属粉末間のネッキングの進行により硬くなり過ぎる。また、焼成時の雰囲気は、大気、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)、1%以上5%以下の水素を混合した不活性ガス等が選択される。更に焼成時間は30分以上8時間以下とするのが好ましい。焼結時間が長すぎると、焼結が過度に進行し、金属粉末間のネッキングの進行により硬くなり過ぎるといった問題が生じるからである。この金属ペーストの焼成により金属粉末は焼結固化され金属粉末焼結体となる。この焼成後の金属粉末焼結体は、バルク状金属に対して密度が0.6倍以上0.7倍以下の多孔質体となっている。そして、以上説明した工程により、蓋状金属膜及び封止材料を形成・転写するための転写基板を得る。
【0042】
尚、転写基板の構成について、剥離膜、蓋状金属膜、金属粉末焼結体(金属ペースト)は、少なくとも基板の突起部の上に形成されていれば良い。転写すべき封止材料等は、少なくとも突起部の上にあれば良いからである。但し、突起部周りの基板面に金属粉圧焼結体等が形成されていても良い。後述するように、金属粉末焼結体が緻密化し圧縮体となる範囲は、蓋状金属膜と下地金属膜との間の突起部先端領域に限定されるので、突起部周りの基板面に金属粉圧焼結体等があっても問題はない。
【0043】
次に、本発明に係る転写基板を用いた封止方法について説明する。この封止方法では、以上のようにして製造された転写基板を作成又は入手する一方で、封止対象となる基材について適宜に封止空間を形成する。基材の意義については、上記の通り、ベースとキャップとからなる単一のパッケージでも良いし、複数の封止空間を有するウエハの組み合わせでも良い。いずれの形態であって、基材を組み合わせて封止空間を形成し、その内部を真空引きする。本発明は、封止空間を形成するための基材の接合方法としては、ろう付、陽極接合、ガラス融着、金属ペースト接合等が挙げられるが限定されることはない。また、封止空間を真空引きする場合、その真空度・清浄度についても全く限定しない。封止空間の真空度は、内部の素子の性能や要求精度により左右される。
【0044】
そして、封止空間を形成した基材について、少なくとも貫通孔を包囲する下地金属膜を形成する。上記の通り、下地金属膜は、金、銀、パラジウム、白金の少なくともいずれかよりなるバルク状金属からなる。下地金属膜は、メッキ(電解メッキ、無電解メッキ)、スパッタリング、蒸着、CVD法等により形成するのが好ましい。下地金属膜の厚さは、0.01μm以上10μm以下であるものが好ましい。下地金属膜は、貫通孔を有する基材に全面的に形成しても良いし、適宜にマスキングを行って貫通孔の周辺部のみに枠状・リング状に形成しても良い。尚、下地金属膜の形成は、基材に封止空間を形成する前に行っても良い。
【0045】
以上のようにして、封止空間の形成及び下地金属膜の形成がなされた基材に、上記の転写基板を押し当てて加圧することで、基材上の下地金属膜に金属粉末圧縮体からなる封止材料と蓋状金属が接合・転写されて本発明の封止構造が形成される。この封止材料の形成プロセスでは、下地金属膜と蓋状金属膜に挟まれた金属粉末焼結体が、それら2つのバルク状金属膜に密着した状態で圧縮され緻密化する。金属粉末焼結体は、緻密化すると同時に下地金属膜に強固に接合する。この転写工程において、転写基板の加圧条件は80MPa以上200MPa以下とするのが好ましい。
【0046】
また、封止材料を転写するための加圧は、転写基板及び基材の少なくともいずれかを加熱して行うのが好ましい。金属粉末の再結晶を促進し、緻密な封止材料を速やかに形成するためである。この加熱温度は、80℃以上300℃以下とするのが好ましい。300℃以下の比較的低温での封止が可能であるのは、金属粉末焼結体という低温でも緻密化が可能な封止材料を適用したことに加えて、下地金属膜及び蓋状金属膜のバルク状金属膜を適宜に配したことによる。また、転写基板に酸化皮膜を有する転写膜を形成していることも、封止材料が適格に転写する作用を有する。
【0047】
封止材料を転写させた後、転写基板を除去することで、本発明に係る封止構造が形成され、封止空間の気密封止が完了する。本発明では、転写基板の製造過程で金属粉末焼結体からガス成分(有機溶剤)が除去されているので、封止材料を転写している最中に封止空間が汚染されることはなく、封止直前の真空度を維持することができる。
【0048】
尚、使用済みの転写基板は、基板上に転写膜や場合により金属粉末が残留した状態にある。この使用済み転写基板は、適宜に洗浄を行い、再度、蓋状金属膜等を形成することで再使用可能である。