特許第6348776号(P6348776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348776肌質改善経口組成物、食品および経口医薬品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348776
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】肌質改善経口組成物、食品および経口医薬品
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/728 20060101AFI20180618BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20180618BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20180618BHJP
【FI】
   A61K31/728
   A61P17/00
   A61P43/00 105
   A61P17/10
   A23L33/125
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-115077(P2014-115077)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-13852(P2015-13852A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-118162(P2013-118162)
(32)【優先日】2013年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311012158
【氏名又は名称】キッコーマンバイオケミファ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 誠
(72)【発明者】
【氏名】松井 圭子
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−051877(JP,A)
【文献】 特開平10−165138(JP,A)
【文献】 特開2007−297460(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099830(WO,A1)
【文献】 特開2006−265287(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116450(WO,A1)
【文献】 特表2011−522831(JP,A)
【文献】 特表2011−513481(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047779(WO,A1)
【文献】 特開2010−116388(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/144613(WO,A1)
【文献】 川田 千夏 Chinatsu Kawada,UV照射ヘアレスマウスへのヒアルロン酸投与による皮膚状態改善効果 Oral Intake of Hyaluronic Acid improve the Skin Condition in UV-irradiated hairless mice,日本農芸化学会大会講演要旨集(CD−ROM),公益社団法人日本農芸化学会,2012年
【文献】 Aesthetic Dermatology,2002年,Vol.12,pp.109-120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/728
A23L 33/125
A61P 17/00
A61P 17/10
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸を含有し、肌の老化防止用であるとともに肌のニキビ発生抑制用であることを特徴とする肌質改善経口組成物。
【請求項2】
さらに、ヒアルロン酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項に記載の肌質改善経口組成物。
【請求項3】
ヒアルロン酸を含有し、肌の老化防止用であるとともに肌のニキビ発生抑制用であることを特徴とする食品。
【請求項4】
ヒアルロン酸を含有し、肌の老化防止用であるとともに肌のニキビ発生抑制用であることを特徴とする経口医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌質改善経口組成物、食品および経口医薬品に係り、特に、新規な用途を有する肌質改善経口組成物、食品および経口医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種であり、生体内で合成される物質であるとともに、保水力に非常に優れた物質として知られている。しかし、生体内におけるヒアルロン酸は、加齢とともに徐々に減少し、その結果、肌の保水力の低下を招いてしまう。
【0003】
このため、生体内でのヒアルロン酸の減少を補うべく、ヒアルロン酸を含有した健康食品やサプリメントが数多く市場に出回っている。
そして、市場価値を有するヒアルロン酸については、多方面にわたって研究が進められており、様々な研究成果が報告されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、平均分子量が20万以上であって、平均粒子径が50〜500μmであるヒアルロン酸および/またはその塩を含有する経口用肌改善剤が開示されている。
また、特許文献2には、γ−アミノ酪酸と、ヒアルロン酸および/またはその塩とを有効成分として含有する経口用肌改善剤が開示されている。
さらに、特許文献3には、平均分子量が20万以上であって、平均粒子径が50μm未満であるヒアルロン酸および/またはその塩からなる粉末を含有するハードカプセルや錠剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−63526号公報
【特許文献2】特開2010−53120号公報
【特許文献3】特開2011−79748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1ないし特許文献3に開示されている発明は、「ヒアルロン酸および/またはその塩」との記載からも明らかなように、酸(acid)の状態のヒアルロン酸(以下、適宜、単に「ヒアルロン酸」という)と、塩(salt)の状態のヒアルロン酸塩(以下、適宜、単に「ヒアルロン酸塩」という)とを、一纏めにして考えてしまっている。
つまり、特許文献1ないし特許文献3に開示されている発明は、「ヒアルロン酸および/またはその塩」が一定の効果を発揮するというものであるが、この一定の効果を発揮しているのは、酸の状態のヒアルロン酸であるのか、塩の状態のヒアルロン酸塩であるのか、について不明確な状況であった。
【0007】
このような状況において、本発明者らは、酸(acid)の状態のヒアルロン酸と塩(salt)の状態のヒアルロン酸塩とを、一纏めに考えることなく、個別に詳細な検討を行うことにより、これまでに知られていなかった新規な用途(効果)を見出すことができるのではないかとの着想のもと、鋭意研究を行った。
【0008】
そこで、本発明は、酸(acid)の状態のヒアルロン酸の新規な用途を見出し、当該新規な用途の肌質改善経口組成物、食品および経口医薬品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)ヒアルロン酸を含有し、肌の老化防止用であるとともに肌のニキビ発生抑制用であることを特徴とする肌質改善経口組成物。
(2)さらに、ヒアルロン酸ナトリウムを含有することを特徴とする前記に記載の肌質改善経口組成物。
(3)ヒアルロン酸を含有し、肌の老化防止用であるとともに肌のニキビ発生抑制用であることを特徴とする食品。
(4)ヒアルロン酸を含有し、肌の老化防止用であるとともに肌のニキビ発生抑制用であることを特徴とする経口医薬品。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る肌質改善経口組成物は、ヒアルロン酸を含有することにより、肌のシワを改善することができ、新規な用途である老化防止用の肌質改善経口組成物として好適に用いることができる。
また、本発明に係る肌質改善経口組成物は、ヒアルロン酸を含有することにより、肌のニキビの発生を抑制させることができ、新規な用途である炎症発生抑制用の肌質改善経口組成物として好適に用いることができる。
加えて、本発明に係る肌質改善経口組成物は、ヒアルロン酸を含有することにより、肌の弾力を向上させることができ、新規な用途である弾力向上用の肌質改善経口組成物として好適に用いることができる。
【0011】
そして、本発明者らは、「ヒアルロン酸および/またはその塩」の中でも、ヒアルロン酸が前記効果(老化防止、炎症発生抑制、弾力向上)を奏することを明らかにしている。よって、本発明に係る肌質改善経口組成物によると、従来の「ヒアルロン酸および/またはその塩」を含有する組成物と比較し、ヒアルロン酸の含有量が多い肌質改善経口組成物、つまり、前記効果(老化防止、炎症発生抑制、弾力向上)を確実に発揮し得る肌質改善経口組成物を提供することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る肌質改善経口組成物は、ヒアルロン酸の平均分子量が0.1万〜10万であることにより、前記効果(老化防止、炎症発生抑制、弾力向上)をさらに確実なものとすることができる。
【0013】
加えて、本発明に係る肌質改善経口組成物は、肌の乾燥抑制や弾力向上といった効果を発揮するヒアルロン酸ナトリウムをさらに含有することにより、ユーザーの要望に合わせるように、肌質改善経口組成物を設計することができる。例えば、肌の老化防止または炎症発生抑制という効果を求めるユーザーには、「ヒアルロン酸ナトリウム」の含有量に対して「ヒアルロン酸」の含有量の多い組成物を提供し、肌の乾燥抑制または弾力向上という効果を求めるユーザーには、「ヒアルロン酸」の含有量に対して「ヒアルロン酸ナトリウム」の含有量の多い組成物を提供するといったことができる。
【0014】
本発明に係る食品や経口医薬品は、前記の肌質改善経口組成物を含有することから、肌の老化防止効果、炎症発生抑制効果、弾力向上効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】左頬における皮膚隆起力学的特性(R2)の変化量を示す測定データである。
図2】右目尻における最大シワ平均深さ(180度:変化量)を示す測定データである。
図3】左目尻における平均シワ面積率(平均:変化量)を示す測定データである。
図4】左目尻における最大シワ面積率(平均:変化量)を示す測定データである。
図5】左目尻における最大シワ最大深さ(180度:変化量)を示す測定データである。
図6】ポルフィリンの変化量を示す測定データである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る肌質改善組成物、食品および医薬品を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0017】
≪肌質改善組成物≫
本実施形態に係る肌質改善組成物(以下、適宜「組成物」という)は、ヒアルロン酸を含有するとともに、肌の老化防止用であることを特徴とし、さらに肌の炎症発生抑制用、弾力向上用であることが好ましい。
また、本実施形態に係る組成物は、含有するヒアルロン酸の平均分子量が所定範囲であることが好ましい。
以下、本実施形態に係る組成物について、まず、用途について説明し、その後、組成物の構成を説明する。
【0018】
[用途]
本実施形態に係る組成物の新規な用途としては、次に示す用途が存在する。
(肌の老化防止用)
肌の老化防止用という用途は、詳細には、肌のシワの増加を抑制またはシワの減少を促進させることにより外見上の肌の老化を防止するという用途(言い換えると、肌のシワ改善用という用途)である。
本実施形態に係る組成物が肌のシワを改善させる詳細なメカニズムについては、明確に解明されていないが、後記のとおりレプリカ画像解析による実験結果に基づいて、ヒアルロン酸が肌のシワを改善させていることがわかる。
【0019】
(肌の炎症発生抑制用)
肌の炎症発生抑制用という用途は、詳細には、肌の炎症疾患の1つであるニキビの発生原因となるポルフィリンの増加を抑制するという用途(言い換えると、肌のニキビ発生抑制用)である。
本実施形態に係る組成物が肌のニキビの発生を抑制させる詳細なメカニズムについては、明確に解明されていないが、後記のとおりVISIAの解析結果に基づいて、ヒアルロン酸がニキビの発生を抑制させていることがわかる。
【0020】
(肌の弾力向上用)
肌の弾力向上用という用途は、詳細には、加齢とともに衰える皮膚の弾力を向上させる
という用途である。
本実施形態に係る組成物が肌の弾力を向上させる詳細なメカニズムについては、明確に解明されていないが、後記のとおりCutometer MPA580による実験結果に基づいて、ヒアルロン酸が肌の弾力を向上させていることがわかる。
【0021】
[組成物の構成]
本実施形態に係る組成物は、ヒアルロン酸を含んで構成される。
(ヒアルロン酸)
ヒアルロン酸とは、酸(acid)の状態のヒアルロン酸であり、肌の老化防止、炎症発生抑制、弾力向上用に寄与する物質である。
そして、ヒアルロン酸は、以下の構造式により表わされる。
【0022】
【化1】
【0023】
また、本実施形態に係る組成物に含まれるヒアルロン酸は、平均分子量が0.1万〜10万であることが好ましい。ヒアルロン酸の平均分子量が0.1万〜10万であることにより、前記の効果(老化防止、炎症発生抑制、弾力向上用)が確実に発揮されることとなる。
なお、ヒアルロン酸の平均分子量については、後記の酸処理工程の時間、温度により制御することができる。また、ヒアルロン酸の平均分子量は、例えば、第15改正追補日本薬局方の「精製ヒアルロン酸ナトリウム」に記載されている「粘度」の項に従い極限粘度を求め、Laurentの式(式1)を用いて算出することができる。
(Laurent et al., Biochim Biophys Acta.196
0 Aug 26;42:476−485.)
(式1):極限粘度(dL/g)=0.00036×M0.78
【0024】
(その他の含有物)
本実施形態に係る組成物は、前記したヒアルロン酸以外にも、ヒアルロン酸ナトリウム(以下、適宜「ヒアルロン酸Na」という)を含有してもよい。
ヒアルロン酸Naとは、ヒアルロン酸塩の一種であり、肌の乾燥抑制や弾力向上に寄与する物質である。なお、ヒアルロン酸Naは、平均分子量が11万〜75万であることが好ましい。
そして、ヒアルロン酸Naは、ヒアルロン酸のカルボキシ基(−COOH)のHがNaにより置換された以下の構造式により表される。なお、ヒアルロン酸Naは、以下の構造式がn個連結したものであり、Naによる置換は、85%以上であることが好ましく、100%がさらに好ましい。
【0025】
【化2】
【0026】
また、本実施形態に係る組成物は、食品や医薬品等の素材(材料)として好適に用いる形態とするため、例えば、粉末状、顆粒状、粒状、固形状、カプセル型、または、液体状とすることができる。
なお、本実施形態に係る組成物を粉末状等の固体状にする場合は、アミノ酸、核酸、コラーゲン、アセチルグルコサミン等の他、デキストリン、セルロース、ラクトース等の賦形剤、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、アスコルビン酸またはその塩等のビタミン類、鉄、カルシウム等のミネラル、その他、潤沢剤、香料等を含有させてもよく、液体状にする場合は、さらに、アルギン酸またはその塩、キサンタンガム等の増粘剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、炭酸水素ナトリウムやクエン酸等のpH調整剤を含有させてもよい。
【0027】
次に、前記した本実施形態に係る肌質改善組成物を含有する食品について説明する。
≪食品≫
本実施形態に係る食品とは、前記した組成物を含有する食品であり、肌の老化防止用、肌の炎症発生抑制用または肌の弾力向上用の健康食品として利用することができる。
そして、本実施形態に係る食品とは、例えば、菓子、パン、牛乳、各種飲料、うどん、そば、パスタ、米飯、調味料、香辛料、惣菜、油脂含有食品、酒類、清涼飲料等が挙げられる。なお、本実施形態に係る食品は、前記した食品の種類に応じて、当業者に公知の各種成分を配合して構成すればよい。
【0028】
次に、前記した本実施形態に係る肌質改善組成物を有効成分として含有する医薬品について説明する。
≪医薬品≫
本実施形態に係る医薬品とは、前記した組成物を有効成分として含有する医薬品であり、肌の老化防止用、肌の炎症発生抑制用または肌の弾力向上用の医薬品(医薬部外品も含む)として利用することができる。
そして、本実施形態に係る医薬品とは、薬剤としての操作性、あるいは生体に投与された際の吸収性等を向上させるため、前記した組成物を、常法に従って適当な賦形剤等の医薬品用担体と組合せて製剤化することが好ましい。
また、本実施形態に係る医薬品は、種々の剤型での投与が可能であり、例えば、経口投与剤としては、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、ドライシロップ剤等が挙げられる。
【0029】
次に、前記した本実施形態に係る肌質改善組成物、食品および医薬品の製造方法について説明する。本発明の肌質改善組成物に含有されるヒアルロン酸は、市販品を使用することができるが、例えば、以下の製造例に従って製造することもできる。
≪製造例≫
本実施形態に係る肌質改善組成物の製造方法は、微生物培養工程と、分離工程と、精製工程と、酸処理工程を含むものである。
【0030】
[微生物培養工程]
微生物培養工程とは、所定の微生物を培養することにより、微生物にヒアルロン酸を生産させる工程である。
この微生物培養工程で用いる微生物については、ヒアルロン酸生産能を有するものであれば特に限定されないが、ストレプトコッカス属などを好適に用いることができる。
なお、微生物培養工程で用いる培養液の組成、培養液の滅菌条件、培養条件(温度、時間等)は、公知の条件で行えばよい。
【0031】
[分離工程]
分離工程とは、培養液から微生物等を分離する工程である。
微生物等を分離する方法は、特に限定されず、ろ過、遠心分離等の方法で行えばよい。
【0032】
[精製工程]
精製工程とは、分離して得られたヒアルロン酸溶液をアルコールまたは含水アルコールで沈殿、分離する工程である。
精製する方法は、特に限定されず、分離工程後の培養液に食塩等を添加してアルコールまたは含水アルコールを添加することによりヒアルロン酸Na(ヒアルロン酸塩)を沈殿させることにより行えばよい。
【0033】
[酸処理工程]
酸処理工程とは、精製工程で得られたヒアルロン酸Naへ塩酸等を含むアルコールを添加してヒアルロン酸を得る工程である。
酸処理する方法は、特に限定されず、ヒアルロン酸Naに塩酸等を含むアルコールまたは含水アルコールを添加することにより行えばよく、その後、洗浄、乾燥することでヒアルロン酸を得ることができる。
【0034】
なお、本実施形態に係る食品および医薬品の製造方法については、前記の方法によって製造した肌質改善組成物を、食品や医薬品の材料に混合させ、その後は、当業者に公知の食品や医薬品の製造方法によって製造すればよい。
【0035】
以上のとおり、本発明者らは、「ヒアルロン酸および/またはその塩」の中でも「ヒアルロン酸」が、肌の老化防止、炎症発生抑制、弾力向上という効果を発揮することを見出した。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係る肌質改善組成物、食品および医薬品について説明する。
【0037】
[試験食品の製造方法]
実施例において使用した「ヒアルロン酸ナトリウム」および「ヒアルロン酸」は以下のとおりである。
粉末状のヒアルロン酸ナトリウム(FCH−200、キッコーマンバイオケミファ株式会社製、分子量200万)を、0.3M水酸化ナトリウムを含む90%エタノール溶液に添加し、40℃で3時間攪拌した後、1.7M塩酸を含む50%エタノール溶液を加えて中和した。その後、80%エタノールで2回洗浄後、95%エタノールで洗浄した後、75℃で乾燥させてヒアルロン酸ナトリウムの粉末(分子量36万)を得た。
一方、ヒアルロン酸については、粉末状のヒアルロン酸(FCH−A、キッコーマンバ
イオケミファ株式会社製、分子量3.8万)を用いた。
【0038】
そして、前記の方法により得られた粉末を用いて、下記表1のとおりに混合、打錠して、重量250mg、φ9mmのヒアルロン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸を含む錠剤(試験食品)を得た。
【0039】
【表1】
【0040】
[試験内容]
試験としては、いわゆる「二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験」を行った。詳細には、以下のとおりである。
35歳から49歳の女性の被験者42名(試験食品毎の割付被験者数は各14名)に対し、ヒアルロン酸含有試験食品(以下、適宜「H群」という)、ヒアルロン酸ナトリウム含有試験食品(以下、適宜「Na群」という)、ヒアルロン酸・ヒアルロン酸ナトリウムを含有しない試験食品(以下、適宜「P群」という)のいずれかについて、12週の間、1日3回、1回2粒を食前にコップ1杯(180mL程度)の水またはぬるま湯と共に経口摂取させた。
この試験中、被験者には、後記する各確認検査の結果に影響を与える行為(例えば、過度な運動、節食や過食、日焼け行為、健康食品の摂取)を禁止した。
【0041】
そして、後記する各確認検査を、前記試験開始前、試験開始後4週目(29日目)、8週目(57日目)、および12週目(85日目)の計4回実施した。なお、被験者には検査の4時間前から空腹状態とさせた。
また、後記する各確認検査は、略同時刻に実施するとともに、被験者が環境室(室温:17.7〜21.1℃、湿度:45.0〜57.1%)に入って10分間の馴化後に実施した。
【0042】
[効果の確認検査方法および結果]
(弾力向上効果)
肌の弾力向上効果は、皮膚隆起力学的特性(粘弾性)により確認した。
皮膚隆起力学的特性(粘弾性)は、Cutometer MPA580(Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製)を用いて、off−time2.0s、on−time2.0s、Repetition 1、Pressure
450mber、プローブ径2mmの条件下で、左頬を4回吸引した結果の平均値を採用した。詳細には、プローブを皮膚表面(左頬)に密着させ、一定の陰圧をかけることによりプローブ内に吸引された皮膚の変化を測定した。そして、評価項目は、R2(総体弾性、Ua/Uf)の1項目とした。
弾力向上効果の結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
(シワ改善効果)
シワ改善効果(老化防止効果)は、レプリカ画像解析により確認した。
レプリカ画像解析は、日本香粧品学会の化粧品機能評価法ガイドラインである新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン内の附則2.シワ測定法ガイドラインに準じて行った。まず検査日当日に、レプリカ剤(SILFLO)を被験者の両目尻に塗布し、充分に乾燥させた後、剥がし、キムワイプに挟んでさらに充分に乾燥させた。乾燥後、解析可能な状況になってから反射用レプリカ解析システムASA−03RXD(asahibiomed社製)を用いて、「最大シワ平均深さ(μm)」、「平均シワ面積率(%)」、「最大シワ面積率(%)」、「最大シワ最大深さ(μm)」の測定を、右目尻または左目尻のレプリカ(0度、180度)に対して実施した。ここで、0度は、シワの主たる方向に直交する方向から光を照射して測定することを意味し、180度は、0度から180度回転させた方向から光を照射して測定することを意味する。
シワ改善効果の結果として、「最大シワ平均深さ」を表3に示し、「平均シワ面積率」を表4に示し、「最大シワ面積率」を表5に示し、「最大シワ最大深さ」を表6に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
(ニキビ発生抑制効果)
ニキビ発生抑制効果(炎症発生抑制効果)は、VISIAの解析結果により確認した。
VISIAによる解析は、VISIA−Evolution(CANFIELD社製)を用いて、紫外線照射写真(顔の頬部分)から、ポルフィリンの解析を実施し、解析範囲を100%とした際の絶対スコア(%)を評価に用いた。
ニキビ発生抑制効果を表7に示す。
【0050】
【表7】
【0051】
[結果の検討]
(弾力向上効果)
表2および図1に示すように、Na群およびH群がP群と比較し、皮膚隆起力学的特性の変化量が大きな値を示す結果となった。特に、Na群が、H群と比較して変化量の増加傾向が見られた。
つまり、「ヒアルロン酸ナトリウム」(Na群)と「ヒアルロン酸」(H群)の双方について、肌弾力の改善効果を奏することが確認できた。
【0052】
(シワ改善効果)
表3および図2に示すように、H群が、Na群およびP群と比較し、最大シワ平均深さ(右目尻、180度:変化量)の値が小さな値に抑制されていることがわかった。
さらに、表4および図3に示すように、H群およびNa群がP群と比較して、平均シワ面積率(左目尻、0度と180度の平均:変化量)の値が小さな値を示すという結果となった。
また、表5および図4に示すように、H群が、Na群およびP群と比較し、最大シワ面積率(左目尻、0度と180度の平均:変化量)の値も小さな値を示すという結果となった。
加えて、表6および図5に示すように、H群が、Na群およびP群と比較し、最大シワ最大深さ(左目尻、180度:変化量)の値も小さな値を示すという結果となった。
ただ、Na群についても、P群と比較すると、図3、4、5に示すように、シワに関する数値(深さ・面積率等)が小さな値を示すという結果となった。
つまり、「ヒアルロン酸ナトリウム」(Na群)と「ヒアルロン酸」(H群)の双方について、シワ改善効果(老化防止効果)を奏することを確認でき、特に、「ヒアルロン酸」(H群)が、シワ改善効果(老化防止効果)を強く奏することを確認できた。
【0053】
(ニキビ発生抑制効果)
表7および図6に示すように、H群は、Na群およびP群と比較し、ニキビの発生原因となるポルフィリンの増加を強力に抑制するという結果となった。
つまり、「ヒアルロン酸および/またはその塩」の中でも、「ヒアルロン酸」(H群)が、ニキビ発生抑制効果(炎症発生抑制効果)を奏することを確認できた。
【0054】
以上の実験結果より、「ヒアルロン酸および/またはその塩」の中でも、「ヒアルロン酸ナトリウム」が、「弾力向上効果」、「シワ改善効果(老化防止効果)」を発揮することを確認できた。また、「ヒアルロン酸」が、「シワ改善効果(老化防止効果)」、「ニキビ発生抑制効果(炎症発生抑制効果)」、「弾力向上効果」を発揮することを確認できた。そして、「ヒアルロン酸」が「ヒアルロン酸ナトリウム」と比較して強力な「シワ改善効果(老化防止効果)」を発揮することを確認できた。
【0055】
本発明に係る肌質改善組成物、食品および医薬品について、実施の形態及び実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、特許請求の範囲の記載に基づいて改変・変更等することができることはいうまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6