(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
<アミド基含有ポリマーA>
ここに開示される研磨用組成物は、下記一般式(1)で表わされる単量体sに由来する構成単位Sを主鎖に有するアミド基含有ポリマーAを含んでいる。
【0015】
一般式(1):
【化2】
ここで上記一般式(1)中、R
1は水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキロール基、アセチル基、フェニル基、ベンジル基、クロロ基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基またはシアノ基である。なかでも、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基が好ましく、さらには、水素原子、炭素原子数1または2のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。Xは(CH
2)
nであり得る。ただし、nは4〜6の整数である。Xはまた、(CH
2)
2O(CH
2)
2または(CH
2)
2S(CH
2)
2であり得る。なかでも、Xは(CH
2)
2O(CH
2)
2であることが好ましい。
【0016】
ここに開示される単量体sとしては、例えば、アクリロイルピペリジン;アクリロイルモルホリン;アクリロイルチオモルホリン;アクリロイルピロリジン;等が挙げられる。上述の単量体sは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
上記アミド基含有ポリマーAはノニオン性であることが好ましい。換言すれば、アニオン性やカチオン性の構成単位を実質的に含まないポリマーが好ましい。ここで、アニオン性やカチオン性の構成単位を実質的に含まないとは、これらの構成単位のモル比が3%未満(例えば1%未満、好ましくは0.5%未満)であることをいう。ノニオン性のアミド基含有ポリマーを含む研磨用組成物を用いることによって、欠陥やヘイズの低減効果が好適に発揮される。その理由を明らかにする必要はないが、ノニオン性のアミド基含有ポリマーAは、研磨時に砥粒やシリコンウェーハに適度に吸着することによりヘイズ低減に寄与していると考えられ得る。また、上記適度な吸着は、洗浄工程における砥粒や研磨屑の残留を好適に抑制して欠陥低減に寄与していると考えられ得る。
【0018】
上記アミド基含有ポリマーAの分子量(M
A)は、後述する有機化合物Bの分子量(M
B)よりも大きければよい。例えばアミド基含有ポリマーAの分子量は、凝集性の低減あるいは濾過性の向上等の観点から、典型的には100×10
4未満、好ましくは80×10
4未満、より好ましく50×10
4未満、さらに好ましくは45×10
4未満である。好ましい一態様において、アミド基含有ポリマーAの分子量は、40×10
4未満であってもよく、例えば35×10
4以下であってもよい。また、アミド基含有ポリマーAの分子量は、典型的には5×10
3以上であり、ヘイズ低減等の観点から好ましくは1×10
4以上、より好ましくは5×10
4以上である。研磨レート向上の観点から、好ましい一態様において、アミド基含有ポリマーAの分子量は、10×10
4以上であってもよく、例えば15×10
4以上であってもよい。なお、アミド基含有ポリマーAの分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)(水系、ポリエチレングリコール換算)を採用することができる。
【0019】
上記アミド基含有ポリマーAの重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの関係は特に制限されない。凝集性の低減等の観点から、例えば分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であるものを好ましく用いることができる。研磨用組成物の性能安定性等の観点から、アミド基含有ポリマーAのMw/Mnは、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下(例えば2.5以下)である。なお、原理上、Mw/Mnは1.0以上である。原料の入手容易性や合成容易性の観点から、通常は、Mw/Mnが1.05以上のアミド基含有ポリマーAを好ましく使用し得る。
【0020】
ここに開示されるアミド基含有ポリマーAは、実質的に構成単位Sのみからなることが好ましい。換言すると、アミド基含有ポリマーAは、該ポリマーの分子構造に含まれる全構成単位のモル数に占める構成単位Sのモル数の割合(モル比)が97モル%以上(例えば99モル%以上、典型的には99.5〜100モル%)であることが好ましい。そのようなポリマーの好適例として、ここに開示される単量体sの1種のみからなるホモポリマーや単量体sの2種以上からなる共重合体が挙げられる。
【0021】
また、ここに開示されるアミド基含有ポリマーAは、発明の効果を大きく損なわない範囲で、単量体sと共重合可能な単量体tの1種または2種以上に由来する構成単位(以下、「構成単位T」ともいう。)を含む共重合体であってもよい。上記構成単位Tは、構成単位Sとは異なるものとして定義される。アミド基含有ポリマーAにおける上記構成単位Tの割合(モル比)は50モル%未満(例えば30モル%未満、典型的には10モル%未満)とすることができる。
【0022】
なお、上記「モル%」は、一の単量体(単量体sおよび単量体tを包含する。)に由来する一の構成単位を1分子とみなして算出されるモル比である。したがって、上述の構成単位S,Tの割合は、重合に用いられる全モノマー成分に占める単量体sや単量体tのモル比にそれぞれ対応し得る。
【0023】
<有機化合物B>
ここに開示される研磨用組成物は、上述したアミド基含有ポリマーAのほか、アミド基を含有しない有機化合物Bを含有する。かかる有機化合物Bは、典型的には分子量(M
B)が200以上であることが好ましい。また、炭素原子数が5以上(好ましくは6以上、より好ましくは10以上)である有機化合物を用いることが好ましい。このような条件を満たす有機化合物Bを特に限定することなく用いることができる。かかる有機化合物Bの一例としては、アミド基を含有しない界面活性剤もしくは水溶性ポリマーが挙げられる。
【0024】
アミド基を含有しない界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性のものを好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物;複数種のオキシアルキレンの共重合体(ジブロック型、トリブロック型、ランダム型、交互型);等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0025】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とのブロック共重合体(ジブロック体、PEO(ポリエチレンオキサイド)−PPO(ポリプロピレンオキサイド)−PEO型トリブロック体、PPO−PEO−PPO型トリブロック体等)、EOとPOとのランダム共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンペンチルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。なかでも好ましい界面活性剤として、EOとPOとのブロック共重合体(特に、PEO−PPO−PEO型のトリブロック体)、EOとPOとのランダム共重合体およびポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンデシルエーテル)が挙げられる。
【0026】
アミド基を含有しない水溶性ポリマー(以下「任意ポリマー」ともいう。)は、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。上記任意ポリマーは、例えば、分子中に水酸基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、第四級アンモニウム構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を有するものであり得る。凝集性の低減や洗浄性向上等の観点から、上記任意ポリマーとしてノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。
【0027】
ここに開示される研磨用組成物における任意ポリマーの好適例として、オキシアルキレン単位を含むポリマーや窒素原子を含有するポリマー、ビニルアルコール系ポリマー等が例示される。
【0028】
オキシアルキレン単位を含むポリマーの例としては、PEO、EOとPOとのブロック共重合体、EOとPOとのランダム共重合体等が挙げられる。EOとPOとのブロック共重合体は、PEOブロックとPPOブロックとを含むジブロック体、トリブロック体等であり得る。上記トリブロック体の例には、PEO−PPO−PEO型トリブロック体およびPPO−PEO−PPO型トリブロック体が含まれる。通常は、PEO−PPO−PEO型トリブロック体がより好ましい。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
【0029】
窒素原子を含有するポリマーとしては、主鎖に窒素原子を含有するポリマーおよび側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーのいずれも使用可能である。主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N−アセチルエチレンイミン、N−プロピオニルエチレンイミン等が挙げられる。ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN−ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。例えば、N−ビニルピロリドンの単独重合体および共重合体等を採用し得る。
【0030】
ビニルアルコール系ポリマーは、典型的には、主たる繰返し単位としてビニルアルコール単位を含むポリマー(PVA)である。当該ポリマーにおいて、全繰返し単位のモル数に占めるビニルアルコール単位のモル数の割合は、通常は50%以上であり、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、例えば75%以上である。全繰返し単位が実質的にビニルアルコール単位から構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは、典型的には、全繰返し単位の95%以上がビニルアルコール単位であることをいう。PVAにおいて、ビニルアルコール単位以外の繰返し単位の種類は特に限定されず、例えば酢酸ビニル単位、プロピオン酸ビニル単位、ヘキサン酸ビニル単位等から選択される1種または2種以上であり得る。
【0031】
ここに開示される研磨用組成物に含有させ得る任意ポリマーの他の例として、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体およびプルランが挙げられる。
【0032】
ここで開示される研磨用組成物は、アミド基含有ポリマーAの分子量M
Aと有機化合物Bの分子量M
Bとの関係が次式:200≦M
B<M
A;を満たす。有機化合物Bの分子量M
Bをアミド基含有ポリマーAの分子量M
Aよりも小さくすることによって、ヘイズを低減する性能と凝集性の低減とがより高レベルで両立され得る。上記研磨用組成物の凝集性が低減すると、該組成物の濾過性が向上し得るため好ましい。上記ヘイズ低減性能が得られる理由を明らかにする必要はないが、低分子量である有機化合物Bが、研磨時に高分子量であるアミド基含有ポリマーAの隙間を埋めるようにシリコンウェーハに緻密に吸着することによりヘイズ低減に寄与していると考えられ得る。
【0033】
ヘイズ低減および凝集性低減等の観点から、有機化合物Bの分子量M
Bに対するアミド基含有ポリマーAの分子量M
Aの比(M
A/M
B)は、概ね(M
A/M
B)≧1.5であることが適当であり、好ましくは(M
A/M
B)≧2であり、より好ましくは(M
A/M
B)>5である。好ましい一態様において、(M
A/M
B)≧7であってもよく、例えば(M
A/M
B)≧10であってもよい。有機化合物Bが界面活性剤である場合、上記(M
A/M
B)は、(M
A/M
B)≧30であってもよく、(M
A/M
B)≧300であってもよく、(M
A/M
B)≧500であってもよい。(M
A/M
B)の上限値は特に限定されないが、ヘイズ低減性能等の観点から(M
A/M
B)≦5000であることが好ましく、(M
A/M
B)≦1000であることがより好ましい。
【0034】
例えば有機化合物Bの分子量M
Bは、ヘイズ低減性能および凝集性の低減等の観点から、典型的には2×10
4以下、好ましくは1.8×10
4以下、より好ましくは1.5×10
4以下、さらに好ましくは1.2×10
4以下である。好ましい一態様において、有機化合物Bの分子量M
Bは、1×10
4未満であってもよく、例えば9.5×10
3以下(典型的には9×10
3以下)であってもよい。例えば有機化合物BとしてPEO−PPO−PEO型のトリブロック体を用いた場合、分子量M
Bは2×10
4以下であることが好ましく、1×10
4未満であることがより好ましい。例えば有機化合物Bとしてポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いた場合、分子量M
Bは1×10
3以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。例えば有機化合物Bとしてポリビニルアルコール(PVA)を用いた場合、分子量M
Bは2×10
4以下であることが好ましく、1.25×10
4以下であることがより好ましい。また、有機化合物Bの分子量M
Bは、典型的には2×10
2以上であり、ヘイズ低減等の観点から好ましくは2.5×10
2以上である。なお、有機化合物Bの分子量M
Bとしては、GPCにより求められる重量平均分子量(水系、ポリエチレングリコール換算)または化学式から算出される分子量を採用することができる。
【0035】
ここに開示される研磨用組成物の好適例として、アミド基含有ポリマーAの分子量M
Aが10×10
4≦M
A≦50×10
4であり、かつ、有機化合物Bの分子量M
Bが0.3×10
4≦M
B≦2×10
4であるもの;アミド基含有ポリマーAの分子量M
Aが10×10
4≦M
A≦50×10
4であり、かつ、有機化合物Bの分子量M
Bが300≦M
B≦0.3×10
4であるもの;アミド基含有ポリマーAの分子量M
Aが5×10
4≦M
A≦40×10
4であり、かつ、有機化合物Bの分子量M
Bが0.8×10
4≦M
B≦3×10
4であるもの;等が例示される。このようなアミド基含有ポリマーAおよび有機化合物Bの分子量の範囲内であると、ヘイズの低減性能と凝集性の低減とがより高レベルで両立され得る。
【0036】
<水>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上記アミド基含有ポリマーのほかに水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
【0037】
ここに開示される研磨用組成物(典型的にはスラリー状の組成物)は、例えば、その固形分含量(non-volatile content;NV)が0.01重量%〜50重量%であり、残部が水系溶媒(水または水と上記有機溶剤との混合溶媒)である形態、または残部が水系溶媒および揮発性化合物(例えばアンモニア)である形態で好ましく実施され得る。上記NVが0.05重量%〜40重量%である形態がより好ましい。なお、上記固形分含量(NV)とは、研磨用組成物を105℃で24時間乾燥させた後における残留物が上記研磨用組成物に占める重量の割合を指す。
【0038】
<砥粒>
ここに開示される研磨用組成物は砥粒の存在下で用いられる。砥粒はシリコンウェーハの表面を機械的に研磨する機能を有する。砥粒はまた、ここに開示される研磨用組成物中で、該砥粒表面に吸着した上記アミド基含有ポリマーをシリコンウェーハにこすり付ける機能、あるいはシリコンウェーハに吸着した上記アミド基含有ポリマーをはがす機能を有する。これによって、シリコンウェーハ研磨促進剤による化学的研磨を調整する。なお、本明細書において「研磨用組成物は砥粒の存在下で用いられる」には、研磨用組成物に砥粒が含まれる態様が包含され得るものとする。かかる態様は、ここに開示される研磨用組成物の好適な一態様として把握される。したがって、「研磨用組成物は砥粒の存在下で用いられる」は「研磨用組成物は砥粒を含む」と換言することができる。あるいは、砥粒は、例えば研磨パッドに内包された固定砥粒の形態で用いられてもよい。
【0039】
ここに開示される砥粒の材質は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。このような砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記砥粒としては、無機粒子が好ましく、なかでも金属または半金属の酸化物からなる粒子が好ましい。ここに開示される技術において使用し得る砥粒の好適例としてシリカ粒子が挙げられる。その理由は、研磨対象物(シリコンウェーハ)と同じ元素と酸素原子とからなるシリカ粒子を砥粒として使用すれば研磨後にシリコンとは異なる金属または半金属の残留物が発生せず、シリコンウェーハ表面の汚染や研磨対象物内部にシリコンとは異なる金属または半金属が拡散することによるシリコンウェーハとしての電気特性の劣化などの虞がなくなるからである。かかる観点から好ましい研磨用組成物の一形態として、砥粒としてシリカ粒子のみを含有する研磨用組成物が例示される。また、シリカは高純度のものが得られやすいという性質を有する。このことも砥粒としてシリカ粒子が好ましい理由として挙げられる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。研磨対象物表面にスクラッチを生じにくく、よりヘイズの低い表面を実現し得るという観点から、好ましいシリカ粒子としてコロイダルシリカおよびフュームドシリカが挙げられる。なかでもコロイダルシリカが好ましい。なかでも、シリコンウェーハのポリシング(特に、ファイナルポリシング)に用いられる研磨用組成物の砥粒として、コロイダルシリカを好ましく採用し得る。
【0041】
シリカ粒子を構成するシリカの真比重は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上である。シリカの真比重の増大によって、シリコンウェーハを研磨する際に、研磨速度(単位時間当たりに研磨対象物の表面を除去する量)が向上し得る。研磨対象物の表面(研磨面)に生じるスクラッチを低減する観点からは、真比重が2.2以下のシリカ粒子が好ましい。シリカの真比重としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
【0042】
ここに開示される技術において、研磨用組成物中に含まれる砥粒は、一次粒子の形態であってもよく、複数の一次粒子が会合した二次粒子の形態であってもよい。また、一次粒子の形態の砥粒と二次粒子の形態の砥粒とが混在していてもよい。好ましい一態様では、少なくとも一部の砥粒が二次粒子の形態で研磨用組成物中に含まれている。
【0043】
砥粒の平均一次粒子径D
P1は特に制限されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果を得る観点から、平均一次粒子径D
P1は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、より平滑性の高い表面が得られやすいという観点から、平均一次粒子径D
P1は、通常、100nm以下であることが適当であり、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。より高品位の表面を得る等の観点から、平均一次粒子径D
P1が、35nm以下(典型的には30nm未満)の砥粒を使用してもよい。
【0044】
なお、ここに開示される技術において、砥粒の平均一次粒子径D
P1は、例えば、BET法により測定される比表面積S(m
2/g)から平均一次粒子径D
P1(nm)=2727/Sの式により算出することができる。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0045】
砥粒の平均二次粒子径D
P2は、研磨速度等の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。より高い研磨効果を得る観点から、平均二次粒子径D
P2は、30nm以上であることが好ましく、35nm以上であることがより好ましく、40nm以上(例えば40nm超)であることがさらに好ましい。また、より平滑性の高い表面を得るという観点から、砥粒の平均二次粒子径D
P2は、200nm以下が適当であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。ここに開示される技術は、より高品位の表面を得やすい等の観点から、平均二次粒子径D
P2が70nm未満(より好ましくは60nm以下、例えば50nm未満)の砥粒を用いる態様でも好ましく実施され得る。
砥粒の平均二次粒子径D
P2は、対象とする砥粒の水分散液を測定サンプルとして、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により測定することができる。測定サンプルの水分散液中の砥粒の濃度は特に限定されないが、測定精度の観点からは、砥粒の濃度は0.5重量%以下にすることが好ましく、0.2重量%以下にすることがより好ましい。
【0046】
砥粒の平均二次粒子径D
P2は、一般に砥粒の平均一次粒子径D
P1と同等以上(D
P2/D
P1≧1)であり、典型的にはD
P1よりも大きい(D
P2/D
P1>1)。特に限定するものではないが、研磨効果および研磨後の表面平滑性の観点から、砥粒のD
P2/D
P1は、通常は1.2〜3の範囲にあることが適当であり、1.5〜2.5の範囲が好ましく、1.7〜2.3(例えば1.8を超えて2.2以下)の範囲がより好ましい。
【0047】
砥粒の形状(外形)は、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす砥粒の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭型形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。例えば、砥粒の多くがピーナッツ形状をした砥粒を好ましく採用し得る。
【0048】
特に限定するものではないが、砥粒の一次粒子の長径/短径比の平均値(平均アスペクト比)は、好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1以上である。砥粒の平均アスペクト比の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。また、砥粒の平均アスペクト比は、スクラッチ低減等の観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0049】
上記砥粒の形状(外形)や平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡観察により把握することができる。平均アスペクト比を把握する具体的な手順としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、独立した粒子の形状を認識できる所定個数(例えば200個)の砥粒粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を長径/短径比(アスペクト比)として算出する。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、平均アスペクト比を求めることができる。
【0050】
<シリコンウェーハ研磨促進剤>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、アミド基含有ポリマーA、有機化合物Bおよび水の他に、シリコンウェーハ研磨促進剤を含有する。シリコンウェーハ研磨促進剤は、研磨用組成物に添加されることによって研磨対象となる面を化学的に研磨する働きをし、研磨速度の向上に寄与する成分である。シリコンウェーハ研磨促進剤は、シリコンを化学的にエッチングする作用を有し、典型的には塩基性化合物である。研磨用組成物に含まれる塩基性化合物は、研磨用組成物のpHを増大させ、砥粒やアミド基含有ポリマーの分散状態を向上させるため、研磨用組成物の分散安定性の向上や砥粒による機械的な研磨作用の向上に役立ち得る。
【0051】
塩基性化合物としては、窒素を含む有機または無機の塩基性化合物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。例えば、アルカリ金属の水酸化物、水酸化第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。水酸化第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。このような塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
研磨速度向上等の観点から好ましい塩基性化合物として、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが挙げられる。なかでも好ましいものとして、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムが例示される。より好ましいものとしてアンモニアおよび水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。特に好ましい塩基性化合物としてアンモニアが挙げられる。
【0053】
<その他の成分>
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウェーハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0054】
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
【0055】
有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。有機酸塩の例としては、有機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩等が挙げられる。無機酸の例としては、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸等が挙げられる。無機酸塩の例としては、無機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩が挙げられる。有機酸およびその塩、ならびに無機酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
防腐剤および防カビ剤の例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0056】
<用途>
ここに開示される研磨用組成物は、単結晶シリコンからなる研磨対象物(シリコンウェーハ)の研磨に用いられ得る。研磨対象物の形状は特に制限されない。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、板状や多面体状等の、平面を有する研磨対象物の研磨、もしくは研磨対象物の端部の研磨(例えばウェーハエッジの研磨)に好ましく適用され得る。
【0057】
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物のファイナルポリシングに好ましく使用され得る。したがって、この明細書によると、上記研磨用組成物を用いたファイナルポリシング工程を含む研磨物の製造方法(例えば、シリコンウェーハの製造方法)が提供される。なお、ファイナルポリシングとは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。ここに開示される研磨用組成物は、また、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程(粗研磨工程と最終研磨工程との間の予備研磨工程を指す。典型的には少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。)、例えばファイナルポリシングの直前に行われるポリシング工程に用いられてもよい。
【0058】
ここに開示される研磨用組成物は、シリコンウェーハの研磨に特に好ましく使用され得る。例えば、シリコンウェーハのファイナルポリシングまたはそれよりも上流のポリシング工程に用いられる研磨用組成物として好適である。例えば、上流の工程によって表面粗さ0.01nm〜100nmの表面状態に調製されたシリコンウェーハのポリシング(典型的にはファイナルポリシングまたはその直前のポリシング)への適用が効果的である。ファイナルポリシングへの適用が特に好ましい。
【0059】
<研磨液>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、該研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。ここに開示される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
【0060】
研磨液におけるアミド基含有ポリマーAの含有量は特に制限されず、例えば1×10
−4重量%以上とすることができる。ヘイズ低減等の観点から、好ましい含有量は5×10
−4重量%以上であり、より好ましくは1×10
−3重量%以上、例えば2×10
−3重量%以上である。また、研磨速度等の観点から、上記含有量を0.2重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%以下(例えば0.05重量%以下)とすることがより好ましい。なお、上記研磨液が2種以上のアミド基含有ポリマーAを含む場合、上記含有量とは該研磨液に含まれる全てのアミド基含有ポリマーAの合計含有量のことをいう。
【0061】
研磨液における有機化合物Bの含有量は特に制限されず、例えば1×10
−5重量%以上とすることができる。ヘイズの低減性能および凝集性の低減の観点から、好ましい含有量は3×10
−5重量%以上であり、より好ましくは5×10
−5重量%以上、例えば8×10
−5重量%以上である。また、上記含有量を0.2重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%以下(例えば0.05重量%以下)とすることがより好ましい。なお、上記研磨液が2種以上の有機化合物Bを含む場合、上記含有量とは該研磨液に含まれる全ての有機化合物Bの合計含有量のことをいう。
【0062】
また、アミド基含有ポリマーAの含有量w1と有機化合物Bの含有量w2との重量比(w1/w2)は特に制限されないが、例えば0.01〜1000の範囲とすることができ、0.05〜500の範囲が好ましく、0.1〜200の範囲がより好ましく、0.5〜150の範囲がさらに好ましい。
【0063】
ここに開示される研磨用組成物が砥粒を含む場合、研磨液における砥粒の含有量は特に制限されないが、典型的には0.01重量%以上であり、0.05重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以上、例えば0.15重量%以上である。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。よりヘイズの低い表面を実現する観点から、通常は、上記含有量は10重量%以下が適当であり、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、例えば1重量%以下である。
【0064】
ここに開示される研磨液におけるシリコンウェーハ研磨促進剤の含有量は特に制限されない。研磨速度向上等の観点から、通常は、その含有量を研磨液の0.001重量%以上とすることが好ましく、0.003重量%以上とすることがより好ましい。また、ヘイズ低減等の観点から、上記含有量を0.4重量%未満とすることが好ましく、0.25重量%未満とすることがより好ましい。
【0065】
研磨液のpHの下限値は特に限定されない。例えばpHは8.0以上であることが好ましく、さらに好ましくは9.0以上であり、もっとも好ましくは9.5以上である。研磨液のpHが8.0以上(さらに好ましくは9.0以上、もっとも好ましくは9.5以上)であれば、シリコンウェーハの研磨速度が向上し、効率よく表面精度の高いシリコンウェーハを得ることができる。また研磨液中粒子の分散安定性が向上する。研磨液のpHの上限値は特に制限されないが、12.0以下であることが好ましく、11.0以下であることがさらに好ましい。研磨液のpHが12.0以下(さらに好ましくは11.0以下)であれば、研磨液に含まれる砥粒(特にコロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等のシリカ粒子)が塩基性化合物によって溶解することを防ぎ、砥粒による機械的な研磨作用の低下を抑制することができる。上記pHは、例えば上記塩基性化合物、上記その他の成分のうちの有機酸または無機酸によって調整され得る。上記pHは、シリコンウェーハの研磨に用いられる研磨液(例えばファイナルポリシング用の研磨液)に好ましく適用され得る。研磨液のpHは、pHメーター(例えば、堀場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度指示計(型番F−23))を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液 pH:10.01(25℃))を用いて、3点校正した後で、ガラス電極を研磨液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定する。
【0066】
<濃縮液>
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で2倍〜100倍程度とすることができ、通常は5倍〜50倍程度が適当である。好ましい一態様に係る研磨用組成物の濃縮倍率は10倍〜40倍であり、例えば15倍〜25倍である。
【0067】
このように濃縮液の形態にある研磨用組成物は、所望のタイミングで希釈して研磨液を調製し、その研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、典型的には、上記濃縮液に前述の水系溶媒を加えて混合することにより行うことができる。また、上記水系溶媒が混合溶媒である場合、該水系溶媒の構成成分のうち一部の成分のみを加えて希釈してもよく、それらの構成成分を上記水系溶媒とは異なる量比で含む混合溶媒を加えて希釈してもよい。また、後述するように多剤型の研磨用組成物においては、それらのうち一部の剤を希釈した後に他の剤と混合して研磨液を調製してもよく、複数の剤を混合した後にその混合物を希釈して研磨液を調製してもよい。
【0068】
上記濃縮液のNVは、例えば50重量%以下とすることができる。研磨用組成物の安定性(例えば、砥粒の分散安定性)や濾過性等の観点から、通常、濃縮液のNVは、40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下、例えば15重量%以下である。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、濃縮液のNVは、0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、例えば5重量%以上である。
【0069】
上記濃縮液におけるアミド基含有ポリマーAの含有量は、例えば3重量%以下とすることができる。研磨用組成物の濾過性や洗浄性等の観点から、通常、上記含有量は、好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下である。また、上記含有量は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、通常は1×10
−3重量%以上であることが適当であり、好ましくは5×10
−3重量%以上、より好ましくは1×10
−2重量%以上である。
【0070】
上記濃縮液における有機化合物Bの含有量は、例えば2重量%以下とすることができる。研磨用組成物の濾過性等の観点から、通常、上記含有量は、好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下である。また、上記含有量は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、通常は1×10
−5重量%以上とすることが適当である。
【0071】
ここに開示される研磨用組成物が砥粒を含む場合、上記濃縮液における砥粒の含有量は、例えば50重量%以下とすることができる。研磨用組成物の安定性(例えば、砥粒の分散安定性)や濾過性等の観点から、通常、上記含有量は、好ましくは45重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下である。好ましい一態様において、砥粒の含有量を30重量%以下としてもよく、20重量%以下(例えば15重量%以下)としてもよい。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、砥粒の含有量は、例えば0.5重量%以上とすることができ、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上(例えば5重量%以上)である。
【0072】
ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分のうち一部の成分を含むI液(例えば、砥粒(例えばシリカ粒子)とシリコンウェーハ研磨促進剤と水とを含む分散液)と、残りの成分を含むII液(例えばアミド基含有ポリマーAおよび有機化合物B含有液)とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成され得る。あるいはまた、シリコンウェーハ研磨促進剤とアミド基含有ポリマーAと有機化合物Bと水とを含む研磨用組成物に対して、別途用意した砥粒を所定のタイミングで混合する態様で用いられ得る。
【0073】
<研磨用組成物の調製>
ここに開示される研磨用組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨用組成物に含まれる各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
【0074】
<研磨>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物の研磨に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(典型的にはスラリー状の研磨液であり、研磨スラリーと称されることもある。)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、上記研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。また、多剤型の研磨用組成物の場合、上記研磨液を用意することには、それらの剤を混合すること、該混合の前に1または複数の剤を希釈すること、該混合の後にその混合物を希釈すること、等が含まれ得る。
【0075】
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、シリコンウェーハのファイナルポリシングを行う場合には、ラッピング工程および予備ポリシング工程を経たシリコンウェーハを一般的な研磨装置にセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記シリコンウェーハの表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、シリコンウェーハの表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
なお、上記研磨工程で使用される研磨パッドは特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。
【0076】
<リンス>
ここに開示される研磨用組成物であって砥粒を含む研磨用組成物を用いて研磨された研磨物は、砥粒を含まない他は上記研磨用組成物と同じ成分を含むリンス液を用いてリンスされ得る。換言すると、砥粒を含まない他は上記研磨用組成物と同じ成分を含むリンス液を用いて上記研磨物をリンスする工程(リンス工程)を有してもよい。リンス工程により、研磨物の表面の欠陥やヘイズの原因となる砥粒等の残留物を低減させることができる。リンス工程は、ポリシング工程とポリシング工程との間に行われてもよいし、ファイナルポリシング工程の後であって後述の洗浄工程の前に行われてもよい。砥粒を含まない他は上記研磨用組成物と同じ成分を含むリンス液を用いてリンスすることにより、シリコンウェーハ表面に吸着した上記アミド基含有ポリマーの作用を阻害せず、欠陥やヘイズをさらに低減することができる。かかるリンス液は、典型的にはシリコンウェーハ研磨促進剤とアミド基含有ポリマーと水とを含むシリコンウェーハ研磨用組成物(具体的には、シリコンウェーハ研磨のリンスに用いられる組成物。リンス用組成物ともいう。)であり得る。このシリコンウェーハのリンス用組成物の組成等については、砥粒を含まない他は上述のシリコンウェーハ研磨用組成物と基本的に同じなので、ここでは説明は繰り返さない。
【0077】
<洗浄>
また、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨された研磨物は、典型的には、研磨後に(必要であればリンス後に)洗浄される。この洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC−1洗浄液(水酸化アンモニウム(NH
4OH)と過酸化水素(H
2O
2)と水(H
2O)との混合液。以下、SC−1洗浄液を用いて洗浄することを「SC−1洗浄」という。)、SC−2洗浄液(HClとH
2O
2とH
2Oとの混合液。)等を用いることができる。洗浄液の温度は、例えば常温〜90℃程度とすることができる。洗浄効果を向上させる観点から、50℃〜85℃程度の洗浄液を好ましく使用し得る。
【0078】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0079】
<研磨用組成物の調製>
(実施例1)
砥粒、水溶性ポリマー、有機化合物、アンモニア水(濃度29%)および脱イオン水を混合して、研磨用組成物の濃縮液を得た。この濃縮液を脱イオン水で20倍に希釈して、実施例1に係る研磨用組成物を調製した。
砥粒としては、平均一次粒子径35nmのコロイダルシリカを使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。
水溶性ポリマーとしては、Mwが33×10
4のポリアクリロイルモルホリン(以下「PACMO」と表記)を使用した。
有機化合物としては、Mwが9×10
3のPEO−PPO−PEO型のトリブロック共重合体(中心部がPPO、両端がPEO、以下「PEO−PPO−PEO」と表記する。)を使用した。上記PEO−PPO−PEOにおけるEO単位とPO単位のモル比は、EO:PO=85:15であった。
砥粒、水溶性ポリマー、有機化合物およびアンモニア水の使用量は、研磨用組成物中における砥粒の含有量が0.46%となり、水溶性ポリマーの含有量が0.010%となり、有機化合物の含有量が0.0025%となり、アンモニア(NH
3)の含有量が0.010%となる量とした。
【0080】
(実施例2)
有機化合物として、Mwが378のポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数5)デシルエーテル(以下、「C10PEO5」と表記)を使用し、組成物中に含まれるC10PEO5の含有量を0.0003%とした他は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0081】
(
参考例3)
水溶性ポリマーとしてMwが17×10
4のPACMOを使用し、有機化合物としてMwが1.2×10
4のポリビニルアルコール(けん化度95モル%以上;以下、「PVA」と表記)を使用し、組成物中に含まれるPVAの含有量を0.0100%とした他は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0082】
(実施例4)
有機化合物として、
参考例3と同じPVAと、実施例1と同じPEO−PPO−PEOとを使用し、組成物中に含まれるPVAの含有量を0.005%、PEO−PPO−PEOの含有量を0.0025%とした他は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0083】
(実施例5)
組成物中に含まれる砥粒の含有量を0.35%とした他は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0084】
(比較例1)
水溶性ポリマーとしてMwが17×10
4のPACMOを使用したことと、PEO−PPO−PEOを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0085】
(比較例2)
PEO−PPO−PEOを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0086】
(比較例3)
PACMOに代えて、Mwが25×10
4のヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」と表記)を使用し、組成物中に含まれるHECの含有量を0.017%とした他は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0087】
(比較例4)
PEO−PPO−PEOに代えて、EOとPOのランダム共重合体(Mw10×10
4;以下、「EOPOランダム共重合体」と表記)を使用し、組成物中に含まれるEOPOランダム共重合体の含有量を0.017%とした。なお、上記EOPOランダム共重合体におけるEO単位とPO単位のモル比は、EO:PO=12:1であった。また、水溶性ポリマーとして、Mwが7×10
4のPACMOを使用し、組成物中に含まれるPACMOの含有量を0.005%とした。その他は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0088】
<シリコンウェーハの研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウェーハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウェーハとしては、粗研磨を行い直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。
【0089】
[研磨条件]
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
【0090】
<洗浄>
研磨後のシリコンウェーハを、NH
4OH(29%):H
2O
2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウェーハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
【0091】
<ヘイズ測定>
洗浄後のシリコンウェーハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウェーハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。得られた結果を、比較例1のヘイズ値を100%とする相対値に換算して表1に示した。
【0092】
<凝集性評価>
研磨用組成物の凝集性を評価するため、該組成物の凝集率を測定した。ここで、本明細書における研磨用組成物の凝集率とは、研磨用組成物中の粒子の平均粒子径をR
1、後述する対照組成物中の砥粒の平均粒子径をR
2、としたときのR
2に対するR
1の比(すなわち、R
1/R
2)として定義される。上記凝集率が小さいほど、研磨用組成物の凝集性が低いことを示す。以下、研磨用組成物の凝集率の測定方法を具体的に説明する。
まず、研磨用組成物を測定サンプルとし、該組成物中の粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)R
1を日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により測定した(測定装置は以下のR
2の測定において同じ)。次に、上記研磨用組成物を作製するのに使用した砥粒、アンモニア水および脱イオン水を、該組成物における含有量と一致するように秤量して混合することにより、対照組成物を調製した。具体的には、水溶性ポリマーおよび有機化合物を使用しないこと以外は研磨用組成物の作製方法と同様にして上記対照組成物を調製した。得られた対照組成物を測定サンプルとし、該対照組成物中の砥粒の平均粒子径(体積平均粒子径)R
2を動的光散乱法によって測定した。その結果、実施例1
、2、4、参考例3および比較例1〜4の対照組成物中の砥粒の平均粒子径R
2はいずれも57nmであり、実施例5の対照組成物中の砥粒の平均粒子径R
2は42nmであった。得られたR
1およびR
2から、R
1/R
2を算出することにより、研磨用組成物の凝集率を求めた。各例に係る研磨用組成物のR
1および凝集率の結果を表1に示す。
【0094】
表1に示すように、高分子量のPACMOと低分子量の有機化合物とを組み合わせて使用した実施例
1、2、4、5および参考例3の研磨用組成物は、ヘイズの低減性能と凝集性の低減とを高いレベルで両立して示した。なかでもMwが1×10
4未満である有機化合物を含む実施例1、2、4および5は、より優れたヘイズ低減効果を示した。また、Mwが33×10
4のPACMOと、Mwが9000のPEO−PPO−PEOとを含む実施例1、4および5の研磨用組成物は、より優れたヘイズ低減性能と凝集性の低減との両立を示した。これに対して、PACMOを単独で使用した比較例1、2の研磨用組成物は、いずれも、ヘイズ低減性能が不足していた。また、高分子量のHECと低分子量のPEO−PPO−PEO(有機化合物)とを組み合わせて使用した比較例3の研磨用組成物は、比較例1または2よりはヘイズが低減したものの、凝集性が高く、両性能のバランスに欠けるものであった。また、低分子量のPACMOと高分子量のEOPOランダム共重合体(有機化合物)とを組み合わせて使用した比較例4の研磨用組成物は、ヘイズの低減性能および凝集性低減のいずれも劣っていることがわかった。これらの結果から、高分子量のアミノ基含有ポリマーと低分子量の有機化合物とを組み合わせて使用することにより、ヘイズ低減性能と凝集性の低減とをバランスよく実現し得ることが確認できた。
【0095】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。