特許第6349076号(P6349076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349076
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   A61B3/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-244689(P2013-244689)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-100591(P2015-100591A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年11月17日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、IT融合による新社会システムの開発・実証プロジェクト委託研究「角膜再生医療の普及のための診断・治療IT支援システム開発・ビジネスモデル実証事業」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(72)【発明者】
【氏名】角谷 俊文
(72)【発明者】
【氏名】星川 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸二
(72)【発明者】
【氏名】橋田 徳康
(72)【発明者】
【氏名】馬場 耕一
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/114600(WO,A1)
【文献】 特開2011−072446(JP,A)
【文献】 特開2008−079682(JP,A)
【文献】 特表2015−520437(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/155301(WO,A1)
【文献】 特開2005−185590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼画像に対して、1又はそれ以上の画素を持つ第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有する判定領域を、設定する領域設定手段と、
前記領域設定手段によって設定される判定領域の位置を、前記被検眼画像上で順次変更すると共に、
前記第2領域における輝度情報の標準偏差に基づいて、前記判定領域内における血管部分と背景部分との境界の有無を検出し、更に、
前記境界が検出される前記判定領域において、前記第1領域と前記第2領域との輝度値の比較に基づいて前記第1領域が血管部分であるか否かを、前記判定領域の位置毎に判定する、判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記被検眼画像上の血管情報を取得する血管情報取得手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
被検眼画像に対して、1又はそれ以上の画素を持つ第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有する判定領域を、設定する領域設定手段と、
前記領域設定手段によって設定される判定領域の位置を、前記被検眼画像上で順次変更すると共に、前記第1領域の輝度情報と前記第1領域を囲む前記第2領域の輝度情報とを用いて前記第1領域が血管部分であるか否かを前記判定領域の位置毎に判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記被検眼画像上の血管情報を取得する血管情報取得手段であって、
前記判定手段によって血管部分であると判定される第1領域が、その第1領域とは異なる位置に設定される他の第1領域であって前記判定手段によって血管部分であると判定される他の第1領域と所定個数以上連続していない場合に、前記判定手段の判定結果にかかわらず、前記第1領域を血管以外の部分とする血管情報を取得する、血管情報取得手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
画像処理プログラムであって、画像処理装置のプロセッサに実行されることで、
被検眼画像に対して、1又はそれ以上の画素を持つ第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有する判定領域を、設定する領域設定ステップと、
前記領域設定ステップによって設定される判定領域の位置を、前記被検眼画像上で順次変更すると共に、
前記第2領域における輝度情報の標準偏差に基づいて、前記判定領域内における血管部分と背景部分との境界の有無を検出し、更に、
前記境界が検出される前記判定領域において、前記第1領域と前記第2領域との輝度値の比較に基づいて前記第1領域が血管部分であるか否かを、前記判定領域の位置毎に判定する、判定ステップと、
前記判定ステップによる判定結果に基づいて前記被検眼画像上の血管情報を取得する血管情報取得ステップと、
を画像処理装置に実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項4】
画像処理プログラムであって、画像処理装置のプロセッサに実行されることで、
被検眼画像に対して、1又はそれ以上の画素を持つ第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有する判定領域を、設定する領域設定ステップと、
前記領域設定ステップによって設定される判定領域の位置を、前記被検眼画像上で順次変更すると共に、前記第1領域の輝度情報と前記第1領域を囲む前記第2領域の輝度情報とを用いて前記第1領域が血管部分であるか否かを前記判定領域の位置毎に判定する判定ステップと、
前記判定ステップによる判定結果に基づいて前記被検眼画像上の血管情報を取得する血管情報取得ステップであって、
前記判定ステップによって血管部分であると判定される第1領域が、その第1領域とは異なる位置に設定される他の第1領域であって前記判定ステップによって血管部分であると判定される他の第1領域と所定個数以上連続していない場合に、前記判定ステップでの判定結果にかかわらず、前記第1領域を血管以外の部分とする血管情報を取得する、血管情報取得ステップと、を画像処理装置に実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼画像を処理する画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置等で撮像された被検眼画像を処理することによって、被検眼の血管を被検眼画像から検出する画像処理装置が知られている。例えば、特許文献1には、前眼部(主に、白眼部分)に存在する血管を、被検眼画像の画像処理によって検出する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−072446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に例示される血管の検出を行う画像処理等、血管に関する情報(以下、血管情報という)を被検眼画像から取得する画像処理では、血管部分と血管以外の部分との判別に、被検眼画像の輝度情報が用いられる場合がある。ところが、被検眼画像では、血管部分における輝度情報、および血管以外の部分における輝度情報が、画像毎で、または、画像の位置毎で、必ずしも一様ではなく、画像処理の方法によっては、好適に血管情報を取得することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、被検眼画像から血管情報を好適に得ることができる画像処理装置、および画像処理プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る画像処理装置は、被検眼画像に対して、1又はそれ以上の画素を持つ第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有する判定領域を、設定する領域設定手段と、前記領域設定手段によって設定される判定領域の位置を、前記被検眼画像上で順次変更すると共に、前記第2領域における輝度情報の標準偏差に基づいて、前記判定領域内における血管部分と背景部分との境界の有無を検出し、更に、前記境界が検出される前記判定領域において、前記第1領域と前記第2領域との輝度値の比較に基づいて前記第1領域が血管部分であるか否かを、前記判定領域の位置毎に判定する、判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて前記被検眼画像上の血管情報を取得する血管情報取得手段と、を備える。
本発明の第二態様に係る画像処理装置は、被検眼画像に対して、1又はそれ以上の画素を持つ第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有する判定領域を、設定する領域設定手段と、前記領域設定手段によって設定される判定領域の位置を、前記被検眼画像上で順次変更すると共に、前記第1領域の輝度情報と前記第1領域を囲む前記第2領域の輝度情報とを用いて前記第1領域が血管部分であるか否かを前記判定領域の位置毎に判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて前記被検眼画像上の血管情報を取得する血管情報取得手段であって、前記判定手段によって血管部分であると判定される第1領域が、その第1領域とは異なる位置に設定される他の第1領域であって前記判定手段によって血管部分であると判定される他の第1領域と所定個数以上連続していない場合に、前記判定手段の判定結果にかかわらず、前記第1領域を血管以外の部分とする血管情報を取得する、血管情報取得手段と、を備える。
【0007】
本発明の第三態様に係る画像処理プログラムは、画像処理装置のプロセッサに実行されることで、被検眼画像に対して、1又はそれ以上の画素を持つ第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有する判定領域を、設定する領域設定ステップと、前記領域設定ステップによって設定される判定領域の位置を、前記被検眼画像上で順次変更すると共に、前記第2領域における輝度情報の標準偏差に基づいて、前記判定領域内における血管部分と背景部分との境界の有無を検出し、更に、前記境界が検出される前記判定領域において、前記第1領域と前記第2領域との輝度値の比較に基づいて前記第1領域が血管部分であるか否かを、前記判定領域の位置毎に判定する、判定ステップと、前記判定ステップによる判定結果に基づいて前記被検眼画像上の血管情報を取得する血管情報取得ステップと、を画像処理装置に実行させる。
本発明の第四態様に係る画像処理プログラムは、画像処理装置のプロセッサに実行されることで、被検眼画像に対して、1又はそれ以上の画素を持つ第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有する判定領域を、設定する領域設定ステップと、前記領域設定ステップによって設定される判定領域の位置を、前記被検眼画像上で順次変更すると共に、前記第1領域の輝度情報と前記第1領域を囲む前記第2領域の輝度情報とを用いて前記第1領域が血管部分であるか否かを前記判定領域の位置毎に判定する判定ステップと、前記判定ステップによる判定結果に基づいて前記被検眼画像上の血管情報を取得する血管情報取得ステップであって、前記判定ステップによって血管部分であると判定される第1領域が、その第1領域とは異なる位置に設定される他の第1領域であって前記判定ステップによって血管部分であると判定される他の第1領域と所定個数以上連続していない場合に、前記判定ステップでの判定結果にかかわらず、前記第1領域を血管以外の部分とする血管情報を取得する、血管情報取得ステップと、を画像処理装置に実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検眼画像から好適な血管情報が得られやすいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】PC1の概略構成を示したブロック図である。
図2】CPU2によって実行される血管情報生成・解析処理を示したフローチャートである。
図3】前眼部画像の一例を示した図である。
図4】一部分を拡大した緑色前眼部画像の模式図である。
図5】CPU2によって実行される判定処理を示したフローチャートである。
図6】CPU2によって実行される血管情報取得処理を示したフローチャートである。
図7図3の前眼部画像に基づいて生成される判定結果画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施形態の画像処理装置であるパーソナルコンピュータ1(以下、「PC1」と称す。)の概略構成について説明する。
【0011】
実施形態において、PC1は、眼科撮像装置100で撮像された被検眼の画像を、ネットワークおよび外部メモリ等の少なくともいずれかを介して取得する。PC1は、取得した画像の処理を行う。例えば、被検眼画像から血管部分を検出する画像処理が、本実施形態のPC1によって行われる。但し、画像処理装置として動作することができるのは、PC1に限定されない。例えば、眼科撮像装置100で撮像された画像を、眼科撮像装置100自身が処理してもよい。この場合、眼科撮像装置100が画像処理装置として動作する。
【0012】
図1に示すように、PC1は、CPU2を備える。CPU2は、PC1の各種の処理を実行するための処理装置(プロセッサ)である。CPU2には、ROM3、RAM4、HDD5、通信I/F6、表示制御部7、操作処理部8、および外部メモリI/F9が、バスを介して接続されている。
【0013】
ROM3は、BIOS等のプログラムが格納された不揮発性の記憶媒体である。RAM4は、各種情報を一時的に記憶する揮発性の記憶媒体である。HDD5(ハードディスクドライブ5)は、不揮発性の記憶媒体である。なお、不揮発性の記憶媒体として、フラッシュROM等の他の記憶媒体を用いてもよい。HDD5には、被検眼の画像を処理するための画像処理プログラムが記憶されている。例えば、本実施形態では、図2図5及び図6のフローチャートに示す処理をPC1に実行させるプログラムが、HDD5に記憶されている。また、HDD5には、眼科撮像装置100で撮像された画像のデータが記憶される。
【0014】
通信I/F6は、PC1を眼科撮像装置100等の外部機器に接続する。本実施形態のPC1は、眼科撮像装置100によって撮像された画像のデータを、通信I/F6を介して取得することができる。本実施形態では、通信I/F6を介して取得された画像は、HDD5に記憶される。外部メモリI/F9は、外部メモリ15をPC1に接続する。外部メモリ15には、例えばUSBメモリ、CD−ROM等の種々の記憶媒体を使用することができる。本実施形態のPC1は、眼科撮像装置100によって撮像された画像のデータを、外部メモリ15を介して取得することもできる。例えば、ユーザ(操作者)は、外部メモリ15を眼科撮像装置100に装着し、眼科撮像装置100によって撮像された画像のデータを外部メモリ15に記憶させる。次いで、ユーザは、外部メモリ15をPC1に装着し、外部メモリ15に記憶された画像のデータをPC1に読み込ませる。その結果、眼科撮像装置100によって撮像された画像のデータをPC1が取得する。
【0015】
眼科撮像装置100としては、本実施形態に示すように、細隙灯顕微鏡(スリットランプ)を用いてもよい。細隙灯顕微鏡の詳細構成は、特開2002−224041号公報等によって例示することができる。本実施形態の眼科撮像装置100は、前眼部から眼底までの間にある部位を、フォーカスの位置に応じて選択的に撮像できる。また、本実施形態の眼科撮像装置100では、前眼部反射像および徹照像の少なくとも2種類の前眼部画像を、カラー画像として撮像できる。前眼部反射像は、眼科撮像装置100から被検眼へ照射される照明光の前眼部反射光に基づいて撮像される。徹照像は、眼科撮像装置100からの照明光が眼底において散乱・反射され、その光によって眼科撮像装置100の受光素子へ投影される前眼部投影像に基づいて撮像される。本実施形態では、眼科撮像装置100によって撮像される前眼部画像を、PC1が処理する場合について説明する。なお、細隙灯顕微鏡に限らず、被検眼において血管部分を含む部位を撮像可能な種々の装置が、眼科撮像装置100として用いられてもよい。また、本実施形態では、カラー画像の前眼部画像が、眼科撮像装置100によって撮像される場合について説明するが、眼科撮像装置100で撮像される前眼部画像はモノクロ画像であってもよい。
【0016】
表示制御部7は、モニタ13の表示を制御する。操作処理部8は、操作部14(例えば、キーボード、マウス等)に接続されている。操作処理部8は、ユーザによる操作部14の操作を検知して操作信号をCPU2へ出力する。これにより、操作部14に対するユーザの操作がCPU2に受け付けられる。なお、本実施形態では、外付けのモニタ13および操作部14が用いられる。しかし、モニタ13および操作部14の少なくとも一部がPC1に組み込まれていてもよい。
【0017】
次に、図2以下を参照して、PC1の動作について説明する。
【0018】
図2のフローチャートに示した血管情報生成・解析処理では、HDD5又は外部メモリ15に予め記憶されている前眼部画像から、血管が検出されて血管情報が取得(生成)される。また、血管に関する解析が血管情報に基づいて行われる。ここで、血管情報は、前眼部画像に対する画像処理の結果を示す。本実施形態の血管情報生成・解析処理では、一例として、前眼部画像に含まれる血管の位置を示す画像データが、血管情報として生成される。
【0019】
まず、CPU2は、HDD5又は外部メモリ15から1つの前眼部画像の画像データを読み出し、RAM4に記憶する。また、CPU2は、読み出した画像データを、表示制御部7へ出力することによって、モニタ13に前眼部画像を表示させる(S1)。
【0020】
次に、CPU2は、前眼部画像において血管情報が取得(生成)される範囲(処理範囲(ROI:Region of Interest))の設定を行う(S2)。本実施形態では、S2の処理によって設定される処理範囲を対象として、後述の画像処理が行われる。処理範囲を指定する情報(以下、範囲指定情報と称す)は、例えば、操作部14の操作によってユーザが指定する前眼部画像上の領域を示していてもよい。また、範囲指定情報は、前眼部画像に対するPC1の画像処理によって自動的に決定された処理範囲を示していてもよい。例えば、前眼部画像に対する本装置1の画像処理によって角膜部分の位置および大きさが特定される場合は、CPU2は、角膜部分の位置および大きさを示す情報を範囲指定情報として用いることで、角膜部分に対して処理範囲を設定できる。
【0021】
ここで、図3を参照して、本実施形態において前眼部画像に設定される処理範囲Rを説明する。本実施形態では、角膜Qに対して処理範囲Rが設定されたものとして説明する。ここで、図3では、ハッチングを付した領域によって、角膜Qを示している。また、想像線で囲んだ範囲によって、処理範囲Rを示している。なお、角膜Qの内側にある輝点Sは、前眼部画像の撮像時に、眼科撮像装置100からの照明光の照射位置付近に生じる角膜反射像である。一般に、輝点Sは、極めて明るい輝度情報を示す。故に、仮に輝点S上に血管が存在していても、画像処理によって血管を検出することは難しい。このため、前眼部画像には、予め輝点Sを除外する処理範囲Rが設定されてもよい。
【0022】
通常、角膜には血管が無い。しかし、例えば、角膜移植手術によって被検眼に移植された角膜に、角膜周囲の血管が血管新生することで、角膜に血管が侵入する場合があることが知られている。本実施形態では、角膜Qに対して処理範囲Rを設定することで、角膜Qに侵入した血管bvの検出等が行われる。
【0023】
なお、血管を検出するうえで、S2の処理は必ずしも実行されなくても良い。S2の処理を実行しない場合は、例えば、画像の全範囲が処理範囲Rとされてもよい。
【0024】
次に、CPU2は、S1の処理によってRAM4に記憶した前眼部画像の画像データを用いて、緑色前眼部画像を生成する(S3)。緑色前眼部画像は、S1の処理によって読み出された前眼部画像(カラー画像)を、R(赤色)、G(緑色)、およびB(青色)の3色で色分解したときのG画像である。血管は赤系の色なので、血管部分bvにおける緑色成分および青色成分の輝度値は、赤色成分に比べて低い。このため、緑色前眼部画像は、血管部分bvと血管以外の部分(以下、背景部分という)とのコントラストが、赤色成分を含むカラー画像よりも大きくなる。よって、画像の輝度情報に基づいて血管部分bvを検出するうえで、より良好な画像が得られる。なお、S3の処理では、赤色成分の影響がカラー画像よりも少ない前眼部画像が生成されればよく、必ずしも緑色前眼部画像が生成されなくても良い。例えば、前眼部画像(カラー画像)を、R(赤色)、G(緑色)、およびB(青色)の3色で色分解したときのB画像である青色前眼部画像を生成してもよく、B画像とG画像との平均画像を生成してもよい。なお、B画像とG画像とを比べた場合、G画像のほうが血管部分bvと背景部分とのコントラストの良好な画像が得られやすく、後述の画像処理によって良好な検出結果が得られやすい。
【0025】
判定領域設定処理では、CPU2が判定領域Jを設定する(S4)。ここで、図4を参照して、判定領域Jについて説明する。図4では、点線で示した格子の1マスが、前眼部画像の1画素に対応している。また、図4において、血管部分bvにはハッチングが施されている。図4に示すように、判定領域Jは、第1領域j1と第2領域j2とを持つ。第1領域j1は、血管部分bvの有無がCPU2によって判定される領域である。本実施形態において、第1領域j1は、1画素分の大きさを有する。また、第2領域j2は、第1領域j1を囲んで設定される。第1領域j1における血管部分bvの有無を判定する際に、第2領域j2の輝度情報が参照される。本実施形態において、第2領域j2は、縦横にそれぞれ9画素分ずつの大きさを持つ。なお、第1領域j1および第2領域j2は、かならずしも上記例示した大きさに限定されるものではない。例えば、S4の処理において、第1領域j1および第2領域j2の少なくとも一方の大きさが、ユーザからの指示に基づいて設定されてもよい。例えば、S4の処理では、操作部14(例えば、テンキー)を介して予めCPU2が受け付けた、サイズ指示情報に基づいて、第1領域j1および第2領域j2の少なくとも一方の大きさを設定しても良い。なお、サイズ指示情報としては、第1領域j1又は第2領域j2の幅(m)、画素数(個)及び、画角(°)等を適宜用いることができる。また、本実施形態では、第1領域j1および第2領域j2は、矩形状の領域として説明するが、矩形以外の多角形、円形等の形状であってもよい。
【0026】
また、S4の処理において、CPU2は、第1領域j1が処理範囲Rの内側に位置するように、判定領域Jの初期位置を設定する。例えば、本実施形態のS4の処理では、処理範囲Rの最上段にある画素列の最も左側の画素に第1領域j1が位置するように、判定領域Jの初期位置が設定される。
【0027】
次に、CPU2は、判定処理を実行する(S5)。判定処理では、S4の処理によって設定される判定領域Jの位置が、CPU2によって、所定の走査手順に沿って処理範囲Rの中で順次変更される。また、判定領域Jの位置毎に、第1領域j1の輝度情報と第2領域j2の輝度情報とを用いて、第1領域j1の位置する画素が血管部分bvであるか否かが、CPU2によって判定される。なお、本実施形態では、輝度情報として、輝度値が用いられる。
【0028】
ここで、図5を参照して、判定処理(S5)の詳細を説明する。まず、CPU2は、S11からS15の処理を実行して、第1領域j1の位置する画素が血管部分bvであるか否かを判定し、判定結果をRAM4へ記憶する。S11の処理においてCPU2は、判定領域J内の各画素の輝度値を用いて、判定領域Jの平均輝度値Aと、判定領域Jにおける輝度値の標準偏差Bと、を算出する(S11)。ところで、前眼部画像には、撮像に用いられた照明光の偏りに起因する明暗のムラが生じている。また、特に前眼部画像の角膜部分には、虹彩の紋様および中間透光体の混濁等に起因する複雑な明暗のムラ(即ち、被検眼の位置による明暗のムラ)も生じている。本発明者は、照明光の光量の偏り等に起因する明暗のムラが、血管部分bvと背景部分との境界部分に比べてなだらかな輝度変化を持つ傾向があることを見出した。このため、判定領域J内に血管部分bvと背景部分との境界が含まれている場合は、判定領域J内に背景部分または血管部分のみが含まれている場合に比べて、標準偏差Bの値が大きくなる。
【0029】
次に、CPU2は、判定領域Jの中に血管部分bvと背景部分との境界が含まれているか否かを判定する(S12)。この判定は、本実施形態では、標準偏差Bと基準値Cとが比較されることによって行われる。ここでの基準値Cは、判定領域J内に血管部分bvと背景部分との境界が含まれている場合と、判定領域J内に背景部分のみが含まれている場合とを区別し得る値であればよい。基準値Cは、例えば、角膜に血管が侵入していない被検眼を使用して求められてもよい。例えば、新生血管の無い角膜に対して複数の位置に判定領域Jを設定し、各判定領域Jについて求めた輝度値の標準偏差のうち、最も大きな値が、基準値Cとして用いられてもよい。
【0030】
標準偏差Bが基準値Cよりも小さいとCPU2によって判定される場合は(S12:No)、判定領域Jの中に血管部分bvと背景部分との境界が含まれていないと考えられる。この場合は、S13の処理に移行し、背景部分を示す情報(以下、背景部分情報という)を、第1領域j1の位置情報(又は、判定領域Jの位置情報)と対応付けてRAM4に記憶する(S13)。
【0031】
ここで、本実施形態では、各々の第1領域j1に対する判定結果が、前眼部画像と同じサイズでRAM4に設定されるモノクロ画像(以下、二値化画像という)の内容に反映される。本実施形態において、二値化画像の各画素には、「0(黒)」又は「255(白)」のいずれかの輝度値がそれぞれ設定される。本実施形態では、血管部分bvの画素に対して「0」が設定され、背景部分の画素に対して「255」が設定される。当初、二値化画像の各画素の輝度値は、「255(白)」で初期化されている。本実施形態では、S13の処理において、第1領域j1と同じ位置座標にある二値化画像の画素の輝度値に、背景部分情報として「255」が設定される。次に、CPU2は、S16の処理を実行する。
【0032】
一方、標準偏差Bが基準値C以上であるとCPU2によって判定される場合は(S12:Yes)、血管部分bvと背景部分との境界が判定領域J内に含まれていると考えられる。この場合は、次に、第1領域j1が血管部分bvに位置しているか否かが、CPU2によって判定される(S14)。本実施形態では、第1領域j1の輝度値Dと平均輝度値Aとが比較されることで、第1領域j1が血管部分bvに位置しているか否かの判定が行われる。血管部分bvは、背景部分に対して輝度値が低いので、第1領域j1の輝度値Dが平均輝度値A以上である場合は(S14:No)、第1領域j1は背景部分に位置していると考えられる。この場合、CPU2は、前述のS13の処理によって背景部分情報(本実施形態では、輝度値「255」)をRAM4に記憶してから、S16の処理に移行する。
【0033】
一方、S14の処理によって、第1領域j1の輝度値Dが平均輝度値Aよりも低い場合は(S14:Yes)、第1領域j1は血管部分bvに位置していると考えられる。この場合は、S15の処理に移行し、血管部分bvを示す情報(以下、血管部分情報という)を、第1領域j1の位置情報(又は、判定領域Jの位置情報)と対応付けてRAM4に記憶する(S15)。例えば本実施形態では、第1領域j1と同じ位置座標にある二値化画像の画素の輝度値に、CPU2が「0」を設定する。次に、CPU2は、S16の処理を実行する。
【0034】
S16の処理では、処理範囲Rの全画素に対してS11からS15の処理を実行したか否かが、CPU2によって判定される(S16)。S11からS15の処理が行われていない画素(より具体的には、第1領域j1が配置されたことの無い画素)が処理範囲Rの中に残っている場合は(S16:No)、S17の処理に移行する。S17の処理では、所定の走査手順に沿って判定領域Jの位置が移動される。本実施形態の操作手順では、S17の処理が実行される度に、処理範囲Rに第1領域j1が含まれる範囲で判定領域Jが左から右に1画素分移動される。但し、第1領域j1が処理範囲Rの右端まで移動しているときは、S17の処理では、1画素分下の列にある処理範囲Rの左端の画素に第1領域j1が配置されるように、判定領域Jが移動される。前述したように、本実施形態における判定領域Jの初期位置では、第1領域j1が処理範囲Rの最上段にある画素列の最も左側の画素に位置する。よって、本実施形態では、S11からS17の処理が繰り返し行われることで、処理範囲Rの全ての画素が判定領域Jを用いて判定される。また、血管部分情報または背景部分情報が、処理範囲Rに含まれる各画素の位置情報と対応付けてRAM4に記憶される。これにより、本実施形態では、RAM4には、前眼部画像において血管部分bvと判定される画素の位置に黒色、背景部分と判定される画素の位置に白色が設定される二値化画像が生成される。
【0035】
S16の処理において、処理範囲Rの全画素に対してS11からS15の処理が完了したと判定された場合(S16:Yes)、CPU2は、血管情報取得処理(S6)を実行する(図2参照)。
【0036】
次に、図6を参照して、血管情報取得処理(S6)を説明する。血管情報取得処理(S6)では、処理範囲Rにおける血管情報が、判定処理(S5)の判定結果に基づいて取得(生成)される。例えば、本実施形態の血管情報取得処理では、判定処理によって生成された二値化画像に対して画像処理が行われることによって、血管情報が取得される。本実施形態において、血管情報取得処理(S6)によって取得される血管情報は、前眼部画像および二値化画像と同じサイズの判定結果画像(本実施形態では、モノクロ画像)としてRAM4に記憶される。なお、当初、判定結果画像の各画素の輝度値は、背景部分情報を示す「255」で初期化されているものとする。なお、本実施形態において、二値化画像および判定結果画像は、血管部分と判定された画素には輝度値「0」が設定され、背景部分と判定された画素には輝度値「255」が設定されるものとして説明される。しかし、本実施形態に示した輝度値の組み合わせは、あくまで一例に過ぎず、血管部分および背景部分の輝度値が互いに異なる値となる他の組み合わせであってもよい。また、必ずしもモノクロ二値の画像で判定結果画像等が示されなくてもよい。例えば、血管部分と背景部分との色相が互いに異なるカラー画像で判定結果画像等が示されてもよい。
【0037】
また、血管部分bvには連続性があるため、二値化画像において、血管部分を示す箇所は、血管部分情報を持つ画素が連続していると考えられる。そこで、本実施形態の血管情報取得処理(S6)では、二値化画像の中で血管部分情報を持つ画素(即ち、本実施形態では、輝度値に「0」が設定されている画素)のうち、他の血管部分情報を持つ画素と所定個数以上(本実施形態では2個以上)連続していない画素については、背景部分を示しているものとして、CPU2が血管情報(背景結果画像)へ反映する。但し、それぞれが血管部分情報を持ち所定個数未満の数で連続する画素を、背景部分を示しているものとして血管情報へ反映させる処理は、必ずしも行われなくてもよい。
【0038】
血管情報取得処理(S6)では、初めに、CPU2が、二値化画像の中で血管部分情報(輝度値「0」)を持つ画素を1つ選択する(S21)。次に、CPU2は、二値化画像の中で選択画素と隣接する画素に、血管部分情報を持つ画素があるか否かを判定する(S22)。なお、本実施形態において、選択画素と隣接する画素とは、二値化画像において選択画素の上、下、左、右に配置される4つの画素を指す。なお、4つの画素に加えて選択画素の左上、右上、左下、右下に配置される4つの画素が隣接画素に含まれてもよい。血管部分bvには連続性があるので、選択画素と選択画素の隣接画素とが血管部分情報を持つ場合は、選択画素は、血管部分bvに対応している可能性が高いと考えられる。一方、選択画素に隣接するいずれの画素も血管部分情報を持っていない場合は、選択画素は、背景部分である可能性が高いと考えられる。ところで、二値化画像において血管部分情報を持つ画素は、判定処理(S5)によって血管部分bvであると判定される第1領域j1に対応する。よって、本実施形態では、二値化画像の中で選択画素とその隣接画素との両方が血管部分情報を持っているか否かを判定することによって、判定処理(S5)によって血管部分bvであると判定される第1領域j1が、血管部分bvであると判定される他の第1領域j1と所定個数以上連続しているか否かを調べている。
【0039】
S22の処理において、選択画素と隣接する画素の中に、血管部分情報を持つ画素があると判定された場合は(S22:Yes)、CPU2は、RAM4内の判定結果画像において選択画素と同じ座標にある画素の輝度値に、血管部分情報「0」を記憶する。次に、CPU2は、S24の処理に移行する。
【0040】
一方、S22の処理において、選択画素と隣接する画素の中に、血管部分情報を持つ画素がないと判定された場合は(S22:No)、CPU2は、S23の処理をスキップする。この場合、RAM4内の判定結果画像において選択画素と同じ座標にある画素の輝度値には、初期値であり背景部分を示す「255」が記憶されることになる。次にCPU2は、S24の処理を実行する。なお、本実施形態では、選択画素に連続して血管部分情報を持つ画素が1つも無い場合に、選択画素が背景部分であるとして血管情報に反映されるが、選択画素と連続する画素が所定個数以上(例えば2個以上)無い場合に、選択画素が背景部分であるとして血管情報に反映されてもよい。
【0041】
S24の処理では、二値化画像の中で血管部分情報を持つ全ての画素に対してS22の判定が行われたか否かが、CPU2によって判定される(S24)。S22の判定処理が行われていない画素がある場合(S24:No)、CPU2は、二値化画像において血管部分情報を持つ未処理の画素を選択し(S25)、S22からS24の処理を繰り返し実行する。そして、二値化画像において血管部分情報を持つ全ての画素に対してS22からS25の処理が行われる結果、前眼部画像に含まれる血管を示す画像データ(判定結果画像の画像データ)が、本実施形態における血管情報としてRAM4に取得される。
【0042】
一方、二値化画像において血管部分情報を持つ全ての画素に対してS22の判定処理が行われていると判定される場合は(S24:Yes)、S26の処理に移行して、RAM4の血管情報(判定結果画像の画像データ)を出力する(S26)。例えば、CPU2は、血管情報を表示制御部7に出力することで、図7に示す判定結果画像をモニタ13に表示することができる。前述したように、判定結果画像は、血管部分が黒色、背景部分が白色で示されるモノクロ画像である。よって、判定結果画像がモニタ13に表示されることで、検者(ユーザ)は、処理範囲内の血管の分布等を容易に把握することができる。特に、角膜部分は、色が暗く、更に、虹彩の紋様および中間透光体の混濁等に起因する複雑な明暗のムラがあるため、通常の前眼部画像から角膜部分における血管の分布等を検者が把握することは難しかった。これに対し、本実施形態の判定結果画像では、角膜部分であっても血管の分布等を検者が把握しやすい。
【0043】
図2に戻って説明を続ける。CPU2は、S6の処理で取得した血管情報の解析を行う(S7)。例えば、S7の処理では、画像処理によって、血管と処理領域との面積比、血管の長さ等を求めても良い。また、CPU2は、解析結果をモニタ13へ出力してもよい。解析結果は、数値で示されてもよく、図表で示されてもよい。これにより、処理範囲における血管の分布の度合いを示す情報をモニタ13に表示できる。このため、PC1によれば、角膜部分における血管の分布度合いを、検者が好適に把握できる。
【0044】
以上の通り、本実施形態のPC1によれば、判定領域設定処理(S4)によって、第1領域j1と第2領域j2とを有する判定領域Jが処理範囲Rに設定される。また、判定処理(S5)において、第1領域j1が血管部分bvであるか否かが、第1領域j1の輝度情報と第2領域j2の輝度情報とを用いてCPU2によって判定される。ところで、照明光の偏りおよび被検眼の位置等に起因する輝度変化(明暗のムラ)が、判定領域Jの中で一様に生じているときは、判定領域Jの中で最も高輝度の領域、および、最も低輝度な領域は、いずれも、判定領域J(第2領域j2)の外縁側に生じやすい。一方、判定領域Jの内側にある第1領域j1は、判定領域J(第2領域j2)の各画素に対して中間的な輝度変化の影響を受ける。このため、第1領域j1が血管部分bvであるか否かに応じて、第1領域j1の輝度情報が判定領域Jの輝度分布の高輝度側又は低輝度側の一方に含まれやすい。例えば、上記実施形態では、前眼部画像における血管部分bvの輝度値が背景部分よりも低い。この場合、第1領域j1が血管部分bvであれば、第1領域j1の輝度情報は、判定領域Jにおける輝度分布の高輝度側に含まれやすい。一方、第1領域j1が背景部分であれば、第1領域j1の輝度情報は、判定領域Jにおける輝度分布の低輝度側に含まれやすい。このため、判定処理(S5)では、第1領域j1が血管部分bvであるか否かが、適正に判定されやすい。
【0045】
また、判定処理(S5)では、判定領域Jの位置が所定の走査手順に基づいて処理範囲Rの中で順次変更されつつ、上述の判定が判定領域Jの位置毎に行われる。よって、処理範囲Rの各位置についての血管部分bvの有無が、適正に判定される。従って、判定処理(S5)の判定結果に基づく血管情報には、処理範囲内の各位置における血管の有無が正確に反映されやすい。
【0046】
また、血管情報取得処理(S6)では、判定処理(S5)によって血管部分bvであると判定される第1領域j1が、異なる位置に設定される他の第1領域j1であって血管部分bvであると判定されるものと所定個数以上(本実施形態では1つ以上)連続していない場合は、判定処理(S5)での判定結果に関わらず、第1領域j1を背景部分とする血管情報が取得される。これにより、連続性の無い部分が血管として検出されることを抑制できるので、PC1は、より適正な血管情報を得ることができる。
【0047】
このように、本実施形態のPC1は、虹彩の紋様よび中間透光体の混濁等によって複雑な輝度変化を持つ角膜であっても、適正に血管を検出できる。
【0048】
以上、実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、様々な変形が可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態における血管情報生成・解析処理のアルゴリズムを適宜変更できることは言うまでもない。例えば、判定処理(S5)において、第1領域j1が血管部分bvであるか否かを判定する場合には、第1領域j1の輝度情報と、第2領域j2の輝度情報とが用いられればよく、判定領域Jにおける平均輝度値Aと輝度値の標準偏差Bとが必ずしも判定に用いられなくてもよい。例えば、判定領域Jの平均輝度値Aよりも一定値だけ少ない輝度値Eが判定の閾値として使用されてもよい。この場合、例えば、CPU2は、第1領域j1における輝度値Dが閾値Eよりも低い場合に、第1領域j1は血管部分bvであると判定することができる。また、判定処理(S5)では、判定領域Jにおける平均輝度値Aと輝度値の標準偏差Bとの代わりに、第2領域j2における平均輝度値と標準偏差とが用いられてもよい。この場合にも、第1領域j1の輝度情報と第2領域j2の輝度情報とを用いて、第1領域j1が血管部分であるか否かが、判定処理によって適正に判定され得る。また、上記実施形態における血管情報取得処理(S6)では、判定処理(S5)によって生成された二値化画像とは別の判定結果画像を用いて血管情報をRAM4に取得する場合について説明したが、二値化画像そのものを加工する(書き換える)ことによって、RAM4に血管情報を取得しても良い。
【0050】
また、上述したように、判定領域設定処理(S4)によって設定される判定領域J(第1領域j1および第2領域j2)は、本実施形態において例示される形状および大きさに限定されるものではない。例えば、第1領域j1は、画素2つ分以上の大きさを持つ領域であってもよい。第1領域j1の縦および横の幅は、前眼部画像の中で最も細い血管の幅(太さ)以下とすることが好ましい。そのため、前眼部画像の中で最も細い血管の幅が画素3個分である場合は、第1領域j1の縦および横の幅を、画素1個分ないしは画素3個分とすることが好ましい。また、第2領域j2が完全に血管の内側に設定されてしまうと、第1領域j1と第2領域j2とにおける輝度変化が少ないので、判定処理(S5)において、第1領域j1に血管部分bvがあると判定され難くなってしまう。このため、第2領域j2の縦および横の幅は、血管の幅よりも広く設定されることが好ましい。但し、血管の幅に対して第2領域j2が大きすぎると、照明ムラ等に起因する輝度値のばらつきが第2領域j2において大きくなるので、第1領域j1における血管の有無が適正に判定され難くなってしまう。このため、第2領域j2の縦および横の幅は、処理範囲Rに含まれる最も太い血管数本分の幅以下とすることが好ましい。但し、第1領域j1および第2領域j2の大きさは、必要とされる血管の検出精度との関係で設定されればよく、上記例示した範囲に限定されない。
【0051】
また、判定領域設定処理(S4)によって設定される判定領域Jに、第1領域j1と第2領域j2との他に、第3領域が含まれていても良い。ここでいう第3領域は、処理範囲Rよりも小さく第2領域j2とは異なる大きさを持つ。この場合、判定処理(S5)において、第1領域j1の輝度情報と第2領域j2の輝度情報とを用いた血管部分bvに関しての判定だけでなく、第1領域j1の輝度情報と第3領域の輝度情報とを用いた血管部分bvに関しての判定が、判定領域Jの位置毎に行われてもよい。この場合、第3領域は、第2領域j2とは大きさが異なるので、第1領域j1の輝度情報と第2領域j2の輝度情報とを用いる判定では血管部分として判定されない箇所においても、第1領域j1の輝度情報と第3領域の輝度情報とを用いる判定では、血管部分bvであると判定される場合がある。よって、この場合、CPU2によって所定範囲の中で血管部分と判定される範囲が、適正に増大される。よって、第2領域j2を用いて検出される血管部分bvと、第3領域を用いて検出される血管部分bvとが、CPU2によって足し合わされることで、より適正な血管情報を得ることができる。
【0052】
また、判定領域設定処理(S4)において、判定領域Jの他に、判定領域Jと同様のはたらきをする第2判定領域が設定されても良い。第2判定領域は、第4領域と、第5領域とを有する。第4領域および第5領域のそれぞれは、判定領域Jの第1領域j1および第2領域j2のそれぞれと同様のはたらきをする。即ち、第4領域は、1以上の画素を持ち、血管部分bvの有無が判定される。また、第5領域は、第4領域を囲む。また、第4領域において血管部分bvの有無が判定される際に、第5領域の輝度情報が参照される。但し、第5領域は、処理範囲Rよりも小さく第2領域j2とは異なる大きさを持つ。この場合、判定処理(S5)において、第4領域の輝度情報と第5領域の輝度情報とを用いて第4領域が血管部分bvであるか否かの判定が、第2判定領域の位置毎に行われるとよい。判定領域Jを用いて検出される血管部分bvと、第2判定領域を用いて検出される血管部分bvとが、CPU2によって足し合わされることで、より適正な血管情報を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 PC
2 CPU
J 判定領域
j1 第1領域
j2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7