(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る塗布装置CTRの構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗布装置CTRは、基板Sに液状体を塗布する装置である。塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、第一チャンバーCB1、第二チャンバーCB2、接続部CN及び制御部CONTを有している。第一チャンバーCB1は、塗布部CTを有している。第二チャンバーCB2は、焼成部BKを有している。接続部CNは、減圧乾燥部VDを有している。
【0032】
塗布装置CTRは、例えば工場などの床面FLに載置されて用いられる。塗布装置CTRは、一つの部屋に収容される構成であっても構わないし、複数の部屋に分割して収容される構成であっても構わない。塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BKがこの順で一方向に並んで配置されている。
【0033】
なお、装置構成については塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BKがこの順で一方向に並んで配置されることに限られることは無い。例えば、基板供給回収部LUが不図示の基板供給部と不図示の基板回収部に分割されても構わないし、減圧乾燥部VDが省略されても構わない。勿論、一方向に並んで配置されていなくてもよく、不図示のロボットを中心とした上下に積層する配置や、左右に配置する構成でもよい。
【0034】
以下の各図において、本実施形態に係るチャンバー装置の構成を説明するにあたり、表記の簡単のため、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。当該XYZ座標系においては、床面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面において塗布装置CTRの各構成要素(基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BK)が並べられた方向をX方向と表記し、XY平面上でX方向に直交する方向をY方向と表記する。XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0035】
本実施形態では、基板Sとして、例えばガラスや樹脂などからなる板状部材を用いている。本実施形態では更に、基板S上に裏面電極としてスパッタにてモリブデンを形成している。勿論、裏面電極として、他の導電性物質を用いる構成としても構わない。基板Sとして、Z方向視における寸法が330mm×330mmの基板を例に挙げて説明する。なお、基板Sの寸法については、上記のような330mm×330mmの基板に限られることは無い。例えば、基板Sとして、寸法が125mm×125mmの基板を用いても構わないし、寸法が1m×1mの基板を用いても構わない。勿論、上記寸法よりも大きい寸法の基板や小さい寸法の基板を適宜用いることができる。
【0036】
本実施形態では、基板Sに塗布する液状体として、例えばヒドラジンなどの溶媒に、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)または銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、セレン(Se)といった金属材料を含有する液状組成物を用いている。この液状組成物は、CIGSまたはCZTS型太陽電池の光吸収層(光電変換層)を構成する金属材料を含んでいる。
【0037】
本実施形態では、この液状組成物は、例えばCZTS太陽電池の光吸収層のグレインサイズを確保するための物質を含んでいる。勿論、液状体として、他の金属、例えば金属ナノ粒子を分散させた液状体を用いる構成としても構わない。
【0038】
(基板供給回収部)
基板供給回収部LUは、塗布部CTに対して未処理の基板Sを供給すると共に、塗布部CTからの処理済の基板Sを回収する。基板供給回収部LUは、チャンバー10を有している。チャンバー10は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー10の内部には、基板Sを収容可能な収容室10aが形成されている。チャンバー10は、第一開口部11、第二開口部12及び蓋部14を有している。第一開口部11及び第二開口部12は、収容室10aとチャンバー10の外部とを連通する。
【0039】
第一開口部11は、チャンバー10の+Z側の面に形成されている。第一開口部11は、Z方向視で基板Sの寸法よりも大きく形成されている。チャンバー10の外部に取り出される基板Sや、収容室10aへ収容される基板Sは、第一開口部11を介して基板供給回収部LUに出し入れされる。
【0040】
第二開口部12は、チャンバー10の+X側の面に形成されている。第二開口部12は、X方向視で基板Sの寸法よりも大きく形成されている。塗布部CTへ供給される基板Sや塗布部CTから戻される基板Sは、第二開口部12を介して基板供給回収部LUに出し入れされる。
【0041】
蓋部14は、第一開口部11を開放又は閉塞させる。蓋部14は、矩形の板状に形成されている。蓋部14は、不図示のヒンジ部を介して第一開口部11の+X側の辺に取り付けられている。このため、蓋部14は、第一開口部11の+X側の辺を中心としてY軸周りに回動する。第一開口部11は、蓋部14をY軸周りに回動させることで開閉可能となっている。
【0042】
収容室10aには、基板搬送部15が設けられている。基板搬送部15は、複数のローラー17を有している。ローラー17は、Y方向に一対配置されており、当該一対のローラー17がX方向に複数並んでいる。
【0043】
各ローラー17は、Y軸方向を中心軸方向としてY軸周りに回転可能に設けられている。複数のローラー17は、それぞれ等しい径となるように形成されており、複数のローラー17の+Z側の端部はXY平面に平行な同一平面上に配置されている。このため、複数のローラー17は、基板SがXY平面に平行な姿勢になるように当該基板Sを支持可能である。
【0044】
各ローラー17は、例えば不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送部15は、複数のローラー17が基板Sを支持した状態で各ローラー17をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、基板SをX方向(+X方向又は−X方向)に搬送する。基板搬送部15としては、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0045】
(第一チャンバー)
第一チャンバーCB1は、床面FLに載置された基台BC上に配置されている。第一チャンバーCB1は、直方体の箱状に形成されている。第一チャンバーCB1の内部には、処理室20aが形成されている。塗布部CTは、処理室20aに設けられている。塗布部CTは、基板Sに対して液状体の塗布処理を行う。
【0046】
第一チャンバーCB1は、第一開口部21及び第二開口部22を有している。第一開口部21及び第二開口部22は、処理室20aと第一チャンバーCB1の外部とを連通する。第一開口部21は、第一チャンバーCB1の−X側の面に形成されている。第二開口部22は、第一チャンバーCB1の+X側の面に形成されている。第一開口部21及び第二開口部22は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、第一開口部21及び第二開口部22を介して第一チャンバーCB1に出し入れされる。
【0047】
塗布部CTは、吐出部31、メンテナンス部32、液状体供給部33、洗浄液供給部34、廃液貯留部35、気体供給排出部37及び基板搬送部25を有する。
【0048】
吐出部31は、ノズルNZ、処理ステージ28及びノズル駆動部NAを有している。
図3(a)は、ノズルNZの構成を示す図である。
図3(a)に示すように、ノズルNZは、長尺状に形成されており、長手方向がX方向に平行になるように配置されている。ノズルNZは、本体部NZa及び突出部NZbを有している。本体部NZaは、内部に液状体を収容可能な筐体である。本体部NZaは、例えばチタン又はチタン合金を含んだ材料を用いて形成されている。突出部NZbは、本体部NZaに対して+X側及び−X側にそれぞれ突出して形成されている。突出部NZbは、ノズル駆動部NAの一部に保持される。
【0049】
図3(b)は、−Z側からノズルNZを見たときの構成を示している。
図3(b)に示すように、ノズルNZは、本体部NZaの−Z側の端部(先端TP)に吐出口OPを有している。吐出口OPは、液状体が吐出される開口部である。吐出口OPは、X方向に長手となるようにスリット状に形成されている。吐出口OPは、例えば長手方向が基板SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成されている。
【0050】
ノズルNZは、例えば上記のCu、In、Ga、Seの4種類の金属が所定の組成比で混合された液状体を吐出する。ノズルNZは、接続配管(不図示)などを介して、それぞれ液状体供給部33に接続されている。ノズルNZは、内部に液状体を保持する保持部を有している。なお、上記保持部に保持された液状体の温度を調整する温調部が配置されていても構わない。
【0051】
図1及び
図2に戻って、処理ステージ28は、塗布処理の対象となる基板Sを載置する。処理ステージ28の+Z側の面は、基板Sを載置する基板載置面となっている。当該基板載置面は、XY平面に平行に形成されている。処理ステージ28は、例えばステンレスなどを用いて形成されている。
【0052】
ノズル駆動部NAは、ノズルNZをX方向に移動させる。ノズル駆動部NAは、リニアモータ機構を構成する固定子40及び可動子41を有している。なお、ノズル駆動部NAとしては、例えばボールスクリュー機構など、他の駆動機構が用いられた構成であっても構わない。固定子40は、Y方向に延在されている。固定子40は、支持フレーム38に支持されている。支持フレーム38は、第一フレーム38a及び第二フレーム38bを有している。第一フレーム38aは、処理室20aの−Y側端部に配置されている。第二フレーム38bは、処理室20aのうち第一フレーム38aとの間で処理ステージ28を挟む位置に配置されている。
【0053】
可動子41は、固定子40の延在方向(Y方向)に沿って移動可能である。可動子41は、ノズル支持部材42及び昇降部43を有する。ノズル支持部材42は、門型に形成されており、ノズルNZの突出部NZbを保持する保持部42aを有している。ノズル支持部材42は、昇降部43と共に固定子40に沿って第一フレーム38aと第二フレーム38bとの間をY方向に一体的に移動する。このため、ノズル支持部材42に保持されるノズルNZは、処理ステージ28をY方向に跨いで移動する。ノズル支持部材42は、昇降部43の昇降ガイド43aに沿ってZ方向に移動する。可動子41は、ノズル支持部材42をY方向及びZ方向に移動させる不図示の駆動源を有している。
【0054】
メンテナンス部32は、ノズルNZのメンテナンスを行う部分である。メンテナンス部32は、ノズル待機部44及びノズル先端管理部45を有している。
ノズル待機部44は、ノズルNZの先端TPが乾燥しないように当該先端TPをディップさせる不図示のディップ部と、ノズルNZを交換する場合やノズルNZに供給する液状体を交換する場合にノズルNZ内に保持された液状体を排出する不図示の排出部とを有している。
【0055】
ノズル先端管理部45は、ノズルNZの先端TP及びその近傍を洗浄したり、ノズルNZの吐出口OPから予備的に吐出したりすることで、ノズル先端のコンディションを整える部分である。ノズル先端管理部45は、ノズルNZの先端TPを払拭する払拭部45aと、当該払拭部45aを案内するガイドレール45bと、を有している。ノズル先端管理部45には、ノズルNZから排出された液状体や、ノズルNZの洗浄に用いられた洗浄液などを収容する廃液収容部35aが設けられている。
【0056】
図4は、ノズルNZ及びノズル先端管理部45の断面形状を示す図である。
図4に示すように、払拭部45aは、断面視においてノズルNZの先端TP及び先端TP側の斜面の一部を覆う形状に形成されている。
【0057】
ガイドレール45bは、ノズルNZの吐出口OPをカバーするようにX方向に延びている。払拭部45aは、不図示の駆動源などにより、ガイドレール45bに沿ってX方向に移動可能に設けられている。払拭部45aがノズルNZの先端TPに接触した状態でX方向に移動することで、先端TPが払拭されることになる。
【0058】
液状体供給部33は、第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bを有している。第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bには、基板Sに塗布する液状体が収容される。また、第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bは、それぞれ異なる種類の液状体を収容可能である。
【0059】
洗浄液供給部34は、塗布部CTの各部、具体的にはノズルNZの内部やノズル先端管理部45などを洗浄する洗浄液が収容されている。洗浄液供給部34は、不図示の配管やポンプなどを介して、これらノズルNZの内部やノズル先端管理部45などに接続されている。
【0060】
廃液貯留部35は、ノズルNZから吐出された液体のうち再利用しない分を回収する。なお、ノズル先端管理部45のうち、予備吐出を行う部分と、ノズルNZの先端TPを洗浄する部分とが別々に設けられた構成であっても構わない。また、ノズル待機部44において予備吐出を行う構成であっても構わない。
【0061】
気体供給排出部37は、気体供給部37a及び排気部37bを有している。気体供給部37aは、処理室20aに窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給する。排気部37bは、処理室20aを吸引し、処理室20aの気体を第一チャンバーCB1の外部に排出する。
【0062】
基板搬送部25は、処理室20aにおいて基板Sを搬送する。基板搬送部25は、複数のローラー27を有している。ローラー27は、処理室20aのY方向の中央部をX方向に横切るように二列に配置されている。各列に配置されるローラー27は、それぞれ基板Sの+Y側端辺及び−Y側端辺を支持する。
【0063】
基板Sを支持した状態で各ローラー27をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー27によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0064】
(接続部)
接続部CNは、第一チャンバーCB1と第二チャンバーCB2とを接続する。基板Sは、接続部CNを経由して、第一チャンバーCB1と第二チャンバーCB2との間を移動するようになっている。接続部CNは、第三チャンバーCB3を有している。第三チャンバーCB3は、直方体の箱状に形成されている。第三チャンバーCB3の内部には、処理室50aが形成されている。本実施形態では、処理室50aには、減圧乾燥部VDが設けられている。減圧乾燥部VDは、基板S上に塗布された液状体を乾燥させる。第三チャンバーCB3には、ゲートバルブV2及びV3が設けられている。
【0065】
第三チャンバーCB3は、第一開口部51及び第二開口部52を有している。第一開口部51及び第二開口部52は、処理室50aと第三チャンバーCB3の外部とを連通する。第一開口部51は、第三チャンバーCB3の−X側の面に形成されている。第二開口部52は、第三チャンバーCB3の+X側の面に形成されている。第一開口部51及び第二開口部52は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、第一開口部51及び第二開口部52を介して第三チャンバーCB3に出し入れされる。
【0066】
減圧乾燥部VDは、基板搬送部55及び気体供給部58、排気部59及び加熱部53を有している。
基板搬送部55は、複数のローラー57を有している。ローラー57は、Y方向に一対配置されており、当該一対のローラー57がX方向に複数並んでいる。複数のローラー57は、第一開口部21を介して処理室50aに配置された基板Sを支持する。
【0067】
基板Sを支持した状態で各ローラー57をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー57によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0068】
図5は、減圧乾燥部VDの構成を示す模式図である。
図5に示すように、気体供給部58は、処理室50aに窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給する。気体供給部58は、第一供給部58a及び第二供給部58bを有している。第一供給部58a及び第二供給部58bは、ガスボンベやガス管などのガス供給源58cに接続されている。処理室50aへのガスの供給は主として第一供給部58aを用いて行われる。第二供給部58bは、第一供給部58aによる気体の供給量を微調整する。
【0069】
排気部59は、処理室50aを吸引し当該処理室50aの気体を第三チャンバーCB3の外部に排出して、処理室50aを減圧させる。処理室50aを減圧させることにより、基板Sの液状体に含まれる溶媒の蒸発を促進させ、液状体を乾燥させる。排気部59は、第一吸引部59a及び第二吸引部59bを有している。第一吸引部59a及び第二吸引部59bは、ポンプなどの吸引源59c及び59dに接続されている。処理室50aからの吸引は主として第一吸引部59aを用いて行われる。第二吸引部59bは、第一吸引部59aによる吸引量を微調整する。
【0070】
加熱部53は、処理室50aに配置された基板S上の液状体を加熱する。加熱部53としては、例えば赤外線装置やホットプレートなどが用いられる。加熱部53の温度は、例えば室温〜100℃程度に調整可能である。加熱部53を用いることにより、基板S上の液状体に含まれる溶媒の蒸発を促進させ、減圧下での乾燥処理をサポートする。
【0071】
加熱部53は、昇降機構(移動部)53aに接続されている。昇降機構53aは、加熱部53をZ方向に移動させる。昇降機構53aとしては、例えばモーター機構やエアシリンダ機構などが用いられている。昇降機構53aにより加熱部53をZ方向に移動させることにより、加熱部53と基板Sとの間の距離を調整できるようになっている。昇降機構53aによる加熱部53の移動量や移動のタイミングなどは、制御部CONTによって制御されるようになっている。
【0072】
(第二チャンバー)
第二チャンバーCB2は、床面FLに載置された基台BB上に配置されている。第二チャンバーCB2は、直方体の箱状に形成されている。第二チャンバーCB2の内部には、処理室60aが形成されている。焼成部BKは、処理室60aに設けられている。焼成部BKは、基板S上に塗布された塗布膜を焼成する。
【0073】
第二チャンバーCB2は、開口部61を有している。開口部61は、処理室60aと第二チャンバーCB2の外部とを連通する。開口部61は、第二チャンバーCB2の−X側の面に形成されている。開口部61は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、開口部61を介して第二チャンバーCB2に出し入れされる。
【0074】
焼成部BKは、基板搬送部65及び気体供給部(不図示)、排気部(不図示)及び加熱部70を有している。
基板搬送部65は、複数のローラー67と、アーム部71とを有している。ローラー67は、基板案内ステージ66をY方向に挟んで一対配置されており、当該一対のローラー67がX方向に複数並んでいる。複数のローラー67は、開口部61を介して処理室60aに配置された基板Sを支持する。
【0075】
基板Sを支持した状態で各ローラー67をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー67によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0076】
アーム部71は、架台74上に配置されており、複数のローラー67と加熱部70との間で基板Sの受け渡しを行う。アーム部71は、搬送アーム72及びアーム駆動部73を有している。搬送アーム72は、基板支持部72a及び移動部72bを有している。基板支持部72aは、基板Sの+Y側及び−Y側の辺を支持する。移動部72bは、基板支持部72aに連結されており、X方向に移動可能であり、かつθZ方向に回動可能である。アーム部71は、例えばローラー67の−Z側に配置されており、当該ローラー67をZ方向に跨ぐように移動可能である。このため、例えば基板Sがローラー67上に配置された場合に、ローラー67の−Z側から+Z側へ向けて+Z方向に移動することで基板Sを保持可能である。
【0077】
アーム駆動部73は、移動部72bをX方向又はθZ方向に駆動する。アーム駆動部73によって移動部72bを+X方向に移動させた場合には、基板支持部72aが加熱部70内に挿入されると共に、基板Sが加熱部70のZ方向視中央部に配置されるようになっている。
【0078】
図6は、加熱部70の構成を示す断面図である。
図6に示すように、加熱部70は、架台74(
図1等参照)上に配置されたチャンバー装置80を有している。第一収容部81、第二収容部82、第一加熱板83、第二加熱板84、リフト部85、封止部86、気体供給部87、排気部88、第一断熱部89(下側)、第二断熱部90(上側)及び気体流通部91を有している。
【0079】
第一収容部81は、Z方向視において矩形に形成されており、開口部が+Z側を向くように第二チャンバーCB2の底部に載置されている。第二収容部82は、Z方向視において矩形に形成されており、開口部が第一収容部81に対向するように配置されている。第二収容部82は、不図示の昇降機構を用いてZ方向に移動可能である。第二収容部82を第一収容部81に重ねることにより、当該第一収容部81及び第二収容部82の内部が密閉される。
【0080】
また、第二収容部82は、X方向に移動可能に設けられている。具体的には、
図6に示すように、Z方向視で第二収容部82に重なる位置から−X方向にスライドさせることができるようになっている。この場合、例えばX方向に平行に延在する不図示のガイドレールに第二収容部82が接続されており、当該ガイドレールに沿って移動可能な構成とすることができる。
【0081】
なお、例えばモーター機構やエアシリンダ機構などの不図示の駆動部によって第二収容部82を移動させる構成であってもよいし、作業者が第二収容部82を手動で移動させる構成であってもよい。また、第二収容部82の移動を行う場合に、駆動部による移動と作業者の手動による移動とを切り替えて行うことが可能な構成であってもよい。
【0082】
図7は、第二収容部82をX方向に移動させた状態を示す図であり、チャンバー装置80を−Z方向に見た様子を示している。
図6及び
図7に示すように、第二収容部82を−X方向にスライドさせることにより、第一収容部81の位置と第二収容部82の位置とがX方向に相対的にずれた状態となる(
図6では一点鎖線で示している)。この場合、第一収容部81と第二収容部82とがZ方向視で重なった位置に配置されている状態に比べて、作業者が第一収容部81の内部や第二収容部82の内部などに容易にアクセスできるため、メンテナンス性が向上することになる。
【0083】
第一収容部81は、底部81aと、側壁部81bとを有している。底部81aは、チャンバー装置80の外側(−Z側)へ突出するように湾曲して形成されている(湾曲部)。本実施形態では、第一収容部81の底部全体が湾曲するように形成された例を示しているが、これに限られることは無く、一部が−Z側に突出するように湾曲された構成であってもよい。
【0084】
側壁部81bは、底部81aの周縁部から+Z側へ向けて角筒状に形成されている。第一収容部81の+Z側の端部81cは、Z方向視において側壁部81bを囲う位置に形成されている。当該端部81cは側壁部81bに対してチャンバー装置80の外側へ延びるように突出した形状となっている。側壁部81bと端部81cとの間は、段部81dによって接続されている。段部81dは、XY平面に平行な面を有している。
【0085】
底部81aには、当該底部81aをZ方向に貫通する貫通孔81eが形成されている。貫通孔81eは、
図7に示すように、Z方向視において第一収容部81の中央部を囲うように4つ設けられている。4つの貫通孔81eは、第一収容部81の中央部と各角部との間の位置にそれぞれ配置されている。貫通孔81eは、リフト部85の一部を貫通させる。
【0086】
また、第一収容部81には、冷媒流通部97が設けられている。
冷媒流通部97は、第一収容部81を冷却するための冷媒を流通させる。第一収容部81の内部には、冷媒を流通させる流路(不図示)が形成されている。冷媒流通部97は、当該流路に冷媒を供給する供給部97aと、流路からの冷媒を排出する排出部97bとを有している。供給部97aは、不図示の冷媒供給源に接続されている。なお、排出部97bから排出された冷媒を温調し、再び供給部97aに戻す構成としてもよい。このように冷媒を循環させることにより、冷媒を無駄なく使用することができる。
【0087】
一方、第二収容部82は、天井部82aと、側壁部82bとを有している。天井部82aは、チャンバー装置80の外側(−Z側)へ突出するように湾曲して形成されている(湾曲部)。本実施形態では、第二収容部82の底部全体が湾曲するように形成された例を示しているが、これに限られることは無く、一部が−Z側に突出するように湾曲された構成であってもよい。
【0088】
側壁部82bは、天井部82aの周縁部から−Z側へ向けて角筒状に形成されている。第二収容部82の−Z側の端部82cは、第一収容部81の端部81cと同様、Z方向視において側壁部82bを囲う位置に形成されている。当該端部82cは側壁部82bに対してチャンバー装置80の外側へ延びるように突出した形状となっている。側壁部82bと端部82cとの間は、段部82dによって接続されている。段部82dは、XY平面に平行な面を有している。
【0089】
第二収容部82の+Y側端面及び−Y側端面には、気体流通規制板82eが設けられている。各気体流通規制板82eは、矩形の板状に形成されており、例えば開かれた状態のチャンバー装置80の第一収容部81及び第二収容部82の+Y側側面及び−Y側側面を覆うことが可能な寸法に形成されている。各気体流通規制板82eは、Z方向に移動可能である。
【0090】
また、第二収容部82には、冷媒流通部98が設けられている。
冷媒流通部98は、第二収容部82を冷却するための冷媒を流通させる。第二収容部82の内部には、第一収容部81と同様、冷媒を流通させる流路(不図示)が形成されている。冷媒流通部98は、当該流路に冷媒を供給する供給部98aと、流路からの冷媒を排出する排出部98bとを有している。供給部98aは、不図示の冷媒供給源に接続されている。なお、排出部98bから排出された冷媒を温調し、再び供給部98aに戻す構成としてもよい。このように冷媒を循環させることにより、冷媒を無駄なく使用することができる。
【0091】
上記構成では、第一収容部81の底部81a及び第二収容部82の天井部82aがチャンバー装置80の外側へ向けて湾曲しているため、閉塞状態のチャンバー装置80の内部の耐圧性が高められることになる。このため、第一収容部81の底部81a及び第二収容部82の天井部82aが平坦に形成された場合に比べて、チャンバー装置80の内部の圧力を高くすることが可能となっている。当該チャンバー装置80は、数気圧(例、3気圧)程度の圧力に対して耐圧性を有している。
【0092】
第一加熱板83は、第一収容部81に収容されている。第一加熱板83は、基板Sを載置させた状態で当該基板Sを加熱する。第一加熱板83は、例えば石英などを用いて形成されており、内部には赤外線装置やホットプレートなどの加熱装置が設けられている。このような加熱装置として、第一加熱板83の内部には、外周側加熱部83a及び内周側加熱部83bが設けられている。外周側加熱部83a及び内周側加熱部83bは、Z方向視において環状に形成されており、第一加熱板83の外周側及び内周側に二重に配置されている。このため、第一加熱板83は、表面全体が均一に加熱されることになる。第一加熱板83の温度は、例えば200℃〜800℃程度に調整可能である。第一加熱板83は、支持部83cによって第一収容部81の側壁部81bに支持されている。第一加熱板83には複数の貫通孔83dが形成されている。貫通孔83dは、リフト部85の一部を貫通させる。
【0093】
第二加熱板84は、第二収容部82に収容されている。第二加熱板84は、例えば金属材料を用いて形成されており、内部には赤外線装置やホットプレートなどの加熱装置が設けられている。このような加熱装置として、第二加熱板84の内部には、第一加熱板83と同様に、外周側加熱部84a及び内周側加熱部84bが設けられている。外周側加熱部84a及び内周側加熱部84bは、Z方向視において環状に形成されており、第二加熱板84の外周側及び内周側に二重に配置されている。このため、第二加熱板84は、表面全体が均一に加熱されることになる。第二加熱板84の温度は、例えば200℃〜800℃程度に調整可能である。第二加熱板84は、不図示の昇降機構によって第二収容部82とは別個にZ方向への移動が可能に設けられている。第二加熱板84をZ方向へ移動させることにより、第二加熱板84と基板Sとの間隔を調整できるようになっている。第二加熱板84は、支持部84cによって第二収容部82の側壁部82bに支持されている。
【0094】
第一加熱板83の+Z側の面(基板を支持する面)及び第二加熱板84の−Z側の面は、それぞれすりガラス状に形成されている。これにより、第一加熱板83の表面から当該第一加熱板83に載置される基板Sに対する熱転写を防ぐことができると共に、輻射熱を利用することが可能となり、加熱効率が高められる。また、すりガラス状に形成されている面の研磨状態を変更することで、基板Sに対する光の透過をコントロールできる。
【0095】
リフト部85は、アーム部71と第一加熱板83との間で基板Sを移動させる。リフト部85は、複数の支持ピン85aと、当該支持ピン85aを保持してZ方向に移動可能な移動部85bとを有している。図示を判別しやすくするため、
図7では支持ピン85aが2つ設けられた構成が示されているが、実際には例えば4個(
図7参照)配置させることができる。第一加熱板83に設けられる複数の貫通孔83dは、Z方向視で複数の支持ピン85aに対応する位置に配置されている。各支持ピン85aは、基板Sの周縁部(例、外周から数mm程度の位置)を支持するように配置されている。
【0096】
封止部86は、第一収容部81の端部81cに形成されている。封止部86としては、例えば樹脂材料などを用いて形成されたOリングを用いることができる。封止部86は、第二収容部82の端部82cが第一収容部81の端部81cに重ねられた状態で、当該第一収容部81と第二収容部82との間を封止する。このため、第一収容部81及び第二収容部82の内部を密閉することができる。なお、当該Oリングを水冷する冷却機構を別途設けてもよい。
【0097】
気体供給部87は、チャンバー装置80の内部に窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、空気などを供給することによって、チャンバー装置80の内部の雰囲気や圧力を調整する。気体供給部87は、第一収容部81に設けられた底部給気部87a及び段部給気部87bと、第二収容部82に設けられた天井給気部87c及び段部給気部87dとを有している。
【0098】
底部給気部87aは、第一収容部81の底部81aに例えば3つ設けられている。3つの底部給気部87aは、Z方向視において第一収容部81の中央部に対して+X側、−X側及び+Y側にそれぞれ1つずつ配置されている。3つの底部給気部87aは、それぞれ同一種類のガスを供給することも可能であるし、異なる種類のガスを供給することも可能である。
【0099】
段部給気部87bは、第一収容部81の段部81dに例えば4つ設けられている。段部給気部87bは、Z方向視において矩形環状に形成された段部81dの各辺に1つずつ設けられている。段部給気部87bは、段部81dの各辺の中央部に対してずれた位置に設けられている。
【0100】
段部給気部87bは、第一収容部81を貫通して設けられた気体流通管と、当該気体流通管に接続された気体供給源(不図示)とを有している。段部81dには開口部が設けられている。気体流通管の端部は、当該開口部に接続されている。段部給気部87bは、気体流通管を介して第一加熱板83の周囲に気体を供給可能である。
【0101】
天井給気部87cは、第二収容部82の天井部82aに例えば3つ設けられている。3つの天井給気部87cは、Z方向視において第二収容部82の中央部に対して−X側、+Y側及び−Y側にそれぞれ1つずつ配置されている。
【0102】
段部給気部87dは、第二収容部82の段部82dに例えば4つ設けられている。段部給気部87dは、Z方向視において矩形環状に形成された段部82dの各辺に1つずつ設けられている。段部給気部87dは、段部82dの各辺の中央部に対してずれた位置に設けられている。段部給気部87dは、第二加熱板84の周囲に気体を供給可能である。
【0103】
気体供給部87の各部の気体供給源としては、例えばガスボンベやガス管などが用いられる。なお、複数種類の気体供給源を設けると共に各気体供給源を切り替え可能な構成としてもよい。これにより、チャンバー装置80の内部に一種類又は複数種類の気体を選択的に供給することが可能となる。気体供給部87から供給される気体としては、例えば窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスや、硫黄含有ガス(硫化水素など)などの塗布膜の反応を促進させる反応促進用気体、水素含有ガス(水素ガスなど)、酸素ガス、空気などが挙げられる。また、ミスト状の水を供給可能な構成としてもよい。
【0104】
排気部88は、チャンバー装置80の内部を吸引し、チャンバー装置80の内部の気体を排出する。排気部88は、第一収容部81に設けられた底部排気部88aと、第二収容部82に設けられた天井排気部88bとを有している。排気部88の吸引源としては、例えばポンプなどが用いられている。
【0105】
底部排気部88aは、Z方向視において第一収容部81の底部81aの中央部に設けられている。底部排気部88aは、空気よりも重い気体を効率的に排気可能である。また、天井排気部88bは、第二収容部82の天井部82aに一箇所設けられている。天井排気部88bは、例えばZ方向視において第二収容部82の中央部に対して−X方向かつ−Y方向にずれた位置に配置されている。天井排気部88bは、空気よりも軽い気体(水素など)を効率的に排気可能である。
【0106】
気体供給部87の気体供給量及び排気部88の気体排出量は、例えば不図示のMFC(Mass Flow Controler)によって調整可能となっている。当該MFCは、例えば第二チャンバーCB2のグローブ部GX2(
図1参照)などに配置させることができる。
【0107】
第一断熱部89は、Z方向について第一加熱板83と第一収容部81の底部81aとの間に配置されている。第一断熱部89は、第一加熱板83の熱が底部81aに伝達されるのを抑制する。第一断熱部89は、例えば第一収容部81の側部に連結された支持部材によって支持されている。第一断熱部89は、第一加熱板83及び底部81aの両方に対して接触しないように間隔を空けて配置されている。
【0108】
また、第二断熱部90は、Z方向について第二加熱板84と第二収容部82の天井部82aとの間に配置されている。第二断熱部90は、第二加熱板84の熱が天井部82aに伝達されるのを抑制する。第二断熱部90は、上記の第一断熱部89と同様、例えば第二収容部82の側部に連結された支持部材によって支持されている。また、第二断熱部90は、第二加熱板84及び天井部82aの両方に対して接触しないように間隔を空けて配置されている。
【0109】
第一断熱部89及び第二断熱部90は、例えばZ方向視で矩形に形成されている。第一断熱部89及び第二断熱部90は、それぞれSUSなどの材料を用いて形成された板状部材が複数重ねられた構成を有している。各板状部材の厚さ(積層方向:Z方向の寸法)は、例えば1mm程度に形成されている。
【0110】
気体流通部91は、気体噴出部92、吸引部93及び循環部(循環経路)94を有している。気体流通部91は、第一収容部81と第二収容部82との間に温調用の気体(温調気体)を流通させる。
気体噴出部92は、チャンバー装置80の−X側に配置されている。気体噴出部92は、チャンバー装置80に向けられた噴出口92aを有している。具体的には、当該噴出口92aは、気体噴出部92のうちYZ平面に平行な面に形成されており、+X方向に向けられている。気体噴出部92は、噴出口92aから+X方向へ向けて気体を噴出可能である。
【0111】
気体噴出部92は、
図6に示すように、不図示の昇降機構によって、待機位置P1と噴出位置P2との間でZ方向に昇降移動が可能となっている。待機位置P1は、例えば気体噴出部92の上端(+Z側端部)が第一収容部81の端部81cよりも−Z側に配置されるような位置とすることができる。これにより、待機位置P1に気体噴出部92が配置された場合であっても、チャンバー装置80に対する基板Sの搬入動作及び搬出動作を行うことが可能となる。
【0112】
また、噴出位置P2は、例えば
図6の一点鎖線で示すように、開かれた状態のチャンバー装置80の第一収容部81と第二収容部82との間の空間に気体噴出部92の噴出口92aが向けられるような位置とすることができる。この場合、チャンバー装置80が開かれた状態において、噴出位置P2に配置される気体噴出部92の噴出口92aから気体が噴出されると、噴出された気体は第一加熱板83と第二加熱板84との間に吹き付けられることになる。
【0113】
吸引部93は、チャンバー装置80の+X側に配置されている。したがって、X方向において、気体噴出部92と吸引部93との間にチャンバー装置80が配置されることになる。吸引部93は、チャンバー装置80に向けられた吸引口93aを有している。具体的には、吸引口93aは、開かれた状態のチャンバー装置80の第一収容部81と第二収容部82との間の空間に向けられるように配置されている。このため、例えばチャンバー装置80が開かれた状態において、気体噴出部92及び吸引部93を共に駆動することにより、気体噴出部92から噴出された気体が第一加熱板83と第二加熱板84との間の空間を+X方向に吹き抜けて吸引部93に吸引されることになる。
【0114】
なお、第一加熱板83と第二加熱板84との間の空間を+X方向に移動する気体は、第一加熱板83、第二加熱板84及びその間の空間(第一加熱板83に載置される基板Sを含む、以下同様)の熱を吸収して吸引部93へと移動する。このため、気体の移動によって第一加熱板83、第二加熱板84及びその間の空間は冷却されることになる。
【0115】
循環部94は、吸引部93から吸引された気体を気体噴出部92へ供給する。循環部94は、第一配管94a、ラジエーター94b、第二配管94c、ブロアー94d、第三配管94e、フィルター94f及び第四配管94gを有している。第一配管94aは、吸引部93とラジエーター94bとを接続する。ラジエーター94bは、吸引部93から吸引された気体を冷却する。第二配管94cは、ラジエーター94bとブロアー94dとを接続する。ブロアー94dは、吸引部93から気体噴出部92へと気体を圧送する。気体流通部91において、ブロアー94dが気体の駆動源となっている。第三配管94eは、ブロアー94dとフィルター94fとを接続する。フィルター94fは、第三配管94eから第四配管94gへ送られる気体のうち異物を除去する。第四配管94gは、フィルター94fと気体噴出部92とを接続する。
【0116】
このような構成では、吸引部93で吸引された気体が循環部94において清浄化され冷却されて気体噴出部92に供給されるため、気体噴出部92から噴出される気体が効率的に第一加熱板83、第二加熱板84及びその間の空間の熱を吸収することができる。これにより、冷却効率が高められることになる。なお、吸引部93とラジエーター94bとの間(例、第一配管94aの途中)に熱交換器を配置してもよい。
【0117】
また、本実施形態では、溶媒濃度センサSR3及びSR4が設けられている。溶媒濃度センサSR3及びSR4は、上記の溶媒濃度センサSR1及びSR2と同様に、周囲の雰囲気中における液状体の溶媒(本実施形態ではヒドラジン)の濃度を検出し、検出結果を制御部CONTに送信する。溶媒濃度センサSR3は、処理室60aのうち架台74上の加熱部70の+Y側に配置されている。溶媒濃度センサSR3は、加熱部70から外れた位置に配置されている。溶媒濃度センサSR4は第二チャンバーCB2の外部に配置されている。本実施形態では、空気よりも比重が大きいヒドラジンの濃度を検出するため、溶媒濃度センサSR3及びSR4は、上記溶媒濃度センサSR1及びSR4と同様に、それぞれ基板Sの搬送経路よりも鉛直方向の下側に配置されている。また、第二チャンバーCB2の外部にも溶媒濃度センサSR4を配置することにより、第二チャンバーCB2からのヒドラジンの漏出があった場合にも検出可能である。
【0118】
(基板搬送経路)
基板供給回収部LUの第二開口部12、塗布部CTの第一開口部21並びに第二開口部22、減圧乾燥部VDの第一開口部51並びに第二開口部52、焼成部BKの開口部61は、X方向に平行な直線上に並んで設けられている。このため、基板Sは、X方向に直線上に移動する。また、基板供給回収部LUから焼成部BKの加熱部70に収容されるまでの経路においては、Z方向の位置が保持されている。このため、基板Sによる周囲の気体の攪拌が抑制される。
【0119】
(アンチチャンバー)
図1に示すように、第一チャンバーCB1には、アンチチャンバーAL1〜AL3が接続されている。
アンチチャンバーAL1〜AL3は、第一チャンバーCB1の内外を連通して設けられている。アンチチャンバーAL1〜AL3は、それぞれ処理室20aの構成要素を第一チャンバーCB1の外部へ取り出したり、第一チャンバーCB1の外部から処理室20aに当該構成要素を入れ込んだりするための経路である。
【0120】
アンチチャンバーAL1は、吐出部31に接続されている。吐出部31に設けられるノズルNZは、アンチチャンバーAL1を介して処理室20aへの出し入れが可能となっている。アンチチャンバーAL2は、液状体供給部33に接続されている。液状体供給部33は、アンチチャンバーAL2を介して処理室20aへの出し入れが可能となっている。
【0121】
アンチチャンバーAL3は、液状体調合部36に接続されている。液状体調合部36では、アンチチャンバーAL3を介して液体を処理室20aに出し入れ可能となっている。また、アンチチャンバーAL3は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。このため、例えば塗布部CTにおいて液状体の試し塗りを行う場合、アンチチャンバーAL3から未処理の基板Sを処理室20aに供給することが可能である。また、試し塗りを行った後の基板SをアンチチャンバーAL3から取り出すことが可能である。また、緊急時などにアンチチャンバーAL3から臨時に基板Sを取り出すことも可能である。
【0122】
また、第二チャンバーCB2には、アンチチャンバーAL4が接続されている。
アンチチャンバーAL4は、加熱部70に接続されている。アンチチャンバーAL4は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。このため、例えば加熱部70において基板Sの加熱を行う場合、アンチチャンバーAL4から基板Sを処理室60aに供給することが可能である。また、加熱処理を行った後の基板SをアンチチャンバーAL4から取り出すことが可能である。
【0123】
(グローブ部)
図1に示すように、第一チャンバーCB1には、グローブ部GX1が接続されている。また、第二チャンバーCB2には、グローブ部GX2が接続されている。
グローブ部GX1及びGX2は、作業者が第一チャンバーCB1及び60内にアクセスするための部分である。作業者がグローブ部GX1及びGX2内に手を挿入することにより、第一チャンバーCB1及び60内のメンテナンス動作などを行うことができるようになっている。グローブ部GX1及びGX2は、袋状に形成されている。グローブ部GX1及びGX2は、それぞれ第一チャンバーCB1及び60の複数個所に配置されている。グローブ部GX1及びGX2内に作業者が手を入れたか否かを検出するセンサなどが第一チャンバーCB1及び60内に配置されていても構わない。
【0124】
(ゲートバルブ)
基板供給回収部LUの第二開口部12と塗布部CTの第一開口部21との間には、ゲートバルブV1が設けられている。ゲートバルブV1は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV1をZ方向に移動させることで、基板供給回収部LUの第二開口部12と塗布部CTの第一開口部21とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部12及び第一開口部21が同時に開放されると、これら第二開口部12と第一開口部21との間で基板Sの移動が可能となる。
【0125】
第一チャンバーCB1の第二開口部22と第三チャンバーCB3の第一開口部51との間には、ゲートバルブV2が設けられている。ゲートバルブV2は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV2をZ方向に移動させることで、第一チャンバーCB1の第二開口部22と第三チャンバーCB3の第一開口部51とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部22及び第一開口部51が同時に開放されると、これら第二開口部22と第一開口部51との間で基板Sの移動が可能となる。
【0126】
第三チャンバーCB3の第二開口部52と第二チャンバーCB2の開口部61との間には、ゲートバルブV3が設けられている。ゲートバルブV3は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV3をZ方向に移動させることで、第三チャンバーCB3の第二開口部52と第二チャンバーCB2の開口部61とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部52及び開口部61が同時に開放されると、これら第二開口部52と開口部61との間で基板Sの移動が可能となる。
【0127】
(制御装置)
制御部CONTは、塗布装置CTRを統括的に制御する部分である。具体的には、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD、焼成部BKにおける動作、ゲートバルブV1〜V3の動作などを制御する。調整動作の一例として、制御部CONTは、溶媒濃度センサSR1〜SR4による検出結果に基づいて、気体供給部37aの供給量を調整する。制御部CONTは、処理時間の計測等に用いる不図示のタイマーなどを有している。
【0128】
(塗布方法)
次に、本実施形態に係る塗布方法を説明する。本実施形態では、上記のように構成された塗布装置CTRを用いて基板S上に塗布膜を形成する。塗布装置CTRの各部で行われる動作は、制御部CONTによって制御される。
【0129】
制御部CONTは、まず、外部から基板供給回収部LUに基板Sを搬入させる。この場合、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞された状態として、蓋部14を開けて基板Sをチャンバー10の収容室10aに収容させる。基板Sが収容室10aに収容された後、制御部CONTは、蓋部14を閉じさせる。
【0130】
蓋部14が閉じられた後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を開放させ、チャンバー10の収容室10aと塗布部CTの第一チャンバーCB1の処理室20aとを連通させる。ゲートバルブV1を開放させた後、制御部CONTは、基板搬送部15を用いて基板SをX方向へ搬送する。
【0131】
第一チャンバーCB1の処理室20aに基板Sの一部が挿入された後、制御部CONTは、基板搬送部25を用いて基板Sを処理室20aに完全に搬入させる。基板Sが搬入された後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させる。制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させた後、基板Sを処理ステージ28へと搬送する。
【0132】
図8は、塗布部CTの構成を簡略化し一部の構成を省略して示す図である。以下、
図9〜
図12においても同様である。
図8に示すように、基板Sが処理ステージ28上に載置されると、塗布部CTにおいて塗布処理が行われる。当該塗布処理に先立って、制御部CONTは、ゲートバルブV1及びV2が閉塞された状態とし、気体供給部37a及び排気部37bを用いて不活性ガスの供給及び吸引を行わせる。
【0133】
この動作により、処理室20aの雰囲気及び圧力が調整される。処理室20aの雰囲気及び圧力の調整後、制御部CONTは、ノズル駆動部NA(
図8では不図示)を用いてノズルNZをノズル待機部44からノズル先端管理部45へと移動させる。制御部CONTは、以後塗布処理の間、処理室20aの雰囲気及び圧力の調整動作を継続して行わせる。
【0134】
ノズルNZがノズル先端管理部45に到達した後、制御部CONTは、
図9に示すように、ノズルNZに対して予備吐出動作を行わせる。予備吐出動作では、制御部CONTは、吐出口OPから液状体Qを吐出させる。予備吐出動作の後、制御部CONTは、
図10に示すように、払拭部45aをガイドレール45bに沿ってX方向に移動させ、ノズルNZの先端TP及びその近傍の傾斜部を払拭させる。
【0135】
ノズルNZの先端TPを払拭させた後、制御部CONTは、ノズルNZを処理ステージ28へ移動させる。ノズルNZの吐出口OPが基板Sの−Y側端部に到達した後、制御部CONTは、
図11に示すように、ノズルNZを+Y方向に所定速度で移動させつつ、吐出口OPから基板Sへ向けて液状体Qを吐出させる。この動作により、基板S上には液状体Qの塗布膜Fが形成される。
【0136】
基板Sの所定領域に液状体Qの塗布膜を形成した後、制御部CONTは、基板搬送部25を用いて基板Sを処理ステージ28から第二ステージ26Bへと+X方向に移動させる。また、制御部CONTは、ノズルNZを−Y方向へ移動させ、ノズル待機部44へと戻す。
【0137】
基板Sが第一チャンバーCB1の第二開口部22に到達した後、制御部CONTは、
図13に示すように、ゲートバルブV2を開放させ、基板Sを第一チャンバーCB1から第二チャンバーCB2へと搬送させる(搬送ステップ)。なお、当該搬送ステップを行う際に、基板Sは接続部CNに配置される第三チャンバーCB3を経由する。制御部CONTは、基板Sが第三チャンバーCB3を通過する際に、当該基板Sに対して減圧乾燥部VDを用いて乾燥処理を行わせる。具体的には、第三チャンバーCB3の処理室50aに基板Sが収容された後、制御部CONTは、
図14に示すように、ゲートバルブV2を閉塞させる。
【0138】
ゲートバルブV2を閉塞させた後、制御部CONTは、昇降機構53aを用いて加熱部53のZ方向の位置を調整させる。その後、制御部CONTは、
図15に示すように、気体供給部58を用いて処理室50aの雰囲気を調整させると共に、排気部59を用いて処理室50aを減圧させる。この動作により処理室50aが減圧すると、基板Sに形成された液状体Qの塗布膜に含まれる溶媒の蒸発が促進され、塗布膜が乾燥する。なお、制御部CONTは、排気部59を用いて処理室50aを減圧する減圧動作を行わせる間に、昇降機構53aを用いて加熱部53のZ方向の位置を調整させても構わない。
【0139】
また、制御部CONTは、
図15に示すように、加熱部53を用いて基板S上の塗布膜Fを加熱する。この動作により、基板S上の塗布膜Fに含まれる溶媒の蒸発が促進され、減圧下での乾燥処理を短時間で行うことができる。制御部CONTは、加熱部53によって加熱動作を行う間に、昇降機構53aを用いて加熱部53のZ方向の位置を調整させても構わない。
【0140】
減圧乾燥処理が行われた後、制御部CONTは、
図16に示すように、ゲートバルブV3を開放させ、基板Sを接続部CNから第二チャンバーCB2へと搬送させる。基板Sが第二チャンバーCB2の処理室60aに収容された後、制御部CONTはゲートバルブV3を閉塞させる。
【0141】
基板支持部72aの移動により、
図17に示すように、基板Sが第一加熱板83上の中央部に配置される。その後、制御部CONTは、
図18に示すように、リフト部85を+Z方向に移動させる。この動作により、基板Sは搬送アーム72の基板支持部72aから離れ、リフト部85の複数の支持ピン85aに支持される。このようにして基板Sが基板支持部72aからリフト部85へと渡される。基板Sがリフト部85の支持ピン85aによって支持された後、制御部CONTは、基板支持部72aをチャンバー装置80の外部へ−X方向に退避させる。
【0142】
基板支持部72aを退避させた後、制御部CONTは、
図19に示すように、リフト部85を−Z方向に移動させ基板Sを第一加熱板83上に載置させると共に、第二収容部82を−Z方向に移動させる。この動作により、第二収容部82の端部82cが第一収容部81の端部81cに重なり、端部82cと端部81cとの間で封止部86が挟まれた状態となる。このため、第一収容部81、第二収容部82及び封止部86によって密閉された焼成室80aが形成される。
【0143】
焼成室80aを形成し、基板Sを第一加熱板83上に載置させた後、制御部CONTは、
図20に示すように、第一加熱板83及び第二加熱板84の温度を上昇させ、基板Sを焼成する(加熱ステップ)。加熱ステップでは、例えば塗布膜Fに残っている溶剤を蒸発させると共に、塗布膜Fを凝集させて塗布膜Fに含まれる気泡を除去する。第一加熱板83及び第二加熱板84には加熱装置が外側及び内側に二重に配置されており、表面全体が均一に加熱されるため、基板Sの加熱ムラが低減される。また、加熱ステップでは、第一加熱板83及び第二加熱板84の温度を変えてもよい。
【0144】
また、当該加熱ステップでは、塗布膜Fに含まれる金属成分のうち少なくとも一種類の成分を融点以上まで加熱し、塗布膜Fの少なくとも一部を溶解させる。例えば、塗布膜FがCZTS型の太陽電池に用いられる場合であれば、塗布膜Fを構成する成分のうち、Ti、S、Seについて融点以上まで加熱し、これらの物質を液状化させて塗布膜Fを凝集させる。
【0145】
また、当該加熱ステップでは、塗布膜Fに含まれるSn原子をS化又はSe化させる反応を行わせる。制御部CONTは、当該反応を促進させるため、例えば硫黄含有ガス(例、硫化水素ガス)などの反応促進用気体を焼成室80aに供給させる。塗布膜Fに含まれるSn原子がS化又はSe化されることにより、塗布膜Fの光電変換特性が高められる。
【0146】
上記の加熱ステップでは、制御部CONTは、気体供給部87(底部給気部87a、段部給気部87b、天井給気部87c、段部給気部87d)を用いて焼成室80aに気体を供給すると共に、排気部88(底部排気部88a、天井排気部88b)を用いて焼成室80aを吸引させる。この動作により、焼成室80aの雰囲気及び圧力が調整されると共に、第二収容部82から第一収容部81にかけて気流が形成される。当該気流により、塗布膜Fから蒸発した溶媒成分や気泡などが押し流され、排気部88から吸引される。
【0147】
また、制御部CONTは、加熱状態に応じて排気部88による排気を停止させ、気体供給部87から窒素ガスなどの気体を焼成室80aに供給させることで焼成室80aを加圧する(加圧ステップ)。例えば、制御部CONTは、焼成室80aが所定の加熱温度に到達するまでは当該焼成室80aを減圧させるようにし、所定の加圧温度に到達したときに焼成室80aを加圧させるように切り替えることができる。また、制御部CONTは、所定の加圧温度で基板Sを一定時間加熱する場合には、当該基板Sの加熱されている間は加圧状態を維持させることができる。この動作により、塗布膜Fの周囲の圧力が調整された状態で基板Sが加熱されるため、例えばSn原子のS化又はSe化反応が活発に行われることになる。
【0148】
加熱ステップでは、第一断熱部89によって第一加熱板83から第一収容部81の底部81aへの熱の移動が抑制される。また、第二断熱部90によって第二加熱板84から第二収容部82の天井部82aへの熱の移動が抑制される。これにより、チャンバー装置80の温度が上昇しすぎるのを防ぐことができる。なお、制御部CONTは、上記加熱ステップを行う間、冷媒流通部97の供給部97aから排出部97bへ冷媒を流通させて第一収容部81を冷却させると共に、冷媒流通部98の供給部98aから排出部98bへ冷媒を流通させて第二収容部82を冷却させる。これにより、チャンバー装置80の温度が上昇しすぎないようにすることができる。
【0149】
このような加熱ステップが完了した後、塗布膜Fが固形化する温度まで当該塗布膜Fを冷却する(冷却ステップ)。当該冷却ステップにおいては、まず、制御部CONTは、
図21に示すように、第二収容部82を+Z方向に移動させ、チャンバー装置80を開いた状態にすると共に、気体噴出部92を待機位置P1から噴出位置P2へ移動させる。この動作により、気体噴出部92の噴出口92aが、第一収容部81(第一加熱板83)と第二収容部82(第二加熱板84)との間の空間に向けられる。
【0150】
この状態で、制御部CONTは、ブロアー94dを作動させる。ブロアー94dの作動により、
図22に示すように、気体噴出部92の噴出口92aから気体が噴出されると共に、吸引部93の吸引口93aから気体が吸引される。この動作により、気体噴出部92から噴出された気体は、第一加熱板83と第二加熱板84との間の空間を+X方向に移動して吸引部93に吸引される。
【0151】
第一加熱板83と第二加熱板84との間の空間を+X方向に移動する気体は、第一加熱板83、第二加熱板84及びその間の空間に配置される基板Sの熱を吸収して吸引部93へと移動する。このため、気体の移動によって第一加熱板83、第二加熱板84及び基板S(塗布膜Fを含む)が冷却されることになる。
【0152】
一方、吸引部93で吸引された気体は、循環部94のラジエーター94bにおいて冷却され、フィルター94fにおいて異物が除去されて清浄化されて気体噴出部92に供給される。このため、気体噴出部92からは、熱の吸収効率が高く清浄な気体が噴出されることになる。したがって、上記循環部94が設けられることにより、第一加熱板83、第二加熱板84及び基板Sの冷却効率が高められることになり、チャンバー装置80の内部を清浄な状態で維持することができる。
【0153】
なお、気体噴出部92から噴出された気体は、吸引部93へ向けて+X方向に移動する成分を含むが、一方で、第一加熱板83と第二加熱板84との間の空間をY方向に移動してチャンバー装置80の外部へ放出される成分も含む。このようにチャンバー装置80の外部に気体が放出されると、第二チャンバーCB2の環境が変化する場合がある。
【0154】
これに対して、制御部CONTは、チャンバー装置80が開かれた状態において、第二収容部82の+Y側側面及び−Y側側面に設けられた各気体流通規制板82eを−Z方向に移動させ、チャンバー装置80の+Y側側面及び−Y側側面を覆わせた状態とすることができる。この状態で気体の噴出及び吸引を行う場合、気体噴出部92から噴出された気体がチャンバー装置80の+Y側又は−Y側から漏れるのを防ぐことが可能となる。したがって、気体噴出部92から噴出された気体は、より確実に吸引部93によって吸引され、循環部94で清浄化及び冷却された状態で気体噴出部92から再度噴出されることになる。これにより、第二チャンバーCB2の環境を保持することができる。
【0155】
上記冷却ステップにより、塗布膜Fを固形化することで、当該塗布膜Fの強度が高められることになる。なお、制御部CONTは、上記冷却ステップを行う間、冷媒流通部97の供給部97aから排出部97bへ冷媒を流通させて第一収容部81を冷却させたり、冷媒流通部98の供給部98aから排出部98bへ冷媒を流通させて第二収容部82を冷却させたりしてもよい。これにより、チャンバー装置80の状態をより効率的に調整することができる。
【0156】
冷却ステップの後、制御部CONTは、
図23に示すように、基板Sを搬送アーム72の基板支持部72aに保持させて基板Sをチャンバー装置80から搬出する。その後、制御部CONTは、当該基板Sを−X方向へ搬送させる。具体的には、加熱部70からアーム部71、基板案内ステージ66を経て焼成部BKから搬出され、減圧乾燥部VD、塗布部CTを経て基板供給回収部LUへ戻される。基板Sが基板供給回収部LUへ戻された後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させた状態で蓋部14を開放させる。その後、作業者は、チャンバー10内の基板Sを回収し、新たな基板Sをチャンバー10の収容室10aに収容させる。
【0157】
なお、基板Sが基板供給回収部LUへ戻された後、基板Sに形成された塗布膜F上に更に別の塗布膜を重ねて形成する場合、制御部CONTは、再度基板Sを塗布部CTへ搬送させ、塗布処理、減圧乾燥処理及び焼成処理を繰り返して行わせる。このようにして基板S上に塗布膜Fが積層される。
【0158】
また、上記チャンバー装置80のメンテナンスを行う場合、
図24に示すように、第二収容部82を−X方向にスライドさせることにより、X方向について、第一収容部81と第二収容部82とがずれた位置に配置される。この場合、作業者は、第一収容部81の構成要素及び第二収容部82の構成要素に対してアクセスしやすくなる。メンテナンス作業が終了した後、第二収容部82を+X方向に移動させて元の位置に戻すことにより、上記の加熱動作が可能となる。
【0159】
以上のように、本実施形態によれば、チャンバー装置80の第一加熱板83と第二加熱板84とで基板Sを挟んだ状態で当該基板Sを加熱しつつ、気体供給部87及び排気部88を含む圧力調整部を用いてチャンバー装置80の焼成室80aを加圧及び減圧することが可能となる。このため、加熱時において塗布膜Fの周囲の圧力を高圧から低圧まで所望の値に調整することができる。これにより、基板Sの周囲の環境を調整する能力に優れたチャンバー装置80を提供することができる。
【0160】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、
図25に示すように、チャンバー装置80の第一収容部81と第二収容部82との間に、スペーサ部材180を配置させた状態で加熱ステップを行う構成であってもよい。この場合、チャンバー装置80の容積(焼成室80aの体積)が増加するため、塗布膜Fに含まれる溶剤の蒸発量が増加する。また、基板S(塗布膜F)と第二加熱板84との距離が大きくなるため、溶剤が蒸発しやすくなる。これにより、溶剤の蒸発を促進させることができる。
【0161】
上記構成において、スペーサ部材180は、第一収容部81の端部81c及び第二収容部82の端部82cの寸法に対応するようにZ方向視で矩形環状に形成されている。スペーサ部材180の底面の一方(
図25では+Z側の端面)には、封止部181が形成されている。スペーサ部材180は、第一収容部81との間では端部81cに設けられた封止部86によって封止され、第二収容部82との間では当該封止部181によって封止される。これにより、スペーサ部材180を配置した場合であっても、チャンバー装置80の密閉性が保持される。なお、スペーサ部材180は、連結部182によって第二収容部82に連結されている。スペーサ部材180を第二収容部82に連結することにより、Z方向における基板搬入位置(高さ)が第一加熱板83の表面高さとの距離が大きくなりすぎるのを防ぐことができ、基板Sを搬入しやすくすることができる。
【0162】
なお、チャンバー装置80の容積を変更する手法として、上記のようなスペーサ部材180を配置させる場合の他に、例えば、チャンバー装置80の密閉性を維持した状態で第一収容部81及び第二収容部82の一部が変形する構成であってもよい。
【0163】
また、上記実施形態においては、第一加熱板83が支持部83cによって第一収容部81の側壁部81bに支持された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、
図26に示すように、第一加熱板83の外周に鍔部83fが設けられ、当該鍔部83fが第一収容部81の段部81dに載置された状態で第一加熱板83が第一収容部81に支持される構成であってもよい。この場合、第一加熱板83と第一収容部81との間は、位置ずれなどが生じないように、ボルトなどの固定部材によって確実に固定されるようにする。
【0164】
この構成において、鍔部83fは、例えば第一加熱板83の主要部と同一の材料(石英など)によって形成されている。鍔部83fは、第一加熱板83の外周の全体に亘って設けられている。このため、第一加熱板83の外周側から第一収容部81の底部81a側への気体の回り込みが抑制される。鍔部83fの配置は、例えば第一加熱板83の所期の温度分布に影響を及ぼさないように設計することができる。
【0165】
また、上記実施形態においては、第二チャンバーCB2のチャンバー装置80において焼成動作を行わせる構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、
図27に示すように、チャンバー装置80とは異なる位置に別途第四チャンバーCB4が設けられ、当該第四チャンバーCB4に設けられる第二チャンバー装置HTによって基板Sを加熱する構成であっても構わない。
【0166】
この場合、例えば基板Sに塗布膜Fを積層させた後、第四チャンバーCB4の第二チャンバー装置HTにおいて、積層された塗布膜Fを焼成するための加熱処理(第二加熱ステップ)を行うようにすることができる。なお、第二チャンバー装置HTの構成については、塗布膜Fを焼成することが可能な構成であればどのような構成であってもよい。例えば第二チャンバー装置HTの構成を、上記実施形態に記載のチャンバー装置80と同一構成とすることができる。第二加熱ステップにおける加熱処理では、チャンバー装置80による加熱処理よりも高い加熱温度で塗布膜Fを加熱する。この加熱処理により、積層された塗布膜Fの固形分(金属成分)を結晶化させることができるので、塗布膜Fの膜質を更に高めることができる。
【0167】
なお、基板Sに塗布膜Fを積層させた後の加熱については、第二チャンバーCB2のチャンバー装置80において行うようにしても構わない。この場合、チャンバー装置80では、塗布膜Fの各層を焼成する場合の加熱温度よりも、積層させた後の塗布膜Fを焼成する場合の加熱温度の方が高くなるように制御すればよい。
【0168】
また、塗布装置CTRの構成として、例えば
図28に示すように、基板供給回収部LUの+X側に、塗布部CTを有する第一チャンバーCB1、減圧乾燥部VDを有する接続部CN及び焼成部BKを有する第二チャンバーCB2が繰り返して配置された構成であっても構わない。
【0169】
図28では、第一チャンバーCB1、接続部CN及び第二チャンバーCB2が3回繰り返して配置された構成が示されているが、これに限られることは無く、第一チャンバーCB1、接続部CN及び第二チャンバーCB2が2回繰り返して配置された構成や、第一チャンバーCB1、接続部CN及び第二チャンバーCB2が4回以上繰り返して配置された構成であっても構わない。
【0170】
このような構成によれば、第一チャンバーCB1、接続部CN及び第二チャンバーCB2がX方向に直列に繰り返し設けられているため、基板Sを一方向(+X方向)に搬送すれば良く、基板SをX方向に往復させる必要が無いため、基板Sに対して塗布膜を積層する工程を連続して行うことができる。これにより、基板Sに対して効率的に塗布膜を形成することができる。
【0171】
なお、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。例えば、上記実施形態においては、塗布部CTの構成として、スリット型のノズルNZを用いた構成としたが、これに限られることは無く、例えば中央滴下型の塗布部を用いても構わないし、インクジェット型の塗布部を用いても構わない。また、例えば基板S(第一基板S1及び第二基板S2)上に配置される液状体をスキージなどを用いて拡散させて塗布する構成であっても構わない。
【0172】
また、例えば、上記塗布装置CTRを用いた処理を行う場合、第一チャンバーCB1、第二チャンバーCB2、第三チャンバーCB3、チャンバー装置80を含むチャンバー装置の少なくとも1つにおいて、動作時の所定のタイミング(例えば、チャンバー装置への基板Sの搬入前、搬出後、ノズルNZによる液状体Qの吐出前、吐出後、加熱部53による加熱前、加熱後、第一加熱板83、第二加熱板84による加熱前、加熱後など、各チャンバーにおける処理の前後を含む)又は非動作時に、必要に応じてメンテナンス処理や、チャンバー装置の周囲又は内部の状態を所定状態(例えば、初期状態、所定の雰囲気の状態、所定の温度状態など)にするための処理(例えば、構造物の移動、クリーニング、雰囲気調整、温度調整など)を適宜行ってもよい。
【0173】
また、上記メンテナンス処理、上記所定状態にするための各処理等を行う場合には、例えば洗浄液などを用いた洗浄を行ってもよいし、気体供給部58、気体供給部87あるいはこれらに対応する構成を用いて、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、空気、水蒸気などの各種ガスのうち少なくとも1つのガスあるいは他の種類のガスを適宜各チャンバー装置の周囲又は内部に供給してもよい。また、必要に応じて搬送系(例えば、ローラー、アームなど)を適宜作動させるようにしてもよい。
【0174】
また、上記実施形態において、塗布装置CTRが一つの部屋に収容される構成である場合、当該部屋の雰囲気を調整する気体供給排出部が設けられた構成であっても構わない。この場合、当該気体供給排出部を用いて部屋の雰囲気中のヒドラジンなどを排出することができるため、部屋全体の雰囲気の清浄化を行うことができ、より確実に塗布環境の変化を抑制することができる。
【0175】
なお、上記において実施形態又はその変形例として記載した各構成要素は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができるし、また、組み合わされた複数の構成要素のうち一部の構成要素を適宜用いないようにすることもできる。