(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アモルファスシリコン膜形成工程では、前記吸着ステップと前記塩素除去ステップとをこの順に複数回繰り返す、ことを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の形成方法。
前記吸着ステップでは、前記ソースガスに、ヘキサクロロジシラン、オクタクロロトリシラン、または、テトラクロロシランを用いる、ことを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン酸化膜の形成方法。
前記シリコン酸化膜形成工程では、前記酸化ガスに、酸素、酸化窒素、または、一酸化二窒素を用いる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシリコン酸化膜の形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなシリコン酸化膜には、その膜中のSi密度を高密度した高品質なシリコン酸化膜を提供することが求められている。このため、Si密度を高密度化することができるシリコン酸化膜の形成方法が求められている。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、Si密度を高密度化したシリコン酸化膜の形成方法、及び、シリコン酸化膜の形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るシリコン酸化膜の形成方法は、
被処理体が収容され
所定の温度に加熱した反応室内に塩素とケイ素とを含むソースガスを供給して活性化させ、該活性化したソースガスと前記被処理体とを反応させて当該被処理体にケイ素を含む吸着物を吸着させる吸着ステップと、
所定の温度に加熱した前記反応室内に水素ガスを供給して活性化させ、該活性化した水素ガスと前記吸着物とを反応させて当該吸着物に含まれる塩素を除去する塩素除去ステップと、を備え、
前記吸着ステップ実行後に前記塩素除去ステップを実行することにより、前記被処理体にアモルファスシリコン膜を形成するアモルファスシリコン膜形成工程と、
所定の温度に加熱した前記反応室内に酸化ガスを供給して前記アモルファスシリコン膜を酸化して、前記被処理体にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、を備え、
前記アモルファスシリコン膜形成工程と前記シリコン酸化膜形成工程とを、この順に複数回繰り返
し、
前記塩素除去ステップでは、前記反応室内に供給された水素ガスは当該反応室内の熱で活性化され、活性化した水素ガスにより、Si−Si結合を切断せずにSi−Cl結合を切断する、ことを特徴とする。
【0007】
前記アモルファスシリコン膜形成工程では、例えば、前記吸着ステップと前記塩素除去ステップとをこの順に複数回繰り返す。
前記吸着ステップでは、例えば、前記ソースガスに、ヘキサクロロジシラン、オクタクロロトリシラン、または、テトラクロロシランを用いる。
【0008】
前記シリコン酸化膜形成工程では、例えば、前記酸化ガスとして酸素ラジカルを用いる。
前記シリコン酸化膜形成工程では、例えば、前記酸化ガスに、酸素、酸化窒素、または、一酸化二窒素を用いる。
前記塩素除去ステップでは、例えば、前記反応室内を550℃〜650℃に設定する。
【0009】
本発明の第2の観点に係るシリコン酸化膜の形成装置は、
被処理体を収容する反応室と、
前記反応室内に塩素とケイ素とを含むソースガスを供給するソースガス供給手段と、
前記反応室内に水素ガスを供給する水素ガス供給手段と、
前記反応室内に酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段と、
前記反応室内を加熱する加熱手段と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記加熱手段を制御して前記反応室内を加熱するとともに、前記ソースガス供給手段を制御して前記反応室内にソースガスを供給させ、前記反応室内に収容された被処理体にケイ素を含む吸着物を吸着し、
前記加熱手段を制御して前記反応室内を加熱するとともに、前記水素ガス供給手段を制御して前記反応室内に水素ガスを供給させ、前記吸着物に含まれる塩素を除去することにより、前記被処理体にアモルファスシリコン膜を形成し、
前記加熱手段を制御して前記反応室内を加熱するとともに、前記酸化ガス供給手段を制御して前記反応室内に酸化ガスを供給させ、前記アモルファスシリコン膜を酸化して、前記被処理体にシリコン酸化膜を形成する、
処理を複数回繰り返
し、
前記反応室内に供給された水素ガスは当該反応室内の熱で活性化され、活性化された水素ガスによりSi−Si結合を切断せずにSi−Cl結合を切断する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Si密度を高密度化したシリコン酸化膜の形成方法、及び、シリコン酸化膜の形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るシリコン酸化膜の形成方法、及び、シリコン酸化膜の形成装置について説明する。本実施の形態では、本発明のシリコン酸化膜の形成装置として、バッチ式の縦型処理装置を用いる場合を例に説明する。
図1に本実施の形態の処理装置の構成を示す。
【0013】
図1に示すように、処理装置1は、長手方向が垂直方向に向けられた反応管2を備えている。反応管2は、内管2aと、内管2aを覆うとともに内管2aと所定の間隔を有するように形成された有天井の外管2bとから構成された二重管構造を有する。内管2aと外管2bの側壁は、
図1に矢印で示すように、複数の開口を有している。内管2a及び外管2bは、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0014】
反応管2の一側方には、反応管2内のガスを排気するための排気部3が配置されている。排気部3は、反応管2に沿って上方に延びるように形成され、反応管2の側壁に設けられた開口を介して、反応管2と連通する。排気部3の上端は、反応管2の上部に配置された排気口4に接続されている。この排気口4には図示しない排気管が接続され、排気管には図示しないバルブや後述する真空ポンプ127などの圧力調整機構が設けられている。この圧力調整機構により、外管2bの一方の側壁側(ソースガス供給管8)から供給されたガスが、内管2a、外管2bの他方の側壁側、排気部3、排気口4を介して、排気管に排気され、反応管2内が所望の圧力(真空度)に制御される。
【0015】
反応管2の下方には、蓋体5が配置されている。蓋体5は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。また、蓋体5は、後述するボートエレベータ128により上下動可能に構成されている。そして、ボートエレベータ128により蓋体5が上昇すると、反応管2の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ128により蓋体5が下降すると、反応管2の下方側(炉口部分)が開口される。
【0016】
蓋体5の上には、ウエハボート6が載置されている。ウエハボート6は、例えば、石英により形成されている。ウエハボート6は、半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚、収容可能に構成されている。なお、蓋体5の上部に、反応管2の炉口部分から反応管2内の温度が低下することを防止する保温筒や、半導体ウエハWを収容するウエハボート6を回転可能に載置する回転テーブルを設け、これらの上にウエハボート6を載置してもよい。これらの場合、ウエハボート6に収容された半導体ウエハWを均一な温度に制御しやすくなる。
【0017】
反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなる昇温用ヒータ7が設けられている。この昇温用ヒータ7により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、反応管2の内部に収容された半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。
【0018】
反応管2の下端近傍の側面には、反応管2(外管2b)内にソースガスを供給するソースガス供給管8が挿通されている。ソースガスは、被処理体にソース(Si)を吸着させるSiソースであり、後述する吸着ステップで用いられる。Siソースとしては、塩素(Cl)とケイ素(Si)を含むガス、例えば、ヘキサクロロジシラン(HCD:Si
2Cl
6)、オクタクロロトリシラン(Si
3Cl
8)、テトラクロロシラン(SiCl
4)を用いることができる。本例では、HCDが用いられている。
【0019】
ソースガス供給管8には、垂直方向の所定間隔ごとに供給孔が設けられており、供給孔から反応管2(外管2b)内にソースガスが供給される。このため、
図1に矢印で示すように、ソースガスが垂直方向の複数箇所から反応管2内に供給される。
【0020】
また、反応管2の下端近傍の側面には、反応管2(外管2b)内に水素(H
2)ガスを供給する水素ガス供給管9が挿通されている。水素ガスは、吸着されたソースから塩素を除去し、アモルファスシリコン(a−Si)を形成するガスであり、後述する塩素除去ステップで用いられる。
【0021】
また、反応管2の下端近傍の側面には、反応管2(外管2b)内に酸化ガスを供給する酸化ガス供給管10が挿通されている。酸化ガスは、a−Si膜を酸化するガスであり、後述する酸化工程で用いられる。酸化ガスとしては、酸素(O
2)、オゾン(O
3)、酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N
2O)の他、水素(H
2)+酸素(O
2)、O
2プラズマ、O
3処理等に使用される酸素ラジカルを用いることができる。本例では、酸化ガスとして、酸素(O
2)が用いられている。
【0022】
さらに、反応管2の下端近傍の側面には、反応管2(外管2b)内に希釈ガス及びパージガスとしての窒素(N
2)を供給する窒素ガス供給管11が挿通されている。
【0023】
ソースガス供給管8、水素ガス供給管9、酸化ガス供給管10、窒素ガス供給管11は、後述するマスフローコントローラ(MFC:Mass Flow Controller)125を介して、図示しないガス供給源に接続されている。
【0024】
また、反応管2内には、反応管2内の温度を測定する、例えば、熱電対からなる温度センサ122、及び、反応管2内の圧力を測定する圧力計123が複数本配置されている。
【0025】
また、処理装置1は、装置各部の制御を行う制御部100を備えている。
図2に制御部100の構成を示す。
図2に示すように、制御部100には、操作パネル121、温度センサ122、圧力計123、ヒータコントローラ124、MFC125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等が接続されている。
【0026】
操作パネル121は、表示画面と操作ボタンとを備え、オペレータの操作指示を制御部100に伝え、また、制御部100からの様々な情報を表示画面に表示する。
【0027】
温度センサ122は、反応管2内及び排気管内などの各部の温度を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
圧力計123は、反応管2内及び排気管内などの各部の圧力を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
【0028】
ヒータコントローラ124は、昇温用ヒータ7を個別に制御するためのものであり、制御部100からの指示に応答して、昇温用ヒータ7に通電してこれらを加熱し、また、昇温用ヒータ7の消費電力を個別に測定して、制御部100に通知する。
【0029】
MFC125は、ソースガス供給管8、水素ガス供給管9、酸化ガス供給管10、窒素ガス供給管11等の各配管に配置され、各配管を流れるガスの流量を制御部100から指示された量に制御するとともに、実際に流れたガスの流量を測定して、制御部100に通知する。
【0030】
バルブ制御部126は、各配管に配置され、各配管に配置された弁の開度を制御部100から指示された値に制御する。
真空ポンプ127は、排気管に接続され、反応管2内のガスを排気する。
【0031】
ボートエレベータ128は、蓋体5を上昇させることにより、ウエハボート6(半導体ウエハW)を反応管2内にロードし、蓋体5を下降させることにより、ウエハボート6(半導体ウエハW)を反応管2内からアンロードする。
【0032】
制御部100は、レシピ記憶部111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、I/Oポート(Input/Output Port)114と、CPU(Central Processing Unit)115と、これらを相互に接続するバス116とから構成されている。
【0033】
レシピ記憶部111には、セットアップ用レシピと複数のプロセス用レシピとが記憶されている。処理装置1の製造当初は、セットアップ用レシピのみが格納される。セットアップ用レシピは、各処理装置に応じた熱モデル等を生成する際に実行されるものである。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う熱処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みの半導体ウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、各種のガスの供給の開始及び停止のタイミングと供給量などを規定する。
【0034】
ROM112は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU115の動作プログラム等を記憶する記録媒体である。
RAM113は、CPU115のワークエリアなどとして機能する。
【0035】
I/Oポート114は、操作パネル121、温度センサ122、圧力計123、ヒータコントローラ124、MFC125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等に接続され、データや信号の入出力を制御する。
【0036】
CPU115は、制御部100の中枢を構成し、ROM112に記憶された制御プログラムを実行する。また、CPU115は、操作パネル121からの指示に従って、レシピ記憶部111に記憶されているレシピ(プロセス用レシピ)に沿って、処理装置1の動作を制御する。すなわち、CPU115は、温度センサ122、圧力計123、MFC125等に反応管2内及び排気管内などの各部の温度、圧力、流量等を測定させ、この測定データに基づいて、ヒータコントローラ124、MFC125、バルブ制御部126、真空ポンプ127等に制御信号等を出力し、上記各部がプロセス用レシピに従うように制御する。
バス116は、各部の間で情報を伝達する。
【0037】
次に、以上のように構成された処理装置1を用いたシリコン酸化膜の形成方法について、
図3に示すレシピ(タイムシーケンス)を参照して説明する。本実施の形態のシリコン酸化膜の形成方法では、ALD法により、半導体ウエハW上にシリコン酸化膜を形成する。
【0038】
図3に示すように、本実施の形態では、半導体ウエハWにソース(Si)を吸着させる吸着ステップと、吸着したソースに含まれる塩素(Cl)を除去する塩素除去ステップと、を複数回繰り返してアモルファスシリコン(a−Si)膜を形成するa−Si膜形成工程と、形成されたa−Si膜を酸化(シリコン酸化膜を形成)する酸化工程と、を備えている。そして、a−Si膜形成工程と酸化工程とを、複数回、例えば、100サイクル実行する(繰り返す)ことにより、半導体ウエハW上に所望厚のシリコン酸化膜が形成される。また、
図3に示すように、本実施の形態では、Siソースガスとしてヘキサクロロジシラン(HCD)、水素ガスとして水素(H
2)、酸化ガスとして酸素(O
2)、希釈ガスとして窒素(N
2)を用いている。
【0039】
なお、以下の説明において、処理装置1を構成する各部の動作は、制御部100(CPU115)により制御されている。また、各処理における反応管2内の温度、圧力、ガスの流量等は、前述のように、制御部100(CPU115)がヒータコントローラ124(昇温用ヒータ7)、MFC125(ソースガス供給管8等)、バルブ制御部126、真空ポンプ127を制御することにより、
図3に示すレシピに従った条件に設定される。
【0040】
まず、昇温用ヒータ7により反応管2内を所定のロード温度、例えば、
図3(a)に示すように、300℃に維持する。次に、半導体ウエハWを収容したウエハボート6を蓋体5上に載置する。そして、ボートエレベータ128により蓋体5を上昇させ、半導体ウエハW(ウエハボート6)を反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0041】
続いて、半導体ウエハWにソースを吸着する吸着ステップを実施する。まず、昇温用ヒータ7により反応管2内を所定の温度、例えば、
図3(a)に示すように、600℃に設定する。また、窒素ガス供給管11から反応管2内に所定量の窒素を供給するとともに、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、
図3(b)に示すように、133Pa(1Torr)に設定する(安定化工程)。
【0042】
ここで、反応管2内の温度は、500〜700℃とすることが好ましく、550〜650℃にすることがより好ましい。かかる範囲の温度にすることにより、形成されるシリコン酸化膜の膜質や膜厚均一性等を向上させることができるためである。
【0043】
反応管2内の圧力は、0.133Pa(0.001Torr)〜13.3kPa(100Torr)にすることが好ましい。かかる範囲の圧力にすることにより、半導体ウエハWとSiとの反応を促進することができるためである。反応管2内の圧力は、133Pa(1Torr)〜1330Pa(10Torr)にすることがさらに好ましい。かかる範囲の圧力にすることにより、反応管2内の圧力制御が容易になるためである。
【0044】
次に、半導体ウエハWにアモルファスシリコン(a−Si)膜を形成するa−Si膜形成工程を実行する。a−Si膜形成工程は、半導体ウエハWにSiを吸着させる吸着ステップと、吸着ステップで半導体ウエハWに吸着したソースに含まれる塩素(Cl)を除去する塩素除去ステップとを備えている。そして、この吸着ステップと塩素除去ステップとを複数回繰り返すことにより、半導体ウエハWにa−Si膜が形成される。
【0045】
まず、吸着ステップを実行する。吸着ステップでは、
図3(d)に示すように、ソースガス供給管8からSiソースとしてのHCDを所定量供給するとともに、
図3(c)に示すように、窒素ガス供給管11から所定量の窒素を反応管2内に供給する(フロー工程)。
【0046】
反応管2内に供給されたHCDは、反応管2内で加熱されて活性化する。このため、反応管2内にHCDが供給されると、半導体ウエハWと活性化されたSiが反応し、半導体ウエハWにSiが吸着する。
【0047】
半導体ウエハWに所定量のSiが吸着すると、ソースガス供給管8からのHCD及び窒素ガス供給管11からの窒素の供給を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、例えば、
図3(c)に示すように、窒素ガス供給管11から反応管2内に所定量の窒素を供給して反応管2内のガスを反応管2外に排出する(パージ、Vacuum工程)。
【0048】
次に、塩素除去ステップを実行する。まず、塩素除去ステップでは、昇温用ヒータ7により反応管2内を所定の温度、例えば、
図3(a)に示すように、600℃に設定する。また、窒素ガス供給管11から反応管2内に所定量の窒素を供給するとともに、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、
図3(b)に示すように、133Pa(1Torr)に設定する。次に、
図3(e)に示すように、水素ガス供給管9から水素ガスを所定量供給するとともに、
図3(c)に示すように、窒素ガス供給管11から所定量の窒素を反応管2内に供給する(フロー工程)。
【0049】
反応管2内に供給された水素は、反応管2内で加熱されて活性化する。このため、反応管2内に水素が供給されると、吸着したSiのCl接合(Si−Cl)を切断し、吸着したソースに含まれる塩素を除去する。
【0050】
ここで、吸着したソースに含まれる塩素の除去する方法として、反応管2内に水素ラジカルを供給することが考えられる。しかし、水素ラジカルを用いて塩素を除去すると、吸着したSiのCl接合(Si−Cl)を切断するだけでなく、Si−Si結合も切断してしまう。このため、半導体ウエハWには、水素(H)を多く含んだアモルファスシリコン(a−Si)膜が形成されてしまい、Si密度を高密度化することができない。このため、吸着したソースに含まれる塩素の除去には、水素ガスが用いられる。
【0051】
吸着したソースに含まれる塩素が除去されると、水素ガス供給管9からの水素ガス及び窒素ガス供給管11からの窒素の供給を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、例えば、
図3(c)に示すように、窒素ガス供給管11から反応管2内に所定量の窒素を供給して反応管2内のガスを反応管2外に排出する(パージ、Vacuum工程)。
【0052】
これにより、半導体ウエハWにアモルファスシリコン(a−Si)膜が形成される。続いて、この吸着ステップと塩素除去ステップとを所定回数繰り返す。この結果、半導体ウエハWに所望厚のa−Si膜が形成される(a−Si膜形成工程)。
【0053】
次に、形成されたa−Si膜を酸化(シリコン酸化膜を形成)する酸化工程を実行する。まず、酸化工程では、昇温用ヒータ7により反応管2内を所定の温度、例えば、
図3(a)に示すように、600℃に設定する。また、窒素ガス供給管11から反応管2内に所定量の窒素を供給するとともに、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、
図3(b)に示すように、133Pa(1Torr)に設定する。次に、
図3(f)に示すように、酸化ガス供給管10から酸素ガスを所定量供給するとともに、
図3(c)に示すように、窒素ガス供給管11から所定量の窒素を反応管2内に供給する(フロー工程)。
【0054】
反応管2内に供給された酸素は、反応管2内で加熱されて活性化する。このため、反応管2内に酸素が供給されると、形成されたa−Si膜が酸化される。この結果、半導体ウエハWにシリコン酸化膜(SiO
2)が形成される。
【0055】
半導体ウエハWにシリコン酸化膜が形成されると、酸化ガス供給管10からの酸素ガス及び窒素ガス供給管11からの窒素の供給を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、例えば、
図3(c)に示すように、窒素ガス供給管11から反応管2内に所定量の窒素を供給して反応管2内のガスを反応管2外に排出する(パージ、Vacuum工程)。
【0056】
これにより、a−Si膜形成工程と酸化工程とからなるALD法の1サイクルが終了する。続いて、再び、a−Si膜形成工程の吸着ステップから始まるALD法の1サイクルを開始する。そして、このサイクルを所定回数繰り返す。これにより、半導体ウエハWに所望厚のシリコン酸化膜が形成される。
【0057】
半導体ウエハWに所望厚のシリコン酸化膜が形成されると、昇温用ヒータ7により反応管2内を所定のロード温度、例えば、
図3(a)に示すように、300℃に維持するとともに窒素ガス供給管11から反応管2内に所定量の窒素を供給して反応管2内を窒素でサイクルパージして常圧へと戻す(常圧復帰工程)。次に、ボートエレベータ128により蓋体5を下降させることにより、半導体ウエハWをアンロードする(アンロード工程)。
【0058】
このように、半導体ウエハWにHCDを吸着させた後、水素を供給することで吸着したソースに含まれる塩素を除去してa−Si膜を形成することを複数回実施しているので、吸着サイトに依存することなく、Si密度を高密度化することができる。これは、従来のSiソースを半導体ウエハWの表面に吸着させる場合では、吸着させる表面の吸着サイトのみにSiが吸着してしまい、Si密度を高密度化できないためである。
【0059】
次に、本発明の効果を確認するため、前述のシリコン酸化膜の形成方法により、半導体ウエハWに100nm厚のシリコン酸化膜を形成した場合のSi密度を測定したところ、2.30g/cm
3以上の値であった。比較のため、特許文献1の方法により形成した100nm厚のシリコン酸化膜のSi密度を測定したところ、2.25g/cm
3程度の値であった。このため、本実施の形態のシリコン酸化膜の形成方法により、Si密度を高密度化できることを確認した。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、半導体ウエハWにHCDを吸着させた後、水素を供給してソースに含まれる塩素を除去してa−Si膜を形成することを複数回実施した後、a−Si膜に酸素を供給して酸化させることにより半導体ウエハWにシリコン酸化膜を形成しているので、形成したシリコン酸化膜のSi密度を高密度化することができる。
【0061】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0062】
上記実施の形態では、半導体ウエハWにHCDを吸着させた後、水素を供給してソースに含まれる塩素を除去してa−Si膜を形成することを複数回実施した場合を例に本発明を説明したが、例えば、
図4に示すように、a−Si膜形成工程を複数回繰り返すことなく、酸化工程を実施してもよい。この場合にも、形成したシリコン酸化膜のSi密度を高密度化することができる。
【0063】
上記実施の形態では、SiソースとしてHCDを用いた場合を例に本発明を説明したが、Siソースは、塩素(Cl)とケイ素(Si)を含むガス、例えば、オクタクロロトリシラン(Si
3Cl
8)、テトラクロロシラン(SiCl
4)であってもよい。
【0064】
上記実施の形態では、酸化ガスとして酸素を用いた場合を例に本発明を説明したが、酸化ガスは、塩素除去ステップ後に、半導体ウエハWに吸着されたSi−H基をSi−O基に置換可能なものであればよく、例えば、酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N
2O)であってもよい。
【0065】
特に、酸化ガスとして、酸素ラジカルを用いることが好ましい。酸素ラジカルは酸素に比べて酸化力が強く、仮に、酸素を用いて高密度化したSiを酸化しきれない場合であっても、酸素ラジカルを用いることにより高密度化したSiを全て酸化させることができるためある。
【0066】
例えば、反応管2内の圧力を1330Pa(10Torr)以下に維持した状態で、H
2+O
2をH
2流量がO
2流量を含めた全流量の5%〜90%に制御して反応管2内に供給することにより、酸化ガスとして、酸素ラジカルを用いることができる。また、O
2プラズマ、オゾン(O
3)処理によっても、酸化ガスとして、酸素ラジカルを用いることができる。
【0067】
上記実施の形態では、反応管2内の温度を600℃とした場合を例に本発明を説明したが、例えば、触媒、UV、磁力等により処理ガスを活性化させることにより、反応管2内の温度を低くしてもよい。
【0068】
上記実施の形態では、a−Si膜形成工程と酸化工程とを1サイクルとして、このサイクルを100回繰り返した場合を例に本発明を説明したが、例えば、50サイクルのように、サイクル数を少なくしてもよい。また、200サイクルのように、サイクル数を多くしてもよい。この場合にも、サイクル数に応じて、例えば、Siソースの供給量等を調整することにより、形成したシリコン酸化膜のSi密度を高密度化することができる。また、例えば、a−Si膜形成工程において、最初の10回まで塩素除去ステップを実行せず、11回目から塩素除去ステップを実行するように、塩素除去ステップの実行回数を制御して、形成されるシリコン酸化膜の膜質を調整してもよい。
【0069】
上記実施の形態では、ALD法を用いて半導体ウエハW上にシリコン酸化膜を形成した場合を例に本発明を説明したが、本発明はALD法を用いた場合に限定されるものではなく、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて半導体ウエハWにシリコン酸化膜を形成してもよい。
【0070】
上記実施の形態では、HCD等の処理ガス供給時に希釈ガスとしての窒素を供給する場合を例に本発明を説明したが、処理ガス供給時に窒素を供給しなくてもよい。ただし、窒素を希釈ガスとして含ませることにより処理時間の設定等が容易になることから、希釈ガスを含ませることが好ましい。希釈ガスとしては、不活性ガスであることが好ましく、窒素の他に、例えば、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)が適用できる。
【0071】
本実施の形態では、処理装置1として、二重菅構造のバッチ式の処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、単管構造のバッチ式の処理装置に本発明を適用することも可能である。また、バッチ式の横型処理装置や枚葉式の処理装置に本発明を適用することも可能である。
【0072】
本発明の実施の形態にかかる制御部100は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)など)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部100を構成することができる。
【0073】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS:Bulletin Board System)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。