(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349611
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ホログラム記録再生装置
(51)【国際特許分類】
G11B 7/135 20120101AFI20180625BHJP
G11B 7/0065 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
G11B7/135
G11B7/0065
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-253016(P2014-253016)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-115380(P2016-115380A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
(72)【発明者】
【氏名】木下 延博
(72)【発明者】
【氏名】室井 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】片野 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 信雄
【審査官】
斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−125559(JP,A)
【文献】
特開2010−238305(JP,A)
【文献】
特開2002−279644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/00−7/013
G11B 7/12−7/22
G11B 7/28−7/30
G03H 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射され、第1の偏光ビームスプリッタにより信号搬送光と参照光に分離され、情報の記録時においては、該信号搬送光が所望の情報を担持して信号光としてホログラム記録媒体の所定位置に照射されるとともに、分離された前記参照光が該所定位置に照射されることによって該所定位置に情報が記録され、情報の再生時においては、前記参照光のみを前記所定位置に照射して記録されている情報を読み出し、読み出された情報を撮像手段により撮像して情報が再生されるように構成され、
前記情報の記録時における記録用参照光と、前記情報の再生時における再生用参照光とは、第2の偏光ビームスプリッタにより偏光分離され、前記ホログラム記録媒体を挟んで互いに対向するような位置関係で該ホログラム記録媒体に照射される位相共役型とされたホログラム記録再生装置において、
前記情報の記録時にあっては、記録用参照光偏向角可変ミラーにより前記ホログラム記録媒体に照射された前記記録用参照光のうち、該ホログラム記録媒体を透過し、再生用参照光偏向角可変ミラーにて反射された記録用参照光透過光を吸収する光吸収部と、前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角度の変化に拘らず、前記記録用参照光透過光が、前記光吸収部に入射するように前記再生用参照光偏向角可変ミラーによる参照光偏向角を制御する記録用参照光偏向角制御手段と、からなる記録用光吸収手段、
および、前記情報の再生時にあっては、前記再生用参照光偏向角可変ミラーにより前記ホログラム記録媒体に照射された前記再生用参照光のうち、該ホログラム記録媒体を透過し、前記記録用参照光偏向角可変ミラーにて反射された再生用参照光透過光を吸収する光吸収部と、前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角度の変化に拘らず、前記再生用参照光透過光が、光吸収部に入射するように前記記録用参照光偏向角可変ミラーによる参照光偏向角を制御する再生用参照光偏向角制御手段と、からなる再生用光吸収手段、
のうち少なくとも一方の光吸収手段を備えたことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項2】
前記情報の記録時において、前記ホログラム記録媒体に照射される前記記録用参照光の反射角を順次変更し、当該記録用参照光の前記ホログラム記録媒体への入射角度を順次変更しながら、この記録用参照光を前記ホログラム記録媒体の被照射部に重ねて照射する記録用参照光偏向角可変ミラーと、
前記情報の再生時において、前記ホログラム記録媒体に照射する前記再生用参照光の反射角を順次変更し、当該再生用参照光の前記ホログラム記録媒体への入射角度を順次変更しながら、この再生用参照光を前記ホログラム記録媒体の被照射部に重ねて照射する再生用参照光偏向角可変ミラーを備えたことを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録再生装置。
【請求項3】
前記記録用光吸収手段および前記再生用光吸収手段の双方を備え、
前記情報の記録時にあっては、前記記録用参照光透過光が、前記再生用参照光偏向角可変ミラーにより反射され、前記情報の再生時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタを反射/透過し、該第2の偏光ビームスプリッタの近傍に配された光吸収部に照射され、
前記情報の再生時にあっては、前記再生用参照光透過光が、前記記録用参照光偏向角可変ミラーにより反射され、前記情報の記録時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタを透過/反射し、前記第2の偏光ビームスプリッタの近傍に配された前記光吸収部に照射されるように構成されてなる、ことを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム記録再生装置。
【請求項4】
前記記録用光吸収手段および前記再生用光吸収手段の双方を備え、
前記光吸収部が、前記再生用参照光偏向角可変ミラーの近傍に配された記録時光吸収部
と、前記記録用参照光偏向角可変ミラーの近傍に配された再生時光吸収部と、からなることを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム記録再生装置。
【請求項5】
前記記録用参照光透過光および/または前記再生用参照光透過光を前記光吸収部に導く
、光導波路または複数の反射ミラーを備えることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のホログラム記録再生装置。
【請求項6】
前記光吸収部が、ビームポケットまたは光吸収材からなることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のホログラム記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムを利用した情報記録や情報再生の処理を行なう際に、ホログラム記録媒体を透過することで発生する不要光を処理し得るホログラム記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量かつ高速な情報記録再生システムとしてホログラムメモリが注目されている。ホログラムメモリは、参照光・信号光と称される2つのコヒーレント光を干渉させ、生じた干渉縞を記録媒体に屈折率変化として記録・保持する。信号光は「ページデータ」と称される2次元データ画像により空間的に変調され、レンズを通して記録媒体へ照射される。
【0003】
このようなホログラムメモリにおいてさらなる高密度化・大容量化を可能とするため、参照光の条件(例えば記録媒体への入射角度、波長、あるいは波面など)を変化させることで、媒体の同一箇所に複数のページデータを多重して記録する多重記録技術が種々開発されている。多重記録の手法としてはこれまで様々なものが提案されている。入射角度を変えながら多重記録する角度多重方式はその代表的なものである(例えば下記特許文献1を参照)。
【0004】
角度多重方式においては、参照光をガルバノメータミラーによって角度変更したり、あるいは参照光の軸と信号光の軸とを含む平面に対し垂直な軸線回りに記録媒体を回転させたりすることによって、参照光の記録媒体への進入角度を少しずつ変えながら複数のページデータをホログラムの形態で記録する。また再生時には、記録したときと同一条件の参照光を記録媒体へ照射することにより、記録媒体内部のホログラムにより光が回折し、再生光が得られる。これをカメラ等で撮影し復号することによって元の情報を読み出すことが可能となる。
【0005】
図3は、例えば特許文献1にみられるような、典型的な角度多重方式によるホログラム記録再生装置の主要な光学系を示す図である。この
図3を参照しながら、角度多重方式によるホログラム記録再生の概要を説明する。なお、
図3に示す装置の各部材に付された符号は、後述する
図1の装置の対応する各部材に付された符号に200を加えて表すものとする。
【0006】
図3に示すように、ページデータがSLM(Spatial Light Modulator:空間光変調器
)223に表示され、信号搬送光が空間的に変調されて信号光として出力される。信号光はFTL (フーリエ変換レンズ)210により集光され、開口絞り212により不要な高
周波成分が除去されたのちリレーレンズ220により記録媒体211に照射される。このとき同時に、参照光を記録媒体211の信号光照射位置に重ねて照射することで、光の干渉縞が生じ、この干渉縞模様の光の強弱に応じた屈折率変化が記録材料に誘起され、これがホログラムとして保持される。媒体材料としては光反応性有機材料(フォトポリマー)等がよく用いられている。
【0007】
記録媒体211に向かう記録時参照光は、ガルバノメータミラー219で反射角度が順次変更され、リレーレンズ220を介して記録媒体211に照射された際の入射角度が順次変更される。このように参照光入射角度を順次変化させながら、その都度、異なるページデータを記録媒体の一箇所へ重ね書きしていくことにより角度多重ホログラム記録が完了する。
【0008】
一方、再生時においては、参照光のみを記録媒体211の情報記録位置に裏面側から照射する。このとき、媒体内のホログラムにて光が回折し再生光が生じる。この後、イメージセンサ(カメラ)221で撮影された再生ページデータに対し補間処理、領域切出し処理、あるいはフィルタリング等の信号処理を施したのち、復調・エラー訂正することで元データを復元できる。
【0009】
上記再生時の参照光照射方法は、再生時における参照光を、記録時における参照光とは位相共役となる方向から照射する、位相共役再生と称される手法である(例えば下記特許文献2を参照)。この位相共役再生の手法は、再生時の再生光光学系(リレーレンズ224、開口絞り212、FTL210およびPBS209)を記録時の信号光照射光学系と兼用できるので光学系を簡素化することが可能であり、さらには、信号光に重畳されていた光学系収差(ディストーション)を情報再生時に打ち消すことができるので、高品質な再生信号が得られるという利点を有している。
【0010】
また、再生時の参照光は、ガルバノメータミラー232からリレーレンズ233を経由して記録媒体211のホログラムへ照射することにより、位相共役再生が行なわれる。この場合、再生光は記録媒体からリレーレンズ224、開口絞り212、FTL210およびPBS209を介してイメージセンサ(カメラ)221に到達する。
【0011】
ところで、参照光が記録媒体へ照射されたのち、その大部分の光は記録または再生に寄与しない光として記録媒体を透過する(以後、「不要透過光」と称する)。この不要透過光をそのまま放置しておくと、光学系に配置されたミラー等で反射され、予期せぬ部位に照射され、後述する種々の不都合を引き起こす虞がある。
【0012】
このような不要透過光による不都合については、下記特許文献3に開示された解決手法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−154163号公報
【特許文献2】特開2010−129110号公報
【特許文献3】特開2005−275061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した特許文献3に記載された従来手法によれば、下述するような種々の不都合が生じる虞がある。
すなわち、情報記録時においては、記録媒体に近接配置された光吸収体の光吸収率が極めて高くなければ記録媒体の情報未記録箇所に不要透過光が照射されてしまい、フォトポリマーの重合反応が開始され、記録材料が本来の記録性能を発揮できなくなったり、記録媒体の情報記録中の箇所に不要透過光が照射され、二重参照光記録となり、記録したページデータの信号品質が劣化する等の虞がある。
【0015】
さらに、情報記録時において、不要透過光が信号光路中の光学部品にて散乱した場合、この散乱光が信号光に重畳され、ページデータの信号品質が劣化する虞がある。
【0016】
また、情報再生時においては、記録媒体の情報再生中の箇所に不要透過光が照射されてしまい、2つ以上のページデータが同時に再生され、相互にクロストークノイズとなり信号品質が劣化する虞がある。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、情報記録や情報再生に寄与しない不要透過光を適切に処理し、不要透過光が予期せぬ部位に照射されて種々の不都合が生じる虞を良好に回避し得るホログラム記録再生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の角度多重ホログラム記録再生装置は、
光源から出射され、第1の偏光ビームスプリッタにより信号搬送光と参照光に分離され、情報の記録時においては、該信号搬送光が所望の情報を担持して信号光としてホログラム記録媒体の所定位置に照射されるとともに、分離された前記参照光が該所定位置に照射されることによって該所定位置に情報が記録され、情報の再生時においては、前記参照光のみを前記所定位置に照射して記録されている情報を読み出し、読み出された情報を撮像手段により撮像して情報が再生されるように構成され、
前記情報の記録時における記録用参照光と、前記情報の再生時における再生用参照光とは、第2の偏光ビームスプリッタにより偏光分離され、前記ホログラム記録媒体を挟んで互いに対向するような位置関係で該ホログラム記録媒体に照射される位相共役型とされたホログラム記録再生装置において、
前記情報の記録時にあっては、記録用参照光偏向角可変ミラーにより前記ホログラム記録媒体に照射された前記記録用参照光のうち、該ホログラム記録媒体を透過し、再生用参照光偏向角可変ミラーにて反射された記録用参照光透過光を吸収する光吸収部と、前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角度の変化に拘らず、前記記録用参照光透過光が、前記光吸収部に入射するように前記再生用参照光偏向角可変ミラーによる参照光偏向角を制御する記録用参照光偏向角制御手段と、からなる記録用光吸収手段、
および、前記情報の再生時にあっては、前記再生用参照光偏向角可変ミラーにより前記ホログラム記録媒体に照射された前記再生用参照光のうち、該ホログラム記録媒体を透過し、前記記録用参照光偏向角可変ミラーにて反射された再生用参照光透過光を吸収する光吸収部と、前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角度の変化に拘らず、前記再生用参照光透過光が、光吸収部に入射するように前記記録用参照光偏向角可変ミラーによる参照光偏向角を制御する再生用参照光偏向角制御手段と、からなる再生用光吸収手段、
のうち少なくとも一方の光吸収手段を備えたことを特徴とするものである。
【0019】
また、前記情報の記録時において、前記ホログラム記録媒体に照射される前記記録用参照光の反射角を順次変更し、当該記録用参照光の前記ホログラム記録媒体への入射角度を順次変更しながら、この記録用参照光を前記ホログラム記録媒体の被照射部に重ねて照射する記録用参照光偏向角可変ミラーと、
前記情報の再生時において、前記ホログラム記録媒体に照射する前記再生用参照光の反射角を順次変更し、当該再生用参照光の前記ホログラム記録媒体への入射角度を順次変更しながら、この再生用参照光を前記ホログラム記録媒体の被照射部に重ねて照射する再生用参照光偏向角可変ミラーを備えることが好ましい。
【0020】
また、前記記録用光吸収手段および前記再生用光吸収手段の双方を備え、
前記情報の記録時にあっては、前記記録用参照光透過光が、前記再生用参照光偏向角可変ミラーにより反射され、前記情報の再生時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタを反射/透過し、該第2の偏光ビームスプリッタの近傍に配された光吸収部に照射され、
前記情報の再生時にあっては、前記再生用参照光透過光が、前記記録用参照光偏向角可変ミラーにより反射され、前記情報の記録時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタを透過/反射し、前記第2の偏光ビームスプリッタの近傍に配された前記光吸収部に照射されるように構成されてなる、ことが好ましい。
【0021】
ここで、「情報の再生時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタを反射/透過し、……情報の記録時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタを透過/反射し」とは、「情報の再生時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタにより反射され、……情報の記録時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタを透過し」ということ、または「情報の再生時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタを透過し、……情報の記録時における参照光の光路を逆進して、前記第2の偏光ビームスプリッタにより反射され」ということ、を意味する。
【0022】
また、前記記録用光吸収手段および前記再生用光吸収手段の双方を備え、
前記光吸収部が、前記再生用参照光偏向角可変ミラーの近傍に配された記録時光吸収部と、前記記録用参照光偏向角可変ミラーの近傍に配された再生時光吸収部と、からなることが好ましい。
【0023】
また、前記記録用参照光透過光および/または前記再生用参照光透過光を前記光吸収部
に導く、光導波路または複数の反射ミラーを備えることが好ましい。
ここで、「前記記録用参照光透過光および/または前記再生用参照光透過光」とは、「
前記記録用参照光透過光および前記再生用参照光透過光」または「前記記録用参照光透過光または前記再生用参照光透過光」を意味するものである。
さらに、前記光吸収部が、ビームポケットまたは光吸収材からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のホログラム記録再生装置によれば、所定位置に設けた光吸収部により不要透過光を取り込み、内部で吸収するようにしている。
これにより、情報記録時において、記録媒体の情報未記録領域に不要透過光が照射されてしまう虞を軽減することができ、これにより、フォトポリマーの重合反応が開始するのを阻止して、記録材料が本来の記録性能を発揮できなくなる事態を回避することができる。
【0025】
また、同様に、記録媒体の情報記録領域に不要透過光が照射されてしまう虞を軽減することができ、これにより、同一領域に参照光が二重に照射される虞を回避することができ、記録したページデータの信号品質を維持することが可能となる。
【0026】
また、情報再生時において、記録媒体の情報再生中の領域に不要透過光が照射されてしまう虞を軽減することができ、これにより、2つ以上のページデータが同時に再生される虞を回避することができ、クロストークノイズを軽減して信号品質を維持することが可能となる。
【0027】
さらに、情報記録時において、信号光路中の光学部品に記録時不要透過光が照射され、その散乱光が生じる虞を低減することができるので、散乱光が信号光に重畳されるのを回避することができ、ページデータの信号品質を良好に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例1に係るホログラム記録再生装置の全体構成(光学系を含む)を示す図である。
【
図2】本発明の実施例2に係るホログラム記録再生装置の全体構成(光学系を含む)を示す図である。
【
図3】従来技術に係るホログラムメモリ記録再生装置の全体構成(光学系を含む)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るホログラム記録再生装置の各実施例について、上記図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
<実施例1>
図1に示す角度多重ホログラム装置100は、本発明の実施例1に係るホログラム記録再生装置を構成するものであり、記録媒体(ホログラム記録媒体)11に対するホログラムの記録・再生を行うホログラム光学系500と、再生された情報を撮像する、CCDやCMOS等からなるイメージセンサ21と、を備えてなる。なお、記録媒体11としては、例えば、2枚のガラス板に挟持された厚さ1mm程度のフォトポリマー材料により構成されたものを用いることができる。
【0031】
レーザー光源1から射出されたレーザー光(例えば、波長λ=532nm)は、シャッタ2を介して出力され、スペイシャルフィルタ3でビーム径が拡大され、半波長板5においてその偏光方向(振動面方向)を任意に変え得るように構成されている。すなわち、P偏光成分とS偏光成分の比率を任意に変えることができる。半波長板5から出力されたレーザー光は、PBS(請求項における第1ビームスプリッタ)6においてP偏光成分は直進して信号搬送光とされ、S偏光成分は進行方向が直角に曲げられて参照光とされる。
【0032】
記録時における、PBS6により分離される信号搬送光と参照光の比率は、一般に1:1
〜1:3程度の範囲とされる。この比率は、光学系の構成(特に記録媒体上における信号光
のスポットの大きさ)、ビームプロファイル、ページデータの白・黒比率などに基づいて決定される。
【0033】
一方、再生時における、PBS6により分離される信号搬送光と参照光の比率は、参照光のみを記録媒体11に照射する構成とされていることから、0:1となる。
PBS6により光路を直角に折り曲げられた参照光は、半波長板14が光路から選択的に挿抜されることにより、S偏光状態またはP偏光状態のいずれかの偏光状態とされる。
【0034】
図1に示す角度多重ホログラム装置100においては、記録時において半波長板14が光路中から抜去されて参照光はS偏光状態のままとされ、再生時において半波長板14が光路中に挿入されて参照光はP偏光状態に変換される(
図2に示す角度多重ホログラム装置200において同じ)。以下、記録時の参照光がS偏光状態、再生時の参照光がP偏光状態に設定される場合について説明する。ただし、信号光の記録媒体11への照射を
図1に示す場合とは反対側から行うように変更することを条件として、記録時の参照光がP偏光状態、再生時の参照光がS偏光状態に設定しても、同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
この後、参照光は開口絞り16を通過した後、PBS(請求項における第2ビームスプリッタ)17によって、再生時参照光(P偏光)の場合は透過し、記録時参照光(S偏光)の場合は直角に反射される。
【0036】
一方、PBS6を直進した信号搬送光は、2つのレンズ7、8によりビーム径が拡大さ
れ、シャッタ22を介してPBS9に入射する。信号搬送光はPBS9に入射された際にはP偏光状態とされているので、このPBS9を透過してSLM23に入射する。SLM23は所望のページデータ情報を順次表示するように構成されており、SLM23に入射した信号搬送光は情報を担持して信号光として出力される。SLM23から出力された信号光は振動面が半波長分だけずらされてS偏光状態となっているので、PBS9により記録媒体11方向に反射される。この後、信号光はFTL(フーリエ変換レンズ)10、開口絞り12およびリレーレンズ24を介して、記録媒体11の所定領域に照射されること
になる。
上述したPBS17で直角に反射された記録時参照光は、ミラー18を介してガルバノメータミラー(請求項における記録用参照光偏向角可変ミラー)19に照射される。一方、PBS17を透過した再生時参照光は、ミラー31を介してガルバノメータミラー(請求項における再生用参照光偏向角可変ミラー)32に照射される。
【0037】
ガルバノメータミラー19は、ページデータの記録毎にミラー回転角度を所定量づつ変更するよう制御(制御装置41からの制御信号による)されるようになっており、これにより、記録媒体11の同一領域への記録用参照光の入射角度が、ページデータの記録毎に変更されるようになっており、記録媒体11の同一領域に別角度から入射する各信号光との干渉により角度多重記録を行うことができるようになっている。なお、ガルバノメータミラー19と記録媒体11の間にリレーレンズ20が介挿されている。
【0038】
一方、ガルバノメータミラー32は、ページデータの再生毎にミラー回転角度を所定量ずつ変更するよう制御(制御装置41からの制御信号による)されるようになっており、これにより、記録媒体11の同一領域への再生用参照光の入射角度が、ページデータの再生毎に変更されるようになっている。なお、ガルバノメータミラー32と記録媒体11の間にリレーレンズ33が介挿されている。
【0039】
ところで、記録時において、記録媒体11を透過した記録用参照光は記録処理に寄与しなかった不要な透過光である。この不要な記録時透過光はリレーレンズ33を介して、再生用参照光偏向角可変ミラーである、ガルバノメータミラー32に到達する。
【0040】
従来技術においては、記録時において、再生用参照光偏向角可変ミラーである、ガルバノメータミラー32は通常、稼働しておらず、そのため、角度多重記録において時々刻々変化する記録媒体11からの出射光がガルバノメータミラー32に種々の角度で入射すると、ガルバノメータミラー32により記録時参照光透過光が種々の方向に反射されることになり、さらに光学系の各部材において反射された記録時参照光透過光は、次のような種々の問題を引き起こす。
【0041】
例えば、情報記録時において、記録媒体の情報未記録箇所に記録時参照光透過光が照射され、フォトポリマーの重合反応が開始され、記録材料が本来の記録性能を発揮できなくなったり、記録媒体の情報記録中の箇所に不要な記録時透過光が照射され、二重参照光記録となり、記録したページデータの信号品質が劣化する。
さらに、情報記録時において、記録時参照光透過光が信号光路中の光学部品に照射されて散乱光を生じた場合、この散乱光が信号光に重畳され、ページデータの信号品質が劣化する。
【0042】
そこで、本実施例においては、記録時において、再生用のガルバノメータミラー32の回転角度を調整することで、時々刻々変化する記録媒体11からの記録時参照光透過光の出射角の大きさに拘らず、一定方向(ミラー31方向)に反射させ得るように、ガルバノメータミラー32における記録時参照光透過光の偏向角を制御するように構成している。このようにガルバノメータミラー32における記録時参照光透過光の偏向角の制御は、制御装置41からガルバノメータミラー19の回転モータの駆動部に対して、所定の駆動指示信号が入力することにより行われる。
【0043】
なお、制御装置41は、記録時参照光透過光(および再生用参照光透過光)の偏向角制御を行うだけではなく、通常の角度多重記録操作および角度多重再生操作に関するガルバノメータミラー19、32の回転駆動制御、レーザー光源1からのレーザー光出力調整、シャッタ2、22の開閉操作、イメージセンサ21の撮像タイミング調整等の種々の機能
を有しているが、ここでは、記録時参照光透過光(および再生用参照光透過光)の偏向角について行われる制御に絞って説明している。
【0044】
ここで、上述した記録時においては、ガルバノメータミラー32により反射された記録時参照光透過光は、ミラー31により直角に反射され、
図1中で側方からPBS17に入射する。
【0045】
記録時参照光透過光がPBS17に入射する際には、S偏光状態とされているので、記録時参照光透過光はPBS17で直角方向に反射される。すなわち、記録時参照光透過光は、
図1中でPBS17の上方に反射されるので、このPBS17の上方近傍の位置に光吸収部25を配置すれば、記録時参照光透過光を吸収することができ、外乱光となって上述したような問題を引き起こすこともない。
【0046】
また、本実施例においては、再生時においても、記録時と同様の手法で再生時参照光透過光を吸収するようにしている。すなわち、再生時において、記録媒体11を透過した再生用参照光は再生処理に寄与しなかった不要な再生時参照光透過光である。再生時参照光透過光はリレーレンズ20を介して、記録用参照光偏向角可変ミラーである、ガルバノメータミラー19に到達する。
【0047】
従来技術においては、再生時において、記録用参照光偏向角可変ミラーである、ガルバノメータミラー19は通常、稼働しておらず、そのため、角度多重記録において時々刻々変化する記録媒体11からの記録用参照光透過光がガルバノメータミラー19に種々の角度で入射すると、ガルバノメータミラー19により種々の方向に反射され、さらに光学系の各部材において反射されて、次のような問題を引き起こす。
【0048】
すなわち、情報再生時において、記録媒体の情報再生中の箇所に再生時参照透過光が照射され、2つ以上のページデータが同時に再生され、相互にクロストークノイズとなり信号品質が劣化する。
【0049】
そこで、本実施例においては、再生時において、上記記録時と同様に、記録用のガルバノメータミラー19の回転角度を調整することで、時々刻々変化する、記録媒体11からの再生時参照光透過光の出射角の大きさに拘らず、一定方向(ミラー18方向)に反射させ得るように、ガルバノメータミラー19における再生時参照光透過光の偏向角を制御するように構成している。
【0050】
ここで、上述した再生時においては、ガルバノメータミラー19により反射された再生時参照光透過光は、ミラー18により直角に反射され、
図1中で下方からPBS17に入射する。
【0051】
再生時参照光透過光がPBS17に入射する際には、P偏光状態とされているので、再生時参照光透過光はPBS17を透過する。すなわち、再生時参照光透過光は、
図1に示すようにPBS17の上方に透過されるので、このPBS17の上方近傍の位置に光吸収部25を配置すれば、記録時参照光透過光を吸収することができ、外乱光となって上述したような問題を引き起こすこともない。
【0052】
このように、本実施例によれば、記録時においても再生時においても、参照光透過光をPBS17の上方近傍に配された1つの光吸収部25において吸収し得るので、光学系の簡素化および小型化を促進することができる。
なお、必要に応じて光路を折り曲げるためにミラー4、15、18、31が設けられている。
【0053】
<実施例2>
図2に示す角度多重ホログラム装置200は、本発明の実施例2に係るホログラム記録再生装置を構成するものであり、記録媒体111に対するホログラムの記録・再生を行うホログラム光学系600と、再生されたホログラムを撮像する、CCDやCMOS等からなるイメージセンサ121と、を備えてなる。なお、
図2に示す実施例2に係る装置の各部材に付された符号は、
図1に示す実施例1に係る装置の対応する各部材に付された符号に100を加えて表すものとし、重複した説明は省略するものとする。
【0054】
装置200内において、装置コンパクト化の要請に基づき、光学部材配置や物理的な部品の干渉を防止する観点から、PBS117近傍に光吸収部用のスペースを確保することが困難な場合があり、このような場合には、本実施例のように、参照光路外に光吸収部を設定するようにしてもよい。
【0055】
すなわち、記録時には、記録媒体111を透過した記録時参照光透過光がリレーレンズ133を透過してガルバノメータミラー132に到達する。
図2中の記録時光吸収部134にビームを照射するには、実施例1で説明したガルバノメータミラー32の偏向角制御に、所定角度のオフセット量を与えれば、記録時参照光透過光の記録媒体1から出射光角度に拘らず、ガルバノメータミラー32の反射光を、記録時光吸収部134方向(実施例1ではミラー31方向)に出射させることができる。
【0056】
同様に、再生時には、記録媒体111を透過した再生時参照光透過光がリレーレンズ120を透過してガルバノメータミラー119に到達する。この再生時参照光透過光を、
図2中の再生時光吸収部125に照射するには、実施例1で説明したガルバノメータミラー19の偏向角制御に、所定角度のオフセット量を与え、記録時参照光透過光の記録媒体111からの出射光角度に拘らず、ガルバノメータミラー119の反射光を、再生時光吸収部125方向(実施例1ではミラー18方向)に出射することができる。
【0057】
<光吸収部>
実施例1および実施例2に係る光吸収部としては、種々の光吸収体を用いて構成することができる。そのうち、最も基本的な光吸収体はビームポケットである。ビームポケットは、光の進行方向に向かうに従って細くなるコーン型をなし、内部はテーパー加工と遮光ネジ加工が施されている。また、入射光が内壁部で反射される度に光を吸収し得る、黒アルマイト処理等がその内壁面に施されている。このように構成されたビームポケットは、その底面側から内部に入射する参照光透過光を遮光反射させつつ吸収することになる。
【0058】
より小型の光吸収体としては、有機材料等からなる黒色塗料のうち、レーザー光の使用波長域において吸光度の高いものを選択し、ベース材に塗布して用いることもできる。さらに厚みの薄い小型の光吸収体としては、近年開発されたカーボンナノチューブを用いた光吸収材料(例えば特許第5119407号)等を用いることができる。
【0059】
<変更態様>
本発明のホログラム記録再生装置としては、上記実施形態(実施例1、2)のものに限られるものではなく、その他の種々の態様に変更することができる。例えば、上記実施形態においては、発明を角度多重に係るホログラム記録再生装置に適用しているが、本発明のホログラム記録再生装置としてはこれに限られるものではなく、角度多重以外の多重手法を用いたホログラム記録再生装置や非多重に係るホログラム記録再生装置にも適用が可能である。
【0060】
また、PBSやガルバノメータミラーの近傍ではなく、距離が離れた位置に光吸収部を
配設せざるを得ない場合には、光ファイバを含む光導波路や、複数の反射ミラーを用いて、PBSやガルバノメータミラーから光吸収部まで導光するようにしてもよい。
なお、上記実施形態においては、記録用光吸収手段と再生用光吸収手段の双方を設けて記録時および再生時の双方において参照光透過光を吸収するようにしているが、いずれかの光吸収手段のみを設けて、記録時または再生時においてのみ参照光透過光を吸収するようにしてもよい。
【0061】
また、上記ガルバノメータミラーに替えて、ポリゴンミラー等の他の光走査手段を用いるようにしてもよい。
さらに、光吸収部への参照光透過光の光量および照射時間によっては、この光吸収部が高熱化する虞があるので、この光吸収部に冷却用のフィンやファン(空気の擾乱を誘起しないようにすることが肝要である)を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1、101、201 レーザー光源
2、22、102、122、202、222 シャッタ
3、103、203 スペイシャルフィルタ
4、15、18、31、104、115、118、131、
204、215、218、231 ミラー
5、14、105、114、205、214 半波長板
6、9、17、106、109、117、
206、209、217 偏光ビームスプリッタ(PBS)
7、8、10、107、108、110、207、208、210 レンズ(FTLを含む)
11、111、211 ホログラム記録媒体
12、16、112、116、212、216 開口絞り
19、32、119、132、219、232 ガルバノメータミラー
20、24、33、120、124、133、
220、224、233 リレーレンズ
21、121、221 イメージセンサ
23、123、223 SLM(空間変調器)
25、125、134 光吸収部
41、141 制御装置
100、200、300 角度多重ホログラム装置
500、600、700 ホログラム光学系