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特許6349659電子機器、電子機器の制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349659
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20180625BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20180625BHJP
   H04N 5/345 20110101ALI20180625BHJP
   G03B 17/14 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H04N5/225 300
   H04N5/232 030
   H04N5/232 120
   H04N5/345
   G03B17/14
【請求項の数】13
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-191821(P2013-191821)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-61109(P2015-61109A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100134692
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 武
(72)【発明者】
【氏名】太田 英史
【審査官】 高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−277963(JP,A)
【文献】 特開2003−158666(JP,A)
【文献】 特開2013−020527(JP,A)
【文献】 特開2010−139787(JP,A)
【文献】 特開2012−078425(JP,A)
【文献】 特開2006−049361(JP,A)
【文献】 特開2008−067317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222−5/257
G03B 17/14
H04N 5/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換レンズを装着可能な電子機器であって、
前記交換レンズの撮影光学系からの光を電荷に変換する第1光電変換部と前記第1光電変換部の電荷を転送する第1転送部とを有する第1画素を複数有する第1撮像領域と、前記交換レンズの前記撮影光学系から光を電荷に変換する第2光電変換部と前記第2光電変換部の電荷を転送する第2転送部とを有する第2画素を複数有する第2撮像領域と、複数の前記第1画素に接続され、前記第1転送部の転送動作を制御する信号が供給される第1配線と、複数の前記第2画素に接続され、前記第2転送部の転送動作を制御する信号が供給される、前記第1配線と異なる第2配線と、複数の前記第1画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第1出力線と、複数の前記第2画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第2出力線と、を有する撮像素子と、
前記交換レンズからの前記撮影光学系の特性に関する特性情報に基づいて、前記第1撮像領域の第1転送部および前記第2撮像領域の第2転送部への信号の供給を制御する制御部と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記特性情報は、前記撮影光学系のサイズに関する情報を含み、
前記制御部は、前記サイズに関する情報に基づいて、前記第1撮像領域および第2撮像領域のうち前記撮影光学系のイメージサークル内の撮像領域の転送部へ信号を供給する請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記サイズに関する情報に基づいて、前記第1撮像領域および第2撮像領域のうち、イメージサークル内の第1撮像領域の第1転送部に信号を供給し、前記イメージサークル外の第2撮像領域の第2転送部には信号を供給しない請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記イメージサークル内の第1撮像領域のうち、表示部に表示される画像の領域に対応する第3撮像領域と、前記第3撮像領域とは異なる第4撮像領域とを設定する請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3撮像領域と前記第4撮像領域とで撮像条件を変更する請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
前記特性情報は、前記撮影光学系の歪曲収差に関する情報を含み、
前記制御部は、前記歪曲収差に関する情報に基づいて、前記第3撮像領域を前記撮影光学系の歪曲収差に対応する領域に設定する請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記イメージサークル内の領域の被写体を検出する被写体検出部を備える請求項4から6のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記イメージサークル内の領域の被写体に対して焦点調節を行う焦点調節部を備える請求項4から7のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記制御部は、前記第4撮像領域の撮像条件として、前記第3撮像領域よりも高いフレームレートでかつ高いゲインに設定する請求項7または請求項8記載の電子機器。
【請求項10】
前記特性情報は、前記撮影光学系の周辺減光に関する情報を含み、
前記制御部は、前記周辺減光に関する情報に基づいて、前記イメージサークル内の第1撮像領域において撮像条件を周辺減光により変更する請求項2から9のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記制御部は、前記イメージサークル内の第1撮像領域を周辺減光により複数の領域に設定し、これら複数の領域毎に前記撮像条件を変更する請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
交換レンズの撮影光学系からの光を電荷に変換する第1光電変換部と前記第1光電変換部の電荷を転送する第1転送部とを有する第1画素を複数有する第1撮像領域と、前記交換レンズの前記撮影光学系から光を電荷に変換する第2光電変換部と前記第2光電変換部の電荷を転送する第2転送部とを有する第2画素を複数有する第2撮像領域と、複数の前記第1画素に接続され、前記第1転送部の転送動作を制御する信号が供給される第1配線と、複数の前記第2画素に接続され、前記第2転送部の転送動作を制御する信号が供給される、前記第1配線と異なる第2配線と、複数の前記第1画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第1出力線と、複数の前記第2画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第2出力線と、を有する撮像素子を備え、前記交換レンズを装着可能な電子機器の制御方法であって、
前記交換レンズからの前記撮影光学系の特性に関する特性情報に基づいて、前記第1撮像領域の第1転送部および前記第2撮像領域の第2転送部への信号の供給を制御することを含む電子機器の制御方法。
【請求項13】
交換レンズの撮影光学系からの光を電荷に変換する第1光電変換部と前記第1光電変換部の電荷を転送する第1転送部とを有する第1画素を複数有する第1撮像領域と、前記交換レンズの前記撮影光学系から光を電荷に変換する第2光電変換部と前記第2光電変換部の電荷を転送する第2転送部とを有する第2画素を複数有する第2撮像領域と、複数の前記第1画素に接続され、前記第1転送部の転送動作を制御する信号が供給される第1配線と、複数の前記第2画素に接続され、前記第2転送部の転送動作を制御する信号が供給される、前記第1配線と異なる第2配線と、複数の前記第1画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第1出力線と、複数の前記第2画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第2出力線と、を有する撮像素子を備え、前記交換レンズを装着可能な電子機器の制御装置に、
前記交換レンズからの前記撮影光学系の特性に関する特性情報に基づいて、前記第1撮像領域の第1転送部および前記第2撮像領域の第2転送部への信号の供給を制御することを実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、電子機器の制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
裏面照射型撮像チップと信号処理チップとが積層された撮像素子(以下、この撮像素子を積層型撮像素子という。)を備えた電子機器が提案されている(例えば特許文献1参照)。積層型撮像素子は、裏面照射型撮像チップと信号処理チップとが、複数画素をまとめたブロック単位ごとにマイクロバンプを介して接続されるように積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−49361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の積層型撮像素子を備えた電子機器において、複数のブロック単位ごとに撮像して画像を取得する提案は多くなく、積層型撮像素子を備えた電子機器の使い勝手が十分ではなかった。
【0005】
本発明の態様では、撮像素子の撮像領域のうち撮影光学系に応じた領域を使用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、交換レンズを装着可能な電子機器であって、前記交換レンズの撮影光学系からの光を電荷に変換する第1光電変換部と前記第1光電変換部の電荷を転送する第1転送部とを有する第1画素を複数有する第1撮像領域と、前記交換レンズの前記撮影光学系から光を電荷に変換する第2光電変換部と前記第2光電変換部の電荷を転送する第2転送部とを有する第2画素を複数有する第2撮像領域と、複数の前記第1画素に接続され、前記第1転送部の転送動作を制御する信号が供給される第1配線と、複数の前記第2画素に接続され、前記第2転送部の転送動作を制御する信号が供給される、前記第1配線と異なる第2配線と、複数の前記第1画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第1出力線と、複数の前記第2画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第2出力線と、を有する撮像素子と、前記交換レンズからの前記撮影光学系の特性に関する特性情報に基づいて、前記第1撮像領域の第1転送部および前記第2撮像領域の第2転送部への信号の供給を制御する制御部と、を備える電子機器が提供される。
本発明の態様によれば、交換レンズの撮影光学系からの光を電荷に変換する第1光電変換部と前記第1光電変換部の電荷を転送する第1転送部とを有する第1画素を複数有する第1撮像領域と、前記交換レンズの前記撮影光学系から光を電荷に変換する第2光電変換部と前記第2光電変換部の電荷を転送する第2転送部とを有する第2画素を複数有する第2撮像領域と、複数の前記第1画素に接続され、前記第1転送部の転送動作を制御する信号が供給される第1配線と、複数の前記第2画素に接続され、前記第2転送部の転送動作を制御する信号が供給される、前記第1配線と異なる第2配線と、複数の前記第1画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第1出力線と、複数の前記第2画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第2出力線と、を有する撮像素子を備え、前記交換レンズを装着可能な電子機器の制御方法であって、前記交換レンズからの前記撮影光学系の特性に関する特性情報に基づいて、前記第1撮像領域の第1転送部および前記第2撮像領域の第2転送部への信号の供給を制御することを含む電子機器の制御方法が提供される。
本発明の態様によれば、交換レンズの撮影光学系からの光を電荷に変換する第1光電変換部と前記第1光電変換部の電荷を転送する第1転送部とを有する第1画素を複数有する第1撮像領域と、前記交換レンズの前記撮影光学系から光を電荷に変換する第2光電変換部と前記第2光電変換部の電荷を転送する第2転送部とを有する第2画素を複数有する第2撮像領域と、複数の前記第1画素に接続され、前記第1転送部の転送動作を制御する信号が供給される第1配線と、複数の前記第2画素に接続され、前記第2転送部の転送動作を制御する信号が供給される、前記第1配線と異なる第2配線と、複数の前記第1画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第1出力線と、複数の前記第2画素の光電変換で変換された電荷により生成された信号出力する第2出力線と、を有する撮像素子を備え、前記交換レンズを装着可能な電子機器の制御装置に、前記交換レンズからの前記撮影光学系の特性に関する特性情報に基づいて、前記第1撮像領域の第1転送部および前記第2撮像領域の第2転送部への信号の供給を制御することを実行させる制御プログラムが提供される。
本発明の第1態様によれば、交換可能な複数種類の撮影光学系からの光束が結像するに対応可能な撮像素子を有するを有する撮像部と、交換可能なレンズ部撮影光学系の特性に関するレンズ情報に応じて、撮像素子の撮像領域においてアクティブ状態とする領域を設定する制御部と、を備える電子機器が提供される。
【0007】
本発明の第2態様によれば、交換可能な撮影光学系からの光束が結像する複数種類の撮影光学系に対応可能な撮像素子を有する電子機器の制御方法であって、交換可能なレンズ部か撮影光学系の特性に関するレンズ情報を取得することと、撮影光学系のレンズ情報に応じて、撮像素子の撮像領域においてアクティブ状態とする領域を設定することと、を含む電子機器の制御方法が提供される。
【0008】
本発明の第3態様によれば、交換可能な撮影光学系からの光束が結像する複数種類の撮影光学系に対応可能な撮像素子を有する制御装置に、交換可能なレンズ部か撮影光学系の特性に関するレンズ情報を取得する取得処理と、撮影光学系のレンズ情報に応じて、撮像素子の撮像領域においてアクティブ状態とする領域を設定する設定処理と、を実行させる制御プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、撮像素子の撮像領域のうち撮影光学系に応じた領域を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】積層型撮像素子の断面図である。
図2】撮像チップの画素配列と単位グループを説明する図である。
図3】撮像チップの単位グループに対応する回路図である。
図4】撮像素子の機能的構成を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係るデジタルカメラ(電子機器)の概略構成を示す横断面図である。
図6】第1実施形態に係るデジタルカメラ(電子機器)の構成を示すブロック図である。
図7】サイズ規格の異なるイメージサークルとイメージサークル内に設定される領域とを示す図である。
図8】撮影前処理の一例を示すシーケンス図である。
図9】第1実施形態における領域ごとの動作状態を示す図である。
図10】歪曲収差に対応する領域を示す図である。
図11】第2実施形態における領域ごとの動作状態を示す図である。
図12】撮影処理の一例を示すフローチャートである。
図13】主要被写体の焦点位置の検出を説明するための図である。
図14】領域選択処理の一例を示すフローチャートである。
図15】撮像領域内の選択領域と非選択領域とを示す図である。
図16】撮像領域内の選択領域と非選択領域とを示す図である。
図17】主要被写体の焦点位置の検出の他の例を説明するための図である。
図18】周辺減光に応じて設定される領域を示す図である。
図19】第5実施形態に係る撮像装置及び電子機器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。なお、以下の各実施形態では、電子機器としてレンズ交換式のデジタルカメラを例に挙げて説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、積層型撮像素子の断面図である。なお、この積層型撮像素子100は、本願出願人が先に出願した特願2012−139026号に記載されているものである。撮像素子100は、入射光に対応した画素信号を出力する撮像チップ113と、画素信号を処理する信号処理チップ111と、画素信号を記憶するメモリチップ112とを備える。これら撮像チップ113、信号処理チップ111、及びメモリチップ112は積層されており、Cu等の導電性を有するバンプ109により互いに電気的に接続される。
【0013】
なお、図示するように、入射光は主に白抜き矢印で示すZ軸プラス方向へ向かって入射する。本実施形態においては、撮像チップ113において、入射光が入射する側の面を裏面と称する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面左方向をX軸プラス方向、Z軸及びX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。以降のいくつかの図においては、図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
【0014】
撮像チップ113の一例は、裏面照射型のMOSイメージセンサである。PD層106は、配線層108の裏面側に配されている。PD層106は、二次元的に配され、入射光に応じた電荷を蓄積する複数のフォトダイオード(Photodiode;以下、PDという。)104、及び、PD104に対応して設けられたトランジスタ105を有する。
【0015】
PD層106における入射光の入射側にはパッシベーション膜103を介してカラーフィルタ102が設けられる。カラーフィルタ102は、可視光のうち特定の波長領域を通過させるフィルタである。このカラーフィルタ102は、互いに異なる波長領域を透過する複数の種類を有しており、PD104のそれぞれに対応して特定の配列を有している。カラーフィルタ102の配列については後述する。カラーフィルタ102、PD104、及びトランジスタ105の組が一つの画素を形成する。
【0016】
カラーフィルタ102における入射光の入射側には、それぞれの画素に対応して、マイクロレンズ101が設けられる。マイクロレンズ101は、対応するPD104へ向けて入射光を集光する。
【0017】
配線層108は、PD層106からの画素信号を信号処理チップ111に伝送する配線107を有する。配線107は多層であってもよく、また、受動素子及び能動素子が設けられてもよい。配線層108の表面には複数のバンプ109が配される。これら複数のバンプ109が信号処理チップ111の対向する面に設けられた複数のバンプ109と位置合わせされる。そして、撮像チップ113と信号処理チップ111とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0018】
同様に、信号処理チップ111及びメモリチップ112の互いに対向する面には、複数のバンプ109が配される。これらのバンプ109が互いに位置合わせされる。そして、信号処理チップ111とメモリチップ112とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0019】
なお、バンプ109間の接合には、固相拡散によるCuバンプ接合に限らず、はんだ溶融によるマイクロバンプ結合を採用してもよい。また、バンプ109は、例えば後述する一つの単位グループに対して一つ程度設ければよい。従って、バンプ109の大きさは、PD104のピッチよりも大きくてもよい。また、画素が配列された画素領域(図2に示す画素領域113A)以外の周辺領域において、画素領域に対応するバンプ109よりも大きなバンプを併せて設けてもよい。
【0020】
信号処理チップ111は、表面及び裏面にそれぞれ設けられた回路を互いに接続するTSV(Through-Silicon Via;シリコン貫通電極)110を有する。TSV110は、周辺領域に設けられる。また、TSV110は、撮像チップ113の周辺領域や、メモリチップ112に設けられてもよい。
【0021】
図2は、撮像チップの画素配列と単位グループを説明する図である。図2では、特に、撮像チップ113を裏面側から観察した様子を示す。撮像チップ113において画素が配列された領域を画素領域(撮像領域)113Aという。画素領域113Aには2000万個以上もの画素がマトリックス状に配列されている。図2に示す例では、隣接する4画素×4画素の16画素が一つの単位グループ131を形成する。図2の格子線は、隣接する画素がグループ化されて単位グループ131を形成する概念を示す。単位グループ131を形成する画素の数はこれに限られず1000個程度、例えば32画素×64画素でもよいし、それ以上でもそれ以下でもよい。
【0022】
画素領域113Aの部分拡大図に示すように、単位グループ131は、緑色画素Gb,Gr、青色画素B、及び赤色画素Rの4画素から成るいわゆるベイヤー配列を、上下左右に4つ内包する。緑色画素は、カラーフィルタ102として緑色フィルタを有する画素であり、入射光のうち緑色波長帯の光を受光する。同様に、青色画素は、カラーフィルタ102として青色フィルタを有する画素であって青色波長帯の光を受光する。赤色画素は、カラーフィルタ102として赤色フィルタを有する画素であって赤色波長帯の光を受光する。
【0023】
図3は、撮像チップの単位グループに対応する回路図である。図3において、代表的に点線で囲む矩形が、1画素に対応する回路を表す。なお、以下に説明する各トランジスタの少なくとも一部は、図1のトランジスタ105に対応する。
【0024】
上述したように、単位グループ131は、16画素から形成される。それぞれの画素に対応する16個のPD104は、それぞれ転送トランジスタ302に接続される。各転送トランジスタ302のゲートには、転送パルスが供給されるTX配線307に接続される。本実施形態において、TX配線307は、16個の転送トランジスタ302に対して共通接続される。
【0025】
各転送トランジスタ302のドレインは、対応する各リセットトランジスタ303のソースに接続されるとともに、転送トランジスタ302のドレインと各リセットトランジスタ303のソース間のいわゆるフローティングディフュージョンFD(電荷検出部)が増幅トランジスタ304のゲートに接続される。各リセットトランジスタ303のドレインは電源電圧が供給されるVdd配線310に接続される。各リセットトランジスタ303のゲートはリセットパルスが供給されるリセット配線306に接続される。本実施形態において、リセット配線306は、16個のリセットトランジスタ303に対して共通接続される。
【0026】
各々の増幅トランジスタ304のドレインは電源電圧が供給されるVdd配線310に接続される。また、各々の増幅トランジスタ304のソースは、対応する各々の選択トランジスタ305のドレインに接続される。各々の選択トランジスタ305のゲートには、選択パルスが供給されるデコーダ配線308に接続される。本実施形態において、デコーダ配線308は、16個の選択トランジスタ305に対してそれぞれ独立に設けられる。そして、各々の選択トランジスタ305のソースは、共通の出力配線309に接続される。負荷電流源311は、出力配線309に電流を供給する。すなわち、選択トランジスタ305に対する出力配線309は、ソースフォロアにより形成される。なお、負荷電流源311は、撮像チップ113側に設けてもよいし、信号処理チップ111側に設けてもよい。
【0027】
ここで、電荷の蓄積開始から蓄積終了後の画素出力までの流れを説明する。リセット配線306を通じてリセットパルスがリセットトランジスタ303に印加される。これと同時に、TX配線307を通じて転送パルスが転送トランジスタ302に印加される。これにより、PD104及びフローティングディフュージョンFDの電位はリセットされる。
【0028】
PD104は、転送パルスの印加が解除されると、受光する入射光を電荷に変換して蓄積する。その後、リセットパルスが印加されていない状態で再び転送パルスが印加されると、PD104において蓄積された電荷はフローティングディフュージョンFDへ転送される。これにより、フローティングディフュージョンFDの電位は、リセット電位から電荷蓄積後の信号電位になる。そして、デコーダ配線308を通じて選択パルスが選択トランジスタ305に印加されると、フローティングディフュージョンFDの信号電位の変動が、増幅トランジスタ304及び選択トランジスタ305を介して出力配線309に伝わる。このような回路の動作により、リセット電位と信号電位とに対応する画素信号は、単位画素から出力配線309に出力される。
【0029】
図3に示すように、本実施形態においては、単位グループ131を形成する16画素に対して、リセット配線306とTX配線307が共通である。すなわち、リセットパルスと転送パルスはそれぞれ、16画素すべてに対して同時に印加される。従って、単位グループ131を形成するすべての画素は、同一のタイミングで電荷蓄積を開始し、同一のタイミングで電荷蓄積を終了する。ただし、蓄積された電荷に対応する画素信号は、それぞれの選択トランジスタ305に選択パルスが順次印加されることにより、選択的に出力配線309に出力される。また、リセット配線306、TX配線307、出力配線309は、単位グループ131毎に別個に設けられる。
【0030】
このように単位グループ131を基準として回路を構成することにより、単位グループ131ごとに電荷蓄積時間を制御することができる。換言すると、単位グループ131間で、異なった電荷蓄積時間による画素信号をそれぞれ出力させることができる。更に言えば、一方の単位グループ131に1回の電荷蓄積を行わせている間に、他方の単位グループ131に何回もの電荷蓄積を繰り返させてその都度画素信号を出力させることにより、これらの単位グループ131間で異なるフレームレートで動画用の各フレームを出力することもできる。
【0031】
図4は、撮像素子の機能的構成を示すブロック図である。アナログのマルチプレクサ411は、単位グループ131を形成する16個のPD104を順番に選択する。そして、マルチプレクサ411は、16個のPD104のそれぞれの画素信号を当該単位グループ131に対応して設けられた出力配線309へ出力させる。マルチプレクサ411は、PD104とともに、撮像チップ113に形成される。
【0032】
マルチプレクサ411を介して出力されたアナログ信号の画素信号は、信号処理チップ111に形成されたアンプ412により増幅される。そして、アンプ412で増幅された画素信号は、信号処理チップ111に形成された、相関二重サンプリング(CDS;Correlated Double Sampling)・アナログ/デジタル(Analog/Digital)変換を行う信号処理回路413により、相関二重サンプリングの信号処理が行われるとともに、A/D変換(アナログ信号からデジタル信号への変換)が行われる。画素信号が信号処理回路413において相関二重サンプリングの信号処理が行われることにより、画素信号のノイズが低減される。A/D変換された画素信号は、デマルチプレクサ414に引き渡され、それぞれの画素に対応する画素メモリ415に格納される。デマルチプレクサ414及び画素メモリ415は、メモリチップ112に形成される。
【0033】
演算回路416は、画素メモリ415に格納された画素信号を処理して後段の画像処理部に引き渡す。演算回路416は、信号処理チップ111に設けられてもよいし、メモリチップ112に設けられてもよい。なお、図4では1つの単位グループ131の分の接続を示すが、実際にはこれらが単位グループ131ごとに存在して、並列で動作する。ただし、演算回路416は単位グループ131ごとに存在しなくてもよい。例えば、一つの演算回路416がそれぞれの単位グループ131に対応する画素メモリ415の値を順に参照しながらシーケンシャルに処理してもよい。
【0034】
上記した通り、単位グループ131のそれぞれに対応して出力配線309が設けられている。撮像素子100は、撮像チップ113、信号処理チップ111、及びメモリチップ112を積層している。このため、これら出力配線309にバンプ109を用いたチップ間の電気的接続を用いることにより、各チップを面方向に大きくすることなく配線を引き回すことができる。
【0035】
次に、撮像素子100の画素領域113A(図2参照)に設定されるブロックについて説明する。本実施形態において、撮像素子100の画素領域113Aは、複数のブロックに分割される。複数のブロックは、1ブロックにつき単位グループ131を少なくとも1つ含むように定義される。各ブロックはそれぞれ異なる制御パラメータで各ブロックに含まれる画素が制御される。つまり、あるブロックに含まれる画素群と、別のブロックに含まれる画素群とで、制御パラメータが異なる画素信号が取得される。制御パラメータとしては、例えば、電荷の蓄積時間又は蓄積回数、フレームレート、ゲイン、間引き率、画素信号を加算する加算行数又は加算列数、デジタル化のビット数などがあげられる。さらに、制御パラメータは、画素からの画像信号取得後の画像処理におけるパラメータであってもよい。
【0036】
ここで、電荷の蓄積時間とは、PD104が電荷の蓄積を開始してから終了するまでの時間のことをいう。この電荷蓄積時間のことを露光時間又はシャッター速度(シャッタースピード)ともいう。また、電荷の蓄積回数とは、単位時間あたりにPD104が電荷を蓄積する回数のことをいう。また、フレームレートとは、動画において単位時間あたりに処理(表示又は記録)されるフレーム数を表す値のことをいう。フレームレートの単位はfps(Frames Per Second)で表される。フレームレートが高くなる程、動画における被写体(すなわち撮像される対象物)の動きが滑らかになる。
【0037】
また、ゲインとは、アンプ412の利得率(増幅率)のことをいう。このゲインを変更することにより、ISO感度を変更することができる。このISO感度は、ISOで策定された写真フィルムの規格であり、写真フィルムがどの程度弱い光まで記録することができるかを表す。ただし、一般に、撮像素子100の感度を表現する場合もISO感度が用いられる。この場合、ISO感度は撮像素子100が光をとらえる能力を表す値となる。ゲインを上げるとISO感度も向上する。例えば、ゲインを倍にすると電気信号(画素信号)も倍になり、入射光の光量が半分でも適切な明るさとなる。しかし、ゲインを上げると、電気信号に含まれるノイズも増幅されるため、ノイズが多くなってしまう。
【0038】
また、間引き率とは、所定領域においてすべての画素数に対する画素信号の読み出しを行わない画素数の割合をいう。例えば、所定領域の間引き率が0である場合は、その所定領域内のすべての画素から画素信号の読み出しが行われることを意味する。また、所定領域の間引き率が0.5である場合は、その所定領域内の半分の画素から画素信号を読み出しが行われることを意味する。具体的には、単位グループ131がベイヤー配列である場合、垂直方向についてベイヤー配列の単位の一つ置き、すなわち、画素単位の2画素ずつ(2行ずつ)交互に画素信号が読み出される画素と読み出されない画素とが設定される。なお、画素信号の読み出しの間引きが行われると画像の解像度が低下する。しかし、撮像素子100には2000万以上の画素が配置されているため、例えば間引き率0.5で間引きを行ったとしても、1000万以上の画素で画像を表示することができる。このため、使用者(撮影者)にとって解像度の低下は気にならないものと考えられる。
【0039】
また、加算行数とは、垂直方向に隣接する画素の画素信号を加算する場合に、その加算する垂直方向の画素の数(行数)をいう。また、加算列数とは、水平方向に隣接する画素の画素信号を加算する場合に、その加算する水平方向の画素の数(列数)をいう。このような加算の処理は、例えば演算回路416において行われる。演算回路416が垂直方向又は水平方向に隣接する所定数の画素の画素信号を加算する処理を行うことにより、所定の間引き率で間引いて画素信号を読み出す処理と同じような効果を奏する。なお、上記した加算の処理において、演算回路416が加算した行数または列数で加算値を割ることにより平均値を算出するようにしてもよい。
【0040】
また、デジタル化のビット数とは、信号処理回路413がA/D変換においてアナログ信号をデジタル信号に変換したときのビット数をいう。デジタル信号のビット数が多くなる程、輝度や色変化などがより詳細に表現される。
【0041】
本実施形態において、蓄積条件とは、撮像素子100における電荷の蓄積に関する条件のことをいう。具体的には、蓄積条件は、上記した制御パラメータのうち、電荷の蓄積時間又は蓄積回数、フレームレート、及びゲインのことをいう。フレームレートは電荷の蓄積時間や蓄積回数に応じて変化し得るので、フレームレートが蓄積条件に含まれる。また、ゲインに応じて適正露出の光量は変化し、適正露出の光量に応じて電荷の蓄積時間又は蓄積回数も変化し得る。このため、ゲインは蓄積条件に含まれる。
【0042】
また、撮像条件とは、被写体の撮像に関する条件をいう。具体的には、撮像条件は、上記した蓄積条件を含む制御パラメータのことをいう。撮像条件は、撮像素子100を制御するための制御パラメータ(例えば、電荷の蓄積時間又は蓄積回数、フレームレート、ゲイン)のほかに、撮像素子100からの信号の読み出しを制御するための制御パラメータ(例えば、間引き率)、撮像素子100からの信号を処理するための制御パラメータ(例えば、画素信号を加算する加算行数又は加算列数、デジタル化のビット数、後述する画像処理部30が画像処理を実行するための制御パラメータ)も含まれる。
【0043】
図5は、第1実施形態に係るデジタルカメラ(電子機器)の概略構成を示す横断面図である。第1実施形態に係る電子機器としてのデジタルカメラ1は、交換式レンズとしてのレンズ部10と、カメラ本体としてのカメラボディ2とを有している。カメラボディ2には、レンズ部10を装着するためのボディ側マウント部80Aが設けられている。また、レンズ部10には、ボディ側マウント部80Aと対応するレンズ側マウント部80Bが設けられている。使用者がボディ側マウント部80Aとレンズ側マウント部80Bとを接合することにより、レンズ部10がカメラボディ2に装着される。レンズ部10がカメラボディ2に装着されると、ボディ側マウント部80Aに設けられた電気接点81Aと、レンズ側マウント部80Bに設けられた電気接点81Bとが電気的に接続される。
【0044】
レンズ部10は、レンズ11a、ズーミング用レンズ11b、フォーカシング用レンズ11c、絞り14、レンズ駆動制御装置15などを備えている。図5に示すように、レンズ11a、ズーミング用レンズ11b、及びフォーカシング用レンズ11cは、撮影光学系11を構成する。なお、撮影光学系11には、図5に示すレンズ群よりも多い数のレンズが設けられてもよい。本実施形態では、カメラボディ2は、異なる種類の撮影光学系11を有する異なる交換式レンズ(レンズ部10)が装着可能である。
【0045】
絞り14は、光量及びボケ量調整のために光軸中心に開口径が可変な開口を形成する。レンズ駆動制御装置15は、CPU(Central Processing
Unit)、メモリ、駆動制御回路などを有している。なお、後述するように、CPUは図6に示すレンズ制御部13に相当する。また、後述するように、メモリは図6に示すレンズ記憶部12に相当する。
【0046】
レンズ駆動制御装置15は、電気接点81A,81Bを介してカメラボディ2側のシステム制御部70との間で通信を行うことにより、撮影光学系11の特性に関するレンズ情報の送信と、制御情報(ズーミング用レンズ11bの移動量や、フォーカシング用レンズ11cの移動量、絞り14の絞り値など)の受信とを行う。また、レンズ駆動制御装置15は、システム制御部70からの制御情報に基づいて、ズーミング用レンズ11bのズーミング調節や、フォーカシング用レンズ11cの焦点調節、絞り14の開口径調節のための駆動制御を行う。また、レンズ駆動制御装置15は、ズーミング用レンズ11b、フォーカシング用レンズ11cの位置情報、及び絞り14の状態検出なども行う。なお、ズーミング用レンズ11bがマニュアル操作ではなく、パワーズーム操作の場合には、ズーミング用レンズ11bの制御情報や駆動制御を加えるようにしてもよい。
【0047】
ここで、レンズ駆動制御装置15から送信されるレンズ情報としては、種別データ及び歪曲収差データを含んでいる。種別データは、レンズ部10に搭載されている撮影光学系11の種別(サイズ規格)に関する情報である。例えば、撮影光学系11の種別として、APS−Cサイズに対応した撮影光学系(レンズ)と、35mmフルサイズに対応した撮影光学系(レンズ)とがある。
【0048】
APS−Cサイズは、撮像素子のサイズ規格の一つである。そのサイズがAPSシステム(APS:Advanced Photo System)のAPS−Cタイプフォーマットに近いことから、APS−Cサイズと呼ばれている。また、35mmフルサイズも、撮像素子のサイズ規格の一つである。そのサイズが135フィルム(35mmフィルム)を使用するデジタルカメラで広く用いられるサイズに近いことから、35mmフルサイズと呼ばれている。レンズ部10のメモリには、撮影光学系11がどのような種別の撮影光学系であるかを示す情報(すなわち、APS−Cサイズに対応した撮影光学系であるか、35mmフルサイズに対応した撮影光学系であるかを示す情報)が種別データとして記憶されている。なお、本実施形態においては、撮像部20には、35mmフルサイズの撮像素子(図1等に示す撮像素子100)が搭載されている。
【0049】
歪曲収差データは、レンズ部10に搭載されている撮影光学系11の歪曲収差(ディストーション)に関する情報である。歪曲収差は、撮影光学系11の周辺部の像が歪む収差である。撮影光学系11によっては、長方形の像が形成されるべき個所において「たる型」の像が形成される。この歪曲収差は「たる型収差」と呼ばれる。レンズ部10のメモリには、撮影光学系11の設計段階で予め取得される歪曲収差に関する情報(すなわち、周辺部でどの程度の歪曲収差が生じるかを示す情報)が歪曲収差データとして記憶されている。
【0050】
カメラボディ2は、撮像素子100を含む撮像部20、画像処理部30、表示部50、記憶部60、システム制御部70などを備えている。レンズ部10を通過した光束により、撮像部20の撮像素子の受光面上に被写体像が形成される。この被写体像は撮像素子により光電変換され、撮像素子の各画素の画素信号が画像処理部30に送られる。画像処理部30は、各画素の画素信号からなるRAWデータに対して種々の画像処理を施し、画像データを生成する。表示部50は、画像処理部30が生成した画像データを表示する。記憶部60は、画像処理部30が生成した画像データを記憶する。
【0051】
なお、本明細書において、「画像データ」は、撮像部20で撮像された画像(静止画、動画、ライブビュー画像)を構成するデータであり、画像処理部30において画像処理が行われる前のデータ(すなわちRAWデータ)と画像処理が行われた後のデータとを含む。また、本明細書において、「RAWデータ」とは、画像処理部30において画像処理が行われる前の画像データのことをいう。また、本明細書において、「画像データ」のことを「画像信号」ということがある。
【0052】
また、本明細書において、ライブビュー画像は、画像処理部30で生成された画像データを表示部50に順次出力して表示部50に表示される画像である。ライブビュー画像は、撮像部20により撮像されている被写体の画像を使用者が確認するために用いられる。ライブビュー画像は、スルー画やプレビュー画像とも呼ばれる。
【0053】
システム制御部70は、デジタルカメラ1の全体の処理及び動作を制御する。なお、システム制御部70の処理及び動作の詳細、及びカメラボディ2内の構成の詳細については、以下の図6において説明する。
【0054】
図6は、第1実施形態に係るデジタルカメラ(電子機器)の構成を示すブロック図である。図6に示すように、電子機器としてのデジタルカメラ1は、カメラボディ2と、レンズ部10とを備える。上述したように、レンズ部10は、カメラボディ2に対して着脱可能な交換式レンズである。
【0055】
レンズ部10は、カメラボディ2に接続された状態において、被写体からの光束を撮像部20へ導く。このレンズ部10は、撮影光学系11、レンズ記憶部12、及びレンズ制御部13を有している。レンズ記憶部12は、上述した撮影光学系11の特性に関するレンズ情報(種別データ、歪曲収差データ)を記憶している。このレンズ記憶部12は、レンズ駆動制御装置15のメモリに相当する。
【0056】
レンズ制御部13は、レンズ部10の処理及び動作を制御する。このレンズ制御部13は、レンズ駆動制御装置15のCPUが制御プログラムに基づいて実行する処理に相当する。本実施形態では、レンズ制御部13は、レンズ部10がカメラボディ2に接続されたか否かを判定する。そして、レンズ制御部13は、レンズ部10がカメラボディ2に接続されたと判定した場合に、レンズ記憶部12に記憶されているレンズ情報(種別データ、歪曲収差データ)をカメラボディ2のシステム制御部70に送信する。また、レンズ制御部13は、システム制御部70からの制御情報(移動量や絞り値など)に基づいて、AF(Automatic Focusing)処理やAE(Automatic Exposure)処理などに対応する制御も行う。すなわち、レンズ制御部13は、システム制御部70からの制御信号に基づいて、フォーカシング用レンズ11cの焦点調節や、絞り14の開口径調節のための駆動制御などを行う。図6に示すように、CPU(レンズ制御部13)を内蔵したレンズ部10のことをCPUレンズという。
【0057】
図6に示すように、カメラボディ2は、撮像部20、画像処理部30、ワークメモリ40、表示部50、操作部55、記録部60、及びシステム制御部70を備える。
【0058】
撮像部20は、撮像素子100及び駆動部21を有している。撮像素子100は、少なくとも35mmフルサイズの画素領域(図2に示す画素領域113A参照)を備えている。駆動部21は、システム制御部70からの指示に従って、撮像素子100の駆動を制御する制御回路である。ここで、駆動部21は、リセットパルス及び転送パルスをそれぞれリセットトランジスタ303及び転送トランジスタ302に印加するタイミング(又はタイミングの周期)を制御することにより、制御パラメータである電荷の蓄積時間又は蓄積回数を制御する。また、駆動部21は、リセットパルス、転送パルス、及び選択パルスをそれぞれリセットトランジスタ303、転送トランジスタ302、及び選択トランジスタ305に印加するタイミング(又はタイミングの周期)を制御することにより、フレームレートを制御する。また、駆動部21は、リセットパルス、転送パルス、及び選択パルスを印加する画素を設定することにより、間引き率を制御する。
【0059】
また、駆動部21は、アンプ412のゲイン(利得率、増幅率ともいう。)を制御することにより、撮像素子100のISO感度を制御する。また、駆動部21は、演算回路416に指示を送ることにより、画素信号を加算する加算行数又は加算列数を設定する。また、駆動部21は、信号処理回路413に指示を送ることにより、デジタル化のビット数を設定する。さらに、駆動部21は、撮像素子100の画素領域(撮像領域)113Aにおいて、レンズ情報の種別データに応じた領域をブロック単位で設定する。このように、駆動部21は、撮像素子100に対して複数のブロックごとに異なる撮像条件で撮像させて画素信号を出力させる撮像素子制御部の機能を担う。システム制御部70は、駆動部21に対するブロックの位置、形状、範囲などの指示を行う。
【0060】
撮像素子100は、撮像素子100からの画素信号を画像処理部30へ引き渡す。画像処理部30は、ワークメモリ40をワークスペースとして、各画素の画素信号からなるRAWデータに対して種々の画像処理を施し、画像データを生成する。画像処理部30は、以下の画像処理を実行する。例えば、画像処理部30は、ベイヤー配列で得られた信号に対して色信号処理(色調補正)を行うことによりRGB画像信号を生成する。また、画像処理部30は、RGB画像信号に対して、ホワイトバランス調整、シャープネス調整、ガンマ補正、階調調整などの画像処理を行う。また、画像処理部30は、必要に応じて、所定の圧縮形式(JPEG形式、MPEG形式等)で圧縮する処理を行う。画像処理部30は、生成した画像データを記録部60に出力する。また、画像処理部30は、生成した画像データを表示部50に出力する。
【0061】
画像処理部30が画像処理を行う際に参照されるパラメータも制御パラメータ(撮像条件)に含まれる。例えば、色信号処理(色調補正)、ホワイトバランス調整、階調調整、圧縮率などのパラメータが制御パラメータに含まれる。電荷の蓄積時間などに応じて撮像素子100から読み出される信号が変化し、その信号の変化に応じて画像処理を行う際に参照されるパラメータも変化する。画像処理部30は、ブロック単位ごとに異なる制御パラメータを設定し、これらの制御パラメータに基づいて色信号処理などの画像処理を実行する。
【0062】
本実施形態では、画像処理部30は、図6に示すように、画像生成部31及び被写体検出部32を含む。画像生成部31は、撮像部20から出力される各画素の画素信号からなるRAWデータに対して種々の画像処理を施すことにより画像データを生成する。被写体検出部32は、画像生成部31で生成した画像データから主要被写体を検出する。本実施形態では、被写体検出部32は、公知の顔検出機能を用いて主要被写体の検出を行う。なお、被写体検出部32は、画像生成部31から時系列的に得られる複数の画像データを比較して、移動する被写体(移動被写体)を主要被写体として検出してもよい。また、被写体検出部32は、顔検出に加えて、例えば特開2010−16621号公報(US2010/0002940号)に記載されているように、画像データに含まれる人体を主要被写体として検出してもよい。
【0063】
ここで、「主要被写体」とは、撮像される対象物である被写体のうち、使用者(撮影者)に注目される被写体又は使用者に注目されると推定される被写体のことをいう。主要被写体は、画像データ中に1つだけ存在する場合に限らず、複数存在する場合もある。
【0064】
ワークメモリ40は、画像処理部30による画像処理が行われる際に画像データなどを一時的に記憶する。表示部50は、撮像部20で撮像された画像(静止画、動画、ライブビュー画像)や各種情報を表示する。この表示部50は、例えば液晶表示パネルによって構成されている。表示部50の表示画面上にはタッチパネル51が形成されている。タッチパネル51は、使用者がメニューの選択などの操作を行う際に、使用者が触れた位置を示す信号をシステム制御部70に出力する。
【0065】
操作部55は、使用者によって操作されるレリーズスイッチ(静止画の撮影時に押されるスイッチ)、動画スイッチ(動作の撮影時に押されるスイッチ)、各種の操作スイッチなどである。この操作部55は、使用者による操作に応じた信号をシステム制御部70に出力する。記録部60は、メモリカードなどの記憶媒体を装着可能なカードスロットを有する。記録部60は、カードスロットに装着された記録媒体に画像処理部30において生成された画像データや各種データを記憶する。また、記録部60は、内部メモリを有する。記録部60は、画像処理部30において生成された画像データや各種データを内部メモリに記録することも可能である。
【0066】
システム制御部70は、デジタルカメラ1の全体の処理及び動作を制御する。このシステム制御部70はCPU(Central Processing Unit)を有する。本実施形態において、システム制御部70は、撮像素子100(撮像チップ113)の撮像面(図2に示す画素領域113A)を複数のブロックに分け、ブロック間において異なる電荷蓄積時間(又は電荷蓄積回数)、フレームレート、ゲインで画像を取得させる。このため、システム制御部70は、ブロックの位置、形状、範囲、及び各ブロック用の蓄積条件を駆動部21に対して指示する。
【0067】
また、システム制御部70は、ブロック間で異なる間引き率、画素信号を加算する加算行数又は加算列数、及びデジタル化のビット数で画像を取得させる。このため、システム制御部70は、各ブロック用の撮像条件(間引き率、画素信号を加算する加算行数又は加算列数、及びデジタル化のビット数)を駆動部21に対して指示する。また、画像処理部30は、ブロック間で異なる撮像条件(色信号処理、ホワイトバランス調整、階調調整、圧縮率などの制御パラメータ)で画像処理を実行する。このため、システム制御部70は、各ブロック用の撮像条件(色信号処理、ホワイトバランス調整、階調調整、圧縮率などの制御パラメータ)を画像処理部30に指示する。
【0068】
また、システム制御部70は、画像処理部30において生成された画像データを記録部60に記録させる。また、システム制御部70は、画像処理部30において生成された画像データを表示部50に出力させることにより、表示部50に画像を表示させる。また、システム制御部70は、記録部60に記録されている画像データを読み出して表示部50に出力させることにより、表示部50に画像を表示させる。表示部50に表示される画像としては、静止画、動画、ライブビュー画像が含まれる。
【0069】
本実施形態では、システム制御部70は、図6に示すように、制御部71、AF処理部(焦点調節部)72、及びAE処理部73を含む。制御部71は、レンズ部10がカメラボディ2に接続されたときに、電気接点81A,81Bを介してレンズ部10から送信されるレンズ情報を受信する。制御部71は、受信したレンズ情報の種別データに基づいて、レンズ部10に搭載されている撮影光学系11の種別を確認する。また、制御部71は、撮影光学系11の種別に応じて、撮像素子100の撮像領域(図2に示す画素領域113A)において撮影光学系11の種別に応じた領域をブロック単位で設定する(図7及び図9参照)。また、制御部71は、レンズ情報の歪曲収差データに基づいて、ブロック単位で設定した領域を歪曲収差に対応する領域に設定する(図10(A)参照)。
【0070】
また、制御部71は、画素領域113Aに設定した領域ごとに異なる動作を実行させる。すなわち、制御部71は、画素領域113Aに設定した領域ごとの動作状態を「アクティブ状態」又は「スリープ状態」に設定する。なお、この第1実施形態では、制御部71は、撮影光学系11のイメージサークル内の矩形の領域(この領域は、表示部50において実際に画像が表示される領域に対応する撮像素子100上の領域である。)をアクティブ状態に設定し、その領域以外の領域(イメージサークル内の矩形の領域以外の領域、及びイメージサークル外の領域)をスリープ状態に設定する。なお、イメージサークルとは、撮影光学系11を通った光が撮像素子100の撮像面において結像する円形の範囲のことをいう。
【0071】
ここで、「アクティブ状態」は、領域内の各画素が動作可能な状態(撮像可能な状態)であることを意味する。このアクティブ状態の領域においては、駆動部21により各画素が駆動制御され、各画素から画素信号の読み出しが行われる。また、「スリープ状態」は、領域内の各画素が動作停止の状態(撮像停止の状態)であることを意味する。動作停止の状態としては、領域内の各画素において駆動部21による駆動制御が行われていない状態を含む。すなわち、駆動部21がリセットトランジスタ303、転送トランジスタ302、及び選択トランジスタ305にパルスを印加しない状態を含む。また、動作停止の状態としては、領域内の各画素から画素信号の読み出しを行わない状態を含む。すなわち、駆動部21が選択トランジスタ305に対して選択パルスを印加しない状態を含む。また、動作停止の状態としては、領域内の各画素から画素信号を読み出すが、読み出した画素信号を使用しない状態を含む。例えば、信号処理チップ111などにおいて領域内の各画素から読み出した画素信号を廃棄する状態を含む。
【0072】
また、制御部71は、アクティブ状態に設定した領域に対して撮像条件を設定する。第1実施形態では、制御部71は、例えば予め定められたライブビュー画像の撮像時の撮像条件(シャッター速度、フレームレート、ゲインなど)を設定する。また、制御部71は、アクティブ状態に設定した領域において撮像が行われるように、撮像素子100の駆動制御を実行する。また、制御部71は、画像生成部31によって生成された画像データを表示部50に出力させ、表示部50の表示画面に画像(静止画、動画、ライブビュー画像)を表示させる制御を行う。また、制御部71は、画像生成部31によって生成された画像データを記憶部60に出力させ、表示部50に画像データを記憶させる制御を行う。
【0073】
AF処理部72は、レリーズスイッチの半押し操作が行われたことに基づいて、コントラストAFと呼ばれる被写体のコントラストが最大となるように焦点調節処理(AF処理)を実行する(第2実施形態における図12のステップS24参照)。具体的には、AF処理部72は、電気接点81A,81Bを介して制御情報をレンズ制御部13に対して送信することにより、レンズ制御部13にフォーカシング用レンズ11cを移動させる。また、AF処理部72は、撮像部20が撮像した被写体の像のコントラスト(ここで、被写体検出部32が主要被写体を検出した場合は、その主要被写体の像のコントラスト)を表すコントラスト信号を画像処理部30から取得する。AF処理部72は、フォーカシング用レンズ11cを移動させながら、画像処理部30からのコントラスト信号に基づいて、被写体の像のコントラストが最も高くなるフォーカシング用レンズ11cの位置を焦点位置として検出する。AF処理部72は、検出した焦点位置にフォーカシング用レンズ11cを移動させるように、制御信号をレンズ制御部13に送信する。
【0074】
AE処理部73は、レリーズスイッチの半押し操作が行われたことに基づいてAE処理を実行する(第2実施形態における図12のステップS25参照)。具体的には、AE処理部73は、画像の輝度分布を示す輝度分布データを画像処理部30から取得する。そして、AE処理部73は、輝度分布データに基づいて、適正露出となるような撮像条件(シャッター速度(露光時間、電荷蓄積時間)、絞り値、及びゲイン(ISO感度)を決定する。また、AE処理部73は、動画を撮像する場合は、輝度分布データに基づいて、適正露出となるようなフレームレート、シャッター速度、絞り値、及びゲイン(ISO感度)を決定する。このとき、AE処理部73は、輝度分布データに基づいて、撮像素子100の撮像領域113Aにおけるブロックごとに適正露出となるような撮像条件を決定することが可能である。
【0075】
AE処理部73は、決定した適正露出に応じた絞り値を示す制御情報をレンズ制御部13(すなわち、レンズ駆動制御装置15)に送信することにより、絞り14の開口径調節のための駆動制御を実行させる。また、AE処理部73は、適正露出に応じたシャッター速度(電荷蓄積時間)、ゲイン(ISO感度)、及びフレームレートを指示する指示信号を駆動部21に出力する。駆動部21は、指示信号により指示されたシャッター速度、ゲイン、及びフレームレートで撮像素子100を駆動制御する。
【0076】
なお、システム制御部70において、制御部71、AF処理部72、及びAE処理部73は、それぞれCPUが制御プログラムに基づいて処理を実行することにより実現される。
【0077】
なお、上記した例では、AF処理部72は、レリーズスイッチの半押し操作が行われたことに基づいてAF処理を実行するように構成していたが、AF処理部72は、ライブビュー画像の撮影中、及び動画の撮影中においてもAF処理を実行するようにしてもよい構成であるのが好ましい。また、AE処理部73は、レリーズスイッチの半押し操作が行われたことに基づいてAE処理を実行するように構成していたが、AE処理部73は、ライブビュー画像の撮影中、及び動画の撮影中においてもAE処理を実行する構成であるのが好ましいようにしてもよい。
【0078】
図7は、サイズ規格の異なるイメージサークルとイメージサークル内に設定される領域とを示す図である。図7(A)は、35mmフルサイズに対応した撮影光学系のイメージサークル200と、そのイメージサークル200内に設定される矩形の領域210とを示す。また、図7(B)は、APS−Cサイズに対応した撮影光学系のイメージサークル220と、そのイメージサークル220内に設定される矩形の領域230とを示す。また、図7(C)は、2つのイメージサークル200,220の中心を一致させつつ、図7(A)と図7(B)とを重ね合わせた状態を示す。
【0079】
図7(A)における領域210は、35mmフルサイズに対応した撮影光学系11を搭載したレンズ部10がカメラボディ2に装着された場合に、表示部50に表示可能な画像の領域に対応する。また、図7(B)における領域230は、APS−Cサイズに対応した撮影光学系11を搭載したレンズ部10がカメラボディ2に装着された場合に、表示部50に表示可能な画像の領域に対応する。
【0080】
本実施形態において、撮像素子100として35mmフルサイズの撮像素子が搭載されている。35mmフルサイズの撮像素子100は、その撮像領域が広いため、35mmフルサイズに対応した撮影光学系を通した被写体像を撮像することが可能であるとともに、APS−Cサイズに対応した撮影光学系を通した被写体像を撮像することが可能である。しかし、35mmフルサイズの撮像素子にとっては、APS−Cサイズに対応した撮影光学系のイメージサークルは小さすぎる。この場合、従来は、35mmフルサイズの撮像素子においてAPS−Cサイズの領域だけを使用することができなかった。そのため、35mmフルサイズの撮像素子の全画素から信号の読み出しを行い、必要な領域(APS−Cサイズの領域)以外の領域の信号については、画像処理部30における後処理などでトリミングを行う必要があった。このような構成では、撮像素子において消費電力が増大するとともに、撮像素子の過度の発熱をまねくおそれがある。また、撮像素子からの信号処理や、画像データの画像処理の高速化に不利になってしまう。
【0081】
これに対して、本実施形態では、制御部71は、異なるサイズ規格の撮影光学系11に対応した領域210又は230を画素領域113Aに設定する。そして、制御部71は、異なるサイズ規格の撮影光学系11に対応した領域210又は230をアクティブ状態に設定する。このような構成により、35mmフルサイズの撮像素子100を搭載したデジタルカメラ1において、イメージサークルの小さいAPS−Cサイズに対応した撮影光学系11を用いた場合であっても、撮像素子100の全画素からの信号の読み出しを行う必要はない。従って、撮像素子100において省電力化を実現することができるとともに、撮像素子100の過度の発熱を防止することができる。また、余分な信号処理や画像処理を省略することができるため、信号処理や画像処理の高速化を実現することができる。
【0082】
次に、デジタルカメラ1の撮影前処理について説明する。図8は、撮影前処理の一例を示すシーケンス図である。なお、図8に示す撮影前処理は、例えば、使用者によりカメラボディ2にレンズ部10が装着されるととともに、カメラボディ2の電源が投入されることにより実行される。ただし、この撮影前処理は、カメラボディ2の電源が投入された後に、カメラボディ2にレンズ部10が装着されることにより実行されてもよい。
【0083】
図8に示す処理では、カメラボディ2において、システム制御部70の制御部71は、レンズ部10との接続確認を行う(ステップS1)。また、レンズ部10において、レンズ制御部13は、カメラボディ2との接続確認を行う(ステップS11)。制御部71及びレンズ制御部13は、それぞれ、電気接点81A,81Bが接続されたことを確認することにより、ステップS1及びS11の接続確認を行う。
【0084】
レンズ制御部13は、カメラボディ2との接続確認(ステップS1)を行った後、レンズ記憶部12に記憶されているレンズ部10固有のレンズ情報(種別データ、歪曲収差データ)を、電気接点81A,81Bを介してシステム制御部70に送信する(ステップS12)。制御部71は、レンズ制御部13から送信されたレンズ情報を受信する(ステップS2)。そして、制御部71は、レンズ情報の種別データに基づいて、撮影光学系11の種別を確認する(ステップS3)。すなわち、制御部71は、撮影光学系11の種別がAPS−Cサイズに対応した撮影光学系であるか、35mmフルサイズに対応した撮影光学系であるかを確認する。そして、制御部71は、撮影光学系11の種別に応じて、撮像素子100の撮像領域113Aにおいて撮影光学系11の種別に応じた領域(領域210又は領域230)を設定する(ステップS4)。
【0085】
具体的には、図7に示すように、撮影光学系11の種別が35mmフルサイズに対応した撮影光学系である場合は、制御部71は、その撮影光学系のイメージサークル200内の矩形の領域210を、35mmフルサイズの領域として設定する。また、図7に示すように、撮影光学系11の種別がAPS−Cサイズに対応した撮影光学系である場合は、制御部71は、その撮影光学系のイメージサークル220内の矩形の領域230を、APS−Cサイズの領域として設定する。なお、領域210は、少なくとも撮像素子100の画素領域(撮像領域)113Aよりも小さい領域であればよく、画素領域113Aと同じ又は近い大きさの領域であってもよい。
【0086】
また、制御部71は、ステップS4の処理において、撮像素子100の画素領域113Aにおける領域ごとの動作状態を設定する。図9は、第1実施形態における領域ごとの動作状態を示す図である。図9に示すように、制御部71は、画素領域113Aにおいて領域230を設定した場合は、領域230をアクティブ状態に設定し、画素領域113Aにおける領域230以外の領域をスリープ状態に設定する。一方、図9には示していないが、制御部71は、画素領域113Aにおいて領域210を設定した場合は、領域210をアクティブ状態に設定し、画素領域113Aにおける領域210以外の領域をスリープ状態に設定する。
【0087】
次に、制御部71は、レンズ情報の歪曲収差データに基づいて、ステップS4で設定した領域210又は領域230に対して、歪曲収差に対応する領域を設定する(ステップS5)。図10は、歪曲収差に対応する領域を示す図である。ステップS5において、制御部71は、歪曲収差データに基づいて、撮影光学系11の周辺部においてどの程度の歪曲収差(たる型収差)が生じるかを確認する。制御部71は、領域210又は領域230に対して、歪曲収差に対応する領域を設定する。矩形の領域210又は領域230と、歪曲収差に対応する領域とによって、被写体の撮像を行う領域がたる型に変形される。
【0088】
図10(A)に示す例では、撮像素子100の画素領域113Aにおいて領域230が設定されている。制御部71は、歪曲収差データに基づいて、領域230の外周側に、たる型収差に対応する領域220A〜220Dを設定する。このように、矩形の領域230と、たる型収差に対応する領域220A〜220Dとによって、撮像素子100における被写体の撮像を行う領域が領域230の周囲が膨らんだ「たる型」の形となる。
【0089】
また、制御部71は、ステップS5においてたる型収差に対応する領域220A〜220Dを設定した場合は、たる型収差に対応する領域220A〜220Dをアクティブ状態に設定する。これにより、撮像素子100において被写体の撮像を行う領域が歪曲収差に応じたたる型の形となる。このように、撮像素子100がたる型の領域(領域230及び領域220A〜220D)において撮像を行うことにより、画像処理部30において容易に歪曲収差による画像の歪みの補正を容易に実行することができる。すなわち、図10(A)に示すように、撮像素子100は、歪曲収差によって、たる型に歪曲(拡大)し得る領域(領域230及び領域220A〜220D)を予め撮像しておく。そして、画像処理部30は、歪曲収差による実際の画像の歪みを判定し、判定した実際の画像の歪みに基づいて画像の歪みの補正を行う。この場合、仮に、撮像素子100が領域230について撮像していた場合は、画像処理部30が画像の歪みの補正を行うと、図10(B)に示すように、表示部50の表示画面における周囲の領域50A〜50Dの画像が欠損してしまう。一方、撮像素子100が領域230及び領域220A〜220Dについて撮像していた場合は、画像処理部30が画像の歪みの補正を行うと、図10(B)に示すように、画像処理部30によって表示部50の表示画面の全面における画像データが生成され、表示部50の全面において画像が表示される。なお、画像処理部30は、画像の歪み補正に必要な画像データ以外の余分な画像データについてはトリミングを行う。
【0090】
次に、制御部71は、ステップS4,S5でアクティブ状態に設定した領域(領域210又は領域230)における撮像条件(電荷蓄積時間、ゲインなど)を設定する(ステップS6)。このとき、制御部71は、例えば、予め定められている撮像条件を指示する指示信号を駆動部21に出力する。駆動部21は、制御部71からの指示信号に基づいて、アクティブ状態に設定した領域における撮像条件を設定する。なお、制御部71は、使用者の操作部55又はタッチパネル51の操作に応じて、撮像条件を設定するように構成されてもよい。なお、本実施形態では、制御部71は、ステップS4,S5でアクティブ状態に設定した領域(領域210又は領域230)に対して同じ撮像条件を設定する。
【0091】
なお、制御部が図8に示すデジタルカメラ1の撮影前処理を実行した後に、デジタルカメラ1の撮影処理を実行する。ただし、デジタルカメラ1の撮影処理については、第2実施形態以降において説明する(図11図13参照)。
【0092】
以上に説明したように、第1実施形態によれば、複数種類の撮影光学系11に対応可能な撮像素子100を有する撮像部20と、交換可能なレンズ部10からの撮影光学系の特性に関するレンズ情報に応じて、撮像素子100の撮像領域113Aにおいてアクティブ状態とする領域210又は230を設定する制御部71とを備える。このような構成によれば、撮像素子100の撮像領域113Aにおいて撮影光学系11に応じた領域(領域210、領域230)を使用することができる。その結果、撮像素子100において省電力化を実現することができるとともに、撮像素子100の過度の発熱を防止することができる。また、撮像部20や画像処理部30において余分な信号処理や画像処理を省略することができるため、信号処理や画像処理の高速化を実現することができる。
【0093】
また、第1実施形態によれば、レンズ情報は、撮影光学系11のサイズに関する情報を含み、制御部71は、サイズに関する情報に基づいて、撮像領域113Aのうち撮影光学系11のイメージサークル220内の領域とイメージサークル220外の領域とを設定する。このような構成によれば、撮影光学系11のサイズに応じたイメージサークルに対応する領域(領域210、領域230)を使用することができる。
【0094】
また、第1実施形態によれば、レンズ情報は、撮影光学系11の歪曲収差に関する情報を含み、制御部71は、歪曲収差に関する情報に基づいて、矩形の領域(例えば図10の領域230)を撮影光学系11の歪曲収差に対応する領域(例えば、図10の領域220A〜220D)に設定する。このような構成によれば、画像処理部30において歪曲収差による画像の歪みの補正を容易に実行することができる。
【0095】
<第2実施形態>
上記した第1実施形態では、図7(B)及び図9に示したように、制御部71は、イメージサークル220内の矩形の領域230をアクティブ状態に設定し、その領域230以外の領域をスリープ状態に設定していた。しかし、第2実施形態では、制御部71は、イメージサークル220内の領域をアクティブ状態に設定し、イメージサークル220外の領域をスリープ状態に設定する。また、第2実施形態では、制御部71は、イメージサークル220内の矩形の領域230と、イメージサークル220内の矩形の領域230以外の領域とで異なる撮像条件を設定する。また、第2実施形態では、被写体検出部32がイメージサークル220内の領域において主要被写体の検出を行うとともに、AF処理部72がイメージサークル220内の領域の主要被写体に対して焦点調節を行う。なお、第2実施形態では、APS−Cサイズに対応する撮影光学系11を有するレンズ部10がカメラボディ2に装着されたものとして説明する。
【0096】
図11は、第2実施形態における領域ごとの動作状態を示す図である。図11に示すように、イメージサークル220内の領域は、矩形の領域230と、矩形の領域230以外の領域(矩形の領域230の周囲の領域)すなわち領域221A,221B,221C,221Dとからなる。以下の各実施形態においては、イメージサークル220内の矩形の領域230のことを「第1領域」といい、イメージサークル220内の領域221A,221B,221C,221Dのことを「第2領域」という。図11に示すように、第2実施形態では、撮像素子100の画素領域(撮像領域)113A(図11に示す例では領域210)において、イメージサークル220内の領域(第1領域230、第2領域221A,221B,221C,221D)がアクティブ状態に設定され、イメージサークル220外の領域がスリープ状態に設定されている。
【0097】
表示部50に表示される画像の領域に対応する領域は、イメージサークル220内の矩形の領域(第1領域)230である。従って、本来、第1領域230で撮像を行えばよく、第2領域221A〜221Dにおいて撮像を行う必要がない。しかし、この第2実施形態では、被写体検出部32は、第1領域230における画像データに基づいて主要被写体の検出を行うだけでなく、第2領域221A〜221Dにおける画像データに基づいて主要被写体の検出を行う。また、AF処理部72は、第1領域230における主要被写体に対して焦点調節を行うだけでなく、第2領域221A〜221Dにおける主要被写体に対しても焦点調節を行う。このことから、制御部71は、第1領域230だけでなく、第2領域221A〜221Dについてもアクティブ状態に設定し、その第2領域221A〜221Dにおいて撮像部20に撮像を実行させる。
【0098】
次に、デジタルカメラ1の撮影処理について説明する。図12は、撮影処理の一例を示すフローチャートである。図12に示す撮影処理は、第1実施形態で説明した撮影前処理(図8参照)が行われた後に実行される。
【0099】
第2実施形態では、第1実施形態で説明した撮影前処理において、制御部71は以下のような設定を行ったものとする。まず、制御部71は、図8のステップS3において、撮影光学系11の種別がAPS−Cサイズに対応した撮影光学系であることを確認し、ステップS4において、画素領域113Aにイメージサークル220内に第1領域230を設定したものとする。また、制御部71は、図8のステップS4において、イメージサークル220内の第1領域230をアクティブ状態に設定し、イメージサークル220外の領域をスリープ状態に設定したものとする。また、制御部71は、図8のステップS6において、イメージサークル220内の第1領域230と、イメージサークル220内の第2領域221A〜221Dとで異なる撮像条件を設定したものとする。このとき、制御部71は、第1領域230については、例えば予め定められたライブビュー画像撮像時の撮像条件(シャッター速度、フレームレート、ゲインなど)を設定したものとする。また、制御部71は、第2領域221A〜221Dについては、第1領域230よりも高いフレームレートでかつ高いゲイン(ISO感度)を設定したものとする。
【0100】
図12に示す処理において、制御部71は、ライブビュー画像の撮影を開始する(ステップS21)。また、制御部71は、撮像部20で撮像されたライブビュー画像を表示部50の表示画面に表示する(ステップS22)。このとき、表示部50は、撮像素子100の第1領域230において撮像された画像を表示する。ライブビュー画像は被写体の動きの滑らかな画像である必要がないため、制御部71は、低いフレームレートで撮像するように撮像素子100の第1領域230を駆動制御する。一方、制御部71は、第2領域221A〜221Dにおいて、第1領域230よりも高いフレームレートで高いゲインで撮像するように撮像素子100の第2領域221A〜221Dを駆動制御する。
【0101】
次に、制御部71は、レリーズスイッチの半押し操作(SW1の操作)が行われたか否かを判定する(ステップS23)。制御部71がレリーズスイッチの半押し操作が行われたと判定した場合は、AF処理部72は、撮影準備として自動的に焦点調節を行うAF処理を実行する(ステップS24)。
【0102】
図13は、主要被写体の焦点位置の検出を説明するための図である。図13では、人物O1がイメージサークル220外からイメージサークル220内に入り、また、その人物O1がイメージサークル220内の第2領域221Aから第1領域230に入る状況を示している。人物O1がイメージサークル220内に入ると、被写体検出部32は、画像生成部31で生成した第2領域221Aの画像データから主要被写体である人物O1を検出する。被写体検出部32は、人物O1がイメージサークル220の外に出るまで、人物O1を主要被写体として検出し続ける。すなわち、被写体検出部32による主要被写体の追尾が行われる。また、画像処理部30は、被写体検出部32が検出した人物O1の像のコントラストを表すコントラスト信号をシステム制御部70に出力する。
【0103】
AF処理(ステップS24)において、AF処理部72は、主要被写体である人物O1の像のコントラストを表すコントラスト信号を画像処理部30から取得する。また、AF処理部72は、フォーカシング用レンズ11cの移動を指示する制御情報をレンズ制御部13に対して送信する。これにより、レンズ制御部13は、AF処理部72からの制御情報に基づいて、フォーカシング用レンズ11cを移動させる制御を行う。そして、AF処理部72は、フォーカシング用レンズ11cを移動させながら人物O1の像のコントラストが最も高くなるフォーカシング用レンズ11cのレンズ位置を焦点位置として検出する。AF処理部72は、検出した焦点位置にフォーカシング用レンズ11cを移動させる。
【0104】
以上のように、被写体検出部32は、人物O1がイメージサークル220内の第2領域221Aに入った時点から主要被写体の検出を行う。また、AF処理部72は、被写体検出部32が検出した主要被写体に対して焦点を合わせるように、フォーカシング用レンズ11cを駆動させて焦点調節を行う。このように、被写体検出部32は、第1領域230だけでなく第2領域221A〜221Dにおいても主要被写体の検出を行う。また、AF処理部72は、第1領域230だけでなく第2領域221A〜221Dにおいても主要被写体に対する焦点調節を行う。従って、被写体検出部32は、主要被写体が第1領域230に入った時点から主要被写体の検出を行うことができるとともに、AF処理部72も、主要被写体が第1領域230に入った時点から主要被写体の焦点調節を行うことができる。
【0105】
また、上述したように、制御部71は、第2領域221A〜221Dの撮像条件として、第1領域230よりも高いフレームレートでかつ高いゲイン(ISO感度)を設定している。このように、制御部71が第2領域221A〜221Dにおいて高いフレームレートを設定することにより、被写体検出部32は、第2領域221Aにおいて早く主要被写体の検出を行うことができる。また、制御部71が第2領域221A〜221Dにおいて高いゲインを設定することにより、被写体検出部32は、第2領域221A〜221Dにおいて高い精度で主要被写体の検出を行うことができる。従って、被写体検出部32は、主要被写体が第2領域221Aに入った時点から第1領域230に入るまでの時間が短い場合であっても、第2領域221A〜221Dにおいて主要被写体の検出を確実に行うことができる。また、被写体検出部32が第2領域221A〜221Dにおいて主要被写体の検出を行うことができることから、AF処理部72も、第2領域221A〜221Dにおいて主要被写体に対する焦点調節を行うことができるようになる。
【0106】
次に、AE処理部73は、適正露出となるように露出を制御するAE処理を実行する(ステップS25)。具体的には、AE処理部73は、画像生成部31が生成した画像データの輝度分布を示す輝度分布データを画像処理部30から取得する。そして、AE処理部73は、輝度分布データに基づいて、適正露出となるような撮像条件(フレームレート、シャッター速度、及びゲイン(ISO感度)など)と絞り値とを決定する。AE処理部73は、決定した適正露出に応じた絞り値を示す制御情報をレンズ制御部13に送信することにより、絞り14の開口径調節のための駆動制御を実行させる。また、AE処理部73は、適正露出に応じた撮像条件(フレームレート、シャッター速度、及びゲインなど)を指示する指示信号を駆動部21に出力する。駆動部21は、指示信号により指示された撮像条件を設定する。
【0107】
その後、制御部71は、レリーズスイッチの全押し操作(SW2の操作)が行われたか否かを判定する(ステップS26)。制御部71がレリーズスイッチの全押し操作が行われていないと判定した場合は、上記したステップS23〜S25の処理を繰り返し実行する。制御部71がレリーズスイッチの全押し操作が行われたと判定した場合は、制御部71は、撮像処理を実行する(ステップS27)。すなわち、制御部71は、撮像を指示する指示信号を撮像部20に出力することにより、駆動部21に撮像素子100を駆動制御させる。
【0108】
以上に説明したように、第2実施形態によれば、制御部71は、イメージサークル220内の領域をアクティブ状態とし、イメージサークル220外の領域をスリープ状態とする。このような構成によれば、撮像素子100がイメージサークル220内の領域において撮像を実行し、被写体検出部32がイメージサークル220内の画像データを用いて主要被写体の検出などを行うことができる。
【0109】
また、第2実施形態によれば、制御部71は、イメージサークル220内の領域のうち、表示部50に表示される画像の領域に対応する第1領域230と、この第1領域230とは異なる第2領域221A〜221Dとを設定する。このような構成によれば、第1領域230外の第2領域221A〜221Dにおいて主要被写体の検出などを行うことができる。また、第2実施形態によれば、制御部71は、第1領域230と第2領域221A〜221Dとで撮像素子100の撮像条件を変更する。このような構成によれば、第2領域221〜221Dにおいて、第1領域230よりも早くかつ高精度で主要被写体の検出などを行うことができる。
【0110】
また、第2実施形態によれば、イメージサークル220内の領域の被写体を検出する被写体検出部32を備えるので、第1領域230だけでなく第2領域221A〜221Dにおいても被写体の検出を行うことができる。従って、被写体が第1領域230に入った時点から被写体の検出を行うことができる。また、第2実施形態によれば、イメージサークル220内の領域の被写体に対して焦点調節を行う焦点調節部72を備えるので、第1領域230だけでなく第2領域221A〜221Dにおいても被写体に対する焦点調節を行うことができる。従って、被写体が第1領域230に入った時点から被写体の焦点調節を行うことができる。また、第2実施形態によれば、制御部71は、第2領域221A〜221Dの撮像条件として、第1領域230よりも高いフレームレートでかつ高いゲインに設定するので、被写体が第2領域221A〜221Dに入った時点から第1領域230に入るまでの時間が短い場合であっても、第2領域221Aにおいて被写体の検出を確実に行うことができる。
【0111】
<第3実施形態>
上記した第1実施形態では、制御部71が撮影光学系11の種別に応じて自動的に領域の設定を行っていた(図8のステップS4参照)。これに対し、第3実施形態では、制御部71は使用者の操作に応じて様々な形状の領域を設定する。なお、第3実施形態では、APS−Cサイズに対応する撮影光学系11を有するレンズ部10がカメラボディ2に装着されたものとして説明する。
【0112】
図14は、領域選択処理の一例を示すフローチャートである。ここで、「選択領域」とは、制御部71により設定された領域(ここでは制御部71が図8のステップS4で設定したイメージサークル220内の矩形の領域230)のうち、使用者により選択された領域のことをいう。また、「非選択領域」とは、制御部71により設定された領域(ここでは領域230)のうち、使用者により選択されなかった領域のことをいう。なお、図14に示す領域選択処理は、図8に示す撮影前処理が実行された後に実行される。
【0113】
図14に示す処理において、制御部71は、例えば使用者によるタッチパネル51の操作に応じて領域230内の領域が選択されたか否かを判定する(ステップS31)。使用者により選択され得る領域の例を図15及び図16に示す。
【0114】
図15及び図16は、撮像領域内の選択領域と非選択領域とを示す図である。図15(A)に示す例では、領域230の中に横長の方形状の領域231Aが設定されている。領域231Aが選択領域であり、この領域231A以外の領域231B,231Cが非選択領域である。選択領域231Aは、パノラマ撮影に適した領域である。図15(B)に示す例では、領域230の中に正方形の領域232Aが設定されている。領域232Aが選択領域であり、この領域232A以外の領域232B,232Cが非選択領域である。図15(C)に示す例では、領域230の中に三角形の領域233Aが設定されている。領域233Aが選択領域であり、この領域233A以外の領域233B,233Cが非選択領域である。
【0115】
図16(D)に示す例では、領域230の中に円形の領域234Aが設定されている。領域234Aが選択領域であり、この領域234A以外の領域234B,234Cが非選択領域である。図16(E)に示す例では、領域230の中にハート形の領域235Aが設定されている。領域235Aが選択領域であり、この領域235A以外の領域235Bが非選択領域である。図16(F)に示す例では、領域230の中に、領域230に対して斜めの領域(斜めの線で区切られた領域)236Aが設定されている。領域236Aが選択領域であり、この領域236A以外の領域236B,236Cが非選択領域である。図16(G)に示す例では、領域230の中に複数(4つ)の円形の領域237A〜237Dが離散的に設定されている。これらの領域237A〜237Dが選択領域であり、これらの領域237A〜237D以外の領域237Eが非選択領域である。
【0116】
制御部71は、図15及び図16に示すような形の選択領域の一覧を表示部50の表示画面に表示する。使用者は、表示部50の表示画面に表示された選択領域をタッチして選択する。タッチパネル51は、使用者によりタッチされた位置を示す信号を制御部71に出力する。制御部71は、タッチパネル51からの信号に基づいて、使用者により選択された領域を認識する。なお、使用者がタッチパネル51(すなわち表示部50の表示画面)を指などでなぞることにより、任意の領域を選択するようにしてもよい。
【0117】
制御部71は、使用者により選択領域が選択されたと判定した場合は、その選択領域を設定する(ステップS32)。そして、制御部71は、選択領域についてはアクティブ状態に設定し、選択領域以外の非選択領域についてはスリープ状態に設定する。その後、制御部71は、アクティブ状態に設定された選択領域の撮像条件を設定する(ステップS33)。なお、スリープ状態に設定された非選択領域に対応する表示部50の表示画面上の領域では、画像は表示されず、例えば黒色の表示が行われる。
【0118】
<第3実施形態の変形例>
上記した第3実施形態において、制御部71は、使用者により選択された選択領域をアクティブ状態に設定し、非選択領域をスリープ状態に設定していた(ステップS32参照)。これに対して、第3実施形態の変形例では、制御部71は、非選択領域についてもアクティブ状態に設定する。また、上記した第3実施形態では、制御部71は、アクティブ状態に設定した領域について同じ撮像条件を設定していた(ステップS33参照)。これに対して、第3実施形態の変形例では、選択領域と非選択領域とで異なる撮像条件を設定する。
【0119】
図17は、焦点位置の検出の他の例を説明するための図である。なお、図17に示す例は、使用者は選択領域として図15(A)に示す領域231Aを選択したものとする。このような場合において、上記した第2実施形態で説明した場合(図12及び図13)と同様に、被写体検出部32は、選択領域231Aだけでなく非選択領域231B,231Cにおいても主要被写体である人物O2の検出を行うことができる。また、AF処理部72は、選択領域231Aだけでなく非選択領域231B,231Cにおいて、被写体検出部32が検出した主要被写体である人物O2の焦点調節を行うことができる(図12のステップS24参照)。このような構成により、被写体検出部32は、人物O2が選択領域231Aに入った時点で直ちに主要被写体の検出を行うことができるとともに、AF処理部72も、人物O2が選択領域231Aに入った時点で直ちに主要被写体の焦点調節を行うことができる。また、被写体検出部32は、人物O2が非選択領域231B,231Cに入った時点から選択領域231Aに入るまでの時間が短い場合であっても、非選択領域231B,231Cにおいて主要被写体の検出を確実に行うことができる。また、AF処理部72も、非選択領域231B,231Cにおいて主要被写体に対する焦点調節を確実に行うことができる。
【0120】
以上のように、第3実施形態によれば、制御部71は、第1領域230を任意の形状に設定するので、使用者の利用態様などに合わせて領域230の形状を設定することができる。また、第3実施形態によれば、制御部71は、選択領域だけでなく非選択領域においてもアクティブ状態に設定することにより、被写体検出部32が非選択領域において主要被写体の検出を行うことができるとともに、AF処理部72が主要被写体に対する焦点調節を行うことができる。
【0121】
なお、上記した第3実施形態では、使用者はタッチパネル51の操作によって領域の選択を行っていたが、操作部55の操作によって領域を選択するようにしてもよい。また、第3実施形態では、APS−Cサイズに対応する撮影光学系11を有するレンズ部10がカメラボディ2に装着されたものとして説明していたが、35mmフルサイズの対応する撮影光学系11を有するレンズ部10がカメラボディ2に装着された場合であってもよい。すなわち、領域210において様々な形状の領域が設定されてもよい。
【0122】
<第4実施形態>
第4実施形態では、レンズ部10のレンズ記憶部12には、レンズ情報として種別データ及び歪曲収差データのほかに、周辺減光データも記憶されている。周辺減光データは、レンズ部10に搭載されている撮影光学系11の周辺減光に関する情報である。撮影光学系11の周辺部の光量は中心部の光量よりも少なくなる。すなわち、撮影光学系11の光軸(撮影光学系11の中心軸)から周辺部へ離れるに従い光量が低下して暗くなる。このような性質を周辺減光という。周辺部の光量は、中心部の光量に対する比率(周辺光量比)という値で評価される。レンズ部10のレンズ記憶部12には、撮影光学系11の設計段階で予め取得される周辺減光の変化率(周辺光量比)の情報が周辺減光データとして記憶されている。なお、第4実施形態では、35mmフルサイズに対応する撮影光学系11を有するレンズ部10がカメラボディ2に装着されたものとして説明する。
【0123】
図8に示す処理において、レンズ制御部13は、カメラボディ2との接続確認を行った後(ステップS11)、レンズ情報として、種別データ及び歪曲収差データのほかに、周辺減光データもカメラボディ2のシステム制御部70に送信する(ステップS12)。システム制御部70の制御部71は、レンズ制御部13から送信された周辺減光データに応じた領域の設定を行う。
【0124】
図18は、第4実施形態に係る周辺減光に応じて設定される領域を示す図である。なお、図18に示す例では、領域210内において周辺減光に応じて設定される領域を示している。制御部71は、図8のステップS4において領域210を設定する際に、図18に示すように、領域210の中心部に円形の領域211を設定する。また、制御部71は、円形の領域211の周囲に、円形の領域211の径よりも大きな径のリング状の領域212を設定する。また、制御部71は、リング状の領域212の周囲に、リング状の領域212の径よりも大きな径のリング状の領域213を設定する。また、制御部71は、リング状の領域213の周囲に、リング状の領域213の径よりも大きな径のリング状の領域214を設定する。さらに、制御部71は、リング状の領域214の周囲に、リング状の領域214の径よりも大きな径のリング状の領域215を設定する。
【0125】
制御部71は、図8のステップS6において、周辺減光データに基づいて、領域210内において均一な露光となるように領域210内における各領域211〜215の撮像条件(ゲイン、フレームレート、電荷蓄積時間など)を設定する。例えば、領域210の中の中心から遠くなるほど、撮影光学系11からの光束の光量が低下するので、制御部71は、領域210の中の中心から近い領域よりも遠い領域に対してゲインを高く設定したり、電荷蓄積時間(シャッタースピード)を長くする。
【0126】
このように、第4実施形態では、周辺減光データに基づいて領域210内における各領域211〜215の撮像条件を設定するので、領域210内において均一な露光を実現することができる。その結果、領域219の周辺部が暗くなるような事態を防止することができる。
【0127】
<第5実施形態>
第5実施形態では、上記した第1実施形態におけるデジタルカメラ1のカメラボディ2を、撮像装置1Aと電子機器1Bとに分離した構成としている。
【0128】
図19は、第5実施形態に係る撮像装置及び電子機器の構成を示すブロック図である。図19に示す構成において、撮像装置1Aは、被写体の撮像を行う装置である。この撮像装置1Aは、撮像部20、画像処理部30、ワークメモリ40、操作部55、記録部60、及び第1システム制御部75を備える。この撮像装置1Aにはレンズ部10を装着可能に構成されている。なお、撮像装置1Aのうち、撮像部20、画像処理部30、ワークメモリ40、操作部55、及び記録部60の構成は、図6に示した構成と同様である。従って、同一構成には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0129】
また、電子機器1Bは、画像(静止画、動画、ライブビュー画像)の表示を行う装置である。この電子機器1Bは、表示部50及び第2システム制御部(制御部)76を備える。なお、電子機器1Bのうちの表示部50の構成は、図6に示した構成と同様である。従って、同一構成には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0130】
第1システム制御部75は、第1通信部75Aを有している。また、第2システム制御部76は、第2通信部76Bを有している。第1通信部75Aと第2通信部76Bとは、互いに有線又は無線で信号を送受信する。図6に示す構成(制御部71、AF処理部72、及びAE処理部73)は、第1システム制御部75と第2システム制御部76のいずれに設けられてもよい。図6に示すすべての構成は、第1システム制御部75又は第2システム制御部76に設けられてもよく、また図6に示す構成の一部が第1システム制御部75に設けられ、図6に示す構成の一部以外の構成が第2システム制御部76に設けられてもよい。
【0131】
なお、撮像装置1Aは、例えば撮像機能と通信機能を備えたデジタルカメラ、スマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータなどで構成され、電子機器1Bは、例えば通信機能を備えたスマートフォン、携帯電話、携帯型パーソナルコンピュータなどの携帯端末で構成される。
【0132】
図19に示す第1システム制御部75は、CPU(図示せず)が制御プログラムに基づいて処理を実行することにより実現される。また、図19に示す第2システム制御部76は、CPU(図示せず)が制御プログラムに基づいて処理を実行することにより実現される。
【0133】
なお、図19に示す構成において、画像処理部30と第1システム制御部75とは一体で構成されてもよい。この場合、1つ又は複数のCPUを有するシステム制御部が制御プログラムに基づいて処理を行うことにより画像処理部30の機能と第1システム制御部75の機能を担う。
【0134】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、上記の実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。そのような変更または改良、省略した形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記した実施形態や変形例の構成を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【0135】
上記した各実施形態において、カラーフィルタ102の配列がベイヤー配列とされていたが、この配列以外の配列であってもよい。また、単位グループ131を形成する画素の数は、少なくとも1つの画素を含んでいればよい。また、ブロックも少なくとも1画素を含んでいればよい。従って、1画素ごとに異なる撮像条件で撮像を実行することも可能である。
【0136】
また、上記した各実施形態において、駆動部21は、一部又はすべての構成が撮像チップ113に搭載されてもよいし、一部又はすべての構成が信号処理チップ111に搭載されてもよい。また、画像処理部30の一部の構成が撮像チップ113又は信号処理チップ111に搭載されてもよい。また、システム制御部70の一部の構成が撮像チップ113又は信号処理チップ111に搭載されてもよい。
【0137】
また、上記した各実施形態において、制御部71が設定可能な撮像条件として、ゲイン、電荷蓄積時間(露光時間、シャッタースピード)、フレームレートに限らず、その他の制御パラメータであってもよい。また、撮像条件が自動的に設定される場合についてのみ説明したが、使用者による操作部55などの操作に応じて設定されるようにしてもよい。
【0138】
また、上記した各実施形態では、ブロックの領域の大きさが予め設定されている場合について説明したが、使用者がブロックの領域の大きさを設定するように構成してもよい。
【0139】
また、上記した第2実施形態において、AF処理(ステップS24)及びAE処理(ステップS25)は、レリーズスイッチや動画スイッチの半押し操作が行われたときに実行されるように構成されていた。しかし、このような構成に限らず、AF処理部72は、ライブビュー画像の撮像中においてもAF処理を実行するようにしてもよく、また、AE処理部73は、ライブビュー画像の撮像中においてもAE処理を実行するようにしてもよい。また、AF処理部72がライブビュー画像の撮像中にAF処理を実行しない場合でも、被写体検出部32がライブビュー画像の撮像中に主要被写体の検出を行うようにしてもよい。
【0140】
また、上記した第2実施形態において、ライブビュー画像の撮像中にAF処理を実行しない場合は、制御部71は、第2領域221A〜221Dにおいて撮像を実行させないようにしてもよい。この場合、レリーズスイッチなどの半押し操作が行われた場合に、制御部71は、第2領域221A〜221Dにおいて撮像を実行させ、第2領域221A〜221Dにおける画像データに基づいて、被写体検出部32による主要被写体の検出と、AF処理部72によるAF処理とを実行させるように構成してもよい。また、AF処理部72は、ライブビュー画像の撮像中に、第2領域221A〜221Dにおいて主要被写体の焦点位置(デフォーカス量)を検出するが、その主要被写体に対する焦点調節については行わないように構成してもよい。このような構成であっても、主要被写体が第1領域230に入ったときに、AF処理部72は、直ちに主要被写体の焦点位置(デフォーカス量)に基づいて焦点調節を行うことができる。
【0141】
また、上記した第2実施形態などにおいて、AF処理(焦点検出処理)は、コントラストAFを用いて焦点検出を行うように構成していた。しかし、このような構成に限らず、位相差検出方式によって行う構成でもよい。この場合には、撮像素子100の撮像領域(画素領域113A)において焦点検出用の画素を設ける。そして、AF処理部72は、焦点検出用の画素からの出力信号を用いて位相差検出演算を行うことにより、撮影光学系11による焦点調節状態(具体的にはデフォーカス量)を検出する。焦点検出用の画素及び位相差検出演算については、例えば特開2009−94881号公報に記載されているような技術を用いることができる。
【0142】
上記した各実施形態におけるデジタルカメラ1は、例えば撮像機能を備えたデジタルカメラ、スマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータなどの機器で構成されもよい。
【符号の説明】
【0143】
1…デジタルカメラ(電子機器)、1A…撮像装置(電子機器)、1B…電子機器、11…撮影光学系、20…撮像部、30…画像処理部、31…画像生成部、32…被写体検出部、50…表示部、51…タッチパネル、55…操作部、70…システム制御部、70A…第1システム制御部、70B…第2システム制御部、71…制御部、72…AF処理部(焦点調節部)、73…AE処理部、100…撮像素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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