特許第6349699号(P6349699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349699
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】光学積層体および光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20180625BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180625BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20180625BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20180625BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20180625BHJP
   B29L 11/00 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
   G02B5/18
   B32B7/02 103
   B32B27/16 101
   B29C59/02 Z
   B29L9:00
   B29L11:00
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-246335(P2013-246335)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-105962(P2015-105962A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本郷 孝剛
【審査官】 山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−347034(JP,A)
【文献】 特開2000−310704(JP,A)
【文献】 特開2009−015338(JP,A)
【文献】 特開2001−66431(JP,A)
【文献】 米国特許第06537624(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18、5/30、5/32
G32B 1/00−43/00
B29C 53/00−53/84、57/00−59/18
G02F 1/1335−1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の上に形成される粘着層と、前記粘着層の上に形成される液晶フィルムと、を備え、
前記液晶フィルムにおける前記粘着層とは反対側の面には、回折機能を有する凹凸構造体が形成され、
前記液晶フィルムの上には、前記凹凸構造体を覆う樹脂層が形成され、
前記樹脂層は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化してなるとともに、そのガラス転移温度T2(℃)が30℃以上であり、
前記液晶フィルムは、重合性液晶組成物を重合してなるフィルムであり、
前記重合性液晶組成物は、下記一般式(1)で表される化合物、及び下記一般式(2)で表される棒状液晶性化合物を含有する、光学積層体。
−A−B−A−R (1)
(上記一般式(1)において、
及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基である。
及びAはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。
Bは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される。)

−C−D−C−M−C−D−C−R (2)
(上記一般式(2)において、
及びRは反応性基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。
及びDは単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される。
〜Cは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される。
Mはメソゲン基を表す。)
【請求項2】
前記樹脂層は、その面内方向のレターデーションReが10nm以下である請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記粘着層は、その面内方向のレターデーションReが10nm以下である請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記基材は、その面内方向のレターデーションReが10nm以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
基材と、前記基材の上に形成される粘着層と、前記粘着層の上に形成される液晶フィルムとを備える光学積層体の製造方法であって、
前記積層体は、前記液晶フィルムの上に形成されるとともに、そのガラス転移温度T2(℃)が30℃以上である樹脂層をさらに備え、
前記粘着層を介して、前記基材と前記液晶フィルムとを積層する積層工程と、
前記液晶フィルムに型を押し当てて、当該液晶フィルムにおける前記粘着層とは反対側の面に回折機能を有する凹凸構造体を形成する凹凸構造体形成工程と、
前記液晶フィルムの上に、前記凹凸構造体を覆うように活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させた前記樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
を備える光学積層体の製造方法。
【請求項6】
前記凹凸構造体形成工程は、前記液晶フィルムに前記型を押し当てた状態でT1(℃)に加熱するステップを備え、
前記樹脂層のガラス転移温度T2(℃)は、前記温度T1よりも高い温度である、請求項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項7】
前記積層工程は、
前記基材とは異なる塗布基材上に重合性液晶組成物を塗布するステップと、
前記重合性液晶組成物を硬化させて、前記塗布基材上に液晶フィルムを形成するステップと、
前記塗布基材上に形成された前記液晶フィルムと前記基材とを前記粘着層を介して積層するステップ、
前記液晶フィルムから前記塗布基材を剥離するステップと、
を備える請求項5または6に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項8】
前記棒状液晶性化合物が、1分子中に2つ以上の反応性基を有し、
前記棒状液晶性化合物が有する前記反応性基が、独立して、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、フマレート基、シンナモイル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、オキサゾリン基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基からなる群より選択される基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記棒状液晶性化合物が、下記式(B1)〜(B9)のいずれかで表される化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学積層体。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および光学積層体の製造方法に関し、特に、高温下においても、液晶フィルム上に形成された凹凸構造体の形状を確実に維持できる光学積層体および光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶化合物等の重合性液晶化合物を硬化してなる液晶フィルムは、円偏光を選択的に反射できるため、ディスプレイにおける輝度向上フィルムや赤外線反射フィルム等様々な用途に使用されている(特許文献1)。さらに、回折機能を有する回折パターン等の表面形状(凹凸構造体)を液晶フィルム上に形成して、回折等の機能を付与することは知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−271731
【特許文献2】特開2000−310704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2のように、加熱加圧下で表面形状を付与する場合、形状付与させた液晶フィルムは、高温下で、その表面形状が壊れてしまう可能性があった。
本発明の目的は、高温下においても、液晶フィルム上に形成された凹凸構造体の形状を確実に維持できる光学積層体および光学積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の光学積層体および光学積層体の製造方法が提供される。
(1)基材と、前記基材の上に形成される粘着層と、前記粘着層の上に形成される液晶フィルムと、を備え、前記液晶フィルムにおける前記粘着層とは反対側の面には、回折機能を有する凹凸構造体が形成され、前記液晶フィルムの上には、前記凹凸構造体を覆う樹脂層が形成され、前記樹脂層は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化してなるとともに、そのガラス転移温度T2(℃)が30℃以上である、光学積層体。
(2)前記液晶フィルムは、重合性液晶組成物を重合してなるフィルムである前記光学積層体。
(3)前記樹脂層は、その面内方向のレターデーションReが10nm以下である前記光学積層体。
(4)前記粘着層は、その面内方向のレターデーションReが10nm以下である前記光学積層体。
(5)前記基材は、その面内方向のレターデーションReが10nm以下である前記光学積層体。
(6) 基材と、前記基材の上に形成される粘着層と、前記粘着層の上に形成される液晶フィルムとを備える光学積層体の製造方法であって、前記積層体は、前記液晶フィルムの上に形成されるとともに、そのガラス転移温度T2(℃)が30℃以上である樹脂層をさらに備え、前記粘着層を介して、前記基材と前記液晶フィルムとを積層する積層工程と、前記液晶フィルムに型を押し当てて、当該液晶フィルムにおける前記粘着層とは反対側の面に回折機能を有する凹凸構造体を形成する凹凸構造体形成工程と、前記液晶フィルムの上に、前記凹凸構造体を覆うように活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させた前記樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、を備える光学積層体の製造方法。
(7)前記凹凸構造体形成工程は、前記液晶フィルムに前記型を押し当てた状態でT1(℃)に加熱するステップを備え、前記樹脂層のガラス転移温度T2(℃)は、前記温度T1よりも高い温度である前記光学積層体の製造方法。
(8)前記積層工程は、前記基材とは異なる塗布基材上に重合性液晶組成物を塗布するステップと、前記重合性液晶組成物を硬化させて、前記塗布基材上に液晶フィルムを形成するステップと、前記塗布基材上に形成された前記液晶フィルムと前記基材とを前記粘着層を介して積層するステップ、前記液晶フィルムから前記塗布基材を剥離するステップと、を備える前記光学積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光学積層体によれば、高温下においても、液晶層上に形成された凹凸構造体の形状を確実に維持できるという効果がある。また、本発明の光学積層体の製造方法によれば、高温下においても、液晶層上に形成された凹凸構造体の形状を確実に維持できる光学積層体を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る光学積層体を示す断面図である。
図2】前記光学積層体の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態および例示物等を示して本発明について詳細に説明する。
本発明は、以下に示す実施形態および例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0009】
<光学積層体>
本発明の一実施形態に係る光学積層体1について、図1を参照して説明する。
図1に示すように、光学積層体1は、転写基材(基材)10と、転写基材10の上に形成される粘着層20と、粘着層20の上に形成される液晶フィルム30と、液晶フィルム30の上に形成される樹脂層40とを備える。液晶フィルム30と樹脂層40との接触界面には、回折機能を有する凹凸構造が形成されている。すなわち、液晶フィルム30における粘着層20とは反対側の面には、回折機能を有する凹凸構造体32が形成されている。また、樹脂層40における液晶フィルム30側の面には、凹凸構造体32に追従する形状が付与されている。
【0010】
次に、光学積層体1の製造方法について、図2を参照して説明する。
図2(A)に示すように、塗布基材100上に重合性液晶組成物を塗布した後、紫外線等のエネルギー線の照射により重合性液晶組成物を硬化(光重合(架橋))させて液晶フィルム30を得る。これにより、塗布基材100上に液晶フィルム30が形成された積層体を得ることができる。なお、エネルギー線の照射方法については、重合性液晶組成物を塗布した側から照射してもよいし、塗布基材100側から照射してもよい。
【0011】
次に、図2(B)に示すように、塗布基材100とは異なる転写基材10を準備し、粘着層20を介して、転写基材10と、塗布基材100上に形成された液晶フィルム30を積層する。次いで、液晶フィルム30から塗布基材100を剥離することにより、粘着層20を介して転写基材10上に液晶フィルム30を転写する。これにより、転写基材10と、粘着層20と、液晶フィルム30とをこの順に備える積層体を得ることができる(積層工程)。
【0012】
ここで、粘着層20は、転写に先立ち、液晶フィルム30および転写対象となる転写基材10の向き合う面のうち、どちらか一方または両方に予め設けることができる。液晶フィルム30を、塗布基材100上の配向膜上に形成した場合、液晶フィルム30のみを転写してもよいが、液晶フィルム30および配向膜をともに転写してもよい。剥離の容易さ及び液晶フィルム30の配向不良発生防止の観点からは、液晶フィルム30および配向膜をともに転写してもよい。
【0013】
次に、図2(C)に示すように、液晶フィルム30の露出面(粘着層20とは反対側の面)に、回折機能を有する凹凸構造が形成された型90を押し当て、この状態で転写基材10側および型90の両側から加圧するとともに、温度T1(℃)にて加熱する。これにより、図2(D)に示すように、液晶フィルム30の表面に、回折機能を有する凹凸構造体32を形成する(凹凸構造体形成工程)。ここで、型90の材質は、凹凸構造体32を形成する際の加熱、加圧条件に耐え得るものであればよく、たとえば、金属や樹脂等を用いることができる。また、前記型90の寸法は特に限定されない。
【0014】
次に、図2(E)に示すように、液晶フィルム30における凹凸構造体32を覆うように、液晶フィルム30上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて樹脂層40を形成する(樹脂層形成工程)。樹脂層40における重合性液晶フィルム30側の面には、凹凸構造体32に追従する凹凸形状が形成される。また、樹脂層40のガラス転移温度T2は30(℃)以上である。なお、活性エネルギー線の照射方法は、当該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が露出する側から照射してもよいし、転写基材10側から照射してもよい。以上の手順により、前述した光学積層体1を得ることができる。
【0015】
<液晶フィルム>
液晶フィルム30を構成する前記重合性液晶組成物としては、たとえば、コレステリック液晶性化合物を含有する組成物、ネマチック液晶性化合物を含有する組成物を用いることができる。
【0016】
コレステリック液晶性化合物としては、液晶性化合物を含有し、塗膜とした際にコレステリック液晶相を呈しうる組成物を用いることができ、高い熱安定性を得る上で、重合性液晶性化合物を用いる。この重合性液晶性化合物を、コレステリック規則性を呈した状態で重合させることにより、塗膜を硬化させ、コレステリック規則性を呈したまま硬化した非液晶性の樹脂層(以下、適宜、「コレステリック樹脂層」と称する)を得ることができる。
【0017】
ここで、コレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
【0018】
コレステリック樹脂層は、通常円偏光分離機能を有する。すなわち、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射させる性質を有する。コレステリック樹脂層における反射は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。コレステリック樹脂層は、この円偏光分離機能を可視光のなるべく広い波長帯域において有し、且つなるべく高い反射率を有し、その結果可視光平均反射率が高いものが、真正性の識別が明確になり、且つ、デザインの自由度が高いため、好ましい。
【0019】
円偏光分離機能を発揮する波長は、コレステリック樹脂層におけるらせん構造のピッチに依存する。らせん構造のピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。このらせん構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。
【0020】
前述したように、コレステリック樹脂層は、塗布基材100等の適切な基板上にコレステリック液晶組成物の塗膜を設け、前記塗膜を硬化して得ることができる。ここで、本発明では、コレステリック液晶組成物を完全に硬化させた状態(本硬化状態)で、表面に凹凸構造体32を形成してもよいし、コレステリック樹脂層とする前の段階、つまり半硬化の状態で、半硬化の層の表面に凹凸構造体32を形成してもよい。形成する凹凸構造体32としては、光の回折機能を有する形状(ホログラフィー技術により形成された凹凸構造、いわゆるホログラム)である。
【0021】
ここで、本硬化とは、例えば重合性液晶組成物を光重合する場合、光重合性液晶化合物の重合転化率が90%以上になるように硬化することをいう。光重合性液晶化合物を用いた場合、波長350〜400nmの光を、400mJ/cm2を超え10000mJ/cm2以下の範囲で照射して光重合性液晶化合物を重合させて本硬化状態となる。
【0022】
また、半硬化とは、例えば重合性液晶組成物を光重合する場合、光重合性液晶化合物の重合転化率が100%にならない程度の照射量で紫外線を照射し、指先で軽く圧力をかけて押えても、指紋の跡が残らず、粘着性を示さない状態であることをいう。光重合性液晶化合物を用いた場合、波長350〜400nmの光を、0を超え400mJ/cm2以下の範囲で照射して光重合性液晶化合物を重合させた場合に半硬化の状態となる。なお、半硬化させた重合性液晶フィルムに凹凸構造体を形成する場合には、凹凸構造体を形成した後または形成すると同時に、重合性液晶フィルムを本硬化させることが好ましい。
【0023】
本硬化の状態で凹凸構造体を形成する場合は、半硬化の状態で凹凸構造体を形成する場合に比べて、装置の構成を小型化、簡略化できるという利点がある。逆に、半硬化の状態にて凹凸構造体を形成する場合は、本硬化の状態で凹凸構造体を形成する場合に比べて、凹凸構造体の形状付与を容易にでき、かつ得られたコレステリック樹脂層の耐熱性に優れるという利点がある。
【0024】
コレステリック樹脂層の表面に凹凸構造体を形成する方法は、予め、前記凹凸構造体の形状を反転させた凹凸構造を有する型を準備しておき、この型を押し当てた状態で例えば加熱加圧することにより行うことができる。この場合の加熱加圧条件は、0.05〜80MPaの圧力でプレスするとともに、温度T1=40〜180(℃)にて加熱することが好ましい。ここで、加熱する温度T1(℃)は、前記樹脂層40のガラス転移温度T2(℃)よりも低い温度であることが好ましい。
【0025】
得られたコレステリック樹脂層の固有複屈折値Δnは、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.22以上である。このような高いΔn値を有することにより、光学積層体とした場合に、高い輝度向上効果を得ながら、斜め方向から観察した際の色相変化を小さくすることができる。このような高いΔn値を有するコレステリック樹脂層は、後述するコレステリック液晶組成物(X)のような液晶組成物を用いることにより形成することができる。なお、Δn値が0.30以上の化合物を用いると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。
【0026】
可視光の平均反射率が高いことが好ましいが、このような可視光平均反射率の高いコレステリック樹脂層としては、例えば、(i)らせん構造のピッチの大きさを段階的に変化させたコレステリック樹脂層、(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層等を挙げることができる。
【0027】
(i)らせん構造のピッチを段階的に変化させたコレステリック樹脂層は、らせん構造のピッチが異なる複数のコレステリック樹脂層を積層することによって得ることができる。積層は、らせん構造のピッチが異なる複数のコレステリック樹脂層を予め作成しておき、その後、各層を粘着剤や接着剤を介して固着することによって行なうことができる。また、あるコレステリック樹脂層を形成した後、このコレステリック樹脂層の上に他のコレステリック樹脂層を順次形成していくことによって行なうこともできる。
【0028】
(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層は、その製法によって特に制限されないが、このようなコレステリック樹脂層の製法の好ましい例としては、コレステリック樹脂層を形成するための重合性液晶化合物を含有するコレステリック液晶組成物を、好ましくは配向膜等の他の層上に塗布して液晶組成物の層を得、次いで1回以上の、光照射及び/又は加温処理により、らせん構造のピッチを連続的に変化させた状態で当該層を硬化する方法が挙げられる。かかる操作は、コレステリック樹脂層の反射帯域を拡張する操作であり、広帯域化処理と呼ぶことができる。このような広帯域化処理に供するコレステリック液晶組成物の好ましい態様としては、下記に詳述するコレステリック液晶組成物(X)を挙げることができる。
【0029】
(ii)のらせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層は、1層のみを、本発明に用いるコレステリック樹脂層としてもよく、または複数層を重ねて、本発明に用いるコレステリック樹脂層としてもよい。例えば、可視光波長領域のうちの一部の領域において円偏光分離機能を発揮するコレステリック樹脂層と、他の領域において円偏光分離機能を発揮するコレステリック樹脂層とを組み合わせ、可視光波長領域のうちの広い領域において円偏光分離機能を発揮するコレステリック樹脂層としたものを用いることができる。
【0030】
コレステリック樹脂層は、1層のみからなる樹脂層でもよく、上記(i)のコレステリック樹脂層、上記(ii)のコレステリック樹脂層、これらのいずれか又は両方を複数層重ねたもの等の2層以上の層からなる樹脂層であってもよい。
コレステリック樹脂層を構成する層の数は、製造のし易さの観点から、1〜100層であることが好ましく、1〜20層であることがより好ましい。上に述べた広帯域化処理の結果、1層のみで高い可視光平均反射率を有するコレステリック樹脂層を得た場合、当該層1層のみを用いるだけでも、好ましい態様の光学フィルムを得ることができる。その場合であっても、少なくとも最表面の層を形成する場合に、前記のように半硬化の状態で、凹凸形状を付与することが必要であり、広帯域化処理と同時に凹凸形状を付与することも可能である。
【0031】
前記コレステリック液晶組成物(X)は、下記一般式(1)で表される化合物、及び特定の棒状液晶性化合物を含有する。これら各成分について順次説明する。
−A−B−A−R (1)
【0032】
一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基である。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの意味である。
【0033】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は置換されていないか若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は炭素原子数1〜2個のアルキル基、アルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0034】
及びRとして好ましいものとしては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0035】
また、R及びRの少なくとも一方は反応性基であることが好ましい。R1及び/又はR2として反応性基を有することにより、前記一般式(1)で表される化合物が硬化時に液晶層中に固定され、より強固な膜を形成することができる。ここで反応性基とは、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基を挙げることができる。
【0036】
一般式(1)において、A及びAはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていないか若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基で1つ以上置換されていてもよい。A及びAのそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0037】
及びAとして特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、後述する棒状液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一能がより高くなる。
【0038】
一般式(1)において、Bは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される。なお、Bとして特に好ましいものとしては、単結合、−OCO−及び−CH=N−N=CH−が挙げられる。
【0039】
一般式(1)の化合物は、少なくとも一種が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、コレステリック液晶組成物(X)は、一般式(1)の化合物として、複数の光学異性体の混合物を含有することが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物を含有することができる。
一般式(1)の化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0040】
一般式(1)の化合物が液晶性を有する場合には、高Δnであることが好ましい。高Δn液晶を含有させることによって、コレステリック液晶組成物(X)としてのΔnを向上させることができ、選択反射帯域の広いコレステリック樹脂層を作製することができる。一般式(1)の化合物の少なくとも一種のΔnは好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上とすることができる。
【0041】
一般式(1)の化合物として特に好ましい具体例としては、例えば下記の化合物(A1)〜(A9)が挙げられる:
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】
上記化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
【0045】
前記コレステリック液晶組成物(X)は、Δnが0.18以上であって、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する棒状液晶性化合物を含有する。
前記棒状液晶性化合物としては、式(2)で表される化合物を挙げることができる。
−C−D−C−M−C−D−C−R 式(2)
(式中、R及びRは反応性基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。D及びDは単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。C〜Cは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される基を表す。Mはメソゲン基を表し、具体的には、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−等の結合基によって結合されて形成される。)
前記、メソゲン基Mが有しうる置換基としては、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R、−O−C(=O)−R、−C(=O)−O−R、−O−C(=O)−O−R、−NR5−C(=O)−R、−C(=O)−NR、または−O−C(=O)−NRを表す。ここで、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、アルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R6は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。前記「置換基を有してもよい炭素数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
本発明において、該棒状液晶性化合物は非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、一般式(2)において、メソゲン基Mを中心としてR−C−D−C−と−C−D−C−Rが異なる構造のことをいう。該棒状液晶性化合物として、非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0046】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、そのΔn値が好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。Δn値が0.30以上の化合物を用いると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高いΔn値を有することにより、高い光学的性能(例えば、円偏光の選択反射性能)を有するコレステリック樹脂層を与えることができる。
【0047】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有するものとすることができる。前記反応性基としては、具体的にはエポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、フマレート基、シンナモイル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、オキサゾリン基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基が挙げられる。これらの反応性基を有することにより、コレステリック液晶組成物を硬化させた際に、安定した硬化物を得ることができる。1分子中に反応性基が1つ以下の化合物を用いると、コレステリック液晶組成物を硬化させた際に、架橋した硬化物が得られないため実用に耐えうる膜強度が得られないおそれがある。後述する架橋剤を使用した場合でも、膜強度が不足してしまい実用が困難となる場合がある。実用に耐えうる膜強度とは鉛筆硬度(JIS K5400)でHB以上好ましくはH以上である。膜強度がHBより低いと傷がつきやすくハンドリング性に欠けてしまう。好ましい鉛筆硬度の上限は、光学的性能や耐久性試験に悪影響を及ぼさなければ特に限定されない。
【0048】
棒状液晶性化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(B1)〜(B9)が挙げられるが、本発明における棒状液晶性化合物は下記の化合物に限定されるものではない。
【0049】
【化3】
【0050】
前記コレステリック液晶組成物(X)において、(前記一般式(1)の化合物の合計重量)/(棒状液晶性化合物の合計重量)の重量比は0.05〜1、好ましくは0.1〜0.65、より好ましくは0.15〜0.45である。前記重量比が0.05より少ないと配向均一性が不十分となる場合があり、また逆に1より多いと配向均一性が低下したり、液晶相の安定性が低下したり、液晶組成物としてのΔnが低下して所望する光学的性能(例えば、円偏光を選択的に反射させる特性)が得られない場合があり好ましくない。なお、合計重量とは、1種を用いた場合にはその重量を、1種以上用いた場合には合計の重量を示す。
【0051】
前記コレステリック液晶組成物(X)において、前記一般式(1)の化合物の分子量が600未満、前記棒状液晶化合物の分子量が600以上であることが好ましい。一般式(1)の化合物の分子量が600未満であることにより、それよりも分子量の大きい棒状液晶化合物の隙間に入り込むことができ、配向均一性を向上させることができる。
【0052】
本発明において、前記コレステリック液晶組成物(X)等のコレステリック液晶組成物は、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のために、任意に架橋剤を含有することができる。当該架橋剤としては、液晶組成物を塗布した液晶層の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、又は湿気により自然に反応が進行して液晶層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができ、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。架橋剤の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、該架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。
前記架橋剤の配合割合は、コレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中に0.1〜15重量%となるようにすることが好ましい。該架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られず、逆に15重量%より多いと液晶層の安定性を低下させてしまうため好ましくない。
【0053】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、任意に光開始剤を含有することができる。当該光開始剤としては、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサン
トン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェノン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、所望する特性に応じて2種以上の化合物を混合することができ、必要に応じて公知の光増感剤や重合促進剤としての三級アミン化合物を添加して硬化性をコントロールすることもできる。
該光開始剤の配合割合はコレステリック液晶組成物中0.03〜7重量%であることが好ましい。該光開始剤の配合量が0.03重量%より少ないと重合度が低くなってしまい膜強度が低下してしまう場合があるため好ましくない。逆に7重量%より多いと、液晶材料の配向を阻害してしまい液晶相が不安定になってしまう場合があるため好ましくない。
【0054】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、任意に界面活性剤を含有することができる。当該界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。当該界面活性剤としては、具体的には、疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に使用でき、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤は、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652、ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D、セイミケミカル社サーフロンのKH−40等を用いることができる。界面活性剤の配合割合はコレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。該界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる場合があるため好ましくない。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込み、配向均一性を低下させる場合があるため好ましくない。
【0055】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、任意にカイラル剤を含有することができる。前記カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、WO98/00428号公報、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができ、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。前記カイラル剤は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。前記カイラル剤の含有割合は、前記コレステリック液晶組成物中、通常1〜60重量%である。
【0056】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、必要に応じてさらに他の任意成分を含有することができる。当該他の任意成分としては、溶媒、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。これらの任意成分は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加できる。
【0057】
本発明において使用するコレステリック液晶組成物の製造方法は、特に限定されず、上記各成分を混合することにより製造することができる。
【0058】
透明樹脂等からなる基材フィルムの表面上に、必要に応じて配向膜を設け、さらに必要に応じてコロナ放電処理ラビング処理等の処理を施し、この面上にコレステリック液晶組成物の塗膜を設け、さらに必要に応じて配向処理及び/又は硬化の処理を行うことにより、コレステリック樹脂層を得ることができる。塗布は、公知の方法、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等により実施することができる。
【0059】
前記配向処理は、例えば塗膜を50〜150℃で0.5〜10分間加温することにより行うことができる。当該配向処理を施すことにより、塗膜中のコレステリック液晶組成物を良好に配向させることができる。
【0060】
前記硬化の処理は、光硬化の場合、1回以上の光照射と加温処理との組み合わせにより行うことができる。加温条件は、具体的には例えば、温度40〜200℃、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは50〜140℃、時間は1秒〜3分、好ましくは5〜120秒とすることができる。本発明において光照射に用いる光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。光照射は、具体的には例えば波長200〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行うことができる。
【0061】
ここで、0.01〜50mJ/cm2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返すことにより、らせん構造のピッチの大きさを連続的に大きく変化させた、反射帯域の広い円偏光分離素子を得ることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行うこともできる。
【0062】
本発明において、配向膜等の他の層上へのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化の工程は、1回に限らず、塗布及び硬化を複数回繰り返し2層以上のコレステリック樹脂層を形成し、最表面の層のみ半硬化、表面形状付与をすることもできる。ただし、前記コレステリック液晶組成物(X)等の液晶組成物を用いることにより、1回のみのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化によっても、良好に配向したΔnが0.18以上の棒状液晶性化合物を含み、かつ5μm以上といった厚みのコレステリック樹脂層を容易に形成することができる。
【0063】
本発明において、コレステリック樹脂層の厚さは、十分な反射率を得る上で0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また、膜の透明性を得る上で20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。なお、コレステリック樹脂層の厚さは、本発明の表示媒体が有するコレステリック樹脂層が2以上の層である場合は、各層の厚さの合計を、コレステリック樹脂層が1層である場合にはその厚さを示す。
【0064】
<塗布基材>
塗布基材100としては、フィルムであれば特に限定されないが、たとえば1mm厚で全光透過率80%以上のフィルムを好適に用いることができる。具体的には、このような塗布基材100としては、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂などの合成樹脂からなる単層または多層のフィルムを挙げることができる。これらの中でも、塗布基材100としては、脂環式オレフィンポリマーまたは鎖状オレフィンポリマーを用いた樹脂フィルムが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式オレフィンポリマーを用いた樹脂フィルムがより好ましい。また、塗布基材100としては、紫外線等を透過することが可能な樹脂フィルムを用いることが好ましく、この場合、当該塗布基材側からも紫外線等を照射して硬化させることができ、装置構成の自由度を高めることができる利点がある。
【0065】
コレステリック樹脂層の形成に配向膜を用いる場合、かかる配向膜は、塗布基材表面上に、必要に応じてコロナ放電処理等を施した後、配向膜の材料を水又は溶剤に溶解させた溶液等を、リバースグラビアコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、ダイコーティング、バーコーティング等の公知の方法を用いて塗布し、乾燥させ、その後乾燥塗膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。前記配向膜の材料としては、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを用いることができるが、変性ポリアミドが特に好ましい。
前記変性ポリアミドとしては、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドに変性を加えたものを挙げることができ、脂肪族ポリアミドに変性を加えたものが好ましい。具体的には例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、3元ないし4元共重合ナイロン、脂肪酸系ポリアミド、又は脂肪酸系ブロック共重合体(例えばポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド)に変性を加えたものを挙げることができる。当該変性としては、末端アミノ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性などの変性、並びにアミド基の一部をアルキルアミノ化又はN−アルコキシアルキル化する変性を挙げることができる。N−アルコキシアルキル化変性ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、又はナイロン−12等の共重合ナイロンのアミド基の一部をN−メトキシメチル化したものが挙げられる。前記変性ポリアミドの重量平均分子量は、好ましくは5000〜500000、より好ましくは10000〜200000とすることができる。
配向膜の厚さは、所望する液晶層の配向均一性が得られる膜厚であればよく、0.001〜5μmであることが好ましく、0.01〜2μmであることがさらに好ましい。
【0066】
コレステリック樹脂層のねじれ方向は、使用するカイラル剤の種類(構造)により適宜選択できる。ねじれを右方向とする場合には、右旋性を付与するカイラル剤を用い、ねじれ方向を左方向とする場合には、左旋性を付与するカイラル剤を用いることで実現できる。
【0067】
<転写基材>
転写基材10は、前記塗布基材100と同様のものを用いることができ、1mm厚で全光透過率80%以上のフィルムを好適に用いることができる。このような転写基材10としては、たとえば、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂などの合成樹脂からなる単層または多層のフィルムを用いることができる。これらの中でも、転写基材10としては、脂環式オレフィンポリマーまたは鎖状オレフィンポリマーからなる樹脂フィルムが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式オレフィンポリマーからなる樹脂フィルムがより好ましい。
【0068】
転写基材10は、当該基材の面内方向のレターデーションReが10nm以下であることが好ましい。転写基材10の面内方向のレターデーションReが前記範囲であることにより、液晶フィルムの光学性能を良好に保つことができるという利点がある。また、転写基材10は、その屈折率が1.40〜1.55の範囲内であることが好ましい。
【0069】
<粘着層>
粘着層20は、粘着性を発現するポリマー(以下において単に「主ポリマー」という場合がある)を含む粘着性組成物を設け、必要に応じて硬化させてなる層とすることができる。
【0070】
前記主ポリマーとしては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレン−酢酸ビニル系、エチレン−アクリル酸エステル系、エチレン−塩化ビニル系、スチレン−ブタジエン−スチレン等の合成ゴム系、エポキシ系、シリコーン系のポリマーを用いることができ、特に、アクリル系、ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル系を好適に用いることができる。
【0071】
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリジコール又はポリプロピレングリコールとのモノエステルなどのヒドロキシル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニル単量体;メタクリロキシプロピルメトキシシランなどのケイ素含有ビニル単量体;(メタ)アクリロイルアジリジンなどのアジリジン基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、メチルスチレンなどの芳香族基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの脂環式アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;エチレングリコールジ(メタ)アクリリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体;その他酢酸ビニル、塩化ビニル、マクロモノマー、ジビニルベンゼンなどの単一重合体ないし複数の単量体の共重合体を挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの両方を意味する。
【0072】
ウレタン系ポリマーとしては、一般的なポリオールとイソシアネート化合物の反応物を挙げることができる。
【0073】
ポリオールとしては、メチレンオキサイド鎖、エチレオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖などのアルキレンオキサイド鎖の繰り返し構造を単独で、あるいは2種類以上有するポリエーテルポリオール;テレフタル酸、アジピン酸、アジピン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメット酸などの酸化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオールなどのグリコール成分とのエステル化反応により得られるポリエステルポリオール;上記酸化合物とグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオールとの反応で得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトンなどのラクトン類の開環重合で得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。
【0074】
イソシアネート化合物としては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカンメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシナネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族脂肪族ポリイソシアネート;3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートメチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4’−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0075】
エチレン−酢酸ビニル系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−酢酸ビニル−カルボン酸共重合体が挙げられ、好ましくは酢酸ビニルの共重合率が10−46重量%のものを挙げることができる。
【0076】
主ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、10,000〜1,000,000であることが好ましく、50,000〜500,000であることがより好ましい。重量平均分子量が10,000より低いと、粘着層の白化が起こりやすいため好ましくない。また、重量平均分子量が1,000,000より大きいとゲル化しやすく、かつ粘着層液粘度が高く取り扱いにくいため好ましくない。
【0077】
前記粘着性組成物は、前記主ポリマーに加えて、アセトフェノン含有化合物をさらに含有することができる、これらの化合物は、前記主ポリマー100重量部に対して0.5〜10重量部含有することが好ましい。前記アセトフェノン含有化合物とは、アセトフェノン及びアセトフェノンの水素原子の1以上が任意の基で置換された化合物であり、具体的には例えば、アセトフェノンの−CH基が脂環式化合物又はその誘導体で置換された化合物(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン等)、及びベンゾインエーテル含有化合物(ベンゾインの−OH基の水素原子が他の有機基で置換された構造を有するエーテル、及び当該エーテルの水素原子の1以上が任意の基で置換された化合物)を挙げることができる。
【0078】
アセトフェノン含有化合物としては、具体的には、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(IRG651 チバスペシャルティケミカルズ社製)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(DAROCURE1173 チバスペシャルティケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(IRG184 チバスペシャルティケミカルズ社製)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1−オン(IRG907 チバスペシャルティケミカルズ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRG2959 チバスペシャルティケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン(IRG369 チバスペシャルティケミカルズ社製)などを挙げることができる。ベンゾインエーテル含有化合物としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルブチルエーテルなどを挙げることができる。これらアセトフェノン含有化合物を含有することにより、粘着層としての性能をより良好にすることができる。
【0079】
前記粘着性組成物には、主ポリマーの種類に応じて、さらに他の配合剤を配合することができる。他の配合剤としては、拡散剤、粘着付与剤、架橋剤又は硬化剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤が挙げられる。
【0080】
上記粘着付与剤は、軟らかくなりかつ固体表面が濡れやすくなった主ポリマーに、粘着力を付与するものである。このような粘着付与剤としては、ロジンおよびロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油樹脂、水素化石油樹脂などが挙げられる。これらの中でも、透明性や主ポリマーとの相溶性に優れる点で、石油樹脂、水素化石油樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。粘着付与剤の配合量は、主ポリマー100重量部に対して、好ましくは2〜50重量部であり、より好ましくは5〜20重量部である。粘着付与剤の添加量が2重量部より少ないと、粘着付与剤の効果が発現せず、逆に添加量が50重量部を超えると、粘着剤の凝集力の低下による粘着力の低下が見られる傾向がある。
【0081】
上記架橋剤又は硬化剤としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート架橋剤又は硬化剤;エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、などのエポキシ系架橋剤又は硬化剤;ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン系架橋剤又は硬化剤;メラミン樹脂系架橋剤;金属キレート系架橋剤;アミン系架橋剤が用いられる。架橋剤又は硬化剤の配合量は、主ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部であり、より好ましくは0.01〜3重量部である。架橋剤又は硬化剤の添加量が0.001重量部より少ないと、架橋剤の効果が発現せず、耐候性試験などで発泡や剥離が目立つ。逆に架橋剤又は硬化剤の添加量が10重量部より多くなると、粘着剤の応力緩和性が低下し、ソリなどが目立つようになる。
【0082】
上記酸化防止剤としては、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の配合量は、粘着層の透明性や粘着力が低下しない範囲である。
【0083】
前記粘着性組成物は、温度23℃におけるせん断貯蔵弾性率が0.1〜10MPaであることが好ましい。かかる範囲のせん断貯蔵弾性率とすることにより、粘着性組成物が適度な粘着性を有し得る。ただし、これに限らずより高いせん断貯蔵弾性率を有する、いわゆるホットメルト型接着剤も粘着性組成物として用いることができる。
【0084】
前記粘着性組成物の屈折率は、1.40〜1.55の範囲内であることが好ましい。かかる範囲の屈折率とすることにより、容易に界面反射を防止でき、光学性能を高めることができる。
【0085】
前記粘着性組成物の調製方法は、均一な混合および分散状態が得られる方法であれば限定されず、例えば上記各成分を加熱、攪拌、超音波処理等で混合することにより行うことができる。
【0086】
粘着層20は、その膜厚が5〜30μmであり、好ましくは10〜25μmである。膜厚を上記範囲とすることにより、接着強度を確保できるとともに、透過率などの光学性能を維持できるという利点がある。
【0087】
粘着層20は、当該粘着層の面内方向のレターデーションReが10nm以下であることが好ましい。粘着層20の複屈折が前記範囲であることにより、液晶フィルムの光学性能を良好に保つことができるという利点がある。また、粘着層20は、その屈折率が1.40〜1.55の範囲内であることが好ましい。かかる範囲の屈折率とすることにより、容易に界面反射を防止でき、光学性能を高めることができるという利点がある。
【0088】
<樹脂層>
樹脂層40は、活性エネルギー線(紫外線や電子線等)硬化型樹脂組成物を硬化させてなる層である。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、少なくとも活性エネルギー線硬化型樹脂を含有する。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂や、カチオン重合型の紫外線硬化樹脂を用いることができる。
【0089】
ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等から合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。さらに、ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂としては、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も必要に応じて好適に使用できる。
【0090】
また、これらの樹脂の反応性希釈剤としては、比較的低粘度である1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上のモノマー及びオリゴマー並びに単官能モノマー、例えばN−ビニルピロリドン、エチルアクリレート、プロピルアクリレート等のアクリル酸エステル類、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノニルフェニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、及びそのカプロラクトン変成物などの誘導体、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸等及びそれらの混合物、などを使用することができる。
【0091】
カチオン重合型の紫外線硬化樹脂としては、付加重合型と開環重合型に大きく分類できる。付加重合型の化合物としては、電子密度の高いビニル基を有するビニルエーテル化合物、スチレン誘導体等を用いることができる。開環重合型の化合物としては、多様なヘテロ環状化合物、例えばエポキシ化合物、ラクトン化合物、4員環の環状エーテルであるオキセタン化合物等を用いることができる。なお、前記活性エネルギー線硬化型樹脂としては、前記ラジカル重合型樹脂と前記カチオン重合型樹脂とをそれぞれ適宜選択し、それらを混合して用いることができる。このように混合する場合には、ラジカル重合型樹脂とカチオン重合型樹脂の重量組成比が10:90〜80:20の範囲とすることができる。
【0092】
ここで、活性エネルギー線が紫外線である場合には、光増感剤(光重合開始剤)を添加する必要があり、ラジカル発生型のラジカル光重合開始剤としてベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2、2、−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4、4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。
また、カチオン光重合開始剤として使用できる光酸発生剤は、イオン性の化合物と非イオン性の化合物に大別できる。イオン性の化合物としてはアリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びトリアリールホスホニウム塩等があり、対イオンとしてBF4−、PF6−、AsF6−、SbF6−などが用いられる。このようなオニウム塩系の光酸発生剤には必要に応じてアンスラセンや、チオキサントンのような光増感剤を併用することができる。非イオン性の光酸発生剤としては、光照射によってカルボン酸、スルホン酸、リン酸、ハロゲン化水素等を生成するものが使用でき、具体的にはスルホン酸の2−ニトロベンジルエステル、イミノスルホナート、1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−4−スルホナート誘導体、N−ヒドロキシイミドスルホナート、トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体等が利用でき、さらにカルボン酸o−ニトロベンジルエステル、1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−5−アリールスルホナート、トリアリールリン酸エステル誘導体等が使用できる。
【0093】
上記光重合開始剤の使用量は、ラジカル重合型樹脂分に対してはラジカル光重合開始剤を、カチオン重合型樹脂分にはカチオン光重合開始剤をそれぞれの重合性樹脂成分100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。
【0094】
また、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて公知の一般的な塗料添加剤を含有してもよい。前記塗料添加剤としては、例えばレベリング、表面スリップ性等を付与するシリコーン系、フッソ系の添加剤は硬化膜表面の傷つき防止性に効果があることに加えて、活性エネルギー線として紫外線を利用する場合は前記添加剤の空気界面へのブリードによって、酸素による樹脂の硬化阻害を低下させることができ、低照射強度条件下に於いても有効な硬化度合を得ることができる。これらの添加量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対し0.01〜0.5重量部が適当である。
【0095】
樹脂層40は、前記凹凸構造体32を覆うように、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を液晶フィルム30上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜に対して活性エネルギー線を照射して得ることができる。樹脂層40は、硬化後の膜厚が前記凹凸構造体32の高さよりも厚いことが好ましく、0.5μm〜30μmの範囲を満たすようにすることが好ましい。
【0096】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、一般的に、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等を用いることができる。また、活性エネルギー線源としては、紫外線を使用することが好ましく、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源を利用でき、フィラーを含まないクリア塗膜の硬化には高圧水銀灯、フィラーを含む場合や厚膜の硬化にはメタルハライドランプが一般的に使用できる。また、活性エネルギー線として電子線を利用することも可能であり、この場合には、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線を利用できる。
【0097】
樹脂層40は、そのガラス転移温度T2(℃)が30℃以上である。ガラス転移温度T2は、液晶フィルム30に型90を押し当てて加熱する際の温度T1(℃)よりも高い温度であることが好ましく、T2>T1+20(度)の関係を満たすことがより好ましい。このような関係を満たすことにより、樹脂層40を形成する際に、液晶フィルム30に形成された凹凸構造体32の形状が緩和することなく、回折機能を十分に発揮できる。ここで、樹脂層40は、単層としてもよいし、多層としてもよいが、樹脂層40を多層として構成した場合には、前記凹凸構造体32に接触する側の層のガラス転移温度が前記T2に相当する。
【0098】
樹脂層40は、当該樹脂層の面内方向のレターデーションRe10nm以下であることが好ましい。樹脂層40の面内方向のレターデーションReが前記範囲であることにより、液晶フィルムの光学性能を良好に保つことができるという利点がある。
【0099】
<任意の層>
本発明は、前記樹脂層40の表面に必要に応じて他の任意の層を設けることができる。前記任意の層としては、例えば、保護層、易接着層、易滑層、ハードコート層、帯電防止層、耐摩耗性層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、印刷層、金属層、透明導電層、ガスバリア層、剥離層、粘着層、エンボス層などの機能性層を設けることができる。
【0100】
<用途>
本発明に係る光学積層体は、液晶表示装置等の表示装置の部材として使用できるほか、偽造防止のための表示媒体として使用できる。偽造防止用途として具体的には、医薬品、化粧品、香水およびトナーなどの容器、開封シール、包装物、紙幣、証券、金券、旅券、電子機器、バッグ、衣服、布地、クレジットカード、セキュリティカード、情報を図形化したコード(例えばバーコード等の1次元のコード、並びにQRコード(登録商標)等の2次元のコード)を付した物品、並びに各種証明等に施す偽造防止のための表示媒体として使用できる。具体的には、液晶フィルムにコレステリック液晶を用いた場合には、円偏光板を介して当該光学積層体を視認すると、特定方向の円偏光のみ透過し、逆方向の円偏光を吸収するため、偽造防止のための表示媒体として利用できる。また、光学積層体に形成された凹凸構造体32が回折機能を有するため、光学積層体からホログラムとなることから、この点でも偽造防止用途に用いることができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。 以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
【0102】
<製造例1:配向膜を有する透明樹脂基材の作成>
脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(株式会社オプテス製、商品名「ゼオノアフィルムZF14−100」、屈折率1.53、Re=3.2nm、厚み100μm、Tg=136℃)の両面をコロナ放電処理した。5%のポリビニルアルコールの水溶液を当該フィルムの片面に♯2のワイヤーバーを使用して塗布し、塗膜を乾燥し、膜厚0.1μmの配向膜を形成した。次いで、当該配向膜をラビング処理し、配向膜を有する透明樹脂基材(塗布基材)を調製した。
【0103】
<製造例2:コレステリック樹脂組成物の調製>
化合物(1)25.5部、重合性非液晶化合物(2)11部、カイラル剤(商品名;LC756/BASF社)2.3部、重合開始剤(商品名;イルガキュアOXE02/チバスペシャルティケミカルズ社製)1.2部、界面活性剤(商品名;KH40/セイミケミカル社製)0.04部をシクロペンタノン60部に混合して、コレステリック液晶組成物を調製した。化合物(1)及び(2)は、それぞれ下記の構造を有する化合物である。
【0104】
【化4】
【0105】
【化5】
【0106】
化合物(1)は国際公開第WO2009/041512号に、また化合物(2)は特開平11−100575号公報に記載された方法に従い製造したものを使用した。
【0107】
<製造例3:紫外線硬化型樹脂組成物1の調製>
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート30部、ペンタエリスリトールトリアクリレート20部、ラジカル光重合開始剤(商品名;Darocur1173/チバスペシャルティケミカルズ社製)2部、および酢酸エチルを混合し、樹脂固形分が30重量%となるようにして、ラジカル重合型の紫外線硬化型樹脂組成物1を調製した。
【0108】
<製造例4:紫外線硬化型樹脂組成物2の調製>
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート45部、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル5部、カチオン光重合開始剤(商品名;San−Aid SI−100L/三新化学工業社製)1.5部、および酢酸エチルを混合し、樹脂固形分が30重量%となるようにして、カチオン重合型の紫外線硬化型樹脂組成物2を調製した。
【0109】
<実施例1>
前記製造例1で調製した配向膜を有する透明樹脂基材の配向膜を有する面に、前記製造例2で調製したコレステリック液晶組成物を♯10のワイヤーバーを使用して塗布し、塗膜を形成した。次いで、この塗膜を100℃で5分間配向処理し、当該塗膜に対して500mJ/cmの紫外線による照射処理(本硬化処理)を行って、乾燥膜厚4μmの液晶フィルムを形成した。
次いで、転写基材として前記透明基材と同じ脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(ゼオノアフィルムZF14−100)を用いるとともに、粘着層としての透明粘着シート(日東電工株式会社製、商品名「LUCIACS」、屈折率1.47、Re≒0nm
、厚み25μm、ガラス転移温度は30℃未満))を介して当該転写基材としてのゼオノアフィルム上に前記液晶フィルムを転写した。
次いで、前記液晶フィルム上に、頂角90°、高さ2μm、ピッチ4μmのピラミッド形状の凹凸形状を有する型を押し当てて、転写基材、粘着層、および液晶フィルムを有する積層体を、5MPa、温度80℃で1分間、加熱加圧処理をすることにより、液晶フィルム表面に、回折機能を有する凹凸構造体を形成した。
次いで、形成された凹凸構造体を覆うように、前記製造例3で製造した紫外線硬化型樹脂組成物1を♯6のワイヤーバーを塗布し、その後、紫外線硬化型樹脂組成物1中の溶剤を蒸発させて厚さ略3μmの塗膜を形成した。その後、塗膜側より高圧水銀UVランプ(120W/cm)より紫外線を積算光量250mJ/m2の条件で照射して硬化させて樹脂層を形成した。これにより、透明樹脂基材と、粘着層と、液晶フィルムと、樹脂層とをこの順に有する光学積層体1を得た。得られた光学積層体1において、液晶フィルムと樹脂層との界面には、回折機能を有する凹凸構造体が形成されていた。
得られた光学積層体1を160℃6時間の耐熱試験を行ったが、その凹凸構造体の形状は維持されており、この凹凸構造体に起因する回折機能が十分に発現していた。
【0110】
<実施例2>
紫外線硬化型樹脂組成物1を前記製造例4で製造した紫外線硬化型樹脂組成物2に変更した以外は、前記実施例1と同様にして光学積層体2を得た。光学積層体2において、液晶フィルムと樹脂層との界面には、回折機能を有する凹凸構造体が形成されていた。得られた光学積層体2を160℃6時間の耐熱試験を行ったが、その凹凸構造体の形状は維持されており、この凹凸構造体に起因する回折機能が十分に発現していた。
【0111】
<比較例1>
樹脂層を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして光学積層体3を得た。得られた光学積層体3を80℃6時間の耐熱試験を行ったところ、その凹凸構造体の形状が緩和され、凹凸構造体に由来する回折機能が十分に発現しなかった。
【0112】
<比較例2>
製造例1で調製した配向膜を有する透明樹脂基材の配向膜を有する面に、前記製造例2で調製したコレステリック液晶組成物を♯10のワイヤーバーを使用して塗布し、塗膜を形成した。次いで、この塗膜を100℃で5分間配向処理し、当該塗膜に対して500mJ/cmの紫外線による照射処理(本硬化処理)を行って、乾燥膜厚4μmの液晶フィルムを形成した。
次いで、転写基材として前記透明基材と同じ脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(ゼオノアフィルムZF14−100)を用い、粘着層としての透明粘着シート(LUCIACS)を介して、前記転写基材上に前記液晶フィルムを転写した。
次いで、前記液晶フィルム上に、頂角90°、高さ2μm、ピッチ4μmのピラミッド形状の凹凸形状を有する型を押し当てて、転写基材、粘着層、および液晶フィルムを有する積層体を、5MPa、温度80℃で1分間、加熱加圧処理をすることにより、液晶フィルム表面に、回折機能を有する凹凸構造体を形成した。
次いで、前記凹凸構造体を覆うように、液晶フィルム上に、前記透明粘着シートと透明基材(株式会社オプテス製、商品名「ゼオノアフィルムZF16−100」)とを備える多層体(樹脂層に相当)を前記透明粘着シートが前記凹凸構造体側となるように積層した。これにより、透明樹脂基材と、粘着層と、液晶フィルムと、粘着層およびゼオノアフィルムからなる樹脂層とをこの順に有する光学積層体4を得た。光学積層体4において、液晶フィルムと樹脂層との界面には、回折機能を有する凹凸構造体が形成されていた。得られた光学積層体4を80℃6時間の耐熱試験を行ったところ、凹凸構造体に接触する粘着層が流動性を示したことにより、その凹凸構造体の形状が緩和され、凹凸構造体に由来する回折機能が十分に発現しなかった。
【0113】
<比較例3>
前記製造例1で調製した配向膜を有する透明樹脂基材(転写基材に相当)の配向膜を有する面に、前記製造例2で調製したコレステリック液晶組成物を♯10のワイヤーバーを使用して塗布し、塗膜を形成した。次いで、この塗膜を100℃で5分間配向処理し、当該塗膜に対して500mJ/cmの紫-外線による照射処理(本硬化処理)を行って、乾燥膜厚4μmの液晶フィルムを形成した。
次いで、前記液晶フィルム上に、頂角90°、高さ2μm、ピッチ4μmのピラミッド形状の凹凸形状を有する型を押し当てて、転写基材および液晶フィルムを有する積層体を、5MPa、温度80℃で1分間、加熱加圧処理を施した。しかしながら、液晶フィルム表面には、凹凸構造体が十分には形成されず、凹凸構造体に起因する回折機能が発現しなかった。
【符号の説明】
【0114】
1 光学積層体
10 転写基材(基材)
20 粘着層
30 液晶フィルム
32 回折機能を有する凹凸構造体
40 樹脂層
90 型
100 塗布基材
図1
図2