(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水素イオン指数5の水溶液に0.05質量%となるように浸漬したときに、前記水溶液中に溶出する亜鉛の溶出率は60質量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛。
請求項1ないし3のいずれか1項記載の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛及び請求項5記載の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物のうちいずれか一方または双方を基剤中に含有してなることを特徴とする化粧料。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛とその製造方法及び酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物並びに化粧料を実施するための形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0023】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛]
本発明の一実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜により被覆してなる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛であって、この酸化亜鉛粒子の平均粒子径は50nmを超えかつ500nm以下であり、この酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5である。
【0024】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有率は、50質量%以上かつ99質量%以下が好ましい。ここで、酸化亜鉛粒子の含有率が50質量%未満では、所望の紫外線遮蔽効果を得ることができず、そこで、所望の紫外線遮蔽効果を得ようとすると、大量の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を使用しなければならなくなるので好ましくなく、一方、酸化亜鉛粒子の含有率が99質量%を超えると、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の割合が高くなりすぎてしまう結果、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜で十分に覆うことができなくなるので好ましくない。
【0025】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、50nmを超えかつ2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上かつ500nm以下、さらに好ましくは200nm以上かつ300nm以下である。
ここで、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径を上記の範囲に限定した理由は、平均粒子径が50nm以下では、含有する酸化亜鉛の粒子サイズも小さくなり、長波長側の紫外域の散乱が相対的に小さくなる虞があるからであり、一方、2000nmを超えると、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を化粧料等に用いた場合に、きしみ等が生じて使用感が悪化する虞があるからである。
【0026】
なお、ここでいう「平均粒子径」とは、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて観察した場合に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出し、これら酸化ケイ素被覆酸化亜鉛各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を加重平均して求められた数値である。
ここで、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではなく、この凝集体を構成している酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均粒子径とする。
【0027】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水素イオン指数(pH)5の水溶液に0.05質量%となるように1時間浸漬したときに、この水溶液中に溶出する亜鉛の溶出率は60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
ここで、亜鉛の溶出率を60質量%以下とした理由は、亜鉛の溶出率が60質量%を超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛自体の安定性が低下し、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を化粧料に適用した場合に、溶出する亜鉛イオンが、有機系紫外線遮蔽剤、増粘剤等の水溶性高分子等と反応し、化粧料としての性能の低下、変色、粘度の増減等を生じさせるので好ましくないからである。
【0028】
この亜鉛溶出率は、例えば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛をpH=5の緩衝液に0.05質量%となるように分散し、1時間撹拌した後に固液分離を行い、液相の亜鉛濃度をICP発光分析装置にて測定することにより測定することができる。
pH=5の緩衝液としては、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を分散させることのできる緩衝液であればよく、例えば、0.1モル濃度のフタル酸水素カリウム水溶液500mlと、0.1モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液226mlを混合した後、水を加えて全体量を1000mlとした緩衝液が好適に用いられる。
【0029】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、その表面をシリコーン樹脂にて表面処理してなることとしてもよい。
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、シリコーン樹脂にて表面処理されることにより、油相、特にシリコーン油への親和性が高くなり、よって、油中水型(W/O型)や水中油型(O/W)の化粧料への配合がより容易になる。
すなわち、シリコーン樹脂にて表面処理してなる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を油相に配合して、油中水型又は水中油型の化粧料とすることで、油中水型(W/O型)や水中油型(O/W)の化粧料における亜鉛イオンの溶出を抑制することができる。
【0030】
この表面処理に用いられるシリコーン樹脂の種類としては、化粧料として使用できるものであればよく、特に限定されない。このようなシリコーン樹脂としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、トリエトキシカプリリルシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、これらを2種以上混合したものを用いてもよく、これらの共重合体を用いてもよい。
【0031】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の表面を、さらにシリコーン樹脂にて表面処理する場合、この表面処理におけるシリコーン樹脂の表面処理量は、油中水型または水中油型の化粧料に使用される油相に応じて適宜調整すればよく、例えば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の全質量に対して、1質量%以上かつ20質量%以下が好ましく、3質量%以上かつ10質量%以下がより好ましい。
【0032】
以下、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の各構成要素について詳細に説明する。
「酸化亜鉛粒子」
この酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、50nmを超えかつ500nm以下であり、好ましくは100nm以上かつ400nm以下、より好ましくは200nm以上かつ300nm以下である。
【0033】
ここで、酸化亜鉛粒子の平均粒子径を上記の範囲に限定した理由を以下に説明する。
酸化亜鉛による散乱は、酸化亜鉛の粒子径が波長よりも十分に小さい場合、すなわち下記の式(1)にてα<<1、一般にはα<0.4の場合にはレイリー散乱となり、粒子径がそれよりも大きい場合には、ミー散乱となる。よって、紫外領域、特により長波長であるUV−A領域(320nm〜400nm)でレイリー散乱の効果を得るには、50nmを超える粒子径が好ましい。
α=π・D/λ……(1)
(但し、αは粒径パラメーター、Dは粒径、λは波長)
【0034】
したがって、酸化亜鉛の平均粒子径が50nm以下の場合には、上述したようにミー散乱より散乱効率が劣るレイリー散乱となり、散乱の効果が十分に得られない虞がある。
一方、酸化亜鉛の平均粒子径が500nmを越えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径も大きくなり、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を化粧料等に用いた場合に可視光領域の透明性や使用感を損なう虞がある。
この酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、上述した酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と同様の方法、すなわち、この酸化亜鉛粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて観察した場合に、顕微鏡の視野から酸化亜鉛粒子を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出し、これら酸化亜鉛粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を加重平均することにより求めることができる。
【0035】
酸化亜鉛粒子の合成法としては、平均粒子径が50nmを超えかつ500nm以下の酸化亜鉛粒子を合成することのできる方法であればよく、特に限定されないが、例えば、フランス法(間接法)、アメリカ法(直接法)等の乾式法、あるいはドイツ法等の湿式法等が挙げられる。
【0036】
「酸化ケイ素被膜」
酸化ケイ素被膜は、後述する「ケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5」を満たすほど縮合度の高いものであればよく、特に限定されない。
酸化ケイ素の縮合度については、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、固体
29Si MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法によりNMRスペクトルを測定し、このNMRスペクトルのピーク面積比からQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を測定することで容易に知ることができる。
【0037】
ここで、Q
n(n=0〜4)とは、酸化ケイ素の構成単位であるSiO
4四面体単位の酸素原子のうちの架橋酸素原子、すなわち2つのSiと結合している酸素原子の数に応じて決まる化学的構造のことである。
これらQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を、Q
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4と表記する。ただし、Q
0+Q
1+Q
2+Q
3+Q
4=1である。
【0038】
この酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5である。
ここで、Q
3+Q
4≧0.6は満足するものの、Q
4/(Q
3+Q
4)が0.5未満(Q
4/(Q
3+Q
4)<0.5)の場合、または、Q
4/(Q
3+Q
4)≧0.5は満足するものの、Q
3+Q
4が0.6未満(Q
3+Q
4<0.6)の場合には、酸化ケイ素被膜中の酸化ケイ素の縮合が十分に進行しておらず、したがって、緻密な被膜を得ることができず、その結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の亜鉛イオンの溶出抑制効果が十分に得られない虞があるので好ましくない。
【0039】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法]
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法は、酸化亜鉛粒子を溶媒中に懸濁させて酸化亜鉛懸濁液とする酸化亜鉛懸濁液作製工程と、この酸化亜鉛懸濁液に、アルコキシシラン及び10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうちいずれか1種または2種以上と、触媒と、水とを添加して反応させる反応工程と、得られた反応物を150℃以上かつ600℃未満の温度にて熱処理する熱処理工程とを有する方法である。
【0040】
「酸化亜鉛懸濁液作製工程」
酸化亜鉛粒子を溶媒中に懸濁させて酸化亜鉛懸濁液とする工程である。
ここで用いる酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、50nmを超えかつ500nm以下であり、好ましくは100nm以上かつ400nm以下、より好ましくは200nm以上かつ300nm以下である。
【0041】
ここで、酸化亜鉛粒子を懸濁させる溶媒としては、酸化亜鉛粒子を懸濁させることのできる溶媒であればよく、特には限定されないが、水の他、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類が好適に用いられる。
【0042】
また、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類も好適に用いられる。
これらの溶媒は、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
この酸化亜鉛懸濁液における酸化亜鉛粒子の含有率は、好ましくは1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下である。
【0044】
ここで、酸化亜鉛懸濁液における酸化亜鉛粒子の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下とした理由は、酸化亜鉛粒子の含有率が1質量%未満では、この懸濁液中の酸化亜鉛粒子の含有量に比べて多量の溶媒を除去する必要があり、コスト高となる虞がある。一方、含有率が80質量%を越えると、懸濁液の粘性が増加(増粘)して酸化亜鉛粒子の分散安定性が低下し、酸化亜鉛粒子が沈降し易くなる虞がある。
【0045】
酸化亜鉛粒子を溶媒中に懸濁させる方法としては、特に限定されず、公知の懸濁手法を用いることができる。例えば、ジルコニアビーズ等のメディアを用いたビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌機等が好適に用いられる。懸濁処理に要する時間としては、酸化亜鉛粒子が溶媒中に均一に懸濁されるのに十分な時間であればよい。
この場合、必要に応じて分散剤を添加してもよい。
【0046】
「反応工程」
上記の酸化亜鉛懸濁液に、アルコキシシラン及び10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうちいずれか1種または2種以上と、触媒と、水とを添加し、30分以上かつ24時間程度撹拌して反応させる工程である。
【0047】
ここで、アルコキシシラン及び10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーに限定した理由は、酸化ケイ素の縮合度の高い緻密な酸化ケイ素被膜を得るためである。
なお、アルコキシシランの替わりにケイ酸アルカリ金属塩を用いた場合、酸化ケイ素被膜中の酸化ケイ素の縮合度を向上させることが困難で、緻密な酸化ケイ素被膜を得ることができないので好ましくない。
また、アルコキシシランのオリゴマーを10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーに限定した理由は、オリゴマーの鎖長が長くなるとオリゴマー間の距離が開き易くなり、11量体以上では、酸化亜鉛粒子を被覆した後に熱処理を行っても、被膜中の酸化ケイ素が十分に縮合せず、したがって、緻密な酸化ケイ素被膜を得ることができず、所望の溶出抑制効果が得られない虞があるからである。
【0048】
上記のアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランが好ましく、上記の10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーとしては、10量体以下のテトラアルコキシシランのオリゴマーが好ましい。
このテトラアルコキシシランは、下記の一般式(2)
Si(OR)
4 ……(2)
(但し、Rはアルコキシル基(RO基)であり、これら4つのアルコキシル基(RO基)は、すべて同一であってもよく、一部または全部が異なったものであってもよい。)で表される。これらのアルコキシル基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。
【0049】
このようなテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、モノエトキシトリメトキシシラン、モノブトキシトリメトキシシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは、Siの含有量が多く、溶媒に分散した場合に濃度をコントロールし易いこと、加水分解・縮合反応性が高いことから、好適に用いることができる。
これらのテトラアルコキシシランは、1種のみを単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0050】
また、上記の10量体以下のテトラアルコキシシランのオリゴマーは、1種または2種以上のテトラアルコキシシランのモノマーに水を添加してある程度加水分解縮合させることにより得ることができる。
このようなテトラアルコキシシランのオリゴマーは、MKCシリケートMS51(三菱化学(株)社製)、メチルシリケート51(平均4量体)、メチルシリケート53A(平均7量体)、エチルシリケート40(平均5量体)、エチルシリケート48(平均10量体)(以上、コールコート社製)等として市販されている。
【0051】
上記のテトラアルコキシシラン及び10量体以下のテトラアルコキシシランのオリゴマーのうちいずれか1種または2種以上は、酸化ケイ素に換算した場合に、酸化亜鉛懸濁液中の酸化亜鉛粒子に対して2質量%以上かつ45質量%以下となる様に、添加するのが好ましい。
【0052】
触媒は、テトラアルコキシシラン及び10量体以下のテトラアルコキシシランのオリゴマーの加水分解または縮重合反応を促進する目的で添加される。このような触媒は公知の酸触媒または塩基性触媒を用いることができる(作花済夫著、「ゾル−ゲル法の科学」、アグネ承風社、9章(p154−p173参照))。
この酸触媒の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸等の有機酸が挙げられ、なかでも無機酸、特に、塩酸を好適に使用することができる。また、上記の酸触媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
この塩基性触媒の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、尿素、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、等を挙げることができる。
これらの中で、アンモニア、有機アミン類、アンモニウムハイドロオキサイド類を好適に用いることができる。これらの塩基性触媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの触媒は、酸触媒、塩基性触媒のどちらを用いてもよいが、求電子反応である酸触媒を好適に用いることができる。
【0054】
反応温度は、テトラアルコキシシラン及び10量体以下のテトラアルコキシシランのオリゴマーの加水分解または縮重合反応が速やかに進行する温度であれば、特に制限されないが、好ましくは0℃以上かつ100℃以下、より好ましくは20℃以上かつ80℃以下、さらに好ましくは40℃以上かつ60℃以下である。
水は、テトラアルコキシシラン及び10量体以下のテトラアルコキシシランのオリゴマーのうちいずれか1種または2種以上を加水分解するのに必要な量以上、すなわち加水分解率100%以上となる量を添加すればよい。
【0055】
これにより、アルコキシシラン及び10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうちいずれか1種または2種以上の加水分解反応が進行すると共に縮合反応も進行した反応液が得られる。
上記の反応液を、常圧濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離等により固液分離することにより固形状の反応物が得られる。
【0056】
「熱処理工程」
上記の反応物を150℃以上かつ600℃未満の温度にて熱処理する工程である。
反応物の熱処理は、酸化ケイ素被膜の緻密化を促進するためには、250℃以上かつ550℃以下がより好ましく、300℃以上かつ500℃以下がさらに好ましい。
ここで、熱処理温度を150℃以上かつ600℃未満に限定した理由は、150℃未満では、十分に縮合した緻密な酸化ケイ素被膜が得られず、その結果、酸化亜鉛粒子から亜鉛イオンが溶出するのを抑制する効果が十分に得られない虞があるからである。一方、600℃以上では、酸化ケイ素被膜が形成された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛同士が結合して粗大粒子となったり、酸化亜鉛が粒成長したりする結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を配合した化粧料を使用した場合に、可視光領域で十分な透明性が得られない虞があるからである。
【0057】
この熱処理工程は、熱処理温度が150℃以上かつ600℃未満の温度範囲であれば、この温度範囲内の所定の温度で複数回繰り返し行ってもよく、この温度範囲内の異なった温度で複数回行ってもよい。
【0058】
このようにして得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の表面を、さらにシリコーン樹脂にて表面処理する場合、熱処理工程を行った後の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と、シリコーン樹脂とを直接混合する方法(乾式処理法)、あるいは熱処理工程を行った後の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、シリコーン樹脂を含有する溶液中に分散させ、次いで、この溶液中の溶媒を除去し、次いで、加熱処理を行う方法(湿式処理法)等、公知の方法を用いることができる。
熱処理工程を行った後の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、シリコーン樹脂を含有する溶液中に分散させる場合、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率がシリコーン樹脂を含む溶液中に10質量%以上かつ40質量%以下、好ましくは25質量%以上かつ35質量%以下となるように混合するのが好ましい。この範囲で混合することで、生産効率を向上させることができる。
【0059】
このシリコーン樹脂にて表面処理する場合の加熱処理は、100℃以上かつ300℃以下の温度範囲で行うのが好ましい。この温度範囲にて加熱処理を行うことにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の表面をシリコーン樹脂にて表面処理すると共に、シリコーン樹脂の熱分解及び酸化亜鉛の結晶成長を抑制することができる。
以上により、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製することができる。
【0060】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物]
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と、溶媒と、を含有している。
【0061】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、50nmを超えかつ2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上かつ500nm以下、さらに好ましくは200nm以上かつ300nm以下である。
ここで、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径を上記の範囲に限定した理由は、平均粒子径が50nm以下では、含有する酸化亜鉛の粒子サイズも小さくなり、長波長側の紫外域の散乱が相対的に小さくなる虞があるからであり、2000nmを超えると、この酸化ケイ素酸化亜鉛を化粧料等に用いた場合に、きしみ等が生じて使用感が悪化する虞があるからである。
【0062】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径は、60nm以上かつ10μm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以上かつ7μm以下、さらに好ましくは100nm以上かつ5μm以下である。
ここで、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径を上記の範囲に限定した理由は、平均分散粒径が60nm未満では、長波長側の紫外域の散乱が相対的に小さくなる虞があるので好ましくなく、一方、平均分散粒径が10μmを超えると、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を化粧料に配合した際に透明性が低下する虞があるので好ましくない。
【0063】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率は、所望の紫外線遮蔽性能を得るために適宜調整すればよく、特に制限されるものではないが、好ましくは1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下である。
ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下とした理由は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率が1質量%未満では、この組成物が十分な紫外線遮蔽機能を示すことができなくなる虞があり、したがって、この組成物を化粧料等に配合する際に、所望の紫外線遮蔽機能を示すためには大量の組成物を添加する必要があり、製造コストが高くなる虞があるので好ましくない。一方、含有率が80質量%を越えると、組成物の粘性が増加して酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散安定性が低下し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が沈降し易くなる虞があるので好ましくない。
【0064】
上記の溶媒としては、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を分散させることができる溶媒であればよく、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン等のアルコール類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;
ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;
が好適に用いられる。
【0065】
また、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;
シクロヘキサン等の環状炭化水素;
ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;
ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類;
も好適に用いられる。
【0066】
また、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン類;
アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類;
も好適に用いられる。
これらの溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、その特性を損なわない範囲において分散剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤等、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0068】
分散剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、オルガノアルコキシシランやオルガノクロロシラン等のシランカップリング剤、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等の変性シリコーンが好適に用いられる。これらの分散剤の種類や量は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の粒子径や目的とする分散媒の種類により適宜選択すればよく、上記分散剤のうち1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸等を用いることができる。
【0070】
増粘剤としては、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を化粧料に適用する場合には、化粧料に使用可能な増粘剤であればよく、特に限定されない。例えば、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン等の天然の水溶性高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト等の無機鉱物等が好適に用いられる。これらの増粘剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの増粘剤の中でも、好ましくは合成高分子であり、より好ましくはカルボマーである。
【0071】
ここで、増粘剤としてカルボマーを用いる場合、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物におけるカルボマーの含有率は、0.01質量%以上かつ10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上かつ3質量%以下がより好ましい。
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物におけるカルボマーの含有率が0.01質量%未満であると、増粘効果が得られなくなる虞があるからであり、一方、カルボマーの含有率が10質量%を超えると、粘度が高くなり過ぎてしまい、化粧料に適用した場合に、肌に塗り広げて塗布した際の肌への乗りが悪くなり、使用感が低下する等の不具合が生じ、使用上の観点から好ましくない。
【0072】
また、増粘剤としてカルボマーを用いる場合の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物における水素イオン指数(pH)は、5以上かつ10以下が好ましく、6以上かつ10以下がより好ましく、7以上かつ9以下がさらに好ましい。
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物におけるpHを上記の範囲内とすることにより、粘度等の経時変化を抑制することができる。
【0073】
なお、上記のカルボマー(カルボキシビニルポリマー)は水系の化粧料の増粘剤として広く用いられているが、カルボキシル基間やカルボキシレート基間の相互作用を利用して増粘(ゲル化)するので、亜鉛イオンが存在するとカルボマーのネットワーク構造が破壊されてしまい、粘性を一定に保つことができない。よって、粘度調整したカルボマー水溶液に酸化亜鉛を数質量%混合すると、数時間のうちに低粘度化が進行することとなる。
また、無機酸化物や樹脂で被覆して表面活性を抑制した酸化亜鉛を用いた場合においても、多くの場合、数時間から数日のうちに低粘度化または分相が進行する。よって、カルボマーと酸化亜鉛を併用する場合、これらを含む混合物の粘度低下を抑制または低減することが問題点となる。
【0074】
また、従来の無機酸化物や樹脂で被覆して表面活性を抑制した酸化亜鉛を用いてカルボマー水溶液の粘度低下を抑制した場合、初期の粘度低下よりも、一定時間経過した後の粘度低下がしばしば大きな問題点となる。
初期の粘度低下は、カルボマー水溶液の粘度を予め高めに調整すること等で対応することができるが、一定時間経過した後の中長期にて粘度が変化すると、流通段階で化粧料の性状が変化し、経時安定性を損なうこととなる。特に、無機酸化物や樹脂で表面処理を施した酸化亜鉛は、一定の溶出抑制効果を有していることから、中長期に亘って徐々に亜鉛イオンを溶出する虞があった。
また、従来、カルボマーを含む組成物の粘度変化に関する報告例は少なく、また、報告例があったとしても、室温にて7日程度の経時による粘度変化までしか抑制が確認されていなかった。
【0075】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、従来の無機酸化物や樹脂で被覆された酸化亜鉛と比べて、さらに亜鉛溶出抑制効果の高い酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いているので、増粘剤としてカルボマーを用いたとしても、経時による粘度の低下が小さく、したがって、長期に亘って品質安定性に優れた組成物を得ることができる。
【0076】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、化学反応を促進させる促進条件下、例えば40℃にて保管した場合の300時間後の粘度を、初期粘度低下後の粘度、例えば15時間後の粘度にて割った値が0.8以上かつ1.2以下であることが好ましい。
このように、促進条件下300時間後の粘度を初期粘度低下後の粘度にて割った値を上記範囲内とすることにより、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の粘度を中長期に亘って維持することができ、経時安定性に優れたものとなる。
【0077】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を15質量%とし、この組成物を厚み32μmの塗膜とした場合に、波長450nmの光に対する透過率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
この透過率は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を15質量%含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を、石英基板上にバーコーターにて塗布して、厚みが32μmの塗膜を形成し、この塗膜の分光透過率をSPFアナライザー UV−1000S(Labsphere社製)にて測定することにより求めることができる。
【0078】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の製造方法は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を上記の溶媒中に分散させることができればよく、特に限定されない。
このような分散方法としては、公知の分散方法を用いることができる。例えば、攪拌機の他、ジルコニアビーズを用いたビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、混練機、三本ロールミル、自転・公転ミキサー等が好適に用いられる。
分散処理に要する時間としては、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を上記の溶媒中に均一に分散されるのに十分な時間であればよい。
【0079】
次に、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の具体例として、(1)酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を非水溶性分散媒であるシリコーン樹脂中に分散させた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物、(2)酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水中に分散させた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物、それぞれについて説明する。
【0080】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物」
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛をシリコーン樹脂中に分散してなるシリコーン樹脂系組成物であり、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下としたシリコーン樹脂系組成物である。
【0081】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、50nmを超えかつ2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上かつ500nm以下、さらに好ましくは200nm以上かつ300nm以下である。
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径は、60nm以上かつ10μm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以上かつ7μm以下、さらに好ましくは100nm以上かつ5μm以下である。
【0082】
シリコーン樹脂としては、化粧料に用いられるものであればよく、特に限定されず、例えば、環状シリコーン樹脂や直鎖状シリコーン樹脂等を用いることができる。
このようなシリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状シロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン、メチルトリメチコン等が挙げられる。
これらのシリコーン樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0083】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物は、分散剤を含有していてもよい。
この分散剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ジメチルシリコーン等の変性シリコーン;
陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等の界面活性剤;
オルガノアルコキシシラン、オルガノクロロシラン等のシランカップリング剤;
等を挙げることができる。
これらの分散剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0084】
この分散剤の添加量は、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の質量に対して、1質量%以上かつ50質量%以下の範囲であることが好ましい。
分散剤の添加量を上記の範囲内で調整することにより、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物を単独で用いた場合においても、また、化粧料に直接混合した場合においても、肌に塗り広げて塗布した場合に透明性を十分に確保することができる。
また、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物に、その特性を損なわない範囲で、さらに天然オイル、保湿剤、増粘剤、香料、防腐剤等を混合させてもよい。
【0085】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂組成物は、これを油相として、水性成分と乳化させて乳化組成物としてもよい。
油相には、高級アルコール及び高級脂肪酸の少なくとも一方が含有されることが好ましく、双方が含有されることがより好ましい。これらの成分が油相に含有されることで、ハリ感、保湿感が向上し、かつこれらの効果の持続性が向上する。
【0086】
高級アルコールとしては、化粧料として使用されるものであれば特に限定されず、例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等が好適に用いられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
高級脂肪酸としては、炭素数12〜24の飽和または不飽和の脂肪酸を用いることが好ましく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、アラキドン酸等が好適に用いられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この油相には、必要に応じて油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、植物油、動物油等を適宜混合してもよい。
【0088】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物の製造方法としては、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を上記のシリコーン樹脂中に分散させることができればよく、特に限定されない。
このような分散方法としては、公知の分散装置を用いることができる。このような分散装置としては、例えば、攪拌機、ビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、混練機、三本ロールミル、自転・公転ミキサー等が好適に用いられる。
分散処理に要する時間としては、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が上記のシリコーン樹脂中に均一に分散されるのに十分な時間であればよく、特に限定されない。
【0089】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物」
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛をアルコール類を含む水系分散媒中に分散してなる水系組成物であり、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下含有するとともに、アルコール類を含む水系分散媒を5質量%以上かつ20質量%以下含有してなる水系組成物である。
【0090】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、50nmを超えかつ2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上かつ500nm以下、さらに好ましくは200nm以上かつ300nm以下である。
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径は、60nm以上かつ10μm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以上かつ7μm以下、さらに好ましくは100nm以上かつ5μm以下である。
【0091】
ここで、アルコール類を含む水系分散媒とは、アルコール類と水とを含む分散媒であり、アルコール類としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の炭素数1〜6の一価アルコールまたは多価アルコールが挙げられる。これらの中でも一価アルコール、特にエタノールが好ましい。
【0092】
この水系組成物が上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛とアルコール類を含む水系分散媒とにより構成されている場合、アルコール類の含有率は、5質量%以上かつ20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上かつ20質量%以下である。
特に、アルコール類の含有率を10質量%以上かつ20質量%以下とした場合には、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の水系組成物における分散性及び経時安定性を向上させることができるので好ましい。
【0093】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物では、さらに、水溶性高分子を0.001質量%以上かつ10質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上かつ5質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上かつ3質量%以下含有してなることとしてもよい。この場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛、アルコール類を含む水系分散媒及び水溶性高分子各々の含有率の合計が100質量%を超えないように、各成分の含有率を調整する必要がある。
【0094】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を化粧料に適用する場合、この水系組成物に含まれる水溶性高分子としては、化粧料の用途として使用できるものであればよく、特に限定されないが、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、カラギーナン、ガラクタン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプン、寒天、キサンタンガム、クインスシード、グアーガム、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、トラガカントガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウムペクチン、プルラン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この水溶性高分子は、分散剤及び粘度調整剤としての役割を有するとともに、水系組成物に添加することによって酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の水系組成物中における分散性及び経時安定性も向上する。
【0095】
この水系組成物が水溶性高分子を含む場合のアルコール類の含有率は、5質量%以上かつ20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以上かつ20質量%以下である。
ここで、水系組成物が水溶性高分子を含む場合のアルコール類の含有率を5質量%以上かつ20質量%以下とした理由は、含有率が5質量%未満では、アルコール類の含有量が少なすぎてしまうために、水溶性高分子がアルコール類に均一に浸潤できずに水分にて不均一に膨潤することとなり、その結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散性が低下して取扱いが困難となり、さらには水系組成物の経時安定性が低下するので、好ましくない。
また、含有率が20質量%を超えると、水系組成物全体の粘性が高くなり、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散安定性が低下するとともに、水系組成物の経時安定性も低下するので、好ましくない。
【0096】
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、アルコール類を含む水系分散媒、またはアルコール類及び水溶性高分子を含む水系分散媒に、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を混合し、次いで、水を混合して分散させることにより、得ることができる。水の量は適宜調整すればよいが、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散安定性及び経時安定性を考慮すると、15質量%以上かつ94質量%以下の範囲が好ましい。
水の量を上記範囲で調整することにより、単独で用いても、あるいは化粧料に混合しても、肌に塗り広げて塗布した場合に透明性を十分に確保することができる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が得られる。
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を水相として、油相と混合し乳化させて乳化組成物としてもよい。
【0097】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛及び上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物のうちいずれか一方または双方を基剤中に含有している。
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を紫外線遮蔽用途で用いる場合には、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、50nmを超えかつ2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上かつ500nm以下、さらに好ましくは200nm以上かつ300nm以下のものを用いるのが好ましい。
【0098】
また、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を紫外線遮蔽用途で用いる場合においても、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物に含まれる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、50nmを超えかつ2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上かつ500nm以下、さらに好ましくは200nm以上かつ300nm以下のものを用いるのが好ましい。
この化粧料の平均分散粒径は、60nm以上かつ10μm以下が好ましく、80nm以上かつ7μm以下がより好ましく、100nm以上かつ5μm以下がさらに好ましい。
【0099】
上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛及び上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物のうちいずれか一方または双方を用いた化粧料に含まれる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率は適宜調整すればよいが、化粧料全体の質量に対して1質量%以上かつ60質量%以下含有していることが好ましい。酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を上記の範囲内で含有することにより、透明感を十分に確保することができ、しかも、ざらつき感等が無く、使用感に優れた化粧料を得ることができる。
【0100】
本実施形態の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内において、有機系紫外線遮蔽剤、無機系紫外線遮蔽剤、美白剤等、化粧料に一般的に用いられる添加剤等を含有していてもよい。
この有機系紫外線遮蔽剤としては、例えば、アントラニラート類、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、ベンゾフェノン誘導体、β,β'-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロナート誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾリン類、ビスベンゾアゾリル誘導体、p−アミノ安息香酸(PABA)誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体等が挙げられ、これらの群から選択される1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0101】
また、無機系紫外線遮蔽剤としては、酸化亜鉛以外の酸化物、例えば、酸化チタン、酸化セリウム等が挙げられ、これらの群から1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0102】
この化粧料は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛及び上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物のうちいずれか一方または双方を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の基剤中に従来どおりに配合することにより得ることができる。
さらに、従来では処方が困難であった化粧水や日焼け止めジェル等の水系化粧料に、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛及び上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物のうちいずれか一方または双方を配合することにより、紫外線遮蔽能、透明感及び使用感に優れた水系化粧料を得ることができる。
【0103】
さらにまた、この化粧料を化粧品の成分として用いることにより、紫外線遮蔽能、透明感及び使用感に優れたスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア化粧品等の各種化粧品を提供することが可能である。特に、紫外線遮蔽能が必要とされるボディケア化粧品のサンスクリーン等に好適である。
【0104】
以上説明したように、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛によれば、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜により被覆し、この酸化亜鉛粒子の平均粒子径を50nmを超えかつ50nm以下とし、さらに、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5を満足することとしたので、この緻密な酸化ケイ素被膜が酸化亜鉛粒子を被覆することで、この酸化亜鉛粒子から亜鉛イオンが外方へ溶出するのを抑制することができる。したがって、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を化粧料に適用した場合に、亜鉛イオンの溶出による化粧料としての性能の低下、変色、粘度の増減等を抑制することができる。
【0105】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法によれば、酸化亜鉛粒子を溶媒中に懸濁させて酸化亜鉛懸濁液とする酸化亜鉛懸濁液作製工程と、この酸化亜鉛懸濁液に、アルコキシシラン及び10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうちいずれか1種または2種以上と、触媒と、水とを添加して反応させる反応工程と、得られた反応物を150℃以上かつ600℃未満の温度にて熱処理する熱処理工程とを有するので、酸化亜鉛粒子からの亜鉛イオンの溶出を抑制することができる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製することができる。
【0106】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物によれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と溶媒とを含有したので、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛に含まれる亜鉛元素が亜鉛イオンとして外方へ溶出するのを抑制することができる。したがって、亜鉛イオンの溶出による組成物としての性能の低下、変色、粘度の増減等を抑制することができる。
この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、亜鉛イオンの溶出が抑制されているので、水系分散体、水中油型(O/W型)分散体、油中水型(W/O)分散体、多層型(W/O/W型またはO/W/O)分散体等の化粧料、特にサンスクリーンに好適に用いることができる。また、ポリエステルやポリアミド等の樹脂フィルムに適用した場合には、樹脂フィルムの紫外線遮蔽剤としても好適に用いることができる。
さらに、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、カルボマーまたはカルボマー水溶液と混合することができるので、使用感に優れた水溶性組成物または非水溶性組成物を提供することができる。
【0107】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛及び本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物のうちいずれか一方または双方を基剤中に含有したので、亜鉛イオンが外方へ溶出するのを抑制することができる。したがって、亜鉛イオンの溶出による化粧料としての性能の低下、変色、粘度の増減等を抑制することができる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0109】
A.酸化ケイ素被覆酸化亜鉛
[実施例1]
酸化亜鉛粒子(平均粒子径250nm;住友大阪セメント製)とメタノールを混合し、次いで超音波分散し、酸化亜鉛の含有率が20質量%の酸化亜鉛メタノール懸濁液を調整した。
次いで、この酸化亜鉛メタノール懸濁液に、この酸化亜鉛メタノール懸濁液中の酸化亜鉛粒子に対して酸化ケイ素に換算して30質量%となるようにメチルシリケート51(コルコート社製)とメタノールと水とを混合した。次いで、この混合液に1Nの塩酸を加え、混合液を調製した。
この混合液中の酸化亜鉛の含有率は10質量%、メチルシリケート51と純水と塩酸のモル比は1:10:0.1であった。
【0110】
次いで、この混合液を加温して60℃とし、この温度にて3時間保持し、反応させた。
反応後、遠心分離により固液分離を行い、得られた固形状の反応物を120℃にて乾燥し、生成物を得た。
次いで、この生成物を、500℃にて2時間、熱処理し、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を得た。
【0111】
[実施例2]
メチルシリケート51(コルコート社製)の添加量を、酸化亜鉛粒子に対して酸化ケイ素に換算して10質量%となるようにした以外は、実施例1に準じて、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を得た。
【0112】
[比較例1]
酸化亜鉛粒子(平均粒子径250nm;住友大阪セメント製)と水を混合し、次いで超音波分散し、酸化亜鉛の含有率が20質量%の酸化亜鉛水系懸濁液を調製した。
次いで、この酸化亜鉛水系懸濁液を、この酸化亜鉛水系懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量に対して酸化ケイ素換算で5質量%のケイ酸ソーダ水溶液に加え、強く撹拌し、酸化亜鉛ケイ酸ソーダ懸濁液とした。
次いで、この酸化亜鉛ケイ酸ソーダ懸濁液を60℃に加温した後、この懸濁液に希塩酸を徐々に添加し、pHが6.5〜7となるように調整した。その後、2時間静置し、この懸濁液を固液分離し、得られた固形物を水にて洗浄した。この固形物を150℃にて12時間熱処理して、比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を得た。
【0113】
[比較例2]
比較例1のケイ酸ソーダ水溶液の添加量を酸化亜鉛粒子の質量に対して酸化ケイ素換算で15質量%とした他は、比較例1に準じて、比較例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を得た。
【0114】
[評価]
実施例1〜2及び比較例1〜2各々の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の評価を行った。評価項目は次のとおりである。
(1)赤外分光(IR)
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛のIR評価を、JASCO FT/IR−670Plus(日本分光社製)を用い、KBr法にて行った。ここでは、1000〜1200cm
−1と、400〜600cm
−1にSi−O−Si伸縮由来の吸収帯と酸化亜鉛由来の吸収帯がそれぞれ観測されたものを「○」とし、これらの吸収帯のうちいずれか一方または双方が観測されなかったものを「×」とした。
【0115】
(2)酸化ケイ素の縮合度
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、固体
29Si MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法によりNMRスペクトルを測定し、このNMRスペクトルのピーク面積比からQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比Q
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4を算出した。
【0116】
(3)亜鉛溶出率
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛をpH=5の緩衝液に0.05質量%となるように分散し、1時間撹拌した後、固液分離を行い、液相の亜鉛濃度をICP発光分析装置にて測定した。
そして、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中の亜鉛含有量(mol)のうち上記の液相に溶出した亜鉛イオン(mol)の比率を亜鉛溶出率(%)とした。
pH=5の緩衝液は、0.1Mフタル酸水素カリウム水溶液500mlと0.1M水酸化ナトリウム水溶液226mlを混合した後、水を加えて全体量を1000mlとすることにより作製した。
これらの評価結果を表1及び表2に示す。
また、実施例1で用いた酸化亜鉛粒子(平均粒子径250nm;住友大阪セメント製)の亜鉛溶出率の測定結果を、比較例3として、表2に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
表2によれば、実施例1〜2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、比較例1〜2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と比べて、酸化ケイ素の縮合度を示すQ
3+Q
4値及びQ
4/(Q
3+Q
4)値が高く、亜鉛溶出率が低いことが確認された。
【0120】
B.酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物
[実施例3]
カルボマー Ultrez10(日光ケミカルズ社製)1.5gを純水に溶解し、次いで、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを調整し、カルボマーを1.5質量%含有しpHが7.5のカルボマー水溶液を作製した。
次いで、このカルボマー水溶液と、実施例1に準じて得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、95:5の質量比で混合した後、撹拌して、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0121】
この組成物の粘度を、粘度計 BII型粘度計(東機産業社製)を用いて、20℃、30rpmの条件下で測定した結果、10.4Pa・sであった。
この組成物から所定量を採取し、この採取した試料を恒温槽を用いて40℃に保持し、20℃、30rpmの条件下で所定の時間毎に粘度を測定した。この粘度の経時変化を
図1に示す。
【0122】
[比較例4]
実施例1に準じて得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いる替わりに酸化亜鉛粒子(平均粒子径250nm;住友大阪セメント製)を用いた以外は、実施例3に準じて、比較例4の酸化亜鉛含有組成物を得た。
この組成物の粘度を、実施例3に準じて測定した結果、2.4Pa・sであった。
【0123】
[比較例5]
カルボマー Ultrez10(日光ケミカルズ社製)1.5gを純水に溶解し、次いで、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを調整し、カルボマーを1.5質量%含有しpHが7.5のカルボマー水溶液を作製した。
次いで、このカルボマー水溶液と、純水を、95:5の質量比で混合した後、撹拌して、比較例5のカルボマー水溶液を得た。
【0124】
次いで、このカルボマー水溶液の粘度を、実施例3に準じて測定した結果、9.5Pa・sであった。
このカルボマー水溶液から所定量を採取し、この採取した試料を恒温槽を用いて40℃に保持し、所定の時間毎に20℃、30rpmの条件下で粘度を測定した。この粘度の経時変化を
図1に示す。
【0125】
以上の結果によれば、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は亜鉛溶出率が十分に抑制されており、この組成物が作製されてから15時間程度までは粘度が低下するものの、その後の粘度は一定であり、粘度の低下が抑制されていることが確認された。
また、経時変化により、初めのうちは少し粘度が低くなるが、一定時間以上経過すると、それ以降の粘度はほぼ一定となり、粘度の低下が抑制されていることが確認された。
【0126】
一方、比較例4の組成物は、酸化亜鉛の表面が酸化ケイ素被膜により被覆されていないので、亜鉛溶出率が高く、しかも、組成物を作製した後、直ちに粘度が低下したことが確認された。
比較例5は、カルボマー水溶液に酸化亜鉛が含まれていないので、40℃での加熱保持の影響を受けず、粘度は約10Pa・sで一定であった。