特許第6350095号(P6350095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350095
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ポリアルキレングリコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/10 20060101AFI20180625BHJP
   C08G 65/26 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C08G65/10
   C08G65/26
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-162156(P2014-162156)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-37560(P2016-37560A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】井上 善彰
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−131897(JP,A)
【文献】 特開平02−071841(JP,A)
【文献】 特開2001−038212(JP,A)
【文献】 特開2010−150514(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0178338(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00−65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるイミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタイルサイトの存在下、アルキレンオキシドの開環重合を行なうことを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法。
【化1】
(1)
(式中、R,Rは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜10のフェニル基又はアルキルフェニル基を表し、RとR又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。Yn−は、活性水素含有化合物中のn個のプロトンが脱離した活性水素含有化合物のアニオンを表し、nは2以上の整数を表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)で示されるイミノホスファゼニウム塩が、R,R共にメチル基のイミノホスファゼニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項3】
ハイドロタルサイトが、300〜900℃の温度範囲で焼成処理されたハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項4】
ハイドロタルサイトが、下記一般式(2)で示されるハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
(Mg1−x Al (OH)x+ (CO3x/2 ・mHO)x− (2)
(式中、xおよびmは0<x≦0.33、0<m≦1.0の条件を満たす。)
【請求項5】
下記一般式(3)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタルサイトを減圧下、加熱処理した後、アルキレンオキシドの開環重合を行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【化2】
(3)
(式中、R,Rは、上記一般式(1)におけるR,Rと同じ官能基を表す。Xは、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコールの製造方法に関するものであり、特に特定のイミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタルサイトの存在下でアルキレンオキシドの開環重合を行なうことにより、高活性で、分子量分布が狭く、安定した物性のポリアルキレングリコールを効率よく製造することが可能となる新規なポリアルキレングリコールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルキレンオキシドの開環重合によりポリアルキレングリコールを製造する方法は、一般的に知られており、その際の触媒としては、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、二重金属シアン化物(DMC)触媒、ホスファゼン触媒など数多く報告されている。また、近年、ポリアルキレングリコールを製造する触媒としてイミノホスファゼニウム塩が使用できることが報告されている(例えば特許文献1参照。)。また、ハイドロタルサイトがポリアルキレングリコールの製造触媒となることも報告されている(例えば特許文献2、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2010−150514号公報(特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】USP4962237号公報(特許請求の範囲参照。)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JOURNAL OF CATALYSIS 130,354−358(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案の方法においては、ポリアルキレングリコールを製造する際の反応活性は低いものとなる。また、反応活性を高くするため、反応温度を高くする方法を選択すると副反応によるアリル末端を有するモノオール化合物の生成量が増加し、得られるポリアルキレングリコールは純度の低いものとなり、該ポリアルキレングリコールをポリウレタンの原料として使用した場合、得られるポリウレタンは、機械物性や硬化性などの物性が低いものとなるという課題を有するものであった。
【0006】
また、特許文献2や非特許文献1に提案の方法においては、得られるポリアルキレングリコールは分子量が5000程度と低く、高分子量のポリアルキレングリコールの製造が困難である、また、分子量分布が広く、同じ分子量のポリアルキレングリコールであっても粘度が大きく変動するなど安定した物性を有するポリアルキレングリコールを製造することが困難であるという課題を有するものであった。
【0007】
そして、高活性で、安定した物性のポリアルキレングリコールを効率よく製造する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のイミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタルサイトの存在下でアルキレンオキシドの開環重合を行なうことにより、高活性で、分子量分布が狭く、安定した物性のポリアルキレングリコールを効率よく製造することが可能となる新規なポリアルキレングリコールの製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示されるイミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタイルサイトの存在下、アルキレンオキシドの開環重合を行なうことを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法に関するものである。
【0010】
【化1】
(1)
(式中、R,Rは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜10のフェニル基又はアルキルフェニル基を表し、RとR又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。Yn−は、活性水素含有化合物中のn個のプロトンが脱離した活性水素含有化合物のアニオンを表し、nは2以上の整数を表す。)
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法は、上記一般式(1)で示されるイミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタイルサイトの存在下、アルキレンオキシドの開環重合を行なうポリアルキレングリコールの製造方法である。
【0012】
その際のイミノホスファゼニウム塩としては、上記一般式(1)で示される範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、R,Rは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜10のフェニル基又はアルキルフェニル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、3−メチル−2−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチル−2−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ヘプチル基、3−ヘプチル基、1−オクチル基、2−オクチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、4−トルイル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等の脂肪族又は芳香族の炭化水素基が例示され、その中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基等の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、RとR、又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良く、そのような置換基として、例えばジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等を挙げることができ、合成の容易さや強塩基性のイミノホスファゼニウム炭酸水素塩が得られることからRとRが互いに結合して環構造を形成する場合は、テトラメチレン基が好ましく、R同士が互いに結合して環構造を形成する場合はジメチレン基が好ましい。
【0013】
また、Yn−は、活性水素含有化合物中のn個のプロトンが脱離した活性水素含有化合物のアニオンを表し、nは2以上の整数を表すものである。そして、Yn−を誘導する活性水素含有化合物は、ポリアルキレングリコールを製造する際に存在する活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物と同一であってもよく、該活性水素含有化合物としては、例えばヒドロキシ化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、チオール化合物等を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ、グルコース等のヒドロキシ化合物;エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ピペラジン等のアミン化合物;アジピン酸等のカルボン酸化合物;ビスフェノール等のフェノール化合物;エタンジチオール、ブタンジチオール等のチオール化合物等を挙げることができる。また、水酸基を有するポリエーテルポリオールを用いることも可能であり、例えばポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールグリセリンエーテル等を挙げることができ、この際のポリエーテルポリオールの分子量に特に制限はなく、その中でも低粘度で流動性に優れる分子量200〜3000のポリエーテルポリオールが好ましい。また、これら活性水素含有化合物は単独でも数種類の混合物であってもよい。
【0014】
該イミノホスファゼニウム塩の製造方法としては、例えば下記一般式(3)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩及びYn−を誘導する活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物を減圧下、加熱処理を行なうことにより調製する方法を挙げることができる。
【0015】
【化2】
(3)
(式中、R,Rは上記一般式(1)におけるR,Rと同じ官能基を表す。Xは、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。)
そして、該塩基性イミノホスファゼニウム塩は、例えば特開2013−112646号公報、特開2014−118353号公報等に記載の方法により製造することができる。ここで、R,Rとしては、上記したものと同様のものを例示することができる。また、該塩基性イミノホスファゼニウム塩のXは、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンであり、炭素数1〜4のアルコキシアニオンとしては、例えばメトキシアニオン、エトキシアニオン、n−プロポキシアニオン、イソプロポキシアニオン、n−ブトキシアニオン、イソブトキシアニオン、t−ブトキシアニオン等が挙げられ、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオンとしては、例えばアセトキシアニオン、エチルカルボキシアニオン、n−プロピルカルボキシアニオン、イソプロピルカルボキシアニオン、n−ブチルカルボキシアニオン、イソブチルカルボキシアニオン、t−ブチルカルボキシアニオン等が挙げられる。そして、中でも、該塩基性イミノホスファゼニウム塩の塩基性が強いものとなることから、Xとしては、ヒドロキシアニオンまたは炭酸水素アニオンが好ましい。
【0016】
さらに、該塩基性イミノホスファゼニウム塩としては、具体的には、例えばテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラエチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−プロピル)グアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトライソプロピルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−ブチル)グアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラフェニルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラベンジルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラエチルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−プロピル)グアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトライソプロピルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−ブチル)グアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラフェニルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラベンジルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート等を例示でき、該塩基性イミノホスファゼニウム塩が強い塩基性を有することから、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムハイドロゲンカーボネートであることが好ましい。
【0017】
該イミノホスファゼニウム塩を調製する際の該塩基性イミノホスファゼニウム塩と活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物の配合割合は任意であり、その中でも該イミノホスファゼニウム塩を重合系内で調製した後、該イミノホスファゼニウム塩、余剰の活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及び後述するハイドロタルサイトにより、効率よくポリアルキレングリコールを製造することが可能となることから、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物1モルに対して該塩基性イミノホスファゼニウム塩が1×10−4〜5×10−1モルとなる範囲、好ましくは5×10−3〜1×10−1モルとなる範囲で用いることが好ましい。
【0018】
該イミノホスファゼニウム塩を調製する際に、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物中の水分や副生する水を除去する方法としては、例えば減圧下で水を除去する方法を挙げることができ、その際の減圧度としては、例えば50kPa以下、好ましくは10kPa以下、特に好ましくは5kPa以下の減圧下を挙げることができる。また、その際の温度条件としては、例えば30〜130℃の温度範囲、好ましくは40〜100℃の範囲を挙げることができ、その際の反応時間としては、例えば0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間の範囲を挙げることができる。また、該イミノホスファゼニウム塩を調製する際には、後述するハイドロタルサイトの存在下で、該塩基性イミノホスファゼニウム塩と活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物との混合を行い、イミノホスファゼニウムカチオンと2価以上の活性水素含有化合物アニオンとの塩であるイミノホスファゼニウム塩を調製してもよい。
【0019】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法においては、該イミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素化合物及びハイドロタルサイトを用いることにより、高活性で、効率に優れる製造方法となるものであり、その際のハイドロタルサイトとしては、ハイドロタルサイトと称される範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、市販品をそのまま使用してもよく、その中でもより高い活性が発現するポリアルキレングリコールの製造方法となることから、300〜900℃の温度範囲で焼成したハイドロタルサイトであることが好ましく、400〜800℃の温度範囲で焼成したハイドロタルサイトであることがより好ましい。その際の焼成の方法については任意であり、例えば空気雰囲気下や窒素等の不活性ガス雰囲気下でマッフル炉や管状炉を用いて実施することが出来る。焼成時間は特に制限はなく、例えば1〜10時間の範囲であり、好ましくは2〜6時間の範囲である。
【0020】
また、特に高い活性を示すポリアルキレングリコールの製造方法となることから、下記一般式(2)で示されるハイドロタルサイトであることが好ましい。
(Mg1−x Al (OH)x+ (CO3x/2 ・mHO)x− (2)
(式中、xおよびmは0<x≦0.33、0<m≦1.0の条件を満たす。)
さらに、該ハイドロタルサイトは、重合活性を損なわない範囲で、他の金属や陰イオンを含んでいても良く、他の金属としては、例えばマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛など2価の金属;クロム、鉄、コバルト、インジウムなどの3価の金属等を例示できる。また、陰イオンとしては、例えばWO2−、MoO2−、VO3−などを例示することができる。
【0021】
そして、ハイドロタルサイトの具体例としては、例えばMg・A1・(OH)16・CO・4HO、Mg4.5・A1・(OH)13・CO・3.5HOなどの組成を有するものが挙げられる。これらのハイドロタルサイトは天然に産する鉱物、あるいは合成によって得られる化合物である。これら天然および合成のハイドロタルサイトのMg2+/Al3+の比は1〜8の範囲であり、また、OH/CO2− の比は10〜20の範囲である。
【0022】
本発明におけるハイドロタルサイトの使用量は任意であり、その中でも高い重合活性を有する製造方法となると共に、反応後の処理が容易となることから、生成するポリアルキレングリコールの量に対して0.05〜10重量%であることが好ましく、特に0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0023】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法は、該イミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタルサイトの存在下、アルキレンオキシドの開環重合を行なうものである。その際のハイドロタルサイトの添加時期は任意であり、例えば該塩基性イミノホスファゼニウム塩と活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物を減圧下で加熱処理し、イミノホスファゼニウム塩を調製した後にハイドロタルサイトを添加する方法、該塩基性イミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタルサイトを同時に加え、ハイドロタルサイトの存在下で該イミノホスファゼニウム塩を調製する方法等を挙げることができ、中でも、より高活性を示すポリアルキレングリコールの製造方法となることから、該塩基性イミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタルサイトを同時に混合した後に、減圧下で加熱処理を行い、ハイドロタルサイトの存在下で該イミノホスファゼニウム塩を調製する方法が好ましい。
【0024】
該アルキレンオキシドとしては、例えば炭素数2〜20のアルキレンオキシドを挙げることができ、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、ペンテンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等を挙げることができる。これらの中で、入手容易で工業的価値の高いことから、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシドは、単一で用いても2種以上を混合して用いても良い。2種以上を混合して用いる場合は、例えば第1のアルキレンオキシドを反応させた後、第2のアルキレンオキシドを反応させても良いし、2種以上のアルキレンオキシドを同時に反応させても良い。
【0025】
アルキレンオキシドの開環重合を行う際の圧力は、例えば0.05〜1.0MPaの範囲であり、好ましくは0.1〜0.6MPaの範囲である。また、反応温度は、例えば40〜150℃の範囲であり、好ましくは60〜130℃の範囲である。
【0026】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法においては、ポリアルキレングリコールの精製・回収等の工程を任意に付加することも可能であり、製造の際に用いた触媒成分等をポリアルキレングリコールから除去する際には、例えば触媒成分を固体酸と接触させることにより、固体酸に吸着させた後、固体酸を分離する方法により除去することができる。
【0027】
本発明により得られるポリアルキレングリコールは、水酸基価の異なるポリアルキレングリコールとすることが可能であり、得られるポリアルキレングリコールの水酸基価に特に制限は無く、その中でも、5〜100mgKOH/gの範囲が好ましく、特に10〜70mgKOH/gの範囲であることが好ましい。また、分子量分布は1.01〜1.2の範囲であり、好ましくは1.02〜1.1の範囲である。
【0028】
本発明により得られるポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料、潤滑剤原料等に有用である。特に各種イソシアネート化合物と反応させることにより、断熱材等に使用される硬質フォームや、自動車のシート・クッション、寝具等に使用される軟質フォーム、接着剤、塗料、シーリング材、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーへの展開が期待される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の方法によれば、イミノホスファゼニウム塩、活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタルサイトの存在下、アルキレンオキシドを開環重合することにより、高活性で、分子量分布が狭く、安定した物性を有するポリアルキレングリコールを効率よく製造することが可能であることから工業的に極めて有用である。
【実施例】
【0030】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、以下の合成例、実施例においては、NMRスペクトル、GC−MS、イオンクロマトグラフィー、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を以下のとおり測定した。
【0031】
〜NMRスペクトルの測定(イミノホスファゼニウム塩の純度測定)〜
核磁気共鳴スペクトル測定装置(日本電子製、商品名:GSX270WB)を用い、有機相の分析には、内部標準にテトラメチルシラン(TMS)及び重溶媒に重クロロホルムを用い測定した。水相の分析には、重溶媒として重水を用いて測定した。
【0032】
〜GC−MSの測定〜
ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(日本電子製、商品名:JMS−700)を用い、イオン化モードとしてFAB+を用いて測定を行った。
【0033】
〜イオンクロマトグラフィーの測定(イオン交換率の測定)〜
カラム(東ソー(株)製、商品名;TSKgel IC−Anion−PWXL)、溶離液にアニオン標準溶液(東ソー製)を用い、検出器に電気伝導度検出器(東ソー(株)製、商品名;CM−8200)を用い、35℃、流速1.0ml/minにてハロゲン化イミノホスファゼニウム1重量%溶液中の塩素または臭素イオン濃度を測定した。
【0034】
〜GPCの測定(分子量分布の測定)〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名;HLC8020GPC)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定した溶出曲線より標準ポリスチレン換算値として測定した。
【0035】
〜水酸基価、総不飽和度の測定〜
JIS K 1557記載の測定法に従い測定した。
【0036】
〜活性(g/mol・min)の算出法〜
アルキレンオキシド量:A(g)(生成物全重量−(活性水素含有化合物量+塩基性イミノホスファゼニウム塩+ハイドロタルサイト量))、触媒量:B(mol)、反応時間:C(時間)とした際に、活性=A/(B×C×60)として算出した。
【0037】
実施例及び比較例で用いた活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物及びハイドロタルサイトを以下に示す。
【0038】
〜活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物〜
分子量250のグリセリン系ポリプロピレングリコール(活性水素3個)(以下、ポリオールAと記す。)。
分子量1000のグリセリン系ポリプロピレングリコール(活性水素3個)(以下、ポリオールBを記す。)。
分子量400のプロピレングリコール系ポリプロピレングリコール(活性水素2個)(以下、ポリオールCと記す。)。
【0039】
〜ハイドロタルサイト(組成:Mg A1 (OH)16 CO ・4H O)〜
市販品(和光純薬製)(以下、ハイドロタルサイトAと記す。)。
ハイドロタルサイトAを窒素気流下、400℃で焼成したもの(以下、ハイドロタルサイトBと記す。)。
ハイドロタルサイトAを窒素気流下、800℃で焼成したもの(以下、ハイドロタルサイトCと記す。)。
【0040】
合成例1
特開2013−112646号公報の実施例3に従い、塩基性イミノホスファゼニウム塩であるテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドの濃度40.1重量%の2−プロパノール溶液を得た。イオンクロマトグラフィーによるイオン交換率は99.3%であり、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドの収率は92.0%であった。
【0041】
生成物は、H−NMR、GC−MSにより同定した。
【0042】
H−NMR(重溶媒:DO):
化学シフト:2.92ppm(ホスファゼニウム塩由来のメチル基)。
【0043】
GC−MS(FAB+)測定結果:
m/z=487(テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムカチオンの分子量に一致。)。
【0044】
合成例2
特開2014−118353号公報の実施例1に従い、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネートを得た。得られたテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネートは、H−NMR、GC−MS、イオンクロマトグラフィーにより同定した。
【0045】
H−NMR(重溶媒:DO,内部標準:テトラメチルシラン):
化学シフト:2.87ppm(ホスファゼニウム塩由来のメチル基)。
【0046】
GC−MS(FAB+)測定結果:
m/z=487(テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムカチオンの分子量に一致。)。
【0047】
炭酸水素イオンへのイオン交換率は、イオンクロマトグラフィーにて測定した結果、99.5%であった。
【0048】
実施例1
塩基性イミノホスファゼニウム塩として合成例1で得られた40.1重量%のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド(一般式(3)においてR、Rがメチル基、Xがヒドロキシアニオンである。)溶液を0.5g(0.4mmol)、ポリオールAを5.0g(20mmol)及びハイドロタルサイトA1.0gを、熱伝対、圧力計、攪拌装置及びアルキレンオキシド導入管を装備した実容積200mlのガラス製オートクレーブに仕込んだ。その後、反応器内を乾燥窒素で置換し、80℃に昇温して、0.5kPaの減圧下で、3時間加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールA中のプロトンが3個脱離したアニオン)、ポリオールA及びハイドロタルサイトAの混合物を調製した。
【0049】
そして、加熱処理後、調製物を窒素により常圧に戻し、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら90℃で4時間反応させた。プロピレンオキシドの供給が終了した後、圧力減少が無くなるまで1.5時間90℃で反応を継続した。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後内容物を室温まで冷却し、常圧に戻した。
【0050】
無色無臭のポリオキシプロピレントリオール115.2gを得た。触媒活性は835g/mol・minであった。得られたポリオキシプロピレントリオールの水酸基価は29.2mgKOH/g、総不飽和度は0.017meq/g、GPCにより求めた分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0051】
比較例1
ハイドロタルサイトAを用いなかった以外は、実施例1と同様に加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールA中のプロトンが3個脱離したアニオン)及びポリオールAの混合物を調製した。
【0052】
加熱処理後、調製物を窒素により常圧に戻し、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら90℃で4時間反応させた。プロピレンオキシドの供給が終了した後、圧力減少が無くなるまで1.5時間90℃で反応を継続した。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後内容物を室温まで冷却し、常圧に戻した。
【0053】
無色無臭のポリオキシプロピレントリオール36.8gを得た。触媒活性は241g/mol・minであった。得られたポリオキシプロピレントリオールの水酸基価は91.5mgKOH/g、総不飽和度は0.019meq/g、GPCにより求めた分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。実施例1と比較して活性が大きく低下したものであった。
【0054】
実施例2
ポリオールA5g(20mmol)の代わりにポリオールB8.7g(8.7mmol)、40重量%のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドを0.5g(0.4mmol)の代わりに0.25g(0.2mmol)用いた以外は、実施例1と同様に加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールB中のプロトンが3個脱離したアニオン)、ポリオールB及びハイドロタルサイトAの混合物を調製した。
【0055】
加熱処理後、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら88〜92℃の温度範囲で5時間反応させた。プロピレンオキシドの供給が終了した後、圧力減少が無くなるまで2時間90℃で反応を継続した。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後、窒素で常圧に戻し、内容物を室温まで冷却した。
【0056】
無色無臭のポリオキシプロピレントリオール81gを得た。触媒活性は848g/mol・minであった。得られたポリオキシプロピレントリオールの水酸基価は18.1mgKOH/gであり、総不飽和度は0.026meq/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0057】
実施例3
ポリオールA5g(20mmol)の代わりにポリオールC8g(20mmol)用いた以外は、実施例1と同様の加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールC中のプロトンが2個脱離したアニオン)、ポリオールC及びハイドロタルサイトAの混合物を調製した。
【0058】
加熱処理後、調製物を窒素により常圧に戻し、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら90℃で4時間反応させた。プロピレンオキシドの供給が終了した後、圧力減少が無くなるまで2時間90℃で反応を継続した。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後内容物を室温まで冷却し、常圧に戻した。
【0059】
無色無臭のポリオキシプロピレン125.2gを得た。触媒活性は807g/mol・minであった。得られたポリオキシプロピレンの水酸基価は18.1mgKOH/g、総不飽和度は0.019meq/g、GPCにより求めた分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0060】
実施例4
ハイドロタルサイトA1gの代わりにハイドロタルサイトB1gを用いた以外は、実施例2と同様に加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールB中のプロトンが3個脱離したアニオン)、ポリオールB及びハイドロタルサイトBの混合物を調製した。
【0061】
加熱処理後、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら88〜92℃の温度範囲で4時間反応させた。プロピレンオキシドの供給が終了した後、圧力減少が無くなるまで1.5時間、90℃で反応を継続した。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後、窒素で常圧に戻し、内容物を室温まで冷却した。
【0062】
無色無臭のポリオキシプロピレントリオール67gを得た。触媒活性は868g/mol・minであった。得られたポリオキシプロピレントリオールの水酸基価は22.2mgKOH/gであり、総不飽和度は0.022meq/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0063】
実施例5
ハイドロタルサイトA1gの代わりにハイドロタルサイトC1gを用いた以外は、実施例2と同様の加熱処理に加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールB中のプロトンが3個脱離したアニオン)、ポリオールB及びハイドロタルサイトCの混合物を調製した。
【0064】
加熱処理後、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら88〜92℃の温度範囲で4時間反応させた。プロピレンオキシドの供給が終了した後、圧力減少が無くなるまで2時間90℃で反応を継続した。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後、窒素で常圧に戻し、内容物を室温まで冷却した。
【0065】
無色無臭のポリオキシプロピレントリオール69gを得た。触媒活性は821g/mol・minであった。得られたポリオキシプロピレントリオールの水酸基価は21.6mgKOH/gであり、総不飽和度は0.027meq/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0066】
実施例6
テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド0.25g(0.2mmol)の代わりに合成例2により得られたテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート0.11g(0.2mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールB中のプロトンが3個脱離したアニオン)、ポリオールB及びハイドロタルサイトAの混合物を調製した。
【0067】
加熱処理後、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら88〜92℃の温度範囲で4時間反応させた。プロピレンオキシドの供給が終了した後、圧力減少が無くなるまで2時間90℃で反応を継続した。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後、窒素で常圧に戻し、内容物を室温まで冷却した。
【0068】
無色無臭のポリオキシプロピレントリオール62gを得た。触媒活性は724g/mol・minであった。得られたポリオキシプロピレントリオールの水酸基価は24.0mgKOH/gであり、総不飽和度は0.024meq/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0069】
実施例7
実施例2と同様に加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールB中のプロトンが3個脱離したアニオン)、ポリオールB及びハイドロタルサイトBの混合物を調製した。
【0070】
加熱処理後、90℃に昇温して、プロピレンオキシド46gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら88〜92℃の温度範囲で5時間反応させた。次いで90℃で1時間かけて減圧下に残留プロピレンオキサイドを除去した。プロピレンオキシド除去後に110℃に昇温し、110℃でエチレンオキド12gを反応圧力が0.4MPa(ゲージ)以下となるように供給した。エチレンオキシド供給後、1時間同じ温度で熟成を行った。熟成後、減圧下でエチレンオキシドを除去した後、窒素で常圧に戻し、内容物を室温まで冷却した。
【0071】
無色無臭のポリアルキレンオキシド63gを得た。プロピレンオキシド付加の活性は730g/mol・minであった。得られたポリアルキレンオキシドのエチレンオキシド含有量は15.1重量%であり、水酸基価は22mgKOH/gであり、総不飽和度は0.024meq/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0072】
実施例8
ハイドロタルサイトA1gの代りにハイドロタルサイトA5gとした以外は、実施例1と同様に加熱処理を行い、イミノホスファゼニウム塩(Yn−がポリオールA中のプロトンが3個脱離したアニオン)、ポリオールA及びハイドロタルサイトAの混合物を調製した。
【0073】
加熱処理後、調製物を窒素により常圧に戻し、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら90℃で4時間反応させた。プロピレンオキシドの供給が終了した後、圧力減少が無くなるまで1.5時間90℃で反応を継続した。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後内容物を室温まで冷却し、常圧に戻した。
【0074】
無色無臭のポリオキシプロピレントリオール116.2gを得た。触媒活性は805g/mol・minであった。得られたポリオキシプロピレントリオールの水酸基価は30.3mgKOH/g、総不飽和度は0.017meq/g、GPCにより求めた分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
【0075】
比較例2
40重量%のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液0.5g(0.4mmol)を用いなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリオールA及びハイドロタルサイトAの混合物を調製した。
【0076】
加熱処理後、90℃に昇温して、プロピレンオキシドを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に反応器内に供給しながら88〜92℃の温度範囲で5時間反応させた。反応終了後、0.5kPaに減圧し、90℃で1時間未反応のプロピレンオキシドを除去した。その後、窒素で常圧に戻し、内容物を室温まで冷却した。
【0077】
無色無臭のポリオキシプロピレン39gを得た。得られたポリオキシプロピレンの量は39gに大きく減少し、活性が低下した。また、得られたポリオキシプロピレンの水酸基価は78.3mgKOH/gであり、総不飽和度は0.020meq/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は2.15であり広い分布を示した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の製造方法により得られるポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料、潤滑剤原料等に有用である。特に各種イソシアネート化合物と反応させることにより、断熱材等に使用される硬質フォームや、自動車のシート・クッション、寝具等に使用される軟質フォーム、接着剤、塗料、シーリング材、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーへの展開が期待される。