特許第6350204号(P6350204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6350204描画データ検証方法、プログラム、及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350204
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】描画データ検証方法、プログラム、及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20180625BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20180625BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H01L21/30 541J
   H01L21/30 541W
   G03F7/20 504
   H01J37/305 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-214314(P2014-214314)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-82147(P2016-82147A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】安井 健一
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−242885(JP,A)
【文献】 特開2009−111148(JP,A)
【文献】 特開平10−031301(JP,A)
【文献】 特開2008−177224(JP,A)
【文献】 特開2001−344302(JP,A)
【文献】 特開平10−189436(JP,A)
【文献】 特開2008−277730(JP,A)
【文献】 特開2009−008735(JP,A)
【文献】 特開2004−056068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計データに基づくベクトル形式の第1描画データからピクセル形式の第2描画データへのデータ変換に伴う変換エラーを検証する描画データ検証方法であって、
前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換し、
前記第1描画データと前記第3描画データとで排他的論理和演算を行い、
前記第1描画データの図形を拡大し、拡大図形と該第1描画データの図形との差分から許容誤差領域図形を作成し、
前記排他的論理和演算により生じた図形を前記許容誤差領域図形でマスク処理して欠陥を検出することを特徴とする描画データ検証方法。
【請求項2】
設計データに基づくベクトル形式の第1描画データからピクセル形式の第2描画データへのデータ変換に伴う変換エラーをコンピュータに検証させるプログラムであって、
前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換するステップと、
前記第1描画データと前記第3描画データとで排他的論理和演算を行うステップと、
前記第1描画データの図形を拡大し、拡大図形と該第1描画データの図形との差分から許容誤差領域図形を作成するステップと、
前記排他的論理和演算により生じた図形を前記許容誤差領域図形でマスク処理して欠陥を検出するステップと、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項3】
複数の荷電粒子ビームからなるマルチビームを形成し、前記マルチビームのうち、それぞれ対応するビームに対して個別にビームのオン/オフを行い、対象物上に荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、
設計データに基づくベクトル形式の第1描画データから変換されたピクセル形式の第2描画データに基づいて前記描画部を制御するとともに、前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換し、前記第1描画データと前記第3描画データとで排他的論理和演算を行い、前記第1描画データの図形を拡大し、拡大図形と前記第1描画データの図形との差分から許容誤差領域図形を作成し、前記排他的論理和演算により生じた図形を前記許容誤差領域図形でマスク処理して欠陥を検出する制御部と、
を備えるマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
設計データに基づくベクトル形式の第1描画データからピクセル形式の第2描画データへのデータ変換に伴う変換エラーを検証する描画データ検証方法であって、
前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換し、
前記第1描画データの図形を拡大して拡大図形を作成し、
前記拡大図形と前記第3描画データの図形とで排他的論理和演算を行い、欠陥を検出することを特徴とする描画データ検証方法。
【請求項5】
設計データに基づくベクトル形式の第1描画データからピクセル形式の第2描画データへのデータ変換に伴う変換エラーをコンピュータに検証させるプログラムであって、
前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換するステップと、
前記第1描画データの図形を拡大して拡大図形を作成するステップと、
前記拡大図形と前記第3描画データの図形とで排他的論理和演算を行い、欠陥を検出するステップと、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
複数の荷電粒子ビームからなるマルチビームを形成し、前記マルチビームのうち、それぞれ対応するビームに対して個別にビームのオン/オフを行い、対象物上に荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、
設計データに基づくベクトル形式の第1描画データから変換されたピクセル形式の第2描画データに基づいて前記描画部を制御するとともに、前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換し、前記第1描画データの図形を拡大して拡大図形を作成し、前記拡大図形と前記第3描画データの図形とで排他的論理和演算を行い、欠陥を検出する制御部と、
を備えるマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画データ検証方法、プログラム、及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置として、可変成形型の電子ビーム描画装置と、マルチビーム描画装置とが知られている。可変成形型電子ビーム描画装置は、2つの成形アパーチャを用いて電子ビームを矩形又は直角二等辺三角形に成形し、描画対象のマスク上に電子ビームを照射する。一方、マルチビーム描画装置は、電子銃から放出された電子ビームを、複数の穴を有するアパーチャ部材を通過させることでマルチビームを形成し、各ビームのブランキング制御を行い、遮蔽しなかったビームを描画対象のマスク上に照射する。
【0004】
可変成形型電子ビーム描画装置を用いて電子ビーム描画を行う場合、まず、半導体集積回路のレイアウトが設計され、レイアウトデータとして設計データ(CADデータ)が生成される。そして、設計データが、描画装置内での演算処理が可能となるようフォーマットを変換され、描画データが生成される。例えば、描画データでは、図形等の描画パターンが、図形の頂点の座標で定義されている。
【0005】
設計データ及び描画データは共にベクトルデータであり、従来、データ変換前後での形状一致を確認するために、設計データと描画データとの間で排他的論理和(XOR)演算を行い、差分を欠陥(変換エラー)として検出していた。
【0006】
マルチビーム描画装置を用いて電子ビーム描画を行う場合は、設計データをフォーマット変換してベクトル描画データを生成した後、さらに、ベクトル描画データをピクセル描画データに変換して、描画装置に入力している。
【0007】
ベクトル描画データからピクセル描画データへのデータ変換に伴う変換エラーの有無を検出する場合、比較するデータがベクトルデータとピクセルデータとなるため、上述した従来の方法をそのまま適用することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−177224号公報
【特許文献2】特開2009−111148号公報
【特許文献3】特開2007−233866号公報
【特許文献4】特開2004−56068公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであり、設計データから生成されたベクトル形式の描画データを、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の内部フォーマットに合わせてピクセル形式の描画データに変換する際の変換エラーを精度良く検出する描画データ検証方法、プログラム、及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による描画データ検証方法は、設計データに基づくベクトル形式の第1描画データからピクセル形式の第2描画データへのデータ変換に伴う変換エラーを検証する描画データ検証方法であって、前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換し、前記第1描画データと前記第3描画データとで排他的論理和演算を行い、前記第1描画データの図形を拡大し、拡大図形と該第1描画データの図形との差分から許容誤差領域図形を作成し、前記排他的論理和演算により生じた図形を前記許容誤差領域図形でマスク処理して欠陥を検出することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様によるプログラムは、設計データに基づくベクトル形式の第1描画データからピクセル形式の第2描画データへのデータ変換に伴う変換エラーをコンピュータに検証させるプログラムであって、前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換するステップと、前記第1描画データと前記第3描画データとで排他的論理和演算を行うステップと、前記第1描画データの図形を拡大し、拡大図形と該第1描画データの図形との差分から許容誤差領域図形を作成するステップと、前記排他的論理和演算により生じた図形を前記許容誤差領域図形でマスク処理して欠陥を検出するステップと、を前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様によるマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、複数の荷電粒子ビームからなるマルチビームを形成し、前記マルチビームのうち、それぞれ対応するビームに対して個別にビームのオン/オフを行い、対象物上に荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、設計データに基づくベクトル形式の第1描画データから変換されたピクセル形式の第2描画データに基づいて前記描画部を制御するとともに、前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換し、前記第1描画データと前記第3描画データとで排他的論理和演算を行い、前記第1描画データの図形を拡大し、拡大図形と前記第1描画データの図形との差分から許容誤差領域図形を作成し、前記排他的論理和演算により生じた図形を前記許容誤差領域図形でマスク処理して欠陥を検出する制御部と、を備えるものである。
【0013】
本発明の一態様による描画データ検証方法は、設計データに基づくベクトル形式の第1描画データからピクセル形式の第2描画データへのデータ変換に伴う変換エラーを検証する描画データ検証方法であって、前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換し、前記第1描画データの図形を拡大して拡大図形を作成し、前記拡大図形と前記第3描画データの図形とで排他的論理和演算を行い、欠陥を検出することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様によるプログラムは、設計データに基づくベクトル形式の第1描画データからピクセル形式の第2描画データへのデータ変換に伴う変換エラーをコンピュータに検証させるプログラムであって、前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換するステップと、前記第1描画データの図形を拡大して拡大図形を作成するステップと、前記拡大図形と前記第3描画データの図形とで排他的論理和演算を行い、欠陥を検出するステップと、を前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様によるマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、複数の荷電粒子ビームからなるマルチビームを形成し、前記マルチビームのうち、それぞれ対応するビームに対して個別にビームのオン/オフを行い、対象物上に荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、設計データに基づくベクトル形式の第1描画データから変換されたピクセル形式の第2描画データに基づいて前記描画部を制御するとともに、前記第2描画データをベクトル形式の第3描画データに変換し、前記第1描画データの図形を拡大して拡大図形を作成し、前記拡大図形と前記第3描画データの図形とで排他的論理和演算を行い、欠陥を検出する制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、設計データから生成されたベクトル形式の描画データを、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の内部フォーマットに合わせてピクセル形式の描画データに変換する際の変換エラーを精度良く検出する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】マルチ荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。
図2】第1の実施形態に係る描画データ検証装置の概略図である。
図3】ベクトル形式の描画データの一例を示す図である。
図4】ピクセル形式の描画データの一例を示す図である。
図5】ピクセル形式の描画データから変換されたベクトル形式の描画データの一例を示す図である。
図6】XOR演算の一例を示す図である。
図7】誤差許容領域図形の一例を示す図である。
図8】許容誤差領域図形を用いたマスク処理による欠陥検出の一例を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る描画データ検証装置の概略図である。
図10】XOR演算の一例を示す図である。
図11】矩形のグループ化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態による描画データ検証方法は、設計データから生成されたベクトル形式の描画データを、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の内部フォーマットに合わせてピクセル形式の描画データに変換する際の変換エラーを検出するものである。描画データ検証方法の説明に先立ち、マルチ荷電粒子ビーム描画装置について説明する。
【0020】
図1は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。ここでは、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の他の荷電粒子ビームでもよい。
【0021】
図1に示す描画装置1は、マスクやウェーハ等の対象物に電子ビームを照射して所望のパターンを描画する描画部10と、描画部10による描画動作を制御する制御部50とを備える。描画部10は、電子ビーム鏡筒12及び描画室30を有している。
【0022】
電子ビーム鏡筒12内には、電子銃14、照明レンズ16、アパーチャ部材18、ブランキングプレート20、縮小レンズ22、制限アパーチャ部材24、対物レンズ26、及び偏向器28が配置されている。描画室30内には、XYステージ32が配置される。XYステージ32上には、描画対象基板となるマスクブランク34が載置されている。対象物として、例えば、ウェーハや、ウェーハにエキシマレーザを光源としたステッパやスキャナ等の縮小投影型露光装置や極端紫外線露光装置を用いてパターンを転写する露光用のマスクが含まれる。また、描画対象基板には、例えば、既にパターンが形成されているマスクも含まれる。例えば、レベンソン型マスクは2回の描画を必要とするため、1度描画されマスクに加工された物に2度目のパターンを描画することもある。XYステージ32上には、さらに、XYステージ32の位置測定用のミラー36が配置される。
【0023】
制御部50は、制御計算機52、偏向制御回路54,56、及びステージ位置検出器58を有している。制御計算機52、偏向制御回路54,56、及びステージ位置検出器58は、バスを介して互いに接続されている。
【0024】
電子銃14から放出された電子ビーム40は、照明レンズ16によりほぼ垂直にアパーチャ部材18全体を照明する。アパーチャ部材18には、穴(開口部)が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。電子ビーム40は、アパーチャ部材18のすべての穴が含まれる領域を照明する。これらの複数の穴を電子ビーム40の一部がそれぞれ通過することで、図1に示すようなマルチビーム40a〜40eが形成されることになる。
【0025】
ブランキングプレート20には、アパーチャ部材18の各穴の配置位置に合わせて通過孔が形成され、各通過孔には、対となる2つの電極からなるブランカが、それぞれ配置される。各通過孔を通過する電子ビーム40a〜40eは、それぞれ独立に、ブランカが印加する電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。このように、複数のブランカが、アパーチャ部材18の複数の穴を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0026】
ブランキングプレート20を通過したマルチビーム40a〜40eは、縮小レンズ22によって、縮小され、制限アパーチャ部材24に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングプレート20のブランカにより偏向された電子ビームは、制限アパーチャ部材24の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ部材24によって遮蔽される。一方、ブランキングプレート20のブランカによって偏向されなかった電子ビームは、制限アパーチャ部材24の中心の穴を通過する。
【0027】
このように、制限アパーチャ部材24は、ブランキングプレート20のブランカによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに制限アパーチャ部材24を通過したビームが、1回分のショットのビームとなる。制限アパーチャ部材24を通過したマルチビーム40a〜40eは、対物レンズ26により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となる。制限アパーチャ部材24を通過した各ビーム(マルチビーム全体)は、偏向器28によって同方向にまとめて偏向され、各ビームのマスクブランク34上のそれぞれの照射位置に照射される。
【0028】
XYステージ32が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ32の移動に追従するように偏向器28によって制御される。XYステージ32の移動は図示しないステージ制御部により行われ、XYステージ32の位置はステージ位置検出器58により検出される。
【0029】
一度に照射されるマルチビームは、理想的にはアパーチャ部材18の複数の穴の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。この描画装置は、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画動作を行い、所望のパターンを描画する際、パターンに応じて必要なビームがブランキング制御によりビームONに制御される。XYステージ32が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ32の移動に追従するように偏向器28によって制御される。
【0030】
制御計算機52は、記憶装置68からピクセル形式の描画データD2を読み出し、複数段のデータ変換処理を行って装置固有のショットデータを生成する。ショットデータには、各ショットの照射量及び照射位置座標等が定義される。
【0031】
制御計算機52は、ショットデータに基づき各ショットの照射量を偏向制御回路54に出力する。偏向制御回路54は、入力された照射量を電流密度で割って照射時間tを求める。そして、偏向制御回路54は、対応するショットを行う際、照射時間tだけブランカがビームONするように、ブランキングプレート20の対応するブランカに偏向電圧を印加する。
【0032】
また、制御計算機52は、ショットデータが示す位置(座標)に各ビームが偏向されるように、偏向位置データを偏向制御回路56に出力する。偏向制御回路56は、偏向量を演算し、偏向器28に偏向電圧を印加する。これにより、その回にショットされるマルチビームがまとめて偏向される。
【0033】
半導体集積回路のレイアウトが設計され、レイアウトデータとなる設計データ(CADデータ)D0が生成されると、この設計データD0は記憶装置60に格納される。そして、設計データD0が変換装置62で変換され、描画データD1が生成される。描画データD1は記憶装置64に格納される。描画データD1では、図形等の描画パターンが、図形の頂点の座標で定義されている。設計データD0及び描画データD1は共にベクトル形式のデータである。
【0034】
変換装置66は、ベクトル形式の描画データD1を、描画装置1の内部フォーマットに合わせて、ピクセル形式の描画データD2に変換する。これにより、描画装置1の制御計算機52に入力される描画データD2が生成される。生成された描画データD2は記憶装置68に格納される。なお、以下の説明では、ベクトル形式の描画データD1、ピクセル形式の描画データD2をそれぞれ、ベクトル描画データD1、ピクセル描画データD2と記載する。
【0035】
次に、描画データ検証方法について説明する。図2は本実施形態に係る描画データ検証装置の概略図である。図2に示すように、描画データ検証装置100は、ベクトル図形変換部102、XOR検証処理部104、許容誤差領域図形作成部106、及びマスク処理部108を備える。
【0036】
描画データ検証装置100には、ベクトル描画データD1及びピクセル描画データD2が入力され、変換装置66がベクトル描画データD1をピクセル描画データD2に変換する際の変換エラー(欠陥)の検出を行う。描画データ検証装置100に入力されるベクトル描画データD1及びピクセル描画データD2の例をそれぞれ図3図4に示す。図4に示すピクセル描画データD2では、メッシュ(ピクセル)の値を面積率としている。
【0037】
ベクトル図形変換部102は、ピクセル描画データD2をベクトル形式の描画データD3に変換する。具体的には、0以外の値を持つピクセルを、そのピクセル枠と等しい位置とサイズを持つ矩形に変換する。変換後のベクトル描画データD3は、矩形群からなる図形の描画パターンを有する。例えば、図4に示すピクセル描画データD2を変換した場合、図5に示すようなベクトル描画データD3が生成される。
【0038】
XOR検証処理部104は、ベクトル描画データD1と、ベクトル図形変換部102により生成されたベクトル描画データD3とで排他的論理和(XOR)演算を行う。ベクトル描画データD3の矩形群に含まれる各矩形について、ベクトル描画データD1とXOR演算する。このXOR演算により、ベクトル描画データD1とベクトル描画データD3との差分図形が生成される。
【0039】
例えば、図3に示すベクトル描画データD1と図5に示すベクトル描画データD3とでXOR演算を行うことで、図6に示すような差分図形120が得られる。この差分図形には、真の欠陥122だけでなく、疑似欠陥124も含まれる。この疑似欠陥124は、ベクトル描画データD1をピクセル描画データD2に変換する際に、ベクトル図形の辺とピクセルの境界とが一致しないことや、ベクトル図形の任意角近似により生じるものである。
【0040】
許容誤差領域図形作成部106は、ベクトル描画データD1の図形を拡大し、拡大図形とベクトル描画データD1の図形との差分(拡大前後の差分)から許容誤差領域図形を作成する。例えば、図7(a)に示すように、ベクトル描画データD1の図形140を拡大し、拡大図形142を得る。そして、図7(b)に示すような、拡大図形142と図形140との差分図形であるリング状の許容誤差領域図形144(図示の斜線部)を作成する。
【0041】
ベクトル描画データD1の図形140を拡大する際、水平及び垂直の辺に対する拡大幅δはδ=PixSize−1auとし、斜めの辺に対する拡大幅εはε=PixSize×(cosθ+sinθ)−1auとする。ここで、PixSizeは1つのピクセル枠のサイズであり、auはビームの最小照射単位である。拡大幅をPixSize以上とすると、後述するマスク処理において真の欠陥を見落とすおそれがあるため、拡大幅はPixSizeより小さくする。
【0042】
マスク処理部108は、XOR検証処理部104により生成された差分図形を、許容誤差領域図形作成部106により作成された許容誤差領域図形でマスクし、許容誤差領域図形内の差分図形を除去する。このマスク処理により、差分図形に含まれる疑似欠陥を除去し、真の欠陥のみを検出することができる。
【0043】
例えば、図8(a)に示すように、差分図形120を許容誤差領域図形144でマスクすることで、疑似欠陥124が除去され、真の欠陥122が検出される。図8(b)に示すように、真の欠陥122に対応するピクセルが、変換装置66がベクトル描画データD1をピクセル描画データD2に変換する際の変換エラー(欠陥)である。
【0044】
本実施形態によれば、ベクトル描画データD1を拡大した拡大図形142から許容誤差領域図形144を作成し、この許容誤差領域図形144を用いてマスク処理することで、ピクセル描画データD2をベクトル図形に変換したベクトル描画データD3とベクトル描画データD1との差分図形に含まれる疑似欠陥を除去できる。そのため、設計データD0から生成されたベクトル描画データD1を、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の内部フォーマットに合わせたピクセル描画データD2に変換する際の変換エラーを精度良く検出することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、ピクセル描画データD2をベクトル図形に変換したベクトル描画データD3とベクトル描画データD1との差分図形に含まれる疑似欠陥を、許容誤差領域図形144を用いたマスク処理により除去していたが、ベクトル描画データD1の拡大図形とベクトル描画データD3とのXOR演算を行い、疑似欠陥の含まれない差分図形(真の欠陥)を検出するようにしてもよい。
【0046】
図9は第2の実施形態に係る描画データ検証装置の概略図である。図9に示すように、描画データ検証装置200は、ベクトル図形変換部202、拡大図形作成部204、及びXOR検証処理部206を備える。描画データ検証装置200に入力されるベクトル描画データD1及びピクセル描画データD2は上記第1の実施形態と同じである。
【0047】
ベクトル図形変換部202は、上記第1の実施形態におけるベクトル図形変換部102と同じであり、ピクセル描画データD2をベクトル形式の描画データD3に変換する。
【0048】
拡大図形作成部204は、ベクトル描画データD1の図形を拡大し、拡大図形を作成する。これは、上記第1の実施形態において、図7(a)に示すように、ベクトル描画データD1の図形140を拡大し、拡大図形142を作成するのと同じ処理である。
【0049】
XOR検証処理部206は、ベクトル図形変換部202により生成されたベクトル描画データD3と、拡大図形作成部204により作成された拡大図形とでXOR演算を行う。ベクトル描画データD3の矩形群に含まれる各矩形について、拡大図形とXOR演算する。このXOR演算により、ベクトル描画データD3と拡大図形との差分図形が生成される。
【0050】
例えば、図5に示すベクトル描画データD3と図7(a)に示す拡大図形142とでXOR演算を行うことで、図10に示す差分図形220が得られる。この差分図形220には疑似欠陥は含まれず、真の欠陥だけが検出される。
【0051】
このように、本実施形態によれば、ベクトル描画データD1をピクセル描画データD2に変換する際にベクトル図形の辺とピクセルの境界とが一致しないことや、ベクトル図形の任意角近似により生じる疑似欠陥を考慮して、ベクトル描画データD1の図形を拡大した拡大図形と、ベクトル描画データD3とをXOR演算することで、疑似欠陥を含まない真の欠陥のみからなる差分図形を検出することができる。そのため、設計データD0から生成されたベクトル描画データD1を、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の内部フォーマットに合わせたピクセル描画データD2に変換する際の変換エラーを精度良く検出することができる。
【0052】
上記第1及び第2の実施形態では、XOR演算を行う際、ベクトル描画データD3の矩形群に含まれる各矩形についてXOR演算を行っており、XOR演算の回数は、0以外の値を持つピクセルの数又はそれ以上となっていた。ここで、XOR演算を行う前に、図11に示すように、複数の矩形をグループ化し、各グループについてXOR演算を行うようにしてもよい。これにより、XOR演算の演算回数を削減し、処理効率を向上させることができる。
【0053】
描画データ検証装置100、200は、検出した欠陥を表示するディスプレイや、検出結果を保存するメモリ等をさらに備えていてもよい。
【0054】
上記第1、第2の実施形態による描画データの検証は描画装置1の制御計算機52内で行ってもよい。例えば、制御計算機52に、描画データ検証装置100又は200の機能と、変換装置66の機能とが設けられ、ベクトル描画データD1が入力されると、制御計算機52内でベクトル描画データD1をピクセル描画データD2に変換するとともに、この変換に伴うエラー(欠陥)の有無を検証する。制御計算機52に変換装置62の機能をさらに設け、設計データD0が入力されると、制御計算機52内で設計データD0をベクトル描画データD1に変換できるようにしてもよい。
【0055】
上述した実施形態で説明した描画データ検証装置100、200の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、描画データ検証装置100、200の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0056】
また、描画データ検証装置100、200の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 描画装置
10 描画部
12 電子ビーム鏡筒
14 電子銃
16 照明レンズ
18 アパーチャ部材
20 ブランキングプレート
22 縮小レンズ
24 制限アパーチャ部材
26 対物レンズ
28 偏向器
30 描画室
32 XYステージ
34 マスクブランク
36 ミラー
50 制御部
60、64、68 記憶装置
100、200 描画データ検証装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11